(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181748
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】推定方法、および推定システム
(51)【国際特許分類】
G06F 17/10 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G06F17/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088876
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛子
(72)【発明者】
【氏名】原 伸夫
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB91
(57)【要約】
【課題】加工の結果を示す情報を適切に推定する。
【解決手段】デバイスの加工の実験を行い、加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得し(S401)、第1種情報および第2種情報を入力として第3種情報を出力する第1式であって、第3種情報を複数の解として出力する第1式と、第1種情報および第2種情報を入力として第4種情報を出力する第2式とを導出し、第1式を用いて、第2種情報および第3種情報を入力として、第1種情報を出力する第3式を複数導出し(S402)、デバイスの加工の際に計測された第2種情報および第3種情報を入力として、第2式および複数の第3式を用いて、デバイスの加工の結果を示す第4種情報を出力する(ステップS403)。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサがメモリを用いて実行する推定方法であって、
デバイスの加工の実験を行い、前記加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、前記加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得し、
前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第1式であって、前記第3種情報を複数の解として出力する第1式と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第4種情報を出力する第2式とを導出し、
前記第1式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第1種情報を出力する第3式を複数導出し、
前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第2式および複数の前記第3式を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する
推定方法。
【請求項2】
前記第4種情報の出力では、
複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報のうちの単一の第1種情報を選択し、
選択した前記単一の第1種情報を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する
請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
さらに、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第4式であって、前記第3種情報についての1次式である第4式を導出し、
前記第4式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として新たな第1種情報を出力する第5式を導出し、
前記第4種情報の出力では、
複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報のうち、前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第5式を用いて出力された前記新たな第1種情報との差が最も小さい前記第1種情報を、前記単一の第1種情報として選択する
請求項2に記載の推定方法。
【請求項4】
前記第4種情報の出力では、
複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報のうち、さらに正常範囲に属する第1種情報を、選択し、
選択した前記第1種情報を用いて、前記第4種情報を出力する
請求項2または3に記載の推定方法。
【請求項5】
前記第4種情報の出力では、
複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報が虚数である場合に、当該虚数が有する虚部を削除し、
虚部を削除した前記第1種情報を用いて、前記第4種情報を出力する
請求項1~4のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項6】
複数の前記第3式を導出する際には、
前記第1式が、前記第3種情報についての2次以上の多項式であり、かつ、前記第3種情報をxとして(a×x+b)のn乗の形式で表現できない多項式であるか否かを判定し、
前記第1式が前記多項式と判定した場合に、複数の前記第3式を導出する
請求項1~5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項7】
前記第1種情報および前記第4種情報は、前記加工の際に計測されない情報としてあらかじめ定められた情報であり、
前記第2種情報および前記第3種情報は、前記加工の際に計測される情報としてあらかじめ定められた情報である
請求項1~6のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項8】
前記加工は、レーザー溶接であり、
前記第1種情報は、前記レーザー溶接において溶接される板材間の隙間幅を含み、
前記第2種情報は、前記レーザー溶接におけるレーザーのスキャン速度を含み、
前記第3種情報は、前記レーザー溶接におけるレーザー溶接部の表面溶接幅を含み、
前記第4種情報は、前記レーザー溶接におけるレーザー溶接部の界面溶接幅を含む
請求項1~7のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項9】
デバイスの加工の実験を行い、前記加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、前記加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得する取得部と、
前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第1式であって、前記第3種情報を複数の解として出力する第1式と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第4種情報を出力する第2式とを導出し、かつ、前記第1式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第1種情報を出力する第3式を複数導出する導出部と、
前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第2式および複数の前記第3式を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する推定部とを備える
推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定方法、および推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デバイスの加工に関するモデルが利用されている。このようなモデルについて、目的変数(出力変数)のパラメータを、説明変数(入力変数)のパラメータから推定する、多くの事例が報告されている。実際の物理現象に基づいた物理モデルを構成できる場合には、この物理モデルを用いて目的変数のパラメータを推定することで、高精度な推定が可能であり、また、モデリングに必要な計測工数も抑えることができる。
【0003】
一方、物理モデルの構成が難しい場合には、例えば蓄積された多くの測定データを利用して、入出力関係を多項式モデルで仮定し、フィッティングにより推定する方法が知られている。これら2つの方法を組み合わせた推定方法も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような方法は、いずれも説明変数のパラメータの計測データが、デバイスの加工時にインライン収集されることが前提となっている。
【0006】
一方、目的変数を高精度に推定できるモデルを得るためには、説明変数の中に、インラインでは測定データが収集されないパラメータを含む場合も想定される。この場合、モデルをインラインで活用できるようにするためには、インラインでは測定データが収集されないパラメータを出力変数とするもう1つの実験計画を組み合わせるなどの工夫を行う必要がある。
【0007】
ただし、このような工夫を行ったとしても、もう1つの実験計画の入力変数が、変数の性質上、計画通りに実験点を生成できないことが想定される。また、計画通りに実験点を生成できたとしても、2回の実験計画を実施する必要があるので、モデルの生成に必要な実験回数が倍増してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、加工の結果を示す情報を適切に推定する推定方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る推定方法は、プロセッサがメモリを用いて実行する推定方法であって、デバイスの加工の実験を行い、前記加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、前記加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得し、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第1式であって、前記第3種情報を複数の解として出力する第1式と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第4種情報を出力する第2式とを導出し、前記第1式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第1種情報を出力する第3式を複数導出し、前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第2式および複数の前記第3式を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する推定方法である。
【0010】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生成方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るシステムの構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るシステムの処理を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る生成装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、レーザー溶接工程に関するパラメータを示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る実験における第1~第4パラメータの関係を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る生成装置が導出する、第1~第4パラメータと第1および第2統計モデル式との関係を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る生成装置が導出する、第1~第3パラメータと第3統計モデル式との関係を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る生成装置が生成する推定モデルを示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る生成装置が実行する処理を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る生成装置が実行する詳細な処理を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る推定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る推定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、実施の形態に係る推定装置が実行する処理を示すフロー図である。
【
図14】
図14は、実施の形態に係る推定装置が実行する詳細な処理を示すフロー図である。
【
図15】
図15は、実施の形態に係る推定モデルの推定の精度を、関連技術と比較して示す説明図である。
【
図16】
図16は、実施の形態に係る、選択された単一の第1パラメータの妥当性を示す第一の説明図である。
【
図17】
図17は、実施の形態に係る、選択された単一の第1パラメータの妥当性を示す第二の説明図である。
【
図18】
図18は、実施の形態の変形例に係るシステムが実行する処理を示すフロー図である。
【
図19】
図19は、実施の形態の変形例に係るシステムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様に係る推定方法は、プロセッサがメモリを用いて実行する推定方法であって、デバイスの加工の実験を行い、前記加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、前記加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得し、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第1式であって、前記第3種情報を複数の解として出力する第1式と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第4種情報を出力する第2式とを導出し、前記第1式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第1種情報を出力する第3式を複数導出し、前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第2式および複数の前記第3式を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する推定方法である。
【0014】
上記態様によれば、実験から得られた第1種情報、第2種情報、第3種情報および第4種情報の関係式を用いて、加工の際に得られた第2種情報および第3種情報から、加工の際の第4種情報を推定することができる。その処理のなかで、第1式が第3種情報を複数の解として出力する場合には、複数の第3式を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。このように、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0015】
例えば、前記第4種情報の出力では、複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報のうちの単一の第1種情報を選択し、選択した前記単一の第1種情報を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力してもよい。
【0016】
上記態様によれば、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうちの、より適切な単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す単一の第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0017】
例えば、さらに、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第4式であって、前記第3種情報についての1次式である第4式を導出し、前記第4式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として新たな第1種情報を出力する第5式を導出し、前記第4種情報の出力では、複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報のうち、前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第5式を用いて出力された前記新たな第1種情報との差が最も小さい前記第1種情報を、前記単一の第1種情報として選択してもよい。
【0018】
上記態様によれば、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうち、第5式を用いて出力された新たな第1種情報に近い単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。第5式を用いて出力された新たな第1種情報は、一般に、真値との差異が比較的小さい。そこで、複数の第3式により1以上の第1種情報が得られる場合には、上記新たな第1種情報との差異が最も小さい第1種情報を選択することで、真値に比較的近い第1種情報を得ることができ、これを用いて第4種情報を適切に推定することができる。このように、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0019】
例えば、前記第4種情報の出力では、複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報のうち、さらに正常範囲に属する第1種情報を、選択し、選択した前記第1種情報を用いて、前記第4種情報を出力してもよい。
【0020】
上記態様によれば、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうち、正常範囲内に属し、かつ、より適切な単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0021】
例えば、前記第4種情報の出力では、複数の前記第3式それぞれを用いて出力した、前記デバイスの加工の条件を示す複数の前記第1種情報が虚数である場合に、当該虚数が有する虚部を削除し、虚部を削除した前記第1種情報を用いて、前記第4種情報を出力してもよい。
【0022】
上記態様によれば、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうち、虚数については虚部を除外することで実数とし、かつ、より適切な単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0023】
例えば、複数の前記第3式を導出する際には、前記第1式が、前記第3種情報についての2次以上の多項式であり、かつ、前記第3種情報をxとして(a×x+b)のn乗の形式で表現できない多項式であるか否かを判定し、前記第1式が前記多項式と判定した場合に、複数の前記第3式を導出してもよい。
【0024】
上記態様によれば、第1式の具体的な形に基づく判定を行うことで、複数の第3式を用いて第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、より容易に、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0025】
例えば、前記第1種情報および前記第4種情報は、前記加工の際に計測されない情報としてあらかじめ定められた情報であり、前記第2種情報および前記第3種情報は、前記加工の際に計測される情報としてあらかじめ定められた情報であってもよい。
【0026】
上記態様によれば、加工の条件を示す情報に計測されない情報があり、かつ、加工の結果を示す情報に計測されない情報がある場合に、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。よって、上記生成方法によれば、加工の際に計測されない情報がある場合であっても、加工の結果を示す情報を適切に推定するモデルを生成することができる。
【0027】
例えば、前記加工は、レーザー溶接であり、前記第1種情報は、前記レーザー溶接において溶接される板材間の隙間幅を含み、前記第2種情報は、前記レーザー溶接におけるレーザーのスキャン速度を含み、前記第3種情報は、前記レーザー溶接におけるレーザー溶接部の表面溶接幅を含み、前記第4種情報は、前記レーザー溶接におけるレーザー溶接部の界面溶接幅を含んでもよい。
【0028】
上記態様によれば、レーザー溶接における加工の結果を示す情報を適切に推定するモデルをより容易に生成することができる。
【0029】
本発明の一態様に係る推定システムは、デバイスの加工の実験を行い、前記加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、前記加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得する取得部と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第1式であって、前記第3種情報を複数の解として出力する第1式と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第4種情報を出力する第2式とを導出し、かつ、前記第1式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第1種情報を出力する第3式を複数導出する導出部と、前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第2式および複数の前記第3式を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する推定部とを備える推定システムである。
【0030】
これによれば、上記推定方法と同様の効果を奏する。
【0031】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0032】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0033】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0034】
(実施の形態)
本実施の形態において、加工の結果を示す情報を適切に推定する推定方法などについて説明する。
【0035】
まず、デバイスの加工の工程について説明する。ここではデバイスの加工の一例として製造ラインにおけるレーザー溶接工程について記述するが、本実施の形態の適用はこれに限定されるものではない。
【0036】
一般に、デバイスの加工の工程では、当該工程の品質の評価がなされる。品質の評価は、当該デバイスの加工の品質を示す情報、より具体的には、当該デバイスの加工の品質に関連した物理量を評価することでなされる。しかしながら、上記物理量が必ず計測され得るとは限らず、計測され得ないこともある。
【0037】
例えば、製造ラインにおけるレーザー溶接工程において、プロセス品質を評価する指標の1つとして接合強度が挙げられる。仮にインラインで接合強度が計測されれば、当該工程を経て生産される製品の不良を未然に防ぐための制御につなげられる可能性があるという利点がある。
【0038】
しかし、接合強度は、インラインで計測されることが、実質上、困難または不可能である。そのため、接続強度は、オフラインで実施される接合強度評価試験により評価せざるを得ない。
【0039】
また、接合強度は、溶接対象である板材間の界面溶融面積と相関があり、界面溶融面積は、界面溶接幅と溶接距離とにより算出され得る。そのため、板材間の界面溶接幅を推定できれば、接合強度の評価につなげることができる。しかしながら、界面溶接幅もインラインでの計測が行われないのが現状である。
【0040】
本実施の形態のシステム(推定システムともいう)は、加工の条件を示す情報のうちの計測可能な情報、および、加工の結果を示す情報のうちの計測可能な情報から、デバイスの加工の品質を示す情報を推定することにより、デバイスの加工の品質の評価を可能とする。この方法によれば、デバイスの加工の品質を示す情報が直接に計測されない場合に、その情報を推定によって得ることができる。
【0041】
以降において、加工の条件を示す情報、および、加工の結果を示す情報から、デバイスの加工の品質を示す情報を推定するモデルを生成するモデル生成方法、および、上記モデルを用いた上記情報の推定方法について説明する。
【0042】
図1は、本実施の形態に係るシステム1の構成を示す説明図である。
【0043】
図1に示されるように、システム1は、生成装置10と、推定装置20とを備える推定システムである。推定装置20は、加工装置29と接続されている。
【0044】
生成装置10は、デバイスの加工の結果を示す情報を推定するモデルを生成する装置である。生成装置10は、加工装置29によるデバイスの加工の実験を行うことにより得られる情報に基づいて、デバイスの加工の結果を示す情報を推定するモデル(推定モデルともいう)を生成する。生成装置10は、生成した推定モデルを推定装置20に提供する。生成装置10は、上記の処理をオフラインで実行する。
【0045】
推定装置20は、デバイスの加工の結果を示す情報を推定する装置である。推定装置20は、デバイスの加工の条件を示す情報、および、デバイスの加工の結果を示す情報を加工装置29から取得し、取得した上記情報を推定モデルに入力することで、デバイスの加工の結果を示す情報を推定する。推定装置20は、上記の処理をインラインで実行する。
【0046】
加工装置29は、デバイスの加工を行う装置である。デバイスの加工は、具体的には、デバイスのレーザー溶接、又は、スパッタなどが含まれる。
【0047】
図2は、本実施の形態に係るシステム1の処理を示す説明図である。
【0048】
図2に示されるように、ステップS1において、生成装置10は、デバイスの加工の結果を示す情報を推定する推定モデルをオフラインで生成する。このとき、生成装置10は、加工の実験を行うことで得られる情報を用いて上記推定モデルを生成する。
【0049】
ステップS2において、生成装置10は、ステップS1で生成した推定モデルを推定装置20に格納する。
【0050】
ステップS3において、推定装置20は、ステップS2で格納された推定モデルを用いて、加工の結果を示す情報(パラメータ)をインラインで推定し、出力する。このとき、推定装置20は、デバイスの加工を実際に行った結果として得られる情報を用いて上記情報を推定する。
【0051】
以降において、生成装置10および推定装置20それぞれの構成と処理とを説明する。
【0052】
(生成装置10)
図3は、本実施の形態に係る生成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0053】
図3に示されるように、生成装置10は、機能部として、取得部11と、導出部12と、生成部13とを備える。生成装置10は、コンピュータによって実現され得る。生成装置10が備える機能部は、生成装置10が備えるプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit))(不図示)がメモリ(不図示)を用いてプログラムを実行することで実現され得る。
【0054】
取得部11は、デバイスの加工の実験を行い、加工の条件を示す第1パラメータおよび第2パラメータと、加工の結果を示す第3パラメータおよび第4パラメータとを取得する機能部である。第1パラメータ、第2パラメータ、第3パラメータおよび第4パラメータを、それぞれ、第1種情報、第2種情報、第3種情報および第4種情報ともいう。デバイスの加工の実験は、デバイスの加工より前にそのデバイスの加工を想定してなされる実験であり、オフラインで実施されるものである。デバイスの加工の実験は、例えば、製造ラインにおける加工工程と同様の工程を別環境で実際に行う実機実験、または、製造ラインにおける加工工程を疑似した工程をコンピュータシミュレーションで行うシミュレーション実験を含む。
【0055】
なお、実機実験によって上記パラメータを取得する場合には、取得部11は、生成装置10とは異なる実験装置において行われた実機実験の結果を、当該装置から取得してもよい。その際、取得部11は、上記実験装置を制御してもよい。
【0056】
また、取得部11は、シミュレーション実験によって上記パラメータを取得する場合には、取得部11は、生成装置10が備えるコンピュータ資源(プロセッサ、メモリなど)を用いてシミュレーション実験を実行してもよい。
【0057】
また、取得部11は、実験において使用するパラメータのセットを含む実験計画モデル105を取得する。実験計画モデル105は、第3パラメータおよび第4パラメータを取得するための実験に用いられる。
【0058】
導出部12は、第1パラメータ、第2パラメータ、第3パラメータおよび第4パラメータの関係を導出する機能部である。具体的には、導出部12は、第1パラメータ、第2パラメータおよび第3パラメータの関係(第1関係ともいう)を導出する。また、導出部12は、第1パラメータ、第2パラメータおよび第4パラメータの関係(第2関係ともいう)を導出する。
【0059】
なお、第1関係は、例えば、第1パラメータおよび第2パラメータを入力として第3パラメータを出力する第1統計モデル式(第1式ともいう)で表現される。また、第2関係は、第1パラメータおよび第2パラメータを入力として第4パラメータを出力する第2統計モデル式(第2式ともいう)で表現される。
【0060】
生成部13は、加工装置29がデバイスを実際に加工した際にインラインで計測された第2パラメータおよび第3パラメータを入力として、加工の結果を示す第4パラメータを推定するモデルである推定モデルを生成して出力する機能部である。生成部13は、推定モデルに基づいて、第1関係および第2関係を用いて、第4情報を推定する。
【0061】
推定モデルは、第1関係が第1統計モデル式で表現され、第2関係が第2統計モデル式で表現されるときには、第3統計モデル式(第3式ともいう)を含む。第3統計モデル式は、第1統計式モデル式から導出される、第2パラメータおよび第3パラメータを入力として第1パラメータを出力する式である。
【0062】
推定モデルは、第3統計モデル式とともに、第2統計モデル式を含む。そして、推定モデルは、加工の際に計測された第2パラメータおよび第3パラメータを入力として第3統計モデル式によって出力された第1パラメータと、加工の際に計測された第2パラメータとを入力として第2統計モデル式によって出力された第4パラメータを取得するモデルを含む。
【0063】
なお、第1パラメータおよび第2パラメータは、加工の際に計測されない情報としてあらかじめ定められた情報であってもよい。また、第2パラメータおよび第3パラメータは、加工の際に計測される情報としてあらかじめ定められた情報であってもよい。加工の際に計測されない情報には、例えば、加工の際に計測されることが技術的には可能であるが、計測に要するコストまたは所要時間などの制約から実際には計測されない情報が含まれ得る。また、加工の際に計測されない情報には、加工の際に計測されることが技術的に困難または不可能である情報が含まれてもよい。
【0064】
以降において、導出部12による推定モデルの生成方法について説明する。
【0065】
図4は、レーザー溶接工程に関するパラメータを示す説明図である。
図5は、本実施の形態に係る実験における第1パラメータ~第4パラメータの関係を示す説明図である。
図4および
図5を参照しながら第1パラメータ~第4パラメータについて説明する。
【0066】
図4の(a)には、加工装置29がレーザー溶接によって板材9Aと板材9Bとを溶接するレーザー溶接工程の様子が模式的に示されている。
図4の(a)に示されるように、板材9Aと板材9Bとは、一部が重なるように配置されている。加工装置29は、板材9Aと板材9Bとが重なっている領域にレーザービーム91をスキャンしながら照射する。
【0067】
図4の(b)には、加工装置29によるレーザー溶接によって溶接された板材9Aと板材9Bとの断面の状態が模式的に示されている。
図4の(b)に示されるように、板材9Aと板材9Bのうち、レーザービーム91が照射された部分は溶接されている。板材9Aと板材9Bとの溶接部分のうち、板材9Aの上面(つまり、z軸プラス方向から見た面)における幅を表面溶接幅93といい、板材9Aと板材9Bとの界面における幅を界面溶接幅95ともいう。また、板材9Aと板材9Bとの間には、隙間幅94を有する微小な隙間がある。
【0068】
次に、
図5を参照しながら推定モデルの生成のために用いられる第1パラメータ101~第4パラメータ104と実験計画モデル105とを説明する。
【0069】
第1パラメータ101は、加工の条件を示すパラメータであって、コスト又は時間の制約等によりインライン計測が行われないパラメータである。第1パラメータ101は、加工の結果を示す情報を高精度に推定するために必要なパラメータである。
【0070】
第1パラメータ101は、例えば、溶接対象である板材9A及び9B間の隙間幅94を含む。隙間幅94は、オフラインの実験においては治具を用いることにより制御可能であり、また、シミュレーションによる実験の場合にはシミュレーション条件の設定により制御可能である。
【0071】
第2パラメータ102は、加工の条件を示すパラメータであって、インライン計測が行われるパラメータである。第2パラメータ102は、例えば、レーザーのスキャン速度92を含む。
【0072】
実験計画モデル105は、実験において使用するパラメータ(第1パラメータ101および第2パラメータ102)を含む情報である。実験計画モデル105は、予め設定されている、実験において第1パラメータ101および第2パラメータ102それぞれが取り得る値の上限値および下限値に基づいて生成されたものである。実験計画モデル105は、実験において第1パラメータ101および第2パラメータ102それぞれがとる値(実験点条件ともいう)の設定情報を含む。実験計画モデル105に示される実験点条件に従って設定された第1パラメータ101および第2パラメータ102の下で実験を行った結果として、第3パラメータ103および第4パラメータ104が出力される。
【0073】
第3パラメータ103は、加工の結果を示す情報であって、インライン計測が行われるパラメータである。第3パラメータ103は、例えば、レーザー溶接部の表面溶接幅93を含む。
【0074】
第4パラメータ104は、加工の結果を示す情報であって、コスト又は時間の制約等によりインライン計測が行われないパラメータである。第4パラメータ104は、加工の品質に係る特性パラメータである。第4パラメータ104は、例えば、レーザー溶接部の、板材9Aおよび9B間の界面における界面溶接幅95を含む。界面溶接幅95を直接に計測するには、例えばオフラインで加工品を切断し、その切断面において計測する方法があるが、このような計測はインラインでは困難または不可能である。
【0075】
次に、第1統計モデル式~第3統計モデル式と、推定モデルとについて説明する。
【0076】
図6は、本実施の形態に係る生成装置10が導出する、第1パラメータ~第4パラメータと第1統計モデル式および第2統計モデル式との関係を示す説明図である。
図7は、本実施の形態に係る生成装置10が導出する、第1パラメータ~第3パラメータと第3統計モデル式との関係を示す説明図である。
図8は、本実施の形態に係る生成装置10が生成する推定モデルを示す説明図である。
【0077】
導出部12は、実験によって得られた、第1パラメータ101~第4パラメータ104のセットを用いて、実験計画モデル105に基づいた統計モデリングにより第1統計モデル式111および第2統計モデル式112を導出する。ここで、第1統計モデル式111は、第1パラメータ101および第2パラメータ102を入力変数(説明変数)とし、第3パラメータ103を出力変数(目的変数)とするモデル式である。また、第2統計モデル式112は、第1パラメータ101および第2パラメータ102を入力変数(説明変数)とし、第4パラメータ104を出力変数(目的変数)とするモデル式である。
【0078】
すなわち、第1統計モデル式111、第2統計モデル式112は、以下の(式1)に示すような形態で表現できる(
図6参照)。
【0079】
第1統計モデル式111:第3パラメータ=f1(第1パラメータ,第2パラメータ)
第2統計モデル式112:第4パラメータ=f2(第1パラメータ,第2パラメータ)
(式1)
【0080】
ところで、工程の評価に用いられるのは目的変数である第4パラメータ104であるが、第4パラメータ104は、インライン計測が行われないパラメータであり、第2統計モデル式112を用いて推定されることとなる。
【0081】
しかし、第2統計モデル式112に対する入力変数の1つである第1パラメータ101もインライン計測が行われないパラメータであるので、第1パラメータ101も推定される必要がある。
【0082】
そこで、第1パラメータ101を推定する方法として、第1統計モデル式111を利用する。第1統計モデル式111は、第1パラメータ101および第2パラメータ102が入力変数であり、第3パラメータ103が出力変数である。第1統計モデル式111を、第1パラメータ101を未知数として代数方程式を解くことで、第2パラメータ102および第3パラメータ103を入力変数とし、第1パラメータ101を出力変数とする式に変換することができる。
【0083】
導出部12は、このように変換された式(第3統計モデル式113に相当、(式2)参照)を得る(
図7参照)。
【0084】
第3統計モデル式113:第1パラメータ=f1
-1(第2パラメータ,第3パラメータ)
(式2)
【0085】
ここで、導出部12は、第1統計モデル式111について判定を行い、下記のように第3統計モデル式113を出力する。
【0086】
導出部12は、第1統計モデル式111が第1パラメータについての1次式であると判定した場合には、第3パラメータを単一の解として導出し、単一の1次式である第3統計モデル式113を出力する。
【0087】
また、導出部12は、第1統計モデル式111が、(a×x+b)のn乗の形式(ここで、xは第1パラメータであり、nは2以上の整数である、以下同様)で表現できる数式であると判定した場合にも、第3パラメータを単一の解として導出し、単一の1次式である第3統計モデル式113を出力する。
【0088】
一方、導出部12は、第1統計モデル式111が第1パラメータについての2次以上の数式であり、かつ、(a×x+b)のn乗の形式で表現できない数式であると判定した場合には、第3パラメータを複数の解として導出し、第3パラメータについての一次式である第3統計モデル式113を複数出力する。なお、この場合、導出部12は、第3パラメータについての1次式である第3統計モデル式113を複数含むセットとは別に、第3パラメータについての1次式である単一の第3統計モデル式113を出力することも可能である。その場合、単一の第3統計モデル式113により導出される値も、第1パラメータとして扱われ得る。単一の第3統計モデル式113により導出される第1パラメータは、真値との差異が比較的小さいが、上記セットに含まれる複数の第3統計モデル式113により導出される第1パラメータより、真値との差異が大きいことがある。
【0089】
このように、第1パラメータ101は、第2パラメータ102および第3パラメータ103を含む第3統計モデル式113により算出される。
【0090】
そして、(式2)を(式1)の第2統計モデル式112における第1パラメータ101に代入する(つまり、第1パラメータ101と第2パラメータ102とを共に入力変数とする)ことで、第2統計モデル式112により第4パラメータ104を推定できる。
【0091】
つまり、第4パラメータ104は以下の(式3)のような形態で表現できる(
図8参照)。
【0092】
第4パラメータ=f2(f1
-1(第2パラメータ,第3パラメータ),第2パラメータ)
(式3)
【0093】
このように、第2パラメータ102および第3パラメータ103が入力されたときに、第4パラメータ104を出力することができるモデルを推定モデル106ともいう。
【0094】
よって、インライン計測によって取得された第2パラメータ102と第3パラメータ103とが推定モデル106に入力されれば、そのインライン計測の対象となった加工の結果を示す情報としての第4パラメータ104を推定することができる。
【0095】
以上のように構成された生成装置10の処理を説明する。
【0096】
図9は、本実施の形態に係る生成装置10が実行する処理を示すフロー図である。
図10は、本実施の形態に係る生成装置10が実行する詳細な処理を示すフロー図である。
【0097】
図9に示される処理は、
図2のステップS1に含まれる処理である。また、
図10は、
図9のステップS107に含まれる処理である。
【0098】
図9に示されるように、ステップS101において、取得部11は、実験計画モデル105を取得する。
【0099】
ステップS102において、取得部11は、ステップS101で取得した実験計画モデル105に基づいて、実験で用いる第1パラメータおよび第2パラメータを設定する。
【0100】
ステップS103において、取得部11は、ステップS102で設定した第1パラメータおよび第2パラメータを用いて実験を実行する。
【0101】
ステップS104において、取得部11は、ステップS103で実行した実験の結果として出力される第3パラメータおよび第4パラメータを取得する。
【0102】
ステップS105において、導出部12は、ステップS102で設定した第1パラメータおよび第2パラメータと、ステップS104で取得した第3パラメータとを用いて、第1統計モデル式を導出する。
【0103】
ステップS106において、導出部12は、ステップS102で設定した第1パラメータおよび第2パラメータと、ステップS104で取得した第4パラメータとを用いて、第2統計モデル式を導出する。
【0104】
ステップS107において、導出部12は、ステップS105で導出した第1統計モデル式と、ステップS106で導出した第2統計モデル式とを用いて、第3統計モデル式を導出する。
【0105】
このとき、導出部12は、第1統計モデル式が第3パラメータを単一の解として導出する式であるか、または、複数の解として導出する式であるかに応じて異なる処理を実行する。
【0106】
すなわち、ステップS111(
図10参照)において、導出部12は、第1統計モデル式が、第3パラメータを複数の解として出力する数式であるかを判定する。第1統計モデル式が第3パラメータを複数の解として出力する数式であると判定した場合(ステップS111でYes)には、ステップS112に進み、そうでない場合(ステップS111でNo)には、ステップS113に進む。
【0107】
ステップS112において、導出部12は、第1統計モデル式を変形することで、複数の第3統計モデル式を導出する。
【0108】
ステップS113において、導出部12は、第1統計モデル式を変形することで、単一の第3統計モデル式を導出する。
【0109】
このように導出部12がステップS112またはステップS113で導出した第3統計モデル式が、ステップS107(
図9参照)で導出される第3統計モデル式となる。
【0110】
(推定装置20)
次に、推定装置20について説明する。
【0111】
図11は、本実施の形態に係る推定装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0112】
推定装置20は、例えばコンピュータで実現されるものであり、プロセッサ21と、メモリ22と、入出力IF23と、センサー24と、入力装置25と、表示装置26とを備える。
【0113】
プロセッサ21は、パラメータ推定処理を行う演算装置であり、例えばCPUである。
【0114】
メモリ22は、プログラムまたはデータを記憶する記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory)である。メモリ22には、生成装置10が生成した推定モデル106が格納される。
【0115】
入出力IF23は、プロセッサ21、メモリ22、センサー24、入力装置25および表示装置26の間で相互にデータの授受を行うインタフェース装置である。入出力IF23は、上記各装置に接続されている。その接続は、有線または無線であり、それらの併用でもよい。
【0116】
センサー24は、インライン計測の対象である加工装置29に設置されている。加工装置29は、例えば、レーザー溶接装置である。センサー24は、例えば溶接対象である板材の表面溶接幅93(
図4の(b)参照)を計測するレーザー変位計である。
【0117】
入力装置25は、第1パラメータ~第4パラメータに関する情報の入力を受ける装置であり、例えばキーボードまたはタッチパネルである。
【0118】
表示装置26は、第1パラメータ~第4パラメータに関する情報を示す装置であり、例えばLCD(Liquid Crystal Display)モニタである。
【0119】
図12は、本実施の形態に係る推定装置20の機能構成を示すブロック図である。
【0120】
図12に示されるように、推定装置20は、機能構成として、入力部31と、センサーデータ取得部32と、パラメータ推定部33と、出力部34と、記憶部35とを備える。
【0121】
入力部31は、第1パラメータ101、第2パラメータ102、第3パラメータ103および第4パラメータ104に関して、規格値等の判定値情報の入力を、ユーザから入力装置25を介して受ける機能部である。入力のタイミングは、例えば加工装置29の機種が切り替えられるときなどであるが、それに限定するものではない。ここで入力された値は、記憶部35の入力値記憶部36に登録される。
【0122】
センサーデータ取得部32は、加工装置29に接続されたセンサー24から、第2パラメータ102および第3パラメータ103の計測データを取得する機能部である。第2パラメータ102は、例えばスキャン速度92(
図4の(a)参照)であり、第3パラメータ103は、例えば、溶接対象である板材の表面溶接幅93(
図4の(b)参照)である。データの取得頻度は任意に設定され得るが、以降のパラメータ推定においては、逐次取得したデータを都度利用してもよいし、1個のワークに対して複数取得したデータから平均値を計算し、その平均値をワークの代表値として利用してもよい。取得したデータは、センサーデータ記憶部37に記録される。また、取得したデータは、入力値記憶部36に記憶されている判定条件に適合するか否か判定され、適合しない場合には、不良(NG)であることを示す品質情報を出力する。判定条件は、例えば規格値を示す条件、または、正常範囲を示す条件である。
【0123】
パラメータ推定部33は、センサーデータ記憶部37に記録された第2パラメータ102および第3パラメータ103を推定モデル106に入力することにより(つまり上記(式3)を用いて)、第4パラメータ104を算出して出力することで、推定する。このとき、パラメータ推定部33は、第1統計モデル式が第3パラメータを単一の解として導出する数式である場合には、第2パラメータ102および単一の第3パラメータ103を入力として、第2統計モデル式および単一の第3統計モデル式を用いて、第4パラメータ104を出力する。
【0124】
また、パラメータ推定部33は、第1統計モデル式が第3パラメータを複数の解として導出する数式である場合には、第2パラメータ102および複数の第3パラメータ103を入力として、第2統計モデル式および複数の第3統計モデル式を用いて、第4パラメータ104を出力する(後述)。第4パラメータ104は、例えば板材間の界面溶接幅95(
図4の(b)参照)である。出力された第4パラメータ104の推定値は、パラメータ推定値記憶部38に記録される。
【0125】
第4パラメータ104の出力では、パラメータ推定部33は、複数の第3統計モデル式それぞれを用いて出力した、デバイスの加工の条件を示す複数の第1パラメータ101のうちの単一の第1パラメータ101を選択し、選択した単一の第1パラメータ101を用いて、デバイスの加工の結果を示す第4パラメータを出力してもよい。
【0126】
また、第4パラメータ104の出力では、複数の第3統計モデル式それぞれを用いて出力した、デバイスの加工の条件を示す複数の第1パラメータ101のうち、デバイスの加工の際に計測された第2パラメータ102および第3パラメータを入力として、第5統計モデル式を用いて出力された新たな第1パラメータ101との差が最も小さい第1パラメータ101を、単一の第1パラメータ101として選択してもよい。ここでは、第1パラメータ101および第2パラメータ102を入力として第3パラメータ103を出力する統計モデル式であって、第3パラメータ103についての1次式である統計モデル式(第4統計モデル式または第4式ともいう)を導出し、その第4統計モデル式を用いて、第2パラメータ102および第3パラメータを入力として新たな第1パラメータ101を出力する統計モデル式(第5統計モデル式または第5式ともいう)を導出することを前提とする。
【0127】
また、第4パラメータ104の出力では、複数の第3統計モデル式それぞれを用いて出力した、デバイスの加工の条件を示す複数の第1パラメータ101のうち、さらに正常範囲に属する第1パラメータ101を、選択し、選択した第1パラメータ101を用いて、第4パラメータ104を出力してもよい。
【0128】
また、第4パラメータ104の出力では、複数の第3統計モデル式それぞれを用いて出力した、デバイスの加工の条件を示す複数の第1パラメータ101が虚数である場合に、当該虚数が有する虚部を削除し、虚部を削除した第1パラメータ101を用いて、第4パラメータ104を出力してもよい。
【0129】
また、出力された第4パラメータ104の推定値は、入力値記憶部36に記憶されている判定条件に適合するか否か判定され、適合しない場合には、不良(NG)であることを示す品質情報を出力する。判定条件は、例えば規格値を示す条件、または、正常範囲を示す条件である。
【0130】
出力部34は、記憶部35に記録されたデータ、または、判定結果を出力する機能部である。出力部34は、例えば上記データ等を表示装置26に表示することで出力する。なお、出力部34は、上記データ等を音声によって出力してもよいし、通信によって他の装置に伝達することで出力してもよい。
【0131】
記憶部35は、各種値および各種データを記憶する機能部である。記憶部35は、入力値記憶部36と、センサーデータ記憶部37と、パラメータ推定値記憶部38とを有する。記憶部35は、上記機能部によって値またはデータが格納され、または、読み出される。
【0132】
図13は、本実施の形態に係る推定装置20が実行する処理を示すフロー図である。
図13に示される処理は、
図2のステップS3に含まれる処理である。
【0133】
ステップS301において、センサーデータ取得部32は、センサー24から、第2パラメータ102および第3パラメータ103の計測データを取得する。
【0134】
ステップS302において、センサーデータ取得部32は、ステップS301で取得した計測データをセンサーデータ記憶部37に記憶する。
【0135】
ステップS303において、センサーデータ取得部32は、ステップS301で取得した計測データが、判定条件に適合するか否かを判定する。判定条件に適合する場合(ステップS303でYes)にはステップS304を実行し、そうでない場合(ステップS303でNo)には、ステップS311を実行する。
【0136】
ステップS304において、パラメータ推定部33は、センサーデータ記憶部37に記録された計測データである第2パラメータ102および第3パラメータ103を推定モデル106に入力することにより(つまり上記(式3)を用いて)、第4パラメータ104を推定する。ステップS304の処理については、後で詳しく説明する。
【0137】
ステップS305において、パラメータ推定部33は、ステップS304で推定した第4パラメータ104をパラメータ推定値記憶部38に記憶する。
【0138】
ステップS306において、パラメータ推定部33は、ステップS304で推定した第4パラメータ104が、判定条件に適合するか否かを判定する。判定条件に適合する場合(ステップS306でYes)にはステップS307を実行し、そうでない場合(ステップS306でNo)には、ステップS312を実行する。
【0139】
ステップS307において、出力部34は、良品(OK)であることを示す品質情報を出力する。
【0140】
ステップS311において、出力部34は、第2パラメータ102または第3パラメータ103が判定条件に適合しないことに基づいて不良(NG)であることを示す品質情報を出力する。
【0141】
ステップS312において、出力部34は、第4パラメータ104が判定条件に適合しないことに基づいて不良(NG)であることを示す品質情報を出力する。
【0142】
ステップS307、S311またはS312の処理を終えたら、
図13に示される一連の処理を終了する。
【0143】
以降において、上記ステップS304に含まれる詳細な処理を説明する。
【0144】
図14は、本実施の形態に係る推定装置20が実行する詳細な処理を示すフロー図である。
【0145】
ステップS321において、パラメータ推定部33は、第1統計モデル式が第3パラメータを複数の解として導出する式であるか否かを判定する。第1統計モデル式が第3パラメータを複数の解として出力する数式であると判定した場合(ステップS321でYes)には、ステップS322に進み、そうでない場合(ステップS321でNo)には、ステップS341に進む。
【0146】
なお、第1統計モデル式が第3パラメータを複数の解として出力する数式であると判定する場合には、事前に導出部12により、複数の第3統計モデル式が導出されている。また、第1統計モデル式が第3パラメータを複数の解として出力する数式でないと判定する場合には、事前に導出部12により、単一の第3統計モデル式が導出されている。
【0147】
ステップS322において、パラメータ推定部33は、複数の第3統計モデル式それぞれに、センサーデータ記憶部37に記録された計測データである第2パラメータ102および第3パラメータ103を代入して、複数の第1パラメータを算出する。
【0148】
ステップS323において、パラメータ推定部33は、ステップS322で算出された複数の第1パラメータそれぞれについて、虚数であるか否かを判定し、虚数であると判定した場合に、その虚数が有する虚数部を削除することで実数を得る。なお、複数の第1パラメータについて虚数部を削除すると、同一の数になることもある。そのため、ステップS323の処理がなされた後には、1つまたは複数の第1パラメータが存在している。
【0149】
ステップS324において、パラメータ推定部33は、ステップS322で算出された複数の第1パラメータ(ステップS323で虚数部が削除された場合には、虚数部が削除された後の1つまたは複数の第1パラメータ)のうち正常範囲に属する第1パラメータの個数が、複数個であるか、1個であるか、または、ゼロ個であるかを判定し、その判定結果に応じて以降の処理を分岐する。正常範囲に属する第1パラメータが複数個であると判定した場合(ステップS324で「複数個」)にはステップS325に進み、正常範囲に属する第1パラメータが1個であると判定した場合(ステップS324で「1個」)にはステップS331に進み、正常範囲に属する第1パラメータがゼロ個であると判定した場合(ステップS324で「ゼロ個」)にはステップS335に進む。
【0150】
ステップS325において、パラメータ推定部33は、第3パラメータについての1次の第1統計モデル式から得られる単一の第3統計モデル式に、第2パラメータと第3パラメータとを代入して、新たな第1パラメータを算出する。
【0151】
ステップS326において、パラメータ推定部33は、ステップS322で算出された複数の第1パラメータ(ステップS323で虚数部が削除された場合には、虚数部が削除された後の複数の第1パラメータ)のうち、ステップS325で算出された新たな第1パラメータに近いほうの単一の第1パラメータを選択する。
【0152】
ステップS331において、パラメータ推定部33は、正常範囲に属する1個の第1パラメータを選択する。ステップS331を終えたらステップS327に進む。
【0153】
ステップS335において、パラメータ推定部33は、第1パラメータとして所定値を設定する。
【0154】
ステップS336において、パラメータ推定部33は、ユーザへの通知をしてもよい。この通知は、正常範囲に属する第1パラメータがないことを示す通知、または、第1パラメータとして所定値を設定したことを示す通知であってよい。ステップS336を終えたらステップS327に進む。
【0155】
ステップS341において、パラメータ推定部33は、単一の第3統計モデル式に、センサーデータ記憶部37に記録された計測データである第2パラメータ102および第3パラメータ103を代入して、単一の第1パラメータを算出する。
【0156】
ステップS327において、パラメータ推定部33は、第1パラメータと、センサーデータ記憶部37に記録された計測データである第2パラメータ102とを用いて、第2統計モデル式112により第4パラメータを算出する。上記第1パラメータは、ステップS326もしくはS331で選択された単一の第1パラメータ、ステップS335で設定された第1パラメータ、または、ステップS341で算出された第1パラメータである。
【0157】
なお、上記説明では、第1統計モデル式が、第3パラメータを複数の解として出力する数式である場合に単一の第1パラメータを算出し、これにより単一の第4パラメータを算出する場合を例として説明した。ただし、上記場合に、単一の第1パラメータを算出するのではなく、複数の第1パラメータを利用して複数の第4パラメータを算出してもよい。これは、
図14に示される一連の処理のうち、ステップS323~S326、S331およびS335~S336(つまり、破線枠で囲まれた処理)を除く処理がなされることに相当する。
【0158】
図13および
図14に示される一連の処理により、例えばレーザー溶接工程において、板材間の界面溶接幅95について、インライン計測するレーザーのスキャン速度92またはレーザー溶接部の表面溶接幅93等の計測データに基づき、インラインで推定することが可能となる。仮に界面溶接幅95を実際に計測しようとすれば、オフラインで断面形状の観察を行わなければならないところ、界面溶接幅95をインラインで推定することが可能となる効果がある。
【0159】
以降において、本実施の形態に係る推定モデルの推定の精度の例を説明する。具体的には、(1)本実施の形態に係る推定モデルの推定の精度と、(2)複数の第1パラメータから選択される単一のパラメータの妥当性とについて説明する。
【0160】
(1)本実施の形態に係る推定モデルの推定の精度
図15は、本実施の形態に係る推定モデルの推定の精度を、関連技術と比較して示す説明図である。
【0161】
図15の(a)は、関連技術の推定モデルにより推定される第4パラメータについて、真値を横軸とし、推定値を縦軸としてプロットしたグラフである。ここで、関連技術とは、本実施の形態における推定モデル106とは異なり、第1パラメータに相当する固定値と、インライン計測により取得された第2パラメータとを第2統計モデル式に入力することで、第4パラメータを推定する推定モデルを用いる技術である。
【0162】
図15の(b)は、本実施の形態における推定モデル106により推定される第4パラメータについて、真値を横軸とし、推定値を縦軸としてプロットしたグラフである。
【0163】
真値と推定値とのRMSE(Root Mean Squared Error)は、関連技術では0.0625であり、本実施の形態では0.0415である。本実施の形態における推定精度は、関連技術と比較して30%以上高いことが確認できる。
【0164】
このように、本実施の形態の推定によって、説明変数の中に測定データがインラインで収集されないパラメータを含む場合であっても、少ない実験回数で目的変数のパラメータ推定が可能となる。
【0165】
(2)複数の第1パラメータから選択される単一のパラメータの妥当性
図16および
図17は、実施の形態に係る、選択された単一の第1パラメータの妥当性を示す説明図である。
【0166】
ここでは、第1統計モデル式が第1パラメータについての2次式である場合に、評価用に計測された第2パラメータおよび第3パラメータと第3統計モデル式とを用いて算出される1つ以上の第1パラメータから、単一の第1パラメータを選択する処理を、具体値を用いて説明する。
【0167】
図16には、21個のケースそれぞれについて、評価用に計測された第2パラメータおよび第3パラメータと第3統計モデル式とを用いて算出される2つの第1パラメータが、第1パラメータAおよび第1パラメータBとして示されている(
図14のステップS322参照)。
【0168】
第1パラメータAおよび第1パラメータBは、実数であるケース(ケース13、19および20以外)と、虚数であるケース(ケース13、19および20)とがある。
【0169】
パラメータ推定部33は、第1パラメータAおよび第1パラメータBが虚数である各ケースにおいて、虚部を削除することで、実数である第1パラメータを1個得る(
図14のステップS323)。
【0170】
ステップS323の後の、21個のケースそれぞれについての第1パラメータが、
図17に第1パラメータAおよび第1パラメータBとして示されている。なお、ステップS323における虚部の削除によって得られた、実数である1個の第1パラメータは、第1パラメータAとして示されている。このようなケースでは、第1パラメータBの欄には「・」が示されている。
【0171】
パラメータ推定部33は、第1パラメータAおよび第1パラメータBのうち正常範囲に属している第1パラメータの個数を得る。ケース13、19および20では、正常範囲に属している第1パラメータの個数が1である。また、正常範囲を0より大きく100より小さい範囲とすると、ケース8および9では、第1パラメータが負の値であるので、正常範囲に属している第1パラメータの個数が1である。正常範囲に属している第1パラメータの個数が1である場合、パラメータ推定部33は、その1つの第1パラメータを選択する(
図14のステップS331)。このように選択される第1パラメータが、「選択される第1パラメータ」の欄に示されている。
【0172】
上記以外のケース(つまり、ケース1~7、10~12、14~18、21)では、正常範囲に属している第1パラメータの個数が2である。
【0173】
正常範囲に属している第1パラメータの個数が1である場合、パラメータ推定部33は、1次の第1統計モデル式から得られる単一の第3統計モデル式に、評価用に計測された第2パラメータおよび第3パラメータを代入して新たな第1パラメータを算出する(
図14のステップS325参照)。新たな第1パラメータは、第1パラメータCとして示されている。
【0174】
パラメータ推定部33は、第1パラメータAおよび第1パラメータBのうち、第1パラメータCに近い一方を選択する。このように選択される第1パラメータが、「選択される第1パラメータ」の欄に示されている。
【0175】
このように選択された第1パラメータの妥当性について、評価用の真値と比較した結果を
図17を参照しながら説明する。
【0176】
正常範囲に属している第1パラメータの個数が1であるケース、および、2であるケースともに、全体的な傾向として、選択された第1パラメータと真値との差異の、真値に対する比率(つまり、|選択された第1パラメータ-真値|/真値)が、おおむね15%程度以内であることがわかる。
【0177】
また、正常範囲に属している第1パラメータの個数が2であるケースについては、より真値に近いほうの1つの第1パラメータが選択されたことがわかる。
【0178】
このように、システム1は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0179】
(変形例)
本変形例において、加工の結果を示す情報を適切に推定する推定方法の別の形態を説明する。
【0180】
図18は、本変形例に係るシステム(推定システムともいう)2が実行する処理(つまり推定方法)を示すフロー図である。
図18に示される処理は、
図2に示される処理の別の例である。
【0181】
図18に示されるように、ステップS401において、生成装置10は、デバイスの加工の実験を行い、加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得する。
【0182】
ステップS402において、生成装置10は、第1種情報および第2種情報を入力として第3種情報を出力する第1式であって、第3種情報を複数の解として出力する第1式と、第1種情報および第2種情報を入力として第4種情報を出力する第2式とを導出する。さらに、生成装置10は、第1式を用いて、第2種情報および第3種情報を入力として、第1種情報を算出する第3式を複数導出する。
【0183】
ステップS403において、推定装置20は、デバイスの加工の際に計測された第2種情報および第3種情報を入力として、第2式および複数の第3式を用いて、デバイスの加工の結果を示す第4種情報を算出して出力する。
【0184】
これにより、システム2は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0185】
図19は、本変形例に係るシステム2の構成を示す模式図である。
図19に示される処理は、
図3に示されるシステム1の別の構成の例である。
【0186】
図19に示されるように、システム2は、取得部2Aと、導出部2Bと、推定部2Cとを備える。
【0187】
取得部2Aは、デバイスの加工の実験を行い、加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得する。
【0188】
導出部2Bは、第1種情報および第2種情報を入力として第3種情報を出力する第1式であって、第3種情報を複数の解として出力する第1式と、第1種情報および第2種情報を入力として第4種情報を出力する第2式とを導出し、かつ、第1式を用いて、第2種情報および第3種情報を入力として、第1種情報を算出する第3式を複数導出する。
【0189】
推定部2Cは、デバイスの加工の際に計測された第2種情報および第3種情報を入力として、第2式および複数の第3式を用いて、デバイスの加工の結果を示す第4種情報を算出して出力する。
【0190】
これにより、システム2は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0191】
以上のように、本実施の形態の推定方法によれば、実験から得られた第1種情報、第2種情報、第3種情報および第4種情報の関係式を用いて、加工の際に得られた第2種情報および第3種情報から、加工の際の第4種情報を推定することができる。その処理のなかで、第1式が第3種情報を複数の解として出力する場合には、複数の第3式を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。このように、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0192】
また、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうちの、より適切な単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す単一の第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0193】
また、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうち、第5式を用いて出力された新たな第1種情報に近い単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。第5式を用いて出力された新たな第1種情報は、一般に、真値との差異が比較的小さい。そこで、複数の第3式により1以上の第1種情報が得られる場合には、上記新たな第1種情報との差異が最も小さい第1種情報を選択することで、真値に比較的近い第1種情報を得ることができ、これを用いて第4種情報を適切に推定することができる。このように、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0194】
また、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうち、正常範囲内に属し、かつ、より適切な単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0195】
また、複数の第3式を用いて得られる1以上の第1種情報のうち、虚数については虚部を除外することで実数とし、かつ、より適切な単一の第1種情報を用いて、加工の結果を示す第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0196】
また、第1式の具体的な形に基づく判定を行うことで、複数の第3式を用いて第4種情報を適切に推定することができる。よって、上記推定方法は、より容易に、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。
【0197】
また、加工の条件を示す情報に計測されない情報があり、かつ、加工の結果を示す情報に計測されない情報がある場合に、加工の結果を示す情報を適切に推定することができる。よって、上記生成方法によれば、加工の際に計測されない情報がある場合であっても、加工の結果を示す情報を適切に推定するモデルを生成することができる。
【0198】
また、レーザー溶接における加工の結果を示す情報を適切に推定するモデルをより容易に生成することができる。
【0199】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の生成装置及び推定装置を実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0200】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、プロセッサがメモリを用いて実行する推定方法であって、デバイスの加工の実験を行い、前記加工の実験の条件を示す第1種情報および第2種情報と、前記加工の実験の結果を示す第3種情報および第4種情報とを取得し、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第3種情報を出力する第1式であって、前記第3種情報を複数の解として出力する第1式と、前記第1種情報および前記第2種情報を入力として前記第4種情報を出力する第2式とを導出し、前記第1式を用いて、前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第1種情報を出力する第3式を複数導出し、前記デバイスの加工の際に計測された前記第2種情報および前記第3種情報を入力として、前記第2式および複数の前記第3式を用いて、前記デバイスの加工の結果を示す前記第4種情報を出力する推定方法を実行させるプログラムである。
【0201】
以上、一つまたは複数の態様に係る推定装置などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明に係るモデルの生成方法、パラメータの推定方法およびシステムは、説明変数の中に、インラインでは測定データが収集されないパラメータを含む場合であっても、少ない実験回数で目的変数のパラメータ推定が可能となるものであり、モデルの生成方法、パラメータの推定方法およびシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0203】
1、2 システム
2A、11 取得部
2B、12 導出部
2C 推定部
9A、9B 板材
10 生成装置
13 生成部
20 推定装置
21 プロセッサ
22 メモリ
23 入出力IF
24 センサー
25 入力装置
26 表示装置
29 加工装置
31 入力部
32 センサーデータ取得部
33 パラメータ推定部
34 出力部
35 記憶部
36 入力値記憶部
37 センサーデータ記憶部
38 パラメータ推定値記憶部
91 レーザービーム
92 スキャン速度
93 表面溶接幅
94 隙間幅
95 界面溶接幅
101 第1パラメータ
102 第2パラメータ
103 第3パラメータ
104 第4パラメータ
105 実験計画モデル
106 推定モデル
111 第1統計モデル式
112 第2統計モデル式
113 第3統計モデル式