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特開2022-18176光触媒担持印刷物の製造方法および印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018176
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】光触媒担持印刷物の製造方法および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20220120BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220120BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20220120BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20220120BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220120BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20220120BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20220120BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20220120BHJP
   B32B 27/14 20060101ALI20220120BHJP
   B05D 1/12 20060101ALI20220120BHJP
   B41M 7/02 20060101ALI20220120BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20220120BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B01J35/02 J
B01J21/06 M
B05D5/06 101D
B05D7/24 303B
B05D7/24 301M
B05D7/24 301T
B05D5/00 H
B05D3/06 102Z
B32B27/16 101
B32B27/14
B05D1/12
B41M7/02
B41F7/02 414
B41F33/00 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121093
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】510297358
【氏名又は名称】株式会社富士印刷
(71)【出願人】
【識別番号】502098640
【氏名又は名称】東京印刷機材トレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】石川 正人
(72)【発明者】
【氏名】仲尾 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中澤 滋
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
2H113
4D075
4F100
4G169
【Fターム(参考)】
2C034AA12
2C034AA42
2C250EC01
2H113AA01
2H113AA05
2H113BA05
2H113BB02
2H113BB22
2H113FA12
2H113FA43
4D075AA01
4D075AC19
4D075AE03
4D075AE12
4D075AF08
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075CA34
4D075CA37
4D075DA04
4D075DC01
4D075EA21
4D075EA33
4D075EB22
4D075EC02
4F100AA21B
4F100AK25A
4F100AT00
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA13A
4F100DE01B
4F100EH76B
4F100EJ08A
4F100EJ54A
4F100GB07
4F100HB00A
4F100HB31A
4F100JB14A
4F100JL06
4F100JL08B
4F100JL10A
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA04B
4G169FA03
4G169FB24
4G169HA01
4G169HB01
4G169HD10
4G169HE07
(57)【要約】
【課題】光触媒の本来の作用を適切に発揮し得る光触媒担持印刷物を簡易な作業工程によって、効率よく、かつ廉価に製造することが可能な光触媒担持印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】光触媒担持印刷物の製造方法は、紫外線硬化型のインクを用いた印刷層2を、所望の印刷対象物1に設ける印刷工程と、この印刷工程後の印刷層2の未硬化状態時において、印刷層2の表層部に光触媒粒子3を散布または吹き付けて付着させる光触媒付着工程と、この光触媒付着工程後において、印刷層2に紫外線を照射し、印刷層2を硬化させる印刷層の硬化処理工程と、を有している。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型のインクを用いた印刷層を、所望の印刷対象物に設ける印刷工程と、
この印刷工程後の前記印刷層の未硬化状態時において、前記印刷層の表層部に光触媒粒子を散布または吹き付けて付着させる光触媒付着工程と、
この光触媒付着工程後において、前記印刷層に紫外線を照射し、前記印刷層を硬化させる印刷層の硬化処理工程と、
を有していることを特徴とする、光触媒担持印刷物の製造方法。
【請求項2】
紫外線硬化型のインクを用いた印刷層を、所望の印刷対象物に設ける印刷工程を実施可能な印刷工程部と、
この印刷工程部の後段に設けられ、かつ前記印刷層に紫外線を照射可能な紫外線光源と、
を備えている、印刷装置であって、
前記印刷工程部と前記紫外線光源との間に設けられ、かつ前記印刷層の表層部に光触媒粒子を散布または吹き付けて付着させることが可能な光触媒吐出手段を、さらに備えていることを特徴とする、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記光触媒吐出手段から前記印刷層に光触媒粒子が散布または吹き付けられる作業領域を囲む防塵用カバーを、さらに備えており、
前記光触媒吐出手段から吐出された余剰の光触媒粒子が前記作業領域の外部に飛散すること、および前記紫外線光源に向けて進行することの防止が図られている、印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記余剰の光触媒粒子を回収可能な光触媒回収装置を、さらに備えている、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒担持印刷物の製造方法、およびこの製造方法を実施するのに適する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒担持印刷物の具体例として、特許文献1,2に記載のものがある。
これらの文献に記載の光触媒担持印刷物は、印刷対象物(基材)の表面上に、図や文字などを表すデザイン用の印刷層が形成され、かつこの印刷層の表面上には、酸化チタン(TiO2)などの光触媒粒子を担持する光触媒担持層が積層して形成されている。
このような構成によれば、光触媒粒子が光を受け、光励起されることにより、空気の浄化作用や、除菌作用などが得られる。したがって、前記光触媒担持印刷物を、たとえば室内の光が当たる場所に置いておくことにより、室内を浄化する効果、またはこれに類する効果を得ることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地がある。
【0004】
すなわち、前記した光触媒担持印刷物における光触媒担持層は、光触媒粒子を含有する透明インクを用いて形成された印刷層であり、光触媒粒子の多くは、透明インクからなる印刷層の内部に埋没している。これでは、光触媒粒子が外部空気に直接触れる度合いは少なく、光触媒粒子に光が照射された際に、この光触媒粒子による本来の能力を十分に発揮させることができず、その効率は低い。
【0005】
従来においては、特許文献3に記載の抗菌防臭シートもある。この抗菌防臭シートは、抗菌性粒子(光触媒粒子)の一部が塗膜層から露出するように、光触媒粒子を前記塗膜層に担持させている。このような構成によれば、光触媒粒子の一部が外部に露出しているため、前記した特許文献1,2の構成と比較すると、光触媒粒子の本来の能力を効率よく発揮させることが可能である。
ただし、光触媒粒子は、たとえば平均粒子径が数十μm程度、あるいはそれ以下の微細な粒子であるため、この光触媒粒子の一部が外部に露出するように光触媒粒子を塗膜層に担持させることは難しい。特許文献3においては、前記抗菌防臭シートの製造方法として、まず水溶性基体上に、水溶性樹脂層を形成した後に、この水溶性樹脂層上に光触媒粒子を散布してから乾燥させ、かつその後に疎水性塗膜層および支持体を積層した上で、前記水溶性基体および水溶性樹脂層を除去する製造方法を採用している。ところが、このような製造方法は、作業工程数が多く、製造コストが高価である。また、所望の図柄や文字を表示させるといったことも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-178459号公報
【特許文献2】特開2002-179970号公報
【特許文献3】特開平11-192673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、光触媒の本来の作用を適切に発揮し得る光触媒担持印刷物を簡易な作業工程によって、効率よく、かつ廉価に
製造することが可能な光触媒担持印刷物の製造方法、およびこの製造方法の実施に適する印刷装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される光触媒担持印刷物の製造方法は、紫外線硬化型のインクを用いた印刷層を、所望の印刷対象物に設ける印刷工程と、この印刷工程後の前記印刷層の未硬化状態時において、前記印刷層の表層部に光触媒粒子を散布または吹き付けて付着させる光触媒付着工程と、この光触媒付着工程後において、前記印刷層に紫外線を照射し、前記印刷層を硬化させる印刷層の硬化処理工程と、を有していることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、前記した製造方法によれば、紫外線照射によって硬化した印刷層の表層部に、光触媒粒子が付着した構成の光触媒担持印刷物が製造されるが、前記光触媒粒子は、前記印刷層が未硬化状態時において、前記印刷層の表層部に散布または吹き付けられて付着されたものである。このため、光触媒粒子は、その全体が印刷層に埋没せず、その一部が印刷層の外部に露出したものとなり、この光触媒粒子に光が照射された際に、空気の浄化作用や除菌作用などの光触媒本来の作用を効果的に発揮させ得るものとなる。その一方において、前記した光触媒担持印刷物の製造に際し、全体の作業工程数は少なく、全体の製造作業を簡易にすることができるため、光触媒担持印刷物の生産性を高め、製造コストを廉価にすることもできる。
【0011】
本発明の第2の側面により提供される印刷装置は、紫外線硬化型のインクを用いた印刷層を、所望の印刷対象物に設ける印刷工程を実施可能な印刷工程部と、この印刷工程部の後段に設けられ、かつ前記印刷層に紫外線を照射可能な紫外線光源と、を備えている、印刷装置であって、前記印刷工程部と前記紫外線光源との間に設けられ、かつ前記印刷層の表層部に光触媒粒子を散布または吹き付けて付着させることが可能な光触媒吐出手段を、さらに備えていることを特徴としている。
【0012】
このような構成の印刷装置は、本発明の第1の側面により提供される光触媒担持印刷物の製造方法を実施し、本発明が意図する光触媒担持印刷物を適切に製造するのに利用可能であり、本発明に係る光触媒担持印刷物の製造方法について述べたのと同様な効果が得られる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記光触媒吐出手段から前記印刷層に光触媒粒子が散布または吹き付けられる作業領域を囲む防塵用カバーを、さらに備えており、前記光触媒吐出手段から吐出された余剰の光触媒粒子が前記作業領域の外部に飛散すること、および前記紫外線光源に向けて進行することの防止が図られている。
【0014】
このような構成によれば、光触媒吐出手段から吐出された余剰の光触媒粒子に起因して、印刷装置の設置箇所およびその周辺の作業環境が悪化しないようにすることが可能である。また、紫外線光源に余剰の光触媒粒子が付着することに起因して、紫外線光源の使用寿命が短くなる不具合や、紫外線光源から発せられる紫外線が光触媒粒子によって遮られる不具合なども生じないようにすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記余剰の光触媒粒子を回収可能な光触媒回収装置を、さらに備えている。
【0016】
このような構成によれば、余剰の光触媒粒子を回収することができるため、たとえは回収した光触媒粒子を再利用し、省資源化を図るといったことが可能である。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る光触媒担持印刷物の製造方法の一連の概略の工程例を示す説明図である。
図2】(a),(b)は、図1の印刷工程の例を模式的に示す断面図である。
図3】(a),(b)は、図1の光触媒付着工程の例を模式的に示す断面図である。
図4図1の印刷層の硬化処理工程の例を模式的に示す断面図である。
図5図1の製造方法により製造された光触媒担持印刷物の例を模式的に示す断面図である。
図6】(a)は、図1の製造方法の実施に用いられる印刷装置の一例を示す概略説明図であり、(b)は、(a)の要部拡大説明図である。
図7図6に示す印刷装置における光触媒スプレー装置(光触媒吐出手段)の例を示す概略説明図である。
図8】本発明の製造方法により製造される光触媒担持印刷物の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
〔光触媒担持印刷物の製造方法の概要〕
本発明に係る光触媒担持印刷物の製造方法においては、たとえば図1に示す印刷工程S1、光触媒付着工程S2、および印刷層の硬化処理工程S3が実施される。
【0021】
ここで、印刷工程S1は、図2に示すように、所望の印刷対象物1に、紫外線硬化型のインクを用いて印刷層2を設ける工程である。印刷層2は、本来的には、所望の図柄などの模様や文字を表すものであるが、いわゆる単一色のベタ塗状態のものや、全体または一部が透明とされたものも含む。印刷対象物1は、たとえば後述する印刷用紙1であるが、これに限定されない。
【0022】
光触媒付着工程S2は、図3に示すように、印刷層2の表層部に、光触媒粒子3を散布または吹き付けて付着させる工程である。印刷層2は、未だ硬化しておらず、ウェットの状態にある。光触媒粒子3の多くは、印刷層2の表層部に露出した状態で付着することとなり、印刷層2の内部の奥深い位置に埋没することはない。
【0023】
光触媒粒子3の吹き付け手段として、複数のスプレーノズル40(本発明でいう光触媒吐出手段の一例に相当)が用いられており、このスプレーノズル40は、たとえば図7を参照して後述する光触媒スプレー装置4に具備されたものである。
光触媒粒子3は、たとえば酸化チタン(TiO2)、またはその化合物であり、紫外線や可視光線を受け、光励起されると、たとえばシックハウスの原因とされる有害物質(VOC)を分解して空気を浄化したり、臭いの分解による防臭作用を生じ、さらには除菌作用などをも発揮する。光触媒粒子3の平均粒径は、たとえば数十μm程度、あるいはそれ以下であるが、これに限定されない。
なお、印刷層2の表層部に対する光触媒粒子3の付着量が過剰であると、印刷層2によって表されている図柄などが多くの光触媒粒子3によって覆われて不鮮明となり、印刷の
質が低下する。このため、そのような印刷の質の低下を招かないように光触媒粒子3の付着量は調整される。
【0024】
印刷層の硬化処理工程S3は、図4に示すように、紫外線光源5から印刷層2に向けて紫外線を照射し、紫外線硬化型のインクからなる印刷層2を硬化させる処理である。紫外線光源5は、印刷層2を硬化させるのに必要な波長域の紫外線を発するものであればよく、ランプ光源/LEDのいずれでもよく、またライン型、面型の種類も問わない(スポット型を複数用いてもよい)。
【0025】
前記した印刷層の硬化処理工程S3を実行し、印刷層2を硬化させると、図5に示すように、印刷層2の表層部への光触媒粒子3の付着状態が確実化された光触媒担持印刷物Aが製造される。光触媒粒子3は、その一部が印刷層2内に埋まっているものの、それ以外の部分は外部に露出しており、その露出面積a1は比較的大きい。
したがって、光触媒担持印刷物Aを屋内などに展示または設置し、紫外線や可視光などの光が光触媒粒子3に照射された場合に、この光触媒粒子3の本来の機能を、効率よく適切に発揮させることが可能である。
【0026】
〔印刷装置の具体例〕
図6に示す印刷装置Pは、前記した光触媒担持印刷物の製造方法を実施可能に構成されたものである。
この印刷装置Pは、オフセット印刷装置(枚葉タイプ)であり、給紙部Sa、印刷工程部Sb、および排紙部Scを備えている。排紙部Scには、紫外線光源5、光触媒スプレー装置4、および防塵用カバー6が設けられている。また、これに関連して、光触媒回収装置7もさらに備えている。
【0027】
給紙部Sa、印刷工程部Sb、排紙部Sc、および紫外線光源5の基本的な構成は、従来既知の紫外線硬化型インク適用型のオフセット印刷装置と同様であり、これらの部位については、以下簡単に説明する。
まず、給紙部Saは、枚葉タイプの複数枚の印刷用紙1(印刷対象物の一例)を上下に積層して所定のストック箇所Naにセッティング可能であり、かつストック箇所Naから印刷用紙1を1枚ずつ分離させて、印刷工程部Sbの前段にフィーダ部80を介して供給可能である。
【0028】
印刷工程部Sbは、印刷用紙1を前段から後段側に順次送り渡していくことが可能な複数の圧胴81、これら複数の圧胴81に対応して設けられたブランケット胴82、および版胴83を備えている。版胴83には、不図示のインク塗布部からのインク塗布、および給水部からの給水が可能であり、印刷用紙1が複数の圧胴81間を通過する過程において、その表面に印刷がなされる。印刷装置Pは、たとえば4色対応型であり、版胴83として、4種類の版胴83(83a~83d)が具備されているが、本発明はこれに限定されないことは勿論である。印刷に用いられるインクは、紫外線硬化型である。
【0029】
排紙部Scは、印刷を完了した印刷用紙1を、所定のストック位置Nbまで搬送して上下に積層していくことが可能な部位であり、無端状のチェーン85、およびこのチェーン85に取り付けられた複数のグリッパ87(挟持部材)を備えている。チェーン85は、一対のスプロケット86a,86bの両者間に掛け回されて、一定の経路で循環移動可能である。各グリッパ87は、印刷用紙1の先端部を挟んで保持可能な開閉部材であり、最後段の版胴83dを通過した印刷用紙1を受け取った後には、この印刷用紙1を前記したストック位置Nbの上方まで搬送してから、このストック位置Nb上に落下させる。本実施形態において、ストック位置Nbにストックされる対象物は、光触媒担持印刷物Aである。
【0030】
紫外線光源5は、排紙部Scを搬送される印刷用紙1上の印刷層2に紫外線を照射可能に設けられている。紫外線光源5の構成は、図4を参照して述べたとおりである。
【0031】
光触媒スプレー装置4は、たとえば油性インクを用いるタイプのオフセット印刷装置においてよく用いられるパウダスプレー装置と同様な構成とされている。具体的には、この光触媒スプレー装置4は、たとえば図7に示すように、光触媒粒子3を収容する容器41、ホッパ42、ブロア43、および複数のスプレーノズル40を備えている。図7には、スプレーノズル40が1つのみ示されているが、実際には図3に示したように、複数のスプレーノズル40が印刷用紙1の搬送方向と交差する方向に適当な間隔を隔てて並んでいる。
ホッパ42は、光触媒粒子3を貯留するためのものであり、このホッパ42内の光触媒粒子3は、流量調整バルブV1を経て容器41内に落下供給される。ブロア43から吐出されたエアの一部は、第1の配管路44aを介して容器41内に流入する結果、この容器41内の光触媒粒子3は、エアとともに第2の配管路44bを通過してスプレーノズル40に到達する。このことにより、スプレーノズル40から印刷層2の表層部に向けて光触媒粒子3が噴出(吐出)する。スプレーノズル40には、誘引用のエアが供給される第3の配管路44cも接続されている。
【0032】
スプレーノズル40は、図6に示すように、排紙部Scのうち、紫外線光源5よりも前段の位置に設けられており、印刷層2が紫外線照射によって硬化する前に、印刷層2に光触媒粒子3を吹き付けて付着させることが可能とされている。
好ましくは、スプレーノズル40からの光触媒粒子3の噴出量(単位時間当たりの噴出量)は、増減変更可能とされる。また、光触媒スプレー装置4には、印刷用紙1の位置検出を行なうためのセンサ(不図示)が付属して設けられており、スプレーノズル40からの光触媒粒子3の噴出は、印刷用紙1がスプレーノズル40の正面に位置する期間のみになされ、これ以外の期間においては、光触媒粒子3は噴出されないように制御される。このことにより、光触媒粒子3の噴出ロスを少なくすることができる。
【0033】
防塵用カバー6は、スプレーノズル40から噴出した光触媒粒子3のうち、印刷層2に付着しない余剰の光触媒粒子3が、スプレーノズル40の周辺部に広がることを防止し、作業環境が悪化することを防止するための部材である。この防塵用カバー6は、スプレーノズル40から光触媒粒子3が吹き付けられる印刷用紙1の周囲を囲み、光触媒粒子3の外部への漏出が少なくなるように、その形状はたとえば略ボックス状とされる。
【0034】
光触媒回収装置7は、防塵用カバー6内に封じ込められた余剰の光触媒粒子3を回収する装置であって、たとえばサイクロン方式が採用されている。より具体的には、この光触媒回収装置7は、防塵用カバー6に設けられている吸気口60に配管部70を介して接続された容器71、およびこの容器71に接続されたブロア72を備えている。余剰の光触媒粒子3は、ブロア72の吸引負圧によって容器71内に流入するが、その際には、容器71内においてエアの旋回流が発生することにより、光触媒粒子3は容器71内の下部に落下し、捕集されるように構成されている。この光触媒回収装置7を利用して回収された光触媒粒子3は、再利用可能である。
【0035】
次に、前記した印刷装置Pの作用について説明する。
【0036】
まず、給紙部Saから印刷工程部Sbに送られた印刷用紙1には、オフセット印刷方式によって印刷層2が設けられる(図1の印刷工程S1)。印刷層2は、たとえば4色刷りであるが、紫外線硬化型のインクを用いたものである。
次いで、前記印刷層2が形成された印刷用紙1は、排紙部Scに送られ、グリッパ87
によって把持されて搬送される。この搬送時において、印刷層2に対して紫外線照射がなされる前に、スプレーノズル40から印刷層2に対して光触媒粒子3が吹き付けられ、この印刷層2の表層部に光触媒粒子3が付着した状態とされる(図1の光触媒付着工程S2)。
その後、前記した印刷用紙1がさらに後段に搬送されると、紫外線光源5から印刷層2への紫外線照射がなされ、印刷層2の硬化(定着)処理がなされる(図1の印刷層の硬化処理工程S3)。このことに伴い、印刷層2の表層部における光触媒粒子3の保持状態の安定化が図られる。
【0037】
前記した一連の工程によれば、図5に示したような光触媒担持印刷物Aが得られる。この光触媒担持印刷物Aは、既述したように、光触媒粒子3の一部は、印刷層2内に進入しているものの、他の一部は印刷層2の外部に露出しており、光を受けた際に光触媒本来の機能を効率よく発揮する。また、印刷層2は、所望の図柄や文字などのデザインを表示する。したがって、光触媒担持印刷物Aは、たとえば家屋の壁や天井を覆う壁紙として利用し得る他、ポスタや絵画などのインテリアとして、あるいは避難所やオフィスなどで使用される仕切り壁の表面材などとして利用し、光触媒担持印刷物Aの設置箇所周辺の空気の浄化や除菌などの効果が得られるものとすることが可能である。
【0038】
本発明は、図8に示すような光触媒担持印刷物Aaを製造する場合にも適用することができる。
光触媒担持印刷物Aaは、印刷用紙1上に設けられる印刷層2として、不透明な印刷層2aと、透明な印刷層2bとを有している。透明な印刷層2bは、たとえばニスからなり、不透明な印刷層2a上に重なって、この印刷層2の全体を覆っている。本発明でいうインクは、透明・不透明を問わず、ニスは、本来的には、印刷層2の保護や光沢感の向上などを目的として用いられるが、本発明は、このようなニスもインクに含む。光触媒粒子3は、透明な印刷層2bの表層部に付着している。
【0039】
前記した光触媒担持印刷物Aaにおいては、不透明な印刷層2aの面積が小さい場合であっても、透明な印刷層2bの面積を大きくし、その表層部に多くの光触媒粒子3を付着させることが可能である。したがって、不透明な印刷層2aの面積の大小を問わず、光触媒粒子3の全体量をある程度以上のボリュームとし、光触媒作用を実効性あるものとすることができる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る光触媒担持印刷物の製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に変更自在である。同様に、本発明に係る印刷装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0041】
本発明でいう「印刷工程」は、オフセット印刷に限らない。たとえば、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの他の印刷方式にすることも可能であり、その種別は限定されない。また、本発明は、インクジェットプリンタを用いたインクジェット印刷も含む。
「印刷対象物」は、印刷用紙などの紙製シートに限定されず、たとえば樹脂製などのシート、あるいは複数種類のシートが重ねられたラミネートシートなどであってもよい。また、枚葉(単票状)・長尺状のいずれであるか、および具体的なサイズなども問わない。
したがって、本発明に係る印刷装置も、オフセット印刷装置に限定されない。
【0042】
本発明でいう「光触媒付着工程」は、エアを利用したスプレー方式で光触媒粒子を印刷層に向けて吹き付けることに代えて、たとえば容器に収容されている光触媒粒子を、容器の底部開口部から適量ずつ自然落下させるなどして、印刷層上に散布させる手法を採用し
てもよい。
本発明でいう「印刷層の硬化処理工程」は、紫外線硬化型のインクを用いた印刷層に紫外線を照射し、印刷層を硬化させればよく、既述したとおり、紫外線光源の種類などは限定されない。
【0043】
光触媒としては、酸化チタンまたは酸化チタンを主成分とするものが代表例として挙げられるが、これに限らない。光が照射されることにより活性化して、酸化還元反応などを生じ、空気の浄化作用あるいは除菌作用などを生じる物質であればよい。酸化チタン以外として、たとえば酸化亜鉛なども挙げられる。
本発明に係る光触媒担持印刷物の製造方法によって製造された「光触媒担持印刷物」の具体的な用途なども限定されない。
【符号の説明】
【0044】
A,Aa 光触媒担持印刷物
P 印刷装置
S1 印刷工程
S2 光触媒付着工程
S3 印刷層の硬化処理工程
Sa 給紙部
Sb 印刷工程部
Sc 排紙部
1 印刷用紙(印刷対象物)
2 印刷層
3 光触媒粒子
40 スプレーノズル(光触媒吐出手段)
5 紫外線光源
6 防塵用カバー
7 光触媒回収装置
図1
図2
図3
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図8