(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181791
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】多孔質ガラス体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20221201BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C03B8/04 A
C03B37/018 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088954
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】森 貴宏
【テーマコード(参考)】
4G014
4G021
【Fターム(参考)】
4G014AH14
4G021EA01
4G021EB14
(57)【要約】
【課題】点火機構の存在によって多孔質ガラス体の品質が低下することを抑制可能な多孔質ガラス体の製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質ガラス体の製造方法は、出発部材の長手方向において間隔を空けて配置された第1バーナおよび第2バーナを用い、前記第1バーナから噴出する水素ガスに点火し、前記第1バーナから噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を前記出発部材に堆積させ、前記第1バーナの火炎を、前記第2バーナから噴出する水素ガスに引火させることで前記第2バーナに点火し、前記第2バーナから噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を前記出発部材に堆積させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発部材の長手方向において間隔を空けて配置された第1バーナおよび第2バーナを用い、
前記第1バーナから噴出する水素ガスに点火し、前記第1バーナから噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を前記出発部材に堆積させ、
前記第1バーナの火炎を、前記第2バーナから噴出する水素ガスに引火させることで前記第2バーナに点火し、前記第2バーナから噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を前記出発部材に堆積させる、多孔質ガラス体の製造方法。
【請求項2】
前記第2バーナから噴出する水素ガスの流速および水素ガスの火炎伝搬速度によって定まる、前記第2バーナの燃焼開始点における水素濃度が4~8%である、請求項1に記載の多孔質ガラス体の製造方法。
【請求項3】
前記第1バーナおよび前記第2バーナは、鉛直方向において間隔を空けて配置され、
鉛直方向における前記第1バーナの噴出口と前記第2バーナの噴出口との間の間隔が0.4m以内である、請求項1または2に記載の多孔質ガラス体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ガラス体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のバーナを備えた多孔質ガラス体の製造装置が開示されている。各バーナから噴出した水素ガスを燃焼させ、この火炎によってガラス原料ガスを反応させることで、ガラス微粒子が生成される。ガラス微粒子を出発部材に堆積することで、光ファイバ等の母材の元となる、多孔質ガラス体が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の多孔質ガラス体の製造装置においては、バーナごとに点火機構を設ける場合が多かった。すなわち、バーナと同じ数の点火機構が、反応室内に設けられていた。その結果、反応室内の構造が複雑になり、例えば点火機構の存在によって反応室内における各種気体の流れが乱れ、多孔質ガラス体の品質を低下させる場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、点火機構の存在によって多孔質ガラス体の品質が低下することを抑制可能な多孔質ガラス体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る多孔質ガラス体の製造方法は、出発部材の長手方向において間隔を空けて配置された第1バーナおよび第2バーナを用い、前記第1バーナから噴出する水素ガスに点火し、前記第1バーナから噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を前記出発部材に堆積させ、前記第1バーナの火炎を、前記第2バーナから噴出する水素ガスに引火させることで前記第2バーナに点火し、前記第2バーナから噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を前記出発部材に堆積させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、点火機構の存在によって多孔質ガラス体の品質が低下することを抑制可能な多孔質ガラス体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の製造方法に用いる製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の多孔質ガラス体の製造方法について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、多孔質ガラス体の製造装置(以下、単に製造装置10という)は、反応室9と、複数のバーナ3~5と、支持部2と、を備えている。反応室9内には、出発部材1が収容されている。出発部材1は、製造装置10により製造される多孔質ガラス体の中心部となる部材である。出発部材1は石英ガラスなどにより形成されている。出発部材1は、例えば丸棒状である。出発部材1の少なくとも一方の端部は、支持部2によって回転可能に把持されている。反応室9には、不要なガスを排出するための2つの排気口8が設けられている。排気口8の数および位置は、適宜変更可能である。
【0010】
バーナ3~5には、ガラス原料ガス、酸素ガス、水素ガス、不活性ガス等が供給される。各バーナ3~5は、例えば多重管構造である。バーナ3~5の噴出口近傍には、各ガスが単独あるいは混合された状態で噴出する複数のポートが設けられている。ガラス原料ガスとしては、例えばSiCl4やGeCl4や有機シリコン化合物などを採用できる。有機シリコン化合物の具体例としてはアルキルシクロシロキサンが挙げられる。水素ガスが燃焼することで、バーナ3~5の噴出口の近傍には火炎(酸水素火炎)が生じる。この火炎中でガラス原料ガスを反応させることで、ガラス微粒子が生成される。このガラス微粒子を、回転する出発部材1の表面に堆積させることで、ガラス微粒子の堆積層(スート)が形成される。これにより、多孔質ガラス体が得られる。
【0011】
バーナ3~5に供給される不活性ガスとしては、例えばアルゴンや窒素等を採用可能である。水素ガス等とともに、不活性ガスをバーナ3~5に供給することで、各噴出口から噴出されるガスの流速を上げることができる。これにより、火炎の発生位置(燃焼開始点)を各噴出口から遠ざけて、噴出口近傍が赤熱し破損することを抑制できる。
【0012】
本実施形態では、気相軸付法(VAD法:Vapor phase Axial Deposition Method)によって光ファイバ母材を得る場合について説明する。ただし、VAD法以外の方法(例えば外付け法(OVD法:Outside Vapor Deposition Method))に本実施形態を適用してもよい。
多孔質ガラス体に焼結処理を施すことで、光ファイバ母材が得られる。焼結処理に加えて、必要に応じて光ファイバ母材に脱水処理やドープ処理を施してもよい。
また、光ファイバ母材を線引きすることで、光ファイバを得ることができる。
【0013】
(方向定義)
本実施形態では、出発部材1の長手方向を、単に「長手方向」という場合がある。図面では、鉛直方向をZ軸によって表し、鉛直方向における上方を+Z側、下方を-Z側とする。本実施形態では、長手方向が鉛直方向と一致している。ただし、長手方向は鉛直方向と一致していなくてもよい。
【0014】
本実施形態では、出発部材1の上端部は支持部2によって把持されており、出発部材1の下端部は反応室9内に位置している。支持部2は、例えば、出発部材1を把持するチャックと、チャックを上下方向に移動させる移動機構と、を有している。支持部2は、出発部材1を回転させながら上方に移動させることが可能である。
【0015】
バーナ3は、出発部材1の下端部にスート6を堆積させることが可能な位置に配置されている。バーナ3は、製造装置10が有する複数のバーナ3~5のなかで最も下方に位置している。また、バーナ3は、鉛直方向および水平方向の双方に対して傾いている。ただし、バーナ3の位置や姿勢は適宜変更してもよい。本実施形態におけるバーナ3はコア用バーナであり、多孔質ガラス体のうち、コアとなる部分を形成する役割を担っている。
【0016】
バーナ4、5は、出発部材1の周囲にスートを堆積させることが可能な位置に配置されている。また、出発部材1が上方に移動することで、バーナ3が形成したコアとなるスート6の周囲に、バーナ4、5がスートを堆積させることができる。本実施形態におけるバーナ4、5はクラッド用バーナあり、多孔質ガラス体のうち、クラッドとなる部分を形成する役割を担っている。バーナ4はバーナ3よりも上方に配置され、バーナ5はバーナ4よりもさらに上方に配置されている。言い換えると、バーナ3~5は、出発部材1の長手方向に沿って、間隔を空けて配置されている。バーナ4、5は、出発部材1の長手方向に略直交する方向(すなわち、略水平方向)に沿って延びている。ただし、バーナ4、5の位置や姿勢は適宜変更してもよい。バーナ4を第1クラッド用バーナともいい、バーナ5を第2クラッド用バーナともいう。
【0017】
ここで、各バーナ3~5の燃焼開始点における水素ガス濃度が8%を超えると、水素ガスに引火した際の衝撃によって、出発部材1に変形や割れなどが生じやすくなる。したがって、バーナ3~5に点火する際には、各バーナ3~5の燃焼開始点における水素ガス濃度が8%以下となるように、水素ガスの供給量等を調整することが好ましい。「燃焼開始点」とは、各バーナ3~5の噴出口近傍の点であって、水素ガスの燃焼により生じる火炎のうち最も噴出口に近い点である。燃焼開始点は、バーナ3~5ごとに定まる。より詳しくは、各バーナ3~5の燃焼開始点は、それぞれの噴出口から噴出する水素ガスの流速および水素ガスの火炎伝搬速度によって定まる。水素ガスの流速が大きいほど、燃焼開始点は噴出口から遠ざかる。バーナ3~5の故障を抑制するため、通常は、燃焼開始点がバーナ3~5の各噴出口よりも出発部材1に近い位置となるように、水素ガスの流速が設定される。
【0018】
出発部材1の長手方向(本実施形態では鉛直方向)における、各バーナ3~5の噴出口同士の間の間隔は、0.01m以上0.4m以下であることが望ましい。本願発明者らが鋭意検討したところ、長手方向における各バーナ3~5間の間隔を0.4m以下とすることで、各バーナ3~5の燃焼開始点における水素ガス濃度を8%以下としつつ、バーナ間で引火を生じさせることが可能であった。つまり、バーナ3の火炎をバーナ4に引火させられるため、バーナ4のための点火機構が不要となる。同様に、バーナ4の火炎をバーナ5に引火させられるため、バーナ5のための点火機構が不要となる。
【0019】
このように、バーナ3~5間で引火を生じさせることが可能であれば、最初に点火されるバーナ3のための点火機構を設けておけば、バーナ4、5のための点火機構を設けなくてもよい。そこで本実施形態では、バーナ3にのみ点火機構(不図示)を設けており、バーナ4、5には点火機構を設けていない。これにより、反応室9内の構造をシンプルにすることができる。バーナ3に設ける点火機構としては、例えばスパークプラグやグロープラグを採用可能であるが、その他の方式の点火機構を採用してもよい。
【0020】
製造装置10は、各バーナ3~5に供給される各ガスの流量、供給および停止のタイミング、および点火機構の作動タイミング等を制御する制御部(不図示)を備える。制御部としては、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路や、NC(Numerical Control)装置などを用いることができる。制御部としてNC装置などを用いた場合、機械学習を用いてもよいし、用いなくてもよい。
【0021】
次に、製造装置10を用いた多孔質ガラス体の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、各ガスの供給および停止のタイミング、各ガスの流量、および点火装置の作動タイミング等は、製造装置10の制御部が制御してもよい。
【0022】
本実施形態では、ガラス微粒子を出発部材1に堆積させることに先立って、出発部材1の予備加熱を行う(予備加熱工程)。予備加熱を行うことで、多孔質ガラス体の割れやスート脱落の発生を抑制することができる。予備加熱は、バーナ3~5にガラス原料ガスを供給しない状態で水素を燃焼させることで、実行可能である。ガラス微粒子の堆積を開始する直前まで、予備加熱を行うことで、加熱された出発部材1の表面温度が低下することを抑制できる。したがって、予備加熱のために水素ガスを燃焼させ、所定の時間が経過した後、そのまま各バーナ3~5へのガラス原料ガスの供給を開始するとよい。
【0023】
予備加熱における、出発部材1の表面の目標温度は、出発部材1の当該部位におけるガラス微粒子の堆積温度より100℃以上高く、かつ1500℃以下とすることが望ましい。製造装置10は、出発部材1の表面温度を測定するための非接触温度計を備えていてもよい。さらに、非接触温度計による測定結果が制御部に入力され、制御部は当該入力に基づいて各バーナ3~5へのガラス原料ガスの供給開始タイミングを制御するように構成してもよい。
【0024】
バーナ3に点火する際は、水素ガスおよび不活性ガスをバーナ3に供給し、点火装置を作動させる。点火時のバーナ3の燃焼開始点における水素ガス濃度は、4%以上8%以下が望ましい。水素ガス濃度が4%より小さいと、点火装置を作動させても点火されない場合がある。水素ガス濃度が8%を超えると、先述の通り、出発部材1に変形や割れ等が生じやすくなる。本願発明者らが検討したところ、点火装置の作動タイミングを、バーナ3への水素ガス等の供給開始から10秒以下とすることで、点火時におけるバーナ3の燃焼開始点における水素濃度を8%以下にすることができた。
【0025】
バーナ3の点火が完了した後、バーナ4、5は未点火のまま、バーナ3に酸素ガスを供給して、出発部材1の下端部aを予備加熱する。下端部aの表面温度が目標値まで上昇したら、バーナ3へのガラス原料ガスの供給を開始し、下端部aへのガラス微粒子の堆積を開始する。バーナ3へのガラス原料ガスの供給開始と近いタイミングで、バーナ4に水素ガスおよび不活性ガスを供給する。これにより、バーナ3の火炎がバーナ4に引火し、バーナ4が点火する。バーナ4の点火が完了した後、バーナ4に酸素ガスを供給して、出発部材1の外周部bを予備加熱する。外周部bを予備加熱している間も、バーナ3を定常通り作動させ、下端部aへのガラス微粒子の堆積を続ける。この時点では、バーナ5は未点火の状態でもよい。なお、出発部材1のうち、バーナ4と対向する部分が外周部bであり、バーナ5と対向する部分が外周部cである。
【0026】
バーナ4による予備加熱によって、出発部材1の外周部bの表面温度が目標値まで上昇したら、バーナ4へのガラス原料ガスの供給を開始し、外周部bへのガラス微粒子の堆積を開始する。バーナ4へのガラス原料ガスの供給開始と近いタイミングで、バーナ5に水素ガスおよび不活性ガスを供給する。これにより、バーナ4の火炎がバーナ5に引火し、バーナ5が点火する。バーナ5の点火が完了した後、バーナ5に酸素ガスを供給して、出発部材1の外周部cを予備加熱する。外周部cを予備加熱している間も、バーナ4を定常通り作動させ、外周部bへのガラス微粒子の堆積を続ける。
【0027】
バーナ5による予備加熱により、出発部材1の外周部cの表面温度が目標値まで上昇したら、バーナ5へのガラス原料ガスの供給を開始し、外周部cへのガラス微粒子の堆積を開始する。これにより、3本のバーナ3~5によるガラス微粒子(スート)の堆積が開始される。最終的に所望の形状の多孔質ガラス体が得られるように、出発部材1を上方に移動させて、バーナ3が堆積させたスートの上に、さらにバーナ4、5によってスートを堆積させてもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の多孔質ガラス体の製造方法は、出発部材1の長手方向において間隔を空けて配置されたバーナ3(第1バーナ)およびバーナ4(第2バーナ)を用いる。そして、バーナ3から噴出する水素ガスに点火し、バーナ3から噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を出発部材1に堆積させ、バーナ3の火炎をバーナ4から噴出する水素ガスに引火させることでバーナ4に点火し、バーナ4から噴出するガラス原料ガスを反応させることでガラス微粒子を出発部材1に堆積させる。このような製造方法によれば、バーナ4に点火機構を設ける必要が無くなる。したがって、反応室9内に配置される点火機構の数を減らし、反応室9内の構造をシンプルにすることができる。これにより、点火機構の存在によって反応室9内における各種気体の流れが乱れて多孔質ガラス体の品質が低下することを抑制できる。また、点火機構を少なくすることで、製造装置10のコストダウンを図ることもできる。
【0029】
また、バーナ4から噴出する水素ガスの流速および水素ガスの火炎伝搬速度によって定まる、バーナ4の燃焼開始点における水素濃度が4~8%の範囲内であってもよい。燃焼開始点における水素濃度が4%以上であることで、バーナ3の火炎をバーナ4により確実に引火させることが可能となる。また、燃焼開始点における水素濃度が8%以下であることで、点火時の衝撃で出発部材1に変形や割れが生じるのを抑制できる。
【0030】
また、バーナ3およびバーナ4は、鉛直方向において間隔を空けて配置され、鉛直方向におけるバーナ3の噴出口とバーナ4の噴出口との間の間隔が0.4m以下であってもよい。この場合、バーナ4の燃焼開始点における水素濃度を8%以下としつつ、バーナ3の火炎をバーナ4に引火させることができる。
【0031】
以下、具体的な試験例を用いて、上記実施形態を説明する。
【0032】
(試験例1)
図1に示すような製造装置10を用意した。バーナ3およびバーナ4の噴出口同士の間の鉛直方向における距離は、0.2mとした。バーナ4およびバーナ5の噴出口同士の間の鉛直方向における距離は、0.1mとした。バーナ4、5の噴出口と出発部材1との間の距離(水平方向の間隔)は、0.1mとした。点火機構を作動させてバーナ3を点火した後、バーナ4の燃焼開始点における水素ガス濃度が2%となるように、バーナ4への水素ガスの供給を開始した。この条件下で、バーナ4が自動的に点火されるか(すなわち、バーナ3の火炎がバーナ4に引火するか)を、10回試験した。その結果、バーナ4への水素ガスの供給を開始してから、10秒以内にバーナ4が点火したのは、10回の試験中で2回であった。バーナ4に引火する際の衝撃による、バーナ4や出発部材1の変形、破損は認められなかった。
【0033】
(試験例2)
実施例1と同様の製造装置10を用意した。点火機構を作動させてバーナ3を点火した後、バーナ4の燃焼開始点における水素ガス濃度が3%となるように、バーナ4への水素ガスの供給を開始した。この条件下で、バーナ4が自動的に点火されるか(すなわち、バーナ3の火炎がバーナ4に引火するか)を10回試験した。その結果、バーナ4への水素ガスの供給を開始してから、10秒以内にバーナ4が点火したのは、10回の試験中で8回であった。バーナ4に引火する際の衝撃による、バーナ4や出発部材1の変形、破損は認められなかった。
【0034】
(試験例3)
実施例1と同様の製造装置10を用意した。点火機構を作動させてバーナ3を点火した後、バーナ4の燃焼開始点における水素ガス濃度が4%となるように、バーナ4への水素ガスの供給を開始した。この条件下で、バーナ4が自動的に点火されるか(すなわち、バーナ3の火炎がバーナ4に引火するか)を10回試験した。その結果、10回の試験全てにおいて、バーナ4への水素ガスの供給を開始してから、10秒以内にバーナ4が点火した。バーナ4に引火する際の衝撃による、バーナ4や出発部材1の変形、破損は認められなかった。
【0035】
上記の通り、バーナ4の燃焼開始点における水素ガス濃度が4%以上であれば、バーナ3の火炎をバーナ4に引火させられることが確認された。
【0036】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
例えば、前記実施形態では、出発部材1の長手方向が鉛直方向と一致していた。しかしながら、出発部材1の長手方向は鉛直方向と一致していなくてもよく、例えば水平方向に一致していてもよい。さらに、出発部材1の長手方向における両端部を支持部2によって支持してもよい。
なお、出発部材1の長手方向が鉛直方向と一致している方が、重力の影響によって、バーナ3からバーナ4へと熱や火炎が伝わりやすく引火しやすい。出発部材1の長手方向が水平方向と一致している場合、例えば反応室9内の気流をバーナ3からバーナ4へと向かうように調整し、バーナ3からバーナ4へと引火しやすくすることができる。反応室9内の気流は、排気口8の位置や、反応室9に雰囲気ガスを供給する給気口の位置等によって調整できる。
【0038】
また、前記実施形態では、各バーナ3~5によって予備加熱を開始するタイミングが同一ではなかった。つまり、バーナ3による予備加熱を開始し、所定時間が経過した後でバーナ4による予備加熱を開始した。しかしながら、バーナ3~5による予備加熱を同時に開始してもよい。
【0039】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…出発部材 3…バーナ(第1バーナ) 4…バーナ(第2バーナ)