(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181799
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】シリンダヘッド構造
(51)【国際特許分類】
F02M 26/41 20160101AFI20221201BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20221201BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20221201BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20221201BHJP
F01P 3/14 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F02M26/41 321
F02F1/36 A
F02F1/42 G
F02F1/42 Z
F02M26/41 311
F01P3/02 G
F01P3/02 F
F01P3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088964
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄大
(72)【発明者】
【氏名】冨永 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 喬
(72)【発明者】
【氏名】井村 嵐
【テーマコード(参考)】
3G024
3G062
【Fターム(参考)】
3G024AA08
3G024GA01
3G062AA03
3G062ED08
3G062ED13
(57)【要約】
【課題】シリンダヘッドにEGR通路を形成する場合に、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスを効率良く冷却する。
【解決手段】シリンダヘッド本体13内に形成されたヘッド内EGR通路70と、気筒列方向の端部に冷却水導出部21が設けられたウォータジャケット20と、シリンダヘッド本体13における冷却水導出部21が設けられた壁部である出口側壁部に接続されるウォータアウトレット30と、を備え、出口側壁部には、冷却水導出部21に対して、隔壁部を介して相隣接するように設けられた凹部が形成され、ウォータアウトレット30は、冷却水の一部をウォータジャケット20から凹部に導く案内部を有し、ヘッド内EGR通路70は、冷却水導出部21及び凹部の下部に位置するように形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気の一部を吸気通路に還流させるためのEGR通路を有する多気筒エンジンのシリンダヘッド本体に、該EGR通路の一部であるヘッド内EGR通路が形成されたシリンダヘッド構造であって、
前記シリンダヘッド本体内に形成され、前記シリンダヘッド本体の気筒列方向の一端部側から他端部側に向かって冷却水を流通させ、気筒列方向の他端部に冷却水導出部が設けられたウォータジャケットと、
前記ウォータジャケットの前記冷却水導出部に連通する冷却水導入部を有し、前記シリンダヘッド本体における前記冷却水導出部が設けられた壁部である出口側壁部に接続されるウォータアウトレットと、を備え、
前記出口側壁部には、前記冷却水導出部に対して、前記シリンダヘッド本体の幅方向に、隔壁部を介して相隣接するように設けられかつ気筒列方向の前記一端部側に凹む凹部が形成され、
前記ウォータアウトレットは、冷却水の一部を前記ウォータジャケットから前記凹部に導く案内部を有し、
前記ヘッド内EGR通路は、前記シリンダヘッド本体の幅方向に延びかつ前記冷却水導出部及び前記凹部の下部に位置するように形成されていることを特徴とするシリンダヘッド構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンダヘッド構造において、
前記凹部は、前記冷却水導出部を挟んで前記幅方向の両側にそれぞれ設けられ、
前記案内部は、前記各凹部に対応してそれぞれ形成されていることを特徴とするシリンダヘッド構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリンダヘッド構造において、
前記案内部は、前記ウォータジャケットを通った冷却水の一部と衝突しかつ該一部の冷却水の流れ方向を前記幅方向に変更する障壁部と、前記隔壁部とは前記幅方向に離間して設けられかつ前記障壁部から前記凹部に向かって延びるリブ部とを有することを特徴とするシリンダヘッド構造。
【請求項4】
請求項3に記載のシリンダヘッド構造において、
前記隔壁部における気筒列方向の前記他端部と前記リブ部の気筒列方向の前記一端部とは、気筒列方向における同じ位置に位置することを特徴とするシリンダヘッド構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のシリンダヘッド構造において、
前記ヘッド内EGR通路の前記幅方向の一端部は、気筒列方向の前記他端部側に向かって湾曲して延びる湾曲部となっており、
前記幅方向の前記一端部側に形成された凹部には、前記湾曲部に沿って気筒列方向に延びかつ冷却水が導入される穴部が形成されていることを特徴とするシリンダヘッド構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のシリンダヘッド構造において、
前記ヘッド内EGR通路は、前記冷却水導出部と重複する部分における断面が、長軸が気筒列方向に延びる扁平円形状をなしていることを特徴とするシリンダヘッド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、シリンダヘッド構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気の一部を吸気通路に還流させるためのEGR通路を有するエンジンにおいて、EGR通路の一部をシリンダヘッド内に形成する構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シリンダヘッド内に形成されたヘッド内EGR通路が、排気側側壁から直線状に延びる排気側部分と、排気側部分の内端から屈折して吸気側側壁に直線状に延びる吸気側部分とを有し、冷却水通路が、シリンダの軸線方向から見て吸気側部分と重なるように、吸気側部分の下方に、吸気側部分に沿うように配置されたシリンダヘッド構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、相対的に温度の低いガスは基本的に下側に移動しやすいため、冷却水通路をヘッド内EGR通路の下側に配置すると、ヘッド内EGR通路の上側部分は冷却されにくい。つまり、特許文献1に記載の構造では、ヘッド内EGR通路を通るEGRガスのうちの一部としか熱交換ができない。このため、ヘッド内EGR通路の冷却効率を向上させる観点からは改良の余地がある。
【0006】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シリンダヘッドにEGR通路を形成する場合に、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスを効率良く冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、排気の一部を吸気通路に還流させるためのEGR通路を有する多気筒エンジンのシリンダヘッド本体に、該EGR通路の一部であるヘッド内EGR通路が形成されたシリンダヘッド構造を対象として、前記シリンダヘッド本体内に形成され、前記シリンダヘッド本体の気筒列方向の一端部側から他端部側に向かって冷却水を流通させ、気筒列方向の他端部に冷却水導出部が設けられたウォータジャケットと、前記ウォータジャケットの前記冷却水導出部に連通する冷却水導入部を有し、前記シリンダヘッド本体における前記冷却水導出部が設けられた壁部である出口側壁部に接続されるウォータアウトレットと、を備え、前記出口側壁部には、前記冷却水導出部に対して、前記シリンダヘッド本体の幅方向に、隔壁部を介して相隣接するように設けられかつ気筒列方向の前記一端部側に凹む凹部が形成され、前記ウォータアウトレットは、冷却水の一部を前記ウォータジャケットから前記凹部に導く案内部を有し、前記ヘッド内EGR通路は、前記シリンダヘッド本体の幅方向に延びかつ前記冷却水導出部及び前記凹部の下部に位置するように形成されている、という構成とした。
【0008】
この構成によると、ヘッド内EGR通路の上側を冷却水が通るため、熱流を利用してEGRガスを効率的に冷却することができる。また、案内部により冷却水の一部が凹部に案内されるため、凹部に流入した冷却水でもヘッド内EGR通路を冷却することができる。これにより、ヘッド内EGR通路を広範囲で冷却することができ、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスを効率良く冷却することができる。
【0009】
前記シリンダヘッド構造において、前記凹部は、前記冷却水導出部を挟んで前記幅方向の両側にそれぞれ設けられ、前記案内部は、前記各凹部に対応してそれぞれ形成されている、という構成でもよい。
【0010】
この構成によると、ヘッド内EGR通路をより広範囲にわたって冷却することができる。これにより、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0011】
前記シリンダヘッド構造の一実施形態では、前記案内部は、前記ウォータジャケットを通った冷却水の一部と衝突しかつ該一部の冷却水の流れ方向を前記幅方向に変更する障壁部と、前記隔壁部とは前記幅方向に離間して設けられかつ前記障壁部から前記凹部に向かって延びるリブ部とを有する。
【0012】
この構成によると、冷却水の一部が障壁部と衝突して幅方向に流れた後、リブ部と衝突して凹部に向かって流れる。これにより、冷却水を凹部内に効率的に導入することができる。この結果、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0013】
前記一実施形態において、前記隔壁部における気筒列方向の前記他端部と前記リブ部の気筒列方向の前記一端部とは、気筒列方向における同じ位置に位置する、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、冷却水を出来る限り効率良く凹部内に導入することができる。これにより、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0015】
前記シリンダヘッド構造において、前記ヘッド内EGR通路の前記幅方向の一端部は、気筒列方向の前記他端部側に向かって湾曲して延びる湾曲部となっており、前記幅方向の前記一端部側に形成された凹部には、前記湾曲部に沿って気筒列方向に延びかつ冷却水が導入される穴部が形成されている、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、EGRガスの流れが滞りやすい湾曲部を効率的に冷却することができる。これにより、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0017】
前記シリンダヘッド構造において、前記ヘッド内EGR通路は、前記冷却水導出部と重複する部分における断面が、長軸が気筒列方向に延びる扁平円形状をなしている、という構成でもよい。
【0018】
この構成によると、ヘッド内EGR通路を形成する部分と冷却水との接触面積を出来る限り広くすることができる。これにより、シリンダヘッド内EGR通路を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、シリンダヘッドにEGR通路を形成する場合に、シリンダヘッド内のEGR通路を通るEGRガスを効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るシリンダヘッドを備えたエンジンを有するエンジンシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、シリンダヘッド本体のウォータジャケット部分を示す断面図である。
【
図3】
図3は、シリンダヘッド本体を前後方向及び上下方向に広がる平面で切断したシリンダヘッドの断面斜視図である。
【
図4】
図4は、シリンダヘッド本体の正面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線相当の断面で切断した断面図である。
【
図8】
図8は、
図6のVIII-VIII線相当の断面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両に対する前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。左右方向は、後側から前側を見たときの左側を左といい、右側を右という。
【0022】
図1は、本実施形態に係るシリンダヘッド構造を有するエンジンを有するエンジンシステムを概略的に示す。エンジン1は、複数の気筒(図示省略)が気筒列方向(紙面の面直方向)に並んだ多気筒エンジンである。エンジン1は、車両のエンジンルーム内に気筒列方向が前後方向となるように縦置きされている。
【0023】
エンジン1は、各気筒が形成されたシリンダブロック11と、シリンダブロック11の上側に配置されたシリンダヘッド12とを有する。シリンダヘッド12は、シリンダブロック11に接続されるシリンダヘッド本体13と、シリンダヘッド本体13の後壁部13a(
図2及び
図3参照)に接続されるウォータアウトレット30とを有する。シリンダヘッド本体13における、気筒列方向及び上下方向と直交する幅方向の一側、具体的には、シリンダヘッド本体13の左側には、各気筒に吸気を供給するための吸気通路3が接続されている。また、シリンダヘッド本体13の右側(幅方向の他側)には、各気筒から排気を排出するための排気通路5が接続されている。
【0024】
吸気通路3と排気通路5との間には、排気通路5から排気の一部を吸気通路3に還流させるためのEGR通路7が形成されている。EGR通路7は、その一部がシリンダヘッド12に形成されている。EGR通路7のうちシリンダヘッド12内に形成されたヘッド内EGR通路70は、鋳造によりシリンダヘッド12の他の部分と一体的に形成されている。ヘッド内EGR通路70の構成についての詳細は後述する。尚、ヘッド内EGR通路70は、その大半がシリンダヘッド本体13に形成され、出口部分がウォータアウトレット30に形成されている。この明細書では、ヘッド内EGR通路70は、ウォータアウトレット30に形成された部分も含む。
【0025】
図2に示すように、シリンダヘッド本体13内には、シリンダヘッド本体13の前側から後側(気筒列方向の一端部側から他端部側)に向かって冷却水を流通させるウォータジャケット20が形成されている。詳細な図示は省略するが、ウォータジャケット20は、各気筒にそれぞれ接続された吸気ポート14及び排気ポート15の周囲を通って後側に抜けるように形成されている。ウォータジャケット20を通る冷却水は、吸気ポート14及び排気ポート15を冷却するとともに、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスを冷却する。
【0026】
図3及び
図4に示すように、シリンダヘッド本体13の後端部には、ウォータジャケット20の出口となる冷却水導出部21が設けられている。冷却水導出部21は、ウォータジャケット20を通った冷却水をシリンダヘッド本体13から排出する部分である。冷却水導出部21は、左右方向の中央に設けられている。冷却水導出部21は、前側から見て略矩形状をなし、比較的広い流路断面積を有している。冷却水導出部21は、シリンダヘッド本体13の後壁部13aに開口部を有しており、この開口部を介して、ウォータアウトレット30の後述する冷却水導入部31と連通する。このことから、シリンダヘッド本体13の後壁部13aは、シリンダヘッド本体13における冷却水導出部21が設けられた壁部である出口側壁部に相当する。
【0027】
シリンダヘッド本体13の後端部には、ヘッド内EGR通路70の一部が形成されている。ヘッド内EGR通路70は、冷却水導出部21の下部に位置している。つまり、ヘッド内EGR通路70の一部(後述する横延び部73)は、後側から見て、冷却水導出部21と重複している。
【0028】
図2に示すように、ヘッド内EGR通路70の入口部71は、シリンダヘッド本体13の右側側壁部に開口している。ヘッド内EGR通路70は、入口部71から、シリンダヘッド本体13の幅方向(左右方向)に延びている。具体的には、ヘッド内EGR通路70は、入口部71から左側に向かって後側に傾斜する傾斜部72と、傾斜部の左前側の端部から左側に向かって真っ直ぐに延びる横延び部73と、横延び部73の左側端部から後側に向かって湾曲して延びる湾曲部74と、を有する。湾曲部74の後端部は、後側に向かって開口する後側開口部75となっている。後側開口部75は、ウォータアウトレット30に形成された縦延び部76(
図8参照)に連通する。
【0029】
ヘッド内EGR通路70の横延び部73は、
図3に示すように、その断面が、長軸が前後方向に延びる扁平円形状をなしている。一方で、
図4に示すように、ヘッド内EGR通路70の湾曲部74及び後側開口部75は、真円状をなしている。
【0030】
図4に示すように、後壁部13aにおいて、冷却水導出部21の左右方向の両側には、冷却水導出部21に対して隔壁部17,18を介して相隣接するように設けられかつ前側に凹む2つの凹部23,24が形成されている。2つの凹部23,24は、冷却水導出部21を挟んで左右方向の両側にそれぞれ設けられている。以下の説明では、右側の凹部を第1凹部23といい、左側の凹部を第2凹部24という。また、冷却水導出部21と第1凹部23との間の隔壁部を第1隔壁部17といい、冷却水導出部21と第2凹部24との間の隔壁部を第2隔壁部18という。
【0031】
第1凹部23は、略台形状をなしている。第1凹部23の下辺部は、ヘッド内EGR通路70の傾斜部72の上端部に沿って延びている。ヘッド内EGR通路70の横延び部73の一部は、後側から見て、第1凹部23の下部と重複している。つまり、ヘッド内EGR通路70は、第1凹部23の下部に位置するように形成されている。第1凹部23の右側かつ前側の部分は、第1凹部23の他の部分よりも前側に向かって窪んだ窪み部23a(
図7参照)となっている。窪み部23aは、傾斜部72に沿って延びている。
【0032】
第2凹部24は、細長い円弧状をなしている。第2凹部24は、ヘッド内EGR通路70の後側開口部75の上側かつ左側の部分に沿って延びている。つまり、ヘッド内EGR通路70は、第2凹部24の下部に位置するように形成されている。第2凹部24の右側端部には、冷却水導出部21と連通する貫通穴24aが形成されている。貫通穴24aは、ウォータジャケット20を通った冷却水が流通する穴である。第2凹部24の左側かつ下側の端部には、ヘッド内EGR通路70の湾曲部74に沿って、前側に向かって延びる有底状の穴部24bが、上下に並んで2つ形成されている。詳しくは後述するが、穴部24bは、冷却水導出部21から排出された後の冷却水が導入される穴部である。
【0033】
図5に示すように、ウォータアウトレット30は、シリンダヘッド本体13の後壁部13aのうち、冷却水導出部21と同じ高さ位置の部分に接続される。ウォータアウトレット30は、ブロック状をなし、内部に複数の水路が形成されている。
【0034】
ウォータアウトレット30は、冷却水導出部21から排出された冷却水が導入される冷却水導入部31(
図7参照)と、冷却水導入部31から各水路に分配するための複数(ここでは4つ)の分配路32と、を有する。複数の分配路32は、トランスミッション、ヒータ、ラジエータなどに向かう水路に冷却水を分配する。分配路32の開口は、ウォータアウトレット30の後壁部に2つ、左側側壁部に1つ、右側側壁部に1つ設けられている。
【0035】
ウォータアウトレット30は、ヘッド内EGR通路70の一部を有する。具体的には、ウォータアウトレット30は、ヘッド内EGR通路70の後側開口部75を介して湾曲部74と連通しかつ前後方向に延びる縦延び部76(
図8参照)と、縦延び部76の後端部から左側かつ上側に向かって斜めに延びる上延び部77(
図6参照)とを有する。
図6に示すように、上延び部77の上端はフランジ状に広がっている。上延び部77には、ヘッド内EGR通路70を通った後のEGRガスを吸気通路3に導入するための配管が接続される。
【0036】
図7及び
図8に示すように、ウォータアウトレット30は、冷却水の一部をウォータジャケット20から第1及び第2凹部23,24に導く、第1及び第2案内部33,34有する。つまり、各案内部33,34は、各凹部23,24に対応してそれぞれ形成されている。
【0037】
第1案内部33は、冷却水導出部21から排出された冷却水を、第1凹部23に案内する。第1案内部33は、冷却水導出部21から排出された冷却水の一部と衝突しかつ該一部の冷却水の流れ方向を右向きに変更する第1障壁部33aと、第1隔壁部17とは左右方向に離間して設けられかつ第1障壁部33aから第1凹部23に向かって延びる第1リブ部33bとを有する。
【0038】
第1障壁部33aは、冷却水導出部21の右側の部分と前後方向に重複している。第1障壁部33aは、
図7及び
図8に矢印で示すように、冷却水導出部21の右側部分を通った冷却水の流れを右向きに変更する。
【0039】
第1リブ部33bは、
図7及び
図8に示すように、第1隔壁部17の右側に位置する。第1リブ部33bは、第1障壁部33aから、第1凹部23に向かって前後方向に真っ直ぐに延びている。第1リブ部33bの前端と第1隔壁部17の後端とは、前後方向における同じ位置に位置する。つまり、ウォータアウトレット30がシリンダヘッド本体13に取り付けられた状態で、第1リブ部33bの前端と第1隔壁部17の後端とは、前後方向において同一平面上に位置する。第1リブ部33bは、
図7及び
図8に矢印で示すように、第1障壁部33aにより流れ方向が右向きになった冷却水の流れを前向きに変更する。これにより冷却水が、第1凹部23に積極的に導入される。第1凹部23に導入された冷却水は、ヘッド内EGR通路70の横延び部73及び傾斜部72の上側を通るように、第1凹部23内を通った後に分配路32に導入される。
【0040】
第2案内部34は、ウォータジャケット20を通って第2凹部24の貫通穴24aから排出された冷却水を、第2凹部24を通るように案内する。
図7及び
図8に示すように、第2案内部34は、第2凹部24の貫通穴24aから排出された冷却水と衝突しかつ該冷却水の流れ方向を左向きに変更する第2障壁部34aと、第2隔壁部18とは左右方向に離間して設けられかつ第2障壁部34aから第2凹部24に向かって延びる第2リブ部34bとを有する。
【0041】
第2障壁部34aは、第2凹部24の貫通穴24aと前後方向に重複している。第2障壁部34aは、
図7に矢印で示すように、第2凹部24の貫通穴24aを通った冷却水の流れを左向きに変更する。
【0042】
第2リブ部34bは、
図7及び
図8に示すように、第2隔壁部18の左側に位置する。第2リブ部34bは、第2障壁部34aから、第2凹部24に向かって前後方向に真っ直ぐに延びている。第2リブ部34bの前端と第2隔壁部18の後端とは、前後方向における同じ位置に位置する。つまり、ウォータアウトレット30がシリンダヘッド本体13に取り付けられた状態で、第2リブ部34bの前端と第2隔壁部18の後端とは、前後方向において同一平面上に位置する。第2リブ部34bは、
図7に矢印で示すように、第2障壁部34aにより流れ方向が右向きになった冷却水の流れを前向きに変更する。これにより冷却水が、第2凹部24に積極的に導入される。第2凹部24に導入された冷却水は、ヘッド内EGR通路70の湾曲部74の上側を通るように、第2凹部24を通った後に分配路32に導入される。
【0043】
また、第2凹部24に導入された冷却水は、第2凹部24の左側かつ下側の端部に到達した後、各穴部24bに導入されて、各穴部24bをそれぞれ満たす。
【0044】
図8に示すように、ウォータアウトレット30における穴部24bに対向する位置(厳密には上側の穴部24b)には、分配路32の一部が、ヘッド内EGR通路70の縦延び部76に沿って延びている。また、縦延び部76の右側には、分配路32の一部が該縦延び部76に沿って延びている。つまり、縦延び部76は2つの分配路32により左右方向に挟まれている。これにより、縦延びる76内のEGRガスを効率的に冷却することができる。
【0045】
ここで、本実施形態のように、シリンダヘッド12にEGR通路7の一部を設ける場合には、シリンダヘッド12を通る冷却水によりヘッド内EGR通路70を通るEGRガスを適切に冷却する必要がある。これに対して、本実施形態では、シリンダヘッド本体13の後壁部13aには、冷却水導出部21に対して左右方向に、第1隔壁部17及び第2隔壁部18を介して相隣接するように設けられかつ前側に凹む第1凹部23及び第2凹部24が形成され、ウォータアウトレット30は、冷却水の一部をウォータジャケット20から第1凹部23及び第2凹部24に導く第1案内部33及び第2案内部34を有し、ヘッド内EGR通路70は、左右方向に延びかつ冷却水導出部21、第1凹部23、及び第2凹部24の下部に位置するように形成されている。これにより、ヘッド内EGR通路70の上側を冷却水が通るため、熱流を利用してEGRガスを効率的に冷却することができる。また、第1案内部33及び第2案内部34により冷却水の一部が第1凹部23及び第2凹部24に案内されるため、第1凹部23及び第2凹部24に流入した冷却水でもヘッド内EGR通路70を冷却することができる。これにより、ヘッド内EGR通路70を広範囲で冷却することができ、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスを効率良く冷却することができる。
【0046】
また、本実施形態において、第1及び第2案内部33,34は、ウォータジャケット20を通った冷却水の一部と衝突しかつ該一部の冷却水の流れ方向を左右方向に変更する第1障壁部33a及び第2障壁部34aと、第1隔壁部17及び第2隔壁部18とは左右方向に離間してそれぞれ設けられかつ第1障壁部33a及び第2障壁部34aから第1凹部23及び第2凹部24に向かって延びる第1リブ部33b及び第2リブ部34bを有する。これにより、冷却水の一部が第1障壁部33a及び第2障壁部34aと衝突して左右方向にそれぞれ流れた後、第1リブ部33b及び第2リブ部34bと衝突して第1凹部23及び第2凹部24に向かってそれぞれ流れるため、冷却水を第1凹部23及び第2凹部24内に効率的に導入することができる。この結果、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0047】
また、本実施形態において、第1隔壁部17及び第2隔壁部18における後端部と第1リブ部33b及び第2リブ部34bの前端部とは、前後方向における同じ位置に位置する。これにより、冷却水を出来る限り効率良く第1凹部23及び第2凹部24内に導入することができる。この結果、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0048】
また、本実施形態において、ヘッド内EGR通路70の左側端部(吸気側の端部)は、後側に向かって湾曲して延びる湾曲部74となっており、第2凹部24には、湾曲部74に沿って前後方向に延びかつ冷却水が導入される穴部24bが形成されている。これにより、EGRガスの流れが滞りやすい湾曲部74を効率的に冷却することができる。この結果、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0049】
また、本実施形態において、ウォータアウトレット30には、ヘッド内EGR通路70の湾曲部74と連通しかつ前後方向に延びる縦延び部76と、縦延び部76の後端部から左側かつ上側に向かって斜めに延びる上延び部77とが設けられ、縦延び部76は、ウォータアウトレット30の2つの分配路32により左右方向に挟まれている。すなわち、EGRガスの流れ方向において、上延び部77の直上流側に位置する縦延び部76にはEGRガスが滞りやすい。本実施形態のように、縦延び部76の左右に分配路32がそれぞれ設けられていることで、縦延び部76内のEGRガスを効率的に冷却することができる。この結果、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0050】
また、本実施形態において、ヘッド内EGR通路70は、冷却水導出部21と重複する部分における断面が、長軸が気筒列方向に延びる扁平円形状をなしている。これにより、ヘッド内EGR通路70を形成する部分と冷却水との接触面積を出来る限り広くすることができる。この結果、ヘッド内EGR通路70を通るEGRガスをより効率良く冷却することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0052】
例えば、前述の実施形態では、冷却水導出部21の右側に第1凹部23が設けられ、冷却水導出部21の左側に第2凹部24が設けられていた。これに限らず、第1凹部23又は第2凹部24の一方のみが設けられていてもよい。
【0053】
また、前述の実施形態では、エンジン1が、気筒列方向が前後方向となるように縦置きされている場合を例示した。これに限らず、エンジン1は、気筒列方向が左右方向となるように横置きされていてもよい。この場合は、シリンダヘッド12の幅方向が前後方向となる。
【0054】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
ここに開示された技術は、排気の一部を吸気通路に還流させるためのEGR通路を有する多気筒エンジンのシリンダヘッド本体に、EGR通路の一部を形成する場合に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
12 シリンダヘッド
13 シリンダヘッド本体
13a 後壁部(出口側壁部)
17 第1隔壁部
18 第2隔壁部
20 ウォータジャケット
21 冷却水導出部
23 第1凹部
24 第2凹部
24b 穴部
31 冷却水導入部
33 第1案内部
33a 第1障壁部
33b 第1リブ部
34 第2案内部
34a 第2障壁部
34b 第2リブ部