(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181803
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】銅合金
(51)【国際特許分類】
C22C 9/06 20060101AFI20221201BHJP
C22F 1/08 20060101ALN20221201BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
C22C9/06
C22F1/08 G
C22F1/08 B
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 650A
C22F1/00 661A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684B
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692Z
C22F1/00 694A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088970
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮太
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆徳
(57)【要約】
【課題】引張強度、導電率、及び200℃程度の高温での応力緩和特性に優れた銅合金を提供する。
【解決手段】Ni:10~15重量%、Sn:5.0重量%以上、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなる、銅合金であって、X線回折法(XRD)により測定されたX線回折プロファイルにおいて、(i)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して30%以上のピーク強度を有する2θ=46~50°付近のピークが存在し、かつ、(ii)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して2.0%以上のピーク強度を有する2θ=40~42°付近のピークが存在する、銅合金。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni:10~15重量%、
Sn:5.0重量%以上、
Mn:0~0.5重量%、
Zr:0~0.5重量%、
Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種:合計で0~0.2重量%、並びに
残部Cu及び不可避不純物
からなる、銅合金であって、X線回折法(XRD)により測定されたX線回折プロファイルにおいて、
(i)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して30%以上のピーク強度を有する2θ=46~50°付近のピークが存在し、かつ、
(ii)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して2.0%以上のピーク強度を有する2θ=40~42°付近のピークが存在する、銅合金。
【請求項2】
前記X線回折プロファイルにおいて、2θ=84~88°付近のピーク強度に対して7.0%以下のピーク強度を有する2θ=55~57°付近のピークが存在する、請求項1に記載の銅合金。
【請求項3】
前記銅合金は、Ni含有量が11~14重量%、Sn含有量が5.0~8.0重量%である、請求項1又は2に記載の銅合金。
【請求項4】
前記銅合金は、Ni含有量が11~13重量%、Sn含有量が6.5~7.5重量%である、請求項3に記載の銅合金。
【請求項5】
引張強度が1200MPa以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の銅合金。
【請求項6】
導電率が10%IACS以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の銅合金。
【請求項7】
200℃の高温下で900MPaの応力を1000時間負荷した後の応力緩和率が15%未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の銅合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に集積回路IC、LSI等の半導体デバイスは、その信頼性を高めるために、高温下での性能チェック、すなわちバーンイン試験が行われる。この試験では、高温下でデバイスを動作させるため、実際の使用状態に近い条件で性能を評価することができる。よって、この時に使用されるバーンインソケットは高負荷応力での通電用途として用いられるため厳しい環境に置かれる。
【0003】
従来より、バーンインソケットには高強度及び高導電率を兼ね備えた材料としてベリリウム銅が用いられてきた。しかしながら、ベリリウム銅は180℃以上の高温下では応力緩和特性が著しく低下する等の欠点があり、高負荷応力での通電用途として用いるには不十分であった。これに対し、高温での応力緩和特性に優れた銅合金としてCu-Ni-Sn合金が知られている。
【0004】
特許文献1(特開昭63-317636号公報)には、Ni:5~30wt%、Sn:3~10wt%、Mn:0.01~2wt%を含み、残部Cu及び不可避的不純物からなることを特徴とする半導体機器のバーンインICソケット用銅合金が開示されている。この銅合金は、負荷応力30kgf/m2で、負荷温度150℃という条件下で応力緩和率が評価されており、バーンインICソケットの寿命を延ばすことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されているような試験の条件は、バーンインソケット等の高負荷応力での通電用途における条件ほど厳しくなく、同文献に開示される銅合金の特性では不十分である。よって、実際の使用環境に近いより厳しい条件において良好な特性を有する銅合金が求められる。
【0007】
本発明者らは、今般、所定の組成を有し、X線回折法(XRD)を測定した時に所定のX線回折プロファイルを有する銅合金が、引張強度、導電率、及び200℃程度の高温での応力緩和特性に優れるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、引張強度、導電率、及び200℃程度の高温での応力緩和特性に優れた銅合金を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、
Ni:10~15重量%、
Sn:5.0重量%以上、
Mn:0~0.5重量%、
Zr:0~0.5重量%、
Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種:合計で0~0.2重量%、並びに
残部Cu及び不可避不純物
からなる、銅合金であって、X線回折法(XRD)により測定されたX線回折プロファイルにおいて、
(i)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して30%以上のピーク強度を有する2θ=46~50°付近のピークが存在し、かつ、
(ii)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して2.0%以上のピーク強度を有する2θ=40~42°付近のピークが存在する、銅合金が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例1で得られた銅合金のX線回折プロファイルである。
【
図2】例2で得られた銅合金のX線回折プロファイルである。
【
図3】例3で得られた銅合金のX線回折プロファイルである。
【
図4】例4で得られた銅合金のX線回折プロファイルである。
【
図5】例5で得られた銅合金のX線回折プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
銅合金
本発明による銅合金は、Ni:10~15重量%、Sn:5.0重量%以上、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなる。そして、この銅合金は、X線回折法(XRD)により測定されたX線回折プロファイルにおいて、(i)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して30%以上のピーク強度を有する2θ=46~50°付近のピークが存在し、かつ、(ii)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して2.0%以上のピーク強度を有する2θ=40~42°付近のピークが存在する。このような銅合金は引張強度、導電率、及び200℃程度の高温での応力緩和特性に優れる。前述したとおり、バーンインソケット等の高負荷応力での通電用途として用いられる銅合金は厳しい環境に置かれるところ、従来の銅合金の特性では不十分である。これに対し、本発明によればこのような問題が好都合に解消される。
【0012】
本発明の銅合金は、Ni:10~15重量%、Sn:5.0重量%以上、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種(以下、任意元素Mという):合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなる。この銅合金は好ましくは、Ni:11~14重量%、Sn:5.0~8.0重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、任意元素M:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなり、より好ましくはNi:11~13重量%、Sn:6.5~7.5重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、任意元素M:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなる。したがって、銅合金におけるNi含有量は10~15重量%であり、好ましくは11~14重量%、さらに好ましくは11~13重量%である。銅合金におけるSn含有量は5.0重量%以上であり、好ましくは5.0~8.0重量%、より好ましくは6.5~7.5重量%である。このように、銅合金中のNi含有量が10重量%以上であることにより、高温(例えば200℃)下においても優れた耐熱特性(例えば、応力緩和特性)を維持できる。また、Ni含有量が15重量%以下であることにより、優れた導電率を維持できる。さらに、銅合金中のSn含有量が5.0重量%以上であることにより、優れた引張強度を維持できる。
【0013】
本発明の銅合金では、X線回折法(XRD)により測定されたX線回折プロファイルにおいて、(i)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して30%以上のピーク強度を有する2θ=46~50°付近のピークが存在し、かつ、(ii)2θ=84~88°付近のピーク強度に対して2.0%以上のピーク強度を有する2θ=40~42°付近のピークが存在する。(i)において、2θ=84~88°付近のピーク強度に対する2θ=46~50°付近のピーク強度が35~80%であるのが好ましく、40~70%であるのがより好ましい。(ii)において、2θ=84~88°付近のピーク強度に対する2θ=40~42°付近のピーク強度が2.5~10.0%であるのが好ましく、3.0~8.0%であるのがより好ましい。また、この銅合金には、2θ=84~88°付近のピーク強度に対して7.0%以下のピーク強度を有する2θ=55~57°付近のピークが存在するのが好ましく、このピーク強度の割合は6.0%以下であるのがより好ましい。
【0014】
本発明の銅合金は、引張強度(Ts)が1200MPa以上であるのが好ましく、より好ましくは1250MPa以上である。引張強度は高い方が好ましいため、その上限値は特に限定されないが、典型的には1400MPa以下である。
【0015】
本発明の銅合金は、導電率が10%IACS以上であるのが好ましく、より好ましくは11%IACS以上である。導電率は高い方が好ましいため、上限値は特に限定されないが、典型的には20%IACS以下である。ここで、導電率の単位である「%IACS」は、IACS(International Annealed Copper Standard)の導電率を100%とした場合の試験片の導電率の割合を表す。
【0016】
本発明の銅合金は、200℃の高温下で900MPaの応力を1000時間負荷した後の応力緩和率が15%未満であるのが好ましく、より好ましくは13%以下である。この応力緩和率は低い方が好ましく(理想的には0%)、その下限値は特に限定されないが、典型的には5.0%以上である。
【0017】
銅合金の製造方法
本発明による銅合金の製造方法は、特に限定されないが、例えば、(a)Ni:10~15重量%、Sn:5.0重量%以上、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなる、原料合金を溶解及び鋳造して、鋳塊とする工程と、(b)鋳塊を熱間加工及び/又は冷間加工して、中間品とする工程と、(c)中間品に対して、i)熱処理、ii)熱間加工及び/又は冷間加工、及びiii)溶体化をこの順に施すことにより、加工熱処理を行う工程と、(d)加工熱処理後の中間品を時効処理して、銅合金を得る工程とを含む。銅合金の好ましい態様については上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0018】
(a)原料合金の溶解及び鋳造
まず、原料合金を用意する。原料合金はNi:10~15重量%、Sn:5.0重量%以上、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、Nb、Fe、Al、Ti、B、Zn、Si、Co、P、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種(以下、任意元素Mという):合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなるものであるのが好ましく、より好ましくは、Ni:11~14重量%、Sn:5.0~8.0重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、任意元素M:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなり、さらに好ましくはNi:11~13重量%、Sn:6.5~7.5重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、任意元素M:合計で0~0.2重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物からなるものである。したがって、原料合金におけるNi含有量は10~15重量%であり、好ましくは11~14重量%、さらに好ましくは11~13重量%である。原料合金におけるSn含有量は5.0重量%以上であり、好ましくは5.0~8.0重量%、より好ましくは6.5~7.5重量%である。
【0019】
この工程では、用意した原料合金を溶解及び鋳造して、鋳塊とする。原料合金は、例えば高周波溶解炉で溶解するのが好ましい。鋳造方法は、特に限定されないが、全連続鋳造法、半連続鋳造法、バッチ鋳造法等の方法を用いてもよい。また、水平鋳造法、縦型鋳造法等の方法を用いてもよい。得られる鋳塊の形状は、例えば、スラブ、ビレット、ブルーム、板、棒、管、ブロック等の形状であってもよいが、特に限定されないためこれら以外の形状でもよい。
【0020】
(b)鋳塊の熱間加工及び/又は冷間加工
得られた鋳塊を熱間加工及び/又は冷間加工して、中間品とする。加工方法としては、鍛造、圧延、押出し、引き抜き等が挙げられる。この工程では、好ましくは鋳塊を熱間加工及び/又は冷間加工することで粗圧延し、圧延材(中間品)を得る。
【0021】
(c)加工熱処理
得られた中間品に対して、i)熱処理、ii)熱間加工及び/又は冷間加工、及びiii)溶体化をこの順に施すことにより、加工熱処理を行う。
【0022】
加工熱処理を行う工程では、まず、中間品に熱処理を行う。この熱処理は、500~950℃で1~24時間保持するのが好ましい。熱処理の温度はより好ましくは600~800℃、さらに好ましくは650~750℃である。上記温度での保持時間はより好ましくは1~12時間、さらに好ましくは5~10時間である。
【0023】
中間品に熱処理を行った後、熱間加工及び/又は冷間加工を行う。加工方法としては上記(b)における方法と同様の方法を用いてもよい。
【0024】
熱間加工及び/又は冷間加工後の中間品に溶体化処理を行う。この処理は、700~1000℃で5秒~24時間保持するのが好ましい。溶体化処理の温度はより好ましくは800~950℃である。上記温度での保持時間はより好ましくは1分~5時間である。冷却方法は特に限定されないが、例えば水冷、ガス冷、油冷、空冷等が挙げられる。この冷却による降温速度は、20℃/s以上が好ましく、より好ましくは50℃/s以上である。
【0025】
(d)中間品の時効処理
加工熱処理後の中間品を時効処理して、銅合金を得る。時効処理により、得られる銅合金の強度を高くすることができる。時効処理の温度は好ましくは300~500℃、より好ましくは350~450℃である。上記温度での保持時間は好ましくは1~24時間、より好ましくは2~12時間である。
【0026】
上記(a)~(d)の工程を経ることにより、引張強度、導電率、及び200℃程度の高温での応力緩和特性に優れた銅合金を好ましく製造することができる。
【0027】
また、上記(c)の加工熱処理後であって、上記(d)の時効処理前に、中間品を仕上げ熱間加工又は仕上げ冷間加工してもよい。すなわち、加工熱処理後であって、時効処理前に、中間品を仕上げ熱間加工又は仕上げ冷間加工する工程をさらに含むのが好ましい。こうすることで、中間品の板厚を目標のものにすることができる。このとき、例えば中間品に仕上げ圧延を施して板状に形成する場合、次式:P=100×(T-t)/T(式中、Pは仕上げ加工率(%)、Tは仕上げ圧延前の中間品の板厚(mm)、tは仕上げ圧延後の中間品の板厚(mm)である)により規定される仕上げ加工率(圧下率)が、40%以上となるように圧延するのが好ましい。これにより、最終的に得られる銅合金の強度を向上させることができる。
【実施例0028】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0029】
例1(比較)
銅合金を以下の手順により作製し、評価した。
【0030】
(1)原料合金の溶解及び鋳造
原料合金(Ni:9.1重量%、Sn:5.9重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物)を用意した。この原料合金を高周波溶解炉で溶解し、縦型鋳造法により鋳造して、直径320mmの丸状の鋳塊を得た。
【0031】
(2)鋳塊の熱間加工又は冷間加工
得られた鋳塊に均熱処理をして、熱間加工及び冷間加工を行うことで、中間品を得た。
【0032】
(3)加工熱処理
得られた中間品に対して熱処理を行った。具体的には、中間品を700℃で6時間保持した。次いで、この中間品に加工率が50%となるように冷間加工することで圧延し、中間品を板状に成形した。さらに、この中間品を850℃で60秒加熱することで溶体化し、その直後に水冷により50℃/s以上の降温速度で急冷した。このようにして、中間品を加工熱処理した。
【0033】
(4)中間品の仕上げ熱間加工又は仕上げ冷間加工
加工熱処理した中間品を冷間圧延(仕上圧延)することで、中間品の厚さを0.2mmとした。
【0034】
(5)中間品の時効処理
仕上圧延した中間品を415℃で2時間保持することで、中間品を時効処理し、銅合金を得た。
【0035】
(6)評価
得られた銅合金に対して、以下の評価を行った。
【0036】
<引張強度>
上記(5)で得られた銅合金に対して、JIS Z2241:2011に準拠して引張強度(MPa)を測定した。結果は表1に示されるとおりであった。
【0037】
<導電率>
上記(5)で得られた銅合金に対して、JIS H0505:1975に準拠してダブルブリッジを用いた四端子法により導電率(%IACS)を測定した。結果は表1に示されるとおりであった。
【0038】
<応力緩和率>
上記(5)で得られた銅合金に対して、JCBA T309:2004に準拠して、200℃で900MPaの応力を1000時間負荷した後の応力緩和率(%)を測定した。結果は表1に示されるとおりであった。
【0039】
<XRD>
上記(5)で得られた銅合金の表面において、酸化膜を除去し、異物のない平滑な面とした。この表面に対してX線回折(XRD)を行ってX線回折プロファイルを取得した。このXRDは、XRD装置(ブルカー・エイエックスエス社製、製品名:D2 PHASER)を用いて、使用X線:Co-Kα線、電圧:30kV、電流:10mA、2θ=10~120°の条件、ステップ幅:0.02°の条件で行った。得られたX線回折プロファイルを
図1に示す。X線回折プロファイルにおいて、2θ=40~42°付近のピーク、2θ=46~50°付近のピーク、2θ=55~57°付近のピーク、2θ=84~88°付近のピーク、及び2θ=105~110°付近のピークを特定し、それらのピーク強度を決定した。そして、2θ=84~88°付近のピーク強度に対する、他のピーク強度の比率を各ピーク位置についてそれぞれ求めた。結果は表1及び2に示されるとおりであった。
【0040】
<総合評価>
銅合金において測定した、引張強度、導電率、及び応力緩和率について以下の基準により、総合評価(判定)をした。結果は表1に示されるとおりであった。
‐合格:引張強度が1200MPa以上、導電率が10%IACS以上、及び応力緩和率が15%未満であるもの
‐不合格:「合格」とされる数値範囲から外れるもの
【0041】
例2
上記(1)の原料合金として、Ni:11.2重量%、Sn:7.1重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物の組成のものを用いたこと以外は、例1と同様にして銅合金の作製及び評価を行った。結果は表1及び2に示されるとおりであった。また、この銅合金のX線回折プロファイルを
図2に示す。
【0042】
例3
上記(1)の原料合金として、Ni:12.1重量%、Sn:6.9重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物の組成のものを用いたこと以外は、例1と同様にして銅合金の作製及び評価を行った。結果は表1及び2に示されるとおりであった。また、この銅合金のX線回折プロファイルを
図3に示す。
【0043】
例4(比較)
上記(1)の原料合金として、Ni:15.3重量%、Sn:8.1重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物の組成のものを用いたこと以外は、例1と同様にして銅合金の作製及び評価を行った。結果は表1及び2に示されるとおりであった。また、この銅合金のX線回折プロファイルを
図4に示す。
【0044】
例5(比較)
上記(1)の原料合金として、Ni:21.1重量%、Sn:4.9重量%、Mn:0~0.5重量%、Zr:0~0.5重量%、並びに残部Cu及び不可避不純物の組成のものを用いたこと以外は、例1と同様にして銅合金の作製及び評価を行った。結果は表1及び2に示されるとおりであった。また、この銅合金のX線回折プロファイルを
図5に示す。
【0045】
【0046】