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  • 特開-電源システム及び電力供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018182
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】電源システム及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
H02J7/34 H
H02J7/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121101
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】596015435
【氏名又は名称】株式会社ザ・トーカイ
(71)【出願人】
【識別番号】520261758
【氏名又は名称】バリオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】三矢 昌俊
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503DA07
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】災害時に緊急避難的に電力を供給する電力供給手段として、信頼性の高い電源システムを提供することを目的とする。
【解決手段】所定の発電機と、所定の発電機から出力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、コンバータを介して供給される直流電圧によって充電可能な蓄電部と、コンバータを介して供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷を駆動可能な変換部とを含む蓄電システムと、を有し、所定の発電機は、定置型のLPガス容器から供給されるLPガスによって発電を行うLPガス発電機、ガソリンを燃料として発電を行うガソリン発電機及び軽油を燃料として発電を行うディーゼル発電機のうちいずれかであることを特徴とする電源システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の発電機と、
前記所定の発電機から出力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
前記コンバータを介して供給される直流電圧によって充電可能な蓄電部と、前記コンバータを介して供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷を駆動可能な変換部とを含む蓄電システムと、
を有し、
前記所定の発電機は、定置型のLPガス容器から供給されるLPガスによって発電を行うLPガス発電機、ガソリンを燃料として発電を行うガソリン発電機及び軽油を燃料として発電を行うディーゼル発電機のうちいずれかである
ことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記蓄電部は、前記変換部を介して商用電源に接続可能であり、
前記コンバータは、前記変換部及び前記商用電源の接続端子とは異なる接続端子を介して、前記蓄電部及び前記変換部に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記所定の発電機から出力される交流電圧は、電圧値が100Vであって、かつ、周波数が50Hz又は60Hzであり、
前記コンバータは、前記所定の発電機から出力される交流電圧を48V以上60V以下の直流電圧に変換するAC・DCコンバータである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記所定の発電機の最大出力は、0.9kW以上2.2kW以下であることを特徴とする請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記蓄電システムの最大出力は、前記所定の発電機の最大出力より大きいことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の電源システム。
【請求項6】
前記所定の発電機は、前記LPガス発電機であり、
前記LPガス容器から前記LPガス発電機にLPガスを供給するLPガス供給管の少なくとも先端部は、可撓性材料によって構成されており、
前記先端部は、前記LPガス発電機の未使用時にボックスの内部に巻かれた状態で収納されており、前記LPガス発電機の使用時に前記ボックスの内部から引き出されて前記LPガス発電機に接続されることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の電源システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の電源システムを用いた電力供給方法であって、
前記所定の発電機で発電された電力及び前記蓄電部に充電された電力を前記負荷に供給する第2電力供給ステップを有し、
前記第2電力供給ステップにおける前記蓄電部の出力は、最大出力よりも小さいことを特徴とする電力供給方法。
【請求項8】
前記第2電力供給ステップの前に、
前記蓄電システムと前記負荷を接続する第1接続ステップと、
前記蓄電システムから前記変換部を介して前記負荷に電力の供給を開始する第1電力供給ステップと、
前記蓄電システム及び前記所定の発電機を接続する第2接続ステップと、
を実施することを特徴とする請求項7に記載の電力供給方法。
【請求項9】
前記第1電力供給ステップの開始時における前記蓄電部の充電状態は、満充電状態であることを特徴とする請求項8に記載の電力供給方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電力供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台風、大雨などの自然災害によって、電柱が倒壊したり、電源設備が浸水する等災害地域の電源インフラが一時的にダウンするケースが発生している。ここで、災害時の電源設備として、LPガスを燃料源とするLPガス発電機、ガソリンを燃料源とするガソリン発電機、軽油を燃料とするディーゼル発電機(以下、所定の発電機ともいう)が知られている。
【0003】
しかしながら、一般家庭や小規模事業所に置かれている所定の発電機は、比較的出力が低いため、高出力が必要とされる負荷を作動させることができない。例えば、エアコンの場合、起動時に大きな電力が必要とされるところ、所定の発電機では電力不足により、エアコンを起動できない場合がある。エアコンが災害地域で使用できなくなると、熱中症や低体温症などの二次的被害を招くおそれがある。
【0004】
所定の発電機とは異なる発電機として、充放電可能な蓄電装置が知られている。蓄電装置は、蓄電素子を複数接続することによって、出力調整や電池容量の調整が容易である。したがって、蓄電素子を多数接続した蓄電スタックを用いることにより、高出力が求められる負荷であっても作動させることができる。
【0005】
しかしながら、蓄電装置は放電するにしたがってSOC(STATE OF CHARGE)が低下するため、比較的短時間でSOCが0%になり、再び電源喪失に至る問題が懸念される。蓄電装置の出力を絞ることができれば、蓄電装置による電力供給時間を長くすることができる。しかしながら、電源インフラがダウンした災害地域では、そもそも電線から電力を引き回すことができないため、商用電源を用いて負荷をアシスト的に駆動することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6071240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、災害時に緊急避難的に電力を供給する電力供給手段として、信頼性の高い電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電源システムは、(1)所定の発電機と、前記所定の発電機から出力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、前記コンバータを介して供給される直流電圧によって充電可能な蓄電部と、前記コンバータを介して供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷を駆動可能な変換部とを含む蓄電システムと、を有し、前記所定の発電機は、定置型のLPガス容器から供給されるLPガスによって発電を行うLPガス発電機、ガソリンを燃料として発電を行うガソリン発電機及び軽油を燃料として発電を行うディーゼル発電機のうちいずれかであることを特徴とする。
【0009】
(2)前記蓄電部は、前記変換部を介して商用電源に接続可能であり、前記コンバータは、前記変換部及び前記商用電源の接続端子とは異なる接続端子を介して、前記蓄電部及び前記変換部に接続されることを特徴とする上記(1)に記載の電源システム。
【0010】
(3)前記所定の発電機から出力される交流電圧は、電圧値が100Vであって、かつ、周波数が50Hz又は60Hzであり、前記コンバータは、前記所定の発電機から出力される交流電圧を48V以上60V以下の直流電圧に変換するAC・DCコンバータであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電源システム。
【0011】
(4)前記所定の発電機の最大出力は、0.9kW以上2.2kW以下であることを特徴とする上記(3)に記載の電源システム。
【0012】
(5)前記蓄電システムの最大出力は、前記所定の発電機の最大出力より大きいことを特徴とする上記(1)乃至(4)のうちいずれか一つに記載の電源システム。
【0013】
(6)前記所定の発電機は、前記LPガス発電機であり、前記LPガス容器から前記LPガス発電機にLPガスを供給するLPガス供給管の少なくとも先端部は、可撓性材料によって構成されており、前記先端部は、前記LPガス発電機の未使用時にボックスの内部に巻かれた状態で収納されており、前記LPガス発電機の使用時に前記ボックスの内部から引き出されて前記LPガス発電機に接続されることを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の電源システム。
【0014】
(7)上記(1)乃至(6)のうちいずれか一つに記載の電源システムを用いた電力供給方法であって、前記所定の発電機で発電された電力及び前記蓄電部に充電された電力を前記負荷に供給する第2電力供給ステップを有し、前記第2電力供給ステップにおける前記蓄電部の出力は、最大出力よりも小さいことを特徴とする電力供給方法。
【0015】
(8)前記第2電力供給ステップの前に、前記蓄電システムと前記負荷を接続する第1接続ステップと、前記蓄電システムから前記変換部を介して前記負荷に電力の供給を開始する第1電力供給ステップと、前記蓄電システム及び前記所定の発電機を接続する第2接続ステップと、を実施することを特徴とする上記(7)に記載の電力供給方法。
【0016】
(9)前記第1電力供給ステップの開始時における前記蓄電部の充電状態は、満充電状態であることを特徴とする上記(8)に記載の電力供給方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電システム及び所定の発電機(LPガス発電機、ガソリン発電機及びディーゼル発電機のうちいずれか)が協働することにより、災害時に緊急避難的に使用できる信頼性の高い電力供給手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電源システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者等は、災害時に緊急避難的に使用される電力供給手段として、蓄電部を有する蓄電システムが最適と考えた。また、蓄電システムに対してアシスト処理を行うアシスト発電機として所定の発電機が最適と考えた。所定の発電機は、LPガス発電機、ガソリン発電機及びディーゼル発電機のうちいずれの発電機であり、好ましくはLPガス発電機である。つまり、蓄電装置及び所定の発電機が協働することによって、災害時に信頼性の高い電源システムを構築できると考えた。本実施形態では、所定の発電機として、LPガス発電機を使用する場合について説明する。
【0020】
アシスト処理とは、蓄電システムの出力を最大出力よりも低い出力に絞りながら、不足する出力をLPガス発電機によって補う処理のことである。つまり、蓄電システム及びLPガス発電機双方の電力を用いて負荷(例えば、エアコン)を駆動することである。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である電源システムのブロック図である。同図を参照して、LPガス容器10は、一般家庭や事業所に設置された定置型のガス容器であり、このLPガス容器10の内部には液相状態のLPガスが充填されている。なお、LPガス容器10は、LPガスボンベ、或いはLPガスタンクであってもよい。LPガスは、「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の略称で、プロパンやブタンなどの比較的液化しやすいガスの総称である。主成分がプロパンの場合はプロパンガス、ブタンの場合はブタンガスと呼ばれる。
【0022】
LPガス容器10の容量は特に限定しないが、一般的には、好ましくは公称2kg~900kg、より好ましくは公称2kg~600kgのガス容器が使用される。典型的には、公称20kg又は50kgの一般家庭用のガス容器、公称300kgの縦型又は横型円筒状のバルク貯槽からなる小規模事業所用のガス容器が使用される。本実施形態では、電源システムの汎用性を重視しているため、重量がトンレベルの工業用途に用いられるLPガスタンクは含まない。
【0023】
LPガス容器10のガス排出口10aには主ガス配管L1が接続されている。主ガス配管L1には、マイコンを備えたガスメータ11が設けられている。ガスメータ11は、LPガス容器10から排出されるLPガスの排出量を計測する。また、ガスメータ11に設けられたマイコンは、地震などを感知するとガス遮断弁(不図示)を開位置から閉位置に動作させ、LPガスの排出を禁止する。
【0024】
主ガス配管L1は、ガスメータ11よりも下流側の位置で副ガス配管L2及び副ガス配管L3に分岐している。副ガス配管L2は、LPガス使用機器(LPガス発電機を除く、以下同様である)に向かってLPガスを供給する。副ガス配管L2には、ガス栓12が設けられている。LPガス使用機器には、例えば、一般家庭や小規模事業所に設置されたガス給湯器、ガスコンロが含まれる。ガス給湯器は、給水ポンプ(不図示)から供給される水を加熱して貯湯タンクに蓄える。貯湯タンクに蓄えられたお湯は、風呂設備、床暖房機などに供給することができる。
【0025】
副ガス配管L3は、収納ボックス20内に設けられたエルボータイプのユニバーサル継手(不図示)を介して、ガス栓13に接続されている。ガス栓13の下流側には、可撓性材料からなる専用ガスコード14が接続されている。LPガス発電機30の未使用時において、この専用ガスコード14は、収納ボックス20の中に巻かれた状態で収納されている。
【0026】
LPガス発電機30には、好ましくは電圧がAC100Vで、最大出力が0.9kW以上2.2kW以下の比較的低出力なLPガス発電機を用いることができる。なお、LPガス発電機30のより好ましい出力は、1.5kWである。しかしながら、低出力なLPガス発電機では、例えば6畳用の小型エアコンであっても起動することができない。すなわち、6畳用の小型エアコンであっても、定格冷房出力及び定格暖房出力として少なくとも2kW以上は必要であるため、本実施形態のLPガス発電機30では出力不足となる。ここで、エアコンなどの高出力が求められる負荷を運転可能なLPガス発電機は、一般的に高価格で、サイズが大きく一般家庭や小規模事業所に保管するスペースがないため、本実施形態のLPガス発電機40と比較して広く流通させることが難しい。特に、出力が10kW以上の大型のLPガス発電機にあっては、電気事業法で工事計画書の作成・届出、保安規定の作成・届出、主任技術者の選任・届出等種々の制約があるため、広く流通させることは事実上困難である。なお、電気事業法による制約は、出力が10kW以上のガソリン発電機及びディーゼル発電機にも適用される。
【0027】
一方、本実施形態のLPガス発電機30には、既に一般家庭,小規模事業所に既設のLPガスポンプ10を燃料として利用できるというメリットがある。すなわち、災害地域には、被害を受けていないLPガスポンプ10が残されている可能性が高いため、災害時に緊急避難的に利用できる発電機として信頼性が高い。また、最大出力が比較的小さく、発電機のサイズも小さいため、置き場所に困るなども問題が少なく、電気事業法による制約も受けない。
【0028】
また、LPガス発電機30は、LPガスエンジンのフライホイールに巻回されたリコイルスタータにより始動できるため、LPガス発電機30を作動させるためのバッテリが不要である。また、LPガスエンジンの回転によりファンを駆動する空冷方式であるため、メンテナンスフリーである。このように、LPガス発電機30には、一般人であっても簡単かつ容易に利用できるメリットがある。
【0029】
蓄電システム50は、蓄電部51及び変換部52を含む。これらの蓄電部51及び変換部52は、一つのボックスの中に収められている。ただし、変換部52は、ボックスの外部に設けられていてもよい。
【0030】
AC・DCコンバータ40は、LPガス発電機30から出力される交流電圧を直流電圧に変換する。ここで、LPガス発電機30の出力電圧がAC100V、最大出力が0.9kW以上2.2kW以下の場合、AC・DCコンバータ40は、この交流電圧を48V以上60V以下の直流電圧に変換するように調整されている。AC・DCコンバータ40から出力された電流(直流)は、接続端子53(請求項2の「前記変換部及び前記商用電源の接続端子とは異なる接続端子」に相当する)を介して蓄電部51や変換部52に供給することができる。降圧後の直流電圧は、蓄電部51の仕様等によって適宜変更することができる。
【0031】
蓄電部51は、複数の二次電池を直列に接続した組電池によって構成されている。組電池の個数は1個であってもよいし、複数個であってもよい。複数個の組電池は、例えば、バスバーを用いて互いに接続することができる。組電池の接続には、並列接続が含まれていてもよい。二次電池は、充放電可能なバッテリであればよく、その種類は特に限定しない。例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、キャパシタ、鉛蓄電池を用いることができる。また、電池の形状は、角型、円筒型、ラミネート型等その形態は特に限定しない。
【0032】
二次電池の個数は、負荷60を作動させることができる適宜の数に設定することができる。すなわち、エアコンのように起動電圧が高い負荷60を起動し得るように、二次電池の個数は適宜の個数に設定される。もちろん、個々の二次電池(つまり、単電池)の出力が相対的に大きい場合には、接続する二次電池の個数を減らすことができる。
【0033】
変換部52は、充放電端子54を有しており、この充放電端子54及び蓄電部51は接続端子53を介して接続されている。
【0034】
変換部52は、更に、太陽光入力端子55及び商用電源入力端子56を備えている。太陽光入力端子55は、太陽光発電部80と接続されており、変換部52は、太陽光発電部80で発電された電力を直流から交流に変換して、負荷60に供給したり、充放電端子54を介して蓄電部51の充電処理に用いてもよい。
なお、太陽光発電部80は、省略することもできる。
【0035】
商用電源入力端子56は電源ケーブル(不図示)を介して商用電源70に接続されている。電源ケーブルの一端には電源コネクタが設けられ、他端には電源プラグが設けられている。電源コネクタは、商用電源入力端子56に接続されている。ここで、電源コネクタは商用電源入力端子56に対して着脱不能に固定されており、電気工事士等の専門の資格を有する者でなければ、商用電源入力端子56から取り外すことができない。
また、本実施形態で想定している蓄電部51は、エアコンなどの高負荷を作動できる比較的出力の高い電池であるため、商用電源70として200Vが用いられる。100Vの商用電源70を用いると、蓄電部51の充電に時間がかかり、非実用的である。したがって、仮に商用電源70の電源コネクタと商用電源入力端子56との接続が解除できたとしても、LPガス発電機30の出力端子を商用電源入力端子56に接続して使用するためには、LPガス発電機30の出力電圧を昇圧する必要があり、電力ロスが起こる。
【0036】
そこで、本実施形態では、上述したように、AC・DCコンバータ40を介して、LPガス発電機30の出力電圧を降圧するとともに、交流から直流に変換し、接続端子53を介して蓄電部51を充電可能な構成としている。
【0037】
変換部52は、商用電源70から供給される電力を交流から直流に変換して蓄電部51を充電したり、AC・DCコンバータ40や蓄電部51から供給される電力を直流から交流に変換して負荷60に作動電力を供給する。
なお、地域の電源設備が健全である場合には、商用電源70を介して蓄電部51を充電できることは言うまでもない。
【0038】
次に、自然災害により商用電源がダウンした場合を一例として、本実施形態の電源システムの使用方法について説明する。当該地域は電源喪失状態にあるため、商用電源70を用いて蓄電部51を充電したり、負荷60を駆動することはできない。また、初期状態において、蓄電部51は満充電状態(SOC:100%)にチャージされているものとする。
【0039】
蓄電部51を変換部52を介して負荷60に接続し、負荷60を駆動する。蓄電部51が放電するにしたがって、蓄電部51のSOCは時々刻々と低下する。AC・DCコンバータ40及び接続端子53を互いに接続するとともに、LPガス発電機30及びAC・DCコンバータ40を互いに接続する。なお、AC・DCコンバータ40及び接続端子53は、最初から接続されていてもよい。
【0040】
LPガス発電機30を保管場所から取り出し、収納ボックス20の近くに配置する。収納ボックス20の開閉扉を開いて専用ガスコード14を引き出して伸ばし、LPガス発電機30に接続する。このとき、専用ガスコード14の長さ(例えば、3~5m)の範囲内に、LPガス発電機30を設置することはいうまでもない。ガス栓13を開いてLPガス発電機30にLPガスを供給可能な状態とする。
【0041】
全ての準備が整ったら、LPガス発電機30をリコイルスタータ―により始動して発電動作を開始させる。LPガス発電機30で発電された電力は、AC・DCコンバータ40によって降圧されるとともに、交流電圧から直流電圧に変換される。AC・DCコンバータ40から出力された電流(直流)は、接続端子53及び変換部52を介して負荷60に供給される。これにより、蓄電部51の出力を絞りながら、負荷60を駆動できるため、蓄電部51の使用時間を長くすることができる。
【0042】
つまり、LPガス発電機30のアシスト無しで蓄電システム50を使用した場合には、比較的短時間でSOCが0%に低下して、電力供給が絶たれてしまう。一方、本実施形態の電源システムによれば、LPガス発電機30のアシストを受けながら蓄電システム50による電力供給を継続できるため、比較的長時間に亘って負荷60に電力供給を継続することができる。
【0043】
LPガス発電機30を起動するのに商用電源70などは不要であるため、地域の電源が喪失した場合であっても、LPガス発電機30によるアシスト処理を確実及び迅速に行うことができる。
【0044】
(変形例1)
上述の実施形態では、蓄電部51の出力を最大出力よりも低い出力に絞りながら、不足する出力をLPガス発電機30によって補う処理をアシスト処理(以下、アシスト処理1という)と定義したが、このアシスト処理1、以下のアシスト処理2及び以下のアシスト処理3を選択的に実施する構成としてもよい。
アシスト処理2:LPガス発電機30によって負荷60を駆動し、蓄電部51は充放電しない。アシスト処理2は、比較的負荷が小さい場面で選択的に実施することができる。
アシスト処理3:LPガス発電機30の出力の一部を負荷60に振り向け、残りを蓄電部51の充電に振り向ける。アシスト処理3は、アシスト処理2よりもさらに負荷が小さい場面で選択的に実施される。
これらのアシスト処理1~3を選択的に実施することにより、蓄電部51単独で負荷60を駆動する場合よりも、蓄電部51のSOCの低下を抑制することができる。これにより、蓄電部51による電力供給時間を長くすることができる。
【0045】
(変形例2)
上述の実施形態では、LPガス発電機30を使用したが、LPガス発電機30に代えてガソリン発電機又はディーゼル発電機を用いることができる。ガソリン発電機は、ガソリンを燃料として発電を行う。ディーゼル発電機は、軽油を燃料として発電を行う。ガソリン発電機、ディーゼル発電機であっても、LPガス発電機30と同様に、アシスト処理1、アシスト処理2及びアシスト処理3を選択的に実施することができる。
【0046】
ただし、LPガス発電機30、ガソリン発電機、ディーゼル発電機のうち本発明において最も好ましい発電機は、LPガス発電機30である。その理由は、以下の通りである。
軽油やガソリンは、危険物に相当し、容器の容量、販売、運搬、貯蔵等種々の点で制約があるため、災害が長期化したときに、燃料不足の問題が懸念される。軽油やガソリンを事業所などに貯蓄するためには、貯蓄容器を設置するための工事などが必要となる場合もあるため、LPガス発電機と比較して信頼性が高いとはいえない。
【0047】
一方、LPガスは、LPガス容器に充填されており、一般家庭や小規模事業所などに既設されているため、災害時に被災地に運び入れる必要がない。また、東日本大震災の被災地では、水道、電気、都市ガス、石油製品などの供給再開に相当の日数を必要とされた一方で、LPガスは、わずか数日で供給が再開され、復旧が早いことも経験的事実の示すところである。都市ガスを燃料としたガス発電機により発電する方法も考えられるが、地中に埋設されたガス配管が地震等によって損傷している場合にはガス発電機を利用できないため、エネルギ供給手段としての信頼性に欠ける。
【0048】
このように、LPガス発電機は、ガソリン発電機、ディーゼル発電機、都市ガス発電機等と比較して、災害時に緊急避難的に使用される電力供給手段として信頼性の高い特徴を有している。
【符号の説明】
【0049】
10 LPガス容器
11 ガスメータ
12、13 ガス栓
14 専用ガスコード
20 収納ボックス
30 LPガス発電機
40 AC・DCコンバータ
50 蓄電システム
51 蓄電部
52 変換部
53 接続端子
54 充放電端子
55 太陽光入力端子
56 商用電源入力端子
60 負荷
70 商用電源
80 太陽光発電部

図1