IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特開-乗り物用座席 図1
  • 特開-乗り物用座席 図2
  • 特開-乗り物用座席 図3
  • 特開-乗り物用座席 図4
  • 特開-乗り物用座席 図5
  • 特開-乗り物用座席 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181827
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】乗り物用座席
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B60N2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089001
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】有藤 康
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】床面上の空間を有効利用可能な乗り物用座席を提供する。
【解決手段】乗り物の側壁101に近接した位置に配設され、側壁101に沿って跳ね上げ可能に支持される乗り物用座席であって、座席の座面を形成する座面フレーム31に側壁方向に延在して結合した第1アーム33Aと、座席の背凭れを形成する背凭れフレーム32に側壁方向に延在して結合した第2アーム33Bと、側壁に固定して第1アーム33Aとヒンジを介して連結し座面を支持する第1支持部材4Aと、側壁101に固定して第2アーム33Bとヒンジを介して連結し背凭れを支持する第2支持部材4Bと、を有し、第1アーム33Aと第2アーム33Bとを第1支持部材4A及び第2支持部材4Bの一部を中心に回動させて、第1アーム33Aと第2アーム33Bのヒンジの回動軸Bを同軸状態にすることで座席の座面及び背凭れを側壁101に沿って跳ね上げることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の側壁に近接した位置に配設され、前記側壁に沿って跳ね上げ可能に支持される乗り物用座席であって、
座席の座面を形成する座面フレームに前記側壁方向に延在して結合した第1アームと、
前記座席の背凭れを形成する背凭れフレームに前記側壁方向に延在して結合した第2アームと、
前記側壁に固定して前記第1アームとヒンジを介して連結し前記座面を支持する第1支持部材と、
前記側壁に固定して前記第2アームとヒンジを介して連結し前記背凭れを支持する第2支持部材と、を有し、
前記第1アームと前記第2アームとを前記第1支持部材及び前記第2支持部材の一部を中心に回動させて、前記第1アームと前記第2アームのヒンジの回動軸を同軸状態にすることで前記座席の前記座面及び前記背凭れを前記側壁に沿って跳ね上げることができる
ことを特徴とする乗り物用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物用座席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車室内の側壁に沿って配置された座席を側壁側に跳ね上げることで、車室内のスペースを座席用スペース以外にも利用可能な乗り物用座席が提案されている。例えば、特許文献1には、バス内に設置されて、座面と背凭れとが折り重なるようにして側壁側に折り畳み可能に構成された座席が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3094815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の座席は、座席の座面に背凭れを重ねて折り畳むため、収納時において側壁からの突出量が多くなり床面上の空間を有効利用できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、床面上の空間を有効利用可能な乗り物用座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る乗り物用座席は、乗り物の側壁に近接した位置に配設され、前記側壁に沿って跳ね上げ可能に支持される乗り物用座席であって、座席の座面を形成する座面フレームに前記側壁方向に延在して結合した第1アームと、前記座席の背凭れを形成する背凭れフレームに前記側壁方向に延在して結合した第2アームと、前記側壁に固定して前記第1アームとヒンジを介して連結し前記座面を支持する第1支持部材と、前記側壁に固定して前記第2アームとヒンジを介して連結し前記背凭れを支持する第2支持部材と、を有し、前記第1アームと前記第2アームとを前記第1支持部材及び前記第2支持部材の一部を中心に回動させて、前記第1アームと前記第2アームのヒンジの回動軸を同軸状態にすることで前記座席の前記座面及び前記背凭れを前記側壁に沿って跳ね上げることができることを特徴とする。
【0008】
このように構成された乗り物用座席は、側壁に沿って跳ね上げた収納時において座面を形成する座面フレームと背凭れを形成する背凭れフレームとを側壁に沿って直列的に並ぶように配置して折り畳むことができるため、側壁からの突出量を低減可能であり車室内の床面上の空間領域を広く確保することができる。従って、床面上の空間を有効利用可能な乗り物用座席を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の乗り物用座席の全体構成図である。
図2】乗り物用座席のフレームユニットの斜視図である。
図3】座席の展開状態における座面側の第1アーム及び第1支持部材の接続部周辺を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は図3(a)におけるIII-III断面図を示す。
図4】座席の収納状態における座面側の第1アーム及び第1支持部材の接続部周辺を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は図4(a)におけるIV-IV断面図を示す。
図5】座席の展開状態と収納状態の変形途中の状態を示す斜視図である。
図6】座席の収納状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の乗り物用座席1の全体構成図である。図1に示す乗り物用座席1は、バスや電車等の乗り物100の側壁101に近接した位置に配設される。乗り物用座席1は、使用者が着座可能な座席2と、座席2を支持するフレームユニット3(図2も参照)と、フレームユニット3を支持する支持部材4とを有する。フレームユニット3は、アーム33(第1アーム33A及び第2アーム33B)及び支持部材4(第1支持部材4A及び第2支持部材4B)を介して側壁101に接続される。フレームユニット3は、支持部材4の一部を回動軸として側壁101に対して回動することができ、座席2を側壁101側に折り畳むように跳ね上げ可能に支持されている(図6の収納状態の乗り物用座席1も参照)。
【0012】
図2に示すフレームユニット3は、座席2の座面側の座面フレーム31と、座面フレーム31に対して回動軸C周りに回動可能に接続された背凭れ側の背凭れフレーム32とを有する。座面側の座面フレーム31は、矩形状の外枠311と、外枠311の内側に接続されたT字状の内枠312とを有する。座面フレーム31には、座席2の座面を形成する座面部材21が取り付けられる(図1参照)。座面部材21は座面である上面側にクッション部を有する。座面フレーム31の下面側には、側壁101方向に延在する座面側の第1アーム33Aが結合される。第1アーム33Aは、T字状の内枠312の横梁312aに沿って配置される。座面フレーム31と第1アーム33Aとは、螺子による締結や溶接等の任意の方法により接続することができる。また、外枠311の背凭れ側であって側壁101側及び側壁101とは反対側の両端部(即ち、着座した使用者から見た左右の両端部)には、平板状の突出部311aが形成される。各突出部311aは、対向するように内向きに突出した軸部を有する(詳細は不図示)。
【0013】
背凭れフレーム32は、座面フレーム31と回動可能に連結される基部側フレーム321と、基部側フレーム321に対して遠近方向に相対移動可能に接続された端部側フレーム322とを含む。基部側フレーム321は、突出部311aに設けられた軸部が挿通される軸受部を両端に含むヒンジ部321aを有する。ヒンジ部321aの両端部には、ヒンジ部321aに対して略垂直に延設された円柱状の外枠321bが形成される。従って、各外枠321bは同方向に向かって延設される。
【0014】
端部側フレーム322は、略U字状に湾曲した断面視円形の筒状に形成される。端部側フレーム322の両端部322aのうちの側壁101とは反対側の一方には、端部322aの開口端側から直線スリット状に切り欠かれた切欠部322bが形成される。この切欠部322bを含む端部322a内に挿通された外枠321bには、側壁101とは反対側に突出して肘掛けユニット35の第2リンク部352と回動可能に接続される回動軸322cが設けられる。端部側フレーム322の両端部322aには、基部側フレーム321の外枠321bが摺動可能に挿入される。回動軸322cは、切欠部322b内において移動可能に配置されている。端部側フレーム322には、座席2の背凭れを形成する背凭れ部材22が取り付けられる(図1参照)。背凭れ部材22は着座する使用者との接触面側にクッション部を有する。
【0015】
また、背凭れフレーム32の一部である端部側フレーム322には、側壁101方向に延在する背凭れ側の第2アーム33Bが結合される。第2アーム33Bは、端部側フレーム322に対し、着座した使用者から見た後方側の一部に接続される。端部側フレーム322と第2アーム33Bとは、螺子による締結や溶接等の任意の方法により接続することができる。
【0016】
座面フレーム31及び背凭れフレーム32は、フレームユニット3の側壁101とは反対側(即ち、第1支持部材4A及び第2支持部材4Bとは反対側)において肘掛けユニット35と連結される。肘掛けユニット35は、座面フレーム31側に設けられた第1リンク部351と、背凭れフレーム32側に設けられた第2リンク部352とを有する。第1リンク部351の一端側は、座面フレーム31において側壁101の反対側へ突出した回動軸311bに回動可能に接続され、第1リンク部351の他の一端側は座面フレーム31の第2リンク部352と回動可能に接続されている。また、第2リンク部352の一端側は背凭れフレーム32の回動軸322cと回動可能に接続されている。第2リンク部352は、第1リンク部351側に肘掛部353を有する。
【0017】
第1アーム33Aは、側壁101に設けられた第1支持部材4Aに回動可能に接続されている。また、第2アーム33Bは、側壁101に設けられた第2支持部材4Bに回動可能に接続されている。本実施形態の第2支持部材4B及び第2アーム33Bは、それぞれ第1支持部材4A及び第1アーム33Aと同様に構成されているため、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化し、以下、第1支持部材4A及び第1アーム33Aの接続部における具体的な構成について説明する。
【0018】
図3(a)及び図3(b)に示す第1支持部材4Aは、外形が短円柱状であって側壁101に対して固定される固定部材41と、固定部材41に対して回動軸A周りに回動可能に取り付けられている回動部材42とを有する。固定部材41は、中空状に形成されており、第1アーム33A側に開口部411を有する。開口部411は、固定部材41の内部空間における回動軸A周りの内径よりも小さくなるように縮幅された突出部411aの内縁に形成される。固定部材41は、図示はしないが、任意のフランジ部を設けて側壁101に対して螺子による締結等の任意の方法により固定される。なお、固定部材41は、側壁101との当接部412側に、開閉又は着脱可能な蓋部を設け、第1支持部材4A(第2支持部材4Bも同様)の組み立ての際に固定部材41内に回動部材42を装着可能に構成してもよい。
【0019】
回動部材42は、略円盤状に形成される。回動部材42は、回動軸A方向の一方側の一部に外周面から突出したフランジ部421を有し、固定部材41内に配置されたフランジ部421が、突出部411a又は底部412aと当接することにより回動軸A方向への移動が規制される。また、回動部材42は外周面が開口部411の内縁又は内部空間における内周面に当接して回動軸Aに対する径方向への移動が規制される。回動部材42は、固定部材41に取り付けられた状態で回動軸A周りに回動可能に形成される。
【0020】
また、回動部材42は、第1アーム33Aとヒンジ43を介して連結されて座面を形成する座面フレーム31(図2参照)を支持する。ヒンジ43は、回動部材42及び第1アーム33Aの一方に設けられた軸部が、他の一方に設けられた軸受部と回動可能に連結されることにより形成される。本実施形態のヒンジ43の回動軸Bは、回動軸Aと直交している。
【0021】
回動部材42は、フレームユニット3側の一方側に、長矩形状の開口部441が形成された平板状の突出部44を有する。開口部441は、回動軸Aに対する径方向に貫通した貫通孔である。また、回動部材42は、開口部441に対して回動軸Aを挟んだ反対側にロックピン45が収納された収納部422を有する。収納部422は、回動軸A方向の両側に位置する開口部422a及び開口部422bにより開口している。開口部441、回動軸A、ロックピン45、及び開口部422aは、第1アーム33Aの回動面(回動軸Aを含み回動軸Bと直交する面)と略同一面上に配置されている。ロックピン45は、収納部422内において弾性部材であるコイルばねSによる弾発力により開口部422a側に付勢されている。ロックピン45の先端部は、ロックピン45がコイルばねSによる弾発力に抗して底部412a側に位置する場合は、開口部422bから固定部材41側に突出する。また、ロックピン45は、フレームユニット3側に位置する場合(図4(b)参照)、全体が収納部422内に収納される。
【0022】
図2に戻り、第1アーム33Aは、略L字板状に形成される。第1アーム33Aの平板状の支持部331は、座面フレーム31の下方において座面フレーム31と接続される。また、第1アーム33Aは、支持部331に対して略直角に屈曲した基部332を有する。基部332は、回動部材42に対して回動軸B周りに回動可能に連結されている(図3(b)等参照)。
【0023】
また、フレームユニット3は、座面フレーム31と、第1アーム33Aとの間の空間(詳細は不図示)に配置された規制部材5を有する。規制部材5は、座面フレーム31の下方に支持部331と略平行に配置された長尺棒状の被操作杆51と、第1支持部材4Aとは反対側の先端部において被操作杆51に接続された操作部52(図2参照)を有する。
【0024】
図3(b)等に示すように、被操作杆51の略L字状に屈曲した基部511の先端部には、第1アーム33Aの基部332側に向けて突出した規制部511aが設けられる。規制部511aは、乗り物用座席1の展開状態において回動軸Aと略平行に形成される。
【0025】
図2に示した背凭れ側の第2支持部材4Bの固定部材41は、側壁101と直交する回動軸A周りの取り付け角度が第1支持部材4Aの固定部材41と異なっている。第1支持部材4Aの固定部材41は、底部412aに設けられた凹溝である係合部412bが回動軸Aに対して下方に位置するように取り付けられている(図3(b)参照)。一方、第2支持部材4Bの固定部材41は、図示はしないが、係合部412bが回動軸Aに対して座席2の後方やや下側に位置するように取り付けられている。従って、図2に示す展開状態のフレームユニット3は、第1アーム33Aの支持部331の板面と、第2アーム33Bの支持部331の板面とが鈍角となるように設定されるため、座面フレーム31と背凭れフレーム32も鈍角となるように設定される。このため、座面部材21と背凭れ部材22も、展開状態において鈍角に設定される。
【0026】
ここで、乗り物用座席1の使用例について説明する。まず展開状態における乗り物用座席1では、図3(b)の規制部511aが開口部332a及び開口部422aに挿通されて収納部422内のロックピン45を押圧している。ロックピン45は、コイルばねSの弾発力に抗して底部412a側に位置しており、ロックピン45の先端部が係合部412bに係合している。回動部材42は、ロックピン45と係合部412bとの係合により、固定部材41に対する回動軸A周りの回動が規制される。また、第1アーム33Aの回動軸B周りの下方への回動は、第1アーム33Aの基部332と第1支持部材4Aとの当接、及び、座面フレーム31と背凭れフレーム32との接続(図2参照)により規制される。
【0027】
本実施形態では、乗り物用座席1が展開状態であるとき、座面フレーム31が床面102に対して略水平となる回動角度で支持される。また、背凭れフレーム32は、座面フレーム31に対しヒンジ接続されており、座面フレーム31に対して異なる角度(図1では鈍角)に支持されている。第1支持部材4Aの回動軸Bと第2支持部材4Bの回動軸Bとは異なる角度であるため、展開状態において第1アーム33A及び第2アーム33Bの回動軸B周りの回動は規制される。このため、乗り物用座席1は、図1の着座可能な展開状態で安定支持される。
【0028】
乗り物用座席1を折り畳む場合、まず、座面部材21の下面において露出した操作部52を、肘掛けユニット35側(第1支持部材4Aとは反対側)の方向に引っ張り操作する。すると、操作部52と連結された被操作杆51は、回動軸Aに沿って第1支持部材4Aとは反対の方向に移動して、規制部511aが開口部422a及び開口部332a(図3(b)に一点鎖線で示した規制部材5参照)から脱出する。また、ロックピン45はコイルばねSの弾発力により開口部332a側へ移動し、ロックピン45と係合部412bの係合が解除される。従って、回動部材42は、固定部材41に対して回動軸A周りに回動可能な状態となる。
【0029】
その後、座面フレーム31側を上方に持ち上げるように操作すると、座面フレーム31が背凭れフレーム32側へ近接するように移動して、座面フレーム31に対して第1アーム33Aを介して接続される第1支持部材4Aの回動部材42が回動軸A周り(座席2側から見た反時計回り)に回動する。このとき、座面フレーム31と基部側フレーム321との回動軸C周りの開角度が増加し、外枠321bの端部322aに対する挿入深さが増加する。背凭れフレーム32に対して第2アーム33Bを介して接続される第2支持部材4Bの回動部材42は、第2支持部材4Bの回動軸A周り(座席2側から見た時計回り)に回動する。
【0030】
図5は、座席2の展開状態と収納状態の変形途中の状態を示す図である。図5の状態では、座面フレーム31と背凭れフレーム32とが略同一平面上に直列的に並ぶように配置されており、第1支持部材4A及び第2支持部材4Bの各回動軸Bが同軸上に配置されている。
【0031】
その後、座面フレーム31側をさらに上方へ持ち上げるように操作すると、図6に示すように、フレームユニット3が回動軸B周りに回動して側壁101側へ向けて折り畳まれる。従って、乗り物用座席1は、座面フレーム31と背凭れフレーム32とを直列的に略同一面上に配置しながら、上方の窓103側へ向けて折り畳むことができる。なお、乗り物用座席1を上方へ折り畳む際、図3(b)の一点鎖線に示すように、規制部511aは開口部332a及び開口部422aから脱出させた状態でフレームユニット3と共に移動する。乗り物用座席1が上方へ折り畳まれると、図4(b)の一点鎖線で示すように、規制部511aが開口部441の上方に配置される。その後、操作部52を操作して規制部511aを基部332側へ移動させることで、規制部511aが開口部441及び開口部332a内に挿通され、第1アーム33Aの回動軸B周りの回動が規制される。
【0032】
また、乗り物用座席1は、収納状態において、回動軸Cが回動軸Aと略直交するように配置されるため、座面フレーム31及び背凭れフレーム32の回動軸A周りの回動が規制される。従って、乗り物用座席1は、回動軸A及び回動軸B周りの回動が規制されて収納状態で安定支持される。
【0033】
このように、第1アーム33Aと第2アーム33Bとを第1支持部材4A及び第2支持部材4Bの一部を中心に回動させて、第1アーム33Aと第2アーム33Bのヒンジ43の回動軸Bを同軸状態にすることで、座席2の座面及び背凭れを側壁101に沿って跳ね上げることができる。従って、乗り物用座席1を折り畳むことで、車室内の空いたスペースに車椅子を固定したり、乗客が立ったまま乗車する立席の数を増加させたりすることができる。
【0034】
収納状態の乗り物用座席1を展開する場合、まず、図6に示すように、座面部材21の下面に露出した操作部52を、肘掛けユニット35側(第1支持部材4Aとは反対側)の方向に引っ張り操作する。すると、操作部52と連結された被操作杆51の規制部511aは、開口部422a及び開口部332a(図4(b)に一点鎖線で示した規制部材5参照)から脱出する。これにより、第1アーム33A及び第2アーム33Bは、回動軸B周りに回動可能な状態となる。その後、乗り物用座席1を下方に回動操作することにより(又は自重により)、乗り物用座席1は図5の状態に変形する。
【0035】
さらに、座面フレーム31を第1支持部材4Aにおける回動部材42の回動軸A周り(座席2側から見た時計回り)に回動操作することにより(又は自重により)、座面フレーム31は背凭れフレーム32から離間するように移動する。これにより、座面フレーム31と基部側フレーム321との回動軸C周りの開角度が減少しながら、外枠321bの端部322aに対する挿入深さが浅くなる。このとき、背凭れフレーム32に対して第2アーム33Bを介して接続される第2支持部材4Bの回動部材42も、回動軸A周り(座席2側から見た反時計回り)に回動する。これにより、乗り物用座席1は図1の展開状態に変形する。
【0036】
その後、規制部511aが開口部332a及び開口部422aに挿通されるように移動操作されると、ロックピン45と係合部412bとが係合して、乗り物用座席1が展開状態で安定支持される。
【0037】
以上のように構成された乗り物用座席1は、収納又は展開を1度の操作で容易に行うことができる。また、乗り物用座席1は、座席の座面と背凭れが重ならずに側壁101側に倒れる構造としたので、車室内側への突出量を抑制できる。座席2を側壁101側に固定して床面102側の空間を広く確保することができるため、図1等に示す床面102上の空間に車椅子の固定用のアンカー104を設置したり、電装等が収納される車両点検用の扉105へのアクセスが可能になる等、床面102上の空間を有効に利用することができる。本実施形態で説明した乗り物用座席1の座席固定構造は、床面102に段差やステップ等がある場合においても床面102の構造に関わらず設置可能である。
【0038】
また、乗り物用座席1は、座席2及びフレームユニット3が側壁101に対して支持部材4により支持される構成としたため、使用時においても床面102上に荷物等を置く等、床面102上の空間を有効活用することができる。
【0039】
また、収納状態と展開状態との間の変形動作は、展開状態における占有空間内で行うことができる。このため、乗り物用座席1は周辺の手摺や機器との緩衝が回避しやすく、周囲環境への影響を抑制することができる。
【0040】
以上で本発明に係る乗り物用座席1の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0041】
上記実施形態においては、被操作杆51を支持する構成は特に限定していないが、例えば、被操作杆51は、第1支持部材4A側(側壁101側)にコイルばねや板ばね等の任意の弾性部材により付勢されていてもよい。これにより、規制部材5の支持部材4に対する係合が不用意に解除されることを防止し、乗り物用座席1を展開状態又は収納状態に安定して支持することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 :乗り物用座席
2 :座席
3 :フレームユニット
4 :支持部材
4A :第1支持部材
4B :第2支持部材
5 :規制部材
21 :座面部材
22 :背凭れ部材
31 :座面フレーム
32 :背凭れフレーム
33 :アーム
33A :第1アーム
33B :第2アーム
35 :肘掛けユニット
41 :固定部材
42 :回動部材
43 :ヒンジ
44 :突出部
45 :ロックピン
51 :被操作杆
52 :操作部
100 :乗り物
101 :側壁
102 :床面
103 :窓
104 :アンカー
105 :扉
311 :外枠
311a :突出部
311b :回動軸
312 :内枠
312a :横梁
321 :基部側フレーム
321a :ヒンジ部
321b :外枠
322 :端部側フレーム
322a :端部
322b :切欠部
322c :回動軸
331 :支持部
332 :基部
332a :開口部
351 :第1リンク部
352 :第2リンク部
353 :肘掛部
411 :開口部
411a :突出部
412 :当接部
412a :底部
412b :係合部
421 :フランジ部
422 :収納部
422a :開口部
422b :開口部
441 :開口部
511 :基部
511a :規制部
A :回動軸
B :回動軸
C :回動軸
S :コイルばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6