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  • 特開-車両のエアクリーナ 図1
  • 特開-車両のエアクリーナ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181829
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両のエアクリーナ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/024 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F02M35/024 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089003
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】吉野 弘記
(57)【要約】
【課題】水分分離を向上し、吸気抵抗を低減するエアクリーナを提供する。
【解決手段】筒状のフィルタエレメント31と、フィルタエレメント31を格納し、フィルタエレメント31の中空部35と連通する空気の出口(エア流出口25)が設けられる第1面(上壁21)、及び、第1面(上壁21)より面積が小さい第2面(下壁22)から形成される略円錐台形状のケーシング20、及び、第1面(上壁21)よりも第2面(下壁22)に近い位置に空気の入口(エア流入口24)が設けられる周面(ケース周壁23)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントを格納し、前記フィルタエレメントの中空部と連通する空気の出口が設けられる第1面、前記第1面より面積が小さい第2面から形成される略円錐台形状のケーシングと、
前記第1面よりも前記第2面に近い位置に前記空気の入口が設けられる周面と、
を備える車両のエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはエンジンへ送られる吸気流体中の異物を除去するためフィルタエレメントを備えるエアクリーナが知られている。例えば、特許文献1には、円筒形状のフィルタを備えたエアクリーナが開示されている。また、エアクリーナは、燃料電池車などでも使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エアクリーナ手前のダクト部で分離できなかった水分や吸気流体に含まれる水分が、そのままエアクリーナを通過すると、エアクリーナのフィルタエレメントが水分を含みエアクリーナの吸気抵抗が増加する。さらに、寒冷地においては、エアクリーナのフィルタエレメントに含まれた水分が凍結することで、さらに吸気抵抗が増加するおそれがある。一方、例えば、エンジン車においては、エアクリーナを通過した吸気流体はエンジンに送られるが、エアクリーナを通過する際の吸気抵抗が増大すると燃費に影響する。そこで、エアクリーナのフィルタを通過する前の吸気流体に含まれる水分の分離性向上によるエアクリーナの吸気抵抗の低減が求められる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水分分離を向上し、吸気抵抗を低減するエアクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る車両のエアクリーナは、筒状のフィルタエレメントと、前記フィルタエレメントを格納し、前記フィルタエレメントの中空部と連通する空気の出口が設けられる第1面、前記第1面より面積が小さい第2面から形成される略円錐台形状のケーシングと、前記第1面よりも前記第2面に近い位置に前記空気の入口が設けられる周面と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された車両のエアクリーナは、前記入口から流入した吸気流体が前記ケーシングの第2面側から前記ケーシングの内周面に沿ってらせん状に進む。これにより、吸気流体に遠心力が作用し、前記ケーシングの内周面との間に摩擦が発生することで、フィルタエレメントを通過する前の吸気流体に含まれる水分を液化して分離することができる。また、吸気流体がフィルタエレメントを通過する前に水分や吸気流体に含まれる水分が除去されることにより、フィルタエレメントの湿潤による吸気抵抗増加を抑止することができ、車両のエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の車両のエアクリーナを含む車両の吸気通路を模式的に示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態の車両のエアクリーナの(a)上面図、及び(b)上面図のA-A’における側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明において、上下方向とは、車両の高さ方向(鉛直方向)とする。また、本実施形態の車両はトラックを例に説明するが、車両はトラックに限られるものではなく他の車両にも本発明を適用可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の車両のエアクリーナ1(以下、単にエアクリーナ1という)を含む車両の吸気通路10を模式的に示す概略構成図である。車両の吸気通路10は、車両のエンジン等の内燃機関に外気を吸気流体として導入するためのもので、図1に示すように、吸気の流れに沿って上流側から、第1ダクト(シュノーケル)11、第2ダクト(チューブ)12、汽水分離装置2、第3ダクト13、エアクリーナ1、第4ダクト14から構成される。尚、例えば、第1ダクト(シュノーケル)11も汽水分離機能を有している。ここで、第1ダクト11、第2ダクト12、第3ダクト13、第4ダクト14は、吸気流体が通過可能となるように、金属や樹脂又はその組み合わせ等により中空状に形成されている。
【0012】
第1ダクト11は、外気導入口部を有するいわゆるシュノーケルと呼ばれるタイプのものである。第1ダクト11の外気導入口部は、車両において接地面から比較的高い位置に配置されている。これにより、走行時に跳ね上げられるダスト、雨水及び積雪等、そして、冠水路走行時に水を外気とともに取込んでしまうことを防止している。第2ダクト12は蛇腹形状により伸縮可能な蛇腹部を有し、第1ダクト11の下流側と汽水分離装置2とを連結する。また、第2ダクト12は、車両の走行時に発生するキャビンの動き量、また、上下振動により第1ダクト11、第2ダクト12、及び汽水分離装置2の接続部に発生する応力を蛇腹部において吸収抑制する機能を有する。
【0013】
汽水分離装置2は、導入された吸気流体から水分を除去する機能を有する。具体的には、導入された吸気流体は、汽水分離装置2の内部側壁(ケース周壁23の内部側)に当たることにより汽水分離される。また、冠水路走行時に水が浸入してしまった際も汽水分離装置2に水を留め、エアクリーナ1へ水が流入するのを防止する。
【0014】
第3ダクト13は、汽水分離装置2の下流側と、エアクリーナ1の上流側と、を連結する。また、第4ダクト14はエアクリーナ1の下流側と、エンジンやターボチャージャーの入力側と、を連結する。
【0015】
エアクリーナ1は、吸気流体を後述するフィルタエレメント31で濾過することで、吸気流体に含まれる砂塵等を除去し清浄にする機能を有する。第3ダクト13からエアクリーナ1に流入した吸気流体は、清浄されて、第4ダクト14へ排出される。第4ダクト14の下流側から排出した吸気流体はエンジンのシリンダ内に流入する。吸気流体に砂塵が混入しているとシリンダの摩耗が発生するため、エンジンよりも上流側にエアクリーナ1が配置されている。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態の車両のエアクリーナの(a)上面図、及び(b)上面図のA-A’における側断面図である。図2を参照しながら、エアクリーナ1の詳細を以下説明する。
【0017】
エアクリーナ1は、ケーシング本体20a、及び、ケーシング本体20aに分離可能に取り付けられるケーシングカバー20bから構成されるケーシング20と、ケーシング20の内部に格納されるフィルタユニット30と、を備える。ケーシング20は、ケーシング本体20aにケーシングカバー20bが取り付けられた状態において、車両水平方向に延在する円板状の上壁(第1面)21、上壁21に平行かつ上壁21より面積が小さい円板状の下壁(第2面)22、及び、上壁21の外周と下壁22の外周を連結する筒状のケース周壁(周面)23から形成される略円錐台形状の容器である。ケース周壁23の下部には空気の入口としてエア流入口24が形成され、上壁21の中央には空気の出口としてエア流出口25が設けられている。また、ケーシング20は、本実施形態においては、エア流入口24と下壁22との間でケース周壁23が上下方向に分割され、上側がケーシング本体20aの一部である本体周壁23a、下側がケーシングカバー20bの一部であるカバー周壁23bを形成している。
【0018】
本体周壁23aは、下端の周方向の少なくとも一部において外側に延出するフランジ26aを有し、カバー周壁23bは、ケーシング本体20aにケーシングカバー20bが取り付けられた状態において、上端のフランジ26aに対応する位置に、外側に延出するフランジ26bを有する。これらのフランジ26a、26bを突き合わせて、例えばボルト、ナット等の締結部材を用いてケーシング本体20aにケーシングカバー20bを取り外し可能に固定することができる。
【0019】
また、下壁22は、後述するフィルタ基台32を嵌め込んで支持することができるよう、上側にフィルタ基台32の形状に合わせた凹部が設けられている。なお、ケーシング本体20a、ケーシングカバー20bは金属或いは合成樹脂材料により製作されている。また、エアクリーナ1は、ケーシング20の軸心線Bが、車両の上下方向と略平行となるように車両に搭載される。
【0020】
エア流入口24は、図2(a)の上面図に示すように、ケース周壁23の下部に設けられた開口部から、水平方向外側、かつ、ケーシング20の半径方向及び接線方向の間の角度を以って斜めに管状に延出している。また、エア流出口25は、上壁21の中央に設けられた円形の開口部から、上方に管状に延出している。なお、エア流入口24には図1で示した第3ダクト13が、エア流出口25には図1で示した第4ダクト14が、それぞれ接続されている。
【0021】
フィルタユニット30は、フィルタエレメント31と、フィルタエレメント31の下部を固定支持する円板形状のフィルタ基台32から構成される。フィルタエレメント31は、フィルタエレメント31の外周側から内周側へと(又はその逆)半径方向に吸気を流通させる濾紙やウレタン等の素材で製造されるフィルタである。フィルタエレメント31は、ケーシング20に取り付けられた状態で、上側から下側にかけて内向する傾斜を有する、すなわち側断面において逆ハの字形状で、中空かつ厚みのある筒形状をなしている。また、フィルタエレメント31の筒形状の両端(上下方向の両端)を形成するフィルタ上面33及びフィルタ下面34は、それぞれ、車両水平方向において平坦となっている。そして、フィルタ上面33は上壁21の下面と当接し、フィルタ下面34はフィルタ基台32の上面と当接して固定されており、フィルタ基台32の下面は下壁22の上面と当接している。このような構成により、ケース周壁23に設けられたエア流入口24から流入した吸気流体(図2(b)の黒矢印)は、フィルタエレメント31を通過したのち、上壁21に設けられたエア流出口25から排出される(図2(b)の白矢印)。
【0022】
フィルタエレメント31の上端の内周径d1はエア流出口25の開口径d2と同等かそれより大きく形成されている。また、本実施形態において、フィルタエレメント31の上端の外周径は、フィルタ基台32の外周径と同じd3であり、d3はケーシング本体20aの下端における開口径d4より小さいため、ケーシングカバー20bを取り外すことによりフィルタユニット30を出し入れすることで交換可能である。また、図示はしないが、フィルタユニット30とケーシング20との当接面はシールにより吸気漏れが防止されている。
【0023】
ここで、エアクリーナ1内部の吸気流体の流れについて説明する。エア流入口24には、第4ダクト14を介して接続するエンジンの吸気負圧が作用する。この吸気負圧によりエアクリーナ1内部において吸気流体の流れが発生する。具体的には、エア流入口24がケース周壁23の下部に斜めに接続されていることにより、吸気流体はケーシング20の内周面とフィルタエレメント31の外周面に沿ってケーシング20の下部から流入する。そして、吸気流体は、図2(a)の破線Cに示すように、ケーシング20の内周面とフィルタエレメント31の外周面の間を、らせん状に上方へ進みながら、その一部が少しずつフィルタエレメント31を通過する。フィルタエレメント31を通過した吸気流体は、フィルタエレメント31の中空部35を上昇して、中空部35と連通するエア流出口25へ進む。尚、中空部とは、図2の中空部35(空洞)に限らず、吸気気体がフィルタエレメントを通じエア流出口25に抜ける構造であればよい。
【0024】
なお、下壁22には排出バルブ27が設けられ、この排出バルブ27はエアクリーナ1内(ケーシング20内)に作用するエンジンの吸気負圧に応じて開閉する。例えば、高速走行時のようにエンジン負荷が比較的高くてケーシング20内に作用する吸気負圧が高いときには、排出バルブが閉保持されて外部空気のケーシング20内への吸込みを防止し、アイドル運転のようにエンジン負荷が低くてケーシング20内に作用する吸気負圧が低いときには負圧変動による振動で排出バルブ27が開放され、これによりケーシング20に貯留された水分が自動的に外部に排出される。
【0025】
以上のように構成された車両のエアクリーナ1は、エア流入口24から流入した吸気流体がケーシング20の下部からケーシング20の内周面に沿ってらせん状に上昇しながら進む。これにより、吸気流体に遠心力が作用し、吸気流体がケーシング20の内周面との間に摩擦が発生することで、フィルタエレメント31を通過する前の吸気流体に含まれる水分を液化して分離することができる。また、吸気流体がフィルタエレメント31を通過する前に吸気流体に含まれる水分が除去されることにより、フィルタエレメント31の湿潤による吸気抵抗増加を抑止することができ、車両の燃費の低下を抑制することができる。また、逆ハの字型のフィルタユニット30及びその形状に対応する逆円錐台形状のケーシング20の組み合わせにより、従来の円筒形状のエアクリーナより小型化することができる。
【0026】
以上で本発明に係る車両のエアクリーナ1の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
上記実施形態においては、フィルタエレメント31の側断面形状は逆ハの字形状としていたが、V字形状(全体として円錐形状)であってもよい。これにより、さらにエアクリーナを小型化できる。
【0028】
また上記実施形態では、ケーシング本体20aとケーシングカバー20bをフランジ接続としていたが、その他の接続方法でも良い。例えば、ケーシング本体20aとケーシングカバー20bの接合部付近に係合機構を設けても良い。
【0029】
また上記実施形態では、フィルタエレメント31はフィルタ基台32を介してケーシング20内に格納されているが、フィルタエレメント31の支持構造はこれに限られるものではない。例えば、フィルタ基台を介さず、フィルタエレメントの下端がケーシングの下壁の上面に直接固定支持されてもよい。さらに、上記実施形態のようケーシングカバー側にフィルタエレメントの支持構造を有することで、フィルタエレメントの格納とケーシングカバーの取付を一体にできるという利点はあるが、例えばケーシング本体側にフィルタエレメントの支持構造を有していてもよい。
【0030】
また上記実施形態では、上壁21(第1面)を下壁22(第2面)に対し、車両の高さ方向(鉛直方向)の上方になる位置に取り付けているが、これに限られるものではない。例えば、上壁(第1面)が下壁(第2面)に対し、車両の高さ方向(鉛直方向)の下方になる位置に取り付けてもよいし、上壁(第1面)と下壁(第2面)が車両の水平方向に並ぶように寄り付けてもよい。この場合、排出バルブは、水分がエアクリーナから排出される位置に適宜設けられる。
【0031】
また上記実施形態では、エンジンを用いた車両に適用しているが、これに限られるものではない。例えば、燃料電池車などの空気を吸入する車両にも適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 :エアクリーナ
2 :汽水分離装置
10 :吸気通路
11 :第1ダクト
12 :第2ダクト
13 :第3ダクト
14 :第4ダクト
20 :ケーシング
20a :ケーシング本体
20b :ケーシングカバー
21 :上壁(第1面)
22 :下壁(第2面)
23 :ケース周壁
23a :本体周壁
23b :カバー周壁
24 :エア流入口
25 :エア流出口
26a :フランジ
26b :フランジ
27 :排出バルブ
30 :フィルタユニット
31 :フィルタエレメント
32 :フィルタ基台
33 :フィルタ上面
34 :フィルタ下面
35 :中空部
図1
図2