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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181839
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221201BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/26
C08K9/04
C08K5/42
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089021
(22)【出願日】2021-05-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】笹川 剛紀
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB001
4J002BB031
4J002BB121
4J002DE236
4J002EV237
4J002FB086
4J002FD016
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムが高充填されているにも拘らず、酸性条件下での溶出量が少なく、成形性が良好で、機械的強度等の物性も優れる、特に食品包装容器及び食器用に適する樹脂組成物、及びそうした樹脂組成物からなる成形品を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する樹脂組成物において、前記無機物質粉末は、スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであることを特徴とする樹脂組成物である。前記スルホン酸は、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸からなる群より選択される1又は複数種のスルホン酸であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する樹脂組成物において、前記無機物質粉末は、スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記スルホン酸が、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸からなる群より選択される1又は複数種のスルホン酸である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の炭酸カルシウム粒子である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムである、請求項1~3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、請求項1~4の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂からなる、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
【請求項8】
請求項1~6の何れかに記載の樹脂組成物からなる食品包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形品に関する。詳しく述べると、本発明は、熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムが高充填されているにも拘らず、酸性条件下での溶出量が少なく、成形性が良好で、機械的強度等の物性も優れる樹脂組成物、及びそうした樹脂組成物からなる成形品、特に食品包装容器及び食器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品包装容器としては、その基材に紙やポリエステル、ポリプロピレン、発泡ポリスチレン等を用いて成形したものが広く用いられている。しかし、環境保護が国際的な問題となってきた現在、合成樹脂並びに紙資材の消費量を低減することが大いに検討されており、この様な観点から、無機物質粉末を熱可塑性樹脂中に高充填してなる樹脂組成物が提唱され(例えば、特許文献1等参照)、食品包装容器の分野においても応用が期待されている。無機物質粉末の内でも炭酸カルシウムは、人体への害がなく、日本国内でも豊富に産出されることから、これを充填した樹脂組成物は食品包装容器や食器への用途に有用である。
【0003】
しかし、上述した様な樹脂組成物により形成された食品包装容器にあっては、使用中に、無機物質粉末が脱落したり、食品、特に、強酸性の飲料等の液状食品へ、無機物質粉末として用いられる炭酸カルシウムが溶出する虞れがあることが課題となっていた。例えばpHが5以下の食品に用いられる樹脂製容器は、温酢酸への溶出量が少ないことが求められるが、炭酸カルシウムを多量配合した樹脂組成物では、この溶出量が大きくなりがちである。また、熱可塑性樹脂中に無機物質粉末が高充填されることで、当該包装容器中に微小な空隙が生じ易くなるため、ガスバリア性が乏しく、湿気、匂い移り、商品の鮮度保持の観点でも課題があり、耐油性も十分ではなかった。
【0004】
そのため、無機物質粉末を配合した樹脂組成物を食品包装容器に使用する場合、食品と接触する側又は両側に樹脂を積層した、2層又は3層構造とするのが一般的である。例えば特許文献2には、無機充填剤を50質量%超含む内層の両面に、熱可塑性樹脂の外層を積層したシート状積層体が開示されている。
【0005】
また、樹脂組成物中での空隙の発生を抑制し、また、機械的強度を改善する手法として、無機物質粉末を表面処理する技術が知られている。特許文献2にも、炭酸カルシウム粒子の表面を、シランカップリング剤や金属石鹸で処理する技術が記載されている。ここで、表面処理技術自体は公知であり、例えば脂肪酸の他に樹脂酸やシラン、スルホン酸等で表面処理した炭酸カルシウムが、非特許文献1や特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2014/109267号明細書
【特許文献2】特許第6857428号公報
【特許文献3】特開2013-79346号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】筒井、日本ゴム協会誌第78巻、218頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2記載のような積層体は、製造時に積層工程が必須となるため、生産性の点で難点がある。容器等の端部に表面層を設けることも困難であるため、酢酸溶出試験で良好な評価結果が得られない場合もある。樹脂積層体はコストも高くなりがちで、また、合成樹脂の消費量低減という環境保護への貢献もなし難くなる。無機物質粉末充填樹脂組成物からの溶出を、樹脂層を積層することなく抑制する技術が、求められている。
【0009】
特許文献2には、ステアリン酸カルシウム等での表面処理によって炭酸カルシウム粒子と熱可塑性樹脂の界面に空隙が発生することを抑制でき、積層体の成形性を向上できるとも記載されている。しかしながら、後記する実施例にも示すように、表面処理剤の選定が不適切だと、樹脂組成物の成形性や機械的特性は、むしろ低下する場合がある。表面処理手法の多くは、例えば非特許文献1や特許文献3におけるように、炭酸カルシウム配合量が熱可塑性樹脂等に比べて少量の系で検討されたものである。無機物質粉末を多量充填する樹脂組成物、特に食品用の樹脂組成物については、表面処理法と成形性や機械的特性との関係が、殆ど検討されていないのが現状である。
【0010】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムが高充填されているにも拘らず、酸性条件下での溶出量が少なく、成形性が良好で、機械的強度等の物性も優れる、特に食品包装容器及び食器用に適する樹脂組成物、及びそうした樹脂組成物からなる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、炭酸カルシウムを多量充填する樹脂組成物において、スルホン酸及び/又はその塩を主成分とする表面処理剤で炭酸カルシウム表面を処理することにより、樹脂組成物の物性を損なうことなく成形性を改善し、しかも酢酸等への溶出量を低減できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0012】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する樹脂組成物において、前記無機物質粉末は、スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであることを特徴とする樹脂組成物である。
【0013】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記スルホン酸が、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸からなる群から選択された1又は複数のスルホン酸である樹脂組成物が示される。
【0014】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記炭酸カルシウム粒子のJIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である樹脂組成物が示される。
【0015】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムである樹脂組成物が示される。
【0016】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である樹脂組成物が示される。
【0017】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂からなる樹脂組成物が示される。
【0018】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記のいずれかの樹脂組成物からなる成形品が示される。
【0019】
本発明の樹脂組成物の一実施形態においては、前記のいずれかの樹脂組成物からなる食品包装容器が示される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムが高充填されているにも拘らず、酸性条件下での溶出量が少なく、成形性が良好で、機械的強度等の物性も優れる樹脂組成物が提供される。本発明の樹脂組成物に基づく成形品は、特に食品包装容器及び食器用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、及びスルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムを、質量比50:50~10:90の割合で含有する。以下、樹脂組成物中のこれら成分について説明する。
【0023】
≪熱可塑性樹脂≫
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂の種類に特に制限はない。例として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂;さらにはポリビニルアルコール、石油炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂等の種々の公知の熱可塑性樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。複数種の熱可塑性樹脂を、併用することもできる。また、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-エチレン共重合体、スチレン-イソプレン-エチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、フッ素系エラストマー等のエラストマー成分を含有していても良い。
【0024】
これらの熱可塑性樹脂のうち、その成形容易性、性能面、及び経済面等から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0025】
<ポリオレフィン系樹脂>
ここで、ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン系樹脂であり、具体的には、上記した様にポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂、その他、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等、更にそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。なお、上記「主成分とする」とは、オレフィン成分単位がポリオレフィン系樹脂中に50質量%以上含まれることを意味し、その含有量は好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。特に、ポリオレフィンの単独重合体(ホモポリマー)が好ましい。なお、本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂の製造方法は特に限定はなく、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒、酸素、過酸化物等のラジカル開始剤等を用いる方法等の何れによって得られたものであっても良い。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、これらポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。より好ましくは、熱可塑性樹脂が、実質的にポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂からなる。これら樹脂は、物性、成形性、及びコストのバランスに特に優れ、本発明の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂成分として好適である。特に、機械的強度と耐熱性とのバランスに特に優れることから、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
【0027】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位が50質量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、プロピレン単独重合体、又はプロピレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。プロピレン単独重合体としては、アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチック及び種々の立体規則性を示す直鎖又は分枝状ポリプロピレン等の何れもが包含される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良く、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であっても良い。共重合成分(他のモノマー)としては、エチレンや、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン等の炭素数4~10のα-オレフィン;さらにはテトラフロロエチレンや酢酸ビニル等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、好ましくは単独重合体、あるいは他のモノマーが少量、例えば5質量%未満共重合した樹脂を使用する。なお、プロピレンの単独重合体においても、重合の結果として例えばヘキセン等のα-オレフィンが共重合したかのような構造が一部に含まれる場合があるが、本発明においてはそうした重合体をも、広くプロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)として包含する。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
また、前記ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位が50質量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-ブテン1共重合体、エチレン-ヘキセン1共重合体、エチレン-4メチルペンテン1共重合体、エチレン-オクテン1共重合体等、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0029】
≪無機物質粉末≫
本発明の樹脂組成物に含有される無機物質粉末は、スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムである。
【0030】
<炭酸カルシウム>
炭酸カルシウムとしては、合成法により調製されたもの(いわゆる軽質炭酸カルシウム)、石灰石等のCaCOを主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られるもの(いわゆる重質炭酸カルシウム)の何れであっても良く、これらを組み合わせて用いても良い。その形状としても、特に限定されるわけではなく、粒子状、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。また、粒子状としても、一般的に合成法により得られるような球形のものであっても、あるいは、採集した天然鉱物を粉砕にかけることにより得られるような不定形状のものであっても良い。
【0031】
炭酸カルシウムとしては、特に限定される訳ではないが、その平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下が好ましく、0.8μm以上5.0μm以下がより好ましく、さらに好ましくは、1.0μm以上4.0μm以下である。なお、本明細書において述べる炭酸カルシウム等の無機物質粉末の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値をいう。測定機器としては、例えば、島津製作所製の比表面積測定装置SS-100型を好ましく用いることができる。平均粒子径が6.0μmよりも大きくなると、例えばシート状の成形品を形成した場合に、その成形品の層厚にもよるが、成形品表面より無機物質粉末が突出して、当該粉末が脱落したり、表面性状や機械的強度等を損なうおそれがある。特に、その粒径分布において、粒子径45μm以上の粒子を含有しないことが好ましい。他方、粒子が細かくなり過ぎると、前述した樹脂と混練した際に粘度が著しく上昇し、成形品の製造が困難になる虞れがある。そうした問題は、無機物質粉末の平均粒子径を0.7μm以上、特に0.8μm以上6.0μm以下とすることによって、防ぐことが可能となる。
【0032】
本発明において炭酸カルシウムは、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満、特に0.8μm以上2.0μm未満である第1の炭酸カルシウムと、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径が2.0μm以上6.0μm以下、特に2.0μm以上5.0μm以下である第2の炭酸カルシウムとを含有しても良い。このことによって、成形品の表面性状や、印刷性、ブロッキング性等の物性を改善することができる。また、炭酸カルシウムの偏在が抑制され、外観及び、破断伸び等の機械的特性が良好な成形品を得ることができ、樹脂組成物成形品からの炭酸カルシウムの脱落を低減することも可能となる。特に限定されるわけではないが、第1の炭酸カルシウムの平均粒子径をaとし、第2の炭酸カルシウムの平均粒子径をbとした場合に、a/b比率が0.85以下、より好ましくは0.10~0.70、さらに好ましくは0.10~0.50程度となるように大別できるものであることが望ましい。このようなある程度明確な平均粒子径の差をもったものを併用することで、特に優れた効果が期待できるためである。また、第1の炭酸カルシウムと第2の炭酸カルシウムのそれぞれは、その粒子径(μm)の分布の変動係数(Cv)が0.01~0.10程度であることが望ましく、特に0.03~0.08程度であることが望ましい。変動係数(Cv)で規定される粒子径のばらつきがこの程度であれば、各粉末群がより相補的に効果を与え得ると考えられる。第1の炭酸カルシウムと第2の炭酸カルシウムとの質量比は、90:10~98:2、特に92:8~95:5程度とすることが好ましい。平均粒子径分布が異なる炭酸カルシウム群として、3つ以上のものを使用しても良い。
【0033】
本発明において炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムを含むことが好ましい。より好ましくは、重質炭酸カルシウム及びその不可避的不純物により、本発明の樹脂組成物における無機物質粉末が構成される。ここで、重質炭酸カルシウムとは、天然の石灰石等を機械的に粉砕・加工して得られるものであって、化学的沈殿反応等によって製造される合成炭酸カルシウムとは明確に区別される。なお、粉砕方法には乾式法と湿式法とがあるが、乾式法によるものが好ましい。
【0034】
重質炭酸カルシウムは、例えば、合成法による軽質炭酸カルシウムとは異なり、粒子形成が粉砕処理によって行われたことに起因する、表面の不定形性、比表面積の大きさに特徴を有する。重質炭酸カルシウムがこの様に不定形性、比表面積の大きさを有するため、熱可塑性樹脂中に配合した場合に重質炭酸カルシウムは、熱可塑性樹脂に対してより多くの接触界面を有し、均一分散に効果がある。
【0035】
特に限定されるわけではないが、上記炭酸カルシウムの比表面積としては、その平均粒子径によっても左右されるが、3,000cm/g以上35,000cm/g以下程度であることが望まれる。ここでいう比表面積は空気透過法によるものである。比表面積がこの範囲内にあると、得られる成形品の加工性低下が抑制される傾向がある。
【0036】
また、炭酸カルシウム粒子の不定形性は、粒子形状の球形化の度合いが低いことで表わすことが出来、特に限定されるわけではないが、具体的には、真円度が0.50以上0.95以下、より好ましくは0.55以上0.93以下、さらに好ましくは0.60以上0.90以下である。炭酸カルシウム粒子の真円度がこの範囲内にあると、成形品の強度や成形加工性も適度なものとなる。なお、ここで、真円度とは、(粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積)で表せるものである。真円度の測定方法は特に限定されず、例えば顕微鏡写真から粒子の投影面積と粒子の投影周囲長とを測定しても良く、一般に商用されている画像解析ソフトを用いても良い。
【0037】
<表面処理>
本発明においては、上記のような炭酸カルシウムは、スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で、少なくとも一部が表面処理されている。こうした表面処理(表面改質)により、炭酸カルシウムの分散性や反応性を高め、樹脂組成物の物性や成形性を改善することができる。しかも、脂肪酸等の汎用表面処理剤により改質された炭酸カルシウムとは異なり、熱可塑性樹脂中に高充填されても、機械的特性や酸性条件下での溶出等の物性がバランス良く優れ、食品包装容器及び食器用に好適な樹脂組成物を与える。
【0038】
<スルホン酸表面処理剤>
本発明において「スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤」とは、スルホン酸基を有する有機物及び/又はその塩を含有する表面処理剤を全て包含する。スルホン酸基を有する有機物の例として、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパン-1-スルホン酸、プロパン-2-スルホン酸、n-ブタン-1-スルホン酸、n-ブタン-2-スルホン酸、t-ブタン-2-スルホン酸、2-メチル-プロパン-1-スルホン酸、n-オクタン-1-スルホン酸、n-オクタン-2-スルホン酸、n-ドデカン-1-スルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、ジアルキルスルホサクシネート、さらにはパーフロロブタンスルホン酸やパーフロロオクタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、m-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、各種キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、その他アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等のアリールスルホン酸やアルキルアリールスルホン酸;さらにはアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ラウレス硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸等の種々の公知の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。スルホン酸塩は、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩であっても良く、アンモニウム塩であっても良い。また、これらスルホン酸(塩)を複数種併用することもできる。さらには、これらスルホン酸(塩)と共に、脂肪酸や樹脂酸、無水脂肪酸変性樹脂等を含有する表面処理剤であっても良い。
【0039】
<スルホン酸(塩)>
しかしながら本発明においては、スルホン酸が、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸からなる群より選択される1又は複数種のスルホン酸であることが好ましい。これらスルホン酸及び/又はその塩で炭酸カルシウムを表面処理することにより、樹脂組成物の酸性条件下での溶出量を特に顕著に低減することができる。
【0040】
より好ましくは、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、及び/又はそれらの塩で表面処理する。一般に、アルキル鎖長が長い方が熱可塑性樹脂との相溶性に優れる傾向があり、本発明の効果が特に顕著なものとなる。さらに好ましくは、炭素数6~30、特に8~20のアルキルスルホン酸、及び/又は炭素数3~30のアルキル基、特に炭素数6~20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、あるいはその塩を使用する。これらの中でも、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、例えばオクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(ラウリルベンゼンスルホン酸)、テトラデシルベンゼンスルホン酸(ミリスチルベンゼンスルホン酸)、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸(パルミチルベンゼンスルホン酸)、オクタデシルベンゼンスルホン酸(ステアリルベンゼンスルホン酸)、及びそれらの塩が、特に好ましい。なお、ここでベンゼン環上のアルキル基の数に特に制限はなく、上記のようなモノアルキル置換のベンゼンスルホン酸であっても良く、ジ又はトリアルキル置換のベンゼンスルホン酸であっても良い。また、アルキル基は直鎖状であっても分岐していても良く、一部が環状構造となっていても良い。
【0041】
<表面処理法>
上記のようなスルホン酸(塩)による炭酸カルシウムの表面処理方法に特に制限はなく、種々の公知の表面処理法を援用することができる。例えば、炭酸カルシウムのスラリーにスルホン酸(塩)を加えて攪拌する方法(湿式法)、粉砕機やミキサー中に炭酸カルシウムとスルホン酸(塩)とを入れ、所望により加熱しながら攪拌する方法(乾式法)、さらには炭酸カルシウムの含水ケーキとスルホン酸とを、ミキサー中で加熱しながら攪拌する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。表面処理剤として使用するスルホン酸(塩)の種類にもよるが、一般に軽質炭酸カルシウムの表面処理は湿式法で、重質炭酸カルシウムの表面処理は乾式法で行うのが好ましい。
【0042】
表面処理の際の、炭酸カルシウムに対するスルホン酸(塩)の量比に、特に制限はない。しかしながら、炭酸カルシウム100質量部に対し、スルホン酸(塩)の量を0.2~10質量部、特に0.5~5質量部、中でも1~3質量部程度とするのが好ましい。こうしたスルホン酸(塩)量であれば、炭酸カルシウム表面を均一に改質することが容易となり、また、余剰のスルホン酸(塩)が使用時に溶出するリスクを低減することができる。なお、炭酸カルシウム表面のスルホン酸量は、溶剤抽出や熱分解GC/MS等の公知の分析方法によって定量することができる。
【0043】
湿式法により表面処理する場合、スラリー中の炭酸カルシウム濃度や溶媒の種類に特に制限はない。好ましくは、炭酸カルシウム濃度10~300g/L、特に25~200g/L程度の水性スラリーとする。こうした濃度であれば、表面処理の生産性が高められ、また、粘度が高くなって作業性が低下することもない。水性溶媒を用いることにより、表面処理を簡便かつ低コストで行うことができ、また、処理温度を高めても安全性を保持することができる。湿式法におけるスラリー温度は、好ましくは20~98℃、より好ましくは40~90℃、さらに好ましくは60~80℃とする。表面処理を20℃以上で行うことにより、表面処理剤を炭酸カルシウム上に均一に吸着結合させることが可能となり、均一に表面処理することができる。また、スラリー温度を98℃以下とすれば、突沸等のリスクがなく、耐圧性の装置も不要となる。なお、湿式法での表面処理において、スラリー中に界面活性剤を含有させても良い。
【0044】
乾式法による表面処理は、例えばヘンシェルミキサーやニーダー、押出混練機等の混練機中で、炭酸カルシウムとスルホン酸(塩)とを混練することによって行うことができる。特に、重質炭酸カルシウムを用いる場合は、粉砕機中に所望のスルホン酸(塩)を添加し、炭酸カルシウムの粒径調整と同時に表面処理を行うこともできる。ここで、表面処理時の温度は、使用するスルホン酸(塩)の種類に応じて任意に設定することができるが、一般に20~150℃、特に40~130℃、さらには60~120℃程度とするのが好ましい。表面処理を20℃以上で行うことにより、表面処理剤を炭酸カルシウム上に均一に吸着結合させることが可能となり、均一に表面処理することができる。また、処理温度が150℃程度以下であれば、表面処理剤の熱劣化や変質のリスクを低減できる。より好ましくは、使用するスルホン酸(塩)の融点以上の温度で処理する。このことによって、表面処理剤は炭酸カルシウム上により均一に吸着結合し得る。例えば、ラウリルベンゼンスルホン酸等は室温で液状であるので、表面処理は室温で行うこともできる。p-トルエンスルホン酸を用いた場合には、110~150℃程度の温度で混練しても良い。なお、乾式法においても少量の溶媒を併用することができ、例えばスルホン酸(塩)の水溶液を炭酸カルシウムに加えて、上記のように混練又は粉砕しても良い。
【0045】
炭酸カルシウムの含水ケーキを用いる表面処理でも、乾式法と同様の条件を採用することができるが、好ましくは処理時の温度を20~150℃、特に40~98℃程度とする。このことによって、表面処理剤の不均一吸着や突沸のリスクを低減することが可能となる。
【0046】
本発明の樹脂組成物において、無機物質粉末は上記のようなスルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであるが、さらにこれら以外の無機物質粉末を含んでも良い。例としてカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、若しくはこれらの水和物の粉末状のものが挙げられ、具体的には、例えば、非表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が挙げられる。これらは合成のものであっても天然鉱物由来のものであっても良く、また、これらは単独又は2種類以上併用して含有されても良い。しかしながら熱可塑性樹脂中への分散性や樹脂組成物からの溶出等を考慮すると、本発明の樹脂組成物における無機物質粉末は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは不可避的不純物を除く実質的に全量が、上記の表面処理炭酸カルシウム粉末から成るのが良い。
【0047】
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物においては、上記した熱可塑性樹脂と無機物質粉末とが、50:50~10:90の質量比で含有される。無機物質粉末の含有量が少ないと、樹脂組成物の質感や強度等の物性が得難く、多すぎると混練や成形加工が困難となり、柔軟性も不十分となるためである。熱可塑性樹脂と無機物質粉末との合計質量に占める無機物質粉末の比率は、好ましくは52質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。同比率の上限値に関しては、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下とする。
【0048】
<その他の添加剤>
本発明に係る樹脂組成物には、必要に応じて、補助剤としてその他の添加剤を配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、色剤、滑剤、カップリング剤、流動性改良材(流動性調整剤)、架橋剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤等を配合しても良い。これらの添加剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらは、後述の混練工程において配合しても良く、混練工程の前にあらかじめ原料成分中に配合していても良い。
【0049】
本発明に係る樹脂組成物において、これらのその他の添加剤の添加量は、所望の物性及び加工性を阻害しない限り特に限定されるものではないが、上記樹脂組成物全体の質量を100%とした場合に、これらその他の添加剤はそれぞれ0~10質量%程度、特に0.04~5質量%程度の割合で、かつ当該その他の添加剤全体で10質量%以下となる割合で配合されることが望まれる。例えば、樹脂組成物全100質量%中には、10~45質量%、特に20~25質量%の熱可塑性樹脂;90~45質量%、特に75~55質量%の表面改質炭酸カルシウム;及び0~10質量%、特に0.04~5質量%の上記添加剤が含有されていても良い。
【0050】
以下に、これら添加剤のうち、重要と考えられるものについて例を挙げて説明するが、これらに限られるものではない。
【0051】
可塑剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油等が挙げられる。これら可塑剤は通常、熱可塑性樹脂に対して数質量%程度配合されるが、その量はこれら範囲に限定されず、樹脂組成物の用途によってはエポキシ化大豆油等を20~50質量部程度配合することも可能である。しかしながら本発明の樹脂組成物においては、その配合量は熱可塑性樹脂100質量部に対し0.5~10質量部、特に1~5質量部程度とするのが好ましい。
【0052】
色剤としては、公知の有機顔料又は無機顔料あるいは染料の何れをも用いることができる。具体的には、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオオサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料などの有機顔料や群青、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。
【0053】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪族アルコール系滑剤;ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、複合型アミド等の脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等の脂肪族エステル系滑剤;脂肪酸金属石鹸系滑剤、例えばジンクステアレートやステアリン酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0054】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤が使用できる。リン系、より具体的には亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系酸化防止剤が好ましく用いられる。亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0055】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。これらリン系酸化防止剤は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0056】
フェノール系の酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、及びテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が例示され、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0057】
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤や、あるいはリン系難燃剤や金属水和物などの非リン系ハロゲン系難燃剤を用いることができる。ハロゲン系難燃剤としては、具体的には例えば、ハロゲン化ビスフェニルアルカン、ハロゲン化ビスフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル、ハロゲン化ビスフェニルスルフォンなどのハロゲン化ビスフェノール系化合物、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールSなどのビスフェノール-ビス(アルキルエーテル)系化合物等が、またリン系難燃剤としては、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、クレジルジ2、6-キシレニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等が、金属水和物としては、例えば、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせ等がそれぞれ例示でき、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。難燃助剤として働き、より効果的に難燃効果を向上させることが可能となる。さらに、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を難燃助剤として併用することも可能である。
【0058】
発泡剤は、溶融混練機内で溶融状態にされている樹脂組成物に混合、又は圧入し、固体から気体、液体から気体に相変化するもの、又は気体そのものであり、樹脂組成物の空隙率(発泡倍率)を制御するために使用される。発泡剤は、常温で液体のものは樹脂温度によって気体に相変化して溶融樹脂に溶解し、常温で気体のものは相変化せずそのまま溶融樹脂に溶解する。溶融樹脂に分散溶解した発泡剤は、溶融樹脂を押出ダイからシート状に押出した際に、圧力が開放されるのでシート内部で膨張し、シート内に多数の微細な独立気泡を形成して発泡シートが得られる。発泡剤は、副次的に原料樹脂組成物の溶融粘度を下げる可塑剤として作用し、原料樹脂組成物を可塑化状態にするための温度を低くする。
【0059】
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などが挙げられる。
【0060】
発泡剤としては、さらに、例えば、キャリアレジンに発泡剤の有効成分が含まれるものを好ましく用いる事ができる。キャリアレジンとしては、結晶性オレフィン樹脂等が挙げられる。これらのうち、結晶性ポリプロピレン樹脂が好ましい。また、有効成分としては、炭酸水素塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましい。結晶性ポリプロピレン樹脂をキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む発泡剤コンセントレートであることが好ましい。
【0061】
成形工程において発泡剤に含まれる発泡剤の含有量は、熱可塑性樹脂及び無機物質粉末の量等に応じて適宜設定することができ、樹脂組成物の全質量に対して0.04~5.00質量%の範囲とすることが好ましい。
【0062】
流動性調整剤としても、種々の慣用のものを使用することができる。例としてジアルキルパーオキサイド等の過酸化物、例えば1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されない。使用する熱可塑性樹脂の種類によっては、これら過酸化物は架橋剤としても作用する。特に上記熱可塑性樹脂成分がジエン由来の構成単位を有する場合、上記過酸化物の作用で共重合体の一部が架橋し、熱可塑性樹脂組成物の物性や加工性を制御する上での一助となり得る。過酸化物の添加量に特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物の全質量に対して0.04~2.00質量%、特に0.05~0.50質量%程度の範囲とすることが好ましい。
【0063】
≪樹脂組成物の調製方法≫
本発明の樹脂組成物を調製する方法としては、通常の方法を使用することができ、成形方法(押出成形、射出成形、真空成形等)に応じて適宜設定することが可能である。例えば、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを混練溶融することにより調製できる。溶融混練は、各成分を均一に分散させる傍ら、高い剪断応力を作用させて混練することが好ましい。混合装置としても、一般的な押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等種々のものを用いることができるが、例えば二軸混練機で混練することが好ましい。調製した樹脂組成物は例えば、所望の形状及びサイズのペレットとし、種々の成形品の製造に用いることができる。また、目的とする成形品の形状によっては、各原料を混練して熱可塑性樹脂組成物を調製すると同時に成形することも可能である。例えば、各種原料を二軸押出機で混練し、シート状物を押出成形することにより、シート形状の成形品を製造することができる。
【0064】
≪成形品≫
本発明はまた、上記した樹脂組成物からなる成形品を包含する。本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムが高充填されているにも拘らず、成形性が良好で、機械的強度等の物性も優れる。そのため、様々な用途に有用な各種形状の成形品へと成形することができる。本発明の樹脂組成物はまた、酸性条件下での溶出量が少ないため、従来の無機物質粉末充填樹脂組成物とは異なり、食品と直接触れる成形品にも使用することができる。しかもその際に、ポリオレフィン等の樹脂層を積層した、2層~3層構造とする必要がない。そのため本発明の成形品は、特に食品包装容器及び食器用に好適である。本発明はさらに、上記の樹脂組成物からなる食品包装容器を包含する。
【0065】
≪食品包装容器≫
本発明に係る食品包装容器の形状等は特に限定されるものではなく、弁当容器、コップ、皿、ボウル、茶碗、さらにはスプーン、フォーク、箸等、各種の形態及びサイズのものであって良い。例えば、肉厚40μm~10mm、より好ましくは肉厚100μm~5mmである容器体としても良い。この範囲内の肉厚であれば、熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムが均一に分散されていることにより、良好な成形性、加工性が得られ、偏肉の無い均質で欠陥のない容器体を形成することができる。
【0066】
<成形体の製造方法>
本発明の成形品の製造方法としては、所望の形状に成形できるものであれば特に限定されず、従来公知の押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、カレンダー成形等の何れの方法によっても成形加工可能である。上記のように本発明の樹脂組成物は、食品包装容器等に成形するに当たって他樹脂層との2層~3層構造とする必要がないので、種々の形状の成形体に慣用の方法で成形することができる。さらにまた、本発明に係る樹脂組成物が発泡剤を含有し、発泡体である態様の成形品を得る場合においても、所望の形状に成形できるものであれば発泡体の成形方法として従来公知の、例えば、射出発泡,押出発泡,発泡ブロー等の液相発泡法、あるいは、例えば、ビーズ発泡,バッチ発泡,プレス発泡,常圧二次発泡等の固相発泡法の何れを用いることも可能である。前記した、結晶性ポリプロピレンをキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む熱可塑性組成物の一態様においては、射出発泡法及び押出発泡法が望ましく用いられ得る。
【0067】
なお、射出成形、押出成形等における成形温度としては、その成形方法や使用する熱可塑性樹脂の種類等によってもある程度異なるため、一概には規定できるものではないが、好ましくは熱可塑性樹脂成分の融点+5~100℃程度、特に+10~50℃程度の温度、例えば、180~260℃、より好ましくは190~230℃とすることができる。こうした温度であれば、本発明に係る樹脂組成物が、良好なドローダウン特性、延展性を持って、かつ組成物が局部的にも変性を生じることなく所定形状に成形できる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本明細書に開示され、また添付の請求の範囲に記載された、本発明の概念及び範囲の理解を、より容易なものとする上で、特定の態様及び実施形態の例示の目的のためにのみ記載するのであって、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
平均粒子径2.2μm(空気透過法による)、比表面積10,000cm/gの重質炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製のソフトン(商品名)1000)100質量部を、キシレンスルホン酸(テイカ株式会社製テイカトックス(登録商標)110、有効成分96.7%)3質量部と共に、ヘンシェルミキサーにて、温度120℃、回転数1200rpmで30分間攪拌し、表面処理した。
【0070】
上記で得られた表面処理炭酸カルシウム60質量部と、ポリプロピレン単独重合体(株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)E111G、融点160℃)40質量部とを、ステアリン酸マグネシウム滑剤0.5質量部と共に、株式会社パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、シリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることでペレット化した。
【0071】
上記のようにして作製したペレットをそれぞれ、株式会社東洋精機製作所製のラボプラストミル一軸Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25)により、220℃で押出し、厚さ0.3mmのシートに成形した。得られたシートについて、下記の試験方法によって引張強度及び伸び等の物性を評価した。試験結果を、表1に示す。
(酢酸溶出試験)
上記シートから30mm×30mmの短冊状試験片を切り出し、これを4%酢酸45mlに(接触面積1cm当たりの酢酸量:約2ml)、60℃で30分間浸漬した。浸漬後の試料を乾燥させて質量を測定し、浸漬前後の質量変化から、酢酸溶出量(質量%)を算出した。なお、試験はn=3にて行い、平均値を採用した。
(引張強度、伸び)
引張強度、伸びは、上記シートより切り出したダンベル形状の試料を用い、JIS K 7161-2:2014に準じて、23℃、50%RHの条件下で、オートグラフAG-100kNXplus(株式会社島津製作所)を用いて測定した。引張方向は押出方向とし、引張速度は50mm/分とした。
(延伸特性)
上記シートを100℃で押出方向に4倍まで延伸し、何倍に延伸した際に破断するかを観察した。
【0072】
[比較例1]
無機物質粉末として未処理のソフトン1000を使用し、実施例1と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
【0073】
[実施例2]
キシレンスルホン酸の代わりに直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(テイカ株式会社製テイカパワー(登録商標)L121、有効成分96.7%)を用い、実施例1と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
【0074】
[実施例3]
ソフトン1000を精製水中に分散させ(濃度100g/L)、スラリーを作製した。このスラリーに、p-トルエンスルホン酸ナトリウムをスラリー1Lに対して3g(炭酸カルシウム基準で3質量%)添加し、50℃で30分間攪拌した後、濾別・乾燥して表面処理炭酸カルシウムを得た。
この表面処理炭酸カルシウムを用いて、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。試験結果を、表1に示す。
【0075】
[実施例4]
p-トルエンスルホン酸ナトリウムの代わりに1-ドデカンスルホン酸ナトリウムを用い、実施例3と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
【0076】
[比較例2]
表面処理炭酸カルシウムとして、市販の脂肪酸表面処理重質炭酸カルシウム(平均粒子径2.2μm;備北粉化工業株式会社製ライトン(登録商標)S-4)を用い、実施例1と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
【0077】
[比較例3]
表面処理剤としてキシレンスルホン酸の代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製ユーメックス(登録商標)1010)を用い、表面処理時の温度を180℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
【0078】
[比較例4]
表面処理剤としてスチレン・マレイン酸エステル(マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製レジット(登録商標)SM-101)を用い、比較例3と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
本発明に従い、スルホン酸(塩)で表面処理した炭酸カルシウムを含有する実施例1~4の試料は、いずれも酢酸溶出量が小で、食品用途に適していることが判明した。特に、アルキルベンゼンスルホン酸で表面処理した実施例2の試料では、酢酸溶出量が大幅に低減されていた。また、スルホン酸(塩)で表面処理した炭酸カルシウムを用いることにより、無機物質粉末が多量に充填された樹脂組成物においても、延伸特性を損なうことなく強度を改善できることが示された。原料とする炭酸カルシウムが異なるので単純な比較はできないが、脂肪酸で表面処理した炭酸カルシウムを用いた比較例2の試料と比べても、実施例における酢酸溶出量は大幅に低減されており、引張強度は大となっている。変性樹脂で表面処理した比較例3及び4の結果と比較すると、スルホン酸(塩)による表面処理効果はさらに顕著である。
【0081】
[実施例5~6、比較例5]
表面処理炭酸カルシウム70質量部と、ポリプロピレン単独重合体30質量部とを用いた以外は、実施例1及び2、並びに比較例2と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
【0082】
[実施例7]
表面処理時のスルホン酸(塩)の量を1質量部とした以外は、実施例6と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
【0083】
[実施例8]
p-トルエンスルホン酸ナトリウム3質量部の代わりにクメンスルホン酸ナトリウム(テイカ株式会社製テイカトックス(登録商標)N5040、有効成分約40%)5質量部を用い、実施例3と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。得られた表面処理炭酸カルシウム70質量部と、ポリプロピレン単独重合体30質量部とを用い、実施例5~6と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
【0084】
[比較例6]
キシレンスルホン酸の代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製ユーメックス(登録商標)5200)を用い、比較例3と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。得られた表面処理炭酸カルシウム70質量部と、ポリプロピレン単独重合体30質量部とを用い、実施例5~6と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
【0085】
[比較例7~8]
表面処理炭酸カルシウム70質量部と、ポリプロピレン単独重合体30質量部とを用いた以外は、比較例3~4と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
本発明に従い、スルホン酸(塩)で表面処理した炭酸カルシウムを含有する実施例5~8の試料はいずれも、汎用の脂肪酸処理炭酸カルシウムを含有する比較例5の試料に比べて酢酸溶出量が小さく、食品用途に適していることが判明した。特に、アルキルベンゼンスルホン酸で表面処理した実施例6の試料では、酢酸溶出量が大幅に低減されていた。また、スルホン酸(塩)で表面処理した炭酸カルシウムを用いることにより、引張強度や伸び等の機械的特性に優れる試料が得られることが示された。一方、比較例6~8では炭酸カルシウム粒子が変性樹脂で覆われる形となるため、酢酸溶出量はある程度低減されたが、機械的特性が著しく低下してしまった。本発明が顕著な効果を奏することが示された。
【0088】
以上より、本発明に従いスルホン酸を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂組成物は、無機物質粉末が高充填されているにも拘らず酸性条件下での溶出量が少なく、成形性が良好で、機械的強度等の物性も優れ、特に食品包装容器及び食器用に適することが明らかとなった。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する食品包装容器用樹脂組成物において、
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、
前記無機物質粉末は、スルホン酸及び/又はその塩を含有する表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであって、
前記炭酸カルシウム100質量部に対する前記スルホン酸及び/又はその塩の量が3~10質量部である樹脂組成物。
【請求項2】
前記スルホン酸が、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸からなる群より選択される1又は複数種のスルホン酸である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム100質量部に対する前記スルホン酸及び/又はその塩の量が3~5質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の炭酸カルシウム粒子である、請求項1~3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムである、請求項1~4の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂からなる、請求項1~5の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の樹脂組成物からなる食品包装容器。