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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181844
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】燃料レベルセンサの故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D45/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089027
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】三浦 慎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】南風原 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜大
(72)【発明者】
【氏名】沖田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】石津 嘉子
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA01
3G384AA28
3G384BA47
3G384CA25
3G384CB05
3G384DA46
3G384FA17Z
3G384FA80Z
(57)【要約】
【課題】燃料レベルセンサの故障診断の実効性を担保しつつその診断精度を高める。
【解決手段】車両の前後方向の加速度の変動を表す加速変動値を特定する第1特定部(33,42A/B)と、車両の旋回の程度を表す旋回指標値を特定する第2特定部(33,42A/B)と、特定された加速変動値が第1閾値より大きくかつ特定された旋回指標値が第2閾値より小さいという第1条件が成立した場合に、燃料レベルセンサ1の出力変動である燃料レベル変動値を算出し、算出した燃料レベル変動値が予め定められた判定値未満であれば燃料レベルセンサ1が故障していると判定する故障診断を行う診断部32とを備える。加速変動値が第1閾値より大きくかつ旋回指標値が第2閾値以上であるという第2条件が成立した場合、診断部32は、燃料レベルセンサ1の故障診断を制限する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料レベルセンサの故障を診断する装置であって、
前記車両の前後方向の加速度の変動を表す加速変動値を特定する第1特定部と、
前記車両の旋回の程度を表す旋回指標値を特定する第2特定部と、
前記第1特定部により特定された加速変動値が所定の第1閾値より大きくかつ前記第2特定部により特定された旋回指標値が所定の第2閾値より小さいという第1条件が成立した場合に、前記燃料レベルセンサの出力変動である燃料レベル変動値を算出し、算出した燃料レベル変動値が予め定められた判定値未満であれば前記燃料レベルセンサが故障していると判定する故障診断を行う診断部とを備え、
前記加速変動値が前記第1閾値より大きくかつ前記旋回指標値が前記第2閾値以上であるという第2条件が成立した場合、前記診断部は、前記燃料レベルセンサの故障診断を制限する、ことを特徴とする燃料レベルセンサの故障診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料レベルセンサの故障診断装置において、
前記加速変動値は、前記車両が実質的に加速または減速を開始した時点より遅れた第1期間中の前記加速度の最大値と最小値との差分であり、
前記車両の左側の車輪速から特定される加速度をL加速度、前記車両の右側の車輪速から特定される加速度をR加速度としたとき、前記旋回指標値は、前記第1期間と重複する所定期間中の前記L加速度と前記R加速度との差分の最大値である、ことを燃料レベルセンサの故障診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料レベルセンサの故障診断装置において、
前記燃料レベル変動値は、前記第1期間より遅れた第2期間中の前記燃料レベルセンサの最大出力値と最小出力値との差分である、ことを特徴とする燃料レベルセンサの故障診断装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料レベルセンサの故障診断装置において、
前記判定値は、前記加速変動値が大きいほど大きくなるように設定される、ことを特徴とする燃料レベルセンサの故障診断装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料レベルセンサの故障診断装置において、
前記診断部は、前記第2条件が成立した場合に、前記燃料レベルセンサの故障診断を禁止する、ことを特徴とする燃料レベルセンサの故障診断装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料レベルセンサの故障診断装置において、
前記診断部は、前記第2条件が成立した場合に、前記判定値を低下方向に補正した補正判定値を用いて前記燃料レベルセンサの故障診断を行う、ことを特徴とする燃料レベルセンサの故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料レベルセンサの故障を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの燃料消費量に基づき燃料レベルセンサの故障を診断する方法が知られている。すなわち、エンジンの運転履歴から推定される燃料消費量が規定量に達した場合に、当該規定量の燃料が消費された前後における燃料レベルセンサの出力変動を調べ、この出力変動が予め定められた判定値未満であれば燃料レベルセンサが故障していると判定する、という方法である。
【0003】
ところで、近年では、ハイブリッド車のような燃費性能に優れたシステムを採用した車両が増えている。このような車両では、エンジンの燃料消費量が少ないので、燃料消費量が上述した規定量(故障診断が可能になる消費量)に達するのに必要な車両の走行距離が長くなる傾向にある。このことは、燃料レベルセンサの故障診断を行える頻度が低下する(診断実効性が低下する)ことを意味する。
【0004】
そこで、エンジンの燃料消費量に基づくことなく燃料レベルセンサの故障を診断することが提案される。その一例として、下記特許文献1には、車両の走行状態の変動を示す車両変動パラメータ(例えば車速の変化量)が所定の変動判定値よりも大きく、かつ燃料レベルセンサの出力変動が所定の固着判定値よりも小さい場合に、燃料レベルセンサが故障(固着)していると判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-220109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように、車両の挙動変化が大きい(換言すれば燃料タンク内の燃料の液面が変動し易い)ときの燃料レベルセンサの出力変動に基づき故障診断を行うようにした場合には、燃費性能に優れた車両においても十分な診断実効性が確保されると期待される。しかしながら、例えば車両の前後方向の挙動変化が大きい状態であっても、併せて車両が旋回している状態では、燃料の液面変動の相殺により、燃料タンク内の位置によっては液面が大きく変動しないことがある。このような位置に燃料レベルセンサが配置されていた場合、仮に燃料レベルセンサが正常であってもその出力値は小幅にしか変動しなくなる。このため、車両の前後方向の挙動変化が大きいときに一律に故障診断を許可してしまうと、正常な燃料レベルセンサを誤って故障と判定してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、故障診断の実効性を担保しつつその診断精度を高めることが可能な燃料レベルセンサの故障診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、車両に設けられた燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料レベルセンサの故障を診断する装置であって、前記車両の前後方向の加速度の変動を表す加速変動値を特定する第1特定部と、前記車両の旋回の程度を表す旋回指標値を特定する第2特定部と、前記第1特定部により特定された加速変動値が所定の第1閾値より大きくかつ前記第2特定部により特定された旋回指標値が所定の第2閾値より小さいという第1条件が成立した場合に、前記燃料レベルセンサの出力変動である燃料レベル変動値を算出し、算出した燃料レベル変動値が予め定められた判定値未満であれば前記燃料レベルセンサが故障していると判定する故障診断を行う診断部とを備え、前記加速変動値が前記第1閾値より大きくかつ前記旋回指標値が前記第2閾値以上であるという第2条件が成立した場合、前記診断部は、前記燃料レベルセンサの故障診断を制限する、ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】
車両の前後方向の加速度の変動は、燃料タンク内の燃料を前後方向に揺らす作用をもたらし、これによって燃料の液面が変動する。特に、前後方向の加速度の変動を表す加速変動値が大きい状況では、燃料レベルセンサの出力変動を表す燃料レベル変動値も大きくなるはずであるから、当該燃料レベル変動値が期待通り大きいか否かによって燃料レベルセンサの故障診断を行い得ると考えられる。本発明では、加速変動値が第1閾値よりも大きい場合に燃料レベル変動値が算出されるので、算出された燃料レベル変動値の大小に応じて燃料レベルセンサの故障の有無を適切に判定することができる。
【0010】
ここで、市街地やワインディングロードの走行など、車両が加減速を繰り返す走行シーンは一般に想定され、このような走行シーンでは加速変動値が頻繁に増大すると考えられる。このことは、加速変動値が第1閾値より大きくなる状況、つまり燃料レベルセンサの故障診断が可能になる状況が比較的頻繁に生じることを意味する。したがって、本発明によれば、車両の走行中に比較的高い頻度で燃料レベルセンサの故障診断を行うことができ、故障診断の実効性を十分に確保することができる。
【0011】
ただし、加速変動値が大きくても、併せて旋回指標値が大きい状況では、燃料レベルセンサが正常であってもその出力変動が期待ほどには増大しない可能性がある。すなわち、旋回指標値が大きい(換言すれば車両の旋回半径が小さい)状況では、車両に大きな遠心力が作用するので、当該遠心力がもたらす燃料の液面の変動が、加速変動値に起因した液面の変動を相殺する可能性がある。そして、このような相殺が起きた場合には、燃料レベルセンサが正常であっても、その出力変動が加速変動値に見合った値に対し大幅に小さくなる可能性がある。このため、仮にこのような状況で燃料レベル変動値に基づく燃料レベルセンサの故障診断を行った場合には、正常な燃料レベルセンサを誤って故障と判定してしまう可能性がある。
【0012】
これに対し、本発明では、加速変動値が第1閾値より大きくても、旋回指標値が第2閾値以上である場合には、上述した燃料レベルセンサの故障診断が制限されるので、前記のような燃料レベルセンサの誤診断(正常なセンサを誤って異常と判定すること)が起きる可能性を可及的に低減でき、故障診断の精度を高めることができる。
【0013】
前記加速変動値は、前記車両が実質的に加速または減速を開始した時点より遅れた第1期間中の前記加速度の最大値と最小値との差分であることが好ましい。また、前記車両の左側の車輪速から特定される加速度をL加速度、前記車両の右側の車輪速から特定される加速度をR加速度としたとき、前記旋回指標値は、前記第1期間と重複する所定期間中の前記L加速度と前記R加速度との差分の最大値であることが好ましい(請求項2)。
【0014】
前記の定義による加速変動値は、燃料の液面を十分に変動させるほど加速度が変動したか否かを判定する指標として好適である。また、前記の定義による旋回指標値は、加速変動値による液面の変動が車両の旋回動作の影響で相殺される可能性があるか否かを判定する指標として好適である。したがって、これら加速変動値および旋回指標値をそれぞれ第1閾値および第2閾値と比較することにより、燃料レベルセンサの故障診断が可能か否かを適切に判定することができる。
【0015】
好ましくは、前記燃料レベル変動値は、前記第1期間より遅れた第2期間中の前記燃料レベルセンサの最大出力値と最小出力値との差分である(請求項3)。
【0016】
前記の定義による燃料レベル変動値は、加速変動値による液面の変動が燃料レベルセンサの出力に適切に反映されたか否かを判定する指標として好適である。すなわち、燃料レベル変動値を判定値と比較することにより、燃料レベルセンサの故障の有無を適切に判定することができる。
【0017】
好ましくは、前記判定値は、前記加速変動値が大きいほど大きくなるように設定される(請求項4)。
【0018】
この構成によれば、加速変動値が大きいほど液面が大きく変動することを考慮した適切な判定値を設定することができる。そして、このような判定値を燃料レベル変動値と比較することにより、加速変動値の大きさに見合ったセンサ出力の変動があったか否かを適切に判定することができ、燃料レベルセンサの故障診断の精度をより高めることができる。
【0019】
好ましくは、前記診断部は、前記第2条件が成立した場合に、前記燃料レベルセンサの故障診断を禁止する(請求項5)。
【0020】
この構成によれば、旋回動作による影響が懸念される条件での故障診断が禁止されるので、燃料レベルセンサの誤診断を確実に回避することができる。
【0021】
あるいは、前記診断部は、前記第2条件が成立した場合に、前記判定値を低下方向に補正した補正判定値を用いて前記燃料レベルセンサの故障診断を行ってもよい(請求項6)。
【0022】
判定値を低下補正した補正判定値を用いることは、故障要件を緩和することを意味する。これにより、燃料レベル変動値が比較的小さくても故障と判定されなくなるので、燃料レベルセンサが誤って故障と判定されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の燃料レベルセンサの故障診断装置によれば、故障診断の実効性を担保しつつその診断精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る故障診断装置が適用された燃料レベルセンサを含むエンジンの燃料供給系を概略的に示すシステム図である。
図2】上記燃料レベルセンサの故障診断の前半部を示すフローチャートである。
図3】上記故障診断の後半部を示すフローチャートである。
図4】加速変動値の求め方を説明するためのグラフである。
図5】旋回指標値の求め方を説明するためのグラフである。
図6】燃料レベル変動値の求め方を説明するためのグラフである。
図7】上記燃料レベル変動値に適用される判定値の特性を示すグラフである。
図8】上記燃料レベルセンサの故障診断に伴う各種状態量の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図9図8とは異なる条件での各種状態量の変化を示すタイムチャートである。
図10】車両が旋回動作を伴うことなく前方に加速した場合に生じる燃料の液面変動を示す図である。
図11】車両が旋回動作をしながら前方に加速した場合に生じる燃料の液面変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[エンジンの概略構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る故障診断装置が適用された燃料レベルセンサ1を含むエンジンの燃料供給系を概略的に示すシステム図である。燃料レベルセンサ1は、燃料タンク6内の燃料Qの残量を検出するセンサである。燃料タンク6は、エンジンの燃料供給系の最上流部にあたる要素であり、内部に燃料Qを貯留した状態で車両に配設されている。燃料タンク6内に貯留された燃料Qは、後述する燃料供給管7を通じて、車両のエンジンルームに配設されたエンジン本体10に供給される。なお、燃料Qの種類はエンジンの形式によって変わり得るが、本実施形態では、エンジンが火花点火式エンジンでかつ燃料Qがガソリン燃料であるものとする。
【0026】
燃料レベルセンサ1は、燃料タンク6の上部に固定された本体部2と、燃料タンク6内の燃料Qの液面上に浮遊状態で配置されるフロート3と、フロート3と本体部2とを連結するフロートアーム4とを備える。フロートアーム4は、その本体部2側の端部に、フロート3の上下動と連動して移動する接点(図示省略)を有する。この接点は、本体部2の内部に配置された抵抗要素と摺動可能に接している。燃料Qの残量が変化してその液面位置(燃料レベル)が変化すると、これに応じてフロート3が上下に移動するとともに、上記接点が抵抗要素に沿って移動する。燃料レベルセンサ1は、このような接点の移動に伴う抵抗値の変化に基づいて燃料Qの残量を検出し得るように構成されている。
【0027】
燃料タンク6の内部には、エンジン本体10から延びる燃料供給管7が導入されている。この燃料供給管7の途中部には、燃料Qを燃料タンク6から送り出す燃料ポンプ8が設けられている。すなわち、燃料ポンプ8の作動に応じ、燃料タンク6内の燃料Qが燃料供給管7を通じてエンジン本体10に供給される。
【0028】
エンジン本体10は、内部に気筒11aを形成するシリンダブロックおよびシリンダヘッド等からなる筐体11と、気筒11aに往復動可能に収容されたピストン12とを備える。ピストン12の上側には燃焼室Cが画成されている。
【0029】
筐体11には、インジェクタ15および点火プラグ16が取り付けられている。インジェクタ15には燃料供給管7の下流端が接続されている。インジェクタ15は、当該燃料供給管7を通じて燃料タンク6から供給される燃料Qを燃焼室Cに向けて噴射する噴射弁である。点火プラグ16は、インジェクタ15から燃焼室Cに噴射された燃料と空気とを含む混合気に点火するプラグである。点火プラグ16による点火をきっかけに燃焼室C内の混合気が燃焼すると、当該燃焼による膨張力を受けてピストン12が往復動する。
【0030】
ピストン12の下方には、エンジンの出力軸であるクランク軸17が配設されている。上述したピストン12の往復動は、コネクティングロッド18等を含むクランク機構を介してクランク軸17に伝達され、当該クランク軸17を回転させる。
【0031】
エンジン本体10には、燃焼室Cに空気を導入するための吸気通路23と、燃焼室Cで生成された既燃ガス(排気ガス)を排出するための排気通路24とが接続されている。吸気通路23および排気通路24は、筐体11に形成された吸気ポート21および排気ポート22を介してそれぞれ燃焼室Cに連通している。筐体11には、クランク軸17の回転に連動して吸気ポート21および排気ポート22を開閉する吸気弁25および排気弁26がそれぞれ取り付けられている。吸気通路23には、当該通路23を流通する吸気の流量を調節するためのスロットル弁27が開閉可能に設けられている。
【0032】
[制御系統]
上述したエンジンは、図1に示すECU30により統括的に制御される。ECU30は、各種演算処理を行うプロセッサ(CPU)と、ROMおよびRAM等のメモリーと、各種の入出力バスと、を含むマイクロコンピュータにより構成されている。
【0033】
ECU30は、上述した燃料レベルセンサ1と電気的に接続されている。当該燃料レベルセンサ1により検出された情報、つまり燃料タンク6内の燃料Qの残量(燃料レベル)を示す情報は、ECU30に逐次入力される。
【0034】
また、ECU30は、燃料レベルセンサ1以外の各種センサとも電気的に接続されている。例えば、車両には、ドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ41と、左側の駆動輪の回転速度(左車輪速)を検出する左車輪速センサ42Aと、右側の駆動輪の回転速度(右車輪速)を検出する右車輪速センサ42Bとが設けられており、これら各センサ41,42A/Bによる検出情報(アクセル開度および左右の車輪速)もECU30に逐次入力される。
【0035】
ECU30は、上記センサ1,41,42A/Bを含む各種センサからの入力情報を参照しつつエンジンおよびその他の車載機器を制御する。例えば、ECU30は、燃料ポンプ8、インジェクタ15、点火プラグ16、およびスロットル弁27等と電気的に接続されており、これらの機器に対し、上記入力情報等に基づき生成される所要の制御信号を出力する。
【0036】
具体的に、ECU30は、その機能要素として、燃焼制御部31、診断部32、および演算部33を備える。
【0037】
燃焼制御部31は、エンジン本体10での混合気の燃焼を制御する制御モジュールである。例えば、燃焼制御部31は、アクセル開度等を含む各種条件に応じた適切な出力トルクが得られるように、インジェクタ15、点火プラグ16、およびスロットル弁27等を用いてエンジン本体10(燃焼室C)での混合気の燃焼を制御する。
【0038】
診断部32は、燃料レベルセンサ1の故障診断を行う制御モジュールである。詳細は後述するが、診断部32は、燃料タンク6内の燃料Qの液面を比較的大きく変動させるような車両の挙動が確認された場合に、燃料レベルセンサ1の出力変動に基づき燃料レベルセンサ1の故障の有無を判定する。例えば、燃料レベルセンサ1において、フロート3およびフロートアーム4の上下動が阻害されるような事態(フロート固着)が生じたような場合には、燃料Qの液面が大きく変動する状況であっても燃料レベルセンサ1の出力値は小幅にしか変動しなくなる。診断部32は、このような事象が確認された場合に燃料レベルセンサ1が故障していると判定する。
【0039】
演算部33は、燃焼制御部31および診断部32による制御を実行するのに必要な種々のデータ等を演算により求める制御モジュールである。
【0040】
[故障診断]
次に、燃料レベルセンサ1の故障の有無を判定する故障診断の具体的手順について、図2および図3のフローチャートを用いて説明する。なお、本図に示すフローが適用される前提として、下記(i)~(iii)の状態は既に確認済みであるものとする。
(i)図外のイグニッションスイッチがONとされてから所定時間以上が経過している。
(ii)燃料レベルセンサ1に断線またはショートが起きていない。
(iii)左右の車輪速センサ42A/Bが正常である。
【0041】
上記(i)~(iii)の状態が確認されて図2のフローがスタートすると、ECU30の演算部33は、車両の前後方向の加速度である縦加速度を算出する(ステップS1)。ここで、左車輪速センサ42Aにより検出される左側の駆動輪の回転速度(左車輪速)の変化から求まる加速度をL加速度とし、右車輪速センサ42Bにより検出される右側の駆動輪の回転速度(左車輪速)の変化から求まる加速度をR加速度とする。当該ステップS1において、演算部33は、左右の車輪速センサ42A/Bの検出値からL加速度およびR加速度を求めるとともに、求めたL加速度およびR加速度の平均値を縦加速度として算出する。
【0042】
次いで、演算部33は、上記ステップS1で算出された縦加速度が後述の図8に示される不感帯Zに含まれるか否かを判定する(ステップS2)。不感帯Zは、ゼロを含む比較的狭い範囲(プラスの微小値からマイナスの微小値までの範囲)になるように予め定められている。このような不感帯Zに縦加速度が含まれるということは、車両が有意に加速も減速もしていないことを意味する。
【0043】
上記ステップS2でYESと判定されて縦加速度が不感帯Zに含まれることが確認されて場合、フローは上記ステップS1に戻る。
【0044】
一方、上記ステップS2でNOと判定されて縦加速度が不感帯Zから逸脱していることが確認された場合、演算部33は、それまで縦加速度が不感帯Zに滞在していた時間である不感帯滞在時間Taを算出する(ステップS3)。具体的に、演算部33は、縦加速度が最後に不感帯Zを逸脱した時点(不感帯Z内の値から不感帯Z外の値に変化した時点)と、その前に縦加速度が不感帯Zに入り込んだ時点(不感帯Z外の値から不感帯Z内の値に変化した時点)とを特定し、特定した両時点の差を不感帯滞在時間Taとして算出する。
【0045】
次いで、演算部33は、上記ステップS3で算出された不感帯滞在時間Taが予め定められた第1基準時間Tx1以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0046】
上記ステップS4でNOと判定されて不感帯滞在時間Taが第1基準時間Tx1未満であることが確認された場合、フローは上記ステップS1に戻る。
【0047】
一方、上記ステップS4でYESと判定されて不感帯滞在時間Taが第1基準時間Tx1以上であることが確認された場合、演算部33は、車両の縦加速度を算出するとともに(ステップS5)、算出した縦加速度が不感帯Zに含まれるか否かを判定する(ステップS6)。これらステップS5,S6における具体的処理は、上述したステップS1,S2のものと同様である。
【0048】
上記ステップS6でYESと判定されて縦加速度が不感帯Zに含まれることが確認されて場合、フローは上記ステップS1に戻る。
【0049】
一方、上記ステップS6でNOと判定されて縦加速度が不感帯Zから逸脱していることが確認された場合、演算部33は、このような逸脱状態が継続している時間である不感帯逸脱時間Tbを算出する(ステップS7)。具体的に、演算部33は、縦加速度が最後に不感帯Zを逸脱した時点から現時点までの経過時間をカウントし、カウントした当該時間を不感帯逸脱時間Tbとして算出する。
【0050】
次いで、演算部33は、上記ステップS7で算出された不感帯逸脱時間Tbが予め定められた第2基準時間Tx2以上であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0051】
上記ステップS8でNOと判定されて不感帯逸脱時間Tbが第2基準時間Tx2未満であることが確認された場合、フローは上記ステップS5に戻る。
【0052】
一方、上記ステップS8でYESと判定されて不感帯逸脱時間Tbが第2基準時間Tx2以上であることが確認された場合、演算部33は、慣性力発生フラグF1の値を0から1に切り替える(ステップS9)。慣性力発生フラグF1は、車両内の物体に有意な慣性力が働いたことを表すフラグであり、慣性力が発生していないときに0、慣性力が発生したときに1をとる。不感帯逸脱時間Tbが第2基準時間Tx2以上であることは、車両が前後方向に実質的に加速または減速している状態が十分に継続されたこと、つまり車両内の物体に有意な慣性力が働いたことを意味する。そこで、演算部33は、上記ステップS8の判定がYESになったときに慣性力発生フラグF1の値を0から1に切り替える。
【0053】
次いで、演算部33は、上記ステップS9にて慣性力発生フラグF1が0から1に切り替わった時点(慣性力が発生した時点)から予め定められた第1期間T1が経過したか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、演算部33は、慣性力が発生した時点から現時点までの経過時間をカウントし、カウントした当該時間(慣性力発生からの経過時間)が第1期間T1に相当する値まで増大したか否かを判定する。
【0054】
上記ステップS10でYESと判定されて慣性力発生から第1期間T1が経過したことが確認された場合、演算部33は、第1期間T1中の加速変動値ΔAcを算出する(ステップS11)。加速変動値ΔAcは、第1期間T1の間に生じた縦加速度の変動量を表す値であり、第1期間T1中の縦加速度の最大値と最小値との差分として定義される。
【0055】
具体的に、演算部33は、慣性力発生フラグF1が0から1に切り替わると、その時点以降における縦加速度の最大値と最小値とを随時更新しつつ保持する。そして、慣性力発生から第1期間T1が経過すると、演算部33は、その時点で保持している縦加速度の最大値から最小値を減じた値を加速変動値ΔAcとして算出する。
【0056】
例えば、第1期間T1中の縦加速度が図4のように変化したとする。すなわち、縦加速度が、時点taにおいて最大になりかつ時点tbにおいて最小になるように変化したとする。この場合において、時点taでの縦加速度の値をAc1、時点tbでの縦加速度の値をAc2とすると、演算部33は、第1期間T1の終了時点で、縦加速度の最大値としてAc1を保持し、縦加速度の最小値としてAc2を保持する。その結果、これらAc1とAc2の差分(Ac1-Ac2)が、第1期間T1中の加速変動値ΔAcとして算出される。言い換えると、加速変動値ΔAcは、第1期間T1中に変化する縦加速度の波形の最大高さ(山から谷までの落差)に相当する。
【0057】
ここで、本実施形態では既述のとおり、車両の縦加速度として、左車輪速センサ42Aの検出値に基づくL加速度と右車輪速センサ42Bの検出値に基づくR加速度との平均値が用いられる。すなわち、本実施形態では、左右の車輪速センサ42A/Bの検出値を用いた演算部33の演算によって加速変動値ΔAcが算出される。このことから、車輪速センサ42A/Bと演算部33との組合せは、本発明における「第1特定部」に相当する。
【0058】
次いで、演算部33は、旋回指標値Rdを算出する(ステップS12)。旋回指標値Rdは、第1期間T1と重複する所定期間Ty(図5参照)における車両の旋回の程度を表す値であり、当該所定期間Ty中のL加速度とR加速度との差分の最大値として定義される。車両の旋回半径が小さいほど(つまり旋回の程度が大きいほど)、L加速度とR加速度との差分が拡大し、旋回指標値Rdは大きくなる。
【0059】
本実施形態において、旋回指標値Rd算出のためのモニター期間である所定期間Tyは、第1期間T1(加速変動値ΔAc算出のためのモニター期間)よりも前の時点から始まり、かつ第1期間T1の終了と同時に終了する期間とされる。より詳しくは、本実施形態では、縦加速度が不感帯Zを逸脱した時点から第1期間T1の終了時点までの期間が、所定期間Tyとして設定される。このような所定期間Ty中の旋回指標値Rdを算出するため、演算部33は、車両の縦加速度が不感帯Zを逸脱した時点以降におけるL加速度とR加速度との差分(絶対値)の最大値を随時更新しつつ保持する。不感帯Zの逸脱から所定期間Tyが経過すると、演算部33は、その時点で保持している上記差分の最大値を旋回指標値Rdとして算出する。
【0060】
例えば、所定期間Tyにおいて、左車輪速センサ42Aの検出値に基づくL加速度と、右車輪速センサ42Bの検出値に基づくR加速度とが、それぞれ図5の一点鎖線および二点鎖線の波形のように変化し、かつこれらL加速度とR加速度との差分(絶対値)が時点tcにおいて最大になったものとする(実線の波形も参照)。この場合において、時点tcでのL/R加速度の差分をD1とすると、演算部33は、所定期間Tyの終了時点で、差分の最大値としてD1を保持する。その結果、この最大値D1が所定期間Ty中の旋回指標値Rdとして算出される。
【0061】
上記のとおり、本実施形態では、左右の車輪速センサ42A/Bの検出値を用いた演算部33の演算によって旋回指標値Rdが算出される。このことから、車輪速センサ42A/Bと演算部33との組合せは、本発明における「第2特定部」に相当する。
【0062】
次いで、ECU30の診断部32は、図3のステップS13に移行して、上記ステップS11で算出された加速変動値ΔAcが予め定められた第1閾値αよりも大きいか否かを判定する。
【0063】
上記ステップS13でYESと判定されて加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きいことが確認された場合、診断部32はさらに、上記ステップS12で算出された旋回指標値Rdが予め定められた第2閾値βより小さいか否かを判定する(ステップS14)。
【0064】
上記ステップS14でYESと判定されて旋回指標値Rdが第2閾値βより大きいことが確認された場合、診断部32は、診断許可フラグF2の値を0から1に切り替える(ステップS15)。診断許可フラグF2は、燃料レベルセンサ1の故障診断が可能な条件が揃ったことを表すフラグであり、条件が揃っていないときに0、条件が揃ったときに1をとる。加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくかつ旋回指標値Rdが第2閾値βより小さいことは、燃料タンク6内の燃料Qの液面が大きく変動することが期待される状況であること、換言すれば燃料レベルセンサ1の出力変動に基づいた故障診断に適した状況であることを意味する(その理由の詳細は後述する)。そこで、診断部32は、上記ステップS13,S14の判定が共にYESになったときに診断許可フラグF2の値を0から1に切り替える。
【0065】
一方、上記ステップS13,S14のいずれかでNOと判定された場合、つまり加速変動値ΔAcが第1閾値α以下であるか、または旋回指標値Rdが第2閾値β以上であることが確認された場合、診断部32は、慣性力発生フラグF1をリセットする(ステップS24)。すなわち、診断部32は、慣性力発生フラグF1の値を1から0に切り替える。このステップS24の後、後述するステップS15以降の処理(故障の有無の判定)は行われず、フローはリターンされる。
【0066】
なお、上記ステップS13,14の判定がいずれもYESとなることは、本発明における「第1条件」が成立することに相当する。また、上記ステップS13の判定がYESで上記ステップS14の判定がNOとなることは、本発明における「第2条件」が成立することに相当する。
【0067】
次いで、診断部32は、上記ステップS15にて診断許可フラグF2が0から1に切り替わった時点(診断が許可された時点)から予め定められた第2期間T2が経過したか否かを判定する(ステップS16)。すなわち、診断部32は、診断が許可した時点から現時点までの経過時間をカウントし、カウントした当該時間(診断許可からの経過時間)が第2期間T2に相当する値まで増大したか否かを判定する。
【0068】
上記ステップS16でYESと判定されて診断許可から第2期間T2が経過したことが確認された場合、診断部32は、第2期間T2中の燃料レベル変動値ΔFtを算出する(ステップS17)。燃料レベル変動値ΔFtは、第2期間T2の間に生じた燃料レベルセンサ1の出力変動を表す値であり、第2期間T2中の燃料レベルセンサ1の最大出力値と最小出力値との差分として定義される。具体的に、診断部32は、診断許可フラグF2が0から1に切り替わると、その時点以降における燃料レベルセンサ1の最大出力値と最小出力値とを都度更新しつつ保持する。診断許可から第2期間T2が経過すると、診断部32は、その時点で保持している最大出力値から最小出力値を減じた値を燃料レベル変動値ΔFtとして算出する。
【0069】
例えば、第2期間T2中の燃料レベルセンサ1の出力(燃料レベル)が図6のように変化したとする。すなわち、燃料レベルセンサ1の出力が、時点tdにおいて最大になりかつ時点teにおいて最小になるように変化したとする。この場合において、時点tdでの出力をL1、時点teでの出力をL2とすると、診断部32は、第2期間T2の終了時点で、燃料レベルセンサ1の最大出力値としてL1を保持し、最小出力値としてL2を保持する。その結果、これらL1とL2の差分(L1-L2)が、第2期間T2中の燃料レベル変動値ΔFtとして算出される。言い換えると、燃料レベル変動値ΔFtは、第2期間T2中に変化する燃料レベルセンサ1の出力波形の最大高さ(山から谷までの落差)に相当する。
【0070】
次いで、診断部32は、上記ステップS17で算出された燃料レベル変動値ΔFtが予め定められた判定値γ未満であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0071】
図7は、判定値γの特性を説明するためのグラフである。本図に示すように、判定値γは、上記ステップS11で算出された加速変動値ΔAcが大きいほど大きくなるように設定される。言い換えると、診断部32は、上記ステップS18の前に、図7の特性に従って加速変動値ΔAcから判定値γを設定し、設定した当該判定値γを上記ステップS18にて燃料レベル変動値ΔFtと比較する。
【0072】
上記ステップS18でYESと判定されて燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ未満であることが確認された場合、診断部32は、燃料レベルセンサ1が故障していると判定し(ステップS19)、当該故障をドライバー等に報知するための所定の表示を車内の表示部に表示させる(ステップS20)。例えば、診断部32は、車両のメータパネルに備わる警告灯を点灯させるなどの制御を行う。
【0073】
次いで、診断部32は、上述した慣性力発生フラグF1および診断許可フラグF2をリセットする(ステップS21)。すなわち、診断部32は、各フラグF1,F2の値をそれぞれ1から0に切り替える。このステップS21の後、フローはリターンされる。
【0074】
一方、上記ステップS18でNOと判定されて燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ以上であることが確認された場合、診断部32は、燃料レベルセンサ1は正常であると判定する(ステップS22)。この場合、診断部32は、異常を報知するための特段の表示制御を行うことなく、各フラグF1,F2をリセットする(ステップS21)。その後フローはリターンされる。
【0075】
図8は、図2および図3に示した燃料レベルセンサ1の故障診断に伴う各種状態量の時間変化の一例を示すタイムチャートであり、チャート(a)は車両の縦加速度の時間変化を、チャート(b)は慣性力発生フラグF1の時間変化を、チャート(c)は加速変動の時間変化を、チャート(d)は旋回指標の時間変化を、チャート(e)は診断許可フラグF2の時間変化を、チャート(f)は燃料タンク6内の燃料Qの液面つまり燃料レベルの時間変化を、チャート(g)は燃料レベル変動の時間変化を、チャート(h)は故障診断の結果を、それぞれ示している。なお、チャート(c)における加速変動とは、特定の時点(後述する時点t3)以降における縦加速度の最大値と最小値との差分を随時更新して得られる値であって、最終的に上述した加速変動値ΔAcとして算出される値である。チャート(d)における旋回指標とは、特定の時点(後述する時点t1)以降におけるL加速度とR加速度との差分の最大値を随時更新して得られる値であって、最終的に上述した旋回指標値Rdとして算出される値である。チャート(g)における燃料レベル変動とは、特定の時点(後述する時点t5)以降における燃料レベルセンサ1の最大出力値と最小出力値との差分を随時更新して得られる値であって、最終的に上述した燃料レベル変動値ΔFtとして算出される値である。
【0076】
図8において、車両の縦加速度が不感帯Zを逸脱した時点をt1とする。すなわち、この時点t1を境に、縦加速度は不感帯Z内の値から不感帯Z外の値へと変化する。図8に示されるのは、縦加速度が不感帯Zからプラス側に逸脱した例である。言い換えると、図8には、車両が実質的に前方への加速を開始することにより、時点t1にて縦加速度が不感帯Zからプラス側に逸脱した例が示される。この時点t1から、旋回指標の算出が開始されて、その算出値が所定の演算サイクルごとに更新される。なお、時点t1に至るまで縦加速度が不感帯Zに滞在していた時間をT0とすると、この滞在時間T0は、上述した第1基準時間Tx1(図2のS4)以上であるものとする。
【0077】
上記時点t1から上述した第2基準時間Tx2(図2のS8)を経過した時点をt2とする。この時点t2まで、縦加速度が不感帯Zを逸脱する状態は継続している。すなわち、時点t2において、縦加速度が不感帯Zを逸脱する状態(つまり車両が実質的に加速している状態)が第2基準時間Tx2継続したことになる。その結果、時点t2の直後の時点t3において、慣性力発生フラグF1の値が0から1に切り替わる。すると、この時点t3から、加速変動の算出が開始されて、その算出値が所定の演算サイクルごとに更新される。
【0078】
慣性力発生フラグF1=1となった上記時点t3から上述した第1期間T1(図2のS10)が経過した時点をt4とする。この時点t4は、縦加速度が不感帯Zを逸脱した時点t1から上述した所定期間Ty(図5)が経過した時点でもある。この時点t4において、加速変動および旋回指標の更新が終了し、その最終値が加速変動値ΔAcおよび旋回指標値Rdとして算出される。図8によれば、算出された加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きく、かつ算出された旋回指標値Rdが第2閾値βより小さくなっている。その結果、時点t4の直後の時点t5において、診断許可フラグF2の値が0から1に切り替わる。すると、この点t4から、燃料レベル変動の算出が開始されて、その算出値が所定の演算サイクルごとに更新される。
【0079】
診断許可フラグF2=1となった上記時点t5から上述した第2期間T2(図3のS16)が経過した時点をt6とする。この時点t6において燃料レベル変動の更新が終了し、その最終値が燃料レベル変動値ΔFtとして算出される。図8には、算出された燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ未満であった場合が実線の波形で、判定値γ以上であった場合が破線の波形で示される。実線波形のように燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ未満であった場合は、実際の燃料レベルの変動に見合わない過少な変動しか燃料レベルセンサ1により検出されなかったことになる。その結果、時点t6の直後の時点7において、燃料レベルセンサ1が故障しているとの判定(NG判定)がなされる。一方、破線波形のように燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ以上であった場合には、実際の燃料レベルの変動に見合った適切な大きさの変動が燃料レベルセンサ1により検出されたことになる。その結果、時点t6の直後の時点7において、燃料レベルセンサ1が正常であるとの判定(OK判定)がなされる。
【0080】
図9は、図8とは異なる条件での各種状態量の変化を示すタイムチャートである。この図9の例では、旋回指標値Rdが第2閾値β以上である点が図8と異なっている。すなわち、図9において、時点t4で算出される加速変動値ΔAcおよび旋回指標値Rdを図8のそれと比較した場合、加速変動値ΔAcが第1閾値αを超えている点は図8と同じであるが、旋回指標値Rdが第2閾値β以上である点が図8とは異なっている。図9の場合、時点t4での旋回指標値Rdが第2閾値β以上であるため、診断許可フラグF2の値は時点t4を過ぎても変化せず、0のまま維持される。一方、慣性力発生フラグF1の値は、時点t4の直後の時点t5にて1から0に切り替えられる。その結果、時点t5以降も燃料レベル変動は算出されず、その算出値に基づく燃料レベルセンサ1の故障診断も行われない。このため、例えば燃料レベルセンサ1が直近において正常と診断されていた場合、その診断結果は変更されず、燃料レベルセンサ1は依然正常なものとして扱われることになる。
【0081】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態では、車両の縦加速度(前後方向の加速度)の変動を表す加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きく、かつ車両の旋回の程度を表す旋回指標値Rdが第2閾値βより小さいという条件が成立した場合に、燃料レベルセンサ1の出力変動である燃料レベル変動値ΔFtが算出され、算出された燃料レベル変動値ΔFtに基づき燃料レベルセンサ1の故障診断が行われる。詳しくは、燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ未満であれば燃料レベルセンサ1が故障していると判定され、燃料レベル変動値ΔFtが判定値γ以上であれば燃料レベルセンサ1が正常であると判定される。ただし、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくても、旋回指標値Rdが第2閾値β以上であった場合には、燃料レベルセンサ1の故障診断は禁止される。このような構成によれば、燃料レベルセンサ1の故障診断の実効性を担保しつつその診断精度を高め得る等の利点がある。
【0082】
車両の縦加速度の変動は、燃料タンク6内の燃料Qを前後方向に揺らす作用をもたらし、これによって燃料Qの液面が変動する。特に、縦加速度の変動を表す加速変動値ΔAcが大きい状況では、燃料レベルセンサ1の出力変動を表す燃料レベル変動値ΔFtも大きくなるはずであるから、当該燃料レベル変動値ΔFtが期待通り大きいか否かによって燃料レベルセンサ1の故障診断を行い得ると考えられる。本実施形態では、加速変動値ΔAcが第1閾値αよりも大きい場合に燃料レベル変動値ΔFtが算出されるので、算出された燃料レベル変動値ΔFtの大小に応じて燃料レベルセンサ1の故障の有無を適切に判定することができる。
【0083】
ここで、市街地やワインディングロードの走行など、車両が加減速を繰り返す走行シーンは一般に想定され、このような走行シーンでは加速変動値ΔAcが頻繁に増大すると考えられる。このことは、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくなる状況、つまり燃料レベルセンサ1の故障診断が可能になる状況が比較的頻繁に生じることを意味する。したがって、本実施形態によれば、車両の走行中に比較的高い頻度で燃料レベルセンサ1の故障診断を行うことができ、故障診断の実効性を十分に確保することができる。
【0084】
ただし、加速変動値ΔAcが大きくても、併せて旋回指標値Rdが大きい状況では、燃料レベルセンサ1が正常であってもその出力変動が期待ほどには増大しない可能性がある。すなわち、旋回指標値Rdが大きい(換言すれば車両の旋回半径が小さい)状況では、車両に大きな遠心力が作用するので、当該遠心力がもたらす燃料Qの液面の変動が、加速変動値ΔAcに起因した液面の変動を相殺する可能性がある。そして、このような相殺が起きた場合には、燃料レベルセンサ1が正常であっても、その出力変動が加速変動値ΔAcに見合った値に対し大幅に小さくなる可能性がある。このため、仮にこのような状況で燃料レベル変動値ΔFtに基づく燃料レベルセンサ1の故障診断を行った場合には、正常な燃料レベルセンサ1を誤って故障と判定してしまう可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施形態では、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きいという条件と、旋回指標値Rdが第2閾値βより小さいという条件との双方が揃った場合にのみ、燃料レベル変動値ΔFtに基づく燃料レベルセンサ1の故障診断が許可されるので、上記のような燃料レベルセンサ1の誤診断(正常なセンサを誤って異常と判定すること)を有効に回避でき、故障診断の精度を高めることができる。
【0086】
上記の効果を理解するために、車両の旋回動作が燃料レベルの変動に及ぼす影響について説明する。図10は、車両が旋回動作を伴うことなく前方に加速した場合に生じる燃料タンク6内の燃料Qの液面変動を示す図であり、図11は、車両が旋回動作をしながら前方に加速した場合に生じる燃料Qの液面変動を示す図である。
【0087】
まず、旋回動作を伴わない図10のケースについて説明する。図10(a)に示すように、車両が前方に加速した(縦加速度がプラスであった)場合、燃料Qに後向きの慣性力が作用する。この慣性力は、燃料タンク6の後端部において燃料Qの液面の高さを上昇させ、燃料タンク6の前端部において燃料Qの液面の高さを低下させる。一方、車両は旋回していないので、燃料Qに遠心力は作用しない。このため、図10(b)に示すように、燃料Qの液面の高さは左右方向について特に変化しない。このような前提において、車両の前方への加速度(縦加速度)が比較的大きく変動したとする。詳しくは、車両の縦加速度が大きく上昇しその後に低下したとする。この場合に生じる液面の変動をグラフ化したものを図10(c)に示す。この図10(c)のグラフにおいて、「液面(後)」と付記された波形は、燃料タンク6の後端部(以下、これをタンク後端ともいう)における液面の変動を表し、「液面(センサ位置)」と付記された波形は、燃料レベルセンサ1の取付け位置(以下、これをセンサ位置ともいう)における液面の変動を表している。ここでは、燃料タンク6の中央部もしくはその近傍に燃料レベルセンサ1が取り付けられているものとする。この場合、タンク後端における液面変動とセンサ位置における液面変動との間には位相差が生じる。すなわち、タンク後端での液面レベルは、縦加速度の変動と連動した比較的早いタイミングでピークを迎えるが、センサ位置での液面レベルは、タンク後端での液面レベルよりも遅れたタイミングでピークを迎える。ただし、センサ位置での液面レベルのピーク自体は十分に高いので、センサ位置における液面変動は十分に大きいものとなる。このため、仮に燃料レベルセンサ1が正常であれば、その出力は大きく変動するはずである。このことは、燃料レベルセンサ1の出力変動(燃料レベル変動値ΔFt)に基づき適切な故障診断を行い得ることを意味する。
【0088】
次に、旋回動作を伴う図11のケースについて説明する。図11(a)(b)は、燃料Qの液面の前後方向/左右方向の変動を表しており、それぞれ図10(a)(b)に対応している。図11のケースにおいても、車両の前方への加速により燃料Qには後向きの慣性力が作用する(図11(a))。一方で、図10のケースと異なり、車両は右旋回しており、この右旋回によって燃料Qには左方への遠心力が作用する(図11(b))。このような前提において、車両の前方への加速度(縦加速度)と、車両の右旋回による横加速度とが、ともに大きく変動したとする。この場合に生じる液面の変動をグラフ化したものを図11(c)に示す。この図11(c)のグラフにおいて、「仮液面1(後)」と付記された波形は、縦加速度の変動のみに起因して生じるタンク後端での液面の変動を表し、「仮液面1(センサ位置)」と付記された波形は、縦加速度の変動のみに起因して生じるセンサ位置での液面の変動を表し、「仮液面2(右)」と付記された波形は、横加速度の変動のみに起因して燃料タンク6の右端部(以下、これをタンク右端ともいう)で生じる液面の変動を表し、「仮液面2(センサ位置)」と付記された波形は、横加速度の変動のみに起因して生じるセンサ位置での液面の変動を表している。また、「液面(センサ位置)」と付記された太線の波形は、縦加速度/横加速度の各変動により生じるセンサ位置での液面変動を重合したものであって、センサ位置で生じる正味の液面変動を表している。図11(c)に示すように、仮に縦加速度の変動のみが生じた場合(車両が旋回していない場合)はセンサ位置で液面は大きく変動するはずであるが、車両が旋回している本ケースでは、センサ位置での正味の液面変動(太線の波形)があまり大きくならない可能性がある。すなわち、本ケースでは、車両の右旋回によりタンク右端での液面が一時的に低下するので、その影響がセンサ位置に及んだ場合には、縦加速度の変動による液面変動が相殺される結果、正味の液面変動があまり大きくならない可能性がある。このような状況で、仮に燃料レベルセンサ1の出力変動(燃料レベル変動値ΔFt)に基づき故障診断が行われると、正常な燃料レベルセンサ1が誤って故障と判定されるおそれがある。
【0089】
以上のような事情から、本実施形態では、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きいという条件と、旋回指標値Rdが第2閾値βより小さいという条件との双方が揃った場合にのみ、燃料レベル変動値ΔFtに基づく燃料レベルセンサ1の故障診断が許可される。言い換えると、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくても、旋回指標値Rdが第2閾値β以上であった場合には、燃料レベルセンサ1の故障診断が禁止される。このような構成によれば、旋回動作の影響により液面変動が相殺され得る状況での故障診断が忌避されるので、正常な燃料レベルセンサ1が誤って異常と判定される上記のような事態を有効に回避することができ、故障診断の精度を十分に高めることができる。
【0090】
なお、図10および図11では、車両が前方に加速した場合、つまり車両の縦加速度がプラスである場合を例示したが、車両の縦加速度がマイナスである場合(つまり車両が減速した場合)も事情は同じである。すなわち、車両の縦加速度がマイナスである場合は、燃料Qには前向きの慣性力が作用し、この慣性力は燃料タンク6の前端部において燃料Qの液面の高さを上昇させる。このような減速による液面変動は、図10および図11に示した加速時とは逆向きの変動であるものの、燃料レベルセンサ1の出力変動を生じさせるという意味では加速時と同じである。言い換えると、車両の縦加速度がプラスであってもマイナスであっても(車両が加速していても減速していても)、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくかつ旋回指標値Rdが第2閾値βより小さいという条件が成立する限りにおいて、燃料レベルセンサ1の出力変動(燃料レベル変動値ΔFt)に基づく故障診断は可能である。
【0091】
また、本実施形態では、左車輪速センサ42Aの検出値に基づくL加速度と右車輪速センサ42Bの検出値に基づくR加速度との平均値が、車両の縦加速度(前後方向の加速度)として特定されるとともに、当該縦加速度が不感帯Zを逸脱した時点(つまり車両が実質的に加速または減速を開始した時点)から遅れた第1期間T1中の縦加速度の最大値と最小値との差分が、加速変動値ΔAcとして特定される。このような定義による加速変動値ΔAcは、燃料Qの液面を十分に変動させるほど縦加速度が変動したか否かを判定する指標として好適である。すなわち、加速変動値ΔAcを第1閾値αと比較することにより、燃料レベルセンサ1の故障診断が可能か否かを適切に判定することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記第1期間T1と重複する所定期間Ty中のL加速度とR加速度との差分の最大値が、旋回指標値Rdとして特定される。このような定義による旋回指標値Rdは、加速変動値ΔAcによる液面の変動が車両の旋回動作の影響で相殺される可能性があるか否かを判定する指標として好適である。すなわち、旋回指標値Rdを第2閾値βと比較することにより、燃料レベルセンサ1の故障診断が可能か否かを適切に判定することができる。
【0093】
さらに、本実施形態では、第1期間T1より遅れた第2期間T2中の燃料レベルセンサ1の最大出力値と最小出力値との差分が、燃料レベル変動値ΔFtとして特定される。このような定義による燃料レベル変動値ΔFtは、加速変動値ΔAcによる液面の変動が燃料レベルセンサ1の出力に適切に反映されたか否かを判定する指標として好適である。すなわち、燃料レベル変動値ΔFtを判定値γと比較することにより、燃料レベルセンサ1の故障の有無を適切に判定することができる。
【0094】
また、本実施形態では、加速変動値ΔAcが大きいほど判定値γが大きくされるので、加速変動値ΔAcが大きいほど液面が大きく変動することを考慮した適切な判定値γを設定することができる。そして、このような判定値γを燃料レベル変動値ΔFtと比較することにより、加速変動値ΔAcの大きさに見合ったセンサ出力の変動があったか否かを適切に判定することができ、燃料レベルセンサ1の故障診断の精度をより高めることができる。
【0095】
[変形例]
上記実施形態では、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくかつ旋回指標値Rdが第2閾値βより小さいという条件(本発明における第1条件)が成立した場合には燃料レベルセンサ1の故障診断を許可する一方、加速変動値ΔAcが第1閾値αより大きくかつ旋回指標値Rdが第2閾値β以上という条件(本発明における第2条件)が成立した場合には燃料レベルセンサ1の故障診断を禁止するようにしたが、後者のケース(第2条件の成立時)に必ずしも診断自体を禁止する必要はない。すなわち、第2条件の成立時は、少なくとも燃料レベルセンサ1が故障と判定され難くなるように診断を制限すればよく、その限りにおいて種々の方法を採用可能である。例えば、燃料レベル変動値ΔFtの判定値γを低下方向に補正した補正判定値を用いて燃料レベルセンサ1の故障診断を行うことが提案される。燃料レベルセンサ1は、燃料レベル変動値ΔFtが判定値未満のときに故障と診断されるため、この判定値を低下補正することは、故障要件を緩和することを意味する。これにより、燃料レベル変動値ΔFtが比較的小さくても故障と判定されなくなるので、旋回動作の影響による燃料レベル変動値ΔFtの低下が原因で燃料レベルセンサ1が誤って故障と判定されるのを抑制することができる。
【0096】
上記実施形態では、故障診断のために燃料レベル変動値ΔFtを判定値γと比較する場合に、加速変動値ΔAcが大きいほど大きくなるように判定値γを設定したが、当該判定値γを加速変動値にかかわらず一定になるように設定してもよい。
【0097】
上記実施形態では、左車輪速センサ42Aの検出値から特定されるL加速度と右車輪速センサ42Bの検出値から特定されるR加速度とを平均した平均値を車両の縦加速度(前後方向の加速度)として採用したが、これに代えて、車両に作用する慣性力から加速度を検出するいわゆるGセンサを用い、このGセンサによる検出値を車両の縦加速度として採用してもよい。
【0098】
上記実施形態では、所定期間Ty中のL加速度とR加速度との差分の最大値を旋回指標値Rdとして算出したが、旋回指標値は車両の旋回の程度を表すものであればよく、その限りにおいて種々のパラメータを旋回指標値として採用可能である。例えば、上記Gセンサを用いて車両の横加速度を検出し、この横加速度の所定期間中の最大値を旋回指標値として採用してもよい。さらには、所定期間中の横加速度の変動量を旋回指標値として採用してもよい。
【0099】
上記実施形態では、車両の縦加速度が不感帯Zを逸脱した時点t1から、加速変動値ΔAc算出のためのモニター期間である第1期間T1が終了する時点t4までの間を所定期間Tyとし、この所定期間Ty中のL/R加速度の差分の最大値を旋回指標値Rdとして算出したが、所定期間Tyは、第1期間T1と重複していればよく、その限りにおいて種々の期間に設定可能である。例えば、第1期間T1と一致する(過不足なく重複する)期間を所定期間Tyとして設定してもよいし、第1期間T1と部分的に重複する期間を所定期間Tyとして設定してもよい。
【0100】
上記実施形態では、燃料レベルセンサ1の故障を診断する方法として、加速変動値ΔAcが大きいときの燃料レベルセンサ1の出力変動(燃料レベル変動値ΔFt)に基づき故障診断を行う例のみを説明したが、このような故障診断と併せて燃料消費量に基づく故障診断を行うことも当然に可能である。すなわち、規定量の燃料が消費される前後の出力変動に基づき燃料レベルセンサの故障の有無を判定する従来の故障診断を、本発明の方法による故障診断と併せて行ってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 燃料レベルセンサ
32 診断部
33 演算部(第1/第2特定部の一要素)
42A 左車輪速センサ(第1/第2特定部の一要素)
42B 右車輪速センサ(第1/第2特定部の一要素)
ΔAc 加速変動値
Rd 旋回指標値
ΔFt 燃料レベル変動値
α 第1閾値
β 第2閾値
γ 判定値
T1 第1期間
T2 第2期間
Ty 所定期間
図1
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図11