(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181848
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示装置、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20221201BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20221201BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20221201BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20221201BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221201BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60K35/00 Z
G02B27/01
G09G5/38 Z
G09G5/36 520B
G09G5/36 520G
G09G5/00 530D
G09G5/00 510A
G09G5/38 A
G09G5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089035
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅基
(72)【発明者】
【氏名】佐原 祐介
(72)【発明者】
【氏名】本間 華子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翠
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA36
2H199DA43
2H199DA46
3D344AA20
3D344AA21
3D344AA26
3D344AA27
3D344AC25
3D344AD01
5C182AA03
5C182AA04
5C182AA05
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB26
5C182AB31
5C182AC02
5C182AC03
5C182AC13
5C182AC33
5C182AC35
5C182BA29
5C182BA47
5C182BA56
5C182BB01
5C182BB02
5C182BB11
5C182CA32
5C182CB14
5C182CB42
5C182CB44
5C182CB47
5C182CB52
5C182CC21
5C182FA33
(57)【要約】
【課題】 近傍画像/遠方画像の識別性の低下を抑制し、表示画像の見易さを向上させる。
【解決手段】画像の表示制御を実行する表示制御装置は、画像の表示態様を制御する制御部140を有し、画像は、視認者を基準として、より近くに表示される近傍画像(D1~D3)と、より遠くに表示される遠方画像(F1~F3)とを含み、制御部140は、近傍画像を、遠方画像からより遠ざけることで、近傍画像と前記遠方画像との間の非表示領域を増やす、近傍画像を非表示とする、近傍画像を縮小する、近傍画像を、表示態様を変更して縮小する、近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる、の少なくとも1つを含む視覚的分離処理を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の表示制御を実行する表示制御装置であって、
前記画像の表示態様を制御する制御部を有し、
前記画像は、視認者を基準として、より近くに表示される近傍画像と、より遠くに表示される遠方画像とを含み、
前記制御部は、
前記近傍画像と前記遠方画像との識別性が低下する状況であると判定される場合、あるいは、前記識別性を高めた方がよいと判定される場合には、
前記近傍画像を、前記遠方画像からより遠ざけることで、前記近傍画像と前記遠方画像との間隔を広くする、
前記近傍画像を非表示とする、
前記近傍画像を縮小する、
前記近傍画像を、表示態様を変更して縮小する、
前記近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる、
の少なくとも1つを含む視覚的分離処理を実行する、
表示制御装置。
【請求項2】
前記近傍画像と前記遠方画像との識別性が低下する状況であると判定される場合、あるいは、前記識別性を高めた方がよいと判定される場合は、
前記遠方画像に含まれる表示コンテンツの数が所定の閾値より多くなる場合、
又は、
前記遠方画像として、重要性が高い所定の表示コンテンツが少なくとも一つ、あるいは、所定の閾値よりも多く表示される場合、
又は、
前記遠方画像として表示されている、少なくとも1つの表示コンテンツに関して、重要度が高まったことが検出される場合、
である、請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記重要性が高い所定の表示コンテンツは、
実景に重畳されて表示されるAR表示コンテンツ、
又は、
先進運転支援システム(ADAS)による運転支援情報の表示コンテンツ(ADAS表示コンテンツ)、
である、請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの表示コンテンツに関して、重要度が高まったことが検出される場合は、
ナビゲーション表示を行っている場合において、操舵が必要な分岐点までの距離が所定距離以内となる場合、
又は、
既に表示されているADAS表示コンテンツに関して、安全運転上の危険性が増加した場合、
である、請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御装置は車両に搭載され、
前記車両の高さ方向を縦方向あるいは上下方向、前記車両の幅方向を横方向あるいは左右方向、前記縦方向及び横方向に直交する方向を奥行き方向とし、
前記近傍画像が、横方向に配置された第1、第2の表示コンテンツを含み、
かつ、前記第1、第2の表示コンテンツが、前記遠方画像の表示領域の下側に位置する場合において、
前記視覚的分離処理は、
前記第1の表示コンテンツを、横方向に沿って左側に移動させ、前記第2の表示コンテンツを横方向に沿って右側に移動させて、前記第1、第2の表示コンテンツ間の間隔を広げると共に、
前記第1の表示コンテンツの表示領域を左側表示領域とし、前記第2の表示コンテンツの表示領域を右側表示領域とするとき、
前記遠方画像の表示領域と、前記近傍画像の前記左側表示領域及び前記右側表示領域とが縦方向に重ならないようにする処理、
又は、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記右側表示領域は縦方向に重なるが、前記左側領域は重ならないようにする処理、
又は、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記左側表示領域は縦方向に重なるが、前記右側領域は重ならないようにする処理である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記右側表示領域は縦方向に重なるが、前記左側領域は重ならないようにする処理が実行される場合における、前記右側表示領域の面積は、前記左側表示領域の面積よりも大きく、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記左側表示領域は縦方向に重なるが、前記右側領域は重ならないようにする処理が実行される場合における、前記左側表示領域の面積は、前記右側表示領域の面積よりも大きい、
請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記視覚的分離処理は、
有彩色の表示が主体である前記遠方画像に対して、前記近傍画像を無彩色の表示が主体である表示に変更する処理を、さらに含む、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
遠方画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置と、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示制御装置による表示制御によって、近傍画像を表示する表示器装置、又はヘッドアップディスプレイ装置と、
を含む表示装置。
【請求項9】
視認者を基準として、より近くに表示される近傍画像、及び、より遠くに表示される遠方画像の表示を制御する表示制御方法であって、
前記近傍画像と前記遠方画像との識別性が低下する状況であるか否かを判定する、あるいは、前記識別性を高めた方がよいか否かを判定する工程と、
前記判定の結果が肯定的であるとき、前記近傍画像を、前記遠方画像からより遠ざけることで、前記近傍画像と前記遠方画像との間の非表示領域を増やす、前記近傍画像を非表示とする、前記近傍画像を縮小する、前記近傍画像を、表示態様を変更して縮小する、前記近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる、の少なくとも1つを含む視覚的分離処理を実行する工程と、
を含む、表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される表示制御装置、表示装置、及び表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の表示装置を備えるマルチディスプレイ装置の制御装置及び制御方法が示されている。
【0003】
特許文献1のマルチディスプレイ装置(例えば、
図1及び
図19)では、地図情報や自車両の現在位置等を表示するCID(Center Information Display)と、速度メーター等を表示するICD(Instrumental Cluster Display)と、HUD(Head-Up Display)装置が用いられている。
【0004】
この特許文献1の[0002]には、「従来、複数の表示装置を連動して利用するシステムにおいて、一の表示装置に表示される情報に注意を向けている場合において、他の表示装置に表示される情報に変化があってもユーザが気付きにくいという問題があった。また、各表示装置に表示する情報が互いに関連している場合、当該関連性を把握することが難しかった。」と記載されている。
【0005】
この解決策として、例えば、請求項1には、「意識を誘導させる意識誘導情報(特定の画像を強調する情報)を付加すること」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、表示距離が異なる複数の表示領域に画像を表示する技術(近傍/遠方混在表示技術)について検討したが、この結果、視認者から見て、近傍に見える画像(近傍画像)と、遠方に見える画像(遠方画像)との区別がつきにくい場合があることがわかった。
【0008】
例えば、遠方画像が、近傍画像の近くに配置される場合があり得る。また、近傍画像及び遠方画像が共に、例えば、路面に対して立設した表示コンテンツを複数含んでいる場合等では、各表示コンテンツが個別に把握され、遠近感が乏しく感じられるなどして、近傍の表示コンテンツと遠方の表示コンテンツとの識別性が低下する場合もあり得る。
【0009】
この場合、視認者が、視覚的な煩わしさを感じる場合がある。また、ADAS(安全運転支援システム)情報や、注意を要する先行車両に重畳させる注意喚起マーク等(遠方情報)と、手前側に見えている車速表示等とが混在して知覚されて、重要な情報の知覚が遅れる、ということもないとはいえない。
【0010】
ここで、特許文献1の技術のように、意識誘導情報を付加したとしても、近傍画像と遠方画像とが区別しにくくなる、という近傍画像/遠方画像の識別性の低下については根本的な解決にはならない。
【0011】
また、複数の表示コンテンツがあるとき、そのうちのどれが近傍画像であるか、遠方画像であるかが区別しづらくなり、各表示コンテンツがばらばらに知覚されてしまい、視覚的な煩わしさが生じる、といった課題についても、根本的な解決にはならない。
【0012】
本発明の目的の一つは、近傍画像/遠方画像の識別性の低下を抑制し、表示画像の見易さを向上させることである。
【0013】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0015】
本発明の第1の態様において、表示制御装置は、画像の表示制御を実行する表示制御装置であって、
前記画像の表示態様を制御する制御部を有し、
前記画像は、視認者を基準として、より近くに表示される近傍画像と、より遠くに表示される遠方画像とを含み、
前記制御部は、
前記近傍画像と前記遠方画像との識別性が低下する状況であると判定される場合、あるいは、前記識別性を高めた方がよいと判定される場合には、
前記近傍画像を、前記遠方画像からより遠ざけることで、前記近傍画像と前記遠方画像との間隔を広くする、
前記近傍画像を非表示とする、
前記近傍画像を縮小する、
前記近傍画像を、表示態様を変更して縮小する、
前記近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる、
の少なくとも1つを含む視覚的分離処理を実行する。
【0016】
人の視野は所定の広がりをもつため、例えば、視認者が遠方画像を見る場合でも、近傍画像も視野に入る場合がある。遠方画像と近傍画像は表示距離(例えば視認者の視点を基準とした、画像あるいは画像の表示面までの距離)が異なるため、基本的には、その表示距離の差により識別可能であることが多いが、両画像の距離の差が比較的小さい場合もある。
【0017】
また、例えば、遠方画像としての表示コンテンツが複数あり、それらが、まとまって表示されているような場合等では、手前側に見えている近傍画像としての複数の表示コンテンツとの区別がつきにくくなる。
【0018】
このような場合に、例えば、近傍画像を遠方画像からより遠ざけて、両画像間の間隔を広げると、両画像が位置的に分離されて、近傍画像を遠方画像から視覚的に分離し易くなる。
【0019】
また、近傍画像を一時的に消去することは、近傍画像が視認者の視野外になったことと実質的に同じである。言い換えれば、近傍画像が遠方画像から、視覚的に十分に分離されたことになる。
【0020】
また、近傍画像を縮小する(例えば、近傍画像を構成する図形等のアイコンや文字の大きさを小さくする等)ことで、近傍画像の視認性が抑制され、近傍画像は、遠方画像から視覚的に分離され易くなる。また、例えば、遠方画像と近傍画像が、同種の表示コンテンツ(アイコン等)を含む場合、その大きさの違いによって、近傍画像が、遠方画像から視覚的に分離して知覚され易くなる。また、近傍画像のサイズを小さくすることは、遠方画像との間隔を広げる効果もある。
【0021】
また、近傍画像を縮小する際に、近傍画像(背景を含めて広く解釈するのが好ましい)の表示態様を変更することで、近傍画像の視覚的分離を、より促進することができる。表示態様の変更の例としては、例えば、文字や図形のデザインを変更したり、構成要素や背景の色、輝度、彩度等を変更したりすることが想定され得る。
【0022】
また、近傍画像について表示コンテンツ間の間隔を広げることで、複数の表示コンテンツが密に配置されていると感じられることによる煩わしさが低減され、このことが、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離することを促進する。例えば、遠方画像も複数の表示コンテンツを含む場合を想定すると、遠方画像の表示コンテンツの配置が密で、近傍画像の表示コンテンツの配置も同様に密であるとき、遠方画像と近傍画像の区別がつきにくくなることが想定される。このとき、近傍画像の表示コンテンツが分散されて配置されることで、遠方画像の配置の密度との違いが明確化され、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離し易くなる。
【0023】
視覚的分離処理を実施することで、違和感を生じさせずに、近傍画像(複数の表示コンテンツがあるときは、それらの一群の近傍画像)の、遠方画像からの視覚的な分離が容易化される。よって、視認者は、仮に視野範囲に近傍画像が入ったとしても、例えば、近傍画像を特に意識することなく、遠方画像を注視することができ、煩わしが軽減される。よって、見易い表示が実現される。
【0024】
第1の態様に従属する第2の態様において、
前記近傍画像と前記遠方画像との識別性が低下する状況であると判定される場合、あるいは、前記識別性を高めた方がよいと判定される場合は、
前記遠方画像に含まれる表示コンテンツの数が所定の閾値より多くなる場合、
又は、
前記遠方画像として、重要性が高い所定の表示コンテンツが少なくとも一つ、あるいは、所定の閾値よりも多く表示される場合、
又は、
前記遠方画像として表示されている、少なくとも1つの表示コンテンツに関して、重要度が高まったことが検出される場合、
であってもよい。
【0025】
第2の態様では、近傍画像と遠方画像との識別性が低下する状況であると判定される場合として、遠方画像としての表示コンテンツ数が閾値を超える場合を例示する。また、その識別性を高めた方がよいと判定される場合として、遠方画像としての表示コンテンツの重要度(表示優先度)が高まった場合を例示する。
【0026】
例示される状況では、視認者(運転者等)は、遠方画像が提示する情報に注意を向けることが望ましく、近傍画像が視野に入って見づらくなることは避ける必要がある。よって、近傍画像について視覚的分離処理を実施し、遠方画像に対する近傍画像の識別性を高める。これによって、見易い表示による各種の情報提示が可能となる。
【0027】
第2の態様に従属する第3の態様において、
前記重要性が高い所定の表示コンテンツは、
実景に重畳されて表示されるAR表示コンテンツ、
又は、
先進運転支援システム(ADAS)による運転支援情報の表示コンテンツ(ADAS表示コンテンツ)、
であってもよい。
【0028】
第3の態様では、AR表示コンテンツやADAS表示コンテンツが遠方画像を、重要性が高い表示コンテンツとして取り扱う。これらの表示は、安全運転等に資するものであり、重要な情報を提示する場合が多いことから、重要な表示コンテンツとして取り扱うこととした。
【0029】
第2の態様に従属する第4の態様において、
前記少なくとも1つの表示コンテンツに関して、重要度が高まったことが検出される場合は、
ナビゲーション表示を行っている場合において、操舵が必要な分岐点までの距離が所定距離以内となる場合、
又は、
既に表示されているADAS表示コンテンツに関して、安全運転上の危険性が増加した場合、
であってもよい。
【0030】
第4の態様では、遠方画像としての表示コンテンツに関して、重要度が高まったと判定され得る場合を例示している。操舵(ステアリングホイール等の操作)が必要な地点に近づいたとき、あるいは、ADAS表示コンテンツに関して、危険性が増加したときは、注意喚起表示や警告表示等が表示され、視認者(運転者等)は、その表示にいち早く注目して適切な動作を行う必要がある。よって、近傍画像が視野に入ることによる煩わしさを抑制するのが好ましい。そこで、上記の場合には、近傍画像について視覚的分離処理を実行することとした。
【0031】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、
前記表示制御装置は車両に搭載され、
前記車両の高さ方向を縦方向あるいは上下方向、前記車両の幅方向を横方向あるいは左右方向、前記縦方向及び横方向に直交する方向を奥行き方向とし、
前記近傍画像が、横方向に配置された第1、第2の表示コンテンツを含み、
かつ、前記第1、第2の表示コンテンツが、前記遠方画像の表示領域の下側に位置する場合において、
前記視覚的分離処理は、
前記第1の表示コンテンツを、横方向に沿って左側に移動させ、前記第2の表示コンテンツを横方向に沿って右側に移動させて、前記第1、第2の表示コンテンツ間の間隔を広げると共に、
前記第1の表示コンテンツの表示領域を左側表示領域とし、前記第2の表示コンテンツの表示領域を右側表示領域とするとき、
前記遠方画像の表示領域と、前記近傍画像の前記左側表示領域及び前記右側表示領域とが縦方向に重ならないようにする処理、
又は、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記右側表示領域は縦方向に重なるが、前記左側領域は重ならないようにする処理、
又は、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記左側表示領域は縦方向に重なるが、前記右側領域は重ならないようにする処理であってもよい。
【0032】
第5の態様では、第1の態様における「近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる処理」の好ましい例を、具体的に例示している。
【0033】
間隔を広げることは、一部の表示コンテンツを横方向(左右方向)に沿って左側に移動させ、他の表示コンテンツを横方向(左右方向)に沿って右側に移動させることで実現可能である。左側に移動させる表示コンテンツの表示領域が「左側表示領域」であり、右側に移動させる表示コンテンツの表示領域が「右側表示領域」である。
【0034】
また、表示コンテンツ間の間隔を広げることは、言い換えれば、左側表示領域と右側表示領域との間に、画像が表示されない非表示領域(言い換えれば、スペース)が設けられるということである。
【0035】
そして、この非表示領域の上側に、遠方画像の表示領域が位置する。非表示領域の面積を、ある程度大きくとれば、遠方画像の表示領域と左/右の各表示領域とは、上下方向(縦方向)において重ならないようにすることができる。
【0036】
また、左/右のいずれかの表示領域のみが、遠方画像の表示領域と縦方向に重ならないようにすることも可能である。
【0037】
なお、「縦方向に重ならない」とは、具体的に言い換えれば、上側に位置する遠方画像の表示領域を、近傍画像が位置する下側の位置まで移動(シフト)したとしても、両領域が重複しない、ということである。
【0038】
視覚的な煩わしさが生じる一因は、上側の遠方画像と下側の近傍画像とを、「まとまりのある同種の画像の集合」と認識してしまうことにあると考えられる。近傍画像の表示コンテンツを左右に分散させて、その間に比較的大きなスペースを挿入することで、視認者は、遠方画像と近傍画像とを、「まとまりのある同種の画像の集合」と認識しづらくなり、近傍画像は、遠方画像から視覚的に分離され易くなる。
【0039】
また、左/右の一方の表示領域のみが遠方画像の表示領域と縦方向に重複するが、他方は重複しない配置とすると、近傍画像の表示コンテンツが左右に非対称に配置される傾向が生じ、横方向(左右方向)には斬新であり、一方、縦方向(上下方向)には、遠方画像との関連性が感じ取りにくい印象が与えられる。これによって、視認者は、遠方画像を含めて一つのまとまりのある画像の集合とは知覚する可能性が低くなる。このことは、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離することに役立つ。
【0040】
第5の態様に従属する第6の態様において、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記右側表示領域は縦方向に重なるが、前記左側領域は重ならないようにする処理が実行される場合における、前記右側表示領域の面積は、前記左側表示領域の面積よりも大きく、
前記遠方画像の表示領域、及び前記近傍画像の前記左側表示領域は縦方向に重なるが、前記右側領域は重ならないようにする処理が実行される場合における、前記左側表示領域の面積は、前記右側表示領域の面積よりも大きくてもよい。
【0041】
第6の態様では、第5の態様において、左/右の一方の表示領域のみが遠方画像の表示領域と縦方向に重複するが、他方は重複しない配置とする場合に、重複している方の表示領域の面積は、重複していない方の表示領域の面積よりも大きく設定している。表示領域の面積が大きいということは、表示コンテンツの数を増やす点で有利であり、また、横方向に長い表示コンテンツを配置することができ、また、その場合の配置の自由度も高いという利点がある。
【0042】
例えば、近傍画像として、4つの表示コンテンツがある場合に、非重複の表示領域に1つの表示コンテンツを表示し、他の3つの表示コンテンツは、面積がより大きい重複する表示領域に表示する、というように、左右に非対称的な表示コンテンツの配置が可能となる。
【0043】
近傍画像の表示コンテンツが左右に非対称に配置される表示は、一種のデザイン性も備えており、単に分散されているのみならず、斬新性を備える同種の画像という感覚を視認者に与えることから、視認者は、自然と、近傍画像を遠方画像から区別して認識する傾向が生じる。また、この左右非対称の表示は、非表示領域(スペース領域)も含めて一種のデザイン的な配置とみることもでき、横方向に関しては斬新な、1つのまとまりのあるデザイン的な視覚を与え易い。一方、縦方向(上下方向)には、遠方画像との関連性が感じ取りにくい印象が与えられる。
【0044】
したがって、視認者は、遠方画像を含めて一つのまとまりのある画像の集合とは知覚する可能性が低くなる。このことは、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離することに役立つ。
【0045】
第1乃至第6の何れか1つの態様に従属する第7の態様において、
前記視覚的分離処理は、
有彩色の表示が主体である前記遠方画像に対して、前記近傍画像を無彩色の表示が主体である表示に変更する処理を、さらに含んでもよい。
【0046】
第8の態様では、近傍画像についての視覚的分離処理において、無彩色の表示が主体となるように表示態様を変更することができる点を明確化している。
【0047】
遠方画像には、AR画像やADAS画像等が含まれ、その表示は、視認者の注意を喚起し易いように、例えば赤や黄、青等の有彩色の表示がなされる場合が多い。これは、車両が通行する道路の路面が無彩色(例えば暗色系)の場合が多く、路面に引かれている白線等も無彩色であり、同系色の色を用いた表示では、視認者の注意を喚起するのが難しいからである。
【0048】
この点に着目して、近傍画像(背景も含む)については、無彩色(一例として、灰色、黒、白、これらを用いたグラデーション等を含む)を主体として着色を施すことで、遠方画像とは異なる印象を与えることができる。これによって、近傍画像は、遠方画像と直感的に区別され易くなる。
【0049】
例えば、複数の表示コンテンツの表示領域の背景を灰色等の暗色系の色に着色し、一方、過半数の表示コンテンツを、例えば、白抜きの文字や図形等で表現する、といったことが想定され得る(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。このことは、違和感を生じさせずに、見易い表示を実現することに寄与する。
【0050】
第8の態様において、表示装置は、
遠方画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置と、
第1乃至第7の何れか1つの態様の表示制御装置による表示制御によって、近傍画像を表示する表示器装置、又はヘッドアップディスプレイ装置と、
を含む。
【0051】
第8の態様によれば、近傍画像/遠方画像の識別性の低下を抑制し、表示画像の見易さを向上させることが可能な表示装置を提供することができる。
【0052】
第9の態様において、表示制御方法は、
視認者を基準として、より近くに表示される近傍画像、及び、より遠くに表示される遠方画像の表示を制御する表示制御方法であって、
前記近傍画像と前記遠方画像との識別性が低下する状況であるか否かを判定する、あるいは、前記識別性を高めた方がよいか否かを判定する工程と、
前記判定の結果が肯定的であるとき、前記近傍画像を、前記遠方画像からより遠ざけることで、前記近傍画像と前記遠方画像との間の非表示領域を増やす、前記近傍画像を非表示とする、前記近傍画像を縮小する、前記近傍画像を、表示態様を変更して縮小する、前記近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる、の少なくとも1つを含む視覚的分離処理を実行する工程と、
を含む。
【0053】
第9の態様によれば、近傍画像/遠方画像の識別性の低下を抑制し、表示画像の見易さを向上させることを、比較的簡易な手法によって実現することができる。
【0054】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、表示装置の一例(表示器装置及びHUD装置を含む車載表示装置)の構成例、及びHUD装置による虚像表示面の設定例を示す図である。
【
図2】
図2(A)、(B)は、表示器装置及びHUD装置を用いた表示装置の他の例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2(A)、(B)に示される表示装置による表示の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、2つのHUD装置を用いた表示装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示される表示装置による表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図6(B)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図である。
【
図7】
図7(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図7(B)~(E)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示の他の例を示す図である。
【
図8】
図8(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図8(B)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示の、さらに他の例を示す図である。
【
図9】
図9(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図9(B)、(C)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示の、さらに他の例(
図8(B)の変形例)を示す図である。
【
図10】
図10(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図10(B)、(C)は、操舵が必要な分岐点に近づくにつれて、近傍画像の表示態様が段階的に変化することを示す図である。
【
図11】
図11(A)、(B)は、重要性が高いと判定される遠方画像の例、及び、視覚的分離処理後の近傍画像の例を示す図である。
【
図12】
図12(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の双方が、ウインドシールドを介して見えている運転シーンを示す図、
図12(B)は、遠方画像の重要性が増大し、近傍画像について視覚的分離処理が実施された運転シーンの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、表示装置の表示を制御するシステムの構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、近傍画像の表示制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0057】
図1を参照する。
図1は、表示装置の一例(表示器装置及びHUD装置を含む車載表示装置)の構成例、及びHUD装置による虚像表示面の設定例を示す図である。
【0058】
なお、
図1において、視認者の左右の目を結ぶ線分に沿う方向(言い換えれば車両1の幅方向)を左右方向(あるいは横方向)とし、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面6とする)に直交する線分に沿う方向を上下方向(あるいは縦方向、又は高さ方向)とし、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う方向(車両1の前進及び後退の向きを示す方向)を前後方向とする。また、前方向は、奥行き方向と称する場合もある。左右方向はX方向、上下方向はY方向、前後方向はZ方向と表記することもできる。
【0059】
また、本明細書では、近傍画像/遠方画像という表現を使用するが、近傍画像は、視認者から見て手前側に表示される画像であり、遠方画像は、近傍画像よりも奥側に表示される画像である。視認者の視点位置から各画像までの距離(表示距離)が異なる。
言い換えれば、視認者から見て手前側にある表示領域(表示面)に表示される画像が近傍画像であり、より奥側の表示領域(表示面)に表示される画像が遠方画像である。近傍画像は、近方配置画像、手前側画像、と言い換えることもできる。遠方画像は、奥側配置画像、奥側画像と言い換えることもできる。
【0060】
表示装置は、ここでは車両1に搭載される車載表示装置である。この車載表示装置は、表示器装置(制御部140、表示器制御部107及び液晶パネル等の表示器(表示器装置)108を含む)、及び、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置100(制御部140、機器本体120を含む)の少なくとも一方を含む。
図1の例では双方が、車両1に搭載されている。
【0061】
HUD装置100は、例えばダッシュボード(言い換えればインストルメントパネル)41内に設置されている。
【0062】
機器本体120は、液晶パネル等の表示器150と、表示面164を備えるスクリーン(表示部)160と、光の反射面179を備える曲面ミラー(凹面鏡等)170と、を有する。
【0063】
曲面ミラー(凹面鏡等)170は、スクリーン160からの光を反射し、表示光Kを、車両1に備わるウインドシールド(被投影部材)2に投影(投射)する。ウインドシールド(被投影部材)2では表示光Kの一部が反射されて視認者(運転者等)の視点(目)Aに入射され、各入射光に対応する見かけ上の光E1~E3が、視認者の前方の結像点に結像することで、虚像表示面PS上に虚像が表示される。なお、虚像表示面PSは、スクリーン160における表示面164に対応して、視認者の前方の実空間に設定される仮想的な(見かけ上の)面である。
【0064】
また、虚像表示面PSとしては、例えば、路面6に垂直な立面a、路面6に対して傾斜した傾斜面b及びc、路面6に重畳される路面重畳面d、視認者に近い側が立面(疑似立面を含む)であり、遠い側が傾斜面となっている面e等がある。立面aを除く他の面を用いた表示では、虚像表示面上での表示位置に応じて虚像の表示距離が異なり、よって3D表示が可能である。
【0065】
次に、
図2を参照する。
図2(A)、(B)は、表示器装置及びHUD装置を用いた表示装置の他の例を示す図である。
図2において、
図1と共通する箇所には、同じ符号を付している。この点は、他の図面についても同様である。
【0066】
図2(A)、(B)の例は、遠方画像V1をHUD装置100によって表示し、近傍画像V2は、車内に設置されている表示器(表示器装置)108によって表示する点で共通する。
【0067】
但し、
図2(B)における表示器(表示器装置)108は、
図2(A)よりも、視認者(運転者)から見て手前側(ステアリングホイール4に近い側)に設けられている。この点で、構造上の差異がある。
【0068】
なお、
図2(A)、(B)では、HUD装置100において、原画像を表示する表示器151が設けられている。但し、表示器151からの表示光を曲面ミラー(凹面鏡等)170に導く光学系は省略されている。
【0069】
次に、
図3を参照する。
図3は、
図2(A)、(B)に示される表示装置による表示の一例を示す図である。
【0070】
図3では、表示器(表示器装置)108において、近傍画像として3つの表示コンテンツが、横方向(左右方向)に、間隔をおいて、一列に配置されて表示されている。左端に配置されているのは、各種情報(例えば、車両の温度や回転数のデータ)を示すバーコード表示D1であり、中央に配置されているのは車速表示(「80km/h」という表示)D2であり、右端に配置されているのは、現在の時刻を示す表示(「12:56pm」という表示)D3である。
【0071】
また、車両1の前方には、実景に重畳されるように、AR表示としてのナビゲーション表示F1、及び、燃料計の表示F2が表示されている。これらは、車両1の前方に設定される虚像表示面111に表示される。
【0072】
遠方画像F1、F2は、ウインドシールド2を介して、運転者(視認者)に視認される。近傍画像D1~D3の表示領域は、視認者(運転者)から見て、遠方画像F1、F2の下側に位置しており、上下方向における距離は小さい。遠方を見ている視認者は、少し目線を下げることで、近傍画像D1~D3を見ることができる。但し、視野は広がりをもつため、視認者が遠方画像F1、F2を見ている場合でも、視野内に、近傍画像D1~D3が入る場合も多いと想定され得る。
【0073】
次に、
図4を参照する。
図4は、2つのHUD装置を用いた表示装置の構成例を示す図である。
図4では、近傍画像V2は、HUD装置101によって虚像として表示される。また、近傍画像V2は、視認者から見て、ウインドシールド2の奥側に表示される。
【0074】
遠方画像V1については、
図2の例と同様に、HUD装置100によって虚像として表示される。なお、何れか一方のHUD装置を「第1のHUD装置」と称し、何れか他方を「第2のHUD装置」と称することができる。
【0075】
次に、
図5を参照する。
図5は、
図4に示される表示装置による表示の一例を示す図である。表示内容は、
図3と同様である。但し、
図4では、
図3の表示器(表示器装置)108は設けられていない。インストルメントパネル41上に便宜上の表示領域113が設定され、その表示領域113に、近傍画像D1~D3が表示される。
【0076】
次に、
図6を参照する。
図6(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図6(B)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図である。
【0077】
図6の例では、制御部140(
図1参照)は、近傍画像について、視覚的分離処理を実施することができる。視覚的分離処理は、例えば、近傍画像と遠方画像との識別性が低下する状況であると判定される場合、あるいは、識別性を高めた方がよいと判定される場合に実施され得る。
【0078】
視覚的分離処理では、例えば、近傍画像を、遠方画像からより遠ざけることで、近傍画像と遠方画像との間隔を広くする、近傍画像を非表示とする、近傍画像を縮小する、近傍画像を、表示態様を変更して縮小する、近傍画像が複数の表示コンテンツを含むとき、隣接して配置されている表示コンテンツ間の間隔を広げる、の少なくとも一つを含む表示制御が実行され得る。
【0079】
図6(A)は、近傍画像の通常の表示態様(視覚的分離処理前の表示態様)を示している。この表示態様は、先に
図3で示したものと同じである。
【0080】
図6(B)では、遠方画像として、F1、F2に加えて、さらに、制限速度情報F3、注意喚起表示(「強風注意」という文字)F4、前方車両との車間距離を示す情報F5が追加されている。F3は重要なナビ表示、F4、F5が、先進運転支援システム(ADAS)による運転支援情報(ADAS情報、ADAS画像)とみることができる。
【0081】
ここで、遠方画像としての表示コンテンツの数について、予め定められている閾値をm(ここでは、m=2)とする。
【0082】
図6(A)の状態では、遠方画像に含まれる表示コンテンツの数は、閾値(m=2)を超えないが、
図6(B)の状態では、閾値を超えている。遠方画像の表示コンテンツ数が閾値を超えると、視認者(運転者)が、各表示コンテンツを見て、その意味内容を把握する負担が増える。
【0083】
ここで、視認者が、遠方画像F1~F5を見ているときに、視野(視界)に、近傍画像D1~D3が入ると、視認者の負担はさらに増大する。特に、D1~D3が、個別に(ばらばら)に把握(知覚)される場合等には、視認者は、煩わしさを感じる。また、個々の表示コンテンツが提示する情報を個別に認識する必要があるため、視認者の認識上の負担が増大する。
【0084】
そこで、制御部140は、近傍画像について、視覚的分離処理を実施する。
図6(B)では、近傍画像の表示コンテンツD1~D3を、下側(-Y方向)にシフトしている。言い換えれば、近傍画像の表示コンテンツD1~D3を、遠方画像の表示コンテンツF1~F5からより遠ざけて、両画像間の縦方向の間隔(非表示領域、あるいはスペース領域)を広げている。
【0085】
これによって、遠方画像と近傍画像とが位置的に分離される。よって、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離し易くなる。
【0086】
次に、
図7を参照する。
図7(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図7(B)~(E)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示の他の例を示す図である。
【0087】
図7(A)は、
図6(A)と同じである。
図7(B)では、視覚的分離処理として、近傍画像の表示コンテンツD1~D3を一時的に消去している。近傍画像を一時的に消去することは、近傍画像が視認者の視野外になったことと実質的に同じである。言い換えれば、近傍画像が遠方画像から、視覚的に十分に分離されたことになる。
【0088】
図7(C)では、近傍画像の表示コンテンツのサイズ(大きさ)を縮小する処理が実施される。近傍画像を縮小する(より具体的には、例えば、近傍画像を構成する図形のアイコンや文字の大きさを小さくする)ことで、近傍画像の視認性が抑制され、近傍画像は、遠方画像から視覚的に分離され易くなる。また、例えば、遠方画像と近傍画像が、同種の表示コンテンツ(アイコン等)を含む場合、その大きさの違いによって、近傍画像が、遠方画像から視覚的に分離して知覚され易くなる。また、近傍画像のサイズを小さくすることは、遠方画像との間隔を広げる効果もある。
【0089】
図7(D)では、近傍画像を縮小する点で、
図7(C)と共通する。但し、
図7(D)では、近傍画像の縮小の際に、近傍画像(背景を含めて広く解釈するのが好ましい)の表示態様を変更する。近傍画像の視覚的分離を、より促進することができる。表示態様の変更の例としては、例えば、文字や図形のデザインを変更したり、構成要素や背景の色、輝度、彩度等を変更したりすることが想定され得る。
図7(D)では、車速表示D2が白抜きの表示に変更されている。また、バーコード表示D1、時刻表示D3は、有彩色の表示から、無彩色の表示へと変更されている。
図7(C)と
図7(D)とを比較すると、
図7(D)の方が、近傍画像の表示コンテンツD1~D3の視認性が抑制されており、その分、遠方画像からの視覚的分離が促進されている。
【0090】
また、
図7(E)では、近傍画像の表示コンテンツD1~D3の位置を移動させ、隣接する表示コンテンツ間の間隔を広げている。これによって、複数の表示コンテンツが密に配置されていると感じられることによる煩わしさが低減され、このことが、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離することを促進する。
【0091】
図7(E)では、遠方画像も複数の表示コンテンツを含んでおり、遠方画像の表示コンテンツの配置がかなり密である。仮に、近傍画像の表示コンテンツの配置も同様に密である場合には、遠方画像と近傍画像の区別がつきにくくなることが想定される。
図7(E)では、近傍画像の表示コンテンツD1~D3が分散されて配置されることで、遠方画像の配置の密度との違いが明確化され、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離し易くなる。なお、表示コンテンツD1は左側に移動されており、表示コンテンツD2は下側に移動されており、表示コンテンツD3は右側に移動されている。
【0092】
このように、視覚的分離処理を実施することで、違和感を生じさせずに、近傍画像(複数の表示コンテンツがあるときは、それらの一群の近傍画像)の、遠方画像からの視覚的な分離が容易化される。よって、視認者は、仮に視野範囲に近傍画像が入ったとしても、例えば、近傍画像を特に意識することなく、遠方画像を注視することができ、煩わしが軽減される。よって、見易い表示が実現される。
【0093】
次に、
図8を参照する。
図8(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図8(B)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示の、さらに他の例を示す図である。
【0094】
図8(A)において、遠方画像の表示については、
図6、
図7と同じである。AR表示としてのナビゲーション表示F1、及び、燃料計の表示F2が表示されている。
【0095】
一方、近傍画像は、ダッシュボード(インストルメントパネル)41上の所定の表示領域に表示される。
図8(A)では、左側表示領域119において、矢印アイコン表示D4、及びバッテリーの残量表示D5が表示され、右側表示領域121において、車速表示D6が表示されている。左側表示領域119と右側表示領域121は、所定の間隔で隣接して配置されている。
【0096】
また、
図8(A)では、a1、a2、a3、a4の表記がされているが、これらは、表示領域の端部の位置を示している。a1は、近傍画像の左側表示領域119の左端の位置を示し、a2は、遠方画像の表示領域111の左端の位置を示し、a3は、遠方画像の表示領域111の右端の位置を示し、a4は、近傍画像の右側表示領域121の右端の位置を示す。
【0097】
図8(A)の例では、a1とa2は、横方向(左右方向、X軸に沿う方向)の位置がほぼ同じであり、a3とa4は、横方向の位置がほぼ同じである。遠方画像の表示領域111の端部の位置と、近傍画像の表示領域119、121の端部の位置とが揃っていると、視認者は、遠方画像と近傍画像を、まとまりのある同種の画像の集合と認識してしまう可能性がある。これが、煩わしさの一因となり得る。
【0098】
言い換えれば、
図8(A)の例では、遠方画像の表示領域111(あるいは、遠方画像の表示コンテンツF1、F2)は、近傍画像の表示領域119、121(あるいは、近傍画像の表示コンテンツD5、D6)と、縦方向(上下方向、Y軸に沿う方向)に重なりを有する。これが視覚的な煩わしさの一因となり得る。
【0099】
なお、「縦方向に重なる」とは、具体的に言い換えれば、上側に位置する遠方画像の表示領域(あるいは表示コンテンツ)を、近傍画像が位置する下側の位置まで移動(シフト)したとすると、両領域(両コンテンツ)に重複(部分的な重複を含む)が生じる、ということである。
【0100】
次に、
図8(B)を参照する。
図8(B)では、視覚的分離処理の結果として、左側表示領域119(あるいは表示コンテンツD4、D5:第1の表示コンテンツ)が、横方向(左右方向)に沿って左側に移動され、右側表示領域121(あるいは表示コンテンツD6:第2の表示コンテンツ)が、横方向(左右方向)に沿って右側に移動されている。この結果として、左側表示領域119と右側表示領域121との間に、横長の、かなり大きな非表示領域(スペース領域、空き領域)123が設けられている。
【0101】
この非表示領域(スペース領域)123の上側に、遠方画像の表示領域111が位置する。
図8(B)の例のように、非表示領域123の面積を、ある程度大きくとれば、遠方画像の表示領域111と、近傍画像の左/右の各表示領域110、121とは、縦方向(上下方向)において重ならないようにすることができる。
【0102】
図8(B)では、a1は、a2よりも左側に位置し、a4は、a3よりも右側に位置する。よって、上側に位置する遠方画像の表示領域111を、近傍画像が位置する下側の位置まで移動(シフト)したとしても、遠方画像の表示領域111は、非表示領域123内に収まり、左側表示領域119及び右側表示領域121とは重複が生じない。言い換えれば、遠方画像の表示コンテンツF1~F5は、近傍画像の表示コンテンツD4~D6と縦方向に重複しない。
【0103】
なお、左/右のいずれかの表示領域(119又は121)のみが、遠方画像の表示領域111と縦方向に重ならないようにすることもできる。この例については後述する。
【0104】
上述のとおり、視覚的な煩わしさが生じる一因は、上側の遠方画像と下側の近傍画像とを、「まとまりのある同種の画像の集合」と認識してしまうことにあると考えられる。近傍画像の表示コンテンツを左右に分散させて、その間に比較的大きなスペースを挿入することで、視認者は、遠方画像と近傍画像とを、「まとまりのある同種の画像の集合」と認識しづらくなり、近傍画像は、遠方画像から、縦方向に視覚的に分離され易くなる。よって、遠方画像と近傍画像との区別をし易くなり、煩わしさが抑制される。
【0105】
次に、
図9を参照する。
図9(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図9(B)、(C)は、視覚的分離処理後の近傍画像、及び遠方画像の表示の、さらに他の例(
図8(B)の変形例)を示す図である。
【0106】
図9(A)は、
図8(A)と同じである。
図9(B)では、視覚的分離処理の結果として、左側表示領域119(あるいは表示コンテンツD4、D5:第1の表示コンテンツ)が、横方向(左右方向)に沿って左側に移動され、右側表示領域125(あるいは表示コンテンツD7、D6:第2の表示コンテンツ)が、横方向(左右方向)に沿って右側に移動されている。この結果として、左側表示領域119と右側表示領域125との間隔が広がっている。なお、表示コンテンツD7は残燃料量を示す燃料ゲージである。
【0107】
但し、
図9(B)では、遠方画像の表示領域111、及び近傍画像の右側表示領域125は縦方向に重なるが、左側領域119は重ならない配置が採用されている。左側表示領域119と右側表示領域125との間には、非表示領域(スペース領域)127が設けられている。
【0108】
図9(B)では、a1は、a2よりも左側に位置し、a4は、a3よりも左側に位置する。
【0109】
また、
図9(B)では、縦方向に重複している右側表示領域125の面積は、重複していない左側表示領域119の面積よりも大きく設定されている。表示領域の面積が大きいということは、表示コンテンツの数を増やす点で有利であり、また、横方向に長い表示コンテンツを配置することができ、また、その場合の配置の自由度も高いという利点がある。左側表示領域119に表示される表示コンテンツは、D4、D5の2つであり、右側表示領域125に表示される表示コンテンツは、D7、D6の2つであり、コンテンツ数としては同じである。但し、右側表示領域125には、かなり横長の残燃料ゲージD7が、見易い大きさで表示されている。
【0110】
また、
図9(C)では、遠方画像の表示領域111、及び近傍画像の左側表示領域131は縦方向に重なるが、右側領域121は重ならない配置が採用されている。左側表示領域131と右側表示領域121との間には、非表示領域(スペース領域)129が設けられている。
【0111】
左側表示領域131には、矢印のアイコンD4、時刻表示D8、バッテリーの残量を示すメーター表示D9、燃料の残量を示すメーター表示D10が表示される。また、右側表示領域には、車速表示D6が表示される。
【0112】
また、
図9(C)では、縦方向に重複している左側表示領域131の面積は、重複していない右側表示領域121の面積よりも大きく設定されている。表示領域の面積が大きいということは、表示コンテンツの数を増やす点で有利であり、また、横方向に長い表示コンテンツを配置することができ、また、その場合の配置の自由度も高いという利点がある。左側表示領域131に表示される表示コンテンツは、D4、D8、D9、D10の4つであり、右側表示領域121に表示される表示コンテンツはD6の1つである。
【0113】
図9(B)、(C)の例のように、左/右の一方の表示領域のみが遠方画像の表示領域と縦方向に重複するが、他方は重複しない配置とすると、近傍画像の表示コンテンツが左右に非対称に配置される傾向が生じ、横方向(左右方向)には斬新であり、一方、縦方向(上下方向)には、遠方画像との関連性が感じ取りにくい印象が与えられる。これによって、視認者は、遠方画像を含めて一つのまとまりのある画像の集合とは知覚する可能性が低くなる。このことは、近傍画像を、遠方画像から、縦方向に視覚的に分離することに役立つ。
【0114】
また、左側表示領域と右側表示領域の面積を異ならせることで、例えば、
図9(B)、(C)に示されるような、左右に非対称的な表示コンテンツの配置が可能となる。
【0115】
近傍画像の表示コンテンツが左右に非対称に配置される配置は、一種のデザイン性も備えており、単に分散されているのみならず、斬新性を備える同種の画像という感覚を視認者に与えることから、視認者は、自然と、近傍画像を遠方画像から区別して認識する傾向が生じる。
【0116】
また、この左右非対称の配置は、非表示領域(スペース領域)も含めて一種のデザイン的な配置とみることもでき、横方向に関しては、1つのまとまりのあるデザイン的な視覚を与え易い。一方、縦方向(上下方向)には、遠方画像との関連性が感じ取りにくい印象が与えられる。
【0117】
したがって、視認者は、遠方画像を含めて一つのまとまりのある画像の集合とは知覚する可能性が低くなる。このことは、近傍画像を、遠方画像から視覚的に分離することに役立つ。
【0118】
次に、
図10を参照する。
図10(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の表示例を示す図、
図10(B)、(C)は、操舵が必要な分岐点に近づくにつれて、近傍画像の表示態様が段階的に変化することを示す図である。
【0119】
図10(A)では、ウインドシールド2を介して、遠方に高速道路の出口904が見えている。この高速道路の出口904は、車両の操舵が必要な分岐点に相当する。HUD装置によって、出口904に注意喚起をうながす注意喚起用(あるいは、視点誘導用)のポインタJ1が表示されている。近傍表示(表示コンテンツD1~D3)については、通常の表示がなされている。
【0120】
図10(B)では、車両が出口904に接近し、出口904までの距離が所定の閾値以内である。これによって、出口904をより明確に示す標識表示(AR表示)906が表示される。これに伴い、近傍画像について視覚的分離処理が実施される。
図10(B)では、表示コンテンツD1を左側に移動させ、表示コンテンツD3を右側に移動させることで、隣接する表示コンテンツ間の間隔を広げている。近傍画像の表示コンテンツが分散されて密な配置ではなくなることから、遠方画像を注視しているときに、仮に視界(視野)に近傍表示が含まれることになったとしても、近傍画像は、遠方画像から自然に分離されて、煩わしさが抑制される。
【0121】
図10(C)では、車両が、出口904にさらに接近した状況である。この結果、路面上に、車両の進行誘導用の表示907が表示される。これに伴い、近傍画像についての表示態様が変更される。
図10(C)では、表示コンテンツD2のみにグラデーションの背景を付し、重要度の高い車速情報を、視認者(運転者等)に印象付けるようにしている。また、近傍画像の表示コンテンツD2の遠近感と、遠方画像としての、路面上の車両の進行誘導用の表示(独自の遠近感をもって表示されている)907との整合がとれ、自然な視覚が維持される。一方、表示コンテンツD2のみにグラデーションの背景を付すことで、近傍画像の表示コンテンツD1~D3については、デザイン上の斬新性が増し、遠方表示と近傍表示との直感的な識別性は向上する。よって、見易い表示となる。
【0122】
次に、
図11を参照する。
図11(A)、(B)は、重要性が高いと判定される遠方画像の例、及び、視覚的分離処理後の近傍画像の例を示す図である。
【0123】
図11(A)では、AR表示としての制限速度表示LS1が表示されている。また、ADASによって、前方車両G1に重畳して、注意喚起マークM1が表示されている。この注意喚起マークM1は、重要度の高い遠方画像に相当する。
【0124】
これに対応して、近傍画像について視覚的分離処理が実施され、先に示した
図7(D)の表示態様に変更されている。但し
図7(D)では、制限速度、及び車速は80km/hであったが、
図11(A)では、60km/hである。
【0125】
また、
図11(B)では、先行車両G2は遠くに位置しており、特に問題はない。但し、道路に人B1が進入しており、ADASによって、警告表示としての枠C1が表示されている。この警告表示としての枠C1は、重要度の高い遠方画像に相当する。
【0126】
これに対応して、近傍画像について視覚的分離処理が実施され、
図11(A)と同様の表示態様に変更されている。
【0127】
次に、
図12を参照する。
図12(A)は、視覚的分離処理前の近傍画像、及び遠方画像の双方が、ウインドシールドを介して見えている運転シーンを示す図、
図12(B)は、遠方画像の重要性が増大し、近傍画像について視覚的分離処理が実施された運転シーンの一例を示す図である。
【0128】
図12(A)では、近傍画像及び遠方画像の双方が、ウインドシールド2を介して、車両の前方に見えている。車両の前方において、遠くに先行車両G3が見えている。また、遠方画像として、制限速度表示(AR表示)LS1が表示されている。
【0129】
図12(B)は、
図12(A)よりも、注意を要する運転シーンである。車両の前方の道路は、左側にカーブしている。また、車両は高速に走行中である。また、先行車両としてG4、G5、G6が存在し、特に、直近の先行車両G4との車間距離に注意が必要である。
【0130】
遠方画像としては、制限速度表示LS2と、先行車両G4についての注意喚起マークU1と、車間距離を保つのに役立つマーク(車間距離マーク)W1と、車両の進路を案内する、複数の矢印の表示W2と、が表示されている。複数の矢印の表示W2は、路面6上の白線9に沿うように配置されている。遠方画像としての表示コンテンツの数が、かなり増加しており、また、表示の重要度(表示の優先度)も高まっている。
【0131】
また、遠方画像の直下に近傍画像が配置されており、近傍画像が視野に入ると、視認者の認識の負担が増える可能性が高い。
【0132】
よって、近傍画像について、視覚的分離処理が施される。ここでは、近傍画像としての3つの表示コンテンツD1~D3について、隣接する表示コンテンツ間の間隔を広げることで、密な配置を粗の配置に分散させる処理が実施される。また、これに加えて、3つの表示コンテンツD1~D3を枠Q10で囲み、その内側を着色して、全体として背景を付与している。これにより、近傍画像が、遠方画像から自然に視覚的に分離され易くなる。
【0133】
また
図12(B)では、視覚的分離処理後の近傍画像は、無彩色の表示が主体である表示となっている。その理由は以下のとおりである。
【0134】
遠方画像には、
図12(B)に明記されるように、AR画像やADAS画像等が含まれ、その表示は、視認者の注意を喚起し易いように、例えば赤や黄、青等の有彩色の表示がなされる場合が多い。
【0135】
これは、車両が通行する道路の路面6が無彩色(例えば暗色系)の場合が多く、路面に引かれている白線9等も無彩色であり、同系色の色を用いた表示では、視認者の注意を喚起するのが難しいからである。
【0136】
この点に着目して、近傍画像(背景も含む)については、無彩色(一例として、灰色、黒、白、これらを用いたグラデーション等を含む)を主体として着色を施すことで、遠方画像とは異なる印象を与えることができる。これによって、近傍画像は、遠方画像と直感的に区別され易くなる。
【0137】
図12(B)の例では、近傍画像の背景色S1は、例えば薄い灰色(グレー)であり、バーコード表示D1は白と黒(あるいは後退色である寒色系の色)の表示とし、車速表示D2は白抜きの表示とすることで、無彩色が主体の表示としている。これによって、近傍画像を、違和感を生じさせることなく、自然な形で、遠方画像と区別することができ、視認者の負担が軽減される。
【0138】
次に、
図13を参照する。
図13は、表示装置の表示を制御するシステムの構成例を示す図である。
【0139】
車載表示装置(表示装置)180は、I/Oインタフェース30と、制御部(表示制御部)140を有するプロセッサ(制御装置)172と、画像処理部210と、画像表示部230と、記憶部(メモリ)350と、車外通信接続機器420と、を有する。
【0140】
画像表示部230は、
図1に示した表示器制御部107及び表示器108と、HUD装置100の構成要素である、表示器150、及び表示器制御部163(
図1では不図示)とを有する。
【0141】
I/Oインタフェース30には、道路情報データベース403と、自車位置検出部405と、車外センサ407と、視線方向検出部409と、目位置検出部411と、携帯情報端末413と、車両ECU415と、が接続される。
【0142】
車両ECU415には、ピッチ角センサ417や舵角センサ419等の各種センサから、適宜、必要な情報が提供される。また、I/Oインタフェース420は、車外通信接続機器420と接続される。
【0143】
また、記憶部(メモリ)350には、例えば、実オブジェクト及びその位置検出モジュール510と、周囲環境検出モジュール512と、車両状況検出モジュール514と、画像種類決定モジュール516と、画像配置決定モジュール518と、グラフィック表示モジュール520と、表示態様決定モジュール522と、が含まれる。
【0144】
表示態様決定モジュール522には、近傍画像(近傍表示)の表示態様決定モジュール327と、遠方画像(遠方表示)の表示態様決定モジュール329とが含まれる。
【0145】
また、表示態様決定モジュール327は、視覚的分離処理を実行する視覚的分離処理実行モジュール328を有する。
【0146】
プロセッサ172が、上記の各モジュールに従って動作することで、例えば、機能ブロックとしての制御部140や各種の処理部等が構築される。制御部140は、上述した近傍画像の視覚的分離処理等を制御する。
【0147】
次に、
図14を参照する。
図14は、近傍画像の表示制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0148】
ステップS1では、車両の運転状況、周囲環境等が検出され、各種情報が取得される。ステップS2では、取得された各種情報に基づいて、近傍画像の表示コンテンツが決定される。
【0149】
ステップS3では、近傍画像の表示コンテンツの表示に際して、視覚的分離処理の要否を判定する。言い換えれば、表示態様の変更条件を満たすか否かが判定される。Yのときは、ステップ4にて、表示態様の変更処理が実施される。視覚的分離処理には、例えば、近傍画像について、遠方画像からの距離を増大させる、非表示とする、小さくする、表示態様を変更して小さくする、表示及び背景の少なくとも一方の色を無彩色主体に変更する、複数の表示コンテンツ間の距離を増大させて分散させる等の処理を含めてもよい。
【0150】
ステップS3でNのときは、ステップS5にて、通常の表示態様の表示が実施される。ステップS6では終了判定が行われ、NのときはステップS1に戻り、Yのときは終了する。
【0151】
以上説明したように、本発明によれば、近傍画像/遠方画像の識別性の低下を抑制し、表示画像の見易さを向上させることができる。
【0152】
本発明は種々変形、応用が可能である。例えば、近傍画像についての視覚的分離処理においては、上記の実施形態で例示したものに限定されず、種々の表示態様を適宜、採用することができる。
【0153】
また、本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、ナビゲーションに関する用語(例えばAR表示、ADAS表示等)についても、広義に解釈するものとする。また、HUD装置や表示器装置(及び広義の表示装置)には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ、ゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0154】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0155】
1・・・車両(自車両)、2・・・ウインドシールド(被投影部材)、6・・・路面、30・・・I/Oインタフェース、41・・・インストルメントパネル(ダッシュボード)、100・・・HUD装置、108・・・表示器(液晶パネル等)、109・・・表示器の表示面、120・・・HUD装置の本体部、140・・・制御部(表示制御部)、160・・・HUD装置の表示器(液晶パネル等)、160・・・スクリーン、164・・・スクリーンの表示面、170・・・曲面ミラー(凹面鏡等)、179・・・曲面ミラーの反射面、210・・・画像処理部、230・・・画像表示部、350・・・記憶部、522・・・表示態様決定モジュール、327・・・近傍画像の表示態様決定モジュール、329・・・遠方画像の表示態様決定モジュール、328・・・視覚的分離処理実行モジュール、K・・・表示光、PS・・・画像表示面