(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181860
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】床材、及び、床材の貼り付け方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
E04F15/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089052
(22)【出願日】2021-05-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000213769
【氏名又は名称】朝日ウッドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】正木 将平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真吾
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA26
2E220AA29
2E220AC01
2E220BA12
2E220BB03
2E220BC06
2E220DA02
2E220DA13
2E220DB03
2E220EA05
2E220FA11
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB32X
2E220GB34X
2E220GB43X
2E220GB45X
2E220GB47X
(57)【要約】
【課題】浮き上がりを防止し、かつ、実部を破壊することなく貼り替えが可能な床材を提供する。
【解決手段】床材1は第一実部13と第二実部14とを備える。第一実部13は、表面側突出部131と、裏面側切欠部132とを有する。表面側突出部131は、その上面が外側に向かって床材裏面側に傾斜する第一上面傾斜部133と、床材表面に垂直な第一先端部134とを有する。第二実部14は、裏面側凸部141と表面側凸部142とを有する。裏面側凸部141と表面側凸部142との間には凹部143が形成される。表面側凸部142は、床材表面に垂直な第二先端部146を有する。表面側突出部131が、隣接する床材1の凹部143に嵌め込まれることにより第一実部13と第二実部14とが実結合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に延びる床材であって、
前記一の方向に直交する断面において、前記床材の一方端に設けられた実部を第一実部と、前記床材の他方端に設けられた実部を第二実部とするとき、
前記第一実部は、
前記一方端の表面側において、外側に向けて突出するように設けられた表面側突出部と、
前記一方端の裏面側において、切り欠き状に設けられた裏面側切欠部と、
を有し、
前記表面側突出部は、その上面が外側に向かって前記裏面側に傾斜する第一上面傾斜部と、前記表面に垂直な第一先端部とを有し、
前記第二実部は、
前記他方端の前記裏面側において、外側に向けて突出するように設けられた裏面側凸部と、
前記他方端の前記表面側において、外側に向けて突出するように設けられ、前記裏面側凸部との間に凹部を形成する、表面側凸部と、
を有し、
前記表面側凸部は、前記表面に垂直な第二先端部、を有し、
前記表面側突出部が、隣接する床材の前記凹部に嵌め込まれることにより前記第一実部と前記第二実部とが実結合する、
床材。
【請求項2】
前記表面側凸部は、その下面側が外側に向かって前記表面側に傾斜する下面傾斜部、を有する、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記表面側凸部は、その上面が外側に向かって前記裏面側に傾斜する第二上面傾斜部、を有する、
請求項1又は請求項2に記載の床材。
【請求項4】
前記断面において、前記床材の厚み方向における、前記第一先端部及び前記第二先端部の長さは、0.1mm以上である、
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の床材。
【請求項5】
前記第一実部と前記第二実部とが実結合した状態において、
前記断面において、前記床材の厚み方向に直交する方向における、前記第一先端部と、前記第二先端部との間の距離が0.1mm以上0.9mm以下である、
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の床材。
【請求項6】
前記床材の総厚が1.5mm以上6.0mm以下である、
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の床材。
【請求項7】
木質化粧、樹脂シート、又は、紙シートで構成された化粧材を含む、
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の床材。
【請求項8】
樹脂シート、防湿シート、又は、木質シートで構成された裏面材を含む、
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の床材。
【請求項9】
木質基材、樹脂成形基材、石膏系基材、鉱物繊維系基材、又は、これらの混成物で構成された基材を含む、
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の床材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の床材の貼り付け方法であって、
第一床材と第二床材とが間隔をあけて設置され、かつ、前記第一床材の前記第一実部と、前記第二床材の前記第二実部とが対向した状態で、前記第一床材と前記第二床材との間に、第三床材を貼り付ける場合において、
前記第一床材と前記第二床材との間の下地に接着剤を塗布するステップと、
前記第三床材の前記第二実部が、前記第三床材の前記第一実部よりも下方とした斜め状態とした前記第三床材の前記第二実部の前記裏面側凸部を、前記第一床材の前記第一実部の前記裏面側切り欠き部に入れ込むステップと、
前記第三床材の前記第一実部側を、前記第二実部側に押圧して、前記第三床材の前記第一実部の表面側突出部を、前記第二床材の前記第二実部の前記凹部に嵌め込むステップと、
を有する、床材の貼り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材、及び、床材の貼り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床材は、その側端部に雄実と雌実とが形成されている。そして、複数の床材を配置するとき、隣り合う床材の雄実と雌実とを組み合わせることで、複数の床材が一体化されて1枚ずつの床材の浮き上がりが防止されたり、床材の位置決めが行われたりする。
【0003】
近年、賃貸物件や既設戸建て住宅のリフォーム需要が増加している。リフォーム需要の増加に伴って、工期短縮の観点から、既設の床材上に直接設置できる床材が求められている。この種の床材においては、既存の建材に上に重ねて貼るという性質上、製品厚みが薄いことが求められる。
【0004】
床材の製品厚みを薄くする場合、床材は相じゃくり状の実部を設けた構成とすることが知られている。例えば、相じゃくり状の実部を有する床材は、基材層の巾方向一端部に、表面側を突出させた相じゃくり状の実部が設けられ、巾方向他端部に、隣接して設置される床材の巾方向一端部の実部と実接合される裏面側を突出させた相じゃくり状の実部が設けられた構成としてある。そして、隣り合う床材の相じゃくり状の実部同士を重ね合わせることで、床材を組み合わせるようになっている。
【0005】
この相じゃくり状の実部を重ね合わせた場合、表面側の相じゃくり状の実部が、裏面側の相じゃくり状の実部から浮き上がり、床材の反りが生じたり、隣接する床材に隙間が生じたりすることがある。その場合、床面にガタつき、きしみ等が生じやすい。特許文献1には、ガタつきなく緊密に接合できる構造を有する床材が開示されている。特許文献1に記載の床材は、その一方端に接合溝、他方端に接合突条が形成されている。接合溝は、床材の内部に向かって鋭角の断面形状を有し、接合突条は、接合溝の断面に対応する鋭角の断面形状を有している。そして、床材の接合突条が、隣り合う床材の接合溝に密着するように嵌め込まれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、リフォーム時において、施設済みの床材の一部の床材を取り外し、新たな床材を貼り付けるといった、床材の貼り替え(例えば、床材1枚の貼り替え)作業を行うことがある。この場合、特許文献1に開示された床材では、新たな床材を貼り付ける際、新たな床材の実部(隣り合う床材の接合突条の下方に位置する部分)を除去する必要がある。つまり、特許文献1に記載の床材では、実部を破壊することなく、床材の貼り替え作業を行うことができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、浮き上がりを防止し、かつ、実部を破壊することなく貼り替えが可能な床材、及び、床材の貼り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の床材は、
一の方向に延びる床材であって、
前記一の方向に直交する断面において、前記床材の一方端に設けられた実部を第一実部と、前記床材の他方端に設けられた実部を第二実部とするとき、
前記第一実部は、
前記一方端の表面側において、外側に向けて突出するように設けられた表面側突出部と、
前記一方端の裏面側において、切り欠き状に設けられた裏面側切欠部と、
を有し、
前記表面側突出部は、その上面が外側に向かって前記裏面側に傾斜する第一上面傾斜部と、前記表面に垂直な第一先端部とを有し、
前記第二実部は、
前記他方端の前記裏面側において、外側に向けて突出するように設けられた裏面側凸部と、
前記他方端の前記表面側において、外側に向けて突出するように設けられ、前記裏面側凸部との間に凹部を形成する、表面側凸部と、
を有し、
前記表面側凸部は、前記表面に垂直な第二先端部、を有し、
前記表面側突出部が、隣接する床材の前記凹部に嵌め込まれることにより前記第一実部と前記第二実部とが実結合する。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の床材の貼り付け方法は、
本発明の床材の貼り付け方法であって、
第一床材と第二床材とが間隔をあけて設置され、かつ、前記第一床材の前記第一実部と、前記第二床材の前記第二実部とが対向した状態で、前記第一床材と前記第二床材との間に、第三床材を貼り付ける場合において、
前記第一床材と前記第二床材との間の下地に接着剤を塗布するステップと、
前記第三床材の前記第二実部が、前記第三床材の前記第一実部よりも下方とした斜め状態とした前記第三床材の前記第二実部の前記裏面側凸部を、前記第一床材の前記第一実部の前記裏面側切り欠き部に入れ込むステップと、
前記第三床材の前記第一実部側を、前記第二実部側に押圧して、前記第三床材の前記第一実部の表面側突出部を、前記第二床材の前記第二実部の前記凹部に嵌め込むステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、床材の浮き上がりを防止し、かつ、実部を破壊することなく床材の貼り替えが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線における断面図である。
【
図3】
図3は、第一実部と、第二実部とが実結合した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、実の掛かり代を説明するための図である。
【
図5】
図5は、表面側凸部の別の例を示す床材の断面図である。
【
図6】
図6は、二枚の床材の間に、新たな床材を施工する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本実施の形態に係る床材について図面を参照して説明する。本実施形態に係る床材は、例えば、住宅のリフォーム時において、既設の床材上に直接設置できる床材である。また、本実施形態に係る床材は、施工した後において、施工した床材の一部の床材を破壊することなく貼り替えることができる構成となっている。
【0014】
図1は、床材1の平面図である。
図2は、
図1におけるII-II線における断面図である。
【0015】
床材1は一の方向に延びている。床材1は、基材10と、化粧材11と、裏面材12とを備えている。床材1は、化粧材11、基材10、裏面材12の順に積層されて構成される。以下の説明では、化粧材11側を表面側とし、裏面材12側を裏面側とする。また、床材1が延びる一の方向を長手方向と言い、
図1の平面視において、長手方向に直交する方向を巾方向と言う。なお、
図2においては、巾方向の長さを一部省略して図示している。
【0016】
基材10は、木質基材、樹脂成形基材、石膏系基材、鉱物繊維系基材、又はこれらの混成物で構成されている。木質基材としては、例えば、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)、MDF(Medium Density Fiberboard:中密度繊維板)、HDF(High Density Fiberboard:高密度繊維板)、パーチクルボード、OSB(Oriented Strand Board:配向性ストランドボード)などである。混成物としては、例えば、木質材料である木粉と樹脂とを混ぜ合わせた木粉プラスチック、又は、炭酸カルシウムと塩化ビニル樹脂とを混ぜ合わせたSPC(Stone Plastic Composite)などである。
【0017】
化粧材11は、基材10の表面に接着層を介して積層されている。化粧材11は、例えば、木質化粧、樹脂シート、又は、紙シートで構成されている。木質化粧は、突板又は挽板などである。樹脂シートは、例えば、オレフィンシート又は塩化ビニルシートなどである。紙シートには、絵柄が印刷されていてもよい。
【0018】
裏面材12は、基材10の裏面に接着層を介して積層されている。裏面材12は、例えば、樹脂シート、防湿シート、又は、木質シートで構成されている。樹脂シートは、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリスチレン樹脂、又は、ポリ塩化ビニル樹脂などである。防湿シートは、例えば、紙に樹脂を積層したラミネート紙、又はアルミ箔などの金属シートである。木質シートは、例えば、単板などである。
【0019】
裏面材12を設けることで、化粧材11との表裏バランスを取ることができ、床材1を反りにくくすることができる。裏面材12が樹脂シート又は防湿シートである場合には、その裏面材12を設けることで、床材1の施工接着剤の水分が基材10に移動することで発生する床材1の伸びと反りとを抑制することができる。
【0020】
基材10、化粧材11及び裏面材12の厚みは特に限定されないが、床材1の総厚が1.5mm~6.0mm、より好ましくは、1.5mm~4.0mmとなることが好ましい。床材1の総厚を薄くすることで、既設の床材上に床材1を直接設置することができる。
【0021】
床材1は、巾方向における一方端及び他方端それぞれに実部を備えている。以下の説明では、長手方向に直交する断面において、床材1の一方端に設けられた実部を第一実部13と言い、床材1の他方端に設けられた実部を第二実部14と言う。詳しくは後述するが、一の床材1の第一実部13は、その一の床材1に隣接配置された床材1の第二実部14と実結合するようになっている。第一実部13及び第二実部14は、第一実部13を第二実部14に実結合させるときに、破壊し難い構成となっている。
【0022】
図3は、第一実部13と、第二実部14とが実結合した状態を示す図である。以下、
図1~
図3を参照しつつ、第一実部13と、第二実部14とについて説明する。
【0023】
第一実部13は、表面側突出部131と、裏面側切欠部132とを有している。表面側突出部131は、床材1の一方端の表面側において、外側に向けて突出するように設けられている。裏面側切欠部132は、床材1の一方端の裏面側において、切り欠き状に設けられている。
【0024】
表面側突出部131は、第一上面傾斜部133と、第一先端部134とを有している。
【0025】
第一上面傾斜部133は、表面側突出部131の上面であって、外側に向かって床材1の裏面側に傾斜している。第一実部13と、第二実部14とが実結合する場合、第一上面傾斜部133は、床材1の溝の一部を形成するようになっている。
【0026】
第一先端部134は、表面側突出部131の先端面であって、床材1の表面に垂直となっている。なお、第一先端部134は、曲面も含むし、厚み方向に対して±5°程度傾斜する面も含む。床材1の厚み方向における、第一先端部134の長さは、0.1mm以上である。詳しくは後述するが、第一先端部134が床材1の表面に垂直となっていることで、第一実部13と、第二実部14とを実結合させる際に、表面側突出部131の先端部が破壊されにくくなっている。また、後述するが、床材1を貼り付ける際、第一先端部134と第二先端部146とは互いに干渉する部分であり、この干渉部分はより小さくすることが好ましい。このため、第一先端部134の長さは、1.0mm以下であり、好ましくは0.9mm以下であり、より好ましくは0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。
【0027】
表面側突出部131の下面は、巾方向に略平行であって、裏面側切欠部132の一部を形成している。
【0028】
第二実部14は、裏面側凸部141と、表面側凸部142と、を有している。
【0029】
裏面側凸部141は、床材1の他方端の裏面側において、外側に向けて突出するように設けられている。裏面側凸部141は、後述の表面側凸部142よりも外側に突出し、その上面は、巾方向に略平行となっている。第一実部13と、第二実部14とが実結合する場合、裏面側凸部141の上面と、表面側突出部131の下面とが接した状態で、裏面側凸部141は、第一実部13の裏面側切欠部132に位置するようになっている。
【0030】
表面側凸部142は、床材1の他方端の表面側において、外側に向けて突出するように設けられている。裏面側凸部141と、表面側凸部142との間には、凹部143が形成されている。第一実部13と、第二実部14とが実結合する場合、凹部143には、第一実部13の表面側突出部131が嵌め込まれるようになっている。
【0031】
表面側凸部142は、下面傾斜部144と、第二上面傾斜部145と、第二先端部146と、を有している。
【0032】
下面傾斜部144は、表面側凸部142の下面であって、外側に向かって床材1の表面側に傾斜している。巾方向に対する下面傾斜部144の傾斜角度は、巾方向に対する第一上面傾斜部133の傾斜角度と略同じとなっている。下面傾斜部144は、裏面側凸部141の上面と共に凹部143を形成している。第一実部13と、第二実部14とが実結合する場合、下面傾斜部144は、表面側突出部131の第一上面傾斜部133と接し、裏面側凸部141の上面は、表面側突出部131の下面と接するようになっている。なお、下面傾斜部144は、巾方向に平行な面であってもよい。
【0033】
第二上面傾斜部145は、表面側凸部142の上面であって、外側に向かって床材1の裏面側に傾斜している。第一実部13と、第二実部14とが実結合する場合、第二上面傾斜部145は、上記した第一上面傾斜部133、及び、後述の第二先端部146と共に、床材1の溝を形成するようになっている。
【0034】
第二先端部146は、表面側凸部142の先端面であって、床材1の表面に垂直となっている。なお、第二先端部146は、曲面も含むし、厚み方向に対して±5°程度傾斜する面も含む。床材1の厚み方向における、第二先端部146の長さは、0.1mm以上である。第二先端部146が床材1の表面に垂直となっていることで、第一実部13と、第二実部14とを実結合させる際に、表面側凸部142の先端部が破壊されにくくなっている。なお、後述するが、床材1を貼り付ける際、第一先端部134と第二先端部146とは互いに干渉する部分であり、この干渉部分はより小さくすることが好ましい。また、第二先端部146の長さをより小さくすることで、第二上面傾斜部145、第一上面傾斜部133、及び、第二先端部146で形成される床材の溝の段差を小さくし、床の意匠性を向上させることができる。したがって、第二先端部146の長さは、1.0mm以下であり、好ましくは0.9mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。
【0035】
ここで、第一実部13と第二実部14とが実結合した状態において、第一先端部134と第二先端部146との間の巾方向における距離は、実の掛かり代Wと言う。
図4は、実の掛かり代Wを説明するための図である。床材1は、実の掛かり代Wが0.1mm~0.9mmとなるように構成されていることが好ましい。このように構成することで、第一実部13及び第二実部14を破壊することなく、第一実部13と、第二実部14とを実結合させることができる。また、第一実部13と、第二実部14とが実結合した状態において、第二実部14の凹部143に嵌め込まれた第一実部13の表面側突出部131が、凹部143から抜けないようにすることができる。なお、実の掛かり代Wは大きくすると、第一実部13の表面側突出部131を第二実部14の凹部143に嵌め込みにくくなり、小さくすると、第一実部13の表面側突出部131が第二実部14の凹部143から抜けやすくなる。このため、実の掛かり代Wは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。また、実の掛かり代Wは、0.9mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.7mm以下がさらに好ましい。
【0036】
なお、表面側凸部142は、第二上面傾斜部145を有していなくてもよい。つまり、
図5に示すように、表面側凸部142の第二先端部146が、床材1の表面まで延びた構成となっていてもよい。
図5は、表面側凸部142の別の例を示す床材1の断面図である。この場合、床材1の溝は、第一上面傾斜部133と第二先端部146とで形成されることになる。
【0037】
図6は、二枚の床材1A、1Bの間に、新たな床材1Cを施工する方法を説明するための図である。
図6(A)は、施工前の状態を示す図であり、
図6(B)は、施工後の状態を示す図である。
【0038】
新たな床材1Cを施工する場合、床材1Cを斜めにしつつ、床材1Cの第二実部14の裏面側凸部141を、床材1Aの第一実部13の裏面側切欠部132に入れ込む。このとき、床材1Cの第一実部13の表面側突出部131は、床材1Bの第二実部14の表面側凸部142と接触した状態となる。この状態において、
図6(A)の矢印に示す方向に、緩衝材付きの道具(例えば、ゴムハンマー)で床材1Cの第一実部13表面を叩く、又は、手で押し込むなどすることで、床材1Cが瞬間的にたわみ、床材1Cの表面側突出部131が、床材1Bの表面側凸部142を乗り越え、床材1Bの凹部143に嵌るようになる。また、床材1Cの裏面側凸部141が床材1Aの第一実部13の裏面側切欠部132に入り込み、床材1Aの表面側突出部131が、床材1Cの凹部143に嵌るようになる。これにより、
図6(B)に示すように、床材1Aと床材1Bとの間に、床材1Cが嵌め込まれるようになる。
【0039】
床材1Cの表面側突出部131が、床材1Bの表面側凸部142を乗り越える時において、床材1Cの第一先端部134と、床材1Bの第二先端部146とは、表面に垂直であるため、互いに干渉しあうことがない。このため、床材1Cの表面側突出部131と、床材1Bの表面側凸部142とのそれぞれの先端部が破壊されることがない。なお、床材1の第一先端部134及び第二先端部146それぞれの長さを長くするほど強度が大きくなるので実部の破壊を防止することができる。一方、床材1の第一先端部134及び第二先端部146それぞれの長さを短くすることで、干渉部分を小さくすることができ、床材1Aと床材1Bとの間に、床材1Cを嵌め込みやすくなる。このため、上記したように、第一先端部134及び第二先端部146それぞれの長さは、下限が0.1mm以上であり、上限が1.0mm以下、好ましくは0.9mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。
【0040】
また、
図6(B)に示すように、第一実部13と、第二実部14とが実結合する場合、第一実部13の表面側突出部131が、第二実部14の裏面側凸部141と表面側凸部142とで挟み込まれた状態となる。このため、第一実部13が、第二実部14から浮き上がるといった、床材1の反りを防止することができる。また、床材1Cを接着剤で接着させる場合、床材1Cは、隣接する床材1A、1Bとの実結合により動きが抑制されるので、接着剤硬化まで床材1Cの仮固定手段(例えば、重しなど)が不要となる。同じ部分を複数回張り替えることを考慮した場合には、接着剤は、除去の際に下地を傷めにくい変成シリコン接着剤とすることが好ましい。
【0041】
(一部床材の貼り替え方法)
次に、一部床材の貼り替え方法について説明する。まず、既設床から抜取対象を取り除く必要がある。その方法については、特に制約はないが、例えば、カッターなどの切断手段で貼替対象床材に切込みを入れる。運搬用吸盤を貼替対象床材の表面に吸着させ、その状態で運搬用吸盤を上方に移動させることによって、貼替対象床材の切込み部分を起点として、施工済みの他の床材を傷つけることなく、貼替対象床材のみを剥ぎ取ることが可能となる。
【0042】
続いて、貼替対象床材を取り除いた後には、下地材の上面に接着剤などのフロア残留物が残っているため、スクレーパーなどによってこれを取り除き、下地を平滑にし、その後、下地の表面に接着剤を塗布する。このような下地処理を行うのは、新規床材の接着性を向上させるためである。このようにして、貼替対象床材を含む一部床材を取り除いた後の既存床の空間には、
図6で示す方法で、新規床材が嵌め込まれ、施工される。
【0043】
(実施例)
以下に、本発明の床材が、実部を破壊することなく貼り替えを実施することができる床材であることを確認するための試験を実施した。試験を実施するために、床材1の厚み方向における、第一先端部134の長さ(以下、寸法L1で表す)を0.48mm、床材1の厚み方向における、第二先端部146の長さ(以下、寸法L2で表す)を0.38mm、実の掛かり代Wを0.35mmとした床材Aと、寸法L1を0.15mm、寸法L2を0.11mm、実の掛かり代Wを0.71mmとした床材Bと、寸法L1を0.40mm、寸法L2を0mm、実の掛かり代Wを0.60mmとした床材Cとを用意した。それぞれの床材の総厚は3.0mmとした。これら床材を用いて貼り替え試験を実施した。このとき、実部が破壊されなかったものを〇、実部が破壊されたものを×として評価した。また、第一実部13の表面側突出部131が第二実部14の凹部143から抜けなかったものを〇、第一実部13の表面側突出部131が第二実部14の凹部143から抜けたものを×として評価した。以上の結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
表1の床材Cに示すように、第二実部14の第二先端部146が床材1の表面に垂直でないと、実部が破壊されてしまう。したがって、第一実部13の第一先端部134と、第二実部14の第二先端部146とのそれぞれが、床材1の表面に対して垂直な面となっていることで、実部を破壊することなく、床材の貼り替えを実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1A、1B、1C :床材
10 :基材
11 :化粧材
12 :裏面材
13 :第一実部
14 :第二実部
131 :表面側突出部
132 :裏面側切欠部
133 :第一上面傾斜部
134 :第一先端部
141 :裏面側凸部
142 :表面側凸部
143 :凹部
144 :下面傾斜部
145 :第二上面傾斜部
146 :第二先端部