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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181894
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】積層コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089100
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】今枝 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真志
(72)【発明者】
【氏名】兼子 俊彦
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC01
5E001AC03
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE13
5E082EE26
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造欠陥の発生の抑制、高容量化、及び実装不良の発生の抑制を図る。
【解決手段】積層コンデンサ1の素体2は第1電極10及び第2電極20を有する。第1電極10の少なくとも1つは、第1本体部11が第1延在部12に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲し、第2電極20の少なくとも1つは、第2本体部21が第2延在部22に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲している。第2方向D2における長さL0~L4及び主面2a間の距離TL1~TL3に関して式(1)~(6)が満たされている。L0は第2方向D2における素体2の長さである。
0.03≦L1/L0≦0.1…(1)
0.1≦L2/L0≦0.25…(2)
0.75≦L3/L0≦0.9…(3)
0.9≦L4/L0≦0.97…(4)
0≦(TL1-TL2)/TL1≦0.02…(5)
0≦(TL1-TL3)/TL1≦0.02…(6)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において互いに対向する一対の主面と、前記第1方向に垂直な第2方向において互いに対向する第1側面及び第2側面と、を有する素体を備え、
前記素体は、前記第1方向において誘電体層を介して互いに向かい合うように交互に配置された複数の第1電極及び複数の第2電極を有し、
前記複数の第1電極の各々は、第1本体部と、前記第1本体部から前記第1側面に至るように延在する第1延在部と、を含み、
前記複数の第2電極の各々は、第2本体部と、前記第2本体部から前記第2側面に至るように延在する第2延在部と、を含み、
前記第1方向及び前記第2方向に平行な断面において、
前記複数の第1電極の少なくとも1つは、前記第1本体部が前記第1延在部に対して前記第1方向の外側に位置するように湾曲しており、前記第1側面に最も近い第1変曲点と、前記第1変曲点の次に前記第1側面に近い第2変曲点と、を有し、
前記複数の第2電極の少なくとも1つは、前記第2本体部が前記第2延在部に対して前記第1方向の外側に位置するように湾曲しており、前記第2側面に最も近い第4変曲点と、前記第4変曲点の次に前記第2側面に近い第3変曲点と、を有し、
前記第2方向における前記素体の長さをL0とし、前記第2方向における前記第1側面と前記第1変曲点との間の距離をL1とし、前記第2方向における前記第1側面と前記第2変曲点との間の距離をL2とし、前記第2方向における前記第1側面と前記第3変曲点との間の距離をL3とし、前記第2方向における前記第1側面と前記第4変曲点との間の距離をL4とし、
前記第1方向に平行で且つ前記第2方向における前記素体の中心を通る直線上における前記一対の主面の間の距離をTL1とし、前記第1方向に平行で且つ前記第2変曲点を通る直線上における前記一対の主面の間の距離をTL2とし、前記第1方向に平行で且つ前記第3変曲点を通る直線上における前記一対の主面の間の距離をTL3とすると、
下記式(1)~(6)が満たされている、積層コンデンサ。
0.03≦L1/L0≦0.1 …(1)
0.1≦L2/L0≦0.25 …(2)
0.75≦L3/L0≦0.9 …(3)
0.9≦L4/L0≦0.97 …(4)
0≦(TL1-TL2)/TL1≦0.02 …(5)
0≦(TL1-TL3)/TL1≦0.02 …(6)
【請求項2】
前記複数の第1電極の前記少なくとも1つは、前記第1本体部から前記第1延在部とは反対側に延在する第1部分を更に含み、前記第1本体部が前記第1部分に対して前記第1方向の外側に位置するように湾曲しており、
前記複数の第2電極の前記少なくとも1つは、前記第2本体部から前記第2延在部とは反対側に延在する第2部分を更に含み、前記第2本体部が前記第2部分に対して前記第1方向の外側に位置するように湾曲している、請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極のうち前記第1方向において最も外側に位置する一対の最外電極は、本体部と、前記本体部から前記第1側面又は前記第2側面に至るように延在する延在部と、を含み、
前記第1方向における前記一対の最外電極の前記本体部の間の距離をT1とし、前記第1方向における前記一対の最外電極の前記延在部の間の距離をT2とすると、
下記式(7)が満たされている、請求項1又は2に記載の積層コンデンサ。
0.75≦T2/T1≦0.94 …(7)
【請求項4】
前記素体は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向において互いに対向する第3側面及び第4側面を更に有し、
前記複数の第1電極の各々は、前記第1本体部から前記第3側面に向かって延在する第3延在部と、前記第1本体部から前記第4側面に向かって延在する第4延在部と、を更に含み、
前記第2方向に垂直な断面において、
前記複数の第1電極の少なくとも1つは、前記第1本体部が前記第3延在部及び前記第4延在部に対して前記第1方向の外側に位置するように湾曲しており、前記第1本体部と前記第3延在部との間の境界部分に位置する第5変曲点と、前記第1本体部と前記第4延在部との間の境界部分に位置する第6変曲点と、を有し、
前記第3方向における前記素体の長さをW0とし、前記第3方向における前記第3側面と前記第5変曲点との間の距離をW1とし、前記第3方向における前記第3側面と前記第6変曲点との間の距離をW2とすると、
下記式(8)及び(9)が満たされている、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コンデンサ。
0≦W1/W0≦0.25 …(8)
0.75≦W2/W0≦1 …(9)
【請求項5】
前記第2方向に垂直な断面において、前記第1方向に平行で且つ前記第3方向における前記素体の中心を通る直線上における前記一対の主面の間の距離をTW1とし、前記第1方向に平行で且つ前記第5変曲点を通る直線上における前記一対の主面の間の距離をTW2とし、前記第1方向に平行で且つ前記第6変曲点を通る直線上における前記一対の主面の間の距離をTW3とすると、
下記式(10)及び(11)が満たされている、請求項4に記載の積層コンデンサ。
0≦(TW1-TW2)/TW1≦0.02 …(10)
0≦(TW1-TW3)/TW1≦0.02 …(11)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、セラミック基体及び複数の内部電極を備える積層セラミックコンデンサが記載されている。複数の内部電極は、セラミック基体の内部においてセラミック基体の厚さ方向に間隔を隔てて積層され、長さ方向におけるセラミック基体の両端部に交互に導出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-332285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような積層コンデンサには高容量化が求められており、薄層化及び多層化が進んでいる。一方、薄層化及び多層化が進むと、デラミネーション等の構造欠陥が発生し易くなる。そのため、高容量化を図りつつ構造欠陥の発生を抑制することが求められる。また、積層コンデンサには、実装不良の発生を抑制することが併せて求められる。
【0005】
そこで、本発明は、構造欠陥の発生の抑制、高容量化、及び実装不良の発生の抑制を図ることができる積層コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層コンデンサは、第1方向において互いに対向する一対の主面と、第1方向に垂直な第2方向において互いに対向する第1側面及び第2側面と、を有する素体を備え、素体は、第1方向において誘電体層を介して互いに向かい合うように交互に配置された複数の第1電極及び複数の第2電極を有し、複数の第1電極の各々は、第1本体部と、第1本体部から第1側面に至るように延在する第1延在部と、を含み、複数の第2電極の各々は、第2本体部と、第2本体部から第2側面に至るように延在する第2延在部と、を含み、第1方向及び第2方向に平行な断面において、複数の第1電極の少なくとも1つは、第1本体部が第1延在部に対して第1方向の外側に位置するように湾曲しており、第1側面に最も近い第1変曲点と、第1変曲点の次に第1側面に近い第2変曲点と、を有し、複数の第2電極の少なくとも1つは、第2本体部が第2延在部に対して第1方向の外側に位置するように湾曲しており、第2側面に最も近い第4変曲点と、第4変曲点の次に第2側面に近い第3変曲点と、を有し、第2方向における素体の長さをL0とし、第2方向における第1側面と第1変曲点との間の距離をL1とし、第2方向における第1側面と第2変曲点との間の距離をL2とし、第2方向における第1側面と第3変曲点との間の距離をL3とし、第2方向における第1側面と第4変曲点との間の距離をL4とし、第1方向に平行で且つ第2方向における素体の中心を通る直線上における一対の主面の間の距離をTL1とし、第1方向に平行で且つ第2変曲点を通る直線上における一対の主面の間の距離をTL2とし、第1方向に平行で且つ第3変曲点を通る直線上における一対の主面の間の距離をTL3とすると、下記式(1)~(6)が満たされている。
0.03≦L1/L0≦0.1 …(1)
0.1≦L2/L0≦0.25 …(2)
0.75≦L3/L0≦0.9 …(3)
0.9≦L4/L0≦0.97 …(4)
0≦(TL1-TL2)/TL1≦0.02 …(5)
0≦(TL1-TL3)/TL1≦0.02 …(6)
【0007】
この積層コンデンサでは、第1方向及び第2方向に平行な断面において、第1電極の少なくとも1つが、第1本体部が第1延在部に対して第1方向の外側に位置するように湾曲すると共に、第2電極の少なくとも1つが、第2本体部が第2延在部に対して第1方向の外側に位置するように湾曲している。そして、第1~第4変曲点に関して、上記式(1)~(4)が満たされている。このように構成された積層コンデンサでは、製造時の加圧工程における容量形成部の変形が抑制されていると共に、容量形成部に隣接するマージン部における層間の接着強度が高められており、その結果、構造欠陥の発生を抑制することができる。また、容量形成部のサイズを大きく確保することができるため、高容量化を図ることができる。更に、この積層コンデンサでは、主面間の距離に関して、上記式(5)及び(6)が満たされている。これにより、主面を平坦化することができ、実装不良の発生を抑制することができる。よって、この積層コンデンサによれば、構造欠陥の発生の抑制、高容量化、及び実装不良の発生の抑制を図ることができる。
【0008】
複数の第1電極の少なくとも1つは、第1本体部から第1延在部とは反対側に延在する第1部分を更に含み、第1本体部が第1部分に対して第1方向の外側に位置するように湾曲しており、複数の第2電極の少なくとも1つは、第2本体部から第2延在部とは反対側に延在する第2部分を更に含み、第2本体部が第2部分に対して第1方向の外側に位置するように湾曲していてもよい。この場合、構造欠陥の発生を一層抑制することができる。
【0009】
複数の第1電極及び複数の第2電極のうち第1方向において最も外側に位置する一対の最外電極は、本体部と、本体部から第1側面又は第2側面に至るように延在する延在部と、を含み、第1方向における一対の最外電極の本体部の間の距離をT1とし、第1方向における一対の最外電極の延在部の間の距離をT2とすると、下記式(7)が満たされていてもよい。
0.75≦T2/T1≦0.94 …(7)
この場合、構造欠陥の発生を一層抑制することができる。
【0010】
素体は、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向において互いに対向する第3側面及び第4側面を更に有し、複数の第1電極の各々は、第1本体部から第3側面に向かって延在する第3延在部と、第1本体部から第4側面に向かって延在する第4延在部と、を更に含み、第2方向に垂直な断面において、複数の第1電極の少なくとも1つは、第1本体部が第3延在部及び第4延在部に対して第1方向の外側に位置するように湾曲しており、第1本体部と第3延在部との間の境界部分に位置する第5変曲点と、第1本体部と第4延在部との間の境界部分に位置する第6変曲点と、を有し、第3方向における素体の長さをW0とし、第3方向における第3側面と第5変曲点との間の距離をW1とし、第3方向における第3側面と第6変曲点との間の距離をW2とすると、下記式(8)及び(9)が満たされていてもよい。
0≦W1/W0≦0.25 …(8)
0.75≦W2/W0≦1 …(9)
この場合、構造欠陥の発生を一層抑制しつつ、一層の高容量化を図ることができる。
【0011】
第2方向に垂直な断面において、第1方向に平行で且つ第3方向における素体の中心を通る直線上における一対の主面の間の距離をTW1とし、第1方向に平行で且つ第5変曲点を通る直線上における一対の主面の間の距離をTW2とし、第1方向に平行で且つ第6変曲点を通る直線上における一対の主面の間の距離をTW3とすると、下記式(10)及び(11)が満たされていてもよい。
0≦(TW1-TW2)/TW1≦0.02 …(10)
0≦(TW1-TW3)/TW1≦0.02 …(11)
この場合、実装不良の発生を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造欠陥の発生の抑制、高容量化、及び実装不良の発生の抑制を図ることができる積層コンデンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る積層コンデンサの断面図である。
図2】積層コンデンサの別の断面図である。
図3】(a)及び(b)は、積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、積層コンデンサ1は、素体2を備えている。素体2は、略直方体状に形成されている。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされた直方体形状、及び、角部及び稜線部が丸められた直方体形状を含む。素体2は、一対の主面2aと、第1側面2b及び第2側面2cと、第3側面2d及び第4側面2eと、を有する。一対の主面2aは、第1方向D1において互いに対向する。第1側面2b及び第2側面2cは、第1方向D1に垂直な第2方向D2において互いに対向する。第3側面2d及び第4側面2eは、第1方向D1及び第2方向D2に垂直な第3方向D3において互いに対向する。一方の主面2aは、実装面を構成する。積層コンデンサ1は、例えば、一方の主面2aにおいて実装対象(例えば電子部品又は基板等)に半田付けにより実装される。
【0016】
図1には積層コンデンサ1の第3方向D3に垂直な断面(第1方向D1及び第2方向D2に平行な断面)が示されており、図2には積層コンデンサ1の第2方向D2に垂直な断面が示されている。図1及び図2の断面は、例えば素体2の中心を通る断面である。図1及び図2では、断面を示すハッチングが省略されている。第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は、それぞれ、例えば素体2の高さ方向、長さ方向、幅方向である。この例では、第2方向D2における素体2の長さは、第1方向D1における素体2の長さ(高さ)及び第3方向D3における素体2の長さ(幅)の各々よりも長い。第1方向D1における素体2の長さと第3方向D3における素体2の長さとは、互いに等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0017】
素体2は、複数の誘電体層3と、複数の第1電極10と、複数の第2電極20と、を有する。各誘電体層3は、例えば誘電体材料(BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、又は(Ba,Ca)TiO系等の誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体からなる。実際の素体2においては、隣り合う誘電体層3は、互いの間の境界を視認することができない程度に一体化されている。
【0018】
複数の第1電極10と複数の第2電極20とは、第1方向D1において誘電体層3を介して互いに向かい合うように交互に配置されている。すなわち、複数の誘電体層3、複数の第1電極10、及び複数の第2電極20は、第1方向D1において第1電極10、誘電体層3、第2電極20、誘電体層3、第1電極10の順に繰り返し並ぶように積層されている。第1方向D1における一対の最外層は、誘電体層3である。誘電体層3、第1電極10及び第2電極20の積層方向は、第1方向D1と一致する。
【0019】
第1電極10及び第2電極20は、例えばNi又はCu等の導電性材料により層状に形成されている。第1電極10及び第2電極20は、例えば、当該導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体からなる。第1電極10及び第2電極20は、素体2内に配置された内部電極として機能する。第1電極10及び第2電極20は、互いに異なる極性を有する。
【0020】
図1を参照しつつ、図1の断面における第1電極10及び第2電極20の形状について説明する。素体2は、第3方向D3に関して一様な断面形状を有している。
【0021】
各第1電極10は、第1本体部11、第1延在部12及び第1部分13を有している。第1本体部11は、第1方向D1から見た場合に例えば矩形状を呈する。第1延在部12は、第1本体部11から第1側面2bに至るように延在しており、第1側面2bに露出している。第1延在部12は、第1側面2bを覆うように素体2の外表面に設けられた外部電極(図示省略)に電気的に接続されている。第1部分13は、第1本体部11から第1延在部12とは反対側に、第2側面2cに向かって延在している。第1部分13は、素体2の外表面に露出していない。
【0022】
複数の第1電極10のうち第1方向D1の中央部に位置する第1電極10A以外の第1電極10の各々は、第1本体部11が第1延在部12に対して第1方向D1の外側に位置するように、第1本体部11と第1延在部12との間の境界部分において湾曲している。換言すれば、それらの第1電極10の各々は、第1延在部12が第1本体部11に対して第1方向D1の内側に位置するように湾曲している。第1方向D1の外側及び内側とは、第1方向D1における素体2の中心を基準としての外側及び内側である。
【0023】
第1電極10A以外の第1電極10の各々は、上記のように湾曲していることにより、第1変曲点P1及び第2変曲点P2を有している。第1変曲点P1は、図1の断面において第1電極10が有する変曲点の中で第1側面2bに最も近い変曲点であり、第2変曲点P2は、第1変曲点P1の次に第1側面2bに近い変曲点である。
【0024】
また、各第1電極10は、第1本体部11が第1部分13に対して第1方向D1の外側に位置するように、第1本体部11と第1部分13との間の境界部分において湾曲している。換言すれば、各第1電極10は、第1部分13が第1本体部11に対して第1方向D1の内側に位置するように湾曲している。
【0025】
各第2電極20は、第2本体部21、第2延在部22及び第2部分23を有している。第2本体部21は、例えば矩形状に形成されている。第2延在部22は、第2本体部21から第2側面2cに至るように延在しており、第2側面2cに露出している。第2延在部22は、第2側面2cを覆うように素体2の外表面に設けられた外部電極(図示省略)に電気的に接続されている。第2部分23は、第2本体部21から第2延在部22とは反対側に、第1側面2bに向かって延在している。第2部分23は、素体2の外表面に露出していない。
【0026】
複数の第2電極20のうち第1方向D1の中央部に位置する第2電極20A以外の第2電極20の各々は、第2本体部21が第2延在部22に対して第1方向D1の外側に位置するように、第2本体部21と第2延在部22との間の境界部分において湾曲している。換言すれば、それらの第2電極20の各々は、第2延在部22が第2本体部21に対して第1方向D1の内側に位置するように湾曲している。第2本体部21と第2延在部22との間の境界部分は、第1方向D1において第1電極10の第1部分13と重なっている。
【0027】
第2電極20A以外の第2電極20の各々は、上記のように湾曲していることにより、第3変曲点P3及び第4変曲点P4を有している。第4変曲点P4は、図1の断面において第2電極20が有する変曲点の中で第2側面2cに最も近い変曲点であり、第3変曲点P3は、第4変曲点P4の次に第2側面2cに近い変曲点である。
【0028】
また、各第2電極20は、第2本体部21が第2部分23に対して第1方向D1の外側に位置するように、第2本体部21と第2部分23との間の境界部分において湾曲している。換言すれば、各第2電極20は、第2部分23が第2本体部21に対して第1方向D1の内側に位置するように湾曲している。第2部分23は、第1電極10における第1本体部11と第1延在部12との間の境界部分と第1方向D1において重なっている。
【0029】
素体2は、容量形成部5及びマージン部6を有している。容量形成部5は、第1電極10と第2電極20とが互いに向かい合うことによって静電容量を形成する部分である。容量形成部5は、第1方向D1から見た場合に、複数の第1電極10の各々及び複数の第2電極20の各々と重なっている。マージン部6は、素体2における容量形成部5以外の部分である。
【0030】
第1電極10A以外の第1電極10の各々、及び第2電極20A以外の第2電極20の各々においては、下記式(1)~(4)が満たされている。
0.03≦L1/L0≦0.1 …(1)
0.1≦L2/L0≦0.25 …(2)
0.75≦L3/L0≦0.9 …(3)
0.9≦L4/L0≦0.97 …(4)
上記式において、L0は、第2方向D2における素体2の長さ(最大長さ)である。L1は、第2方向D2における第1側面2bと第1変曲点P1との間の距離である。L2は、第2方向D2における第1側面2bと第2変曲点P2との間の距離である。L3は、第2方向D2における第1側面2bと第3変曲点P3との間の距離である。L4は、第2方向D2における第1側面2bと第4変曲点P4との間の距離である。
【0031】
また、一対の主面2aの間の距離に関して、下記式(5)及び(6)が満たされている。
0≦(TL1-TL2)/TL1≦0.02 …(5)
0≦(TL1-TL3)/TL1≦0.02 …(6)
上記式において、TL1は、第1方向D1に平行で且つ第2方向D2における素体2の中心を通る直線上における主面2aの間の距離である。TL2は、第1方向D1に平行で且つ第2変曲点P2を通る直線上における主面2aの間の距離である。TL3は、第1方向D1に平行で且つ第3変曲点P3を通る直線上における主面2aの間の距離である。(TL1-TL2)/TL1及び(TL1-TL3)/TL1は、図1の断面における主面2aの平坦さの度合いを表す。主面2aは、中央部が凸となるように僅かに湾曲した形状を有し得る。
【0032】
複数の第1電極10及び複数の第2電極20のうち第1方向D1において最も外側に位置する一対の電極を最外電極とすると、この例では、複数の第1電極10のうち一方の主面2aに最も近い第1電極10Bと、複数の第2電極20のうち他方の主面2aに最も近い第2電極20Bとが最外電極である。これらの最外電極に関して下記式(7)が満たされている。
0.75≦T2/T1≦0.94 …(7)
上記式において、T1は、第1方向D1における一対の最外電極の本体部の間の距離であり、この例では、第1方向D1における第1電極10Bの第1本体部11と第2電極20Bの第2本体部21との間の距離である。T2は、第1方向D1における一対の最外電極の延在部の間の距離であり、この例では、第1方向D1における第1電極10Bの第1延在部12と第2電極20Bの第2延在部22との間の距離である。
【0033】
図2を参照しつつ、図2の断面における第1電極10及び第2電極20の形状について説明する。素体2は、第2方向D2に関して一様な断面形状を有している。
【0034】
各第1電極10は、第3延在部14及び第4延在部15を更に有している。第3延在部14は、第1本体部11から第3側面2dに向かって延在している。第4延在部15は、第1本体部11から第3延在部14とは反対側に、第4側面2eに向かって延在している。第3延在部14及び第4延在部15は、素体2の外表面に露出していない。
【0035】
複数の第1電極10のうち第1方向D1の中央部に位置する第1電極10A以外の第1電極10の各々は、第1本体部11が第3延在部14及び第4延在部15に対して第1方向D1の外側に位置するように、第1本体部11と第3延在部14との間の境界部分、及び第1本体部11と第4延在部15との間の境界部分において湾曲している。換言すれば、それらの第1電極10の各々は、第3延在部14及び第4延在部15が第1本体部11に対して第1方向D1の内側に位置するように湾曲している。
【0036】
第1電極10A以外の第1電極10の各々は、上記のように湾曲していることにより、第5変曲点P5及び第6変曲点P6を有している。第5変曲点P5は、第1本体部11と第3延在部14との間の境界部分に位置する変曲点であり、第2変曲点P2は、第1本体部11と第4延在部15との間の境界部分に位置する変曲点である。
【0037】
第1電極10A以外の第1電極10の各々においては、下記式(8)及び(9)が満たされている。
0≦W1/W0≦0.25 …(8)
0.75≦W2/W0≦1 …(9)
上記式において、W0は、第3方向D3における素体2の長さ(最大長さ)である。W1は、第3方向D3における第3側面2dと第5変曲点P5との間の距離である。W2は、第3方向D3における第3側面2dと第6変曲点P6との間の距離である。
【0038】
また、一対の主面2aの間の距離に関して、下記式(10)及び(11)が満たされている。
0≦(TW1-TW2)/TW1≦0.02 …(10)
0≦(TW1-TW3)/TW1≦0.02 …(11)
上記式において、TW1は、第1方向D1に平行で且つ第3方向D3における素体2の中心を通る直線上における主面2aの間の距離である。TW2は、第1方向D1に平行で且つ第5変曲点P5を通る直線上における主面2aの間の距離である。TW3は、第1方向D1に平行で且つ第6変曲点P6を通る直線上における主面2aの間の距離である。(TW1-TW2)/TW1及び(TW1-TW3)/TW1は、図2の断面における主面2aの平坦さの度合いを表す。
【0039】
各第2電極20は、第5延在部24及び第6延在部25を更に有している。第5延在部24は、第2本体部21から第3側面2dに向かって延在している。第6延在部25は、第2本体部21から第5延在部24とは反対側に、第4側面2eに向かって延在している。第5延在部24及び第6延在部25は、素体2の外表面に露出していない。
【0040】
複数の第2電極20のうち第1方向D1の中央部に位置する第2電極20A以外の第2電極20の各々は、第2本体部21が第5延在部24及び第6延在部25に対して第1方向D1の外側に位置するように、第2本体部21と第5延在部24との間の境界部分、及び第2本体部21と第6延在部25との間の境界部分において湾曲している。換言すれば、それらの第2電極20の各々は、第5延在部24及び第6延在部25が第2本体部21に対して第1方向D1の内側に位置するように湾曲している。第2本体部21と第5延在部24との間の境界部分は、第1電極10における第1本体部11と第3延在部14との間の境界部分と第1方向D1において重なっている。第2本体部21と第6延在部25との間の境界部分は、第1電極10における第1本体部11と第4延在部15との間の境界部分と第1方向D1において重なっている。
【0041】
第2電極20A以外の第2電極20の各々は、上記のように湾曲していることにより、第7変曲点P7及び第8変曲点P8を有している。第7変曲点P7は、第2本体部21と第5延在部24との間の境界部分に位置する変曲点であり、第2変曲点P2は、第2本体部21と第6延在部25との間の境界部分に位置する変曲点である。この例では、第3方向D3における第7変曲点P7の位置は第1電極10の第5変曲点P5の位置と一致しており、第3方向D3における第8変曲点P8の位置は第1電極10の第6変曲点P6の位置と一致している。
【0042】
図3を参照しつつ、積層コンデンサ1の製造方法について説明する。図3(a)に示されるように、内側積層体30と、第1方向D1において内側積層体30を挟む一対の外側積層体40と、を含む積層体8が用意される。内側積層体30は、交互に積層された複数のグリーンシート31及び複数の導電層32を含む。グリーンシート31は、焼成後に誘電体層3となるセラミック部材である。導電層32は、焼成後に第1電極10又は第2電極20となる部材であり、例えば導電性ペーストである。各外側積層体40は、複数のグリーンシートを含む積層体である。外側積層体40を構成するグリーンシートは、内側積層体30を構成するグリーンシート31よりも低い弾性率を有する。例えば、外側積層体40を構成するグリーンシートの弾性率は、内側積層体30を構成するグリーンシート31の弾性率の0.5倍以下である。
【0043】
続いて、図3(b)に示されるように、積層体8が第1方向D1において加圧される。この加圧工程(プレス成形工程)においては、外側積層体40を構成するグリーンシートの弾性率が内側積層体30を構成するグリーンシート31よりも低いため、外側積層体40を構成するグリーンシートがグリーンシート31よりも大きく流動し、第1方向D1の内側に入り込む。これにより、加圧工程における容量形成部5の変形が抑制されると共に、容量形成部5に隣接するマージン部6における層間の接着強度が高められる。続いて、積層体8が切断されることで、所定の大きさを有する複数のチップが得られる。これらのチップが焼成されることで、素体2が得られる。その後、素体2の外面に外部電極を設ける工程等を経て、積層コンデンサ1が得られる。
[作用及び効果]
【0044】
積層コンデンサ1では、図1の断面において、第1電極10A以外の第1電極10が、第1本体部11が第1延在部12に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲すると共に、第2電極20A以外の第2電極20が、第2本体部21が第2延在部22に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲している。そして、第1変曲点P1、第2変曲点P2、第3変曲点P3及び第4変曲点P4に関して、上記式(1)~(4)が満たされている。このように構成された積層コンデンサ1では、製造時の加圧工程における容量形成部5の変形が抑制されていると共に、容量形成部5に隣接するマージン部6における層間の接着強度が高められており、その結果、構造欠陥の発生を抑制することができる。すなわち、積層コンデンサ1のように第1電極10が第1側面2bに引き出されると共に第2電極20が第2側面2cに引き出された構成を有する場合、製造時の加圧工程においてマージン部が容量形成部よりも大きく潰れることで容量形成部が変形することがある。これは、加圧工程前のマージン部にはグリーンシートが配置されない余白領域(図3(a)における領域R)が存在するためである。容量形成部の変形が大きいと、デラミネーション等の構造欠陥が発生するおそれがある。これに対し、積層コンデンサ1では、上述したとおり、容量形成部5の変形が抑制されていると共にマージン部6における層間の接着強度が高められており、その結果、構造欠陥の発生が抑制されている。また、積層コンデンサ1では、容量形成部5のサイズを大きく確保することができるため、高容量化を図ることができる。更に、積層コンデンサ1では、図1の断面における主面2aの間の距離に関して、上記式(5)及び(6)が満たされている。これにより、主面2aを平坦化することができ、実装不良の発生を抑制することができる。すなわち、主面2aの平坦度が低いと、実装時に吸着ノズルで主面2aを吸着してピックアップする場合に吸着不良が発生する可能性がある。また、積層コンデンサ1が主面2aにおいて実装対象に半田付けされる場合に、実装対象と主面2aとの間の距離が近いと半田のフラックス残渣が残り易く、イオンマイグレーションが発生し易くなる。このため、例えば当該距離を確保するために外部電極を厚くする必要が生じる。これに対し、積層コンデンサ1では、主面2aが平坦化されているため、そのような実装不良の発生を抑制することができる。よって、積層コンデンサ1によれば、構造欠陥の発生の抑制、高容量化、及び実装不良の発生の抑制を図ることができる。
【0045】
第1電極10A以外の第1電極10が、第1本体部11が第1部分13に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲すると共に、第2電極20A以外の第2電極20が、第2本体部21が第2部分23に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲している。これにより、構造欠陥の発生を一層抑制することができる。
【0046】
複数の第1電極10及び複数の第2電極20のうち第1方向D1において最も外側に位置する一対の最外電極に関して、上記式(7)が満たされている。これにより、構造欠陥の発生を一層抑制することができる。すなわち、「製造時の加圧工程における容量形成部5の変形が抑制されていると共に、容量形成部5に隣接するマージン部6における層間の接着強度が高められており、その結果、構造欠陥の発生を抑制することができる」との上記作用効果が顕著に奏される。
【0047】
図2の断面において、第1電極10A以外の第1電極10が、第1本体部11が第3延在部14及び第4延在部15に対して第1方向D1の外側に位置するように湾曲しており、第5変曲点P5及び第6変曲点P6に関して、上記式(8)及び(9)が満たされている。これにより、構造欠陥の発生を一層抑制しつつ、一層の高容量化を図ることができる。
【0048】
図2の断面における主面2aの間の距離に関して、上記式(10)及び(11)が満たされている。これにより、実装不良の発生を一層抑制することができる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では第1電極10A以外の第1電極10の各々、及び第2電極20A以外の第2電極20の各々において上記式(1)~(4)が満たされていたが、複数の第1電極10の少なくとも1つ及び複数の第2電極20の少なくとも1つにおいて上記式(1)~(4)が満たされていればよい。例えば、すべての第1電極10及びすべての第2電極20において上記式(1)~(4)が満たされていてもよい。上記実施形態では第1電極10B及び第2電極20Bが最外電極であったが、最外電極の双方が第1電極10であってもよいし、最外電極の双方が第2電極20であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…積層コンデンサ、2…素体、2a…主面、2b…第1側面、2c…第2側面、2d…第3側面、2e…第4側面、3…誘電体層、10…第1電極、11…第1本体部、12…第1延在部、13…第1部分、14…第3延在部、15…第4延在部、20…第2電極、21…第2本体部、22…第2延在部、23…第2部分、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、P1…第1変曲点、P2…第2変曲点、P3…第3変曲点、P4…第4変曲点、P5…第5変曲点、P6…第6変曲点。
図1
図2
図3