(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181895
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】導電性シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/02 20060101AFI20221201BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20221201BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20221201BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20221201BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221201BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20221201BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B32B15/02
B32B7/025
B32B15/085 Z
H01B13/00 503Z
H01B5/14 Z
H01B5/14 B
H01B13/00 503D
H01Q1/38
H05K1/03 670
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】36
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089102
(22)【出願日】2021-05-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
2.カプトン
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 直之
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
5G323
5J046
【Fターム(参考)】
4F100AA20D
4F100AB17B
4F100AH06C
4F100AH06D
4F100AK28C
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10C
4F100CA18B
4F100DE01B
4F100DJ00B
4F100EC04B
4F100EJ52D
4F100EJ55D
4F100GB41
4F100HB00B
4F100HB31B
4F100JD08
4F100JG01
4F100JL11
4F100JM02D
4F100JN01
4F100YY00C
5G307GA06
5G307GC02
5G323AA01
5G323CA05
5J046AA02
5J046AB15
5J046PA07
5J046PA09
(57)【要約】
【課題】情報抜き取り防止性に優れる導電性シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、該基材上に積層された遷移金属を含む粒子が結合した粒子層と、該粒子層を覆うように前記基材に積層された保護層と、を含み、前記保護層の一部が、前記粒子層の空隙に浸入している浸入部を有する、導電性フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材上に積層された遷移金属を含む粒子が結合した粒子層と、
該粒子層を覆うように前記基材に積層された保護層と、を含み、
前記保護層の一部が、前記粒子層と基材との空間に浸入している浸入部Aを有する、
導電性フィルム。
【請求項2】
前記粒子層が空隙を有し、前記保護層の一部が、前記空隙に浸入している浸入部Bを有する、
請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記保護層が、有機物を含む、
請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記保護層が、重合体を含む、
請求項3に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記保護層が、ポリイソプレンを含む、
請求項3又は4に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記保護層が、ケイ素化合物を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記保護層の前記基材に対する接着力が、0.5~5.0N/cmである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項8】
前記保護層の厚みが、1μm以上、1cm以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項9】
前記浸入部Aの深さが、5.0nm以上500nm以下である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
前記浸入部Bの深さが、5.0nm以上500nm以下である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項11】
前記基材と前記粒子層との接触率が0%以上20%以下である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項12】
前記粒子層における酸素の平均原子濃度が、10%以下である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項13】
前記粒子層が、開口を有する連続したパターンを構成する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項14】
前記パターンが、複数の細線が交差して構成されるパターンである、
請求項13に記載の導電性フィルム。
【請求項15】
前記細線の線幅が、100nm以上1000μm以下である、
請求項14に記載の導電性フィルム。
【請求項16】
前記細線のピッチが、1.0μm以上1000μm以下である、
請求項14又は15に記載の導電性フィルム。
【請求項17】
前記粒子層の膜厚が、30nm以上1000μm以下である、
請求項1~16のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項18】
前記基材が複数の層を有する、
請求項1~17のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項19】
前記基材が、ケイ素化合物を含む表面層を有する、
請求項1~18のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項20】
前記基材が、プラスチックである、
請求項1~19のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項21】
前記プラスチックが、ポリエチレンテレフタレートである、
請求項20に記載の導電性フィルム。
【請求項22】
前記遷移金属が、IUPACの周期表における第11族元素の金属を含む、
請求項1~21のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項23】
前記遷移金属が、銅を含む、
請求項22に記載の導電性フィルム。
【請求項24】
前記粒子層を構成する前記粒子の平均粒子径が、1.0nm以上500nm以下である、
請求項1~23のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項25】
可視光透過率が、70%以上99%以下である、
請求項1~24のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項26】
シート抵抗が、0.001Ωcm-2以上20Ωcm-2以下である、
請求項1~25のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
タッチパネル。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
ディスプレイ。
【請求項29】
請求項1~26のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
ヒーター。
【請求項30】
請求項1~26のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
電磁波シールド。
【請求項31】
請求項1~26のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
アンテナ。
【請求項32】
基材に前駆体薄膜を形成する膜形成工程と、
前記前駆体薄膜を、分圧10Pa~1000Paの水素原子と酸素原子とを共に含む分子からなる気体の存在下で、180秒以上2000秒以下、プラズマと反応させて粒子層を形成するプラズマ処理工程と、
前記粒子層を覆うように前記基材に保護層を積層する積層工程と、を含む、
導電性フィルムの製造方法。
【請求項33】
前記水素原子と酸素原子とを共に含む分子が水分子である、
請求項32に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項34】
前記前駆体薄膜が開口を有する連続したパターンを構成する、
請求項32又は33に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項35】
前記前駆体薄膜の基材に対する開口率が20%以上99%以下である、
請求項32~34のいずれか一項に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項36】
前記プラズマ処理工程において、マイクロ波プラズマを用いる、
請求項32~35のいずれか一項に記載の導電性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性シートは、様々な電子デバイスに利用され工業的に有用である。例えば、自動車において、テレビ電波やFM電波等の各種電波、カーナビゲーションシステムに用いられるGPS(global positioning system)衛星からの位置座標情報に関する電波等を受信するためのアンテナとして、フロントガラス等に設置されるフィルムアンテナが知られている。
【0003】
また、フィルムアンテナは、輸送、搬送、製造、廃棄物管理、郵便物の追跡、航空機での手荷物照合、及び有料道路の通行料金管理を含む、多くの産業において幅広く使用される無線周波数識別(RFID)技術にも使用される。RFIDタグ及びラベルは、供給元から顧客に、及び顧客のサプライチェーンを通じて、配送を追跡するために有用である。
【0004】
このようなフィルムアンテナとして、アンテナを導電性パターンにより形成することで、導電性パターンの不可視性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0005】
さらに、無線周波数識別(RFID)技術は、物品の配送追跡に加え、物品が最終顧客(ユーザ)に届いた後に、ユーザによる物品の使用状況に応じたサービスを提供する用途としても使用される。例えば、RFIDタグを用いて消費財の使用量を推定することによりユーザに購入通知を定期的に送信したり、RFIDタグを、開封時に断線するように包装容器に配置することにより、開封有無を確認したりする用途が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-66610号公報
【特許文献2】特開2011-91788号公報
【特許文献3】特開2016-105624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、RFIDタグは、物品の流通管理のみならず、ユーザエクスペリエンスの向上のためにも用いられている。
【0008】
ここで、RFIDタグ設けられている半導体素子には、RFIDタグの使用用途およびその使用環境に応じた所定の情報が記憶されている。そのなかには、漏洩を防止したい情報、例えば、ユーザの生活環境が推定されるような個人情報に準じる情報が含まれている場合がある。そのため、使用後のRFIDタグから情報が抜き取られないようにする機能が望まれる。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、情報抜き取り防止性に優れる導電性シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を可決するために鋭意検討した。その結果、所定の製造方法にて導電性シートを製造することで、上記課題を解決しうる導電性シートとできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
〔1〕
基材と、
該基材上に積層された遷移金属を含む粒子が結合した粒子層と、
該粒子層を覆うように前記基材に積層された保護層と、を含み、
前記保護層の一部が、前記粒子層と基材との空間に浸入している浸入部Aを有する、
導電性フィルム。
〔2〕
前記粒子層が空隙を有し、前記保護層の一部が、前記空隙に浸入している浸入部Bを有する、
〔1〕に記載の導電性フィルム。
〔3〕
前記保護層が、有機物を含む、
〔1〕又は〔2〕に記載の導電性フィルム。
〔4〕
前記保護層が、重合体を含む、
〔3〕に記載の導電性フィルム。
〔5〕
前記保護層が、ポリイソプレンを含む、
〔3〕又は〔4〕に記載の導電性フィルム。
〔6〕
前記保護層が、ケイ素化合物を含む、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔7〕
前記保護層の前記基材に対する接着力が、0.5~5.0N/cmである、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔8〕
前記保護層の厚みが、1μm以上、1cm以下である、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔9〕
前記浸入部Aの深さが、5.0nm以上500nm以下である、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔10〕
前記浸入部Bの深さが、5.0nm以上500nm以下である、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔11〕
前記基材と前記粒子層との接触率が0%以上20%以下である、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔12〕
前記粒子層における酸素の平均原子濃度が、10%以下である、
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔13〕
前記粒子層が、開口を有する連続したパターンを構成する、
〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔14〕
前記パターンが、複数の細線が交差して構成されるパターンである、
〔13〕に記載の導電性フィルム。
〔15〕
前記細線の線幅が、100nm以上1000μm以下である、
〔14〕に記載の導電性フィルム。
〔16〕
前記細線のピッチが、1.0μm以上1000μm以下である、
〔14〕又は〔15〕に記載の導電性フィルム。
〔17〕
前記粒子層の膜厚が、30nm以上1000μm以下である、
〔1〕~〔16〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔18〕
前記基材が複数の層を有する、
〔1〕~〔17〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔19〕
前記基材が、ケイ素化合物を含む表面層を有する、
〔1〕~〔18〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔20〕
前記基材が、プラスチックである、
〔1〕~〔19〕のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
〔21〕
前記プラスチックが、ポリエチレンテレフタレートである、
〔20〕に記載の導電性フィルム。
〔22〕
前記遷移金属が、IUPACの周期表における第11族元素の金属を含む、
〔1〕~〔21〕のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
〔23〕
前記遷移金属が、銅を含む、
〔22〕に記載の導電性フィルム。
〔24〕
前記粒子層を構成する前記粒子の平均粒子径が、1.0nm以上500nm以下である、
〔1〕~〔23〕のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
〔25〕
可視光透過率が、70%以上99%以下である、
〔1〕~〔24〕のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
〔26〕
シート抵抗が、0.001Ωcm-2以上20Ωcm-2以下である、
〔1〕~〔25〕のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
〔27〕
〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
タッチパネル。
〔28〕
〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
ディスプレイ。
〔29〕
〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
ヒーター。
〔30〕
〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
電磁波シールド。
〔31〕
〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の導電性フィルムを備える、
アンテナ。
〔32〕
基材に前駆体薄膜を形成する膜形成工程と、
前記前駆体薄膜を、分圧10Pa~1000Paの水素原子と酸素原子とを共に含む分子からなる気体の存在下で、180秒以上2000秒以下、プラズマと反応させて粒子層を形成するプラズマ処理工程と、
前記粒子層を覆うように前記基材に保護層を積層する積層工程と、を含む、
導電性フィルムの製造方法。
〔33〕
前記水素原子と酸素原子とを共に含む分子が水分子である、
〔32〕に記載の導電性シートの製造方法。
〔34〕
前記前駆体薄膜が開口を有する連続したパターンを構成する、
〔32〕又は〔33〕に記載の導電性シートの製造方法。
〔35〕
前記前駆体薄膜の基材に対する開口率が20%以上99%以下である、
〔32〕~〔34〕のいずれか一項に記載の導電性シートの製造方法。
〔36〕
前記プラズマ処理工程において、マイクロ波プラズマを用いる、
〔32〕~〔35〕のいずれか一項に記載の導電性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、情報抜き取り防止性に優れる導電性シート及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の導電性シートの一例を示す概略断面図である。
【
図3】本実施形態の導電性シートの一例を示す概略上面図である。
【
図4】本実施形態の導電性シートを透明アンテナとして備えるRFタグの一態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。又上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
1.導電性シート
本実施形態の導電性シートは、基材と、該基材上に積層された遷移金属を含む粒子が結合した粒子層と、該粒子層を覆うように前記基材に積層された保護層と、を含み、保護層の一部が、前記粒子層と基材との空間に浸入している浸入部Aを有する。この浸入部Aを有することで、情報抜き取り防止性に優れる。
【0016】
図1に、本実施形態の導電性シートの一例を示す概略断面図を示し、
図2に
図1における断面Sの拡大図を示す。
図1には、基材20上に粒子層10が配された導電性シート100の概略断面図が示されている。
図1に示す粒子層10は、遷移金属の粒子が結合して形成された粒子層として表現されており、その断面は空孔11を有していてもよい。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の導電性シート100は、粒子層10を覆うように基材20に積層された保護層30を有し、保護層30の一部は、粒子層と基材との空間に浸入している浸入部A 31aを有し、必要に応じて、粒子層10の表面の空隙(くぼみ)に浸入している浸入部B 31bを有する。すなわち、粒子層10の表面形状に追従するように保護層30が形成される。これにより、平滑な表面を有する基材20と粒子層10との界面よりも、保護層30と粒子層10の界面の方が、接触面積が大きくなり、また、浸入部A 31aにより、保護層30が粒子層10を包む構造となる。
【0018】
そのため、本実施形態の導電性シート100の基材20から保護層30を引き剥がすと、粒子層10は基材20よりも保護層30側に付着した状態となりやすく、この引き剥がしにより粒子層10が切断される。粒子層10が、例えばRFIDの透明アンテナである場合には、引き剥がしによりアンテナ部分(粒子層10)が物理的に破壊され、RFIDの半導体素子にアクセスすることができなくなり、情報抜き取り防止機能が発揮される。以下、導電性シート100の構成について詳説する。
【0019】
1.1.粒子層
粒子層10は、遷移金属を含む粒子が結合したものである。なお、粒子層10は基材20との界面に空孔11を有していてもよいし、基材20との界面以外の箇所に空孔11を有していてもよい。
【0020】
基材20との界面に存在する空孔11の程度を表現する観点から、本実施形態においては、基材20と粒子層10との接触率を用いてもよい。基材20と粒子層10との接触率は、好ましくは0~20%であり、より好ましくは0~10%であり、さらに好ましくは0~5%である。接触率が、上記範囲内であることにより、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。なお、接触率が0%とは、基材20と粒子層10との間に浸入部Aが形成されて、基材20と粒子層10とが直接接触しなくなった状態をいう。
【0021】
上記接触率を調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する製造方法により、前駆体薄膜を特定の条件下でプラズマ処理する方法が挙げられる。この特定条件下によるプラズマ処理の際に、前駆体薄膜の表面側で優先的に遷移金属の焼結粒子の成長が進行し、それに伴い基材20と粒子層10の界面側では空孔の増大化が進行する。これにより、基材20と粒子層10の界面には空孔11が形成されやすくなり、上記接触率を達成し得るものと考えられる。しかしながら、接触率の調製方法は上記に限定されない。
【0022】
粒子層10を構成する粒子の平均粒径は、好ましくは1.0~500nmであり、より好ましくは5.0~400nmであり、さらに好ましくは10~300nmである、平均粒径が上記範囲内であることにより、シート抵抗がより低下する傾向にある。粒子層10を構成する粒子の平均粒径は、粒子層10断面の透過電子像により測定することができる。
【0023】
1.1.1.組成
本実施形態の粒子層10は、遷移金属を含み、必要に応じて、酸素原子、炭素原子、リン原子などその他の原子を含んでいてもよい。また、遷移金属は、金属単体の状態の他、酸化物などの金属化合物の状態で存在していてもよい。
【0024】
粒子層10において、遷移金属は、金属単体の状態の他、酸化物などの金属化合物の状態で存在していてもよい。粒子層10に含まれる遷移金属原子は、IUPACの周期表における、第3族元素から第11族元素の金属であれば特に限定されないが、第11族元素の金属を含むことが好ましく、銀又は銅を含むことがより好ましく、銅を含むことがさらに好ましい。このような遷移金属を用いることにより、粒子層10の導電性がより向上する傾向にある。
【0025】
また、遷移金属を含む金属化合物の種類としては、特に限定されないが、例えば、硫化物、セレン化物、テルル化物、窒化物、リン化物、酸化物などが挙げられる。このなかでも、人体への害が少なく、製造が比較的容易であるため、酸化物であることが好ましい。
【0026】
また、上記接触率に加えて、基材20との界面に存在する空孔11の程度を表現する観点から、粒子層における酸素の原子濃度を規定してもよい。これは、プラズマ処理の際の粒子成長や気孔成長が進行するにつれて、粒子層における酸素濃度が還元により減少する傾向にあるためである。粒子層における酸素の平均原子濃度は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。粒子層における酸素の原子濃度が上記範囲内であることにより、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。
【0027】
なお、粒子層に含まれる各原子の濃度は、導電性シートの断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)に付帯するエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素分析(STEM-EDX分析)により分析することで求めることができる。なお、本実施形態において各原子の濃度は、特に断りがない限り、元素濃度(atom%)で示す。
【0028】
STEM-EDX分析においては導電性シートの断面を測定するが、例えば導電性シートが後述する金属細線パターンである場合には、その測定サンプルは金属細線の延伸方向に直交する金属細線の断面を含む薄切片とすることが好ましい。測定サンプルの作製においては、必要に応じて、エポキシ樹脂等の支持体に導電性シートを包埋してから薄切片を形成してもよい。
【0029】
薄切片の形成方法は、断面の形成・加工による金属細線断面へのダメージを抑制できる方法であれば特に限定されないが、好ましくはイオンビームを用いた加工法(例えば、BIB(Broad Ion Beam)加工法やFIB(Focused Ion Beam)加工法)や精密機械研磨、ウルトラミクロトーム等を用いることができる。
【0030】
次いで、形成した金属細線の断面をSTEMにより観察し、金属細線の断面のSTEM像を得る。同時に、EDXにより金属細線の断面の元素マッピングを測定することで、STEM-EDX分析を実施できる。なお、金属細線の断面の形成やSTEM-EDX分析は、金属細線断面の酸化やコンタミを防止する観点から、アルゴン等の不活性雰囲気下や真空中で行うことが好ましい。
【0031】
1.1.2.膜厚
粒子層10の膜厚は、好ましくは30nm~1000μmであり、より好ましくは50nm~100μmであり、さらに好ましくは100nm~10μmであり、よりさらに好ましくは200~1000nmであり、さらにより好ましくは300~500nmである。膜厚が30nm以上であることにより、粒子層10のシート抵抗がより低下する傾向にある。また、膜厚に伴い粒子層10の表面の凹凸も深くなるため、浸入部B31bも深く入り込むことができ、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。また、膜厚が1000μm以下であることにより、粒子層10を後述する開口を有するパターンとして形成する場合において透明性がより向上する傾向にある。また、膜厚が1000μm以下であると、粒子層10のパターンがより形成しやすくなる傾向にある。
【0032】
粒子層10の膜厚は、導電性シート100の断面STEM評価により、求めることができる。より具体的には、任意の3か所の断面において測定したその膜厚の平均値を粒子層10の膜厚とすることができる。なお、本実施形態の粒子層10は、一様な厚さを有する薄膜の他、表面に凹凸が存在したり、粒子層10の位置によって部分的に薄い部分があったりする薄膜であってもよい。
【0033】
基材20と粒子層10の界面に比較的多くの空孔11を有するか否かに関わらず、本実施形態における粒子層10の膜厚は、基材20表面から粒子層10の表面までの距離とする。
【0034】
1.1.3.パターン
粒子層10は、開口を有する連続したパターンを有してもよいし、開口を有しないベタパターンを有してもよい。粒子層10が有するパターンは、目的とする電子デバイスの用途に応じて設計することができ、規則的なパターンであっても不規則なパターンであってもよい。ここで、開口とは、導電性シートが存在しない部分をいい、開口部分では光が透過できる。また、連続したパターンとは、光学顕微鏡にて接続(接触)していることが確認されることをいい、このようなパターンは電気的に接続されたものとなり得る。
【0035】
このなかでも、粒子層10は、開口を有する連続したパターンを有することが好ましい。このように開口を設けることで、光透過性の導電シートとすることができる。また、粒子層10を、開口を有する連続したパターンとすることで、侵入部Aの形成を容易にし、その結果、情報機密性に優れた導電シートを生成できる点で好ましい。これは、後述するプラズマ処理工程において、開口を有するパターン状の前駆体薄膜の方が、相対的に基材との接触面積の大きいベタ膜と比較して、プラズマ反応の進行度合いの調整が容易であり、これにより、粒子層と基材との密着性を所定の範囲に調整して、浸入部Aの形成を容易にすることが可能なためである。ここで、開口を有する連続したパターンの方が侵入部Aの形成が容易になるメカニズムは、特定の理論に拘束されないが、以下のように推察される。すなわち、プラズマ処理工程において、粒子層と基材の間での空孔の増大がベタ膜よりも進行し、相対的に大きな空孔が粒子層の内部に形成されることや、基材と前駆体薄膜の界面の温度がプラズマ反応熱によって開口部がないときによりも上昇することにより基材と粒子層との接触率が低下することが、浸入部Aの形成に寄与するためである。
【0036】
粒子層10が開口を有する連続したパターンを有する場合、この開口による開口率は、好ましくは20~99%であり、より好ましくは30~97%であり、さらに好ましくは50~95%である。この開口率が大きくなるほど、粒子層10の情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。また、開口率が小さくなるほど粒子層10のシート抵抗が小さくなる傾向にある。
【0037】
粒子層10のパターンの開口率は、粒子層10のパターンの形状によっても適正な値が異なる。また、粒子層10のパターンの開口率は、目的とする電子デバイスの要求性能(透過率及びシート抵抗)に応じて、上記上限値と下限値を適宜組み合わせることができる。
【0038】
なお、「粒子層10のパターンの開口率」とは、基材上の粒子層10のパターンが形成されている領域について以下の式で算出することができる。基材上の粒子層10のパターンが形成されている領域とは、粒子層10のパターンが形成されていない縁部等は除かれる。
粒子層10のパターンの開口率=(1-粒子層10のパターンの占める面積/基材の面積)×100
【0039】
粒子層10が開口を有する連続したパターンを有する場合、この開口の直径は、好ましくは0.5~1000μmであり、より好ましくは1~500μmであり、さらに好ましくは10~300μmである。開口の大きさが上記範囲内であることにより、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。
【0040】
また、開口を有する連続したパターンとしては、特に限定されないが、例えば、複数の細線が交差して構成されるパターンが好ましい。この場合、細線が導電性シートに相当し、細線間の間隙が開口となる。
【0041】
以下、複数の細線により形成されるパターンの具体的態様について説明するが、本実施形態におけるパターンは以下に限定されるものではない。なお、以下において、金属細線とは平面視において細線状の粒子層10を意味し、金属細線パターンとは複数の金属細線により形成されるパターンをいう。
【0042】
図3に、本実施形態の導電性シート100のパターン40の一例を示す概略上面図を示す。
図3は、基材20上に粒子層10が配された導電性シート100を、粒子層10の形成面側から見た上面図である。
図3において、粒子層10は、細線状になっており、その細線がグリッド状に交差した状態として表されている。ここで、細線状である粒子層10を金属細線10’という。前述の
図1の断面は、この金属細線10’をA-A’の断面で表したものである。
【0043】
図3に示すように、連続したパターンとは、例えば、複数の金属細線10’が互いに交差して連続層を形成することで、平面方向に広がる粒子層10上の任意の2点において通電できるように構成されるものをいう。また、開口を有するとは、例えば、複数の金属細線10’の間に不連続な開口50を有することをいう。そして、このように金属細線10’によって形成される導電性の連続層と開口とからなるものを、本実施形態においては金属細線パターン40という。
【0044】
ここで、金属細線パターン40を構成する金属細線10’の線幅Wとは、基材20の金属細線パターン40が配された面側から、金属細線10’を基材20の表面上に投影したときの金属細線10’の線幅をいう。「投影したときの線幅」とは、例えば、
図1に示すように、粒子層10の基材と接する界面が最も太くなるような場合には、その太さを線幅と定義する。また、ピッチPは、線幅Wと金属細線間の距離Lの和として定義する。
【0045】
上記のような金属細線パターンとしては、具体的には、複数の金属細線が網目状に交差して形成されるメッシュパターンや、複数の略平行な金属細線が形成されたラインパターンが挙げられる。また、金属細線パターンは、メッシュパターンとラインパターンとが組み合わされたものであってもよい。メッシュパターンの網目は、正方形又は長方形であっても、ひし形等の多角形であってもよい。また、ラインパターンを構成する金属細線は、直線であっても、曲線であってもよい。さらに、メッシュパターンを構成する金属細線においても、金属細線を曲線とすることができる。
【0046】
1.1.4.線幅
線幅Wは、好ましくは100nm~1000μmであり、より好ましくは200nm~500μmであり、さらに好ましくは300nm~100μmであり、よりさらに好ましくは400nm~50μmであ、さらにより好ましくは500nm~5.0μmである。
【0047】
金属細線の線幅Wが100nm以上であることにより、金属細線の導電性を十分に確保でき、シート抵抗がより低下する傾向にある。また、金属細線表面の酸化や腐食等による導電性の低下を十分に抑制できる。さらに開口率を同じとした場合、金属細線の線幅が細いほど、金属細線の本数を増やすことが可能となる。これにより、導電性シートの電界分布がより均一となり、より高解像度の電子デバイスを作製することが可能となる。また、一部の金属細線で断線が生じたとしても、それによる影響を他の金属細線が補うことができる。
【0048】
他方、金属細線の線幅Wが5.0μm以下であることにより、金属細線の視認性がより低下し、導電性シート及びそれを備える導電性シートの透明性がより向上する傾向にある。
【0049】
1.1.5.アスペクト比
金属細線の線幅Wに対する金属細線の厚さTで表されるアスペクト比は、好ましくは0.05~1.00であり、より好ましくは0.08~0.90であり、さらに好ましくは0.10~0.80である。線幅Wが一定である場合にはアスペクト比が大きいほど、透過率を低下させることなく導電性がより向上する傾向にある。また、アスペクト比が1.00以下であることにより、膜厚が厚すぎることによって、かえって透過率が低下することが抑制される傾向にある。
【0050】
1.1.6.ピッチ
ピッチPは、好ましくは1.0~1000μmであり、より好ましくは5.0~500μmであり、さらに好ましくは50~250μmであり、よりさらに好ましくは100~250μmである。ピッチPが1.0μm以上であることにより、導電性シート及びそれを備える導電性シートの透明性がより向上する傾向にある。また、ピッチPが1000μm以下であることにより、導電性がより向上する傾向にある。なお、金属細線パターンの形状がメッシュパターンである場合には、線幅1μmの金属細線パターンのピッチを200μmとすることにより、開口率99%とすることができる。
【0051】
なお、金属細線パターンの線幅W、アスペクト比、及びピッチPは、導電性シート断面を電子顕微鏡等で見ることにより確認することができる。また、金属細線パターンの線幅とピッチはレーザー顕微鏡や光学顕微鏡でも観察できる。また、ピッチPと開口率は後述する関係式を有するため、一方が分かればもう一方を算出することもできる。また、金属細線パターンの線幅W、アスペクト比、及びピッチPを所望の範囲に調整する方法としては、後述する導電性シートの製造方法において用いる版の溝を調整する方法、インク中の金属粒子の平均粒径を調整する方法等が挙げられる。
【0052】
導電性シートのシート抵抗は、金属細線のアスペクト比(高さ)を向上させることにより、低下する傾向にある。また、金属細線を構成する金属材料種の選択によっても調整することが可能である。
【0053】
1.1.7.可視光透過率
導電性シートの可視光透過率は、好ましくは70~99%であり、より好ましくは75~95%であり、さらに好ましくは80~90%である。ここで、可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997の全光線透過率に準拠して、その可視光(360~830nm)の範囲の平均透過率を算出することで測定することができる。パターン付き薄膜の可視光透過率は、金属細線パターンの線幅を小さくしたり、開口率を向上させたりすることにより、向上する傾向にある。
【0054】
1.1.8.シート抵抗
導電性シートのシート抵抗は、好ましくは0.001~20Ωcm-2であり、より好ましくは0.01~17.5Ωcm-2であり、さらに好ましくは0.01~15Ωcm-2であり、さらにより好ましくは0.1~10Ωcm-2である。シート抵抗が低いほど導電性がより向上する傾向にある。
【0055】
1.1.9.ヘイズ
導電性シートのヘイズは、好ましくは0.01~5.00%であり、より好ましくは0.01~3.00%であり、さらに好ましくは0.01~1.00%である。ヘイズが5.00%以下であることにより、可視光に対する導電性シートの曇りがより抑制される傾向にある。本明細書におけるヘイズは、JIS K 7136:2000のヘイズに準拠して測定することができる。
【0056】
1.2.基材
基材としては、導電性シートの用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、ガラス等の透明無機基材、金属板等の不透明無機基材、プラスチックフィルムなどの透明又は不透明の有機基材が挙げられる。このなかでも、柔軟かつ透明な導電性シートを得る観点から、プラスチックが好ましい。また、これら基材は、表面に任意の層を有していたり、コロナ処理など任意の表面処理がされていたりするものであってもよい。
【0057】
基材の形態は、板状のものや、フィルム状のものが利用でき、形態自由度に優れる観点から、フィルム状のものが好ましい。
【0058】
プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の透明有機基材が挙げられる。
【0059】
このなかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが、導電性シートを製造するためのコスト削減効果を包括する生産性が高い観点から好ましい。また、導電性シートの耐熱性に優れる観点から、ポリイミドを用いることが好ましい。さらに、薄膜と基材の密着に有利である観点から、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。
【0060】
本実施形態に使用される薄膜の基材は、1種の材料からなるものであっても、2種以上の材料が積層されたものであってもよい。また、透明基材が、2種以上の材料が積層された多層体である場合、透明基材は、有機基材又は無機基材同士が積層されたものであっても、有機基材及び無機基材が積層されたものであってもよい。
【0061】
基材の厚さは、形態自由度に優れる、及び/又は透明性に優れる観点から、好ましくは5.0~500μmであり、より好ましくは5.0~300μmであり、さらに好ましくは10~100μmである。
【0062】
図1に記載のように、基材20は、配される粒子層10に沿って、粒子層20の開口部40よりも高さを高くできる。すなわち、基材20は配される粒子層10に沿って、隆起部21を有することができる。こうすることによって、保護層30を積層する際に、保護層30がこの隆起部1をつたわり、粒子層10と基材20間に寄せ上がることができるようになり、この後述の浸入部A 31aの形成に有利とすることができる。
【0063】
本実施形態において、基材20に隆起部21が形成されるメカニズムは、特に限定されないが、以下のように推察される。すなわち、隆起部21は、基材20のうち、少なくとも、遷移金属を含む粒子層10が形成される領域に形成される。これによれば、隆起部21は、遷移金属を含む前駆体薄膜に被覆されていない領域(開口部50に相当する領域)の基材20が、後述する焼成工程、換言すれば本実施形態におけるプラズマ反応工程において、変性またはエッチングされることによりその領域の厚みが減少し、結果、前駆体薄膜に被覆されている領域(粒子層10となる領域)の基材20が相対的に隆起することで形成されると考えられる。
【0064】
1.2.1.表面層
基材は、複数の層を有していてもよく、導電性シートとの接触部に表面層を有していてもよい。表面層を基材上に積層することで、プラズマ等の焼成手段でインク中の金属成分を焼結させる際に、プラズマ等によって金属細線パターン部で被覆されていない箇所の基材のエッチングを防ぐことができる。
【0065】
表面層に含まれる成分としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素化合物(例えば、(ポリ)シラン類、(ポリ)シラザン類、(ポリ)シルチアン類、(ポリ)シロキサン類、ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、塩化ケイ素、ケイ素酸塩、ゼオライト、シリサイド等)、アルミニウム化合物(例えば、酸化アルミニウム等)、マグネシウム化合物(例えばフッ化マグネシウム)等が挙げられる。なお、上記ポリシラン類、ポリシラザン類、ポリシルチアン類、ポリシロキサン類は、直鎖若しくは分岐状、環状、網目状の形態を有してもよい。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
このなかでも、ケイ素化合物、酸化アルミニウム、及びフッ化マグネシウムが好ましく、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、及びフッ化マグネシウムがより好ましい。このような成分を用いることにより、プラズマに対する耐久性がより向上し、また、導電性シートと基材との情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。また、このような成分を用いることにより、導電性シートの透明性及び耐久性がより向上する傾向にあり、導電性シートを製造するためのコスト削減効果などに寄与する生産性がより優れる傾向にある。
【0067】
表面層は、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)などの気相成膜法や、上記表面層に含まれる成分が分散媒に分散した組成物を塗布、乾燥する方法により成膜することができる。この組成物は、必要に応じて、分散剤、界面活性剤、結着剤等を含有してもよい。
【0068】
なお、表面層を含む場合、ケイ素は、プラズマ反応を経て導電性シート中に取り込まれてもよい。金属細線中に含まれるケイ素原子Siは、ケイ素原子やケイ素化合物の形態で存在していてもよく、ケイ素原子やケイ素化合物と金属原子とが結合した形態(例えば、Si-M、Si-O-M等)で存在していてもよい。
【0069】
1.2.2.厚さ
表面層の厚さは、好ましくは0.01~500μmであり、より好ましくは0.05~300μmであり、さらに好ましくは0.10~200μmである。表面層の厚みが0.01μm以上であることにより、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。また、表面層の厚みが500μm以下であることにより、基材の可撓性が担保できる。
【0070】
1.2.3.体積抵抗率
表面層は静電気による金属細線パターンの断線を防ぐための、帯電防止機能を持っていることが好ましい。帯電防止機能を有する観点から、表面層は導電性無機酸化物及び導電性有機化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0071】
帯電防止機能の観点から表面層の体積抵抗率は、好ましくは100~100000Ωcmであり、好ましくは1000~10000Ωcmであり、好ましくは2000~8000Ωcmである。表面層の体積抵抗率が100000Ωcm以下であることにより、帯電防止機能がより向上する傾向にある。また、表面層の体積抵抗率が100Ωcm以上であることにより、金属細線パターン間の電気伝導性がより低下し、タッチパネル等の用途に好適に用いることができる。
【0072】
体積抵抗率は、表面層内の導電性無機酸化物や導電性有機化合物等の含有量により調整することができる。例えば、プラズマ耐性の高い酸化ケイ素(体積抵抗率1014Ω・cm以上)と導電性有機化合物である有機シラン化合物を表面層に含む場合、有機シラン化合物の含有量を増やすことで体積抵抗率を低下することができる。一方で、酸化ケイ素の含有量を増やすことで体積抵抗率は増加するが高いプラズマ耐性を有するため薄膜にすることができ、光学的特性を損なうことがない。
【0073】
1.3.保護層
本実施形態の導電性シートは粒子層10の上に、保護層30を有する。保護層30は粒子層10を覆うように基材20に積層され、下記浸入部A 31aにより粒子層10を包むように形成することができる。
【0074】
1.3.1.浸入部
図1及び2に示すように、保護層30は、その一部が粒子層10と基材20との間の空間に浸入している浸入部A 31aを有し、必要に応じて、保護層30の一部が粒子層10の表面の空隙(くぼみ)に浸入している浸入部B 31bを有していてもよい。以下、これら浸入部について説明する。
【0075】
浸入部A 31aは、粒子層10を覆うように保護層30を積層する際に、その一部が粒子層10と基材20との間の空間に浸入することにより形成される。本実施形態において、浸入部Aが形成される機構は、特に限定されないが、以下のように推察される。すなわち、基材に配された前駆体薄膜に所定条件のプラズマ反応を施すことにより、遷移金属を含む粒子層と基材とが特定の密着性を有するようになる。このように遷移金属を含む粒子層と基材とが特定の密着性を有することで、この粒子層上方から一定の流動性を有する粘着層が形成された保護層を押圧した際に、粒子層と基材との間に保護層の一部が浸入できるようになり、この浸入により粒子層と基材との間が拡張されることに伴い、浸入部Aが形成される。この遷移金属を含む粒子層と基材との特定の密着性を実現させることは、通常は困難であり、本実施形態において浸入部Aのように粒子層と基材との間の空間に浸入した部分を有することは驚くべきことである。
【0076】
本実施形態においては、浸入部A 31aによる粒子層10と基材20との距離を浸入部Aの「深さ」という。この浸入部Aの深さは、好ましくは5.0~500nmであり、より好ましくは50~400nmであり、さらに好ましくは80~300nmである。浸入部Aの深さが5.0nm以上であることにより、基材20による粒子層10の保持力が弱くなり、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。
【0077】
さらに、
図1及び2に示すように、浸入部B 31bは、粒子層10を覆うように保護層30を積層する際に、その一部を粒子層10の表面の空隙(くぼみ)に浸入することにより形成することができる。本実施形態において、浸入部Bが形成される機構は、特に限定されないが、以下のように推察される。すなわち、基材に配された前駆体薄膜に所定条件のプラズマ反応を施すことにより、特定の粒子層の形態とすることができる。この粒子層の上方から、一定の流動性を有する粘着層が形成された保護層を押圧すると、粒子層のうち、保護層側に暴露された隙間に保護層の一部が浸入して浸入部Bが形成される。
【0078】
浸入部Bの深さは、好ましくは5.0~500nmであり、より好ましくは50~400nmであり、さらに好ましくは80~300nmである。浸入部Bの深さが5.0nm以上であることにより、保護層30と粒子層10の界面の接触面積が大きくなり、また、アンカーのように粒子層10の表面の空隙に浸入する浸入部B 31bの量が多くなるため、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。
【0079】
なお、浸入部Bの深さは、導電性シート100の断面STEM評価により、求めることができる。より具体的には、任意の3か所の断面において測定した浸入部Bの最大深さの平均値を浸入部Bの深さとすることができる。浸入部Bの深さとは、
図2に示すように、上記方法で定義される粒子層10の膜厚を基準として、その膜厚よりも基材20側に浸入している浸入部B 31bの深さをいう。
【0080】
浸入部A及び浸入部Bは、それぞれ、保護層と一体となって形成されていてもよい。また、浸入部A及び浸入部Bは、互いに接触していてもよい。
【0081】
1.3.2.構成
保護層30としては、特に限定されないが、例えば、透明性を有し、導電性シートや基材と良好な密着性が発現できるものが好ましい。また、保護層30は、複数の層を有していてもよく、例えば、基材20と粒子層10に接触する内層と、内層とは反対側の表層と、を有していてもよい。保護層30はさらにこれ以上の層を有する多層体であってもよい。
【0082】
このような保護層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、重合体などの有機物が挙げられる。重合体としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂;ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、UV硬化型エポキシ樹脂などのUV硬化性樹脂;ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;市販のコーティング剤;ポリイソプレン、ポリイソプレン-ブチレンなどのゴム系接着剤;アクリル系接着剤;シリコーン系接着剤などを用いることができる。
【0083】
このなかでも、保護層30の内層としては接着剤が好ましく、ゴム系接着剤がより好ましく、ポリイソプレンやシリコーンなどのケイ素化合物がさらに好ましい。保護層30として接着剤を用いることにより、保護層30が粒子層10と基材20との間や、粒子層10の表面の空隙(くぼみ)に浸入しやすくなり浸入部A 31aや浸入部B 31bを形成しやすくなる。また、保護層30が粒子層10に対して接着することにより、基材20から保護層30を引き剥がしたときに、粒子層10は基材20よりも保護層30側に付着した状態となりやすい。そのため、このような接着剤を保護層30の粒子層10と接触する面に用いることにより、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。
【0084】
このような保護層30としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの基材に積層された接着剤層を有する接着テープを用いてもよい。
【0085】
1.3.3.密着力
保護層の基材に対する密着力は、好ましくは0.5~5.0N/cmであり、より好ましくは1.0~5.0N/cmであり、さらに好ましくは2.0~5.0N/cmである。保護層の基材に対する密着力が0.5N/cm以上であることにより、基材20から保護層30を引き剥がしたときに、粒子層10は基材20よりも保護層30側に付着した状態となりやすく、情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。また、保護層の基材に対する密着力が5.0N/cm以下であることにより、基材20から保護層30を引き剥がしやすくなるため、取扱性がより向上する傾向にある。密着力は、例えば、保護層30の内層としては接着剤を選択することにより調整することができる。
【0086】
1.3.4.膜厚
保護層の膜厚は、好ましくは1.0μm~1.0cmであり、より好ましくは10μm~5mmであり、さらに好ましくは25~1000μmである。保護層の膜厚が厚いほど基材20から保護層30を引き剥がしやすくなるため、取扱性がより向上する傾向にある。また、保護層の膜厚が薄いほど導電性シートの透明性等に与える保護層の影響がより抑制される傾向にある。
【0087】
保護層30の膜厚は、導電性シート100の断面STEM評価により、求めることができる。より具体的には、任意の3か所の断面において測定した粒子層10と保護層30が重なった部分の厚さの平均値を測定し、その測定値から粒子層10の膜厚を除することで求めることができる。
【0088】
2.導電性シートの製造方法
本実施形態の導電性シートの製造方法は、基材に前駆体薄膜を形成する膜形成工程と、前駆体薄膜を、分圧10~1000Paの水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体の存在下で、180~2000秒の間、プラズマと反応させて、粒子層を形成するプラズマ反応工程と、粒子層を覆うように基材に保護層を積層する積層工程と、を含み、必要に応じて、膜形成工程前に、基材上に表面層を形成する表面層形成工程を有していてもよい。
【0089】
2.1.表面層形成工程
表面層形成工程は、基材上に上述した表面層を形成する工程である。表面層を形成することにより、例えば、プラスチックの基材を用いる場合、表面層によってプラズマ反応によるプラスチックの変性やエッチングを防ぐことができる。
【0090】
表面層形成方法の具体例としては、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)等の気相成膜法を用いて表面層を形成する成分を透明基材の表面に成膜させることにより表面層を形成する方法が挙げられる。表面層形成工程の別の具体例としては、表面層を形成する成分が分散媒に分散してなる組成物を透明基材の表面に塗布し、乾燥させることにより表面層を形成する方法が挙げられる。また、表面層形成組成物は、必要に応じて、分散剤、界面活性剤、結着剤等を含んでもよい。
【0091】
表面層形成工程において、表面層を形成する成分としては上述したケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0092】
2.2.膜形成工程
膜形成工程は、基材に、前駆体薄膜を形成する工程である。
【0093】
2.2.1.前駆体薄膜
前駆体薄膜は遷移金属及を含むものであり、これに対して後述のプラズマ反応工程を施すことで本実施形態の粒子層となるものである。既に述べたように、このように前駆体薄膜に対して所定の条件でプラズマ処理を施すことにより得られる粒子層を有する導電性シートは、優れた情報抜き取り防止機能性を有するようになる。
【0094】
このような前駆体薄膜は、真空装置などを用いた乾式法、インクなどを用いた湿式法など様々な手法を用いて成膜することができる。このうち、大規模製造に適するという観点から、インクを基材上に印刷して前駆体薄膜を成膜する方法が好ましい。
【0095】
用いることのできる印刷方法としては、特に限定されないが、例えば、凸版印刷、グラビア印刷、バーコート印刷、スプレーコート、スピンコート、反転転写印刷などが挙げられる。このなかでも、比較的精密なパターンを印刷できる観点から、有版印刷方法による前駆体薄膜の成膜が好ましい。
【0096】
有版印刷方法とは、例えば、転写媒体(以下、「ブランケット」ともいう)の表面にインクをコーティングする工程と、インクをコーティングしたブランケット表面と、凸版の凸部表面とを接触して、凸版の凸部表面にブランケット表面上のインクの一部を転移させる工程と、一部のインクが転移した後のブランケット表面と基材の表面とを接触して、ブランケット表面に残ったインクを基材の表面に転写する工程が挙げられる。
【0097】
例えば、このような印刷方法において、印刷条件やインクを調製することで、前駆体薄膜の厚さ、幅、ピッチ等の各種形状や、前駆体薄膜に含まれる各原子の濃度を制御できる。
【0098】
2.2.2.インク
上記印刷方法に用いられるインクは、金属成分、溶剤を含み、必要に応じて、界面活性剤、分散剤、還元剤等を含んでもよい。
【0099】
2.2.2.1.金属粒子
金属成分は、金属粒子としてインクに含まれていてもよいし、金属錯体としてインクに含まれていてもよい。このなかでも金属粒子としてインクに含まれることが好ましい。金属粒子としては、上述した遷移金属原子を含むものであれば、酸化銅等の金属酸化物やその他の金属化合物、コア部が銅でありシェル部が酸化銅であるようなコア/シェル粒子の態様であってもよい。このなかでも、取扱性の観点からは、酸化銅等の金属酸化物が好ましい。
【0100】
金属粒子の平均一次粒径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。また、金属粒子の平均一次粒径の下限は特に限定されないが、1nm以上が挙げられる。得られる金属細線の線幅Wをより細くすることができる観点から、金属粒子の平均一次粒径が100nm以下であることが好ましい。
【0101】
金属粒子の平均二次粒径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。薄膜成膜時の塗布性に優れる観点から、各粒子が単分散しており、平均二次粒径は平均一次粒径に近いことが好ましい。
【0102】
なお、本実施形態において「平均一次粒径」とは、金属粒子1つ1つ(所謂一次粒子)の粒径をいい、金属粒子が複数個集まって形成される凝集体(所謂二次粒子)の粒径である平均二次粒径とは区別される。
【0103】
2.2.2.2.界面活性剤
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤を用いることにより、ブランケットへのインクのコーティング性、コーティングされたインクの平滑性が向上し、より均一な塗膜が得られる傾向にある。なお、界面活性剤は、金属成分を分散可能であり、かつ焼成の際に残留しにくいよう構成されていることが好ましい。
【0104】
2.2.2.3.溶媒
インクの溶媒は、保存安定性に優れる点、及び光損失が少ない点から、有機溶媒であることが好ましい。上記観点から、有機溶媒は、アルコールであることが好ましい。上記観点から、有機溶媒の炭素数は1以上7以下であることが好ましく、より好ましくは2以上、またより好ましくは5以下、又は4以下であり、2が最も好ましい。溶媒としては、水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ-1,2-プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、2-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、n-ノニルアルコール、2、6ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3、3、5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられ、保存安定性に優れる点、及び光損失が少ない点から、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及びこれらの異性体であることがより好ましく、エタノール、プロパノール、ブタノール及びこれらの異性体であることがさらに好ましく、エタノールが最も好ましい。
【0105】
2.2.2.4.分散剤
分散剤としては、特に制限されないが、例えば、金属成分に非共有結合又は相互作用をする分散剤、金属成分に共有結合をする分散剤が挙げられる。非共有結合又は相互作用をする官能基としてはリン酸基を有する分散剤が挙げられる。このような分散剤を用いることにより、金属成分の分散性がより向上する傾向にある。
【0106】
2.3.プラズマ反応工程
プラズマ反応工程は、上記のようにして得られた前駆体薄膜を、分圧10~1000Paの水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体の存在下で、180~2000秒の間、プラズマと反応させて、導電性シートを得る工程である。これにより前駆体薄膜が焼成され、インク中の金属粒子同士が焼結することで粒子層(導電性薄膜)が形成されることに加え、粒子層と基材とが特定の密着性を有するようになり、これにより浸入部Aを形成することができるようになる。そして、浸入部Aを形成することで、情報抜き取り防止機能性に優れる導電性シートとなる。
【0107】
さらに、この製造工程を経ることで、粒子層と基材の間で気孔成長が進行し比較的大きな空孔が形成され、粒子層の表面においても浸入部Bが形成されやすい凹凸の形成に有利とできる。そしてこれにより、情報抜き取り防止機能性にさらに優れる導電性シートを得ることができる。なお、プラズマ反応中の雰囲気に水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含ませることで、導電性シートに含まれる酸素濃度も調整することができる。
【0108】
プラズマは様々な方法により生じさせることができる。なかでも、マイクロ波プラズマや高周波プラズマが比較的制御が容易なため好ましく、特に装置内のプラズマ発生のための電極などによる汚染が少なくできる観点から、マイクロ波プラズマがより好ましい。
【0109】
マイクロ波プラズマにおけるマイクロ波出力は、好ましくは0.5~10kWであり、より好ましくは0.5~5.0kWである。マイクロ波出力が0.5kW以上であることにより、情報抜き取り防止機能性がより向上し、プラズマの反応時間を短縮することができる。また、マイクロ波出力が10kW以下であることにより、プラズマによって基材がエッチングされたり変性したりすることが抑制される傾向にある。
【0110】
プラズマ反応の処理時間は、180~2000秒であり、好ましくは200~1000秒であり、より好ましくは220~500秒である。処理時間が180秒以上であることにより、粒子層が形成されるとともに、粒子層と基材の間で気孔成長が進行し比較的大きな空孔が形成されて浸入部Aが形成されやくなるとともに、粒子層の表面においても浸入部Bが形成されやすい凹凸が形成され、それによって情報抜き取り防止機能性がより向上する。また、処理時間が2000秒以下であることにより、導電性シートの生産性がより向上する傾向にある。
【0111】
プラズマ反応の雰囲気は、水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体を含み、必要に応じて希ガスを含んでもよい。水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体の分圧は、好ましくは10~1000Paであり、より好ましくは50~500Paであり、さらに好ましくは75~300Paである。水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体の分圧が10Pa以上であることにより、粒子層と基材の間で空孔の増大化が進行し比較的大きな空孔が形成されて浸入部Aが形成されやくなるとともに、粒子層の表面においても浸入部Bが形成されやすい凹凸が形成され、それによって情報抜き取り防止機能性がより向上する。
【0112】
水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体としては、特に限定されないが、例えば、例えば、水分子、有機アルコール分子、有機エーテル分子、有機エステル分子、有機アルデヒド分子などが挙げられる。このような気体をプラズマ反応工程の雰囲気とすることで、例えばインクに含まれる酸化銅を還元しながら、焼結粒子の成長を進行する。また、これに伴い、粒子層と基材の間で気孔成長が進行し比較的大きな空孔が形成されて浸入部Aが形成されやくなるとともに、粒子層の表面においても浸入部Bが形成されやすい凹凸が形成され、それによって情報抜き取り防止機能性がより向上する。さらに、製造する導電性シートの導電性がより向上する傾向にある。特に、水素原子と酸素原子とを共に含む分子を含む気体を、水分子とすることが、漏洩時に人体への害が少なく、爆発の危険も少ない観点から、最も好ましい。この気体に含む水素原子と酸素原子とを共に含む分子は、一種類でも複数種類のものを用いてもよい。
【0113】
希ガスとしては、特に限定されないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンが挙げられる。このなかでも、これらのプラズマによるサンプルエッチングが少ない観点から、分子量の比較的小さい、ヘリウムまたはアルゴンが好ましく、ヘリウムが最も好ましい。このような希ガスを用いることにより、プラズマ反応をより制御しやすくなる。
【0114】
上記各気体は混合して用いてもよく、これにさらにその他の気体を混合して用いてもよい。
【0115】
プラズマ反応の圧力は、加圧下、減圧下、大気圧下のいずれでもよい。このなかでもプラズマの平均自由行程を長くできる観点から、減圧下であることが好ましい。具体的には、圧力は、好ましくは0.1~1000Paであり、より好ましくは1.0~500Paであり、さらに好ましくは10~300Paである。圧力が0.1Pa以上であることにより、プラズマの平均自由行程がより長くなる傾向にある。また、圧力が1000Paであることにより、還元性の気体や希ガスをより多く用いることができる。
【0116】
本実施形態におけるプラズマ反応工程は、開口を有する連続したパターンを構成している前駆体薄膜に施すことが好ましい。これにより、開口部によってさらに露出した前駆体薄膜にプラズマ反応が進行することによって、粒子層と基材とが特定の密着性を有することに有利になり、これにより浸入部Aを形成する有利になる。すなわち、浸入部Aを有する、情報抜き取り防止機能性に優れる導電性シートの製造に有利となる。加えて、粒子層と基材の間で空孔の増大化が進行することで比較的大きな空孔が形成され、このような空孔も、浸入部Aの形成に寄与しうる。
【0117】
この情報抜き取り防止機能性に優れるようになるメカニズムは以下に限定されるものではないが、開口部によってさらに露出した前駆体薄膜にプラズマ反応が進行することによって、空孔の増大化速度が向上することや、基材と前駆体薄膜の界面の温度がプラズマ反応熱によって開口部がないときによりも上昇することで、基材と粒子層との接触率が低下し、情報抜き取り防止機能性が向上することが考えられる。
【0118】
開口を有する連続したパターンを構成している前駆体薄膜の開口率は、好ましくは20~99%であり、より好ましくは30~97%であり、さらに好ましくは50~95%である。この開口率が大きくなるほど、粒子層10の情報抜き取り防止機能性がより向上する傾向にある。また、開口率が小さくなるほど粒子層10のシート抵抗が小さくなる傾向にある。
【0119】
なお、「前駆体薄膜の開口率」とは、基材上の前駆体薄膜パターンが形成されている領域について以下の式で算出することができる。基材上の前駆体薄膜パターンが形成されている領域とは、前駆体薄膜パターンが形成されていない縁部等は除かれる。
前駆体薄膜パターンの開口率=(1-前駆体薄膜パターンの占める面積/基材の面積)×100
【0120】
開口を有する連続したパターンとしては、特に限定されないが、例えば、複数の細線が交差して構成されるパターンが好ましい。この場合、細線が前駆体薄膜に相当し、細線間の間隙が開口となる。
【0121】
上述の複数の金属細線により形成されるパターンと同様に、前駆体薄膜についても、前駆体細線パターンを形成できる。なお、前駆体細線とは細線状の前駆体薄膜を意味し、前駆体細線パターンとは複数の前駆体細線により形成されるパターンをいう。
【0122】
2.3.1.線幅
前駆体細線の線幅は、好ましくは100nm~1000μmであり、より好ましくは200nm~500μmであり、さらに好ましくは300nm~100μmであり、よりさらに好ましくは400nm~50μmであり、さらにより好ましくは500nm~5.0μmである。
【0123】
前駆体細線の線幅が100nm以上であることにより、プラズマ処理工程を経て製造する金属細線の導電性を十分に確保でき、シート抵抗がより低下する傾向にある。また、金属細線表面の酸化や腐食等による導電性の低下を十分に抑制できる。さらに開口率を同じとした場合、前駆体細線の線幅が細いほど、前駆体細線の本数を増やすことが可能となる。これにより、導電性シートの電界分布がより均一となり、より高解像度の電子デバイスを作製することが可能となる。
【0124】
他方、前駆体細線の線幅が5.0μm以下であることにより、プラズマ処理工程を経て製造する金属細線の視認性がより低下し、導電性薄膜及びそれを備える導電性シートの透明性がより向上する傾向にある。
【0125】
2.3.2.アスペクト比
前駆体細線の線幅に対する前駆体細線の厚さTで表されるアスペクト比は、好ましくは0.05~1.00であり、より好ましくは0.08~0.90であり、さらに好ましくは0.10~0.80である。前駆体細線の線幅が一定である場合にはアスペクト比が大きいほど、透過率を低下させることなくプラズマ処理工程を経て製造する金属細線の導電性がより向上する傾向にある。また、アスペクト比が1.00以下であることにより、膜厚が厚すぎることによって、かえって透過率が低下することが抑制される傾向にある。
【0126】
2.3.3.ピッチ
ピッチPは、好ましくは1.0~1000μmであり、より好ましくは5.0~500μmであり、さらに好ましくは50~250μmであり、よりさらに好ましくは100~250μmである。ピッチPが1.0μm以上であることにより、プラズマ処理工程を経て製造する導電性薄膜及びそれを備える導電性シートの透明性がより向上する傾向にある。また、ピッチPが1000μm以下であることにより、導電性がより向上する傾向にある。なお、金属細線パターンの形状がメッシュパターンである場合には、線幅1μmの金属細線パターンのピッチを200μmとすることにより、開口率99%とすることができる。
【0127】
なお、金属細線パターンの線幅W、アスペクト比、及びピッチPは、導電性シート断面を電子顕微鏡等で見ることにより確認することができる。また、金属細線パターンの線幅とピッチはレーザー顕微鏡や光学顕微鏡でも観察できる。また、ピッチPと開口率は後述する関係式を有するため、一方が分かればもう一方を算出することもできる。また、金属細線パターンの線幅W、アスペクト比、及びピッチPを所望の範囲に調整する方法としては、後述する導電性シートの製造方法において用いる版の溝を調整する方法、インク中の金属粒子の平均粒径を調整する方法等が挙げられる。
【0128】
2.4.積層工程
積層工程は、粒子層を覆うように基材に保護層を積層する工程である。積層方法としては、特に限定されないが、例えば、導電性シート100の粒子層10が形成された面と、保護層の表面とを圧着する方法が挙げられる。
【0129】
積層工程における雰囲気は限定されることはないが、大気中でも、不活性ガス中でも実施することができる。また、大気圧でも減圧下などでも実施することができる。また、この積層工程は様々な温度で実施することができる。簡便さの観点から、室温での積層が好ましい。
【0130】
3.情報抜き取り防止方法
本実施形態の情報抜き取り防止方法は、上記導電性シートにおいて基材から保護層を引き剥がす剥離工程を有する。この剥離工程より、粒子層10は基材20よりも保護層30側に付着した状態で引き剥がされ、粒子層10が切断される。そのため、粒子層10が、例えばRFIDの透明アンテナである場合には、引き剥がしによりアンテナ部分(粒子層10)が物理的に破壊され、RFIDの半導体素子にアクセスすることができなくなり、情報抜き取り防止機能が発揮される。
【0131】
4.アンテナ
本実施形態のアンテナは、上記導電性シートを備えるものであれば特に制限されない。例えば、RFタグにおいては、半導体素子とそれに接続されたアンテナを有することにより特定の周波数の送受信が可能となっており、そのアンテナとして導電性シートを用いることができる。導電性シートを透明に構成すれば、透明アンテナとなる。
【0132】
図4に、本実施形態の導電性シートを透明アンテナとして備えるRFタグ300の一態様を示す斜視図を示す。RFタグ300は、基材320と、基材320上に形成されたアンテナ部310と、アンテナ部310に電気的に接続された半導体素子340と、アンテナ部310を覆う保護層330と、を有する。アンテナ部310と半導体素子340とは電気的に接続されており、アンテナ部310が所定の周波数に応答して発生した電気は、半導体素子330に向かって集電される。なお、ここで、アンテナ部310、基材320、及び保護層330は、それぞれ、粒子層10、基材20,保護層30にそれぞれ相当する。
【0133】
5.タッチパネル
上記においては、本実施形態の導電性シートをRFタグ300の透明アンテナとして使用して、情報抜き取り防止性を奏する態様について述べたが、本実施形態の導電性シートは、RFタグ300に関わらず、タッチパネルや後述する他の用途に使用することもできる。
【0134】
これら用途においては、本実施形態の導電性シートの有する基材と粒子層の剥離性を利用して、基材部分と金属を含む粒子層部分を分離することで、各用途における物品を廃棄する際のリサイクル性を向上し、廃棄物の環境への配慮を可能とすることができる。
【0135】
また、基材と粒子層の剥離性を利用することで、各用途における物品において、粒子層によるマクロなパターニングを達成することもでき、物品の設計自由度を向上することができる。例えば、粒子層のうちカッターなどで切り取った部分を選択的に絶縁部にすることができる。
【0136】
なお、本実施形態の導電性シートを利用することによる上記リサイクル性やパターニング性については、RFタグ300においても同様に発揮することができる。
【0137】
本実施形態の導電性シートはアンテナ以外にも使用することができる。例えば、本実施形態のタッチパネルは、上記導電性シートを備えるものであれば特に制限されない。例えば、静電容量方式のタッチパネルにおいては、絶縁体の表裏面に2枚の導電性シートが存在し、2枚の導電性シートは、例えば金属細線のラインパターンが交差するように対向する。導電性シートは、取り出し電極に接続されており、取り出し電極は、金属細線と、金属細線への通電切り替えを行うためのコントローラー(CPU等)とを接続する。
【0138】
なお、本実施形態のタッチパネルは、静電容量方式に限定されず、抵抗膜方式、投影型静電容量方式、及び表面型静電容量方式等としてもよい。
【0139】
6.ディスプレイ
本実施形態のディスプレイは、上記導電性シートを備えるものであれば特に制限されない。例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイにおいては、有機EL膜を電極で挟んだ構造を有し、その電極の一つとして上記導電性シートを用いることができる。また、液晶ディスプレイにおいては、液晶層を電極で挟んだ構造を有し、その電極の一つとして上記導電性シートを用いることができる。
【0140】
7.ヒーター
本実施形態のヒーターは、上記導電性シートを備えるものであれば特に制限されない。例えば、電熱ヒーターにおいては、電気を供給することでジュール熱を発する電熱部と、電熱部に対して電力を供給する給電装置とを有し、その電熱部として導電性シートを用いることができる。導電性シートを透明に構成すれば、透明ヒーターとなり、また、導電性シートの抵抗が高くなるように設計することで、発熱量の高いヒーターとなる。
【0141】
例えば、透明ヒーターは、その用途は特に限定されないが、例えば、自動車のヘッドランプ、テールランプ等に用いられるLED照明器具の防曇又凍結防止用ヒーター、街灯等に用いられる屋外用LED照明器具の防曇又凍結防止用ヒーターが挙げられる。
【0142】
8.電磁波シールド
本実施形態の電磁波シールドは、上記導電性シートを備えるものであれば特に制限されない。例えば、電磁波シールドにおいては、入射する電磁波を電磁波の反射や吸収するシールド材を有するが、そのシールド材として、上記導電性シートを用いることができる。
【実施例0143】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0144】
(薄膜の形態評価)
得られた導電性薄膜付き基材をカミソリで切り出し、蒸着したカーボン層により包埋し、焦点イオン線で厚さ約100nmの薄切片を形成した。得られた薄切片を測定サンプルとして、下記条件にて電子線を照射し、評価サンプルを準備することで、STEM-EDX分析を行った。粒子層の膜厚、及び粒子層が金属粒子同士が焼結して形成された層であること、接触率、浸入部A及びBの深さについては、この断面TEM像より求めた。薄膜の酸素濃度は、STEM-EDX分析によって行った。さらに粒子層の、パターン形状、線幅、ピッチなどは、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製、OLS-4500)により評価した。
図5に、実施例1の断面写真を示す。
【0145】
[STEM-EDX装置条件]
STEM:日立ハイテクノロジーズ社製、走査型透過電子顕微鏡 HD―2300A
EDX :EDAX社製、エネルギー分散型X線分析装置 Octane T Plus(ソフトウェア:GENESIS)
加速電圧 :200kV
測定倍率 :100,000倍
マッピング元素:Cu、O、P、Si、C
【0146】
(情報抜き取り防止性)
実施例または比較例で作製した導電性シートの保護層を基材であるPETシートからはがし、保護層への粒子層(金属細線)の移行の有無を確認した。剥離後の保護層の表面と、基材表面を目視で観察し、金属細線が保護層側に移行されているか否かを確認した。
情報抜き取り防止性〇:保護層への粒子層の移行が観測された。
情報抜き取り防止性×:保護層への粒子層の移行が観測されなかった。
【0147】
<実施例1>
(透明基材の調製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)を透明基材として用いて、その上に酸化ケイ素ナノ粒子と導電性の有機シラン化合物を含む表面層形成組成物を塗布し、乾燥して、帯電防止機能を有する厚み150nm、体積抵抗率5000Ωcmの酸化ケイ素を含有した表面層を形成することにより基材を得た。なお、この基材は、基材であるPET上に表面層が積層した形態である。
【0148】
(インクの調製)
一次粒径21nmの酸化第一銅ナノ粒子20質量部と、分散剤(ビッグケミー社製、製品名:Disperbyk-145)4質量部と、界面活性剤(セイミケミカル社製、製品名:S-611)1質量部と、エタノール75質量部とを混合し、酸化第一銅ナノ粒子の含有割合が20質量%のインクを調製した。
【0149】
(前駆体薄膜形成工程)
先ずブランケット表面にインクを塗布し、次いでインクが塗布されたブランケット表面と金属細線パターンの溝を有する版を接触して、版の凸部表面にブランケット表面上の一部のインクを転移させた。その後、残ったインクがコーティングされたブランケット表面と基材とを接触させ、基材の上に金属細線パターン状のインクを転写させた。この工程により、前駆体薄膜を製造した。この前駆体薄膜の膜厚は360nmであり、線幅は3μmであり、ピッチは60μmであった。表1にこれらの結果を記す。
【0150】
(プラズマ反応工程)
上記のようにして得られた前駆体薄膜にプラズマ反応を施した。具体的には、減圧下で水分子の分圧を100Paとした雰囲気に、0.9kWの出力で発生させたマイクロ波によりプラズマを発生させ、このプラズマと前駆体薄膜を180秒反応させた。
【0151】
(積層工程)
上記のようにして形成した粒子層の上に、20℃下で、カプトンテープの粘着面を対向して貼り付け、その上から2N(ニュートン)のローラーで2往復させて、保護層を形成した。
【0152】
実施例1の導電性シートについて、各評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0153】
<実施例2>
前駆体薄膜へのプラズマ反応時間を300秒とし、カプトンテープに代えてセロテープの粘着面を対向して貼り付けたこと以外は、実施例1と同様に操作を行った。結果を表1に示す。
【0154】
<比較例1>
前駆体薄膜へのプラズマ反応時間を60秒とした以外は、実施例1と同様に操作を行った。結果を表1に示す。
【0155】
10…粒子層、10’…金属細線、11…空孔、20…基材、21…隆起部、30…保護層、31…浸入部、40…パターン、50…開口、100…導電性シート、300…RFIDタグ、310…アンテナ部、320…基材、330…保護層、340…半導体素子