(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181900
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】キッチンタオルロール
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
D21H27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089116
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AJ06
4L055AJ07
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA15
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA16
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】適切な吸水性と嵩高さを有しながら、清拭時に表層が破れにくく、拭き取りやすいキッチンタオルロールを提供する。
【解決手段】エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、キッチンタオルシートは、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、2プライの坪量が30g/m
2以上54g/m
2以下、比容積が7cm
3/g以上22cm
3/g以下であり、2プライの1m
2あたりの吸水量が220g以上600g以下であり、エンボスパターンにおけるエンボスの深さが0.06mm以上1.1mm以下であり、エンボスパターンが付与されていない部分における表面粗さの二乗平均平方根高さが、35μm以上170μm以下である、キッチンタオルロールを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、
前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、
2プライの坪量が30g/m2以上54g/m2以下、比容積が7cm3/g以上22cm3/g以下であり、
2プライの1m2あたりの吸水量が220g以上600g以下であり、
前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さが0.06mm以上1.1mm以下であり、
前記エンボスパターンが付与されていない部分における表面粗さの二乗平均平方根高さが、35μm以上170μm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。
【請求項2】
前記エンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足したときの総長が50cm/100cm2以上550cm/100cm2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項3】
前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/前記キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.02以上0.4以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキッチンタオルロール。
【請求項4】
前記キッチンタオルシートの2プライの旧JIS S 3104に基づく、湿潤時の縦方向の引張強さWMDTが1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であり、湿潤時の横方向の引張強さWCDTが1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項5】
前記エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上40%以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項6】
前記キッチンタオルシートの2プライ間の1m2あたりの吸水量が100g以上300g以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項7】
前記キッチンタオルシートの2プライの1gあたりの吸水量が6g以上であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンタオルロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キッチンタオルをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールが各種開発されている。キッチンタオルロールは、キッチンの清掃や、食器の水切りや拭き取りに用いられることが多く、その用途から十分な吸水量や強度が求められ、吸水量や吸油量を高くする抄紙技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ティッシュ製紙機械のプレス工程において、凹凸付きベルト用いることで高バルクなティッシュが得られる、凹凸付けベルト、高バルクなクレープティッシュ紙ウェブ製造用のプレス部分および製紙機械、ならびにその製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、フェイシャルティッシュ、バスティッシュ、ペーパータオルのような通気乾燥されたティッシュ製品を、布地の平面から突出する、6.45平方センチメートル(1平方インチ)あたり約5から約300の機械方向の凹凸状ナックルを有する通気乾燥された布地を用いて製造される、柔軟なティッシュ製品の製造方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、ロール状紙製品の製造法であって、少なくとも1つのペーパーウェブを準備する工程と、少なくとも1つのウェブの全表面積の少なくとも約22%を覆うエンボス模様を用いて、少なくとも1つのウェブをエンボス加工する工程と、を含み、模様は、少なくとも約80%の線状エンボスを含み、完成品のキャリパーが、エンボス加工したベースシートのキャリパーよりも小さいことを特徴とする、ロール状紙製品及びその製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5504169号公報
【特許文献2】特許第3758702号公報
【特許文献3】特表2016-540530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通気乾燥を用いた、所謂TAD(Through Air Drying)抄紙技術は、吸水性が高く、柔らかな風合いをもつ原紙が得られることから、キッチンタオルロールの原紙として優れている。しかしながら、キッチンタオルロールには吸水性や風合いだけでなく、対象物を清拭した際に破れないことが求められるが、従来のTAD原紙は、表面の凹凸部をきっかけに表層が毛羽立ったり、破れたりしてしまうなどの問題があった。
この問題に対しては、表面の凹凸を小さくすることで、表層の破れを抑制することができるが、今度は吸水量が低下してしまう。
【0006】
そこで、表面の凹凸を調整し、さらにエンボス加工を施すと、表層の破れを抑制しながら、嵩高で吸水性の優れたキッチンタオルロールを得ることができるが、このとき、通常のタオル原紙のように表面に細かな凹凸を設けるエンボスパターンでは、表層の毛羽立ち、破れが顕著となってしまう。
また、特許文献3のような紙厚を低くするエンボスを入れるとキッチンタオルロールの吸水性が低下してしまうため、TAD原紙に適したエンボスパターンを施す必要がある。
【0007】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、適切な吸水性と嵩高さを有しながら、清拭時に表層が破れにくく、拭き取りやすいキッチンタオルロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、エンボスパターンとは異なる凹凸パターンを施し、キッチンタオルシートの坪量、比容積、吸水量、エンボスの深さ及びエンボスパターンが付与されていない部分における表面粗さの二乗平均平方根高さを調整することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートは、上記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、2プライの坪量が30g/m2以上54g/m2以下、比容積が7cm3/g以上22cm3/g以下であり、2プライの1m2あたりの吸水量が220g以上600g以下であり、上記エンボスパターンにおけるエンボスの深さが0.06mm以上1.1mm以下であり、上記エンボスパターンが付与されていない部分における表面粗さの二乗平均平方根高さが、35μm以上170μm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロールである。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足したときの総長が50cm/100cm2以上550cm/100cm2以下であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/上記キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.02以上0.4以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの2プライの旧JIS S 3104に基づく、湿潤時の縦方向の引張強さWMDTが1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であり、湿潤時の横方向の引張強さWCDTが1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上40%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの2プライ間の1m2あたりの吸水量が100g以上300g以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの2プライの1gあたりの吸水量が6g以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明によれば、適切な吸水性と嵩高さを有しながら、清拭時に表層が破れにくく、拭き取りやすいキッチンタオルロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のキッチンタオルロールの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明のキッチンタオルロールにおけるエンボスパターンの一例を示す図である。
【
図3】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図4】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である。
【
図5】エンボスパターンについて、エンボスの深さの求め方を示す図である。
【
図6】非エンボス部の、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図7】本発明のキッチンタオルロールの吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に、何ら限定されるものではない。
【0019】
<キッチンタオルロール>
図1は、本発明のキッチンタオルロール1の外観を示す斜視図である。本発明のキッチンタオルロール1は、エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシート1xをロール状に巻取ったキッチンタオルロール1である。なお、キッチンタオルシート1xは、キッチンタオルシート1xの最外巻の端縁1eから、流れ方向の等間隔において、幅方向にミシン目を施されていることが好ましい(図示しない)。
【0020】
また、
図1に示すように、キッチンタオルシート1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面1a(キッチンタオルシート1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面1b(キッチンタオルシート1xの裏面)と称する。
【0021】
(巻長及び巻直径)
キッチンタオルロール1の巻長は14m以上44m以下であることが好ましい。また、キッチンタオルロール1の巻直径DRは110mm以上189mm以下であることが好ましい。巻長が14m未満であると、交換頻度が高くなり、巻長が44mを超えると嵩張る。巻直径DRが110mm未満であると吸水量に劣ったり、巻長が短くなって交換頻度が高くなったりし、巻直径DRが189mmを超えると嵩張ったり、ロール密度が低くなったりして、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。
【0022】
なお、巻長は、21m以上37m以下であることがより好ましく、25m以上33m以下であることが更に好ましい。巻直径DRは、130mm以上176mm以下であることがより好ましく、140mm以上163mm以下であることが更に好ましい。
巻長は、キッチンタオルロール1のミシン目とミシン目の間のキッチンタオルシート1xについて、10シート分の長さを実測する。その後、キッチンタオルロール1のシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求める。例えば、10シート分の長さが1.80m、シート数が150シートの場合、1.80m×(150/10)=27mとなる。なお、キッチンタオルロール1にミシン目がない場合は、実測して巻長を測定することができる。また、ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
また、ミシン目とミシン目の間の長さ(流れ方向のシートの長さ)は、100mm以上270mm以下が好ましく、125mm以上240mm以下がより好ましく、150mm以上210mm以下が更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、拭き取りやすくなる。
【0023】
(ロール幅及びロール質量)
キッチンタオルロール1のロール幅は150mm以上380mm以下であることが好ましく、200mm以上340mm以下であることがより好ましく、250mm以上300mm以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような適切な吸水性と嵩高さを有するキッチンタオルロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、吸水量を良好にすることができる。
また、キッチンタオルロール1のロール質量は160g以上550g以下であることが好ましく、230g以上450g以下であることがより好ましく、270g以上380g以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような適切な吸水性と嵩高さを有するキッチンタオルロール1を使用する際、嵩張らずに交換頻度を良好にすることができる。
なお、ロール質量は、コア(紙管)を含まないロール幅280mmあたりの質量とする。ロール幅が280mmでない場合は、比例計算により280mmあたりの質量に換算する。
【0024】
(ロール密度及び巻密度)
キッチンタオルロール1のロール密度は0.04g/cm3以上0.15g/cm3以下であることが好ましく、巻密度は0.22m/cm2以上0.68m/cm2以下であることが好ましい。キッチンタオルロール1のロール密度が0.04g/cm3未満であるか、又は巻密度が0.22m/cm2未満であると、キッチンタオルロール1が嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。また、キッチンタオルロール1のロール密度が0.15g/cm3を超えるか、又は巻密度が0.68m/cm2を超えると、紙厚や比容積が低くなり、吸水量に劣る。
なお、キッチンタオルロール1のロール密度は0.05g/cm3以上0.13g/cm3以下であることがより好ましく、0.06g/cm3以上0.09g/cm3以下であることが更に好ましい。キッチンタオルロール1の巻密度は0.25m/cm2以上0.54m/cm2以下であることがより好ましく、0.28m/cm2以上0.40m/cm2以下であることが更に好ましい。
【0025】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積-(コア(紙管)外径部分の断面積)}で表される。コア外径DIは、ロールの中心孔の直径である。
例えば、巻長27m、2プライ、巻直径DR150mm、コア外径DI39mmの場合、巻密度=(27m×2)÷{3.14×(150mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}=0.33m/cm2となる。キッチンタオルロール1にコアがない場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
また、ロール密度は、(ロール質量)÷(ロールの体積)で表される。ロール質量は、ロール幅280mmあたりのキッチンタオルロール1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(280mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅280mmあたりのロール質量(コアを除く)が382g、巻直径DR150mm、コア外径DIが39mmの場合、ロール密度=382g÷[{3.14×(150mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}×(280mm÷10)]=0.083g/cm3となる。なお、キッチンタオルロール1にコアがない場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
【0026】
(坪量)
キッチンタオルシート1xの2プライの坪量は、30g/m2以上54g/m2以下である。2プライの坪量が30g/m2未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量が低くなりやすい。坪量が54g/m2を超えると、対象物の形状に追随しにくく、拭き取りにくくなる。なお、キッチンタオルシート1xの2プライの坪量は、34g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、38g/m2以上46g/m2以下であることがより好ましい。坪量はJIS P 8124に基づいて測定する。
【0027】
また、キッチンタオルシート1xの1プライあたりの坪量は、表面1aも裏面1bもいずれも、14g/m2以上28g/m2以下であることが好ましく、16g/m2以上26g/m2以下であることがより好ましく、18g/m2以上24g/m2以下であることが更に好ましい。1プライあたりの坪量は、2プライの坪量を測定した後、プライを剥離し、表面1aと裏面1bの質量を測定して、その質量比から表面1aと裏面1bの坪量を算出する。
さらに、キッチンタオルシート1xにおいて、裏面1bの坪量は、表面1aの坪量より0.1g/m2以上1g/m2以下高い方が好ましい。表面1aは、後述するエンボスパターンを有していることから、裏面1bより吸水量が劣りやすい。裏面1bの坪量を高くすることで、裏面1bの吸水量を高めることができ、それにより全体の吸水量を高めることができる。なお、裏面1bの坪量は、表面1aの坪量より0.1g/m2以上0.8g/m2以下高い方がより好ましく、0.2g/m2以上0.5g/m2以下高い方が更に好ましい。
【0028】
(紙厚)
また、キッチンタオルシート1xの紙厚は1.3mm/10枚以上5mm/10枚以下であることが好ましい。紙厚が1.3mm/10枚未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、5mm/10枚を超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。なお、キッチンタオルシート1xの紙厚は、2.0mm/10枚以上4.4mm/10枚以下であることがより好ましく、2.6mm/10枚以上3.8mm/10枚以下であることがより更に好ましい。紙厚はシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。2プライに積層したキッチンタオルシート1xを5組重ねて、10枚分として測定を行う。また、測定を異なる箇所で10回繰り返して測定結果を平均する。
【0029】
(エンボスパターン)
本発明のキッチンタオルロール1(キッチンタオルシート1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、エンボスパターンを有している。また、本発明におけるキッチンタオルシート1xは、シートにエンボス処理した後、積層して2プライにする。2プライ積層する際には、プライボンドグルー(糊)を用い、グルーを塗布して接着処理する。このように接着して2プライにすることにより、プライの接着が強くなり、キッチンタオルシート1xが清拭時に水に濡れても、プライ剥がれせずに破れにくくなる。
【0030】
キッチンタオルシート1xの表面1aのプライには、エンボスパターンが施されている。エンボスパターンが表面1aに施されることで、該エンボスパターンのエンボス部にグルーを塗布して接着処理することができ、キッチンタオルシート1xのプライ剥がれが起こりにくくなり、吸水量を一定の範囲とすることができる。なお、エンボスパターンはドット状や線状等、キッチンタオルに一般的に施されるパターンであれば特に限定されないが、中でも線状のエンボスパターンであることが好ましい。線状のエンボスパターンとしては、具体的には
図2に示すような、1つのパターンが、略丸型の略円形とその内部に他の柄を有する図形と、全体として上下及び左右に略線対称で、複数の曲線及び図形の組み合わせを含む図形の2種類の図形を2個ずつ含むパターンであれば、特に限定されない。略丸型の略円形については、略丸型が二重になっていることが好ましい。
また、エンボスパターンの寸法としては、エンボスパターンを囲む四角形E(Eはエンボスパターンではない)が、一辺2cm以上25cm以下四方の正方形であることが好ましく、一辺5cm以上20cm以下四方の正方形であることがより好ましく、一辺8cm以上15cm以下四方の正方形であることが更に好ましい。この四角形Eについて、縦方向はキッチンタオルロール1の流れ方向に平行であり、横方向はキッチンタオルロール1の幅方向に平行であることが好ましいが、傾いていても良い。このような柄を用いることで、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、吸水量を良好にでき、プライも剥がれにくく拭き取り性が良好になる。
【0031】
このとき、線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足したときの総長が50cm/100cm
2以上550cm/100cm
2以下であることが好ましく、80cm/100cm
2以上410cm/100cm
2以下であることがより好ましく、110cm/100cm
2以上300cm/100cm
2以下であることが更に好ましい。総長が50cm/100cm
2未満であると、清拭時にキッチンタオルシート1xの表層が破れやすくなる。総長が550cm/100cm
2を超えると、キッチンタオルシート1xが潰れて吸水性が低くなりやすい。
上記の総長は、
図2のように1つのエンボスパターンをすべて含むようにした四角形Eの内側において、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上のエンボスについて、エンボス長さを足したときの合計を総長として測定し、100cm
2あたりの総長とする。この四角形Eの一辺の大きさは、エンボスパターンの大きさによって適宜変更できる。なお、エンボスパターンをすべて含むようにした四角形内に、四角形内に含まれるエンボスパターンに隣接するエンボスパターンが含まれる場合は、その隣接するエンボスパターンの長さも測定し、総長に含める。また、エンボスパターンによって、四角形Eの1辺の大きさを明確に決められない場合は、四角形Eの大きさを10×10cmとして、この四角形Eに含まれるエンボス長さの総長を測定する。総長を上記の範囲にすることで、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、吸水量を良好にでき、プライも剥がれにくく拭き取り性が良好になる。総長は、上述した方法で実測して求める。なお、一般的な顕微鏡を用いて測定しても良い。
【0032】
エンボスパターンにおいて、エンボスの深さは0.06mm以上1.1mm以下である。エンボスの深さが0.06mm未満であると、清拭時にキッチンタオルシート1xの表層が破れやすくなる。深さが1.1mmを超えると、キッチンタオルシート1xが潰れて吸水性が低くなりやすい。
なお、エンボスパターンにおけるエンボスの深さは、0.10mm以上0.80mm以下であることが好ましく、0.20mm以上0.55mm以下であることがより好ましい。
【0033】
エンボスの深さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率25倍、視野面積12mm×9mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0034】
図3は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、キッチンタオルシート1x表面の高さが濃淡で表されている。
図3の濃淡が周辺と異なる線状の部位が個々のエンボスを示している。エンボスの深さは、上記のマイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。なお、測定はキッチンタオルシート1xの表面1a側で行う。また、測定時に、キッチンタオルロール1からキッチンタオルシート1xを3周分取り除き、4周目のキッチンタオルシート1xを用いて、2プライのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。
まず、
図3のように線分ABを引き、
図4の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、キッチンタオルシート1xの幅方向(CD方向)になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以下と狭く、下記の凸部の高さが低くなってしまう場合は、線分を斜め方向に引いたり、流れ方向に引いたりしてもよい。高さプロファイルは、実際のキッチンタオルシート1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(キッチンタオルシート1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
【0035】
そこで、
図4の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした
図5の断面曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、
図5に示すグラフにおいて、グラフの凸部H1と、凸部H1に隣接する凸部H2の縦軸のそれぞれの最大値の平均値を算出し、凸部H1と凸部H2とに挟まれる凹部D1における縦軸の最小値を求める。このようにして求められた最大値の平均値から最小値を差し引いた数値を暫定的なエンボスの深さとする。そして、
図5に示すように、断面曲線W上において連続する計2カ所(凹部D1と、凸部H3と凸部H4に挟まれる凹部D2の連続する計2カ所)について同様の測定を行う(この時点で2つの測定結果が得られる)。その後、キッチンタオルシート1xの流れ方向にキッチンタオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
なお、本発明のキッチンタオルシート1xはエンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しているため、凹部を挟んでいる左右の凸部の高さにばらつきが見られる。そのため、凹部を挟む凸部と凸部(例えば、凹部D2を挟む凸部H3と凸部H4)の縦軸の値の差が0.2mm以上ある場合は、その部分を避けた箇所で測定を行う。
【0036】
さらに、キッチンタオルシート1x全体の紙厚に対する、エンボスパターンにおけるエンボスの深さの比である、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1x全体の紙厚の比が、0.02以上0.4以下であることが好ましい。比が0.02未満であると、清拭時にキッチンタオルシート1xの表層が破れやすくなる。比が0.4を超えると、キッチンタオルシート1xが潰れて吸水性が低くなりやすい。なお、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1x全体の紙厚の比は、0.04以上0.35以下であることがより好ましく、0.08以上0.20以下であることが更に好ましい。
【0037】
キッチンタオルシート1xの裏面1bのプライは、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していれば、エンボスのパターンが施されているかどうかに関しては特に制限はない。ネステッドエンボスやピントゥピンエンボスが施されているか、又はエンボスを施されていなくてもかまわないが、好ましくはネステッドエンボス又はエンボスなし、より好ましくはエンボスなしである。従来のキッチンタオルは、ピントゥピンやネステッド形式で吸水量を確保しているが、本願のように、紙厚の高い原紙を用いた場合、エンボスを設けることで紙が潰れてしまい、吸水量が下がることがある。このため、表面1aは線状のエンボス、裏面1bはエンボスなしが好ましい。
【0038】
このとき、キッチンタオルシート1xの、エンボスパターンが付与されていない部分(以下、非エンボス部とも称する)における表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、35μm以上170μm以下であり、50μm以上150μm以下であることが好ましく、60μm以上100μm以下であることがより好ましい。表面粗さの二乗平均平方根高さSqが35μm未満の場合、表層の比表面積が小さくなって吸水性が低くなりやすい。また、表面粗さの二乗平均平方根高さSqが170μmを超えると、清拭時に表層が破れやすくなる。
非エンボス部の表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、上述のエンボスの深さと同様に、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率38倍、視野面積8mm×6mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0039】
図6に示す得られた画像について、上述のエンボスの深さと同様、フィルターを設定する。具体的には、S-フィルター(ローパスフィルター)を設定することで、カットオフ波長よりも小さいスケールの成分、L-フィルター(ハイパスフィルター)を設定することで、カットオフ波長よりも大きいスケールの成分を画像から取り除く。ここでは、S-フィルターは500μm、L-フィルターは8mmとする。S-フィルター及びL-フィルターを選択すれば、自動で二乗平均平方根高さSqが算出される。
非エンボス部は、エンボス深さと同様、キッチンタオルロール1からキッチンタオルシート1xを3周分取り除き、4周目のキッチンタオルシート1xを用いて、2プライのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。キッチンタオルロール1の幅方向で2カ所測定し、その後、キッチンタオルシート1xの流れ方向にキッチンタオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値を二乗平均平方根高さSqとして最終的に採用する。
【0040】
(吸水量)
本発明において、キッチンタオルシート1xの2プライの1m2あたりの吸水量が220g以上600g以下である。1m2あたりの吸水量が220g未満であると、吸水性が低くなって、一枚のキッチンタオルシート1xで十分拭き取ることができず、600gを超えると、吸水時にキッチンタオルシート1xが破れやすくなり、拭き取りにくくなる。なお、1m2あたりの吸水量は、270g以上550g以下であることが好ましく、370g以上480g以下であることがより好ましい。
また、キッチンタオルシート1xの2プライの1gあたりの吸水量が6g以上であることが好ましい。1gあたりの吸水量が6g未満であると、吸水性が低くなって、一枚のキッチンタオルシート1xで十分拭き取ることができない。また、1gあたりの吸水量の上限は特に限定されないが、値が高くなりすぎると吸水時にキッチンタオルシート1xが破れたり、プライが剥がれたりして、拭き取りにくくなる。なお、1gあたりの吸水量は、7.0g以上14.0g以下であることがより好ましく、8.0g以上12.0g以下であることが更に好ましい。
【0041】
さらに、キッチンタオルシート1xの2プライ間の1m2あたりの吸水量は100g以上300g以下であることが好ましい。2プライ間の1m2あたりの吸水量が100g未満であると、吸水性が低くなって、一枚のキッチンタオルシート1xで十分拭き取ることができず、300gを超えると、吸水時にキッチンタオルシート1xが破れたり、プライが剥がれたりして、拭き取りにくくなる。このとき、2プライ間の1m2あたりの吸水量とは、2プライの1m2あたりの吸水量から、後述する1プライ(表面1a)の1m2あたりの吸水量及び1プライ(裏面1b)の1m2あたりの吸水量を差し引いた値である。
なお、2プライ間の1m2あたりの吸水量は、130g以上280g以下であることがより好ましく、160g以上260g以下であることが更に好ましい。キッチンタオルシート1xの各吸水量は以下のように測定する。
【0042】
まず、2プライに重ねられたキッチンタオルシート1xを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片を作製する。吸水前の試験片の質量を電子天秤で測定しておく。試験片をホルダー220(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cm入れ、ホルダー220にセットした試験片を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片をホルダー220と共に蒸留水から取り出し、
図7に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定するサンプルと同じキッチンタオルシート1xを幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、プライを剥離して裏面の1プライを用い、試験片200の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダー220と試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて10分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片200の1m
2あたりの蒸留水の吸水量(水g/シートm
2)を計算する。さらに、1m
2あたりの吸水量(水g/シートm
2)を試験片200の2プライの坪量で割ることにより、1m
2あたりの吸水量(水g/シートm
2)/坪量(シートg/シートm
2)=1gあたりの吸水量(水g/シートg)を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
1プライの吸水量は、2プライに重ねられたキッチンタオルシート1xを一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片200を得て、その後、プライを剥離して、これを1プライの吸水量測定用の試験片200とする。測定方法は、2プライと同様にする。
なお、本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0043】
なお、本発明において、キッチンタオルシート1xの1プライ(表面1a)の1m2あたりの吸水量は50g以上160g以下であることが好ましく、60g以上145g以下であることがより好ましく、70g以上130g以下であることが更に好ましい。それに対して、キッチンタオルシート1xの1プライ(裏面1b)の1m2あたりの吸水量は50g以上165g以下であることが好ましく、60g以上150g以下であることがより好ましく、70g以上135g以下であることが更に好ましい。
また、キッチンタオルシート1xの1プライ(表面1a)の1gあたりの吸水量は3.0g以上であることが好ましく、3.5g以上7.0g以下であることがより好ましく、4.0g以上6.0g以下であることが更に好ましい。それに対して、キッチンタオルシート1xの1プライ(裏面1b)の1gあたりの吸水量は3.1g以上であることが好ましく、3.6g以上7.1g以下であることがより好ましく、4.1g以上6.1g以下であることが更に好ましい。
【0044】
(コア外径)
また、本発明のキッチンタオルロール1の芯の外径である、コア外径DIは、25mm以上55mm以下であることが好ましく、30mm以上50mm以下であることがより好ましく、35mm以上45mm以下であることが更に好ましい。コア外径DIが上記の範囲のものであることにより、キッチンタオルロール1の巻密度を好適に維持しつつ、嵩張らないためキッチンタオルロール1を、キッチンタオルホルダーに収まりやすくすることができ、加えて、製造時のキッチンタオルロール1の取扱性も良好となる。
コア外径DIは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均した。
さらに、ロール幅280mmあたりのコア(紙管)の質量は、5g以上22g以下であることが好ましく、7g以上17g以下であることがより好ましく、9g以上13g以下であることが更に好ましい。
【0045】
(比容積)
キッチンタオルシート1xの比容積は7cm3/g以上22cm3/g以下である。キッチンタオルシート1xの比容積が7cm3/g未満であると、対象物の形状に追随しにくく、拭き取りにくくなり、22cm3/gを超えると、キッチンタオルシート1xの吸水量が低くなりやすい。なお、上記比容積は、9cm3/g以上20cm3/g以下であることが好ましく、12cm3/g以上17cm3/g以下であることがより好ましい。比容積は、キッチンタオルシート1xの2プライあたりの紙厚を2プライあたりの坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表す。
【0046】
(DMDT及びDCDT)
キッチンタオルシート1xの2プライの、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)が4.5N/25mm以上21N/25mm以下であることが好ましく、また、乾燥時の横方向の引張強さDCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)が4.5N/25mm以上21N/25mm以下であることが好ましい。DMDT又はDCDTが4.5N/25mm未満であると、いずれもキッチンタオルシート1xが吸水時に毛羽立ちやすく、また破れやすくなり、拭き取りにくくなる。DMDT又はDCDTが21N/25mmを超えると、いずれもキッチンタオルシート1xが固くなり、拭き取りにくくなる。
なお、DMDTは、6.0N/25mm以上17.0N/25mm以下であることがより好ましく、7.5N/25mm以上12.0N/25mm以下であることが更に好ましい。また、DCDTは6.0N/25mm以上17.0N/25mm以下であることがより好ましく、7.5N/25mm以上12.0N/25mm以下であることが更に好ましい。
また、DCDTに対するDMDTの比率(DMDT/DCDT)は0.9以上1.6以下であることが好ましく、1.0以上1.4以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましい。
【0047】
(WMDT及びWCDT)
また、キッチンタオルシート1xの2プライの、旧JIS S 3104に基づく湿潤時の縦方向の引張強さWMDT(Wet Machine Direction Tensile Strength)が1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることが好ましく、また、湿潤時の横方向の引張強さWCDT(Wet Cross Direction Tensile Strength)が1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることが好ましい。WMDT又はWCDTが1.5N/25mm未満であると、いずれもキッチンタオルシート1xが吸水時に毛羽立ちやすく、また破れやすくなり、拭き取りにくくなる。WMDT又はWCDTが8.0N/25mmを超えると、いずれもキッチンタオルシート1xが固くなり、拭き取りにくくなる。
なお、WMDTは、2.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であることがより好ましく、2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であることが更に好ましい。また、WCDTは2.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であることがより好ましく、2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であることが更に好ましい。
また、WCDTに対するWMDTの比率(WMDT/WCDT)は0.9以上1.6以下であることが好ましく、1.0以上1.4以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましい。
【0048】
(プライ剥離強度)
キッチンタオルシート1xのプライ剥離強度は、0.04N/75mm以上2.1N/75mm以下であることが好ましい。プライ剥離強度が0.04N/75mm未満であると、清拭時にプライ同士が剥がれて拭き取りにくくなり、プライ剥離強度が2.1N/75mmを超えると、キッチンタオルシート1xの吸水量が低くなりやすい。
なお、キッチンタオルシート1xのプライ剥離強度は、0.10N/75mm以上1.2N/75mm以下であることがより好ましく、0.15N/75mm以上0.6N/75mm以下であることが更に好ましい。
プライ剥離強度の測定方法は、JIS P 8113の引張試験方法に準じて、引張試験機(STB-1225S、株式会社エー・アンド・デイ社製)を使用することができ、JIS P 8111に規定された標準条件下で行う。まず、キッチンタオルロール1のサンプルから幅方向75mm、流れ方向200mmの試験片を採取する。次に、流れ方向にプライを35mm剥離する。剥離したプライの片側を上側のつかみ具(幅75mm)に流れ方向で15mm挟んで固定する。また、もう一方のプライも下側のつかみ具(幅75mm)に流れ方向で15mm挟んで固定する。なお、つかみ具のピッチ(間隔)は20mmとする。次に、引張速度を100mm/minの条件で引張り(剥離し)、強度データを採取する。データは20μmおきに取得し、測定開始後の距離40mmから150mmまで(測定長110mm)のデータを平均して、これを剥離強度(N/75mm)とする。ただし、測定開始後の距離40mmから150mmまでにミシン目を含んでしまう場合は、測定開始後の距離を40mmから例えば90mm(測定長50mm)のように、ミシン目を含まない範囲で短くすることができる。
【0049】
(キッチンタオルシート及びキッチンタオルロールの製造方法)
キッチンタオルシート1x及びキッチンタオルロール1は、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の順で製造することができる。製造工程においては、スルーエアードライヤー技術を用いることが好ましい。このとき、抄紙工程において、上述のエンボスパターンとは異なる抄紙工程(ファブリック)由来の凹凸のパターンがキッチンタオルシート1xに施される。この凹凸のパターンを有することにより、キッチンタオルシート1xの吸水量が更に高くなる。なお、抄紙工程由来とは、キッチンタオルシート1xの抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤーの入口までの間に付与されることを意味し、特にスルーエアードライヤー部でシートがファブリックと共に乾燥されることで、凹凸が形成される。
また、凹凸のパターンは、ファブリックのパターン(細かいパターン、荒いパターン)を変更することで、適宜変更することができる。凹凸のパターンを変更すると比容積(紙厚)が変わるが、原紙の比容積(紙厚)が後述する数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。また、キッチンタオルシート1xの非エンボス部の表面粗さの二乗平均平方根高さSqが上述した数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。
【0050】
このスルーエアードライヤーを用いて抄紙された原紙を用いる場合、エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上40%以下であることが好ましい。面積率が4%未満であると、清拭時にキッチンタオルシート1xの表層が破れやすくなる。面積率が40%を超えると、キッチンタオルシート1xが潰れて吸水性が低くなりやすい。
なお、凸部の面積率は6%以上30%以下であることがより好ましく、9%以上18%以下であることが更に好ましい。また、凸部及びエンボス単体の形状は、円形、楕円形、長方形、正方形、花柄、ロゴ、文字等、特に制限なく用いることができるが、上述したように線状のエンボスが好ましい。このエンボスは、上述したようにキッチンタオルシート1xの表面1aのみに設けることが好ましい。
【0051】
このとき、キッチンタオルシート1xの製造に用いる原紙の2プライの坪量(1プライの坪量を2倍したもの)は、31g/m2以上58g/m2以下であることが好ましく、35g/m2以上54g/m2以下であることがより好ましく、39g/m2以上50g/m2以下であることが更に好ましい。また、紙厚は1.4mm/10枚以上5.4mm/10枚以下であることが好ましく、2.1mm/10枚以上4.8mm/10枚以下であることがより好ましく、2.7mm/10枚以上4.2mm/10枚以下であることが更に好ましい。さらに、比容積は7cm3/g以上22cm3/g以下であることが好ましく、9cm3/g以上20cm3/g以下であることがより好ましく、12cm3/g以上17cm3/g以下であることが更に好ましい。
【0052】
なお、キッチンタオルシート1xの原紙の紙厚に対する、エンボスパターンにおけるエンボスの深さの比である、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1xの原紙の紙厚の比は、0.01以上0.38以下であることが好ましく、0.03以上0.33以下であることがより好ましく、0.07以上0.18以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルシート1xの場合、嵩張らずにプライ剥がれしにくく、吸水性を良好にすることができる。
また、キッチンタオルシート1xの比容積と原紙の比容積の差(キッチンタオルシート1xの比容積-原紙の比容積の差)は、嵩張らずにプライ剥がれしにくく、吸水性を良好にするため、-3cm3/g以上2cm3/g以下が好ましく、-2cm3/g以上1cm3/g以下がより好ましく、-1cm3/g以上0.5cm3/g以下が更に好ましく、-0.5cm3/g以上0cm3/g以下が特に好ましい。
【0053】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例0054】
(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の工程を経て、実施例1から実施例21、比較例1から比較例10のキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールを製造した。以上のすべての実施例及び比較例のキッチンタオルロールに関して上述の各パラメーターを測定し、かつ、評価を行った。
なお、エンボスパターンに関しては、各実施例及び各比較例で本数や太さを適宜変更し、かつ、エンボスはすべてキッチンタオルシートの表側のみに設けた。
【0055】
製造したキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールについて、以下の項目の評価を行った。
表層の破れ、毛羽立ち:モニターがキッチンタオルシート1枚を使用した際の、表層の破れにくさや毛羽立ちにくさを評価した。
吸水性:モニターがキッチンタオルシート1枚を使用した際の、水の拭き残りを評価した。
拭き取り性:モニターがキッチンタオルシート1枚を使用した際の、拭き取り作業のしやすさを評価した。
【0056】
以上の三項目に関しては、モニター20人が各評価項目について「よい」又は「悪い」を選択する方式で行った。評価基準は以下のとおりであり、◎、○、△を合格とした。
◎:「よい」が18人以上20人以下のとき
○:「よい」が14人以上17人以下のとき
△:「よい」が10人以上13人以下のとき
×:「よい」が6人以上9人以下のとき
××:「よい」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0057】
【0058】
【0059】
以上より、本発明のキッチンタオルロールは、適切な吸水性と嵩高さを有しながら、清拭時に表層が破れにくく、拭き取りやすいものであることが分かる。