(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181904
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089123
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】窪 聡志
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA26
2E239CA32
2E239CA54
2E239CA62
2E239CA66
(57)【要約】
【課題】防火性により優れた建具を提供する。
【解決手段】枠体に回動可能に支持されて開口を閉止可能な障子の戸先部が見込み方向における一方側に移動しつつ回動して開口が開放され、戸先部が開口の長手方向における所定の位置にて枠体に係止されて開口を閉止可能であり、枠体は、開口を閉止している障子の戸先部の一方側の部位と見込み方向に対向する第一障子対向部と、第一障子対向部と見込み方向に間隔を空けて設けられ開口を閉止している障子の戸先部の見込み方向における他方側の部位と見込み方向に対向する第二障子対向部と、第一障子対向部と第二障子対向部との間にて、第一障子対向部及び第二障子対向部と対向し、第一障子対向部よりも開口の中央側に張り出す対向壁部と、を有し、対向壁部は、第二障子対向部と見込み方向に間隔を空けて配置され枠体の長手方向における両端部の少なくとも一方に設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状の開口を形成する枠体と、
前記枠体に回動可能に支持されて前記開口を閉止可能な障子と、
を有し、
前記障子は、戸先部が見込み方向における一方側に移動しつつ回動して前記開口が開放され、前記戸先部が前記開口の長手方向における所定の位置にて前記枠体に係止されて前記開口を閉止可能であり、
前記枠体は、前記開口を閉止している前記障子の前記戸先部の前記一方側の部位と見込み方向に対向する第一障子対向部と、
前記第一障子対向部と見込み方向に間隔を空けて設けられ前記開口を閉止している前記障子の前記戸先部の見込み方向における他方側の部位と見込み方向に対向する第二障子対向部と、
前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間に設けられ、前記第一障子対向部及び前記第二障子対向部と対向し、前記第一障子対向部よりも前記開口の中央側に張り出す対向壁部と、
を有し、
前記対向壁部は、前記第二障子対向部と見込み方向に間隔を空けて配置され、前記枠体の長手方向における両端部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記対向壁部は、前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間にて、前記第一障子対向部側に偏った位置に設けられていることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
見込み方向に対向する前記障子と前記第一障子対向部とのうちの一方に設けられ、前記障子が前記開口を閉止している状態で、前記障子と前記第一障子対向部とのうちの他方に当接するタイト材を有し、
前記対向壁部は、前記枠体に固定可能な固定部とともに、前記枠体とは別体の壁部材をなしており、
前記壁部材は、前記対向壁部が前記第一障子対向部に当接して前記固定部が前記枠体に固定されていることを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建具であって、
見込み方向における、前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間に膨出可能な加熱発泡材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具であって、
前記加熱発泡材は、前記第二障子対向部に設けられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を形成する枠体に回動可能に支持された障子を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、障子を支持する枠の、横枠と竪(縦)枠とが接合されるコーナー部が、横枠と竪(縦)枠とに各々設けられている室内側見付壁が突き合わされており、この突き合わせ部に重ねて、熱膨張耐火材を備えた取付金具を設けた建具は知られている(例えば、特許文献1参照)。この建具は、火災時に取付金具に備えられた熱膨張耐火材が膨張し、加熱されて反りが生じた枠により横枠と竪(縦)枠との突き合わせ部に生じる隙間を塞ぐことにより、コーナー部から火炎が噴出することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建具の多様化に伴い開口のアスペクト比が大きな、すなわち長方形状の開口において短辺の長さに対する長辺の長さの方が大幅に長い細長の形状をなす窓が増えつつある。このような細長の形状をなす窓の開口を形成する枠体に、回動自在に支持された障子の戸先側が見込み方向における一方側に移動しつつ回動して開口が開放されるような、例えば開き窓用の建具が設けられる場合がある。開き窓用の建具は、障子を閉じた状態で、戸先側が長手方向における中央近傍にて枠体に係止される。
【0005】
戸先側が長手方向の中央近傍にて枠体に係止された障子は、火災により加熱されると火元側が延びて反りが生じる。反りが生じた障子は、係止されている部位から長手方向に離れるに連れて戸先と枠体との間隔が広がり、端部側では隙間が生じる虞がある。特に、アスペクト比が大きな建具の場合には、火災時に生じる反りがより大きくなり、長手方向における両端部にて火炎が貫通する虞があるという課題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、防火性により優れた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための主たる発明は、長方形状の開口を形成する枠体と、前記枠体に回動可能に支持されて前記開口を閉止可能な障子と、を有し、前記障子は、戸先部が見込み方向における一方側に移動しつつ回動して前記開口が開放され、前記戸先部が前記開口の長手方向における所定の位置にて前記枠体に係止されて前記開口を閉止可能であり、前記枠体は、前記開口を閉止している前記障子の前記戸先部の前記一方側の部位と見込み方向に対向する第一障子対向部と、前記第一障子対向部と見込み方向に間隔を空けて設けられ前記開口を閉止している前記障子の前記戸先部の見込み方向における他方側の部位と見込み方向に対向する第二障子対向部と、前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間に設けられ、前記第一障子対向部及び前記第二障子対向部と対向し、前記第一障子対向部よりも前記開口の中央側に張り出す対向壁部と、を有し、前記対向壁部は、前記第二障子対向部と見込み方向に間隔を空けて配置され、前記枠体の長手方向における両端部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする建具である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防火性により優れた建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る建具を屋内側から見た正面図である。
【
図4】障子を閉じた状態の建具における戸先側を示す横断面図である。
【
図5】戸先側に設けられている壁部材及び加熱発泡材の配置を示す断面を屋内側から見た斜視図である。
【
図6】戸先側に設けられている壁部材及び加熱発泡材の配置を示す断面を屋外側から見た斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、戸先框に反りが生じた際の状態を示す横断面図であり、
図7(b)は、壁部材による効果を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る建具の一例として、
図1~
図3に示すように、縦すべり出し窓用の建具1を例に挙げて説明する。
【0011】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の建具1を屋内側から見た状態、すなわち
図1の状態で、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、屋内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具1が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0012】
本実施形態の建具1は、矩形状に枠組みされて長方形状の開口2aを形成する枠体2と、枠体2に支持されて開口2aを閉塞可能な障子3と、を備えている。枠体2及び障子3は、アスペクト比が大きく、上下方向に長い縦長の形状をなしている。以下の説明においては、枠体2の開口2a側を内周側、反対側を外周側とする。
建具1は、障子3の左右方向における一方側(本実施形態では左側)の上下端部が、枠体2に回動しつつ左右方向に移動可能に支持されている。
【0013】
障子3は、左右方向における他方側(本実施形態では右側)が、屋外側に移動して障子3が回動しつつ、左側の支持された部位が右方向に移動して開口2aが開放される。すなわち本実施形態においては、左側が吊り元側、右側が戸先側である。
【0014】
障子3の戸先側には、上下方向における所定の位置(本実施形態においては、ほぼ中央)に、開口2aを閉止した状態の障子3を、枠体2の戸先側に係止するための、例えばカムラッチハンドル4が設けられており、枠体2には、カムラッチハンドル4を操作したときに枠体2側に出没する係止部4aが、突出した状態で係止される係止部材5が設けられている。
【0015】
障子3は、長方形状の複層ガラス3aと、長方形状に枠組みされ複層ガラス3aの周端部を収容する框体6と、を有している。以下の説明においては、框体6の複層ガラス3a側を内周側、反対側を外周側とする。
【0016】
框体6は、上下に位置する2本の横框7、8と、左右に位置する2本の縦框9、10とが枠組みされている。2本の横框7、8及び2本の縦框9、10はいずれも、屋外側に配置される金属製(本実施の形態においては、アルミニウム製)の屋外框部11、12、13、14と、屋内側に配置される合成樹脂製の屋内框部15、16、17、18と、を有し、各横框7、8及び各縦框9、10は、屋外框部11、12、13、14の屋内側に屋内框部15、16、17、18が係止されて一体に形成されている。尚、各屋外框部11、12、13、14及び各屋内框部15、16、17、18はいずれも長手方向を押し出し方向として押し出し成形された部材である。
【0017】
框体6は、
図4に示すように、右側の縦框(以下、戸先框という)10の屋外框部14は、長手方向に貫通し断面が矩形状をなす中空部14aを有し、中空部14aの屋外側に位置して壁部を形成する屋外壁部14bと、屋外壁部14bから框体6の内周側に延出されて複層ガラス3aの周端部と見込み方向に対向するガラス対向部14cと、屋外壁部14bから外周側に延出されて見付け面を形成する戸先側延出部14dと、中空部14aの屋内側に位置する屋内壁部14eから屋内側に延出されて屋内框部18が係止される屋内框係止部14fを有している。
【0018】
戸先側延出部14dの戸先側の先端は、屋内側に僅かに延出されており、延出された先端と、中空部14aの外周側に位置して壁部を形成する外周壁部14gとには、互いに対向する側に突出する突起14hを有しており、戸先側延出部14dの屋内側に配置された加熱発泡材19が2つの突起14hにより保持される。この加熱発泡材19は、戸先側延出部14dの長手方向におけるほぼ全長に亘って設けられている。
【0019】
戸先框10の屋内框部18は、屋内に臨む見付け面を形成する屋内見付け面部18aを有し、屋内見付け面部18aの外周側の部位に屋内框係止部14fに係止される屋内被係止部18bが設けられている。障子3を枠体2の戸先側に係止するカムラッチハンドル4は、屋内見付け面部18aの上下方向におけるほぼ中央に設けられている。
【0020】
屋内框部18は、屋内被係止部18bが屋内框係止部14fに係止された状態で、屋内見付け面部18aの内周側の部位が、屋外框部14のガラス対向部14cと見込み方向に間隔を空けて対向し、複層ガラス3aの周端部が収容されるガラス収容部6aが形成される。
【0021】
ガラス収容部6aは、屋内見付け面部18aとガラス対向部14cとの間に、外周側に窪み、屋外框部14の中空部14aの内周側の壁部をなす内周壁部14iを底とする溝状をなしている。ガラス収容部6a内には、屋内見付け面部18a、ガラス対向部14c、内周壁部14iの各々と対向し、断面がコ字状をなす金属製の框内補強材20が設けられており、框内補強材20の内周側にガスケット21を介して複層ガラス3aの周端部が収容されている。
【0022】
断面がコ字状をなす框内補強材20において内周壁部14iと対向する補強材見込面部20aにおける内周側の面の屋外側の部位には、加熱発泡材19が設けられている。この加熱発泡材19は、少なくとも複層ガラス3aを構成し屋外側に配置されている網入りガラス3bと左右方向において対向する部位から屋外側に設けられている。尚、加熱発泡材19は、網入りガラス3bと左右方向において対向する部位よりも屋内側まで設けられていても構わない。
【0023】
枠体2は、上下に位置する2本の横枠22、23と、左右に位置する2本の縦枠24、25とが枠組みされている。2本の横枠22、23及び2本の縦枠24、25はいずれも、屋外側に配置される金属製(本実施の形態においては、アルミニウム製)の屋外枠部26、27、28、29と、屋内側に配置される合成樹脂製の屋内枠部30、31、32、33と、を有し、各横枠22、23及び各縦枠24、25は、屋外枠部26、27、28、29の屋内側に屋内枠部30、31、32、33が係止されて一体に形成されている。尚、各屋外枠部26、27、28、29及び各屋内枠部30、31、32、33はいずれも長手方向を押し出し方向として押し出し成形された部材である。
【0024】
枠体2は、左右の縦枠24、25の、見込み方向に沿う見込面を形成する枠体見込み壁部24a、25aに、上下の横枠22、23の小口が突き当てられてビスにより接合されている。
【0025】
枠体2の右側の縦枠(以下、戸先枠という)25の屋外枠部29は、ほぼ板状をなす見込み壁部29aから枠体2の内周側に突出する4つの内周突出部29b、29c、29d、29eと、枠体2の外周側に突出して躯体と対向する躯体対向片29fと、を有している。
【0026】
4つの内周突出部29b、29c、29d、29eは、最も屋外側に設けられ第一障子対向部としての第一内周突出部29bと、枠体見込み壁部29aの見込み方向におけるほぼ中央に設けられ第二障子対向部としての第二内周突出部29cと、枠体見込み壁部29aの屋内側の端部に互いに近接して設けられ屋内枠部33の屋内側の部位が係止される第三内周突出部29d及び第四内周突出部29eと、である。
【0027】
第一内周突出部29bは、見込み壁部29aの屋外側の端よりも屋内側に配置されており、屋外側には、枠体2と障子3との間の水密性・機密性を保つためのタイト材34が嵌合されるタイト材嵌合部29gが設けられている。第一内周突出部29bは、閉止状態の障子3の戸先側延出部14dがタイト材34を押圧して見込み方向に対向した状態で、障子3が枠体見込み壁部29aの屋外側の端よりも屋内側に位置するように配置されている。ここで、戸先側延出部14dが開口を閉止している障子の戸先部の一方側の部位に相当する。
【0028】
第二内周突出部29cは、第一内周突出部29b及び閉止状態の障子3の戸先部となる戸先框10と、見込み方向に間隔を空けて対向する見付け面を形成するほぼ板状の部位であり、先端部分には、屋内枠部33の屋外側の部位が係止される外枠係止部29hが設けられている。第二内周突出部29cの屋外側の面、及び、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に位置する見込み壁部29aの内周側の面には、加熱発泡材19が設けられている。
【0029】
第二内周突出部29cは、第一内周突出部29bより内周側に張り出しており、その先端は、左右方向において屋外框部14の外周壁部14g近傍に位置している。また、第二内周突出部29cは、戸先框10の屋内見付け面部18aよりも屋内側に設けられている。
【0030】
躯体と対向する躯体対向片29fは、見込み壁部29aにおいて第二内周突出部29cよりも僅かに屋内側から外周側に突出し、屋外側から進入するビスにより躯体に固定される。
【0031】
戸先枠25の屋内枠部33は、第二内周突出部29cの屋内側にて、当該第二内周突出部29cに沿って配置される内枠第一見付け壁部33aと、内枠第一見付け壁部33aの内周側の端部に設けられ外枠係止部29hに係止される内枠第一係止片33bが設けられ、内枠第一係止片33bの内周側には見付け面を形成する内枠第二見付け壁部33cが設けられている。
【0032】
内枠第二見付け壁部33cは、内枠第一見付け壁部33aよりも屋外側に位置しており、閉じた障子3の戸先框10における屋内見付け面部18aの外周側の部位と見込み方向における屋内側に間隔を空けて対向している。内枠第二見付け壁部33cの屋外側の面には、屋外側に突出して屋内見付け面部18a及び外周壁部14gの屋内側端部と、弾性変形して接触する止水片33dが、一体成形により設けられている。ここで、屋内見付け面部18a及び外周壁部14gが、開口を閉止している障子の戸先部の見込み方向における他方側の部位に相当する。
【0033】
屋内枠部33は、内枠第一見付け壁部33a、内枠第一係止片33b及び内枠第二見付け壁部33cと、見込み方向における屋内側に間隔を空けて対向する内枠第三見付け壁部33eと、左右方向において互いに対向する内枠内周対向壁部33f及び内枠外周対向壁部33gとを有しており、これらに囲まれて中空部33hが形成されている。
【0034】
屋内枠部33は、上下方向におけるほぼ中央に、内周側から中空部33h内に挿入され内枠内周対向壁部33fに係止されて、カムラッチハンドル4の係止部材5が設けられている。内枠外周対向壁部33gは、中空部33hよりも屋内側に延出されており、延出された部位に、屋外枠部29の第三内周突出部29d及び第四内周突出部29eに係止される内枠第二係止片33iが設けられている。
【0035】
戸先枠25には、屋外枠部29の第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に、金属製(本実施の形態においては、ステンレス製)の壁部材35が、戸先枠25の長手方向における両端部にそれぞれ設けられている。各壁部材35は、同一である。
【0036】
壁部材35は、
図4~
図6に示すように、板状をなして戸先枠25の見込み壁部29aに対面して当接され、内周側から進入するビスにより見込み壁部29aに固定される固定部35aと、固定部35aとほぼ直角に繋がった板状をなす対向壁部35bと、を有している。
【0037】
壁部材35は、対向壁部35bの屋外側の面が、第一内周突出部29bのタイト材嵌合部29gの屋内側の部位に当接された状態で、固定部35aが、見込み壁部29aに固定されている。
【0038】
見込み壁部29aに固定された壁部材35は、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に、第一内周突出部29bよりも開口2aの中央側、すなわち戸先框10側に、対向壁部35bが張り出している。すなわち、壁部材35が戸先枠25に固定された枠体2は、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に設けられ、第一内周突出部29b及び第二内周突出部29cと対向し、第一内周突出部29bよりも開口2aの中央側に張り出す対向壁部35bを有している。
【0039】
本実施形態の縦すべり出し窓は、例えば、高さが2270mm、幅が300mmというように、アスペクト比が大きく、このような縦長の建具は、障子3が開く屋外側とは反対の屋内側を火元とする火災の際に加熱されると、框体6における戸先側が、カムラッチハンドル4により係止されている上下方向の中央部に対して、戸先框10の上下の端部が屋外側に移動するように反りが生じる。
【0040】
戸先框10に反りが生じると、戸先框10の上下端部において、戸先側延出部14dが、第一内周突出部29bに設けられたタイト材34から離れ、また、タイト材34も溶融して脱落する虞がある。このとき、屋内側では、合成樹脂製の屋内枠部33も溶融して脱落してします虞があり、壁部材35が設けられていない状態では、
図7(a)に示すように、戸先框10と、戸先枠25との間に屋内外を貫通する隙間Sが生じてしまう。このため、本実施形態の建具1では、
図7(b)に示すように、見込み壁部29aに固定された壁部材35における対向壁部35bの内周側の先端が、第一内周突出部29bの先端よりも内周側に張り出す構成としている。より具体的には、戸先框10に反りが生じて戸先框10と、戸先枠25との間に屋内外を貫通する隙間Sを遮る位置まで対向壁部35bが張り出すように設定されている。
【0041】
そして、
図6に示すように、第二内周突出部29cの屋外側の面に設けられている加熱発泡材19は、少なくとも、上下に設けられている壁部材35の各々の対向壁部35bと対向する位置に長手方向に沿って、また、見込み壁部29aの内周側の面に設けられている加熱発泡材19は、下側の壁部材35の上端位置近傍と、上側の壁部材35の下端位置近傍との間に、長手方向の全長に亘り設けられている。
【0042】
本実施形態の建具1によれば、障子3が開口2aを閉止している状態において、障子3の戸先框10の屋外側に位置する戸先側延出部14dと見込み方向に対向する第一内周突出部29bよりも屋内側に、当該第一内周突出部29bと見込み方向に対向する対向壁部35bが設けられており、対向壁部35bは、第一内周突出部29bよりも開口2aの中央側に張り出しているので、火災により加熱されて障子3の戸先側における上下の端部が屋外側に移動して、枠体2と障子3との間に隙間Sが生じる場合であっても、隙間Sにより屋内側と屋外側とが貫通することを対向壁部35bにより防止することが可能である。
【0043】
また、障子3の反りにより生じる隙間Sは、枠体2の上端及び下端に近づくにつれて大きくなるが、対向壁部35bは、枠体2の上下の端部にそれぞれ設けられているので、より大きな隙間Sが生じやすい上下の端部において見込み方向に貫通する隙間Sを遮ることが可能である。このため、防火性により優れた建具1を提供することが可能である。
【0044】
また、対向壁部35bは、枠体2とは別体の壁部材35が枠体2に固定されて形成されており、壁部材35は、対向壁部35bが第一内周突出部29bに当接する位置に設けられているので、対向壁部35bを、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間において、見込み方向における最も屋外側に配置することが可能である。このため、反りにより生じ屋内外が貫通する隙間Sに、対向壁部35bをより大きく張り出させることが可能である。このため、対向壁部35bの大きさをより小さく抑えつつも屋内外が貫通する領域を遮ることが可能である。
【0045】
また、壁部材35は、対向壁部35bを第一内周突出部29bに当接させて固定部35aを枠体2に固定することができるので、壁部材35を取り付けるときの位置決めが容易である。このため、施工性にも優れている。
【0046】
上記実施形態においては、枠体2の上下の端部に各々、対向壁部35bを備えている例について説明にたが、対向壁部35bは、上端側または下端側のいずれか一方に設けられていれば、少なくとも設けられている上端側または下端側において、火炎の貫通を防止することが可能である。
【0047】
上記実施形態においては、対向壁部35bを第一内周突出部29bに当接させて壁部材35を枠体2に固定する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、対向壁部35bが、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に、反りにより生じた隙間を遮るように設けられていれば構わない。このとき、第二内周突出部29cに対し、より屋外側に配置することが望ましく、例えば、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間における中央よりも屋外側、或いは、第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間において、屋外側に偏った位置に配置することにより、対向壁部35bが第一内周突出部29bよりも内周側に張り出す量をより小さくしつつも反りにより生じた隙間を遮ることが可能となる。
【0048】
また、建具1には、第二内周突出部29cと対向壁部35bとの間に、加熱発泡材19が設けられているので、火災用により加熱されたときには、加熱発泡材19が発泡して、見込み方向における第二内周突出部29cと対向壁部35bとの間に膨出するので、対向壁部35bのみならず加熱発泡材19によっても火炎の貫通を防止することが可能である。
【0049】
また、加熱発泡材19は、障子3の屋内側の部位と対向する第二内周突出部29cに設けられているので、屋内側を火元とする火災のときには、より早く加熱させることが可能である。このため、より早く発泡させて、より早く火炎が貫通し難い状態とすることが可能である。このため、防火性により優れた建具1を提供することが可能である。
【0050】
上記実施形態においては、障子3の戸先の移動方向を屋外側としたが、戸先の移動方向は屋内側であっても構わない。
また、上記実施形態においては、対向壁部35bを備えた壁部材35が枠体2に固定されている例について説明したが。これに限らず、例えば、対向壁部は枠体と一体に成形されていても構わない。
【0051】
上記実施形態においては、加熱された際に、見込み方向において第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に膨出可能な加熱発泡材19が、戸先側延出部14d、見込み壁部29a及び第二内周突出部29cに設けられている例について説明したが、見込み方向において第一内周突出部29bと第二内周突出部29cとの間に膨出可能な加熱発泡材19は、外周壁部14g及び対向壁部35bに設けられていても構わない。
【0052】
上記実施形態においては、縦すべり出し窓用の建具1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、横すべり出し窓用の建具、開き窓用の建具など、枠体に支持されて回動して開閉可能な障子を備えた建具であれば構わない。
【0053】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0054】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
長方形状の開口を形成する枠体と、前記枠体に回動可能に支持されて前記開口を閉止可能な障子と、を有し、前記障子は、戸先部が見込み方向における一方側に移動しつつ回動して前記開口が開放され、前記戸先部が前記開口の長手方向における所定の位置にて前記枠体に係止されて前記開口を閉止可能であり、前記枠体は、前記開口を閉止している前記障子の前記戸先部の前記一方側の部位と見込み方向に対向する第一障子対向部と、前記第一障子対向部と見込み方向に間隔を空けて設けられ前記開口を閉止している前記障子の前記戸先部の見込み方向における他方側の部位と見込み方向に対向する第二障子対向部と、前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間に設けられ、前記第一障子対向部及び前記第二障子対向部と対向し、前記第一障子対向部よりも前記開口の中央側に張り出す対向壁部と、を有し、前記対向壁部は、前記第二障子対向部と見込み方向に間隔を空けて配置され、前記枠体の長手方向における両端部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする建具である。
【0055】
このような建具によれば、戸先部が見込み方向における一方側に移動しつつ回動するように枠体に支持されている障子は、戸先部が開口の長手方向における所定の位置にて枠体に係止された閉止状態において、見込み方向における他方側を火元とする火災にて加熱されると、長手方向における両端部が、係止されている位置よりも見込み方向における一方側に位置するように反りが生じ、障子と枠体との間に隙間が生じる虞がある。
【0056】
上記建具は、障子が開口を閉止している状態において、障子の戸先部の一方側の部位と見込み方向に対向する第一障子対向部よりも他方側にて当該第一障子対向部と見込み方向に対向するとともに、第一障子対向部と見込み方向に間隔を空けて設けられ障子の他方側の部位と見込み方向に対向する第二障子対向部との間に、第一障子対向部よりも開口の中央側に張り出して配置される対向壁部を有しているので、対向壁部において開口の中央側に張り出している部位により、反りにより生じた隙間を遮って、枠体と障子との間が見込み方向に貫通することを防止することが可能である。
【0057】
このとき、対向壁部は、第二障子対向部の見込み方向における一方側に、間隔を空けて配置されているので、第一障子対向部に、より近い位置にて配置される。このため、対向壁部において、第一障子対向部よりも内周側への突出量をより小さく抑えつつも枠体と障子との間が見込み方向に貫通することを防止することが可能である。
【0058】
また、障子の反りにより生じる隙間は、枠体の長手方向における両端部側が大きくなるが、対向壁部は、枠体の長手方向における両端部の少なくとも一方に設けられているので、より大きな隙間が生じやすい、長手方向における両端部の少なくとも一方において屋内外が貫通することを防止することが可能である。このため、防火性により優れた建具を提供することが可能である。
【0059】
かかる建具であって、前記対向壁部は、前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間にて、前記第一障子対向部側に偏った位置に設けられていることを特徴とする。
【0060】
このような建具によれば、対向壁部は、第一障子対向部と第二障子対向部との間にて、第一障子対向部側に偏った位置に設けられているので、対向壁部が第二障子対向部側に設けられている場合よりも、反りにより生じる、枠体と障子との間にて見込み方向に貫通する隙間に、対向壁部をより大きく張り出させることが可能である。このため、より確実に見込み方向に貫通する隙間を遮ることが可能となる。
【0061】
かかる建具であって、見込み方向に対向する前記障子と前記第一障子対向部とのうちの一方に設けられ、前記障子が前記開口を閉止している状態で、前記障子と前記第一障子対向部とのうちの他方に当接するタイト材を有し、前記対向壁部は、前記枠体に固定可能な固定部とともに、前記枠体とは別体の壁部材をなしており、前記壁部材は、前記対向壁部が前記第一障子対向部に当接して前記固定部が前記枠体に固定されていることを特徴とする。
【0062】
このような建具によれば、壁部材が有する対向壁部は第一障子対向部に当接しているので、対向壁部を見込み方向における最も一方側に配置することが可能である。このため、反りにより生じる、枠体と障子との間にて見込み方向に貫通する隙間に、対向壁部を更に大きく張り出させることが可能である。また、壁部材は対向壁部を第一障子対向部に当接させて固定部を枠体に固定することができるので、壁部材を取り付けるときの位置決めが容易である。このため、施工性にも優れている。
【0063】
かかる建具であって、見込み方向における、前記第一障子対向部と前記第二障子対向部との間に膨出可能な加熱発泡材が設けられていることを特徴とする。
【0064】
このような建具によれば、火災用により加熱されたときには、加熱発泡材が、見込み方向における第一障子対向部と第二障子対向部との間に膨出するので、対向壁部のみならず加熱発泡材によっても火炎の貫通を防止することが可能である。このため、防火性により優れた建具を提供することが可能である。
【0065】
かかる建具であって、前記加熱発泡材は、前記第二障子対向部に設けられていることを特徴とする。
【0066】
このような建具によれば、加熱発泡材は、障子の戸先部の見込み方向における他方側の部位と見込み方向に対向する第二障子対向部に設けられているので、見込み方向における他方側を火元とする火災のときには、より早く加熱される。このため、より早く発泡させることができるので、より早く火炎が貫通し難い状態とすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 建具、2 枠体、2a 開口、3 障子、10 戸先框、
14d 戸先側延出部、14g 外周壁部、18a 屋内見付け面部、
19 加熱発泡材、29b 第一内周突出部、29c 第二内周突出部、
34 タイト材、35 壁部材、35a 固定部、35b 対向壁部、