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特開2022-181915二酸化炭素ガスセンサ及びガスセンサ素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181915
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】二酸化炭素ガスセンサ及びガスセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20221201BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20221201BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20221201BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221201BHJP
   C25B 9/70 20210101ALI20221201BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20221201BHJP
   C25B 13/07 20210101ALI20221201BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20221201BHJP
【FI】
G01N27/416 331
C25B1/02
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B9/70
C25B13/04 301
C25B13/07
C25B9/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089145
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】中原 健
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021BC09
4K021CA15
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021DC15
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素ガスに対するガス選択性が改善された二酸化炭素ガスセンサを提供する。
【解決手段】二酸化炭素ガスセンサは、入口を有する流路と、流路内に配置されている第1素子及び少なくとも1つの第2素子とを備える。第1素子は、第1固体電解質層と、第1固体電解質層を挟み込んでいる第1カソード及び第1アノードとを有する。少なくとも1つの第2素子の各々は、第2固体電解質層と、第2固体電解質層を挟み込んでいる第2カソード及び第2アノードとを有する。第1固体電解質層及び第2固体電解質層は、酸素イオン伝導体により形成されている。第1カソードは、流路内にある。第2カソード及び第2アノードは、それぞれ、流路内及び流路外にある、流路外に放出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスが導入される入口を有する流路と、
前記流路内に配置されている第1素子及び少なくとも1つの第2素子とを備え、
前記第1素子は、第1固体電解質層と、前記第1固体電解質層を挟み込んでいる第1カソード及び第1アノードとを有し、
前記少なくとも1つの第2素子の各々は、第2固体電解質層と、前記第2固体電解質層を挟み込んでいる第2カソード及び第2アノードとを有し、
前記第1固体電解質層及び前記第2固体電解質層は、酸素イオン伝導体により形成されており、
前記第1カソードは、前記流路内にあり、
前記第2カソード及び前記第2アノードは、それぞれ、前記流路内及び前記流路外にある、前記流路外に放出される、二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項2】
前記第1カソードと前記第1アノードとの間には、前記第1カソードにおいて二酸化炭素から酸素イオンを生成可能な第1電圧以上の電圧が印加されており、
前記第2カソードと前記第2アノードとの間には、前記第2カソードにおいて水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物ガスから酸素イオンを生成可能な第2電圧以上であり、かつ前記第1電圧未満の電圧が印加されている、請求項1に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項3】
前記酸素イオン伝導体は、イットリア安定化ジルコニアである、請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2素子は、複数の第2素子であり、
前記複数の第2素子のうちの少なくとも1つは、前記流路内において前記第1素子よりも前記入口の近くにある、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項5】
前記第1素子は、第1基板と、第1絶縁層と、第1多孔質酸化物層と、第2絶縁層とをさらに有し、
前記第1基板には、前記第1基板を厚さ方向に貫通している第1キャビティが形成されており、
前記第1絶縁層は、前記第1基板上に配置されており、
前記第1多孔質酸化物層は、前記第1キャビティ上にある前記第1絶縁層の部分上に配置されており、
前記第1カソードは、前記第1多孔質酸化物層上に配置されており、
前記第1固体電解質層は、前記第1カソード上に配置されており、
前記第2絶縁層は、前記第1多孔質酸化物層、前記第1カソード及び前記第1固体電解質層を覆うように、前記第1絶縁層上に配置されており、
前記第2絶縁層には、前記第1固体電解質層を部分的に露出させている第1開口が形成されており、
前記第1アノードは、前記第1開口から露出している前記第1固体電解質層の部分上に配置されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項6】
前記第1多孔質酸化物層は、平面視において櫛歯形状になっている櫛歯部を含み、
前記櫛歯部の側面上からは、前記第2絶縁層が除去されており、
前記第1カソード、前記第1固体電解質層及び前記第1アノードは、平面視において前記櫛歯部と重なるように配置されている、請求項5に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項7】
前記第1素子は、第1基板と、第1絶縁層と、第1多孔質酸化物層と、第2絶縁層とをさらに有し、
前記第1基板には、前記第1基板を厚さ方向に貫通している第1キャビティが形成されており、
前記第1絶縁層は、前記第1基板上に配置されており、
前記第1アノードは、前記第1多孔質酸化物層上に配置されており、
前記第1固体電解質層は、前記第1アノード上に配置されており、
前記第2絶縁層は、前記第1多孔質酸化物層、前記第1アノード及び前記第1固体電解質層を覆っており、
前記第2絶縁層には、前記第1固体電解質層を部分的に露出させている第1開口が形成されており、
前記第1カソードは、前記第1開口から露出している前記第1固体電解質層の部分上に配置されており、
前記第1キャビティ上にある前記第1絶縁層の部分には、前記第1キャビティに連通している第1貫通穴が形成されており、
前記第1多孔質酸化物層、前記第1アノード、前記第1固体電解質層、前記第2絶縁層及び前記第1カソードは、前記第1多孔質酸化物層が前記第1キャビティに対して露出するように、前記第1貫通穴内に配置されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2素子の各々は、第2基板と、第3絶縁層と、第2多孔質酸化物層と、第4絶縁層とをさらに有し、
前記第2基板には、前記第2基板を厚さ方向に貫通している第2キャビティが形成されており、
前記第3絶縁層は、前記第2基板上に配置されており、
前記第2アノードは、前記第2多孔質酸化物層上に配置されており、
前記第2固体電解質層は、前記第2アノード上に配置されており、
前記第4絶縁層は、前記第2多孔質酸化物層、前記第2アノード及び前記第2固体電解質層を覆っており、
前記第4絶縁層には、前記第2固体電解質層を部分的に露出させている第2開口が形成されており、
前記第2カソードは、前記第2開口から露出している前記第2固体電解質層の部分上に配置されており、
前記第2キャビティ上にある前記第3絶縁層の部分には、前記第2キャビティに連通している第2貫通穴が形成されており、
前記第2多孔質酸化物層、前記第2アノード、前記第2固体電解質層、前記第4絶縁層及び前記第2カソードは、前記第2多孔質酸化物層が前記第2キャビティに対して露出するように、前記第2貫通穴内に配置されている、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の二酸化炭素ガスセンサ。
【請求項9】
基板と、
第1絶縁層と、
多孔質酸化物層と、
カソードと、
酸素イオンを伝導体により形成されている固体電解質層と、
第2絶縁層と、
アノードとを備え、
前記基板には、前記基板を厚さ方向に貫通しているキャビティが形成されており、
前記第1絶縁層は、前記基板上に配置されており、
前記多孔質酸化物層は、前記キャビティ上にある前記第1絶縁層の部分上に配置されており、
前記カソードは、前記多孔質酸化物層上に配置されており、
前記固体電解質層は、前記カソード上に配置されており、
前記第2絶縁層は、前記多孔質酸化物層、前記カソード及び前記固体電解質層を覆うように、前記第1絶縁層上に配置されており、
前記第2絶縁層には、前記固体電解質層を部分的に露出させている開口が形成されており、
前記アノードは、前記開口から露出している前記固体電解質層の部分上に配置されている、ガスセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素ガスセンサ及びガスセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1(Noritaka Mizuno他2名、「CO2 Sensing Mechanism of La2O3-loaded SnO2」、CHEMISTRY LETTERS、第2467頁から第2470頁、1992年)には、半導体式の二酸化炭素ガスセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Noritaka Mizuno他2名、「CO2 Sensing Mechanism of La2O3-loaded SnO2」、CHEMISTRY LETTERS、第2467頁から第2470頁、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の二酸化炭素ガスセンサは、二酸化炭素ガス以外のガス(例えば、水素ガス)にも応答する。すなわち、非特許文献1に記載の二酸化炭素ガスセンサは、二酸化炭素ガスに対するガス選択性が低い。
【0005】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、二酸化炭素ガスに対するガス選択性が改善された二酸化炭素ガスセンサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の二酸化炭素ガスセンサは、入口を有する流路と、流路内に配置されている第1素子及び少なくとも1つの第2素子とを備える。第1素子は、第1固体電解質層と、第1固体電解質層を挟み込んでいる第1カソード及び第1アノードとを有する。少なくとも1つの第2素子の各々は、第2固体電解質層と、第2固体電解質層を挟み込んでいる第2カソード及び第2アノードとを有する。第1固体電解質層及び第2固体電解質層は、酸素イオン伝導体により形成されている。第1カソードは、流路内にある。第2カソード及び第2アノードは、それぞれ、流路内及び流路外にある。
【発明の効果】
【0007】
本開示の二酸化ガスセンサによると、二酸化炭素ガスに対するガス選択性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】二酸化炭素ガスセンサ100の模式図である。
図2】第1素子20の断面図である。
図3】第1素子20の製造方法を示す工程図である。
図4A】第1絶縁層形成工程S2を説明するための断面図である。
図4B】第1配線形成工程S3を説明するための断面図である。
図4C】第2絶縁層形成工程S4を説明するための断面図である。
図4D】第2配線形成工程S5を説明するための断面図である。
図4E】第3絶縁層形成工程S6を説明するための断面図である。
図4F】多孔質酸化物層形成工程S7及びカソード形成工程S8を説明するための断面図である。
図4G】固体電解質層形成工程S9を説明するための断面図である。
図4H】パターンニング工程S10を説明するための断面図である。
図4I】第4絶縁層形成工程S11を説明するための断面図である。
図4J】アノード形成工程S12を説明するための断面図である。
図5】第2素子30の断面図である。
図6】第2素子30の製造方法を示す工程図である。
図7A】第1絶縁層形成工程S15を説明するための断面図である。
図7B】配線形成工程S16を説明するための断面図である。
図7C】第2絶縁層形成工程S17を説明するための断面図である。
図7D】貫通穴形成工程S18を説明するための断面図である。
図7E】多孔質酸化物層形成工程S19及びアノード形成工程S20を説明するための断面図である。
図7F】固体電解質層形成工程S21を説明するための断面図である。
図7G】パターンニング工程S22を説明するための断面図である。
図7H】第3絶縁層形成工程S23を説明するための断面図である。
図7I】カソード形成工程S24を説明するための断面図である。
図8】二酸化炭素ガスセンサ100Aの模式図である。
図9】二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20の拡大平面図である。
図10】二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20の断面図である。
図11】二酸化炭素ガスセンサ100Bの模式図である。
図12】第1素子40の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る二酸化炭素ガスセンサ(以下「二酸化炭素ガスセンサ100」とする)を説明する。
【0011】
<二酸化炭素ガスセンサ100の構成>
以下に、二酸化炭素ガスセンサ100の構成を説明する。
【0012】
図1は、二酸化炭素ガスセンサ100の模式図である。図1に示されるように、二酸化炭素ガスセンサ100は、流路10と、第1素子20と、複数の第2素子30とを有している。図1に示される例では、二酸化炭素ガスセンサ100は、2つの第2素子30を有している。但し、第2素子30の数は、1つであってもよい。
【0013】
流路10は、入口11を有している。入口11からは、検知対象となるガス(検知対象ガス)が導入される。流路10は、2つの内部空間を有している。検知対象ガスには、二酸化炭素ガス、水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物ガスが含まれている。
【0014】
入口11の近くにある流路10の内部空間を第1内部空間とし、第1内部空間よりも入口11から離れている流路10の内部空間を第2内部空間とする。第1素子20は、第2内部空間に配置されている。複数の第2素子30のうちの1つは、第1内部空間に配置されている。このことを別の観点から言えば、複数の第2素子30のうちの1つは、流路10内において、第1素子20よりも上流側に配置されている。
【0015】
図2は、第1素子20の断面図である。図2に示されるように、第1素子20は、基板21と、絶縁層22と、配線23と、配線24と、多孔質酸化物層25と、カソード26と、固体電解質層27と、絶縁層28と、アノード29とを有している。
【0016】
基板21は、例えば、単結晶シリコンにより形成されている。基板21には、キャビティ21aが形成されている。キャビティ21aは、厚さ方向に沿って基板21を貫通している。絶縁層22は、基板21上に配置されている。キャビティ21a上にある絶縁層22の部分を、絶縁層22のメンブレン部ということがある。
【0017】
絶縁層22は、第1層22aと、第2層22bと、第3層22cと、第4層22dとを有している。第1層22a、第3層22c及び第4層22dは、例えばシリコン酸化物により形成されている。第2層22bは、例えばシリコン窒化物により形成されている。第1層22aは、基板21上に配置されている。第2層22bは、第1層22a上に配置されている。第3層22cは、第2層22b上に配置されている。第4層22dは、第3層22c上に配置されている。
【0018】
絶縁層22は、第5層22eと、第6層22fとをさらに有している。第5層22eはシリコン窒化物により形成されており、第6層22fはシリコン酸化物により形成されている。第5層22eは第4層22d上に配置されており、第6層22fは第5層22e上に配置されている。
【0019】
配線23は、例えば、白金により形成されている。配線23は、絶縁層23内に配置されている。より具体的には、配線23は、第3層22c上に配置されており、かつ第4層22dに覆われている。配線23の周囲は、密着層23aに覆われている。密着層23aは、例えばチタン酸化物により形成されている。これにより、配線23と絶縁層22(第3層22c及び第4層22d)との間の密着性が確保されている。
【0020】
配線23は、ヒータ部23bを有している。ヒータ部23bは、絶縁層22のメンブレン部内に配置されている。ヒータ部23bを構成している配線23の部分は、平面視において、蛇行している。配線23に電流が流れることによりヒータ部23bが抵抗発熱し、固体電解質層27が加熱される。
【0021】
配線24は、例えば、白金により形成されている。配線24は、絶縁層23内に配置されている。より具体的には、配線24は、第5層22e上に配置されており、かつ第6層22fに覆われている。配線24の周囲は、密着層24aに覆われている。密着層24aは、例えばチタン酸化物により形成されている。これにより、配線24と絶縁層22(第5層22e及び第6層22f)との間の密着性が確保されている。
【0022】
配線24は、温度センサ部24bを有している。温度センサ部24bを構成している配線24の部分は、平面視において、蛇行している。温度センサ部24bは、平面視において、ヒータ部23bと重なる位置にある。温度センサ部24bは、測温抵抗体として機能する。すなわち、温度センサ部24bを構成している配線24の電気抵抗値の変化を測定することにより、温度センサ部24b近傍の温度が測定される。
【0023】
多孔質酸化物層25は、絶縁層22のメンブレン部上に配置されている。多孔質酸化物層25は、例えば、タンタル酸化物により形成されている。多孔質酸化物層25は、多孔質であるため、検知対象ガスが流れる流路となる。
【0024】
カソード26は、多孔質金属により形成されている層である。カソード26は、例えば白金により形成されている。カソード26は、多孔質酸化物層25上に配置されている。固体電解質層27は、酸素イオン伝導体により形成されている。酸素イオン伝導体の具体例としては、イットリア安定化ジルコニアが挙げられる。なお、イットリア安定化ジルコニアは、500℃程度に加熱されることにより、酸素イオン伝導性を発現する。固体電解質層27は、カソード26上に配置されている。
【0025】
絶縁層28は、例えば、シリコン酸化物により形成されている層とタンタル酸化物により形成されている層とがスタックされている層である。絶縁層28は、多孔質酸化物層25、カソード26及び固体電解質層27を覆うように、絶縁層22上に配置されている。絶縁層28には、固体電解質層27を露出させている開口が形成されている。
【0026】
絶縁層28の開口から露出している固体電解質層27の部分上には、アノード29が配置されている。アノード29は、多孔質金属により形成されている層である。アノード29は、例えば白金により形成されている。
【0027】
検知対象ガス中の二酸化炭素ガスは、多孔質酸化物層25を通ってカソード26に達すると、カソード26から電子を受け取ることにより、酸素イオンとなる。この酸素イオンは、カソード26とアノード29との間の電圧により、固体電解質層27を通ってアノード29に移動する。アノード29に移動した酸素イオンは、アノード29に電子を放出することにより、酸素ガスとなる。
【0028】
この反応に伴ってカソード26とアノード29との間に流れる電流は、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度に比例する。そのため、カソード26とアノード29との間に流れる電流を検知することにより、第1素子20は、検知対象ガス中の二酸化炭素濃度を検知することができる。
【0029】
上記の反応が生じるカソード26とアノード29との間の電圧の最小値を、第1電圧とする。カソード26とアノード29との間には、第1電圧以上の電圧が印加される。カソード26及びアノード29が白金により形成されている場合、第1電圧は、2.2ボルト程度である。
【0030】
図3は、第1素子20の製造方法を示す工程図である。図3に示されるように、第1素子20は、準備工程S1と、第1絶縁層形成工程S2と、第1配線形成工程S3と、第2絶縁層形成工程S4、第2配線形成工程S5、第3絶縁層形成工程S6、多孔質酸化物層形成工程S7と、カソード形成工程S8と、固体電解質層形成工程S9と、パターンニング工程S10と、第4絶縁層形成工程S11と、アノード形成工程S12と、キャビティ形成工程S13とにより形成されている。
【0031】
準備工程S1では、基板21が準備される。準備工程S1において準備される基板21には、キャビティ21aが形成されていない。図4Aは、第1絶縁層形成工程S2を説明するための断面図である。図4Aに示されるように、第1絶縁層形成工程S2では、第1層22a、第2層22b及び第3層22cが順次形成される。第1層22a、第2層22b及び第3層22cの形成は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて行われる。
【0032】
図4Bは、第1配線形成工程S3を説明するための断面図である。図4Bに示されるように、第1配線形成工程S3では、配線23及び密着層23aが形成される。第3層22c上にある密着層23aの部分を第1部分23aaとし、配線23を覆っている密着層23aの部分を第2部分23abとする。第1配線形成工程S3では、第1に、第1部分23aaの形成が行われる。第1部分23aaは、密着層23aの構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えば、スパッタリングにより行われる。このパターンニングは、フォトリソグラフィを用いたマスク形成及び当該マスクを用いたエッチングにより行われる。
【0033】
第1配線形成工程S3では、第2に、配線23の形成が行われる。配線23は、配線23の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、フォトリソグラフィを用いたマスク形成及び当該マスクを用いたエッチングにより行われる。
【0034】
第1配線形成工程S3では、第3に、第2部分23abの形成が行われる。第2部分23abは、第2部分23abの構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、フォトリソグラフィを用いたマスク形成及び当該マスクを用いたエッチングにより行われる。
【0035】
図4Cは、第2絶縁層形成工程S4を説明するための断面図である。図4Cに示されるように、第2絶縁層形成工程S4では、例えばCVD法を用いて、第4層22dが形成される。図4Dは、第2配線形成工程S5を説明するための断面図である。図4Dに示されるように、第2配線形成工程S5では、配線24が形成される。配線24の形成方法は、配線23の形成方法と同様である。図4Eは、第3絶縁層形成工程S6を説明するための断面図である。図4Eに示されるように、第3絶縁層形成工程S6では、第5層22e及び第6層22fが、例えばCVD法を用いて順次形成される。
【0036】
図4Fは、多孔質酸化物層形成工程S7及びカソード形成工程S8を説明するための断面図である。図4Fに示されるように、多孔質酸化物層形成工程S7では多孔質酸化物層25が形成され、カソード形成工程S8ではカソード26が形成される。多孔質酸化物層25及びカソード26は、例えばスパッタリングより形成される。
【0037】
図4Gは、固体電解質層形成工程S9を説明するための断面図である。図4Gに示されるように、固体電解質層形成工程S9では、固体電解質層27が形成される。固体電解質層27は、固体電解質層27の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばドライエッチングにより行われる。図4Hは、パターンニング工程S10を説明するための断面図である。図4Hに示されるように、パターンニング工程S10では、多孔質酸化物層25及びカソード26のパターンニングが行われる。このパターンニングは、例えばドライエッチングにより行われる。
【0038】
図4Iは、第4絶縁層形成工程S11を説明するための断面図である。図4Iに示されるように、第4絶縁層形成工程S11では、絶縁層28が形成される。絶縁層28の形成は、例えばスパッタリングにより行われる。なお、絶縁層28には、エッチングが行われることにより、固体電解質層27を部分的に露出させる開口が形成される。図4Jは、アノード形成工程S12を説明するための断面図である。図4Jに示されるように、アノード形成工程S12では、アノード29が形成される。アノード29は、アノード29の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばドライエッチングにより行われる。
【0039】
キャビティ形成工程S13では、例えばウェットエッチングにより、キャビティ21aが形成される。以上により、図2に示される構造の第1素子20が形成される。
【0040】
図5は、第2素子30の断面図である。図5に示されるように、第2素子30は、基板31と、絶縁層32と、配線33と、多孔質酸化物層34と、アノード35と、固体電解質層36と、絶縁層37と、カソード38とを有している。
【0041】
基板31は、例えば、単結晶シリコンにより形成されている。基板31には、キャビティ31aが形成されている。キャビティ31aは、厚さ方向に沿って基板31を貫通している。絶縁層32は、基板31上に配置されている。キャビティ31a上にある絶縁層32の部分を、絶縁層32のメンブレン部ということがある。
【0042】
絶縁層32は、第1層32aと、第2層32bと、第3層32cと、第4層32dとを有している。第1層32a、第3層32c及び第4層32dは、例えばシリコン酸化物により形成されている。第2層32bは、例えばシリコン窒化物により形成されている。第1層32aは、基板31上に配置されている。第2層32bは、第1層32a上に配置されている。第3層32cは、第2層32b上に配置されている。第4層32dは、第3層32c上に配置されている。
【0043】
絶縁層32は、第5層32eと、第6層32fとをさらに有している。第5層32eはシリコン窒化物により形成されており、第6層32fはシリコン酸化物により形成されている。第5層32eは第4層32d上に配置されており、第6層32fは第5層32e上に配置されている。絶縁層32のメンブレン部には、貫通穴32gが形成されている。貫通穴32gは、キャビティ31aに連通している。貫通穴32gは、例えば、キャビティ31a側に近づくにつれて内径が小さくなるテーパ状に形成されている。
【0044】
配線33は、例えば、白金により形成されている。配線33は、絶縁層33内に配置されている。より具体的には、配線33は、第3層32c上に配置されており、かつ第4層32dに覆われている。配線33の周囲は、密着層33aに覆われている。密着層33aは、例えばチタン酸化物により形成されている。これにより、配線33と絶縁層32(第3層32c及び第4層32d)との間の密着性が確保されている。
【0045】
配線33は、ヒータ部33bを有している。ヒータ部33bは、絶縁層32のメンブレン部内に配置されている。ヒータ部33bを構成している配線33の部分は、貫通穴32gの周囲に配置されている。
【0046】
多孔質酸化物層34は、絶縁層32のメンブレン部上に配置されている。多孔質酸化物層34は、例えば、タンタル酸化物により形成されている。アノード35は、多孔質金属により形成されている層である。アノード35は、例えば白金により形成されている。アノード35は、多孔質酸化物層34上に配置されている。固体電解質層36は、酸素イオン伝導体により形成されている。酸素イオン伝導体の具体例としては、イットリア安定化ジルコニアが挙げられる。固体電解質層36は、アノード35上に配置されている。
【0047】
絶縁層37は、例えば、シリコン酸化物により形成されている層とタンタル酸化物により形成されている層とがスタックされている層である。絶縁層37は、多孔質酸化物層34、アノード35及び固体電解質層36を覆っている。絶縁層37には、固体電解質層36を露出させている開口が形成されている。絶縁層37の開口から露出している固体電解質層36の部分上には、カソード38が配置されている。カソード38は、多孔質金属により形成されている層である。カソード38は、例えば白金により形成されている。
【0048】
多孔質酸化物層34、アノード35、固体電解質層36、絶縁層37及びカソード38は、貫通穴32g内に配置されている。多孔質酸化物層34は、キャビティ31aに対して露出している。
【0049】
検知対象ガス中の水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物ガスは、カソード38から電子を受け取ることにより、酸素イオンとなる。この酸素イオンは、カソード38とアノード35との間の電圧により、固体電解質層36を通ってアノード35に移動する。アノード35に移動した酸素イオンは、アノード35に電子を放出することにより、酸素ガスとなる。
【0050】
なお、検知対象ガス中の水蒸気から酸素イオンが生成される際に、カソード38において水素ガスが発生する。また、検知対象ガス中の窒素酸化物から酸素イオンが生成される際に、カソード38において窒素ガスが発生する。
【0051】
上記の反応が生じるカソード38とアノード35との間の電圧の最小値を、第2電圧とする。カソード38とアノード35との間には、第2電圧以上の電圧が印加される。しかしながら、カソード38において検知対象ガス中の二酸化炭素ガスから酸素イオンを生成しないようにするため、カソード38とアノード35との間の電圧は、第1電圧未満とされる。なお、カソード38及びアノード35が白金により形成されている場合、第2電圧は、1.2ボルト程度である。
【0052】
図6は、第2素子30の製造方法を示す工程図である。図6に示されるように、第2素子30は、準備工程S14、第1絶縁層形成工程S15、配線形成工程S16、第2絶縁層形成工程S17、貫通穴形成工程S18、多孔質酸化物層形成工程S19、アノード形成工程S20、固体電解質層形成工程S21、パターンニング工程S22、第3絶縁層形成工程S23、カソード形成工程S24及びキャビティ形成工程S25により形成されている。
【0053】
準備工程S14では、基板31が準備される。準備工程S14において準備される基板31には、キャビティ31aが形成されていない。
【0054】
図7Aは、第1絶縁層形成工程S15を説明するための断面図である。図7Aに示されるように、第1絶縁層形成工程S2では、第1層32a、第2層32b及び第3層32cが順次形成される。第1層32a、第2層32b及び第3層32cの形成方法は、第1層22a、第2層22b及び第3層22cの形成方法と同様である。
【0055】
図7Bは、配線形成工程S16を説明するための断面図である。図7Bに示されるように、配線形成工程S16では、配線33及び密着層33aが形成される。配線33及び密着層33aの形成方法は、配線23及び密着層23aの形成方法と同様である。
【0056】
図7Cは、第2絶縁層形成工程S17を説明するための断面図である。図7Cに示されるように、第2絶縁層形成工程S17では、第4層32d、第5層32e及び第6層32fが形成される。第4層32d、第5層32e及び第6層32fの形成方法は、第4層22d、第5層22e及び第6層22fの形成方法と同様である。
【0057】
図7Dは、貫通穴形成工程S18を説明するための断面図である。図7Dに示されるように、貫通穴形成工程S18では、貫通穴32gが形成される。貫通穴32gの形成は、例えばドライエッチングにより行われる。図7Eは、多孔質酸化物層形成工程S19及びアノード形成工程S20を説明するための断面図である。図7Eに示されるように、多孔質酸化物層形成工程S19では多孔質酸化物層34が形成され、アノード形成工程S20ではアノード35が形成される。多孔質酸化物層34及びアノード35の形成方法は、多孔質酸化物層25及びカソード26の形成方法と同様である。
【0058】
図7Fは、固体電解質層形成工程S21を説明するための断面図である。図7Fに示されるように、固体電解質層形成工程S21では、固体電解質層36が形成される。固体電解質層36の形成方法は、固体電解質層27の形成方法と同様である。図7Gは、パターンニング工程S22を説明するための断面図である。図7Gに示されるように、パターンニング工程S22では、多孔質酸化物層34及びアノード35のパターンニングが行われる。パターンニング工程S22は、パターンニング工程S10と同様の方法により行われる。
【0059】
図7Hは、第3絶縁層形成工程S23を説明するための断面図である。図7Hに示されるように、第3絶縁層形成工程S23では、絶縁層37が形成される。絶縁層37の形成方法は、絶縁層28の形成方法と同様である。なお、絶縁層37には、エッチングが行われることにより、固体電解質層36を部分的に露出させる開口が形成される。図7Iは、カソード形成工程S24を説明するための断面図である。図7Iに示されるように、カソード形成工程S24では、カソード38が形成される。カソード38の形成方法は、アノード29の形成方法と同様である。
【0060】
キャビティ形成工程S25では、キャビティ31aが形成される。キャビティ31aの形成方法は、キャビティ21aの形成方法と同様である。以上により、図5に示される構造の第2素子30が形成される。
【0061】
第1素子20は、カソード26が流路10内にあるように配置されている。なお、アノード29は、流路10内に位置していてもよく、流路10外に位置していてもよい。第2素子30は、カソード38が流路10内にあるとともに、アノード35が流路10外にあるように配置されている。
【0062】
<二酸化炭素ガスセンサ100の効果>
以下に、二酸化炭素ガスセンサ100の効果を説明する。
【0063】
上記のとおり、第2素子30は、カソード38が流路10内にあるとともに、アノード35が流路10外にあるように配置されている。検知対象ガス中の水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物ガスは、カソード38において分解される。また、アノード35は流路10外に配置されているため、アノード35において発生する酸素ガスは、第1素子20に到達する検知対象ガス中の酸素ガスの濃度を増加させない。
【0064】
そのため、第1素子20に到達した検知対象ガス中の水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物ガスの濃度は、入口11から導入された際と比較して、低下している。このように、第1素子20は、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度を検知する際に検知対象ガス中の水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物の影響を受けにくくなるため、二酸化炭素ガスセンサ100の二酸化炭素ガスに対するガス選択性が改善される。
【0065】
二酸化炭素ガスセンサ100が複数の第2素子30を有している場合、第1素子20に到達した検知対象ガス中の水蒸気、酸素ガス及び窒素酸化物ガスの濃度をさらに低下させることが可能であるため、二酸化炭素ガスセンサ100の二酸化炭素ガスに対するガス選択性がさらに改善される。
【0066】
<変形例>
上記においては、カソード26及びアノード29の間に第1電圧以上の電圧を印加した際にカソード26及びアノード29の間に流れる電流を検知することにより、第1素子20が検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度を検知する例を説明した。
【0067】
カソード26及びアノード29の間に第2電圧以上第1電圧未満の電圧を印加した際にカソード26及びアノード29の間に流れる電流(第1電流)とカソード26及びアノード29の間に第1電圧以上の電圧を印加した際にカソード26及びアノード29の間に流れる電流(第2電流)との差は、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度に比例する。そのため、第1素子20は、第1電流と第2電流との差に基づいて、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度を検知してもよい。また、感度向上のため、第1電流と第2電流との差を積算することにより、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度が検知されてもよい。
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る二酸化炭素ガスセンサ(以下「二酸化炭素ガスセンサ100A」とする)を説明する。ここでは、二酸化炭素ガスセンサ100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0069】
図8は、二酸化炭素ガスセンサ100Aの模式図である。図8に示されるように、二酸化炭素ガスセンサ100Aは、流路10と、第1素子20と、複数の第2素子30とを有している。この点に関して、二酸化炭素ガスセンサ100Aの構成は、二酸化炭素ガスセンサ100の構成と共通している。二酸化炭素ガスセンサ100Aでは、第1素子20の詳細が、二酸化炭素ガスセンサ100と異なっている。この点に関して、二酸化炭素ガスセンサ100Aの構成は、二酸化炭素ガスセンサ100の構成と異なっている。
【0070】
図9は、二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20の拡大平面図である。図9中では、カソード26、固体電解質層27、絶縁層28及びアノード29の図示が省略されている。図10は、二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20の断面図である。図9及び図10に示されるように、二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20では、多孔質酸化物層25が、櫛歯部25aを有している。櫛歯部25aは、平面視において櫛歯形状になっている。櫛歯部25aの側面上からは、絶縁層28が除去されている。
【0071】
二酸化炭素ガスセンサ100に用いられている第1素子20では、多孔質酸化物層25の側面が絶縁層28により覆われている。そのため、二酸化炭素ガスセンサ100に用いられている第1素子20では、多孔質酸化物層25を通ってカソード26に到達する検知対象ガスの流量が制限されており、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度が高い場合に有利である。
【0072】
他方で、二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20では、櫛歯部25aの側面上から絶縁層28が除去されている。そのため、二酸化炭素ガスセンサ100Aに用いられている第1素子20では、多孔質酸化物層25を通ってカソード26に到達する検知対象ガスの流量が制限されにくく、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度が低い場合の感度向上に有利である。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る二酸化炭素ガスセンサ(以下「二酸化炭素ガスセンサ100B」とする)を説明する。ここでは、二酸化炭素ガスセンサ100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0074】
図11は、二酸化炭素ガスセンサ100Bの模式図である。図11に示されるように、二酸化炭素ガスセンサ100Bは、流路10と、複数の第2素子30とを有している。この点に関して、二酸化炭素ガスセンサ100Bの構成は、二酸化炭素ガスセンサ100の構成と共通している。
【0075】
二酸化炭素ガスセンサ100Bでは、第1素子20に代えて、第1素子40が用いられている。この点に関して、二酸化炭素ガスセンサ100Bの構成は、二酸化炭素ガスセンサ100の構成と異なっている。
【0076】
図12は、第1素子40の断面図である。図12に示されるように、第1素子40は、基板41と、絶縁層42と、配線43と、多孔質酸化物層44と、アノード45と、固体電解質層46と、絶縁層47と、カソード48とを有している。
【0077】
基板41は、例えば、単結晶シリコンにより形成されている。基板41には、キャビティ41aが形成されている。キャビティ41aは、厚さ方向に沿って基板41を貫通している。絶縁層42は、基板41上に配置されている。キャビティ41a上にある絶縁層42の部分を、絶縁層42のメンブレン部ということがある。
【0078】
絶縁層42は、第1層42aと、第2層42bと、第3層42cと、第4層42dとを有している。第1層42a、第3層42c及び第4層42dは、例えばシリコン酸化物により形成されている。第2層42bは、例えばシリコン窒化物により形成されている。第1層42aは、基板41上に配置されている。第2層42bは、第1層42a上に配置されている。第3層42cは、第2層42b上に配置されている。第4層42dは、第3層42c上に配置されている。
【0079】
絶縁層42は、第5層42eと、第6層42fとをさらに有している。第5層42eはシリコン窒化物により形成されており、第6層42fはシリコン酸化物により形成されている。第5層42eは第4層42d上に配置されており、第6層42fは第5層42e上に配置されている。絶縁層42のメンブレン部には、貫通穴42gが形成されている。貫通穴42gは、キャビティ41aに連通している。貫通穴42gは、例えば、キャビティ41a側に近づくにつれて内径が小さくなるテーパ状に形成されている。
【0080】
配線43は、例えば、白金により形成されている。配線43は、絶縁層43内に配置されている。より具体的には、配線43は、第3層42c上に配置されており、かつ第4層42dに覆われている。配線43の周囲は、密着層43aに覆われている。密着層43aは、例えばチタン酸化物により形成されている。これにより、配線43と絶縁層42(第3層42c及び第4層42d)との間の密着性が確保されている。
【0081】
配線43は、ヒータ部43bを有している。ヒータ部43bは、絶縁層42のメンブレン部内に配置されている。ヒータ部43bを構成している配線43の部分は、貫通穴42gの周囲に配置されている。
【0082】
多孔質酸化物層44は、絶縁層42のメンブレン部上に配置されている。多孔質酸化物層44は、例えば、タンタル酸化物により形成されている。アノード45は、多孔質金属により形成されている層である。アノード45は、例えば白金により形成されている。アノード45は、多孔質酸化物層44上に配置されている。固体電解質層46は、酸素イオン伝導体により形成されている。酸素イオン伝導体の具体例としては、イットリア安定化ジルコニアが挙げられる。固体電解質層46は、アノード45上に配置されている。
【0083】
絶縁層47は、例えば、シリコン酸化物により形成されている層とタンタル酸化物により形成されている層とがスタックされている層である。絶縁層47は、多孔質酸化物層44、アノード45及び固体電解質層46を覆っている。絶縁層47には、固体電解質層46を露出させている開口が形成されている。絶縁層47の開口から露出している固体電解質層46の部分上には、カソード48が配置されている。カソード48は、多孔質金属により形成されている層である。カソード48は、例えば白金により形成されている。
【0084】
多孔質酸化物層44、アノード45、固体電解質層46、絶縁層47及びカソード48は、貫通穴42g内に配置されている。多孔質酸化物層34は、キャビティ31aに対して露出している。すなわち、第1素子40は、第2素子30と同様の構成になっている。
【0085】
カソード48とアノード45との間に第1電圧以上の電圧が印加されている際、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスは、カソード48から電子を受け取ることにより、酸素イオンとなる。この酸素イオンは、カソード48とアノード45との間の電圧により、固体電解質層46を通ってアノード45に移動する。アノード45に移動した酸素イオンは、アノード35に電子を放出することにより、酸素ガスとなる。
【0086】
この反応に伴ってカソード48とアノード45との間に流れる電流は、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度に比例する。そのため、カソード48とアノード45との間に流れる電流を検知することにより、第1素子40は、検知対象ガス中の二酸化炭素濃度を検知することができる。第1素子40ではカソード48に到達する検知対象ガスの流量が制限されにくいため、二酸化炭素ガスセンサ100Bによると、検知対象ガス中の二酸化炭素ガスの濃度が高い場合の感度が改善される。
【0087】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0088】
10 流路、11 入口、20 第1素子、21 基板、21a キャビティ、22 絶縁層、22a 第1層、22b 第2層、22c 第3層、22d 第4層、22e 第5層、22f 第6層、23 配線、23a 密着層、23aa 第1部分、23ab 第2部分、23b ヒータ部、24 配線、24a 密着層、24b 温度センサ部、25 多孔質酸化物層、25a 櫛歯部、26 カソード、27 固体電解質層、28 絶縁層、29 アノード、30 第2素子、31 基板、31a キャビティ、32 絶縁層、32a 第1層、32b 第2層、32c 第3層、32d 第4層、32e 第5層、32f 第6層、32g 貫通穴、33 配線、33a 密着層、33b ヒータ部、34 多孔質酸化物層、35 アノード、36 固体電解質層、37 絶縁層、38 カソード、40 第2素子、41 基板、41a キャビティ、42 絶縁層、42a 第1層、42b 第2層、42c 第4層、42d 第4層、42e 第5層、42f 第6層、42g 貫通穴、43 配線、43a 密着層、43b ヒータ部、44 多孔質酸化物層、45 アノード、46 固体電解質層、47 絶縁層、48 カソード、100,100A,100B 二酸化炭素ガスセンサ、S1 準備工程、S2 第1絶縁層形成工程、S3 第1配線形成工程、S4 第2絶縁層形成工程、S5 第2配線形成工程、S6 第3絶縁層形成工程、S7 多孔質酸化物層形成工程、S8 カソード形成工程、S9 固体電解質層形成工程、S10 パターンニング工程、S11 第4絶縁層形成工程、S12 アノード形成工程、S13 キャビティ形成工程、S14 準備工程、S15 第1絶縁層形成工程、S16 配線形成工程、S17 第2絶縁層形成工程、S18 貫通穴形成工程、S19 多孔質酸化物層形成工程、S20 アノード形成工程、S21 固体電解質層形成工程、S22 パターンニング工程、S23 第3絶縁層形成工程、S24 カソード形成工程、S25 キャビティ形成工程。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図8
図9
図10
図11
図12