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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181929
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】動力発生装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/00 20060101AFI20221201BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F01K25/00 E
F01K25/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089162
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BB00
3G081BD00
(57)【要約】
【課題】半透膜の温度を容易に低下可能であって、長期間に渡って安定的に稼働可能な動力発生装置を提供する。
【解決手段】実施形態の動力発生装置において、凝縮器は、タービンから排気された蒸気を溶媒に凝縮させる。溶液ドラムは、凝縮器で凝縮された溶媒を収容する溶媒収容部、および、溶液を収容する溶液収容部を含み、溶媒収容部に収容された溶媒が、半透膜を介して、溶液収容部に収容された溶液と接する。混合ドラムは、溶液ドラムにおいて溶液収容部から供給された溶液、および、気液分離器で分離された溶液が混合され、混合ドラムで混合された溶液が蒸発器へ流れると共に溶液収容部へ流れる。中間熱交換器は、混合ドラムから蒸発器へ流れる溶液と、気液分離器から混合ドラムへ流れる溶液との間の熱交換が実行される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒に溶質が溶解している溶液を加熱することによって、前記溶媒の蒸気および前記溶液を含む二相流媒体を排出する蒸発器と、
前記蒸発器から排出された前記二相流媒体を前記蒸気と前記溶液とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された前記蒸気が作動媒体として流入することによって駆動するタービンと、
前記タービンから排気された前記蒸気を前記溶媒に凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された前記溶媒を収容する溶媒収容部、および、前記溶液を収容する溶液収容部を含み、前記溶媒収容部に収容された前記溶媒が、半透膜を介して、前記溶液収容部に収容された前記溶液へ接する溶液ドラムと、
前記溶液ドラムにおいて前記溶液収容部から供給された前記溶液、および、前記気液分離器で分離された前記溶液が混合される混合ドラムと
を有し、前記混合ドラムで混合された前記溶液が前記蒸発器へ流れると共に前記溶液収容部へ流れるように構成された動力発生装置であって、
前記混合ドラムから前記蒸発器へ流れる前記溶液と、前記気液分離器から前記混合ドラムへ流れる前記溶液との間の熱交換が実行される中間熱交換器
を有する、
動力発生装置。
【請求項2】
前記溶液ドラムは、前記溶液収容部において前記溶液が鉛直方向に沿って流れるように構成されている、
請求項1に記載の動力発生装置。
【請求項3】
前記混合ドラムから前記溶液収容部へ流れる前記溶液の流量を調整するための流量調整部
を有する、
請求項2に記載の動力発生装置。
【請求項4】
前記半透膜の温度を計測する半透膜温度計測部
を有し、
前記流量調整部は、
流量制御弁
を含み、
前記半透膜温度計測部で計測された温度に基づいて、前記流量制御弁の開度を制御するように構成されている、
請求項3に記載の動力発生装置。
【請求項5】
前記溶媒収容部は、
前記溶媒が前記溶媒収容部に流入する溶媒流入口と、
前記溶媒収容部から前記溶媒が流出する溶媒流出口と
を含み、
前記溶媒が前記溶媒流出口から前記溶媒流入口へ戻るように構成されている、
請求項1から4のいずれかに記載の動力発生装置。
【請求項6】
前記混合ドラムから前記溶液収容部へ流れる前記溶液と、前記溶媒収容部へ流れる前記溶媒との間の熱交換が実行される溶液ドラム前熱交換器
を有する、
請求項5に記載の動力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、動力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル機関を構成する動力発生装置では、たとえば、蒸発器で発生した水蒸気が作動媒体としてタービンに供給されることによってエネルギーが取り出される。そして、この動力発生装置では、タービンから排気された水蒸気が凝縮器で水へ凝縮され、その凝縮器で凝縮された水が昇圧されて蒸発器へ戻される。凝縮器で凝縮された水の昇圧は、通常、動力ポンプを用いて行われる。動力ポンプの駆動に多くのエネルギーを要する場合には、エネルギー変換効率が低下する。
【0003】
そこで、動力ポンプに代えて、浸透圧を利用して水の昇圧を行うことが提案されている。浸透圧は、たとえば、溶液ドラムにおいて、水である溶媒が、半透膜を介して、溶質である塩化ナトリウムが水に溶解した溶液へ浸透するときに生ずる。
【0004】
半透膜は、通常、使用温度の上限が低く、使用温度の上限を超える高温状態になった場合には、性能が劣化する場合がある。たとえば、溶媒が溶液へ浸透する浸透速度と熱拡散の関係に応じて、溶液ドラムにおいて溶液の流れが乱流状態になった場合には、溶液の温度に起因して、半透膜の温度が上昇し、長期間、安定的に動力発生装置を稼働することが困難になる場合がある。そこで、冷却を実施することによって、溶液ドラムにおける溶液の温度を低下させて半透膜が高温状態になることを抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57-73809号公報
【特許文献2】特許第6656515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半透膜の温度を低下するための冷却は、たとえば、外部へエネルギーを放出することで実施される。その結果、動力発生装置におけるエネルギー変換効率を向上させることが容易でない。
【0007】
上記のような事情により、半透膜を有する動力発生装置においては、エネルギー変換効率を低下させずに、半透膜の温度を低下させることが容易でなく、長期間に渡って、安定的に動力発生装置を稼働することが困難な場合がある。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、半透膜の温度を容易に低下可能であって、長期間に渡って安定的に稼働可能な動力発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の動力発生装置は、蒸発器と気液分離器とタービンと凝縮器と溶液ドラムと混合ドラムと中間熱交換器とを有する。蒸発器は、溶媒に溶質が溶解している溶液を加熱することによって、溶媒の蒸気および溶液を含む二相流媒体を排出する。気液分離器は、蒸発器から排出された二相流媒体を蒸気と溶液とに分離する。タービンは、気液分離器で分離された蒸気が作動媒体として流入することによって駆動する。凝縮器は、タービンから排気された蒸気を溶媒に凝縮させる。溶液ドラムは、凝縮器で凝縮された溶媒を収容する溶媒収容部、および、溶液を収容する溶液収容部を含み、溶媒収容部に収容された溶媒が、半透膜を介して、溶液収容部に収容された溶液と接する。混合ドラムは、溶液ドラムにおいて溶液収容部から供給された溶液、および、気液分離器で分離された溶液が混合され、混合ドラムで混合された溶液が蒸発器へ流れると共に溶液収容部へ流れる。中間熱交換器は、混合ドラムから蒸発器へ流れる溶液と、気液分離器から混合ドラムへ流れる溶液との間の熱交換が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、第1実施形態にかかる動力発生装置1を模式的に示す図である。
図1B図1Bは、第1実施形態にかかる動力発生装置1の要部を模式的に示す図である。
図2A図2Aは、第2実施形態にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。
図2B図2Bは、第2実施形態の変形例にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。
図3図3は、第3実施形態にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。
図4図4は、第4実施形態にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
[A]構成等
図1Aおよび図1Bは、第1実施形態にかかる動力発生装置1を模式的に示す図である。図1Aは、動力発生装置1の全体を示している。図1Bは、動力発生装置1の一部を示しており、縦方向が鉛直方向z(重力方向)に相当する。
【0012】
本実施形態の動力発生装置1は、図1Aに示すように、蒸発器10と気液分離器20とタービン30と凝縮器40と溶液ドラム50と混合ドラム60と中間熱交換器70とを有する。動力発生装置1を構成する各部について順次説明する。
【0013】
蒸発器10は、溶媒(たとえば、水)に溶質(たとえば、塩化ナトリウム、ホウ酸)が溶解している溶液(たとえば、塩化ナトリウム水溶液、ホウ酸水溶液)を加熱することによって、溶媒の蒸気および溶液を含む二相流媒体を排出するために設けられている。ここでは、流路B70aを介して、中間熱交換器70から蒸発器10に溶液が流れる。そして、蒸発器10において溶液が加熱されることで得られた二相流媒体は、流路T10を介して、蒸発器10から気液分離器20へ流れる。
【0014】
気液分離器20は、蒸発器10から排出された二相流媒体を蒸気と溶液とに分離するために設けられている。ここでは、気液分離器20で分離された蒸気は、流路G20を介して、タービン30へ流れる。これに対して、気液分離器20で分離された溶液は、流路B20を介して、中間熱交換器70へ流れる。気液分離器20で分離された溶液は、蒸発器10で加熱した溶液よりも濃度が高い状態になる。
【0015】
タービン30は、気液分離器20で分離された蒸気が作動媒体として流入することによって駆動するように構成されている。タービン30に作動媒体として流入した蒸気は、タービン30の内部において膨張して仕事を行うことで、タービン30の回転軸を回転させる。タービン30の回転軸が回転するに伴って、タービン30の回転軸に連結された発電機31の回転軸が回転し、発電機31において発電が行われる。タービン30から排気された蒸気は、流路G20を介して、凝縮器40へ流れる。
【0016】
凝縮器40は、タービン30から排気された蒸気を溶媒に凝縮させるために設けられている。ここでは、図1Aに示すように、凝縮器40で凝縮された溶媒は、流路L40を介して、溶液ドラム50へ流れる。
【0017】
溶液ドラム50は、半透膜54を介して溶媒収容部51と溶液収容部52とに内部空間が区画されている。溶液ドラム50において、溶媒収容部51は、凝縮器40で凝縮された溶媒を収容する。そして、溶液収容部52は、流路B60bを介して、混合ドラム60から供給された溶液を収容する。
【0018】
溶液ドラム50では、溶媒収容部51に収容された溶媒が半透膜54を介して溶液収容部52に収容された溶液と接することによって、浸透圧が生ずる。その結果、溶媒収容部51の収容された溶媒が溶液収容部52へ浸透し、浸透した溶媒と共に溶液収容部52で収容された溶液は、流路B52を介して、混合ドラム60へ排出される。ここでは、図1Bに示すように、溶液収容部52において、溶液は、鉛直方向zに沿って下方から上方へ流れる。
【0019】
なお、混合ドラム60から溶液収容部52に供給された溶液には、溶媒収容部51に収容された溶媒が半透膜54を介して接するため、溶液収容部52から混合ドラム60へ排出される溶液の濃度は、混合ドラム60から溶液収容部52に供給される溶液の濃度よりも低い状態になる。このため、溶液の濃度差に起因して、溶液は、混合ドラム60から流路B60bを介して溶液収容部52に流れた後に、溶液収容部52から流路B52bを介して混合ドラム60へ戻るように自然に循環する。
【0020】
混合ドラム60(下部ドラム)は、溶液ドラム50の溶液収容部52から溶液が、流路B52を介して供給されるように構成されている。また、混合ドラム60は、気液分離器20で分離された溶液が、流路B20と中間熱交換器70と流路B70bとを順次経由して供給されるように構成されている。
【0021】
溶液ドラム50の溶液収容部52から供給された低濃度の溶液、および、気液分離器20から供給された高濃度の溶液は、混合ドラム60において混合される。混合ドラム60で混合された溶液は、流路B60bを介して、溶液ドラム50の溶液収容部52へ流れる。これと共に、混合ドラム60で混合された溶液は、流路B60aと中間熱交換器70と流路B70aとを順次経由して、蒸発器10へ流れる。
【0022】
中間熱交換器70は、混合ドラム60から溶液が流路B60aを介して流入し、その流入した溶液が流路B70aを介して蒸発器10へ流出するように構成されている。また、中間熱交換器70は、気液分離器20から溶液が流路B20を介して流入し、その流入した溶液が流路B70bを介して混合ドラム60へ流出するように構成されている。
【0023】
そして、中間熱交換器70では、混合ドラム60から蒸発器10へ流れる溶液と、気液分離器20から混合ドラム60へ流れる溶液との間の熱交換が実行される。中間熱交換器70は、対向流式の熱交換器であって、混合ドラム60から蒸発器10へ流れる溶液の流れ方向と、気液分離器20から混合ドラム60へ流れる溶液の流れ方向とが、反対である。
【0024】
ここでは、混合ドラム60から中間熱交換器70に流入する溶液よりも、気液分離器20から中間熱交換器70に流入する溶液の方が、温度が高い。このため、中間熱交換器70では、上記の熱交換によって、混合ドラム60から蒸発器10へ流れる溶液は、温度が上昇し、気液分離器20から混合ドラム60へ流れる溶液は、温度が低下する。
【0025】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の動力発生装置1においては、混合ドラム60から蒸発器10へ流れる溶液と、気液分離器20から混合ドラム60へ流れる溶液との間の熱交換が中間熱交換器70で実行される。中間熱交換器70での熱交換によって、気液分離器20から混合ドラム60へ流れる溶液は、温度が低下する。これに伴って、混合ドラム60から溶液ドラム50の溶液収容部52へ供給される溶液の温度も低下する。
【0026】
その結果、本実施形態では、動力発生装置1に外部へエネルギーを放出させずに、溶液ドラム50において溶媒収容部51と溶液収容部52との間に介在する半透膜54の温度を低下可能である。したがって、本実施形態の動力発生装置1は、長期間に渡って安定的に稼働可能である。
【0027】
<第2実施形態>
[A]構成等
図2Aは、第2実施形態にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。図2Aは、図1Bと同様に、動力発生装置の一部を示している。
【0028】
図2Aに示すように、本実施形態の動力発生装置は、第1実施形態の場合(図1B参照)と異なり、流量調整部80を有する。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0029】
本実施形態において、流量調整部80は、図2Aに示すように、混合ドラム60から溶液ドラム50の溶液収容部52へ流れる溶液の流量を調整するために設けられている。流量調整部80は、たとえば、圧力損失を生じさせるオリフィスを含み、混合ドラム60と溶液ドラム50の溶液収容部52との間の流路B60aに設置されている。
【0030】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の動力発生装置においては、混合ドラム60から溶液収容部52へ流れる溶液の流量が流量調整部80で調整される。このため、本実施形態では、混合ドラム60から溶液収容部52へ流れる溶液の流量と溶液ドラム50において溶媒収容部51から溶液収容部52へ浸透する溶媒の流量との間の比率が制御可能である。
【0031】
その結果、本実施形態は、第1実施形態の効果に加えて、溶液ドラム50の溶液収容部52の温度を適正な値に調整することを容易に実現可能であって、長期間に渡って動力発生装置を安定的に稼働可能である。
【0032】
[C]変形例
図2Bは、第2実施形態の変形例にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。図2Bは、図2Aと同様に、動力発生装置の一部を示している。
【0033】
図2Bに示すように、流量調整部80は、流量制御弁V80を含むように構成されていてもよい。また、動力発生装置は、半透膜54の温度を計測する半透膜温度計測部82、および、半透膜温度計測部82で計測された温度に基づいて流量制御弁V80の開度を制御するための制御部84を備えていてもよい。
【0034】
制御部84は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うように構成されている。ここでは、制御部84は、半透膜温度計測部82で計測された温度が予め定めた値になるように流量制御弁V80の開度を制御する。
【0035】
具体的には、制御部84は、半透膜温度計測部82で計測された温度が予め定めた値を超えている場合には、たとえば、流量制御弁V80の開度を低下させる。これにより、混合ドラム60から溶液収容部52へ流れる溶液の流量に対する、溶液ドラム50において溶媒収容部51から溶液収容部52へ浸透する溶媒の流量の比率を増加させることで、半透膜温度計測部82で計測される温度を低下させる。
【0036】
これに対して、制御部84は、半透膜温度計測部82で計測された温度が予め定めた値よりも低い場合には、たとえば、流量制御弁V80の開度を増加させる。これにより、混合ドラム60から溶液収容部52へ流れる溶液の流量に対する、溶液ドラム50において溶媒収容部51から溶液収容部52へ浸透する溶媒の流量の比率を減少させることで、半透膜温度計測部82で計測される温度を上昇させる。
【0037】
なお、半透膜温度計測部82は、図2Bに示すように、たとえば、半透膜54において溶液収容部52の側に位置する面のうち、混合ドラム60から溶液が溶液収容部52へ流入する側に位置する部分の温度を計測するように設けることが好ましい。
【0038】
溶液ドラム50の溶媒収容部51は、凝縮器40で凝縮されて温度が低下した溶媒を収容するため、溶媒収容部51で収容する溶媒の温度は、溶液収容部52に収容された溶液の温度よりも低い。このため、半透膜54の温度は、溶液収容部52の側の方が溶媒収容部51よりも高い。また、溶液収容部52においては、混合ドラム60から溶液が流入する下側の温度が最も高く、上側へ向かうに伴って溶液収容部52に溶媒収容部51から溶媒が浸透する量が増加するので温度が低下する。それゆえ、図2Bに示すように、半透膜54において温度が最も高くなる上記部分の温度を半透膜温度計測部82が計測し、その半透膜温度計測部82で計測された温度に基づいて制御部84が流量制御弁V80の開度を制御することによって、半透膜54において温度が最も高くなる上記部分の温度を予め定めた値に制御可能である。
【0039】
<第3実施形態>
[A]構成等
図3は、第3実施形態にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。図3は、図1Bと同様に、動力発生装置の一部を示している。
【0040】
図3に示すように、本実施形態の動力発生装置は、溶液ドラム50の溶媒収容部51における溶媒の流れが、第1実施形態の場合(図1B参照)と異なっている。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0041】
溶液ドラム50の溶媒収容部51においては、図3に示すように、鉛直方向zにおいて下側部分に設けられた溶媒流入口511を介して、溶媒が溶媒収容部51に流入する。そして、溶液ドラム50の溶媒収容部51においては、鉛直方向zにおいて上側部分に設けられた溶媒流出口512を介して、溶媒が溶媒収容部51から流出する。溶媒流出口512から流出した溶媒は、凝縮器40から供給された溶媒と共に流路L51(溶媒循環流路)を流れることによって、溶媒流入口511へ戻る。
【0042】
[B]まとめ
上述したように、半透膜54の温度は、溶液収容部52の側よりも溶媒収容部51の側が低いが、溶液収容部52に収容された溶液の熱が、溶媒収容部51で収容する溶媒へ伝達するので、半透膜54において溶媒収容部51の側に位置する部分の温度が上昇する場合がある。
【0043】
しかしながら、本実施形態の溶液ドラム50の溶媒収容部51では、溶媒の温度上昇に伴って自然対流が生じ、溶媒流出口512から流出した溶媒が凝縮器40から供給された低温の溶媒と共に流路L51(溶媒循環流路)を流れることによって、溶媒流入口511へ戻る。
【0044】
その結果、本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、半透膜54において溶媒収容部51の側に位置する部分についても、温度の上昇を効果的に抑制可能であって、長期間に渡って動力発生装置を安定的に稼働可能である。
【0045】
<第4実施形態>
[A]構成等
図4は、第4実施形態にかかる動力発生装置の要部を模式的に示す図である。図4は、図3と同様に、動力発生装置の一部を示している。
【0046】
図4に示すように、本実施形態の動力発生装置は、第3実施形態の場合(図3参照)と異なり、溶液ドラム前熱交換器90を有する。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第3実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0047】
溶液ドラム前熱交換器90は、図4に示すように、混合ドラム60から溶液が流路B60bを介して流入し、その流入した溶液が流路B90bを介して溶液ドラム50の溶液収容部52へ流出するように構成されている。また、溶液ドラム前熱交換器90は、溶液ドラム50の溶媒収容部51から流出した溶媒および凝縮器40から流出した溶媒が、流路L51を介して流入し、その流入した溶媒が、流路B90aを介して、溶液ドラム50の溶媒収容部51へ流出するように構成されている。
【0048】
そして、溶液ドラム前熱交換器90では、溶液ドラム50の溶液収容部52へ流れる溶液と、溶媒収容部51へ流れる溶媒との間の熱交換が実行される。
【0049】
溶液ドラム前熱交換器90は、並流式の熱交換器であって、溶液ドラム50の溶液収容部52へ流れる溶液の流れ方向と、溶媒収容部51へ流れる溶媒の流れ方向とが同じである。
【0050】
ここでは、溶液ドラム前熱交換器90において溶液ドラム50の溶液収容部52へ流れる溶液の温度の方が、溶液ドラム前熱交換器90において溶媒収容部51へ流れる溶媒の温度よりも高い。このため、溶液ドラム前熱交換器90では、上記の熱交換によって、溶液ドラム50の溶液収容部52へ流れる溶液は、温度が低下し、溶媒収容部51へ流れる溶媒は、温度が上昇する。
【0051】
[B]まとめ
既に述べたように、溶液ドラム50の溶液収容部52においては、溶液が流入する下側の温度が最も高い。しかしながら、本実施形態では、上記したように、溶液ドラム前熱交換器90において温度が低下した溶液が、溶液ドラム50の下方から溶液収容部52に流入する。
【0052】
その結果、本実施形態では、第3実施形態の効果に加えて、半透膜54の温度上昇を効果的に抑制可能であって、長期間に渡って動力発生装置を安定的に稼働可能である。
【0053】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1:動力発生装置、10:蒸発器、20:気液分離器、30:タービン、31:発電機、40:凝縮器、50:溶液ドラム、51:溶媒収容部、52:溶液収容部、54:半透膜、60:混合ドラム、70:中間熱交換器、80:流量調整部、82:半透膜温度計測部、84:制御部、90:溶液ドラム前熱交換器、511:溶媒流入口、512:溶媒流出口、B20:流路、B52:流路、B52b:流路、B60a:流路、B60b:流路、B70a:流路、B70b:流路、B90a:流路、B90b:流路、G20:流路、L40:流路、L51:流路、T10:流路、V80:流量制御弁
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4