IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図2A
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図2B
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図3
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図4
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図5
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図6
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図7
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図8
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図9
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181938
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20221201BHJP
   G02B 30/27 20200101ALI20221201BHJP
   G02B 30/30 20200101ALI20221201BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221201BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20221201BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20221201BHJP
   H04N 13/366 20180101ALI20221201BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B30/27
G02B30/30
B60K35/00 A
H04N13/346
H04N13/363
H04N13/366
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089188
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 毅
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5C061
【Fターム(参考)】
2H199BA08
2H199BA09
2H199BA45
2H199BA49
2H199BB04
2H199BB08
2H199BB19
2H199BB52
2H199BB59
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA36
2H199DA48
3D344AA03
3D344AA08
3D344AA19
3D344AA21
3D344AA22
3D344AA27
3D344AC25
5C061AA06
5C061AA23
5C061AB12
5C061AB14
5C061AB16
5C061AB18
(57)【要約】
【課題】光源の高温化を抑制しつつ、乗員の視点位置に比較的大きい変化が生じうる場面においても、比較的高い輝度の画像を乗員が視認できる領域に出力する。
【解決手段】画像を表示する表示部と、表示部を制御する制御部と、を有し、制御部は、乗員の視点位置を検出する視点位置検出部と、視点位置検出部により検出された視点位置に基づいて、アイボックスの全領域のうちの、視点位置に応じた部分領域を照明領域として、表示部を介して画像に係る光を照射する発光制御部と、車両パラメータの値を取得するパラメータ取得部と、パラメータ取得部により取得された車両パラメータの値に基づいて、照明領域の大きさを変化させる領域サイズ変更部と、を備える、ヘッドアップディスプレイ装置が開示される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両情報を含む画像の虚像を前記車両の乗員に視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記画像を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
乗員の視点位置を検出する視点位置検出部と、
前記視点位置検出部により検出された前記視点位置に基づいて、アイボックスの全領域のうちの、前記視点位置に応じた部分領域を照明領域として、前記表示部を介して前記画像に係る光を照射する発光制御部と、
車両パラメータの値を取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部により取得された前記車両パラメータの値に基づいて、前記照明領域の大きさを変化させる領域サイズ変更部と、を備える、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御部は、更に、乗員により実行されうる各種操作イベントのうちの、前記視点位置が変化しうる特定操作イベントを検出又は予測するイベント処理部を備え、
前記領域サイズ変更部は、前記イベント処理部により前記特定操作イベントが検出又は予測された場合に、前記照明領域の大きさを増加する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記領域サイズ変更部は、前記イベント処理部により前記特定操作イベントが検出又は予測された場合に、前記照明領域がアイボックスの全領域に対応するように前記照明領域の大きさを最大化し、かつ、所定時間が経過するまで、最大化した前記照明領域の大きさを維持する、請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記特定操作イベントは、インストルメントパネル又はコンソールボックスに配置される操作部に対する操作イベントを含む、請求項2又は3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記車両は、自動運転モードと手動運転モードとを切替可能であり、
前記特定操作イベントは、自動運転モードから手動運転モードへの切替操作に係る操作イベントを含む、請求項2から4のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ(Head-up Display:HUD)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置において、アイボックスの全域を常時、照明(ライティング)すると無駄が多いため、省電力化の観点から、運転者の視点位置に応じて、アイボックスの一部の領域である部分領域を照明領域として光を照射する視点追従スポットライティング制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6586646号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アイボックスの全域を常時照明する構成の場合、省電力化の観点のみならず、発熱による光源の高温化の観点でも不利である。この点、上記のような視点追従スポットライティング制御は、光源の高温化を抑制できる点でも有利となる。
【0005】
しかしながら、乗員の視点位置の変化は多様な態様で発生しうるので、視点追従スポットライティング制御を精度良く実現することが難しい場面がありうる。特に、例えば、車両が自動運転から手動運転に切り替わるなど車両状態が切り替わる場合や、乗員が空調パネルや変速機などの車両操作を行う場合には、乗員の動作が伴うため、乗員の視点位置の変化が大きくなりやすい。かかる場合、視点位置の検出精度や、視点追従スポットライティング制御の追従精度や応答性が低下してしまう可能性があり、比較的高い輝度の画像(虚像)を乗員が視認できる領域(アイボックス内の領域)に出力できない虞がある。
【0006】
そこで、本開示は、光源の高温化を抑制しつつ、乗員の視点位置に比較的大きい変化が生じうる場面においても、比較的高い輝度の画像を乗員が視認できる領域に出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、車両に搭載され、車両情報を含む画像の虚像を前記車両の乗員に視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記画像を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
乗員の視点位置を検出する視点位置検出部と、
前記視点位置検出部により検出された前記視点位置に基づいて、アイボックスの全領域のうちの、前記視点位置に応じた部分領域を照明領域として、前記表示部を介して前記画像に係る光を照射する発光制御部と、
車両パラメータの値を取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部により取得された前記車両パラメータの値に基づいて、前記照明領域の大きさを変化させる領域サイズ変更部と、を備える、ヘッドアップディスプレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光源の高温化を抑制しつつ、乗員の視点位置に比較的大きい変化が生じうる場面においても、比較的高い輝度の画像を乗員が視認できる領域に出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施例によるヘッドアップディスプレイの車両搭載状態を車両側方視で概略的に示す図である。
図2A】(A)は、視点追従スポットライティング制御の概要、及び特定操作イベントの検出/予測時において照明領域の拡張を実施する機能を備えたHUD装置の主要な構成の一例を示す図、(B)は、特定操作イベントが検出された際の状態を示す図である。
図2B】特定操作イベントに伴い照明領域を拡張した状態を示す図である。
図3図3(A)、(B)は、HUD装置で使用されるアイボックスの構成例を示す図である。
図4図4(A)は、本実施例を適用した立体表示式(3D)HUD装置の構成例を示す図、図4(B)は、立体画像(虚像)を表示する原理を説明するための図である。
図5図5(A)は、時間経過に対する視点検出状態の推移(変化)を示す図、図5(B)~(F)は、特定操作イベントに伴う照明領域の拡張、及び縮小の様子を示す図である。
図6図6(A)~(H)は、照明領域の拡張と縮小の一例を示す図である。
図7図7(A)~(D)は、照明領域の縮小と拡張の一例を示す図である。
図8図8(A)、(B)は、視点位置の変化の他の例、及び、視点移動の推定又は予測による照明領域の拡張等を示す図である。
図9】照明領域の拡張、縮小を実施するHUD装置の動作例を示すフローチャートである。
図10図9の動作例に好適な照明領域の拡張と縮小の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施例によるHUD装置1の車両搭載状態を車両側方視で概略的に示す図である。
【0012】
HUD装置1では、図1に示すように、ウインドシールド2に表示光が照射されると、車両VCを運転する運転者にとっては、ウインドシールド2よりも前方に、当該照射によって得られた表示像(虚像)V(C)が見える。これにより、運転者は、前方風景と重畳させて虚像V(C)を視認できる。従って、運転者は、インストルメントパネル9内のメータを見る場合に比べて視点移動の少ない態様で車両情報等を把握でき、利便性及び安全性が向上する。なお、変形例では、ウインドシールド2に代えて、コンバイナ等が利用されてもよい。
【0013】
本実施例では、HUD装置1は、視点追従スポットライティング制御等を実行するように構成される。
【0014】
図2A(A)は、視点追従スポットライティング制御の概要、及び特定操作イベントの検出/予測時において照明領域の拡張を実施する機能を備えたHUD装置1の主要な構成の一例を示す図、図2A(B)は、特定操作イベントに伴う視点位置の変化が発生した状態を示す図である。
【0015】
図2A(A)に示されるHUD装置1では、アイボックスEBは、4つの部分領域Z10~Z13に分割されており、この部分領域を単位として、運転者(乗員)の目(視点)の位置を検出することが可能である。
【0016】
図2A(A)(及び(B))において、部分領域Z10~Z13の配列方向(紙面における左右方向)が、車両を運転している運転者から見た実空間におけるX方向(車両の幅方向)であり、紙面の垂線に沿う方向がY方向(車両の高さ方向)であり、Z方向は、車両の進行方向に沿う方向(前後方向又は奥行方向)である。なお、運転者から見た車両の外側の実空間は、図2A(A)、(B)で示すウインドシールド2よりも下側の空間である。
【0017】
HUD装置1は、制御部100と、表示部145と、反射光学系(集光光学系)150と、を有する。
【0018】
制御部100は、部分照明制御部110を有する。部分照明制御部110は、視点位置検出部112と、パラメータ取得部113と、イベント処理部114と、発光制御部116と、領域サイズ変更部118と、を有する。図中、S1aは、視点検出情報を示す。また、S2は、特定操作イベントが検出又は予測されたことを示す特定操作イベント報知情報(報知信号)を示す。
【0019】
なお、カメラ90は、人(運転者)の顔や瞳などを撮像する。撮像されて得られた情報S0は、視点位置検出部112に供給される。
【0020】
また、ECU(電子制御ユニット)160は、車載電子機器を集中的に管理する。このECU160には、車両情報、車両の周囲の情報(周囲情報)、後述する特定操作イベントの検出に用いる車両パラメータ情報が集められる。よって、ECU160は、各種の情報の収集部としての機能を有する。ECU160に集められた各種の情報は、パラメータ取得部113や発光制御部116に提供される。図2A(A)では、この提供される各種の情報をS3の符号にて示している。なお、ECU160の機能は、複数のECUにより実現されてもよい。また、ECU160の機能の一部又は全部は、制御部100により実現されてもよい。
【0021】
視点位置検出部112は、乗員の顔又は瞳を撮像するカメラ90からの撮像情報(撮像信号)S0に基づいて乗員の視点位置を検出する。乗員の視点位置は、乗員の目の位置に対応してよい。例えば、視点位置検出部112は、パターン認識や角膜反射法等を利用して、視点位置を検出してもよい。なお、視点位置検出部112は、HUD装置1とは別に設けることもできる。
【0022】
パラメータ取得部113は、後述する特定操作イベントの検出に用いる車両パラメータ情報をECU160から取得し、取得した車両パラメータ情報(S5参照)をイベント処理部114に与える。車両パラメータ情報は、特定操作イベントの検出に用いる1つ以上の車両パラメータの値を含んでよい。本実施例では、車両パラメータの値は、特定操作イベントに係る操作部(後述)に対する乗員の操作の有無や操作量等を表す値であってよい。この場合、車両パラメータの値は、乗員の操作の有無や操作量等を直接的に表す値であってよいし、間接的に表す値であってよい。例えば、変速機の後進段(リバース位置)への操作の場合、車両パラメータの値は、シフトノブの位置(シフトポジション)を検出するセンサからのセンサ情報であってもよいし、変速機が後進段であるときに起動する後方監視カメラ(図示せず)の起動状態に関する情報であってもよい。
【0023】
イベント処理部114は、車両パラメータ情報に基づいて、特定操作イベントを検出又は予測する。なお、イベント処理部114は、HUD装置1とは別に設けることもできる。例えば、イベント処理部114の機能の一部又は全部は、ECU160により実現されてもよい。
【0024】
特定操作イベントは、乗員(本実施例では、一例として「運転者」)による車両に対する各種操作のうちの、運転者の視点位置が比較的大きく変化しやすい操作に係る操作イベントを含んでよい。
【0025】
例えば、特定操作イベントは、車両のインストルメントパネル9(図1参照)やコンソールボックス等に配置される操作部(例えば空調パネルや変速機など)に対する操作イベントを含んでよい。これは、これらの操作部は、例えばステアリング周りに配置される操作部(図示せず)に比べて、乗員(特に運転者)から離れた位置に配置されているが故に、操作の際の運転者の視点位置が比較的大きく変化しやすいためである。あるいは、特定操作イベントは、比較的複雑な手順を必要とする操作イベントを含んでよい。例えば、特定のボタンを押しながらレバー等を操作するといったような、比較的複雑な手順を必要とする操作は、運転者の視点位置が比較的大きく変化しやすいためである。また、車両が自動運転モード(例えば米国自動車技術者協会に基づくレベル分けでレベル3以上の自動運転を実現するモード)を有する仕様である場合、自動運転モードから手動運転モードに切り替える操作イベントを含んでよい。これは、自動運転モードから手動運転モードに切り替えるときは、運転者の姿勢が大きく変化しやすく、それ故に、運転者の視点位置が比較的大きく変化しやすいためである。なお、特定操作イベントは、乗員ごとに異なってもよい。これは、乗員の癖や体型等に起因して、同じ操作イベントであっても視点位置の変化態様が異なりうるためである。乗員ごとの特定操作イベントは、機械学習等を介して決定されてもよい。
【0026】
また、特定操作イベントは、必ずしも車載電子機器に係る操作イベントである必要はなく、例えば、乗員が車両に持ち込む携帯端末に対応する操作イベントを含んでもよい。この場合、乗員による携帯端末に係る特定操作イベントは、Bluetooth(登録商標)等を介して実現される携帯端末と車載機器との通信に基づいて検出又は予測されてもよい。
【0027】
なお、特定操作イベントの予測方法は、機械学習等を利用して実現されてもよい。例えば、運転者(乗員)には、運転中の操作態様(操作動作等)に個人的な特徴があり、例えば、ある運転者は、特定操作イベントの前兆として、運転中に頻繁に姿勢を変え、これによって上下(車両の高さ方向)に視点が変わることがある、という傾向が学習される場合、その学習結果を活かして、特定操作イベントを推定(予測)することができる(学習による推定又は予測)。
【0028】
発光制御部116は、入力される信号S1aに基づいて、発光制御信号S4を生成、出力し、これによって、表示部145における表示画素の発光状態(点灯/非点灯、発光時の輝度等)を制御する。
【0029】
本実施例では、発光制御部116は、視点位置検出部112からの視点位置の検出結果に基づいて、視点追従スポットライティング制御(以下、単に「スポットライティング制御」とも称する)を実行する。発光制御部116は、スポットライティング制御状態では、視点位置検出部112からの視点位置の検出結果に基づいて、アイボックスEBの全領域のうちの、視点位置に応じた部分領域を照明領域として、表示部145を介して画像(虚像)に係る光を照射する。スポットライティング制御の詳細は、後述する。
【0030】
領域サイズ変更部118は、ECU160から供給される各種の情報S3のうちの、車両パラメータ情報に基づいて、アイボックスEBの全領域のうちの照明領域の大きさを変化させる。なお、照明領域の変化は、照明領域とする部分領域の変化により実現されてよい。領域サイズ変更部118は、変化後の照明領域に対してのみ画像の表示光が到達するように指示(S6参照)を発光制御部116に与える。これに応じて、発光制御部116は、発光制御信号S4を生成、出力することで、変化後の照明領域に対してのみ画像の表示光が到達するように、表示部145における表示画素の発光状態(点灯/非点灯、発光時の輝度等)を制御する。
【0031】
具体的には、領域サイズ変更部118は、イベント処理部114により特定操作イベントが検出された場合に、照明領域の拡張処理を実行する。照明領域の拡張処理は、発光制御部116によるスポットライティング制御に代わる態様(割り込む態様)で実行されてよい。従って、照明領域の拡張処理では、照明領域は、視点位置検出部112からの視点位置の検出結果とは無関係に決定される。照明領域の拡張処理の詳細は後述する。
【0032】
領域サイズ変更部118は、照明領域の拡張処理により照明領域を拡大すると、その後の所定の終了条件が成立するまで、照明領域を拡大した状態を維持する。所定の終了条件は、任意であるが、例えば照明領域の拡張処理の開始時点(例えばイベント処理部114により特定操作イベントが検出された時点)から所定時間Tth0が経過した場合に満たされてもよい。領域サイズ変更部118は、所定の終了条件が成立すると、照明領域を元の大きさ(照明領域の拡張処理の開始直前)に変更する縮小処理を実行する。所定時間Tth0は、特定操作イベントに起因して変化する乗員の視点位置が停止(安定)するまでに要する時間以上に設定されてよく、試験等により適合されてよい。また、所定時間Tth0は、特定操作イベントの属性(種類)ごとに異なってもよい。照明領域が元の大きさに戻ることで領域サイズ変更部118による縮小処理が完了すると、発光制御部116によるスポットライティング制御が再開されてよい。
【0033】
表示部145は、光源(バックライト)120と、表示部の光学系(第1の光学系)130と、画像を表示する液晶パネル140と、を有する。なお、液晶パネルは一例であり、他の非自発光素子を用いた非自発光系の表示手段を使用してもよい。また、LED素子や有機EL素子等を画素として使用する自発光系の表示手段を使用してもよい。
【0034】
光源120は、基板121の実装面上に面状(マトリクス状)に実装(配置)された複数の光源素子(ここではLED素子とする)122a~122dを有する。
【0035】
表示部の光学系(第1の光学系)130は、図示はしないが、複数のレンズを組み合わせて構成される。例えば、光が入射する側の断面形状が曲面(例えば円弧状)であり、出射側の断面形状が平面である第1のフィールドレンズと、光が入射する側の断面形状が平面であり、出射側の断面形状が曲面(例えば円弧状)である第2のフィールドレンズと、を近接して配置した構成である。第1、第2のフィールドレンズによって、光源素子122a~122d(以下、区別しないとき「光源素子122」とも称する)から出射される光を適宜、屈折させ、その光によって、液晶パネル140を背面から照明する。液晶パネル140の各画素の光透過度を、例えば液晶素子のツイスト角を制御することで、各画素の発光/非発光、あるいは、各画素から出射される光の強度(換言すると、各画素の発光強度)を制御することができる。
【0036】
反射光学系(集光光学系)150は、第2の光学系として機能する。図2A(A)では、反射光学系(集光光学系)150は簡略化して描いているが、具体的には、例えば、反射ミラーや凹面鏡(曲面ミラー:図4(B)の符号171)等を含んでよい。
【0037】
表示部145から出射される光は、反射光学系(集光光学系)150の反射ミラー等で反射されながら進行し、その光(表示光:図3の符号K)は、車両のウインドシールド2(図1及び図3参照)で反射され、アイボックスEB(視点A1、A2)に投光される。
【0038】
図2A(A)では、視点A1(右目)は、アイボックスEBの部分領域Z10の位置にあり、視点A2(左目)は、アイボックスEBの部分領域Z12の位置にある。
【0039】
また、図2A(A)では、光源素子122b、122dが点灯して発光状態であり、122a、122cは消灯して非発光状態である。
【0040】
光源素子122bが発光することにより生じる光線L1(一点鎖線で示される)は、最終的には、左目A2に投光される。また、光源素子122dが発光することにより生じる光線R1(実線で示される)は、最終的には、右目A1に投光される。例えば、液晶パネル140の表示面における、各光源素子122a、122dに対応する各画素が、右目用/左目用の視差をもった画像を形成しているときは、その視差画像が、運転者の目A1、A2の各々に投光される。これにより、運転者は虚像を視認することが可能である。
【0041】
次に、図2A(B)を参照する。図2A(B)では、視点A1、A2が、部分領域Z11、Z13に位置している。これに対応して、光源素子122a、122cが点灯して発光状態となり、光源素子122b、122dが消灯して非発光状態である。光源素子122aが発光することにより生じる光線L2(実線で示される)は、最終的には、左目A2に投光される。また、光源素子122cが発光することにより生じる光線R2(一点鎖線で示される)は、最終的には、右目A1に投光される。
【0042】
この状態で、特定操作イベントに起因して視点A1、A2がX方向(紙面における右方向)に移動したとする。なお、特定操作イベントの検出/予測時における視点A1’は、アイボックスEBの部分領域Z12に位置し、視点A2’は、アイボックスEBの外に位置している。
【0043】
この状態では、光線R2、L2は、視点A1’、A2’には投光されず、運転者はHUD装置1による表示(虚像)を視認することができない。但し、視点A1’は、アイボックスEB内にあることから、照明範囲を変更することで、視点A1’に光を照射して、視認可能な状態とすることは可能である。
【0044】
次に、図2Bを参照する。図2Bは、特定操作イベントに伴い照明領域を拡張した状態を示す図である。
【0045】
図2Bにおける視点(視点A1’、A2’)の位置は、図2A(B)と同じである。ここで、イベント処理部114が、特定操作イベントを検出し、特定操作イベント検出信号(検出情報)S2を領域サイズ変更部118に送る。これを受けて領域サイズ変更部118は、特定操作イベントに伴い生じうる視点位置の比較的大きな変化に対する対策として、照明領域の拡張処理を実施する。なお、照明領域を広げることは、例えば、表示部145における虚像の表示に寄与する画素又は光源120の領域を拡張し(換言すると、発光状態の画素や光源素子122が増えるように制御し)、特定操作イベントの直前に照明していた、アイボックスEBの照明領域を基準として、その領域よりも広い照明領域を照明するように制御することで実現可能である。
【0046】
図2Bでは、図2A(B)では消灯していた光源素子122b、122dが点灯しており、光源素子122a~122dがすべて点灯(発光)している。図2A(B)では、光線L2、R2のみによる照明であったが、図2Bでは、これに加えて、光線L1、R1による照明がなされ、アイボックスEBにおける照明範囲(照明領域)が拡張(拡大)されている。
【0047】
アイボックスEBに着目すると、特定操作イベントに伴う変化後の視点A1’(アイボックスEBの部分領域Z12に位置している)には、光線L1が投光されている。これによって、運転者が、特定操作イベントに起因してHUD装置1による表示(虚像)をまったく視認できなくなるような事態は、生じない。換言すると、特定操作イベントに起因してふいに表示が完全に消えてしまう可能性を、抑制(低減、あるいは防止)できる。
【0048】
次に、図3を参照する。図3(A)、(B)は、HUD装置で使用されるアイボックスの構成例を示す図である。
【0049】
図3(A)では、アイボックスEBは、複数(ここでは一例として9個)の部分領域Z1~Z9に分割されており、各部分領域Z1~Z9を単位として、運転者の視点Aの位置が検出される。
【0050】
HUD装置1の集光光学系150(図2A図2B参照)から画像の表示光Kが出射され、その一部がウインドシールド2により反射されて、運転者の視点(目)Aに入射する。視点AがアイボックスEB内にあるとき、運転者は画像の虚像を視認することができる。
【0051】
図3(B)の例では、HUD装置1の集光光学系150から画像の表示光Kが出射され、その一部がウインドシールド2により反射されて、運転者の左右の視点(左右の目)A1、A2に入射する。視点A1、A2がアイボックスEB内にあるとき、運転者は画像の虚像を視認することができる。
【0052】
ここで、運転者の視点(目)A1、A2から見て、車両の幅方向(左右方向)をX方向(あるいは横方向)とし、X方向に直交し、路面の垂線に沿う高さ方向をY方向(縦方向)とし、前方(前後方向)をZ方向とする。図3(B)では、アイボックスEBの内部は、縦の境界線で区画されたW1~W12の12個の部分領域が設けられ、縦長の長方形の外形を有する各部分領域W1~W12は、横方向(X方向)に、隣接して配置(配列)されている。各部分領域W1~W12を単位(最小限の分解能の単位)として視点位置を検出することで、視点A1、A2の、アイボックスEBにおける横方向の位置を検出することができる。このような検出結果に基づいてスポットライティング制御を好適に実行できる。
【0053】
次に、図4を参照する。図4(A)は、本実施例を適用した立体表示式(3D)HUD装置の構成例を示す図、図4(B)は、立体画像(虚像)を表示する原理を説明するための図である。図4において、前掲の図面と同じ箇所には同じ符号を付している。
【0054】
図4(A)において、液晶パネル140に、右眼用の画像(視差画像)ZA、左眼用の画像(視差画像)ZBが表示される。なお、「視差画像」とは、左右の眼が異なる位置にあることによって生じる視差(各眼が知覚する画像の差)が再現されている画像である。
【0055】
ここで、液晶パネル140の光出射側を前方とするとき、液晶パネル140の前方には、光学部材160が配置される。この光学部材160は光線分離部材として機能し、左上側に示されるように、具体的にはレンチキュラレンズ170、あるいは、スリットSLを有するパララックスバリア(視差バリア)180により構成することができる。なお、視差バリア180は、複数のスリット185a~185nを有する。但し、これらは例示であり、これらに限定されるものではない。
【0056】
光線分離機能を有する光学部材160で分離された光(画像を再現する各眼用の再現光)L10、R10が、光の結像点に位置する両眼A1、A2に入光したとすると、人には、輻輳(光の交差)が生じている箇所にて、見かけ上の立体像IMが見える。換言すると、このことは、立体像IMが、3Dディスプレイによって生成された、とみることもできる。なお、図4(A)の例では、輻輳角はθcである。
【0057】
なお、液晶パネル140の後方には、図2A等を用いて説明したように、制御部100と、光源(LED等のバックライト用光源)120と、光源の光学系(第1の光学系)130とが配置されている。
【0058】
図4(A)に示されるように、スポットライティング制御状態では、液晶パネル140の全面が発光しているのではなく、乗員の視点位置に応じた必要な箇所ZA、ZBが選択的に発光されている。なお、符号147、147’は、視点A1、A2(の中心)に対応する画素を示す。この選択的な発光によって、アイボックスEB上において部分照明(スポットライティング制御)が実現されている。
【0059】
図4(B)を参照する。図4(B)では、視認者(乗員)の前にアイボックスEBが設定されており、アイポイントP(C)は、アイボックスEBの中央に位置する。ウインドシールド2の前方に、左右の各眼に対応する仮想的な結像面PS(L)、PS(R)を設定したとすると、その重なりの領域の中央に虚像V(C)が位置する。虚像V(C)の輻輳角はθdであり、虚像V(C)は、視認者(乗員)には立体的な像として認識されることになる。
【0060】
この立体的な虚像V(C)は、以下のようにして表示(形成)される。すなわち、図3(A)に示した3Dディスプレイにより生成された仮想的な立体像IMの、左右の各眼用の再現光L10、R10を、HUD装置1の集光光学系150に含まれる曲面ミラー(凹面鏡等)171にて反射させ(反射の回数は少なくとも1回)、これによって、表示光Kとしてウインドシールド2に投射(投影)し、その反射光が視認者の両目に至り、ウインドシールド2の前方に像を結ぶことによって、虚像V(C)が表示(形成)されることになる。
【0061】
次に、図5を参照する。図5(A)は、特定操作イベントに起因したスポットライティング制御状態の停止を含む推移(変化)を示す図、図5(B)~(F)は、特定操作イベントに対応した照明領域の拡張、及び縮小の様子を示す図である。
【0062】
なお、以下に説明する特定操作イベントの検出/予測時における照明領域を拡張する制御、又は縮小する制御は、運転者の両目の各々に同じ画像を投影する単目式のHUD、各目に異なる画像(視差画像)を投影する両目式(視差式、フォログラム式あるいは光再現方式)のHUDの双方に適用することが可能である。
【0063】
図5(A)において、時点t0~t2の期間は、特定操作イベントが検出及び予測されていない「スポットライティング制御状態」であり、時点t2にて、特定操作イベントが検出及び予測されている。スポットライティング制御の停止状態は、時点t2から時点t5まで継続する。時点t5以降、スポットライティング制御状態となる。
【0064】
図5(B)、(C)、(D)、(E)、(F)は各々、時点t1、t3、t4、t6、t7における、アイボックスEBでの照明領域を示している。なお、照明領域は、ハッチングが施された矩形(正方形、長方形を含む)領域Q1~Q5として示されている。また、スポットライティング制御状態における視点A1、A2は実線で示し、特定操作イベント状態における視点A1、A2は破線で示している。
【0065】
図5(B)(時点t1に対応する)において、視点A1、A2は、アイボックスEB(ここでは、正面から見た平面視での矩形領域をアイボックスとする)上で、向かって右斜め上付近に位置している。
【0066】
スポットライティング制御がなされることで、位置が検出されている視点A1、A2を中心として、所定サイズの矩形の照明領域Q1に、画像の表示光が照射(投光)されている。視点が移動すれば、視点位置が随時、検出されて、照明領域Q1が、そのサイズを保ちながら、視点に追従して移動する。この状態が、スポットライティング制御状態である。
【0067】
なお、上記の「所定サイズ」は、ここでは、視点位置が検出されており、かつ照明領域がアイボックスEBに接しないとき(換言すると、スポットライティングの通常状態)における照明サイズとする。
【0068】
図5(C)(時点t3に対応する)では、特定操作イベントがすでに検出及び予測されている。特定操作イベントに起因した生じうる視点の移動方向は、特定操作イベントごとに異なりうる。この場合、視点は、アイボックスEB上で、右斜め下方向に移動している。図5(C)では、照明領域Q2のサイズは、図5(A)での照明領域Q1のサイズ(換言すると、特定操作イベント直前の照明領域のサイズ)よりも拡張(拡大)されている。矩形の照明領域の外形を決める4つの辺の各々に垂直な方向に、ほぼ均等に拡張されている(等方的拡張)。
【0069】
図5(C)において、視点A1は照明領域Q2の外となるが、視点A2はQ2の内側に位置しており、視点A2対して画像の投影が可能である。よって、特定操作イベントの検出/予測時に、運転者が表示(虚像)をまったく見えなくなるという事態が回避されている。
【0070】
ここで、このような照明領域を広げる制御は、先に説明した制御部100(具体的には、部分照明制御部110:図2A(A)参照)によってなされる。
【0071】
なお、画像を表示する表示部145が、例えばLEDや有機EL等の自発光素子により画素を形成しているときは、その画素の発光状態を制御することにより、また、表示部145が、図2A図2Bの例のように、例えば液晶パネル140とバックライト(光源120)とを組み合わせた光透過型であるときは、光源120(光源素子122)の発光状態(点灯や消灯等)を制御することにより、照明領域の拡張を実現することができる。換言すると、例えば、特定操作イベントの直前に発光していた画素の周囲の画素(非発光であった画素)を発光状態(虚像の視認に寄与できる状態)に転じることによって、特定操作イベント直前の照明領域を基準として、その周囲に発光領域を拡張していくことが可能である。
【0072】
ここで、「特定操作イベント直前の照明領域を基準とした拡張」とするのが好ましい。特定操作イベントによる視点位置の変化時間が短い時間であるのならば、視点は、元の照明領域付近にとどまっている可能性が高く、元の領域の周囲に拡張することで、視点に投光できる可能性が高まるからである。図5(C)の例では、特定操作イベントが生じる直前の、時点t1における図5(B)の照明領域Q1を中心として、その周囲に照明領域を拡大しており、これによって、より大きなサイズの照明領域Q2が実現され、上記のとおり、視点A2への投光が可能となっている。
【0073】
また、照明領域Q2の内の、照明領域Q1からはみ出している(拡張されている)領域の全部に一気に投光して拡張することもできる。但し、アイボックスEBにおける照明領域を拡張した場合、拡張した照明領域に向かう光束の一部は、元の照明領域にも入る可能性がある。上述のとおり、一気にアイボックスEBの全域を照明してもよいが、この場合、元の照明領域で視認される画像(虚像)輝度が急激に高まることも想定され、運転者(乗員)が、輝度変化によって違和感をおぼえうる。
【0074】
そこで、照明領域を拡張する際には、制御部100は、連続的に広げる制御、あるいは段階的に広げる制御の少なくとも一方を実施し、例えば、第1の所定時間Tth1をかけて徐々に照明領域を拡張してもよい。この場合、一気にアイボックスEBの全域に照明領域を拡張したときに発生しうる違和感を抑制できる。換言すると、違和感の少ない態様で、特定操作イベントに起因した「スポットライティング拡張制御」が可能である。
【0075】
時間軸上で連続的に照明領域を拡張すれば、違和感をより低減できる。また、段階的(ステップ的)に照明領域を拡張する場合は、所定の拡張アルゴリズムに従って規則性をもって効率的な拡張を、容易に(装置の負担が少なく)実施することができる。なお、連続的拡張と段階的拡張を組み合わせて使用することで、より自由度の高い照明領域の拡張が可能である。
【0076】
このように、視点(左右の目の少なくとも一方)の移動が発生しやすい特定操作イベントに伴い、視点が一時的に大きく変化したときでも、拡張された照明領域に視点が位置していれば、運転者(乗員)は、表示(虚像)を視認可能であり、唐突に表示が消えることを防止できる可能性が高まる。また、車両等の運行上、必要な表示を視認できる可能性が高まることから、安全上の信頼性も高まる。
【0077】
また、図5(B)から図5(C)に移行する際に、例えば、光源120を非点灯/点灯の2値制御によって、光源素子122を一気に所定の光強度まで発光させてもよい。但し、輝度変化が大きい場合は違和感の原因になることも想定される。そこで、図5(B)、(C)の例では、徐々に光量を増大させている。図5(B)と(C)の間に、先端が拡張されている白抜きの矢印が示されているが、これは、光量が徐々に増大されることを示している(この点は、図5(C)と(D)との間に描かれている矢印についても同様である)。
【0078】
具体的には、表示部145の画素(表示画素)を、所望の輝度で点灯/非点灯の切替制御(点灯/消灯の2値制御)をするのではなく、時間をかけて所望の輝度に上げていく制御(換言すると多値点灯制御)が実施される。これによって、違和感をより低減することができる。
【0079】
次に、図5(D)について説明する。図5(D)では、時点t4において、照明領域がアイボックスEB上の全領域にまで拡大されている(図中、全域の照明領域には、符号Q3を付している)。
【0080】
また、図5(D)では、特定操作イベントに起因して、視点A1、A2は、図5(C)から、さらに右斜め下側に移動しているが、照明領域の全範囲までの拡張によって、視点A1、A2の双方に画像が投光されており、運転者は、画像(虚像)を視認することができる。
【0081】
ここで、図5(A)を参照すると、時点t4は、特定操作イベントの検出/予測時点t2から、第1の所定時間Tth1が経過した後の時点である。換言すると、図5(D)では、特定操作イベントの検出/予測時点から第1の所定時間Tth1をかけて、アイボックスEBの照明領域をその全域まで徐々に拡大していることになる。
【0082】
ここで、上述のとおり、図5(C)の段階で、一気に、アイボックスEBの全域にまで照明範囲を拡張(拡大)してもよいが、この場合、元の照明領域で視認される画像(虚像)輝度が急激に高まることも想定され、運転者(乗員)が、輝度変化によって違和感をおぼえうる。
【0083】
そこで、図5(B)の後、図5(C)の状態とし、その後、図5(D)の状態(アイボックスの全域にまで照明範囲を広げた状態)としている。換言すると、照明範囲を全域にまで広げる制御は、第1の所定時間Tth1をかけて実施されている。照明領域のサイズを徐々に広げていくことができる(例えば、図5(C))。よって、違和感を抑制(低減)することができる。
【0084】
以上、照明領域の拡張制御の一例について説明したが、拡張の具体例、変形例については後述する。
【0085】
次に、図5(E)、(F)を参照する。図5(E)では、時点t6の状態が示されている。特定操作イベントの検出/予測時点t2から所定時間Tth0が経過したことから、照明領域を、元のサイズの照明領域Q4に縮小している。なお、この際、照明領域Q4の位置(例えば中心位置)は、視点位置検出部112の検出結果に応じて決定されてよい。照明領域Q4のサイズは、図5(B)の照明領域Q1よりも大きく、完全には、元のサイズには戻っていない。次の図5(F)にて、元のサイズにまで縮小されている。ここで、図5(F)は、時点t7における状態を示している。
【0086】
特定操作イベントの検出/予測時点t2から所定時間Tth0が経過したときは、その際に検出される視点位置に基づくスポットライティング制御(原則として特定操作イベント前の照明領域と同じサイズの部分照明)へと移行する。これにより、特定操作イベントに伴うスポットライティング拡張制御の後、違和感なく、元のスポットライティング制御状態に復帰できる。なお、変形例では、図5(E)の段階で、一気に、元の部分照明サイズと同じサイズにまで縮小してもよい。
【0087】
なお、運転者(乗員)の視点は、ある程度の移動を繰り返しつつ、ある位置に収束していく場合もあり得る。
【0088】
よって、図5(E)、(F)の例では、特定操作イベントの検出/予測時点t2から所定時間Tth0が経過した時点t5から第2の所定時間Tth2が経過した後の時点(視点が安定するのに要する時間を経過した時点)である時点t7、スポットライティング制御状態に復帰するようにする。これによって、第2の所定時間Tth2が経過する前の期間においては、徐々に、照明領域を縮小することができ(例えば、図5(E))、少しずつ照明領域が小さくなることで、運転者に違和感を与えることが抑制(低減)される。
【0089】
また、図5(D)から(E)への移行の際、及び図5(E)から(F)への移行の際、徐々に照明光の光量(照明輝度)を低下させることで、一気に通常のスポットライティングに移行した場合に発生しうる違和感を抑制(低減)することができる。なお、図5(D)と(E)の間、及び、図5(E)と(F)との間に、先細の白抜きの矢印が示さているが、これは、光量が徐々に低下することを示している。照明領域を縮小する場合の、他の例については後述する。
【0090】
次に、図6を参照する。図6(A)~(H)は、照明領域の拡張と縮小の一例を示す図である。図示されるように、アイボックスEBは所定の形状(ここでは、正方形又は長方形とする)の外形を有している。但し、これに限定されるものではない。より正確に述べれば、「アイボックス」は、車両の内部における左右方向(X軸方向)、上下方向(Y軸方向)、及び奥行方向(Z軸方向)で区画される所定の領域(上記所定の領域の形状は、例えば、立方体、直方体、楕円体を含む。)であり、HUD装置1が搭載される車両で観察者の視点位置の配置が想定されるエリア(アイリプスとも呼ぶ)と同じ、又はアイリプスの大部分(例えば、80%以上)を含むように設定される。本実施例の説明に用いる図面では、奥行方向の概念を省略し、アイボックスを左右方向及び上下方向で区画される長方形等で示している。なお、左右方向及び上下方向で区画されるアイボックスの形状は、四角形あるいは矩形(長方形や正方形が含まれる)の他、多角形、楕円などで設定され得る。なお、図6図7も同様)では、照明領域は、ハッチングが施された矩形(正方形、長方形を含む)領域Q6、Q7等として示されており、領域Q1~Q5は、図5に示したとおりである。
【0091】
まず、図6の拡張パターンについて説明する。制御部100は、照明領域を、例えば連続的又は段階的に広げるに際し、照明領域を、その周囲に一様に拡張する等方的拡張、一様ではなく拡張する異方的拡張、これらの組み合わせの、何れかを実施することができる。正方形又は長方形の外形をもつ照明領域を例にとると、4辺の各々に対する垂線に沿って拡張する「等方的拡張」、又は、1辺、又は2辺あるいは3辺の各々に対する垂線に沿って拡張する「異方的拡張」、又は、「等方的拡張と異方的拡張の組み合わせによる拡張」の何れかを実施することができる。また、照明領域の外形の何れかの辺が、アイボックスEBの外形の、対応する辺に到達したときは、未到達の他の辺についての拡張を実施し、アイボックスEBの全域まで広がった場合に、拡張を完了させることができる。
【0092】
図6には、3通りの拡張パターン(図5とは、少なくとも一部において相違する具体的な例)が示されている。1つの拡張パターンは、図6(A)、(B)、(E)、(H)と拡張する例である。この例は、先に示した図5(B)、(C)、(D)(これらが、図6(A)、(B)、(H)に相当する)に、図6(E)を挿入したパターンである。
【0093】
2つ目の拡張パターンは、図6(A)、(C)、(F)、(H)と拡張するパターンである。3つ目の拡張パターンは、図6(A)、(D)、(G)、(H)と拡張するパターンである。等方的拡張、異方的拡張を用いて効率的な拡張を行っている。
【0094】
図6の例では、拡張時の規則が明確化され、ソフトウエアによる制御が容易となる等の効果が得られる。
【0095】
次に、縮小パターンについて説明する。照明エリアの縮小に際しては、例えば、制御部100は、特定操作イベントに伴い拡張された広い照明領域を、その後の視点位置に対応した、特定操作イベント前の照明領域と同じ大きさの狭い照明領域へと縮小する制御を実施する。
【0096】
このとき、照明領域を一様に収縮する等方的縮小、一様ではなく縮小する異方的縮小、これらの組み合わせによる縮小の何れかを実施することができる。具体的には、例えば、正方形又は長方形の外形をもつ照明領域の、4辺の各々に対する垂線に沿って縮小する「等方的縮小」と、1辺、又は2辺あるいは3辺の各々に対する垂線に沿って縮小する「異方的縮小」を組み合わせて実施して、特定操作イベント前の照明領域と同じ大きさの狭い照明領域に復帰させる制御を実施する1つ目の縮小パターン(第1の方式)が想定され得る。
【0097】
また、直交する2つの線分の1つに沿う収縮を垂直収縮とし、他の1つに沿う収縮を水平収縮とするとき、これらを適宜、実施する(組み合わせて実施する場合を含む)ことで、元の照明サイズに戻すことができる。なお、「直交する2つの線分」としては、アイボックスEBの奥行きを無視して見たときの平面が、路面に垂直に立設されている矩形(正方形や長方形を含む)として把握できるような場合には、車両の高さ方向の線分、及び車両の幅方向の線分を採用することができる。具体的には、例えば、正方形又は長方形の縦の辺に沿う方向の収縮を垂直収縮とし、横の辺に沿う方向の収縮を水平収縮とするとき、垂直収縮を実施し、続いて水平収縮を実施して、特定操作イベント前の照明領域と同じ大きさの狭い照明領域に復帰させる制御を実施する2つの縮小パターン(第2の方式)が想定され得る。
【0098】
また、水平収縮を実施し、続いて垂直収縮を実施して、特定操作イベント前の照明領域と同じ大きさの狭い照明領域に復帰させる制御を実施する3つ目の縮小パターン(第3の方式)が想定され得る。
【0099】
これらによれば、縮小時の規則が明確化され、ソフトウエアによる制御が容易となる等の効果が得られる。
【0100】
図6では、先に説明した3つの拡張パターンの各々を、逆にたどることで、3つの縮小パターンが得られる。なお、図6に示される縮小パターンは、上記の第2、第3の方式のものである(第1の方式の縮小パターンは図7を用いて説明する)。
【0101】
図6の例では、図6(H)を起点として、図6(E)、(B)、(A)と縮小する1番目の縮小パターンと、図6(F)、(C)、(A)と縮小する2番目の縮小パターンと、図6(G)、(D)、(A)と縮小する3番目の縮小パターンの何れかが実施され得る。
【0102】
次に、図7を参照する。図7(A)~(D)は、照明領域の縮小と拡張の一例を示す図である。
【0103】
図7では、2つの縮小(あるいは拡張)のパターンが示されている。図7(A)、(B
)、(D)の縮小パターンは、異方的縮小の後、等方的縮小を実施する場合を示す。図7(A)、(C)、(D)の縮小パターンは、等方的縮小の後、異方的縮小を実施する場合を示す。これらは、上記の第1の縮小パターンに相当する。また、各縮小パターンを逆にたどることで、2通りの拡張パターンが得られる。なお、これらのパターンは一例であり、これらに限定されるものではない。
【0104】
次に、図8を参照する。図8(A)、(B)は、視点位置の変化の他の例(特定操作イベントの検出/予測からスポットライティング制御状態に復帰する場合も考慮した例)、及び、視点移動の推定又は予測による照明領域の拡張等を示す図である。図8では、図3(B)で示したアイボックスが使用されている。
【0105】
図8(A)では、視点A1、A2は、当初は、アイボックスEBの部分領域W7、W8に位置している(スポットライティング制御状態)。その後、視点が、向かって右側(正のX方向)に大きく移動し、片方の視点(視点A2)が、アイボックスEBの外に出る(視点移動(1))。次に、視点A1、A2は、左側(負のX方向)に移動して、外れていた視点A2もアイボックスEB内に戻るが、戻り方はやや少なく、元の位置には戻らない。
【0106】
また、視点A1、A2が、右下側に少し移動し(視点移動(3))、その後、元の位置よりも左側へと戻る(視点移動(4))。
【0107】
特定操作イベントはこのような多様な視点移動を伴いうる。この場合でも、特定操作イベントの検出/予測時に、照明領域を拡張する制御を実施すれば、運転者がHUD装置1による表示(虚像)を視認できる可能性が高まり、この点でも有益である。
【0108】
また、特定操作イベントに伴い照明範囲を拡張する際に、視点の移動方向等を推定、あるいは予測して、その推定(予測)される方向に、より大きく拡張する(その方向のみに拡張することを含む)制御を行うこともできる。
【0109】
換言すると、制御部100は、照明領域を連続的又は段階的に広げる際に、特定操作イベントの属性ごとの視点の移動方向、視点の動きに関する過去の学習結果、及び特定操作イベントの検出/予測時の運転状況の少なくとも1つに基づいて特定操作イベントに起因した視点位置の変化方向を推定又は予測して、その推定又は予測された変化方向を少なくとも含むように照明領域を拡張する制御を実施してもよい。すなわち、特定操作イベントに起因して生じる視点位置の変化方向(特定操作イベントの検出/予測時における視点の移動方向)を推定又は予測して、その推定(予測)の内容を活かして照明領域の拡張を行ってもよい。
【0110】
また、特定操作イベントの属性ごと、及び/又は、乗員ごとに特定操作イベントに起因して生じる視点位置の変化方向に一定の傾向がある場合、その傾向の学習結果を利用して、特定操作イベントに起因して生じる視点位置の変化方向(特定操作イベントの検出/予測時における視点の移動方向)を推定又は予測できる。
【0111】
このような推定(予測)を行って、推定(予測)特定操作イベントに起因して生じる視点位置の変化方向を含むように徐々に拡張することで、効率的な拡張が可能である。例えば、推定(予測)方向の拡張を、非推定(非予測)方向よりも手厚く拡張する(拡張の度合いを大きくする)等の工夫をすることで、特定操作イベントに伴う変化中の視点に、画像を投光できる可能性が高まり、照明領域の拡張が、虚像の視認可能性を高めることに、効率的に結びつく可能性を高めることができる。また、必要な領域を重点的に照明できることから、省電力化(光源120の高温化抑制)の点でも有益である。
【0112】
図8(A)の例では、当初、範囲F1を照明していたが、上記の推定(予測)を行って
、推定(予測)された方向である右側(正のX方向)に、大きく照明面積を拡大し(範囲F2に拡大)、一方、左側(負のX方向)には、小さく照明面積を拡大する(範囲F3に拡大)。
【0113】
図8(A)では、このような照明エリアの拡大(拡張)が実施されることで、上記の視点移動(1)、(2)又は(3)、(4)の何れの場合でも、運転者に、表示(虚像)を視認させること(あるいは、視認できる機会を増やすこと)ができる。
【0114】
次に、図8(B)を参照する。図8(B)では、視点A1、A2が、右側(正のX方向)に大きく移動して、各視点がアイボックスEBの外に出る(視点移動(5))。その後も、視点はアイボックスEBの外で移動する(視点移動(6))。そして、左側(負のX方向)に大きく移動し、元の位置を大きく通り過ぎて、元の位置よりもかなり左の位置へと移動する(視点移動(7))。
【0115】
図8(B)の例でも、図8(A)と同様の、特定操作イベントが検出されて、照明範囲は、F1から、F2及びF3を含めた領域へと拡張され、さらに、照明範囲がF4まで含めた領域(アイボックスEBの全域)にまで拡張される。
【0116】
図8(B)では、このような照明エリアの拡大(拡張)が実施されることで、上記の視点移動(5)、(6)、(7)の場合でも、運転者に、表示(虚像)を視認させること(あるいは、視認できる機会を増やすこと)ができる。また、必要な領域を重点的に照明した後、アイボックスEBの全域に拡張することから、省電力化の点でも有益となる。
【0117】
なお、本実施例において、多様な変形が可能である。
【0118】
例えば、制御部100は、広い照明領域を狭い照明領域に縮小する際に、照明光の光量を減少させる場合において、視点位置で視認される輝度に影響が小さい画素又は光源素子122の輝度を、時間をかけて低下させることで、照明光を減少させてもよい。
【0119】
この制御は、1視点に複数の画素(光源)からの光が向かうことを前提にした制御方式の一例である。アイボックスEBにおける照明領域に向かう光束の一部は、他の照明領域にも向かう可能性がある。つまり、図3(A)の部分領域Z5には、部分領域Z2に向かう光束の一部が入り得る。部分領域Z1、Z2、Z3・・・、Z9のそれぞれに主に光束を導く画素又は光源を、照明要素C1、C2、C3・・・、C9とすると、部分領域Z5には、照明要素C5から導かれる光束と、この部分領域Z5に隣接する部分領域Z2、Z4、Z6、Z8に向けて照射される照明要素C2、C4、C6、C8からの光束の一部と、が照射される。したがって、広い照明領域(例えば、部分領域Z2、Z4、Z5、Z6、Z8)から狭い照明領域(例えば、部分領域Z5)に縮小する際、照明要素C2、C4、C6、C8の光量を減少させると、部分領域Z5で視認される画像の輝度が低下する。視認される輝度の変化(低下)は、視認者に違和感を与えることも想定される。
【0120】
したがって、照明範囲を拡大された範囲から縮小された範囲にする際、例えば、目の位置(部分領域X1とする)で視認される虚像の輝度に影響が小さい光源(ここでは、照明要素C1を除いた、C2、C3・・・とする)の輝度を緩やかに(時間をかけて)低下させることで、目の位置X1に若干届いていた光(照明要素C2、C3・・・の光)による画像の輝度の低下を感じにくくすることができ、違和感を低減することが可能である。
【0121】
また、いくつかの実施例では、照明範囲を拡大された範囲から縮小された範囲にする際、例えば、目の位置(図3の例では、部分領域Z5とする)で視認される虚像の輝度に影響が小さい光源(ここでは、照明要素C5を除いた、C1、C2・・・C9とする)の輝度を緩やかに(時間をかけて)低下させる際、目の位置で視認される虚像の輝度に影響が小さい光源(例えば、部分領域Z5から比較的離れた部分領域Z1、Z3、Z7、Z9に対応する照明要素C1、C3、C7、C9)ほど、輝度を速く低下させ、影響が大きい光源(例えば、部分領域Z5から比較的近い部分領域Z2、Z4、Z6、Z8に対応する照明要素C2、C4、C6、C8)ほど、輝度を遅く低下させてもよい。ここでは、輝度を速く低下させるとは、例えば、輝度を漸減する速度が他方より急速にすること、速度を低下させるタイミングを他方より早くすること、又はこれらの組み合わせ、などを含む(これらに限定されない。)。
【0122】
また、制御部100は、広い照明領域を狭い照明領域に縮小する際に、視点位置で視認される輝度に影響が小さい画素又は光源素子122の輝度を、時間をかけて低下させ、かつ、視点位置で視認される輝度に影響が大きい画素又は光源素子122の輝度を、時間をかけて上昇させてもよい。この制御は、1視点に複数の画素からの光が向かうことを前提にした制御方式の他の例である。
【0123】
換言すると、照明範囲を拡大された範囲から縮小された範囲にする際、例えば、目の位置(部分領域X1とする)で視認される虚像の輝度に影響が小さい光源(ここでは、照明要素C1を除いた、C2、C3・・・とする)の輝度を緩やかに(時間をかけて)低下させ、かつ、目の位置X1で視認される虚像の輝度に影響が大きい光源(ここでは、照明要素C1)の輝度を緩やかに(時間をかけて)上昇させる。
【0124】
これによって、照明範囲を変化させている途中であっても、画像(虚像)の輝度を略一定に維持できる。よって、例えば、照明範囲の拡大時と、縮小時とで、目の位置X1から見える画像(虚像)の輝度の変化(輝度の差)を小さくすることもできる。よって、違和感を、より低減することができる。
【0125】
また、制御部100は、図5(A)で示した、第1の所定時間Tth1を、特定操作イベントの属性に基づいて、可変に設定してもよい。換言すると、照明領域をアイボックスEBの全域(最大エリア)に広げるのに要する時間を、特定操作イベントの属性に応じて可変に制御し、特定操作イベントの属性に適した制御を実施することができる。
【0126】
あるいは、第1の所定時間Tth1は、その時の車両状態等に基づいて可変されてもよい。例えば、凹凸の多い道路を走行中であり車両ピッチングの発生頻度が所定値以上となる場合や、運転者の疲労度が高いと判定される場合や、カメラ90によって撮像されて取得される画像のコントラストが所定値以下の場合等においては、第1の所定時間Tth1をより短くして、最大エリアまでの拡張速度を通常の場合よりも高める(より早く最大エリアに到達するように制御する)のが好ましい。これらの場合は、表示(虚像)を確実に運転者(乗員)に視認させることが、安全の観点からも望ましいからである。
【0127】
また、例えば、夜間は、昼間よりも人の目の感度が高いため、より時間をかけてゆっくりと拡張させる制御をして、違和感を低減する等の制御を実施することも可能である。また、トンネルなど明暗が急激に変わる場合は、照明エリアの拡張時の速度を高め、早く最大エリアに到達できるようにしてもよい。雨天時は、晴天時よりも、表示(虚像)を視認しづらいため、特定操作イベントの検出/予測時の照明エリアの拡大の速度を上げて、表示輝度変化による違和感の発生よりも、確実に表示を視認させることを優先させるのが好ましいからである。
【0128】
このように、各種の状況に適応して最適な制御を実施することが可能である。
【0129】
また、制御部100は、図5(A)で示した第2の所定時間Tth2を、特定操作イベントの属性に基づいて、可変に設定してもよい。
【0130】
照明領域を縮小する場合も、拡張の場合と同様の制御を実施することで、同様の効果を得ることができる。
【0131】
ところで、本実施例では、光源120は、上述したように、基板121の実装面上に面状(マトリクス状)に実装(配置)された複数の光源素子122a~122dを有するので、照明領域を常に最大化すべく光源素子122のすべてを常に点灯状態とすると、表示部145により生成される画像の視認性が良好となる反面、光源120の高温化(又は光源120に対する冷却機構の大型化)を招くおそれがある。
【0132】
この点、本実施例では、上述したように、スポットライティング制御が実行されるので、光源素子122の発熱による光源120の高温化(又は光源120に対する冷却機構の大型化)を効果的に抑制できる。
【0133】
しかしながら、スポットライティング制御は、上述したように、視点位置検出部112による乗員の視点位置の検出結果に基づいて実行されるので、視点位置検出部112による視点位置の検出結果の精度や信頼性が低い場合においてスポットライティング制御が継続されると、不都合が生じうる。すなわち、適切な表示輝度で画像(表示部145により生成される画像)を乗員に視認させることができなくなるおそれがある。
【0134】
視点位置検出部112による視点位置の検出結果の精度や信頼性は、乗員の視点位置が比較的大きく変化したときに低下しやすい。
【0135】
かかる点を考慮して、視点位置検出部112による視点位置の検出結果に基づいて、乗員の視点位置が比較的大きく変化した場合に、スポットライティング制御を停止して照明領域の拡張処理を実行するような構成(以下、「比較構成」とも称する)も考えられうる。
【0136】
しかしながら、かかる比較構成では、乗員の視点位置が比較的大きく変化したことを検出してから、照明領域の拡張処理が開始されることになり、適切な表示輝度で画像(表示部145により生成される画像)を乗員に視認させることができない期間が初期的に発生しやすい。
【0137】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、スポットライティング制御を実行しつつ、特定操作イベントが検出又は予測されたときだけ、スポットライティング制御が一時的に停止されるとともに、照明領域の拡張処理が実行される。これにより、光源120の高温化を抑制しつつ、乗員の視点位置に比較的大きい変化が生じうる場面(車両状態を含む)においても適切な表示輝度で画像(表示部145により生成される画像)を乗員に視認させることができる。
【0138】
また、特定操作イベントは、乗員の視点位置が比較的大きく変化する前又は乗員の視点位置が比較的大きく変化している途中で検出又は予測される可能性が高いので、比較構成に比べて、照明領域の拡張処理を早く開始できる可能性を高めることができる。これにより、乗員の視点位置が比較的大きく変化する場合でも、その変化期間中の略全体にわたって、適切な表示輝度で画像(表示部145により生成される画像)を乗員に視認させることが可能となる。すなわち、乗員の視点位置に比較的大きい変化が生じうる場面においても、乗員による虚像(表示部145により生成される画像に係る虚像)の視認が困難になったり、虚像の表示品質が低下したりする期間が初期的に(一時的に)発生する可能性を低減できる。特に、特定操作イベントを予測する場合、特定操作イベントに先立って照明領域を拡張することも可能となりうる。この場合、乗員の視点位置が比較的大きく変化する場合でも、その変化期間中の略全体にわたって、適切な表示輝度で画像(表示部145により生成される画像)を乗員に視認させることが可能である。
【0139】
このような本実施例による各種効果は、ひいては安全運転にも寄与する。また、運転者は、様々な運転シーンにおいて、特定操作イベントに係る操作を行う際も、良好なHUD装置1による表示を視認することができ、運転の快適性も確保される。
【0140】
次に、図9及び図10を参照して、動作例について説明する。図9は、照明領域の拡張、縮小を実施するHUD装置1の動作手順の一例を示すフローチャートである。図10は、図9の動作例に好適な照明領域の拡張と縮小の一例を示す図である。図9に示す処理は、例えば車両の起動状態において所定周期ごとに繰り返し実行されてよい。
【0141】
ステップS900では、制御部100は、カメラ90からの撮像情報(撮像信号)S0に基づいて、視点位置検出部112により乗員の視点位置を検出する。乗員の視点位置の検出方法は、上述のとおりであってよい。
【0142】
ステップS902では、制御部100は、ECU160から供給される各種の情報S3を取得する。
【0143】
ステップS904では、制御部100は、後出のステップS904により開始される照明領域の拡張制御によって全点灯状態(照明領域の全域が照明されている状態)又は全点灯状態への遷移中であるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS912に進み、それ以外の場合は、ステップS906に進む。
【0144】
ステップS906では、制御部100は、特定操作イベントが検出又は予測されたか否かを判定する。特定操作イベントの検出又は予測の方法は、上述のとおりであってよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS908に進み、それ以外の場合は、ステップS910に進む。
【0145】
ステップS908では、制御部100は、全点灯状態(照明領域の全域が照明されている状態)を実現すべく、照明領域の拡張制御(最大領域はアイボックスの全域とする)を実行(開始)する。なお、照明領域の拡張制御は、上述したように、スポットライティング制御の停止(一時的な停止)を伴う。
【0146】
ステップS910では、制御部100は、ステップS900で得た乗員の視点位置に基づいて、スポットライティング制御を実行する。スポットライティング制御は、上述のとおりであってよい。
【0147】
ステップS912では、制御部100は、今回の特定操作イベントが検出又は予測されてから所定時間Tth0が経過したか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS916に進み、それ以外の場合は、ステップS914に進む。
【0148】
ステップS914では、制御部100は、全点灯状態(照明領域の全域が照明されている状態)を実現又は維持すべく、ステップS904により開始される照明領域の拡張制御を継続する。例えば、図10に示す例では、制御部100は、(a)で矢印R100からR102で示すように、照明領域のサイズを徐々に増加させていく。具体的には、制御部100は、視点検出に基づいた元の発光パターンPT1から、発光パターンPT2、PT3を介して段階的に変化させて、アイボックス全域を照射する発光パターンPT4で発光するように、光源120のLEDアレイを制御する。なお、図10に示す各発光パターンPT1からPT14は、一例として、7×5の配列の光源素子122による発光パターンであり、白抜きが“点灯”を表し、黒塗りが“消灯”を表す。発光パターンPT1における2つの点灯している光源素子122は、それぞれ、乗員の左目と右目に投光される光を発生する。
【0149】
ステップS916では、制御部100は、照明領域の拡張制御を終了し、スポットライティング制御を再開する。この際、制御部100は、上述したように、照明領域を徐々に減少させていく縮小処理を実行してもよい。例えば、図10に示す例では、制御部100は、(b)で矢印R110からR112で示すように、照明領域のサイズを徐々に減少させていく。具体的には、制御部100は、アイボックス全域を照射する発光パターンPT11(=(a)のPT4)、発光パターンPT12、PT13を介して段階的に変化させて、視点検出に基づいた元の発光パターンPT14で発光するように、光源120のLEDアレイを制御する。
【0150】
このようにして図9に示す処理によれば、特定操作イベントが検出又は予測された場合に、視点位置検出部112による視点位置の検出結果とは無関係に、全点灯状態(照明領域の全域が照明されている状態)を実現できる。これにより、特定操作イベントにより乗員の視点位置が比較的大きく変化しうることに起因して生じうる不都合(視点位置検出部112による視点位置の検出精度の悪化、及び、それに伴い、適切な輝度で車両情報に係る画像を乗員が視認できなくなる可能性)を低減できる。
【0151】
なお、図9に示す処理では、照明領域の拡張制御の実行中にも視点位置検出部112による視点位置の検出処理が継続されているが、これに限られない。例えば、照明領域の拡張制御の実行期間の一部又は全部において、視点位置検出部112による視点位置の検出処理が停止されてもよい。
【0152】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0153】
1 HUD装置
2 ウインドシールド
9 インストルメントパネル
90 カメラ
100 制御部
110 部分照明制御部
112 視点位置検出部
113 パラメータ取得部
114 イベント処理部
116 発光制御部
118 領域サイズ変更部
120 光源
121 基板
122 光源素子
130 光学系(第1の光学系)
140 液晶パネル
145 表示部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10