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特開2022-181949校正治具、校正方法、および、測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181949
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】校正治具、校正方法、および、測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01B11/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089201
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】壁谷 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 伸也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065AA52
2F065BB11
2F065BB15
2F065CC02
2F065DD03
2F065FF52
2F065GG12
2F065GG25
2F065HH04
2F065HH13
2F065JJ01
2F065JJ09
2F065LL03
2F065LL62
2F065MM04
2F065MM16
2F065PP13
2F065PP16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ29
2F065UU03
(57)【要約】
【課題】光干渉測定装置の向きの校正を高精度に行うことができる校正治具を提供すること。
【解決手段】ローラの周面上の被測定物に向けて測定光を照射する光干渉測定装置の校正に用いられる校正治具であって、ローラの周面に沿う円筒面と、円筒面と反対側に円筒面の中心軸に対して平行に設けられ、測定光が照射される主平面と、主平面から第1距離離れて配置されている2つの頂点と、を備え、円筒面は、円筒面上のある1点を通り且つ円筒面の中心軸に直交する直線と、ある1点を通り且つ主平面に直交する直線とのなす角度が、予め定められた角度になる形状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラの周面上の被測定物に向けて測定光を照射する光干渉測定装置の校正に用いられる校正治具であって、
前記ローラの周面に沿う円筒面と、
前記円筒面と反対側に前記円筒面の中心軸に対して平行に設けられ、前記測定光が照射される主平面と、
前記主平面から第1距離離れて配置されている2つの頂点と、を備え、
前記円筒面は、前記円筒面上のある1点を通り且つ前記円筒面の中心軸に直交する直線と、前記ある1点を通り且つ前記主平面に直交する直線とのなす角度が、予め定められた角度になる形状である、
校正治具。
【請求項2】
前記2つの頂点は、前記円筒面の中心軸に直交する平面上に設けられている、
請求項1に記載の校正治具。
【請求項3】
前記2つの頂点は、前記主平面と前記円筒面との間に設けられている、
請求項1または2に記載の校正治具。
【請求項4】
前記主平面から見た場合に前記2つの頂点の間に設けられ、前記主平面と平行な副平面をさらに備えている、
請求項1から3の何れか1項に記載の校正治具。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の校正治具を用いて前記光干渉測定装置の向きを校正する校正方法であって、
前記光干渉測定装置の向きは、前記測定光の光軸と平行なz軸、前記z軸に直交するx軸、並びに、前記z軸および前記x軸に直交するy軸を有するxyz座標によって定義され、
前記主平面をy軸方向に測定光を走査することによって取得されるプロファイルにおいてz軸の値が等しい値を示すようにθ軸を校正するステップと、
前記θ軸を校正するステップにおいて取得されるプロファイルにおいて前記z軸の値を所定値と等しくするようにz軸を校正するステップと、
前記y軸方向に前記測定光を走査することによって取得されるプロファイルが前記2つの頂点を含むように前記y軸およびθ軸を校正するステップと、
前記校正治具における前記2つの頂点の間の面をx軸方向に前記測定光を走査することによって取得されるプロファイルにおいてz軸の値が等しい値を示すようにθ軸を校正するステップと、を含む、
校正方法。
【請求項6】
前記θ軸を校正するステップ、前記z軸を校正するステップ、並びに、前記y軸およびθ軸を校正するステップを実行した後に、
前記ある1点の前記y軸の値を取得するステップと、をさらに含む、
請求項5に記載の校正方法。
【請求項7】
請求項6に記載の校正方法によって校正された光干渉測定装置を用いて前記被測定物の測定を行う測定方法であって、
前記ある1点の前記y軸の値を取得するステップによって取得した前記y軸の値を、前記被測定物に対する前記測定光の照射位置におけるy軸の値に設定するステップと、
前記測定光の照射位置に、前記測定光を前記主平面に直交する方向に沿って射出するステップと、
前記測定光を前記ローラの中心軸に沿って走査して前記被測定物のプロファイルを取得するステップと、を含む、
測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、校正治具、校正方法、および、測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直方体状の校正治具が開示されている。特許文献1において、校正治具は、光干渉測定装置の向きの校正に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-235074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光干渉測定装置によって、被測定物の測定を行う場合、測定光は被測定物に対して所定の方向に走査される。例えば被測定物が円筒状のローラの周面上に配置されているシートである場合、測定光は、円筒状の周面に沿うシートの表面をローラの中心軸方向に沿って走査される。ローラに対して光干渉測定装置の向きが適切に校正されていないと、走査方向は、ローラの中心軸に対して傾斜していることが考えられる。走査方向がローラの中心軸に対して傾斜している状態で測定光が走査されると、測定光の照射位置がローラの周方向に変位し、かつ、測定光の入射角が変化するため、測定精度が低下する。
【0005】
本開示は、光干渉測定装置の向きの校正を高精度に行うことができる校正治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示における校正治具は、ローラの周面上の被測定物に向けて測定光を照射する光干渉測定装置の校正に用いられる校正治具であって、ローラの周面に沿う円筒面と、円筒面と反対側に円筒面の中心軸に対して平行に設けられ、測定光が照射される主平面と、主平面から第1距離離れて配置されている2つの頂点と、を備え、円筒面は、円筒面上のある1点を通り且つ円筒面の中心軸に直交する直線と、ある1点を通り且つ主平面に直交する直線とのなす角度が、予め定められた角度になる形状である。
【0007】
また、前記目的を達成するために、本開示における校正方法は、上記の校正治具を用いて光干渉測定装置の向きを校正する校正方法であって、光干渉測定装置の向きは、測定光の光軸と平行なz軸、z軸に直交するx軸、並びに、z軸およびx軸に直交するy軸を有するxyz座標によって定義され、主平面をy軸方向に測定光を走査することによって取得されるプロファイルにおいてz軸の値が等しい値を示すようにθ軸を校正するステップと、θ軸を校正するステップにおいて取得されるプロファイルにおいてz軸の値を所定値と等しくするようにz軸を校正するステップと、y軸方向に測定光を走査することによって取得されるプロファイルが2つの頂点を含むようにy軸およびθ軸を校正するステップと、校正治具における2つの頂点の間の面をx軸方向に測定光を走査することによって取得されるプロファイルにおいてz軸の値が等しい値を示すようにθ軸を校正するステップと、を含む。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本開示における測定方法は、上記の校正方法によって校正された光干渉測定装置を用いて被測定物の測定を行う測定方法であって、ある1点のy軸の値を取得するステップによって取得したy軸の値を、被測定物に対する測定光の照射位置におけるy軸の値に設定するステップと、測定光の照射位置に、測定光を主平面に直交する方向に沿って射出するステップと、測定光をローラの中心軸に沿って走査して被測定物のプロファイルを取得するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の校正治具によれば、光干渉測定装置の向きの校正を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】校正治具がローラに周面に配置され、光干渉測定装置の向きの校正が行われている状態を示す図
図2】ローラの周面にシートが配置されている状態を示す図
図3】校正治具の平面図
図4図3に示すIV-IV線に沿った断面図
図5】光干渉測定装置の構成を示す概要図
図6】光干渉測定装置の向きの校正方法を示すフローチャート
図7A図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
図7B図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
図8A図5の校正方法において測定光の走査方向を示す図
図8B図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
図9A図5の校正方法において測定光の走査方向を示す図
図9B図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
図10A図5の校正方法において測定光の走査方向を示す図
図10B図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
図11A図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
図11B図5の校正方法において取得されたプロファイルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の校正治具、校正方法、および、測定方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、校正治具1がローラ2に周面2aに配置され、光干渉測定装置3の向きの校正が行われている状態を示す図である。図1には、校正治具1、ローラ2、および、光干渉測定装置3が示されている。なお、図中に示されているxyz座標は、光干渉測定装置3の向きを表している(詳細は後述する)。
【0012】
<校正治具>
校正治具1は、ローラ2の周面2a上の被測定物に向けて測定光Rを照射する光干渉測定装置3の校正に用いられる。校正治具1は、光干渉測定装置3の向きの校正に用いられる。被測定物は、例えばシートSである。シートSは、図2に示されるように、ローラ2の周面2a上に配置され、ローラ2が回転することで搬送される。シートSは、例えば、セロハン樹脂およびポリイミド樹脂などの樹脂シート、並びに、綿、樹脂繊維、および、ガラス繊維などで作製された布または不織布である。
【0013】
校正治具1は、図3および図4に示されるように、平面視矩形状に設けられている。校正治具1は、円筒面10、主平面11、2つの頂点12,13、および、副平面14を有している。
【0014】
円筒面10は、ローラ2の周面2aに沿うように設けられている。円筒面10がローラ2の周面2aに接触することで、校正治具1がローラ2の周面2aに配置される。校正治具1がローラ2の周面2aに配置された場合、円筒面10の中心軸10aはローラ2の中心軸2bと一致する。
【0015】
主平面11は、円筒面10と反対側に円筒面10の中心軸10aに対して平行に設けられている。光干渉測定装置3の校正が行われる場合、測定光Rが主平面11に照射される。
【0016】
2つの頂点12,13は、主平面11と円筒面10との間に配置されている。2つの頂点12,13は、主平面11から第1距離h離れて配置されている。また、2つの頂点12,13は、円筒面10の中心軸10aに直交する平面上に設けられている。
【0017】
2つの頂点12,13は、2つの円錐面15,16それぞれによって構成される円錐の頂点である。2つの円錐面15,16は、主平面11から凹むように設けられている。2つの円錐面15,16の形状は、互いに等しくなるように設けられている。具体的には、2つの円錐面15,16それぞれによって構成される円錐の高さは、第1距離hである。また、2つの円錐面15,16それぞれによって構成される円錐の底面の直径は、第2距離dである。なお、2つの円錐面15,16は、主平面11から突出するように設けられてもよい。また、2つの頂点12,13は、角錐面の頂点でもよい。
【0018】
副平面14は、溝17の底面である。溝17は、2つの円錐面15,16の間において、円筒面10の中心軸10aに沿って延びる断面矩形状に形成されている。副平面14は、主平面11と第1距離h離れて、主平面11と平行に設けられている。つまり、副平面14は、主平面11から見た場合に2つの頂点12,13の間に設けられ、2つの頂点12,13と同一平面上に位置する。なお、2つの円錐面15,16が主平面11から突出するように設けられている場合、副平面14は、主平面11から断面矩形状に突出する突出部の先端面によって構成される。
【0019】
また、円筒面10は、円筒面10上のある1点Pを通り且つ円筒面10の中心軸10aに直交する直線Aと、ある1点Pを通り且つ主平面11に直交する直線Bとのなす角度が、予め定められた角度αになる形状である。また、ある1点Pを通り且つ主平面11に直交する直線Bは、2つの頂点12,13を結ぶ線分の中点Cを通る。さらに、2つの頂点12,13の中点Cは、副平面14上において、溝17の幅方向の中点と一致する。副平面14は、ある1点Pに対向している。
【0020】
また、ある1点Pは、光干渉測定装置3によって被測定物を測定する場合における測定光Rの照射位置に対応する点である(詳細は後述する)。また、予め定められた角度αは、光干渉測定装置3によって被測定物を測定する場合において、作業者が所望する測定光Rの入射角に定められている(詳細は後述する)。
【0021】
校正治具1の材質は、ミクロン単位の加工精度が実現でき、かつ測定光Rの反射率が10%以下であることが好ましい。校正治具1の材質は、例えばジルコニアなどのセラミック、黒アルマイト加工など反射率を低減させる処理を施した金属、および、ABSや6―6ナイロンのような樹脂などである。
【0022】
上記のように、主平面11と、2つ頂点12,13および副平面14との距離である第1距離hは、光干渉測定装置3において、後述する測定光Rの光軸(z軸)方向の測定可能範囲に含まれる距離である。また、2つの円錐面15,16は、光干渉測定装置3において、後述する測定光Rの光軸に直交する軸線(y軸)方向の測定可能範囲に含まれるように設けられている。
【0023】
<光干渉測定装置>
光干渉測定装置3は、波長走査型オプティカルコヒーレンストモグラフィー(SS-OCT:Swept Source Optical Coherence Tomography)を用いた光干渉信号測定装置である。光干渉測定装置3は、図5に示されるように、光ファイバ干渉計31、および、測定ヘッド32を備えている。
【0024】
光ファイバ干渉計31は、放射光と参照光との光路長差により生じる干渉光を測定に用いる測距手段である。光ファイバ干渉計31は、波長走査型光源31aおよびOCT演算部31bを備えている。
【0025】
波長走査型光源31aは、放射光を射出するとともに、光の波長を時間的に変化させるものである。波長走査型光源31aからの放射光は測定光Rと参照光とに分光される。測定光Rは、測定ヘッド32に入射する。
【0026】
測定ヘッド32は、照射コリメートレンズ32a、ガルバノミラー対32b、および、fθレンズ32cを備えている。測定ヘッド32に入射した測定光Rは、照射コリメートレンズ32a、ガルバノミラー対32b、および、fθレンズ32cを経て、図1において光干渉測定装置3が設置されている設置面の上方から設置面に向けて射出される。図5においては、測定光Rは、図5の上側から下側に向けて射出される。
【0027】
ガルバノミラー対32bは測定ヘッド32から射出される測定光Rの光軸回りに回転する第一のミラー32b1および測定光Rの光軸に直交する軸線回りに回転する第二のミラー32b2を有している。第一のミラー32b1および第二のミラー32b2が回転することにより、測定光Rは、測定光Rの光軸に直交し且つ互いに直交する2つの軸線方向に走査される。また、測定光Rの光軸の向きは、fθレンズ32cにより、ガルバノミラー対32bの角度によらず常に一定になる。
【0028】
そして、被測定物にて反射した測定光Rは、同じ光路を辿って光ファイバ干渉計31に入射し、参照光と合成され、干渉光となる。干渉光は、光ビート信号として、OCT演算部31bで解析される。
【0029】
OCT演算部31bは、光ビート信号の時間波形をフーリエ変換して、周波数解析を行うことで、干渉光の強度分布を表すSS-OCT信号を得る。OCT演算部31bは、このSS-OCT信号から、被測定物の測定光Rの光軸に沿う位置(高さ)を測定する。
【0030】
光干渉測定装置3において、参照光の光路長と、測定光Rの光路長とが等しいとき、検出される干渉光の光ビート信号の周波数はゼロとなる。このときの測定光Rの反射面の位置を、便宜上、ゼロ点とする。
【0031】
ゼロ点から被測定物までの距離が波長走査型光源31aのコヒーレンス長より大きい場合、測定光Rは参照光と干渉を起こさず、光ビート信号を検出することはできない。また、コヒーレンス長より小さくても、高さに比例する光ビート信号の周波数がOCT演算部31bの応答周波数を超えると、正しい信号を検出することはできない。つまり、光干渉測定装置3の光軸方向の測定可能範囲は、波長走査型光源31aのコヒーレンス長とOCT演算部31bの応答周波数との両者によって制限される。
【0032】
また、ガルバノミラー対32bの回転による走査角度と、fθレンズ32cの直径によって、測定光Rの光軸に直交し且つ互いに直交する2つの軸線方向の走査可能範囲が制限される。光干渉測定装置3において、上記の光軸方向の測定可能範囲、および、2つの軸線方向の走査可能範囲は、OCT演算部31bに予め記憶されている。
【0033】
また、光干渉測定装置3は、図1に示されるように、角度調整機構33および直動調整機構34に接続されている。角度調整機構33および直動調整機構34は、光干渉測定装置3の向きを調整するものである。光干渉測定装置3の向きは、x軸、y軸、z軸を有するxyz座標にて定義される。
【0034】
z軸は、測定ヘッドから射出される測定光Rの光軸と平行な軸である。x軸は、z軸に直交する軸線である。y軸は、z軸およびx軸に直交する軸線である。
【0035】
角度調整機構33は、例えばステッピングモータが用いられた回転機構およびゴニオ機構などを利用した角度調整ステージである。角度調整機構33は、θ軸調整機構33a、θ軸調整機構33b、および、θ軸調整機構33cを備えている。θ軸調整機構33aは、光干渉測定装置3のx軸回りの角度を調整する。θ軸調整機構33bは、光干渉測定装置3のy軸回りの角度を調整する。θ軸調整機構33cは、光干渉測定装置3のz軸回りの角度を調整する。
【0036】
直動調整機構34は、例えばリニアガイドなどの摺動機構を利用した直線ステージである。直動調整機構34は、x軸調整機構34a、y軸調整機構34b、および、z軸調整機構34cを備えている。x軸調整機構34aは、光干渉測定装置3のx軸方向の位置を調整する。y軸調整機構34bは、光干渉測定装置3のy軸方向の位置を調整する。z軸調整機構34cは、光干渉測定装置3のz軸方向の位置を調整する。角度調整機構33および直動調整機構34によって、光干渉測定装置3の向きが調整されることによって、測定光Rの照射位置および入射角が調整される。
【0037】
<校正方法>
次に、校正治具1を用いて光干渉測定装置3の向きを校正する校正方法について、図6のフローチャートを用いて説明する。作業者は、z軸が主平面11に直交するように(すなわちx軸およびy軸が主平面11と平行になるように)、x軸がローラ2の中心軸2bと平行になるように、且つ、y軸が2つの頂点12,13を通る直線と平行になるように、光干渉測定装置3の向きを校正する。
【0038】
はじめに、校正治具1は、ローラ2の周面2a上に、主平面11をおよそ水平にするように配置される。さらに、校正治具1における主平面11、副平面14、および、2つの頂点12,13を含む2つの円錐面15,16が、z軸方向の測定可能範囲内、並びに、x軸方向およびy軸方向の走査可能範囲内に位置するように、光干渉測定装置3の位置が調整される。また、光干渉測定装置3の向きは、x軸がおよそローラ2の中心軸2bに沿うように調整される。
【0039】
作業者は、光干渉測定装置の向きの校正を行う際に、校正治具1に測定光Rを照射し且つ測定光Rを走査してSS-OCT測定を行う。SS-OCT測定によって、測定光Rが走査された方向におけるz軸方向(高さ)のプロファイルを得ることができる。作業者は、得られたプロファイルをモニタ(不図示)などで確認することができる。作業者は、得られたプロファイルが所望のプロファイルになるように、光干渉測定装置3の向きを校正する。
【0040】
具体的には、作業者は、S10にて、測定光Rを主平面11に照射し且つy軸方向に走査して、SS-OCT測定を行う。図7Aは、S10のSS-OCT測定によって得られたプロファイルである。なお、図7Aおよび図7Bにおいて、2つの円錐面15,16および溝17のプロファイルは省略されている。
【0041】
図7Aに示されるように、得られたプロファイルが走査方向(y軸方向)に対して傾斜している場合、y軸が主平面11に対して傾斜している。そこで、作業者は、S11において、y軸が主平面11に対して平行になるように、θ軸回りの角度を調整する。
【0042】
続けて、作業者は、S12にて、測定光Rを主平面11に照射し且つy軸方向に走査して、SS-OCT測定を行う。作業者は、S13にて、θ軸の校正が完了したか否かを判定する。具体的には、作業者は、S12にて得られたプロファイルが、図7Bに示されるように、走査方向(y軸方向)に対して平行な所望のプロファイルであるか否かを判定する。
【0043】
S12にて得られたプロファイルが走査方向(y軸方向)に対して傾斜している場合(S13にてNO)、作業者は、S11およびS12を再度行う。
【0044】
一方、S12にて得られたプロファイルが走査方向(y軸方向)に対して平行な所望するプロファイルである場合、θ軸の校正が完了する(S13にてYES)。このように、作業者は、所望するプロファイルが得られるまで光干渉測定装置3の向きを繰り返し調整する。
【0045】
続けて、作業者は、S14にて、光干渉測定装置3の主平面11に対するz軸方向の位置を調整するために、S12にて得られたプロファイルを参照してz軸の値が所定値と等しくなるようにz軸を調整する。作業者は、S15にて、測定光Rを主平面11に照射し且つy軸方向に走査して、SS-OCT測定を行う。
【0046】
作業者は、S16にて、z軸の校正が完了したか否かを判定する。具体的には、作業者は、S15にて得られたプロファイルが、z軸の値が所定値と等しい所望のプロファイルであるか否かを判定する。
【0047】
S15にて得られたプロファイルにおいてz軸の値が所定値と異なる場合(S16にてNO)、作業者は、S14およびS15を再度行う。
【0048】
一方、S15にて得られたプロファイルにおいてz軸の値が所定値と等しい場合、z軸の校正が完了する(S16にてYES)。
【0049】
続けて、作業者は、S17にて、2つの頂点12,13に対するx軸方向の位置を調整するために、S15で得られたプロファイルを参照して、2つの頂点12,13のうち1つの頂点が現れる所望のプロファイルが得られるように、x軸を調整する。作業者は、S18にて、測定光Rを主平面11に照射し且つy軸方向に走査して、SS-OCT測定を行う。
【0050】
作業者は、S19にて、x軸の校正が完了したか否かを判定する。具体的には、作業者は、S18にて得られたプロファイルが、2つの頂点12,13のうち1つの頂点が現れている所望のプロファイルであるか否かを判定する。
【0051】
図8Aに示されるように、測定光Rが2つの円錐面15,16を走査しているが、2つの頂点12,13のいずれも走査していない場合、図8Bに示されるように、プロファイルには、2つの放物線形状が現れており、頂点が現れていない。つまり、図8Bに示されるプロファイルは、S19における所望のプロファイルでない。なお、図8Aおよび図8Bにおいて、溝17のプロファイルは省略されている。
【0052】
S18にて得られたプロファイルが、図8Bに示される2つの放物線形状を有するプロファイルであり、所望のプロファイルでない場合(S19にてNO)、作業者は、S17およびS18を再度行う。
【0053】
一方、図9Aに示されるように、測定光Rが2つの頂点12,13のうち1つの頂点12を走査している場合、図9Bに示されるように、プロファイルには、1つの三角形状と1つの放物線形状が現れる。この1つの三角形状の高さが第1距離hであり、かつ、1つの三角形状の走査方向の幅が第2距離dである場合、1つの三角形状は、1つの頂点を示している。つまり、図9Bに示されるプロファイルは、S19における所望のプロファイルである。なお、図9Aおよび図9Bにおいて、溝17のプロファイルは省略されている。
【0054】
S18にて得られたプロファイルが、図9Bに示される1つの三角形状を有する所望のプロファイルである場合、x軸の校正が完了する(S19にてYES)。
【0055】
続けて、作業者は、S20にて、2つの頂点12,13に対するy軸の向きを調整するために、S19で得られたプロファイルを参照して、2つの頂点12,13が現れる所望のプロファイルが得られるように、θ軸を調整する。作業者は、S21にて、測定光Rを主平面11に照射し且つy軸方向に走査して、SS-OCT測定を行う。
【0056】
作業者は、S22にて、θ軸の校正が完了したか否かを判定する。具体的には、作業者は、S21にて得られたプロファイルが、2つの頂点12,13が現れている所望のプロファイルであるか否かを判定する。
【0057】
S21にて得られたプロファイルが、図9Bに示される放物線形状を有するプロファイルであり、2つの頂点12,13が現れている所望のプロファイルでない場合(S22にてNO)、作業者は、S20およびS21を再度行う。
【0058】
一方、図10Aに示されるように、測定光Rが2つの頂点12,13を走査している場合、図10Bに示されるように、プロファイルには、2つの三角形状が現れる。この2つの三角形状の高さが第1距離hであり、かつ、2つの三角形状の走査方向の幅が第2距離dである場合、2つの三角形状は、2つの頂点12,13を示している。つまり、図10Bに示されるプロファイルは、S22における所望のプロファイルである。なお、図10Aおよび図10Bにおいて、溝17のプロファイルは省略されている。
【0059】
S21にて得られたプロファイルが、図10Bに示される2つの三角形状を有する所望のプロファイルである場合、θ軸の校正が完了する(S22にてYES)。
【0060】
なお、S22まで終了した時点において、y軸は、2つの頂点12,13を結ぶ直線と平行になっている。図10Bに示されるように、2つの頂点12,13のy軸の値をそれぞれY1およびY2とする。また、2つの頂点12,13の中点Cのy軸の値をY3とする。上記のように、2つの頂点12,13の中点Cは、円筒面10上のある1点Pとともに、主平面11に直交する直線Bを通る。つまり、Y3は、円筒面10上のある1点Pのy軸の値である。
【0061】
作業者は、S23にて、円筒面10上のある1点Pのy軸の値であるY3を取得して、光干渉測定装置3の記憶部(不図示)に格納する。Y3は、後述する光干渉測定装置3による被測定物の測定に用いられる。
【0062】
作業者は、S24にて、z軸が主平面11に対して直交するように、θ軸回りの角度を調整する。作業者は、S25にて、測定光Rを副平面14に照射し且つx軸方向に走査して、SS-OCT測定を行う。
【0063】
作業者は、S26にて、θ軸の校正が完了したか否かを判定する。具体的には、作業者は、S25にて得られたプロファイルが、走査方向(x軸方向)に対して平行な所望のプロファイルであるか否かを判定する。
【0064】
z軸が副平面14に直交する方向から傾斜していることにより、図11Aに示されるように、S25にて得られたプロファイルが走査方向(x軸方向)に対して傾斜している場合(S26にてNO)、作業者は、S24およびS25を再度行う。
【0065】
一方、z軸が副平面14に対して直交していることにより、図11Bに示されるように、S25にて得られたプロファイルが、走査方向(x軸方向)に対して平行な所望のプロファイルである場合(S26にてYES)、θ軸の校正が完了する。これにより、作業者は、光干渉測定装置3の向きの校正を終了する。
【0066】
上記のようにローラ2の周面2a上に配置可能な校正治具1を用いることで、ローラ2の周面2a上の被測定物に向けて測定光Rを照射する光干渉測定装置3の向きの校正を高精度に行うことができる。また、θ軸およびθ軸は、校正治具1の寸法ではなく、走査方向に対するプロファイルの傾斜に基づいて校正が行われている。よって、θ軸およびθ軸の校正を、光干渉測定装置3の測定可能範囲に関わらずに、高精度に校正することができる。
【0067】
<測定方法>
次に、上記の校正方法によって校正された光干渉測定装置3を用いて被測定物の測定を行う測定方法について説明する。被測定物は、例えば、ローラ2の周面2a上に配置されているシートSである(図2)。
【0068】
光干渉測定装置3を用いて被測定物の測定を行う場合、被測定物からの反射光によって光ビート信号が飽和することを避けるため、測定光Rの入射角は、ローラ2に対して0度より大きい角度にて行われる。測定光Rの入射角は、予め定められた角度α(例えば8°)に設定される。
【0069】
はじめに、作業者は、上記のS23で取得したy軸の値であるY3を、被測定物に対する測定光Rの照射位置におけるy軸の値に設定する。
【0070】
そして、作業者は、測定光Rの照射位置におけるy軸の値がY3となるように、y軸調整機構34bを調整する。さらに、作業者は、測定光Rが被測定物に照射されるように、x軸調整機構34aおよびz軸調整機構34cを調整する。
【0071】
続けて、作業者は、図2に示されるように、測定光Rを主平面11に直交する方向に沿って射出する。上記の校正方法によって、測定光Rの光軸(すなわちz軸)が主平面11に直交するように校正されている。よって、測定光Rの射出する角度を調整する角度調整機構33の操作を不要にすることができる。
【0072】
また、測定光Rの照射位置におけるy軸の値がY3は、円筒面10のある1点Pのy軸の値である。よって、測定光Rの入射角は、予め定められた角度αであり、作業者が所望する測定光Rの入射角となる。つまり、測定光Rの照射位置におけるy軸の値を、上記のS23において格納されたY3に設定することで、角度調整機構33の操作をすることなく簡便に、測定光Rの入射角を予め定められた角度αに調整することができる。
【0073】
さらに、作業者は、測定光Rをローラ2の中心軸2bに沿って走査して被測定物のプロファイルを取得する。x軸がローラ2の中心軸2bと一致するように校正されているため、作業者は、x軸に沿って測定光Rを走査する。つまり、測定光Rの走査方向を調整する角度調整機構33の操作を不要とすることができる。
【0074】
上記の校正治具1を用いた校正方法は、ローラ2の周面2a上の被測定物の測定における角度調整機構33の操作を不要にできるため、ローラ2の周面2a上の被測定物の測定を簡便にすることができる。
【0075】
本開示は、これまでに説明した実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれる。
【0076】
例えば、2つの頂点12,13は、円筒面10の中心軸10aに直交する平面上に設けられてなくてもよい。この場合、x軸の向きは、上記の校正方法において、主平面11に平行、かつ、ローラ2の中心軸2bに対して傾斜して校正される。よって、上記の測定方法において、測定光Rをローラ2の中心軸2b方向に沿って走査できるように、2つの頂点12,13を結ぶ直線とローラ2の中心軸2bとの傾斜角度を予め把握しておく。
【0077】
また、副平面14は、光干渉測定装置3の測定可能範囲内において、主平面11との距離を第1距離hと異なるように設けられてもよい。
【0078】
また、校正治具1は、副平面14を構成する溝17を有さないように設けられてもよい。この場合、校正方法のS25において、測定光Rは主平面11に照射される。
【0079】
また、校正方法において、ある1点Pのy軸の値であるY3を格納するS23は、S26より後に行われてもよい。
【0080】
また、校正方法において、ある1点Pのy軸の値であるY3を格納するS23を実行しなくてもよい。この場合、ある1点Pのy軸の値であるY3は、2つの頂点12,13のy軸の値であるY1およびY2の中点であるため、光干渉測定装置3によって、Y1およびY2から簡便に算出することができる。
【0081】
また、ある1点Pのy軸の値であるY3は、y軸において2つの頂点12,13の中点Cであるが、2つの頂点12,13を結ぶ直線上の任意の位置でもよい。この場合においても、ある1点Pのy軸の値であるY3は、Y1およびY2から簡便に算出することができる。
【0082】
また、ある1点Pは、2つの頂点12,13を結ぶ直線から外れて設けられてもよい。この場合、ある1点Pと2つの頂点12,13との相対位置を光干渉測定装置3に格納しておくことで、被測定物の測定時に、ある1点Pの位置を、2つの頂点12,13の位置から算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ローラの周面上の被測定物に向けて測定光を照射する光干渉測定装置の校正に用いられる校正治具、当該校正治具を用いた校正方法、および、当該校正方法によって校正された光干渉測定装置を用いて被測定物の測定を行う測定方法に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 校正治具
2 ローラ
2a 周面
2b 中心軸
3 光干渉測定装置
10 円筒面
10a 円筒面の中心軸
11 主平面
12 頂点
13 頂点
14 副平面
A ある1点を通り且つ円筒面の中心軸に直交する直線
B ある1点を通り且つ主平面に直交する直線
h 第1距離
P ある1点
R 測定光
α 予め定められた角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B