(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181962
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ピラー構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20221201BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B62D25/04 B
B60J5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089221
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】二戸 史
(72)【発明者】
【氏名】高岸 泰治
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203BB56
3D203CA23
3D203CA53
3D203CB09
3D203DA34
3D203DA55
(57)【要約】
【課題】前突による荷重をより確実にピラーの車幅方向内側の壁部に分散する。
【解決手段】ピラー構造では、ドアインパクトビームを備えたドアの車両後方側に配設されたピラーは、車両前後方向前側の第1壁部と、車幅方向内側の第2壁部と、車幅方向外側の第3壁部とを含む。また、ピラーの内部に第1壁部を挟んでドアインパクトビームの後端部と車両前後方向に対向するように配設された補強部材と、第2壁部にシートベルトアンカを取り付ける取付具と、を備える。補強部材の車幅方向外側は、第3壁部に接合され、補強部材の車幅方向内側は、取付具によって第2壁部に対する車両前後方向の移動が規制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアインパクトビームを備えたドアの車両後方側に配設されたピラーであって、車両前後方向前側の第1壁部と、車幅方向内側の第2壁部と、車幅方向外側の第3壁部とを含むピラーと、
前記ピラーの内部に前記第1壁部を挟んで前記ドアインパクトビームの後端部と車両前後方向に対向するように配設された補強部材と、
前記第2壁部にシートベルトアンカを取り付ける取付具と、
を備え、
前記補強部材の車幅方向外側は、前記第3壁部に接合され、
前記補強部材の車幅方向内側は、前記取付具によって前記第2壁部に対する車両前後方向の移動が規制された、
ピラー構造。
【請求項2】
前記取付具は、前記補強部材の車幅方向内側に配設された穴部に挿入される、請求項1に記載のピラー構造。
【請求項3】
前記補強部材の車幅方向内側は、前記第2壁部にボルトにより締結される、請求項1に記載のピラー構造。
【請求項4】
前記補強部材は、車幅方向外側において前記第3壁部に接合される接合部と、車幅方向内側において前記第2壁部に対する車両前後方向の移動が規制される被規制部と、前記接合部と前記被規制部との間において、車両前後方向に対して斜め方向に延在する傾斜壁部と、を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のピラー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動車のセンターピラー内に、前方のドア内に設置されたドアリィンフォースメントの後端縁に対応する位置に、前後方向の第1の壁面部と、第1の壁面部の前縁および後縁から車内側へ延出する第2および第3の壁面部、とで水平断面ほぼコ字形に一体形成したバルクヘッドを設ける、自動車のセンターピラー構造を開示している。そして、バルクヘッドには、その下半部を車内側へ下降傾斜する上下ほぼく字形に形成して第1の壁面部にセンターピラー内部を上下に仕切る仕切部を形成し、仕切部の前縁はドアリィンフォースメントの後端縁と対向し、車両の前面衝突時に後方へ移動するドアリィンフォースメントの後端縁をバルクヘッドの第2の壁面部および仕切部の前縁で受け止める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両前突時に入力された荷重の一部はドアインパクトビームを介してピラー前方側の壁部に入力され、補強部材に伝達される。そのため、当該補強部材にはピラーに対して車両後方に向けて移動させようとする荷重が入力される。しかし、ピラーの車幅方向内側の壁部には、当該荷重が分散され難かった。
【0005】
本発明の目的は、前突による荷重をより確実にピラーの車幅方向内側の壁部に分散することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るピラー構造では、ドアインパクトビームを備えたドアの車両後方側に配設されたピラーは、車両前後方向前側の第1壁部と、車幅方向内側の第2壁部と、車幅方向外側の第3壁部とを含む。また、ピラーの内部に第1壁部を挟んでドアインパクトビームの後端部と車両前後方向に対向するように配設された補強部材と、第2壁部にシートベルトアンカを取り付ける取付具と、を備える。補強部材の車幅方向外側は、第3壁部に接合され、補強部材の車幅方向内側は、取付具によって第2壁部に対する車両前後方向の移動が規制される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前突による荷重をより確実にピラーの車幅方向内側の壁部に分散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るピラー構造について説明するための図であり、車両におけるドアインパクトビーム、及び補強部材の配設関係を示す模式的側面図である。
【
図2】実施形態に係るピラー構造を用いるピラーの車両における配設位置を示す、車両の部分斜視図である。
【
図3】実施形態に係るピラー構造における補強部材の配設位置を示す図であって、補強部材とインナーパネルとの配設関係を示す部分斜視図である。
【
図4】実施形態に係るピラー構造における、ドアインパクトビーム、インナーパネル、及び補強部材の配設関係を示す部分側面図である。
【
図5】実施形態に係るピラー構造が備える補強部材を示す、車幅方向外側から見た側面図である。
【
図6】実施形態に係るピラー構造が備える補強部材を示す、車幅方向内側から見た側面図である。
【
図7】実施形態に係るピラー構造が備える補強部材を示す、上面図である。
【
図8】実施形態に係るピラー構造を説明するための図であって、ドアインパクトビーム、インナーパネル、アウターパネル、補強部材、及び取付具の配設関係を示す、
図1のA-A線に沿った部分断面図である。
【
図9】実施形態に係るピラー構造を説明するための図であって、インナーパネル、アウターパネル、補強部材、及び取付具の配設関係を示す、
図1のB-B線に沿った部分断面図である。
【
図10】実施形態に係るピラー構造を説明するための図であって、アウターパネル、インナーパネル、補強部材、及びシートベルトの配設関係を示す部分的分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るピラー構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方を、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車両上下方向上方、下方をそれぞれ示す。なお、以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車両上下方向上方、下方、車幅方向左方、右方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「車両上方」「車両下方」「車両左方」「車両右方」と称する。また、車幅方向における車両中心側を車幅方向内側といい、車幅方向内側とは反対側を車幅方向外側という。各図中では車幅方向内側をISで示し、車幅方向外側をOSで示す。なお、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態に係るピラー構造は、例えばバン、トラック等の貨物自動車である車両Vのピラーに用いることができる。
【0011】
図1に示すように、車両Vのドア100はドアインパクトビーム110を備える。ドアインパクトビーム110は、ドア100の内部において車両前後方向に延在する、例えば、高張力鋼等の金属から構成された長尺部材である。図示した例では、ドアインパクトビーム110はドア100の図示しないヒンジ側の端部から、当該ヒンジとは反対側の端部にかけて延在しており、両端部はブラケット等の固定具を介してドア100内部に固定される。このようなドアインパクトビーム110を備えることにより、側面衝突時における車両Vの強度を向上させることができる。
【0012】
ドア100の車両後方側にはピラー1が配設されている。図示した例では、ピラー1は車両Vの車両右方側に設けられた車両前方側の前部ドアであるドア100と、後部ドア100aとの間において車両上下方向に延在するセンターピラーである。従って、ピラー1の車幅方向外側は車両右方に、車幅方向内側は車両左方に対応する。なお、実施形態に係るピラー構造は、例えば
図2に示す車両Vの車両左方側に設けられたピラー1bや、後部ドア100aの後方側に設けられたリアピラー1aに用いられてもよい。
【0013】
実施形態に係るピラーの構造は、
図1乃至
図10に示すように、ピラー1の車両前後方向前側の第1壁部10と、車幅方向内側の第2壁部20と、車幅方向外側の第3壁部30と、補強部材40と、取付具70と、を備える。また、
図8及び
図9に例示するように、ピラー1は、インナーパネル2とアウターパネル3とを備え、中空閉断面構造を有する。
【0014】
インナーパネル2は、
図3に示すようにピラー1の車幅方向内側において車両上下方向に延在する板状の部材であり、例えば鋼等の金属から構成される。なお、繊維強化樹脂等の複合材からインナーパネル2を構成してもよい。また、図示した例のようにインナーパネル2はロアーインナーパネル2a、及びアッパーインナーパネル2bを含んでいてもよい。
【0015】
図8及び
図9に示すように、インナーパネル2は車両前方側の前フランジ21と車両後方側の後フランジ22とを有する。また、図示した例では、ピラー1の車幅方向内側の壁部である第2壁部20は、前フランジ21と後フランジ22との間において車両前後方向に延在する壁部である。また、第2壁部20の車両前方側の領域には車幅方向に貫通する穴部23が形成され、さらに、当該穴部23とネジ穴とが連通するように、ナット72が第2壁部20の車幅方向外側に設けられている。なお、インナーパネル2の少なくとも穴部23の周辺の領域には、インナーパネル2を補強する図示しない補強板が配設されていてもよい。
【0016】
取付具70は第2壁部20にシートベルトアンカ81を取り付けるための取付具であり、図示した例では、ボルト71及びナット72を含む。
図10に示すように、ボルト71とナット72とを締結することで、シートベルト80の下方側端部に配設された固定具であるシートベルトアンカ81を第2壁部20に取り付けることができる。
【0017】
アウターパネル3は、ピラー1の車幅方向外側を構成する部材であり、例えば鋼等の金属から構成される。なお、繊維強化樹脂等の複合材からアウターパネル3を構成してもよい。
図8及び
図9に示すように、アウターパネル3のうち、インナーパネル2と車幅方向において対向する領域は、車両上下方向視でハット型の断面形状を有しており、車両前方側の前フランジ31と車両後方側の後フランジ32とを備える。また、図示した例ではアウターパネル3はボディサイドパネル4の車幅方向内側に配設されている。
【0018】
また、図示した例では、ピラー1の車幅方向外側の壁部である第3壁部30は、前フランジ31と後フランジ32との間において車両前後方向に延在する壁部である。第2壁部20と第3壁部30とは車幅方向において対向する。
【0019】
第3壁部30の車両前方側端部からは車幅方向内側に向けて延在し前フランジ31に接続する、ピラー1の車両前後方向前側の壁部である第1壁部10が形成される。また、第3壁部30の車両後方側端部からは車幅方向内側に向けて延在し後フランジ32に接続する後壁部33が形成されている。なお、図示した例ではアウターパネル3の車両前方側の壁部が第1壁部10を構成するが、これに限定されない。例えば、インナーパネル2が、その車両前方側端部から車幅方向外側に向けて延在する壁部を備える場合には、当該壁部が第1壁部10を構成してもよい。
【0020】
このようなインナーパネル2の前フランジ21及び後フランジ22の各々を、アウターパネル3の前フランジ31及び後フランジ32に、接着、溶接等の接合手段により接合することで、ピラー1が構成され、ピラー1内部には空間Sが形成される。
【0021】
図3及び
図4、並びに
図8及び
図9に示すように、ピラー1の内部の空間Sには、ピラー1を補強する、例えば鋼等の金属から構成された補強部材40が配設されている。また、
図4に示すように、補強部材40とドアインパクトビーム110とは、車両上下方向において略同じ高さに位置するように配置される。また、
図8に示すように、補強部材40とドアインパクトビーム110とは、車幅方向において略同じ位置に配置される。換言すれば、補強部材40は、第1壁部10を挟んでドアインパクトビーム110の後端部111と車両前後方向において対向するように配設される。
【0022】
補強部材40は、
図5乃至
図7に例示するように、車幅方向と平行な軸方向視で全体として略矩形の形状を備える。また、補強部材40は接合部41と、被規制部42と、傾斜壁部60と、を有する。
【0023】
図示した例では、接合部41は、補強部材40の車両後方側かつ車幅方向外側において、車両前後方向に延在する、車幅方向と平行な軸方向視で略U形の形状を備える壁部である。被規制部42は、補強部材40の車両前方側かつ車幅方向内側において、車両前後方向に延在する壁部である。さらに、被規制部42には、車幅方向に貫通する開口である穴部50が形成されている。換言すれば、穴部50は、補強部材40の車幅方向内側に配設されている。また、穴部50の直径は後述するナット72の対角距離よりも大きい。
【0024】
図9に示すように、補強部材40の接合部41の車幅方向外側は、第3壁部30の内壁面と接触するように配設されるとともに、両者は溶接等の接合手段により接合される。
【0025】
また、補強部材40の被規制部42の車幅方向内側は、インナーパネル2の第2壁部20の内壁面と車幅方向において対向するように配設される。図示した例では、被規制部42の車幅方向内側と第2壁部20の内壁面とは当接しているが、これに限定されず、両者は車幅方向において所定の間隔を隔てて離間していてもよい。
【0026】
傾斜壁部60は、接合部41と、被規制部42との間において、車両前後方向に対して斜め方向に延在する壁部である。図に示す例では、傾斜壁部60は、接合部41の車両前方側縁部と、被規制部42の車両後方側縁部との間において、車両前後方向に対して斜め方向に延在している。また、ピラー1の延在方向と垂直な閉断面において、当該閉断面を車両前後方向に対して斜め方向に仕切る。なお、接合部41と、傾斜壁部60と、被規制部42との接続は図示した例に限定されない。例えば、傾斜壁部60は、接合部41の車両後方側端部と、被規制部42の車両前方側端部との間に延在してもよい。
【0027】
傾斜壁部60と接合部41との間には曲面が形成されていてもよく、また、傾斜壁部60と被規制部42との間には曲面が形成されていてもよい。図示した例では、傾斜壁部60と接合部41とは、車両上下方向視で所定の曲率半径を備える曲面により接続され、傾斜壁部60と被規制部42とは車両上下方向視で所定の曲率半径を備える曲面で接続されている。
【0028】
また、
図5乃至
図7に例示するように、補強部材40の車両前方側にはフランジ61が形成されていてもよい。また
図8に示すように、フランジ61とアウターパネル3の第1壁部10とが当接していてもよい。換言すれば、補強部材40の車両前方側は第1壁部10の内壁面に当接してもよい。もっとも、補強部材40の車両前方側と、第1壁部10との間は、所定の間隔を介して離間していてもよい。
【0029】
補強部材40の車幅方向内側は、取付具70によって第2壁部20に対する車両前後方向の移動が規制されるように構成される。図示した例では、取付具70が、補強部材40の車幅方向内側に配設された穴部50に挿入される。より具体的には、補強部材40の被規制部42に設けられた穴部50に、第2壁部20に設けられたナット72が挿入されることにより、補強部材40の車幅方向内側は、取付具70のナット72によって第2壁部20に対する車両前後方向の移動が規制される。
【0030】
なお、補強部材40の車幅方向内側の第2壁部20に対する車両前後方向の移動を規制する構成は、上記の構成に限定されない。例えば、被規制部42の車幅方向外側に穴部50とネジ穴とが連通するようにナット72を設け、第2壁部20の穴部23を通じてボルト71をナット72に締結する構成としてもよい。この場合には、インナーパネル2の第2壁部20と、補強部材40の被規制部42とが取付具70により共締めされる。換言すれば、補強部材40の車幅方向内側は、第2壁部20に取付具70によって締結されてもよい。
【0031】
なお、上述した説明では取付具70としてボルト71及びナット72を例にとったが、これに限定されず、例えば、取付具70はナット72を含まなくてもよい。その場合には、第2壁部20の穴部23をボルト71が螺合可能なネジ穴として形成し、当該ネジ穴とボルト71とを締結することにより、シートベルトアンカ81を第2壁部20に取り付けることができる。そして、補強部材40の穴部50にボルト71が挿入されることにより、補強部材40の車幅方向内側が、第2壁部20に対する車両前後方向の移動が規制されるように構成してもよい。また、補強部材40の被規制部42に設けられた穴部50をボルト71が螺合可能なネジ穴として形成し、当該ネジ穴とボルト71とを締結することにより、インナーパネル2の第2壁部20と、補強部材40の被規制部42とが取付具70により共締めされてもよい。なお、ナット72に代えて、ボルト71が螺合可能なネジ穴を形成したボスを、第2壁部20の車幅方向外側、又は補強部材40車幅方向外側に設けてもよい。
【0032】
なお、補強部材40の接合部41、及び被規制部42の、車両前後方向における位置関係は図示した例に限定されず、例えば車両Vの形状やピラー1の断面形状に応じて適宜変更することができる。例えば、接合部41は、補強部材40の車両前方側かつ車幅方向外側に形成されていてもよく、被規制部42は、補強部材40の車両後方側かつ車幅方向内側に形成されていてもよい。その場合には、傾斜壁部60は、接合部41の車両後方側縁部と、被規制部42の車両前方側縁部との間に延在していてもよい。そして、接合部41は第3壁部30の車両前方側に接合され、被規制部42は第2壁部20の車両後方側で、第2壁部20に対する車両前後方向における移動を規制されることとなる。
【0033】
次に、
図10を参照し、実施形態に係るピラー構造を構成する手順の一例を説明する。
【0034】
まず、アウターパネル3の第3壁部に補強部材40の接合部41を接合する。次に、インナーパネル2の穴部23と補強部材40の穴部50とを車幅方向と平行な軸方向視で略一致させ、穴部50にナット72を挿入し、さらに、インナーパネル2の前フランジ21及び後フランジ22の各々と、アウターパネル3の前フランジ31及び後フランジ32とを接合する。そして、ボルト71をナット72に締結しシートベルトアンカ81をインナーパネル2の第2壁部に取り付ける。このようにして、実施形態に係るピラー構造を構成することができる。
【0035】
以下、
図4及び
図8乃至
図9を参照し、実施形態に係るピラー構造の作用効果について説明する。
【0036】
車両Vが前突した際、車両前方から入力された衝突荷重の一部は、ドアインパクトビーム110に伝達される。そして、当該荷重はドアインパクトビーム110から、
図4又は
図8に示す矢印D方向の力として、ピラー1の第1壁部10に伝達される。さらに、第1壁部10に入力された力は、例えば、補強部材40の車両前方側端部に形成されたフランジ61から補強部材40に伝達される。従って、車両Vの前突時、補強部材40にはピラー1に対して車両後方に向けて移動させようとする荷重が入力されることとなる。
【0037】
(1)実施形態に係るピラー構造は、ドアインパクトビーム110を備えたドア100の車両後方側に配設されたピラー1であって、車両前後方向前側の第1壁部10と、車幅方向内側の第2壁部20と、車幅方向外側の第3壁部30とを含むピラー1と、ピラー1の内部に、第1壁部10を挟んでドアインパクトビーム110の後端部111と車両前後方向に対向するように配設された補強部材40と、第2壁部20にシートベルトアンカ81を取り付ける取付具70と、を備える。補強部材40の車幅方向外側は、第3壁部30に接合され、補強部材40の車幅方向内側は、取付具70によって第2壁部20に対する車両前後方向の移動が規制される。
【0038】
補強部材40の車幅方向外側に設けられた接合部41は、ピラー1の車幅方向外側壁部を構成するアウターパネル3の第3壁部30の内壁面に接合されているため、補強部材40に入力された衝突荷重はアウターパネル3に伝達される。さらに、ピラー1の車幅方向内側壁部を構成するインナーパネル2の第2壁部20の内壁面に対する、補強部材40の車幅方向内側に設けられた被規制部42の車両前後方向の移動は、シートベルトアンカ81をピラー1の車幅方向内側の第2壁部に取り付ける取付具70によって規制されている。これにより、補強部材40に入力された衝突荷重はインナーパネル2に伝達される。換言すれば、当該荷重は、ピラー1のアウターパネル3及びインナーパネル2に分散される。従って、前突による荷重をより確実にピラー1の車幅方向内側の壁部に分散することができる。ひいては、前突に対するピラー1の強度をより高くすることができる。
【0039】
なお、補強部材40の車両前方側は第1壁部10の内壁面に当接してもよい。
【0040】
これにより、前突時にドアインパクトビーム110からピラー1の第1壁部10に伝達された衝突荷重を、より確実に補強部材40の車両前方側端部で受けることができる。そのため、前突による荷重をより確実にピラー1のアウターパネル3、及び車幅方向内側の壁部であるインナーパネル2に分散することができる。
【0041】
(2)実施形態に係るピラー構造では、取付具70は、補強部材40の車幅方向内側に配設された穴部50に挿入される。
【0042】
これにより、補強部材40の車幅方向内側に設けられた被規制部42の、インナーパネル2の第2壁部20に対する移動をより容易に規制することができる。従って、より容易に実施形態に係るピラー構造を構成することができる。
【0043】
(3)実施形態に係るピラー構造では、補強部材40の車幅方向内側は、第2壁部20にボルト71により締結されてもよい。
【0044】
これにより、補強部材40の車幅方向内側に設けられた被規制部42は、より確実にインナーパネル2の第2壁部20の内壁面に締結固定される。そのため、前突により補強部材40に入力された荷重をより確実にピラー1の車幅方向内側の壁部に分散することができる。
【0045】
(4)実施形態に係るピラー構造では、補強部材40は、車幅方向外側において第3壁部30に接合される接合部41と、車幅方向内側において第2壁部20に対する車両前後方向の移動が規制される被規制部42と、接合部41と被規制部42との間において、車両前後方向に対して斜め方向に延在する傾斜壁部60と、を備える。
【0046】
これにより、ドアインパクトビーム110から入力された衝突荷重は、
図9に例示された矢印E方向のように、補強部材40の車両前後方向前方側から、車両前後方向後方側に向けて、傾斜壁部60を介して車両前後方向に対する斜め方向に伝達される。そのため、当該荷重に対する補強部材40の強度をより高めることができる。これにより、補強部材40によってピラー1をより強固に補強し、当該荷重に対するピラー1の剛性をより高くすることができる。
【0047】
なお、実施形態に係るピラー構造では、傾斜壁部60と接合部41との間に曲面が形成され、傾斜壁部60と被規制部42との間に曲面が形成されていてもよい。
【0048】
これにより、傾斜壁部60と接合部41との間に稜線が形成され、又は傾斜壁部60と被規制部42との間には稜線が形成される場合に比べ、衝突荷重に対する補強部材40の強度をより高めることができる。これにより、補強部材40によってピラー1をより強固に補強し、当該荷重に対するピラー1の剛性をより高くすることができる。なお、稜線とは、屈折された壁部において、屈折部に生じる折り目のことを言う。
【0049】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0050】
なお、上記説明では、実施形態に係るピラー構造をバン、トラック等の車両Vのピラーに用いる場合を例にとったが、当該ピラー構造がSUV等の乗用車にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1 ピラー
10 第1壁部
20 第2壁部
30 第3壁部
40 補強部材
41 接合部
42 被規制部
50 穴部
60 傾斜壁部
70 取付具
71 ボルト
81 シートベルトアンカ
100 ドア
110 ドアインパクトビーム
111 後端部