(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181979
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ゲート駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089242
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕司
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740AA05
5H740BA11
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM11
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチング素子のゲートオン直後においても短絡状態の検知ができ、短縮しすぎた設定デッドタイムへのフィードバックなどデッドタイム短縮制御のフェールセーフとして活用することもできるようにしたゲート駆動装置を提供する。
【解決手段】ゲート駆動型の半導体スイッチング素子のそれぞれに対応して設けられる制御回路によりゲート駆動信号を与えて駆動制御を行うゲート駆動装置であって、半導体スイッチング素子の電流の時間変化量を検出する微分回路と、微分回路により検出される電流の時間変化量のうち、リカバリ電流の戻り期間における時間変化量が所定レベル以上であるときに検出信号を出力する比較回路とを備え、制御回路は、オンオフ指令および比較回路からの検出信号に基づいて短絡状態であるか否かを判定し、この結果に基づいてデッドタイムを調整設定したゲート駆動信号により半導体スイッチング素子を駆動制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート駆動型の半導体スイッチング素子を上下アームに配置して負荷に給電する構成においてオンオフ指令信号に基づいて前記半導体スイッチング素子のそれぞれに対応して設けられる制御回路(11a、11b、111a、111b、211a、211b)により前記半導体スイッチング素子にゲート駆動信号を与えて駆動制御を行うゲート駆動装置であって、
前記半導体スイッチング素子の電流の時間変化量を検出する微分回路(30a、30b)と、
前記微分回路により検出される前記電流の時間変化量のうち、リカバリ電流の戻り期間における時間変化量が所定レベル以上であるときに検出信号を出力する比較回路(40a、40b)とを備え、
前記制御回路は、前記オンオフ指令および前記比較回路からの検出信号に基づいて短絡状態であるか否かを判定し、この結果に基づいてデッドタイムを調整設定したゲート駆動信号により前記半導体スイッチング素子を駆動制御するゲート駆動装置。
【請求項2】
前記制御回路は、上下アームの前記半導体スイッチング素子を統括して制御する統括制御部(4)に前記短絡状態であるか否かの判定結果を出力し、前記統括制御部によりデッドタイムが調整設定された前記オンオフ指令信号を入力して前記半導体スイッチング素子を駆動制御する請求項1に記載のゲート駆動装置。
【請求項3】
前記制御回路は、上下アームの前記半導体スイッチング素子を統括して制御する統括制御部(4)からデッドタイムが調整されていない前記オンオフ指令信号を入力し、前記短絡状態であるか否かの判定結果を上下アームの制御回路同士で共有してデッドタイムを調整設定してゲート駆動信号を生成する請求項1に記載のゲート駆動装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記オンオフ指令および前記比較回路からの検出信号に加えて、前記半導体スイッチング素子の電流値に基づいて短絡状態であるか否かを判定する請求項1から3のいずれか一項に記載のゲート駆動装置。
【請求項5】
前記半導体スイッチング素子はセンス素子を備え、前記半導体スイッチング素子の電流を前記センス素子の電流により検出する請求項1から3のいずれか一項に記載のゲート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下アームに半導体スイッチング素子を設けて負荷に給電する構成のインバータなどのゲート駆動装置では、近年、半導体スイッチング素子としてSiCMOSトランジスタを用いるものがある。SiCMOSトランジスタは、ボディダイオードを使用する場合に、オン電圧が高いため損失が大きくなり、またボディダイオードの通電劣化も問題になる。
【0003】
そこで同期整流を行うことで損失低減やボディダイオード通電時間の低減を図ることで素子へのストレスを低減している。同期整流制御では、上下アーム短絡が発生しないように対向アームオフと自アームオンの間にデッドタイムDT(Dead Time)を設定する必要があり、インバータ損失低減のためにデッドタイムを短縮する必要がある。
【0004】
デッドタイム短縮の手法としては、例えば実デッドタイムを計測してフィードバックすることで次回に反映して制御する方法がある。しかし、実際には制御ばらつきや制御破綻による上下アーム短絡が発生する懸念があった。
【0005】
しかし、一方で、アームがオンするタイミングでボディダイオードによるリカバリ電流が流れることで通常状態であっても大きな電流が流れることがあり、これを避けるため、オン駆動直後に短絡誤検知の防止のため、マスク期間を設けて、そのマスク期間の経過後に検知閾値を超えた際に短絡検知をする方式が採用されることがある。
【0006】
ところが、この方式では、マスク期間中の短絡検知ができないため、ターンオンの瞬間や直後での短絡検出ができなくなり、デッドタイムを短くし過ぎた際の微小な短絡電流が検知できないという課題が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、ゲート駆動型の半導体スイッチング素子のゲートオン直後においても短絡状態の検知ができ、短縮しすぎた設定デッドタイムへのフィードバックなどデッドタイム短縮制御のフェールセーフとして活用することもできるようにしたゲート駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のゲート駆動装置は、ゲート駆動型の半導体スイッチング素子を上下アームに配置して負荷に給電する構成においてオンオフ指令信号に基づいて前記半導体スイッチング素子のそれぞれに対応して設けられる制御回路により前記半導体スイッチング素子にゲート駆動信号を与えて駆動制御を行うゲート駆動装置であって、前記半導体スイッチング素子の電流の時間変化量を検出する微分回路と、前記微分回路により検出される前記電流の時間変化量のうち、リカバリ電流の戻り期間における時間変化量が所定レベル以上であるときに短絡状態を判定する判定回路とを備え、前記制御回路は、前記オンオフ指令および前記判定回路からの判定結果に基づいてデッドタイムを調整設定したゲート駆動信号により前記半導体スイッチング素子を駆動制御する。
【0010】
上記構成を採用することにより、制御回路により、自己に対応する半導体スイッチング素子をオン駆動すると、この後半導体スイッチング素子に流れる電流が微分回路により微分されて時間変化量が検出され、そのリカバリ電流の戻り期間における時間変化量が所定レベル以上であるか否かが判定回路により判定される。
【0011】
このとき、時間変化量が所定レベル以上でない場合には短絡が発生していないので、デッドタイムが適正に設定されている状態であり、時間変化量が所定レベル以上である場合には短絡状態であることが判定され、デッドタイムが調整設定される。この結果、対向アームの半導体スイッチング素子はデッドタイムが調整されたタイミングでオン駆動されるようになる。
【0012】
これにより、ゲートオン直後にマスク期間を設けることなく、この期間内で自アームのオン直後に迅速に短絡状態を判定することができ、半導体スイッチング素子が損傷を受けない範囲で短絡エネルギーを抑制することができる。また、短縮しすぎた設定デッドタイムへのフィードバックなどデッドタイム短縮制御のフェールセーフとして活用することもでき、デッドタイムを可能な限り短縮することができる。
【0013】
さらに、半導体スイッチング素子のリカバリ電流の戻りの傾きを微分回路により検出しているので、マスク期間を設けないことができるとともに、半導体スイッチング素子の電流値だけの監視を行うことで発生する過電流誤検知を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
電気的構成を示す
図1において、上下アームは、直列接続された半導体スイッチング素子であるNチャンネル型のSiCMOSトランジスタ(以下、単にMOSトランジスタと称する)1a、1bにより構成される。下アームにはMOSトランジスタ1a、上アームにはMOSトランジスタ1bが配置される。それぞれのMOSトランジスタ1a、1bは、ボディダイオード2a、2bを有する。MOSトランジスタ1a、1bの共通接続点は、負荷であるインダクタ3が接続されている。
【0016】
MOSトランジスタ1a、1bは、それぞれゲート駆動装置10A、10Bによりゲート駆動制御が行われる。ゲート駆動装置10A、10Bはいずれも同等の構成であり、以下、ゲート駆動装置10Aの構成には添え字aを付し、ゲート駆動装置10Bの構成には添え字bを付して示す。ゲート駆動装置10A、10Bは、マイコン4からそれぞれオンオフ指令信号Sx1、Sx2が与えられ、マイコン4に対して短絡検出信号Ss1、Ss2を出力する。以下、ゲート駆動装置10Aを代表して構成について説明する。
【0017】
ゲート駆動装置10Aは、制御回路11a、電流検出用のセンス素子12a、電流モニタ13a、駆動回路20a、微分回路30aおよび比較回路40aを備えている。制御回路11aは、マイコン4からデッドタイムが調整設定されたオンオフ指令信号Sx1が与えられ、これに応じて駆動回路20aに駆動信号を出力してMOSトランジスタ1aを駆動する。また、制御回路11aは、比較回路40aからハイレベルの検出信号があった場合には、短絡状態であるか否かを判定してマイコン4に短絡検出信号Ss1を出力する判定部としての機能を備えている。
【0018】
センス素子12aは、MOSトランジスタ1aに内蔵される場合にはこれを用いることができるし、内蔵されていない場合には電流検知素子として設けるもので、MOSトランジスタ1aおよびボディダイオード2aに流れる電流に対して所定の比率に設定された微小な電流が流れるように構成されたものである。センス素子12aは、ドレインおよびゲートがMOSトランジスタ1aと共通に接続されており、ソースに流れる電流が電流モニタ13aにより検出される。
【0019】
駆動回路20aは、オン駆動用のPチャンネル型のMOSトランジスタ21aおよびオフ駆動用のNチャンネル型のMOSトランジスタ22aおよび抵抗23a、24aを備える。MOSトランジスタ21aは、ソースが駆動電源VCC1に接続され、ドレインが抵抗23aを介してMOSトランジスタ1aのゲートに接続され、制御回路11aから駆動信号が与えられる。また、MOSトランジスタ22aは、ソースが駆動電源VEE1に接続され、ドレインが抵抗24aを介してMOSトランジスタ1aのゲートに接続され、制御回路11aから駆動信号が与えられる。
【0020】
微分回路30aは、差動アンプ31a、抵抗32a、コンデンサ33aを備える。差動アンプ31aは、反転入力端子が微分用のコンデンサ33aを介して電流モニタ13aからMOSトランジスタ1aの電流値に相当する電圧信号が入力される。差動アンプ31aの反転入力端子と出力端子との間には抵抗32aが接続され、非反転入力端子には直流電源VEE1が接続される。差動アンプ31aは、MOSトランジスタ1aの電流の変化に追随して増幅動作ができるように、高速応答可能なオペアンプで構成されている。
【0021】
微分回路30aは、MOSトランジスタ1aの電流すなわちMOSトランジスタ1aの電流をモニタした電流モニタ13aからの電圧信号を微分した信号を出力端子から出力する。つまり、微分回路30aは、MOSトランジスタ1aの電流値の時間変化量に相当する信号を出力する。MOSトランジスタ1aの電流の時間変化量は、電流の増減の速さつまり、時間軸についての傾きを検出することとなる。
【0022】
比較回路40aは、コンパレータ41aおよび参照電源42aを備える。コンパレータ41aは、反転入力端子に微分回路30aからの出力信号が入力され、非反転入力端子には参照電源42aから閾値電圧Vth1が入力される。閾値電圧Vthは、短絡の発生の有無を検出するための負の所定レベルを示す電圧で、微分回路30aから入力される負の信号レベルすなわちリカバリ電流の戻りの時間変化量が閾値電圧Vth以下になるとハイレベルの検出信号を制御回路11aに出力する。
【0023】
次に、上記構成の作用について、
図2および
図3も参照して説明する。
図2は、各部の信号の変化を示したタイミングチャートであり、時間軸方向にデッドタイム(Dead Time:以下、DTと略記する)が十分に確保された場合を(A)の期間とし、その次にDTが不十分で短絡が発生する場合を(B)の期間とし、短絡が検知された後にDTが調整された場合を(C)の期間として示している。
【0024】
また、
図2では、オンオフ指令信号Sx1、Sx2およびゲート電圧Vgs1、Vgs2を示し、MOSトランジスタ1bのオフタイミングに対するMOSトランジスタ1aのオン動作で発生するゲート駆動装置10Aでの動作について示している。
【0025】
外部から与えられるオンオフ指令信号に対して、マイコン4からは、上下アームのMOSトランジスタ1a、1bの間のDTが調整されたオンオフ指令信号Sx1、Sx2がそれぞれのゲート駆動装置10A、10Bに与えられる。時刻t0でMOSトランジスタ1bのオンオフ指令信号Sx2がオフとなり、この後所定のDTが経過した時刻t1でMOSトランジスタ1aのオンオフ指令信号Sx1がオンとなる。
【0026】
MOSトランジスタ1aのゲートに駆動回路20aからゲート駆動信号が与えられると、ゲート電圧Vgs1が上昇し、しきい値電圧に達するとドレイン電流が流れ始め、電流モニタ13aによりこれが検出される。MOSトランジスタ1aのオン直後には、リカバリ電流が重畳されるため、一旦ピーク値に達した後に戻り期間で低下する。そして、このときのリカバリ電流の戻りが、DTが適正に設定されている場合には、一定以下の傾きすなわち時間変化量が一定以下となる。
【0027】
図3は、リカバリ電流の戻りの波形について、DTが十分な場合には傾きが一定以下の傾きαとなり、DTがゼロの場合には一定値を超える傾きβとなる様子を示している。リカバリ電流お戻りの波形における、傾きはすなわち微分値であるから、微分値が一定以上あるか否かを判定すればDTが十分でない場合を判定することができる。
【0028】
このときのMOSトランジスタ1aの電流の変化は、微分回路30aにより変化量が検出される。
図2に示しているように、オン直後の電流が増大する期間では大きい正の値となり、リカバリ電流の戻り期間では負の値となり、この後電流値が一定になるとゼロになる。
【0029】
DTが十分に確保された(A)の場合には、リカバリ電流の戻りの期間に発生する微分回路30aによる負の検出値が閾値電圧Vth以下にならないので比較回路40aは検出信号を出力しない。この後、MOSトランジスタ1aがオフになると電流値が急激に低下して微分回路30aから負の大きい値が出力される。これによって比較回路40aからは検出信号が出力される。
【0030】
制御回路11aは、比較回路40aから入力される検出信号がハイレベルの場合でも、オンオフ指令信号がオンの場合でなければ短絡検出信号Ss1は出力しない。この結果、制御回路11aは、マイコン4に対して短絡検出信号Ss1を出力することはない。
【0031】
次に、DTがほぼゼロに設定された(B)の場合について説明する。これは、MOSトランジスタ1bがオフした時刻t2とほぼ同じタイミングでMOSトランジスタ1aにオンのオンオフ指令信号Sx1が出力された場合である。
【0032】
この場合には、MOSトランジスタ1bが完全にオフしていない状態でMOSトランジスタ1aがオン駆動される状態である。このため、MOSトランジスタ1aには大きな電流が流れ、リカバリ電流の戻り電流も負の大きな値となる。この結果、微分回路30aからの検出信号が比較回路40aにおいて閾値電圧Vthを超えるレベルとなるので、時刻t3でハイレベルの検出信号が出力される。
【0033】
一方、制御回路11aにおいては、オンオフ指令信号Sx1がオン状態である期間中に比較回路40aからハイレベルの検出信号が入力されるので、短絡状態が発生していると判定し、短絡検出信号Ss1を生成し、マイコン4に出力する。
【0034】
マイコン4は、短絡検出信号Ss1が入力されたことに基づいて、DTを調整設定し、次にゲート駆動装置10Bに与えるオンオフ指令信号Sx2のDTを調整設定するとともに、その後ゲート駆動装置10Aに与えるオンオフ指令信号Sx1のDTを長くするようになる。これによって、短絡が発生するのをすぐに回避することができるようになる。
【0035】
このような本実施形態においては、MOSトランジスタ1aの電流を微分する微分回路30aを設けるとともに、リカバリ電流の戻りの期間の電流の時間変化量が閾値電圧Vth以下に低下する負の値であるときに、短絡状態を検出する構成とし、デッドタイムを調整設定する構成とした。
【0036】
これにより、MOSトランジスタ1a、1bのゲートオン直後にマスク期間を設けることなく、この期間内で自アームのオン直後に迅速に短絡状態を判定することができ、MOSトランジスタ1a、1bが損傷を受けない範囲で短絡エネルギーを抑制することができる。また、短縮しすぎた設定デッドタイムへのフィードバックなどデッドタイム短縮制御のフェールセーフとして活用することもでき、デッドタイムを可能な限り短縮することができる。
【0037】
さらに、MOSトランジスタ1a、1bのリカバリ電流の戻りの傾きを微分回路30a、30bにより検出しているので、マスク期間を設けないことができるとともに、MOSトランジスタ1a、1bの短絡検出を電流値だけの監視を行う場合に発生する過電流誤検知を防ぐことができる。
【0038】
(第2実施形態)
図4および
図5は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、ゲート駆動装置110A、110Bは、それぞれ制御回路111a、111bを備える。
【0039】
図4において、マイコン4は、DTを調整設定していないオンオフ指令信号Sx1、Sx2をそれぞれの制御回路111a、111bに出力する。制御回路111aは、ゲート駆動制御をしているMOSトランジスタ1aが短絡状態を検出した場合には、この短絡検出信号Ss1を絶縁素子5aを介して制御回路111bに出力する。また、制御回路111bは、ゲート駆動制御をしているMOSトランジスタ1bが短絡状態を検出した場合には、この短絡検出信号Ss2を絶縁素子5bを介して制御回路111aに出力する。
【0040】
それぞれの制御回路111a、111bにおいては、マイコン4を介すことなく、ゲート駆動制御を行うMOSトランジスタ1a、1bに対して、入力された短絡検出信号Ss2、Ss1に基づいてDTの調整設定を行ってオンオフの駆動制御を実施するように構成されている。
次に、上記構成の作用について、
図5も参照して説明する。
【0041】
図5は、各部の信号の変化を示したタイミングチャートであり、
図2と同等の状態を示している。この実施形態では、マイコン4からは、上下アームのMOSトランジスタ1a、1bの間のDTの調整は行っておらず、両者の間でオンオフの動作が同タイミングで交互に駆動される信号となっている。
【0042】
ゲート駆動装置110Aにおいては、制御回路111aは、マイコン4から受け取ったオンオフ指令信号Sx1に対応して、所定のDTを設定してMOSトランジスタ1aのゲートに駆動回路20aからゲート駆動信号を与えてオン駆動する。
【0043】
前述同様に、MOSトランジスタ1aのドレイン電流が流れ始めると、電流モニタ13aによりこれが検出される。そして、DTが適正に設定されている場合には、MOSトランジスタ1aのリカバリ電流の戻りが一定以下の傾きすなわち時間変化量が一定以下となる。DTが十分に確保された(A)の場合には、リカバリ電流の戻りの期間に発生する微分回路30aによる負の検出値が閾値電圧Vth以下にならないので比較回路40aは検出信号を出力しない。
【0044】
次に、DTがほぼゼロに設定された(B)の場合では、MOSトランジスタ1aには大きな電流が流れ、リカバリ電流の戻り電流も負の大きな値となる。この結果、微分回路30aからの検出信号が比較回路40aにおいて閾値電圧Vthを超えるレベルとなるので、時刻t3でハイレベルの検出信号が出力される。
【0045】
一方、制御回路111aにおいては、オンオフ指令信号Sx1がオン状態である期間中に比較回路40aからハイレベルの検出信号が入力されるので、短絡状態が発生していると判定し、短絡検出信号Ss1を生成し、上アームのゲート駆動装置11Bの制御回路111bに出力する。
【0046】
また、制御回路111aは、短絡が検出されたことに基づいて、DTを長くするように調整設定し、次回のオンタイミングではオンオフ指令信号Sx1に対して適正なDTを設定したタイミングでMOSトランジスタ1aをオン駆動制御するようになる。これによって、短絡が発生するのをすぐに回避することができるようになる。
したがって、このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
なお、上記実施形態においては、自己が制御しているMOSトランジスタ1aの電流により得られた短絡の検出で、自己のDTの調整設定を行うものとして説明したが、この時得られた短絡検出信号Ss1に基づいて、対向アームのゲート駆動装置110B側の制御回路111bにおいて、次回のMOSトランジスタ1bのオンタイミングでDTの調整設定をするようにしても良い。
【0048】
換言すれば、ゲート駆動装置110Aにおいては、ゲート駆動装置110Bから短絡検出信号Ss2が与えられた場合には、この短絡検出信号Ss2に基づいてMOSトランジスタ1aのオン駆動時のDTの調整設定をするようにしても良い。
【0049】
(第3実施形態)
図6および
図7は第3実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、ゲート駆動装置210A、210Bは、それぞれ制御回路211a、211bを備える。
【0050】
図6において、電流モニタ13a、13bは、検出した電流値に相当する電圧信号を微分回路30a、30bに加えて、制御回路211a、211bにも出力するように構成されている。この実施形態では、制御回路211a、211bは、MOSトランジスタ1a、1bの短絡状態の判定において正確を期するために、比較回路40a、40bからの検出結果に加えて、電流値のレベルも判定要素として加えている。
【0051】
図7は、自アームと対抗アームの各MOSトランジスタ1a、1bについて、DTが短く短絡が発生する場合のオン駆動前後のゲート電圧Vgsと電流値の変化を示している。
【0052】
図示のように、例えば自アームのMOSトランジスタがオン、対向アームのMOSトランジスタがオフする場合に、両者のタイミングがほぼ同じ場合、すなわちDTがゼロに近い場合には、短絡の度合いによりリカバリー電流のピークが増加するので、この時の電流値も短絡判定の要素とし、リカバリー戻りからの傾き変化と合わせることで、より正確な短絡検出を行うことができる。
また、短絡の度合いを検出することで、その度合いに応じてDTの調整設定量を異ならせることもできる。
【0053】
したがって、このような第3実施形態によっても、上記各実施形態と同じ効果を得ることができると共に、さらに精度の高い短絡検出動作およびDTの調整設定を行うことができるようになる。
【0054】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、電流モニタ用のセンス素子12a、12bを設けず、電流モニタ14a、14bにより、直接MOSトランジスタ1a、1bの電流を検出するように構成している。
したがって、このような第4実施形態によっても第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
【0056】
上記実施形態では、ゲート駆動型の半導体スイッチング素子として、SiCMOSトランジスタを用いた場合で説明したが、MOSトランジスタは、通常のシリコン製のものでも良いし、また、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に適用することもできる。
【0057】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1a、1bはMOSトランジスタ(半導体スイッチング素子)、2a、2bはボディダイオード、3はインダクタ(負荷)、4はマイコン(統括制御部)、10A、10B、110A、110B、210A、210Bはゲート駆動装置、11a、11b、111a、111b、211a、211bは制御回路、12a、12bはセンス素子、13a、13b、14a、14bは電流モニタ、20a、20bは駆動回路、30a、30bは微分回路、31a、31bは差動アンプ、33a、33bはコンデンサ、40a、40bは比較回路である。