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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181983
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ギヤモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20221201BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20221201BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02K9/06 C
H02K5/20
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089249
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】守谷 幸次
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC05
5H605CC08
5H605DD09
5H605DD11
5H605EA02
5H605EB10
5H605EC20
5H605GG06
5H605GG18
5H607AA02
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD04
5H607EE31
5H607FF04
5H607GG01
5H607GG08
5H607HH01
5H607HH09
5H607JJ01
5H607JJ05
5H609BB03
5H609BB16
5H609BB18
5H609PP02
5H609PP07
5H609PP17
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR03
5H609RR07
5H609RR33
(57)【要約】
【課題】良好な抜熱特性を得ることができるギヤモータを提供する。
【解決手段】モータと減速機を備えるギヤモータであって、モータのモータ軸16及び減速機の入力軸20の少なくとも一方によって構成される回転軸24を備え、回転軸24は、軸方向に貫通するホロー部56と、樹脂系素材により構成された樹脂部分72と、金属系素材により構成された金属部分74と、ホロー部56を構成する樹脂部分72の内周に設けられ、回転軸24の回転によって、ホロー部56内に気流を発生させる気流発生部90と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと減速機を備えるギヤモータであって、
前記モータのモータ軸及び前記減速機の入力軸の少なくとも一方によって構成される回転軸を備え、
前記回転軸は、
軸方向に貫通するホロー部と、
樹脂系素材により構成された樹脂部分と、
金属系素材により構成された金属部分と、
前記ホロー部を構成する前記樹脂部分の内周に設けられ、前記回転軸の回転によって、前記ホロー部内に気流を発生させる気流発生部と、を備えるギヤモータ。
【請求項2】
前記気流発生部は、前記樹脂部分と一体的に設けられる請求項1に記載のギヤモータ。
【請求項3】
前記モータは、モータハウジングを備え、
前記減速機は、前記モータハウジングに連結される減速機ハウジングを備え、
前記モータハウジング及び前記減速機ハウジングは、樹脂系素材によって構成される請求項1または2に記載のギヤモータ。
【請求項4】
前記回転軸は、前記モータ軸及び前記入力軸の両方によって一体的に構成され、
前記気流発生部は、前記モータ軸の内周に設けられる請求項1から3のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項5】
前記モータ軸の内径は、前記気流発生部の設けられる箇所において、前記入力軸の内径よりも大きい請求項4に記載のギヤモータ。
【請求項6】
前記気流発生部は、前記回転軸の回転方向によらず、前記軸方向において同じ向きの気流を発生させる請求項1から5のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項7】
前記気流発生部は、前記回転軸の回転に伴い動くことによって、前記回転方向によらず、前記軸方向において同じ向きの気流を発生させる請求項6に記載のギヤモータ。
【請求項8】
前記気流発生部は、前記回転軸の回転に伴い変形する請求項1から7のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項9】
前記モータ軸に対して軸方向の反負荷側に配置される電機品を備え、
前記気流発生部は、前記軸方向の負荷側に向けて気流を発生させる請求項1から8のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項10】
前記減速機は、前記入力軸に対して負荷側に配置される相手部材に取り付けられ、
前記気流発生部は、前記軸方向の負荷側に向けて気流を発生させる請求項1から9のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項11】
前記回転軸は、外筒部と内筒部を有する二重筒部を備え、
前記気流発生部は、前記外筒部と前記内筒部の間に配置される請求項1から10のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項12】
前記内筒部は、前記外筒部と前記内筒部の間にある筒間空間と前記内筒部の内側にある筒内空間とを連通させる通気穴を備える請求項11に記載のギヤモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ギヤモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モータと減速機を備えるギヤモータを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-97364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ギヤモータにおいては、ギヤモータにおいて発生した熱を外部に抜熱するための工夫が要求される場合がある。本願発明者は、ギヤモータの回転軸との関係で、良好な抜熱特性を得るうえで、特許文献1の技術に関して改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本開示の目的の1つは、良好な抜熱特性を得ることができるギヤモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のギヤモータは、モータと減速機を備えるギヤモータであって、前記モータのモータ軸及び前記減速機の入力軸の少なくとも一方によって構成される回転軸を備え、前記回転軸は、軸方向に貫通するホロー部と、樹脂系素材により構成された樹脂部分と、金属系素材により構成された金属部分と、前記ホロー部を構成する前記樹脂部分の内周に設けられ、前記回転軸の回転によって、前記ホロー部内に気流を発生させる気流発生部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のギヤモータによれば、良好な抜熱特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のギヤモータの側面断面図である。
図2】第1実施形態の回転軸の側面断面図である。
図3】第1実施形態の回転軸の斜視断面図である。
図4】第1実施形態のギヤモータの動作に関する説明図である。
図5】第2実施形態の回転軸の斜視断面図である。
図6】第3実施形態の回転軸の一部を模式的に示す側面断面図である。
図7図6の矢視Aから見た図である。
図8図8(A)は、回転軸が正回転方向に回転している状態を示す図であり、図8(B)は、回転軸が逆回転方向に回転している状態を示す図である。
図9】第4実施形態の回転軸の一部を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
(第1実施形態)図1を参照する。ギヤモータ10は、第1相手部材12と第2相手部材14を連結する。ギヤモータ10は、第1相手部材12に対して第2相手部材14を相対回転させることができる。例えば、第1相手部材12はギヤモータ10を支持するベースであり、第2相手部材14はコンベア等の被動機械の一部である。
【0011】
ギヤモータ10は、モータ軸16を有するモータ18と、モータ軸16の回転が入力される入力軸20を有する減速機22と、モータ軸16及び入力軸20の少なくとも一方によって構成される回転軸24と、を備える。本実施形態の回転軸24は、モータ軸16及び入力軸20の両方によって一体的に構成される。本実施形態のギヤモータ10は回転軸24に特徴があるが、先に周辺構造から説明する。以下、回転軸24の回転中心線CL1に沿った方向を軸方向Xといい、その回転中心線CL1を中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」という。また、軸方向Xにおいてモータ18から減速機22に向かう側(図1の左側)を負荷側といい、それとは軸方向Xの反対側(図1の右側)を反負荷側という。
【0012】
モータ18は、例えば、永久磁石モータである。モータ18の具体例は特に限定されず、誘導モータ、リラクタンスモータ、コアレスモータ等でもよい。モータ18は、モータ軸16の他に、回転磁界を生成するステータ26及びロータ28と、ステータ26及びロータ28を収容するモータハウジング30と、を備える。ステータ26は、モータハウジング30に固定される。ロータ28は、モータ軸16に固定され、モータ軸16は、ロータ28と一体的に回転する。本実施形態のロータ28は、永久磁石によって構成される。
【0013】
減速機22は、入力軸20の他に、入力軸20の回転を減速する減速機構32と、減速機構32から減速された出力回転を取り出す出力部材34と、減速機構32を収容する減速機ハウジング36と、入力軸20の外周部に配置される複数の軸受38A、38B、38Cと、を備える。
【0014】
減速機構32は、入力軸20によって被動歯車40を駆動することによって作動する。減速機構32が作動すると減速機構32の出力回転が出力部材34から取り出される。本実施形態の減速機構32は、被動歯車40としての撓み歯車を撓み変形させることによって、外歯歯車42及び内歯歯車44A、44Bの一方(ここでは外歯歯車42)を自転させる撓み噛み合い型歯車機構である。本実施形態の被動歯車40となる撓み歯車は外歯歯車42であるが、内歯歯車44A、44Bでもよい。出力部材34は、外歯歯車42及び内歯歯車44A、44Bの一方の自転成分と同期することで、その自転成分を出力回転として取り出すことができる。本実施形態の減速機構32は、複数の内歯歯車44A、44Bを用いた、筒型の撓み噛み合い型歯車機構である。この種の減速機構32の動作原理は周知のため、ここでは説明を省略する。
【0015】
入力軸20は、その回転によって、減速機構32の被動歯車40を駆動する歯車駆動部46を備える。撓み噛み合い型歯車機構に用いられる歯車駆動部46は、軸方向に直交する断面において、楕円状をなす。ここでの「楕円」とは、幾何学的に厳密な楕円に限定されず、略楕円も含まれる。歯車駆動部46は、撓み歯車を撓み変形させることができる程度の剛性を持つ。歯車駆動部46は、その回転によって、歯車駆動部46に合わせた楕円状をなすように撓み歯車を撓み変形させる起振体として機能する。
【0016】
減速機構32は、入力軸20の外周側に配置される外歯歯車42と、外歯歯車42と噛み合う内歯歯車44A、44Bとを備える。外歯歯車42は、入力軸20の歯車駆動部46との間に配置される歯車軸受38Aを介して、入力軸20に回転自在に支持される。内歯歯車44A、44Bは、減速機ハウジング36に対する相対回転が拘束された第1内歯歯車44Aと、減速機ハウジング36に対して相対回転可能な第2内歯歯車44Bとを含む。第1内歯歯車44Aは反負荷側に配置され、第2内歯歯車44Bは負荷側に配置される。第1内歯歯車44Aは、外歯歯車42の外歯数(例えば、100個)とは異なる内歯数(例えば、102個)を持ち、第2内歯歯車44Bは、外歯歯車42の外歯数と同数の内歯数を持つ。
【0017】
減速機ハウジング36は、ボルト等を用いて、モータハウジング30に連結される。本実施形態の減速機ハウジング36は、第1内歯歯車44Aを兼ねる第1ハウジング部材48と、第2内歯歯車44Bに対して径方向外側に配置される第2ハウジング部材50と、を備える。第1ハウジング部材48及び第2ハウジング部材50は、ねじ等を用いて、互いに連結される。減速機ハウジング36と第2内歯歯車44Bとの間には主軸受52が配置される。第1相手部材12は、ねじ等を用いて、減速機ハウジング36と一体化される。
【0018】
本実施形態の出力部材34は、減速機構32に対して軸方向負荷側に配置されるキャリヤ54である。キャリヤ54は、キャリヤ54を軸方向Xに貫通する貫通孔54aを備える。キャリヤ54は、例えば、ねじ等を用いて、第2内歯歯車44Bに一体化される。第2相手部材14は、ねじ等を用いて、出力部材34に一体化される。
【0019】
複数の軸受38A、38B、38Cは、入力軸20の歯車駆動部46と被動歯車40との間に配置される歯車軸受38Aと、歯車軸受38Aに対して軸方向Xに間隔を空けて設けられる入力軸受38B、38Cとを備える。入力軸受38B、38Cは、減速機ハウジング36と入力軸20との間に配置される第1入力軸受38Bと、キャリヤ54と入力軸20との間に配置される第2入力軸受38Cとを含む。
【0020】
以上のギヤモータ10の減速機22に関する動作を説明する。モータ軸16から入力軸20に回転が入力されると、入力軸20が回転することで減速機構32が作動する。減速機構32が作動すると、入力軸20の回転よりも減速された減速機構32の出力回転が出力部材34から取り出され、出力部材34が回転する。出力部材34が回転すると、第1相手部材12に対して第2相手部材14が相対回転する。
【0021】
図2図3を参照する。回転軸24の説明に移る。回転軸24は、前述の通り、モータ軸16及び入力軸20の少なくとも一方によって構成される。ここでの「少なくとも一方によって構成される」とは、モータ軸16及び入力軸20の一方又は両方によって構成されることをいう。ここでの「一方によって構成される回転軸」とは、モータ軸16及び入力軸20の何れか一方のみによって構成される単数の回転軸をいう。また、ここでの「両方によって構成される回転軸」とは、実施形態のように、モータ軸16及び入力軸20の両方によって一体的に構成される単数の回転軸の他に、モータ軸16及び入力軸20によって個別に構成されるとともに互いに連結される二つの回転軸が含まれる。
【0022】
回転軸24は、回転軸24を軸方向Xに貫通するホロー部56と、ロータ28を配置するロータ配置部58と、軸受38A、38B、38Cを配置する軸受配置部60A、60B、60Cと、を備える。
【0023】
ホロー部56は、回転軸24の軸方向端部に開口する開口部62を備える。開口部62は、回転軸24の軸方向外側にある軸方向空間64とホロー部56の内部にある内部空間66とを連通させる。軸方向空間64は、ギヤモータ10の外部にある外部空間そのもの、又は、外部空間に通じている。
【0024】
ロータ配置部58は、回転軸24においてモータ軸16となる箇所の外周部に設けられる。ロータ28は、ロータ28をインサート品として射出成形を行うインサート成形の他、接着、嵌め合い等によって、ロータ配置部58に一体化される。
【0025】
軸受配置部60A、60B、60Cは、回転軸24において入力軸20となる箇所の外周部に設けられる。軸受配置部60A、60B、60Cは、歯車軸受38Aを配置する歯車軸受配置部60Aと、入力軸受38B、38Cを配置する入力軸受配置部60B、60Cとを含む。歯車軸受配置部60Aは、入力軸20の歯車駆動部46の外周部に設けられる。入力軸受配置部60B、60Cは、入力軸20の歯車駆動部46に対して軸方向Xにずれた位置において入力軸20の外周部に設けられる。入力軸受配置部60B、60Cは、負荷側に配置される第1入力軸受配置部60Bと、反負荷側に配置される第2入力軸受配置部60Cとを含む。
【0026】
本実施形態の回転軸24は、軸本体部68と、入力軸20の外周部を構成する入力軸構成部70と、を備える。軸本体部68は、回転軸24の反負荷側端部から負荷側端部までの範囲で連続している。本実施形態において軸本体部68には、ロータ配置部58が設けられる。入力軸構成部70は、入力軸20となる箇所において軸本体部68の外周側に配置される。入力軸構成部70には複数の軸受配置部60A、60B、60Cが設けられる。
【0027】
回転軸24は、樹脂系素材により構成された樹脂部分72と、金属系素材により構成された金属部分74とを備える。図3では、金属部分74にドットパターンを付す。
【0028】
樹脂部分72を構成する樹脂系素材は、樹脂を主材とする素材をいう。ここで用いられる樹脂は、例えば、汎用エンジニアプラスチック、特殊エンジニアプラスチック等である。汎用エンジニアプラスチックの場合、例えば、ポリアミド(例えば、PA46)、ポリアセタール等が用いられる。樹脂系素材は、主材となる樹脂のみによって構成されてもよいし、主材となる樹脂と他素材との複合材料によって構成されてもよい。この複合材料とは、例えば、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂等である。
【0029】
金属部分74を構成する金属系素材は、金属を主材とする素材をいう。ここで用いられる金属は、例えば、鋳鉄、鋼等の鉄系材料、アルミニウム合金等のアルミニウム系材料である。金属系素材は、主材となる金属のみによって構成されてもよいし、主材となる金属と他素材との複合材料によって構成されてもよい。ここでの複合材料とは、例えば、繊維強化金属等である。
【0030】
樹脂部分72を構成する樹脂系素材の熱伝導率[W/(m・K)]は、金属部分74を構成する金属系素材の熱伝導率よりも小さくなる。これを実現するうえでは、例えば、樹脂部分72をエンジニアプラスチックとし、金属部分74を鉄系材料またはアルミニウム系材料としてもよい。
【0031】
金属部分74は、例えば、切削加工、鋳造加工等の金属加工によって得ることができる金属加工品である。樹脂部分72は、例えば、射出成形、3Dプリンティング等の樹脂成形によって得ることができる樹脂成形品である。本実施形態の金属部分74と樹脂部分72は、金属部分74をインサート品として射出成形を行うインサート成形によって一体化されている。この他にも、金属部分74と樹脂部分72の一体化方法はインサート成形に限定されない。これらは、例えば、予め準備しておいた金属部分74と樹脂部分72を接着、嵌め合い等を用いて一体化してもよい。この他にも、金属と樹脂を同時に立体造形できるハイブリッド3Dプリンティングを用いて、金属部分74と樹脂部分72を一体化してもよい。
【0032】
樹脂部分72は、回転軸24の軸本体部68を構成する。樹脂部分72は、軸本体部68と同様、ロータ配置部58を構成する。樹脂部分72は、回転軸24において金属部分74以外の箇所を構成する。
【0033】
金属部分74は、回転軸24の入力軸構成部70を構成する。金属部分74は、少なくとも歯車駆動部46の外周部、つまり、歯車軸受配置部60Aを構成する。本実施形態の金属部分74は、この他に、入力軸受配置部60B、60Cの外周部も構成する。金属部分74は、第1入力軸受配置部60Bから第2入力軸受配置部60Cまでの軸方向範囲において回転軸24の外周部を構成する。
【0034】
金属部分74は、入力軸構成部70を構成する外側筒状部76を備える。樹脂部分72は、外側筒状部76の内側に配置される内側筒状部78を備える。外側筒状部76は、内側筒状部78を径方向に貫通する複数の金属凸部80を備える。ホロー部56は、樹脂部分72の構成する軸本体部68の内周と金属部分74の金属凸部80の内周とによって構成される。
【0035】
回転軸24は、ホロー部56を構成する樹脂部分72の内周に設けられる気流発生部90を備える。本実施形態の気流発生部90は、樹脂部分72と同じ部材の一部として樹脂部分72と一体的に設けられる。本実施形態の気流発生部90は、樹脂部分72と同一の樹脂素材により、射出成形によって一体的に形成されている。気流発生部90も樹脂部分72と同様に樹脂系素材によって構成されることになる。本実施形態の気流発生部90は、モータ軸16の内周に設けられる。詳しくは、気流発生部90は、ロータ28の軸方向範囲の少なくとも一部と径方向に重なる箇所において、モータ軸16の内周に設けられる。
【0036】
本実施形態の気流発生部90は、軸方向Xに延びるフィン92である。ここでの「軸方向Xに延びる」とは、フィン92の長手方向が軸方向Xと平行な場合に限定されるものではなく、フィン92の長手方向と軸方向Xのなす角度が45度未満であればよい。この角度は、30度以下であると好ましい。本実施形態の気流発生部90は、周方向に間を空けて複数配置される。図2図3では、異なる回転位相にある回転軸24の切断面を示す。また、図2では図3の一部の気流発生部90のみを示し、図3では気流発生部90を模式的に示す。本実施形態のフィン92は、ホロー部56の内周から径方向内側に突き出るように設けられる。
【0037】
気流発生部90は、回転軸24の回転によってホロー部56内の空気を攪拌することで、ホロー部56内に気流を発生させることができる。本実施形態のフィン92は、負荷側に向かうに連れて周方向の一方側Da(図3の例では反時計回り)に向かうように軸方向Xに対して傾斜している。これにより、回転軸24の回転方向に応じて、軸方向Xの異なる向きに空気を押し流すことで、ホロー部56内において軸方向Xに向かう気流を発生させることができる。例えば、回転軸24が周方向の他方側Db(図3の例では時計回り)に回転したとき、フィン92によって負荷側に空気を押し流すことで、ホロー部56内において負荷側に向かう気流を発生させることができる。また、回転軸24が周方向の一方側Daに回転したとき、フィン92によって反負荷側に空気を押し流すことで、ホロー部56内において反負荷側に向かう気流を発生させることができる。
【0038】
モータ軸16において気流発生部90の設けられる箇所でのホロー部56の内径を内径Raという。入力軸20でのホロー部56の内径を内径Rbという。入力軸20の内径Rbは、例えば、入力軸20の歯車駆動部46がある箇所(外歯歯車42と径方向に重なる箇所)におけるホロー部56の内径をいう。ここでの内径は、言及している箇所に内接する最大径を持つ内接円であって、回転軸24の回転中心線CL1と同心の内接円の半径をいう。
【0039】
図1を参照する。モータハウジング30及び減速機ハウジング36は、樹脂系素材によって構成される。本実施形態では、減速機ハウジング36の第1ハウジング部材48、第2ハウジング部材50のそれぞれが樹脂系素材によって構成される。モータハウジング30及び減速機ハウジング36を構成する樹脂系素材は、回転軸24の樹脂部分72と同じ樹脂系素材でもよいし、樹脂部分72と異なる樹脂系素材でもよい。また、第1内歯歯車44A、第2内歯歯車44B及びキャリヤ54の全て又は一部を樹脂系素材により構成してもよい。
【0040】
以上のギヤモータ10の動作と効果を説明する。図4を参照する。回転軸24が回転すると、回転軸24の気流発生部90によって、ホロー部56内に気流Fが発生する。ホロー部56内では、少なくとも軸方向Xに向かう気流Fが発生する。ここでは、回転軸24が周方向の他方側Db(図3参照)に回転し、ホロー部56内で負荷側に向かう気流Fを発生させる場合を想定する。この場合、ホロー部56内で気流Fが発生すると、回転軸24の開口部62を通して、軸方向空間64の空気が内部空間66に取り込まれる。本実施形態では、軸方向Xにおける気流の流れ方向(負荷側)とは反対側(反負荷側)にある軸方向空間64の空気が内部空間66に取り込まれる。これと同時に、内部空間66の空気が軸方向空間64に吹き出される。本実施形態では、軸方向Xにおける気流の流れ方向となる負荷側にある軸方向空間64に内部空間66から空気が吹き出される。
【0041】
なお、本実施形態の第2相手部材14は、回転軸24の内部空間66を封止することなく、軸方向空間64における第2相手部材14の周囲にある空間に内部空間66を開放している。よって、回転軸24が回転している間、内部空間66から負荷側にある軸方向空間64に空気を吹き出し続けることができる。
【0042】
(A)以上のように、回転軸24の内部空間66にある空気を軸方向空間64に吹き出すことで、内部空間66から軸方向空間64への強制的な対流を促進させることができる。これにより、回転軸24から内部空間66に放熱した熱を回転軸24の外部(軸方向空間64)に放出させることで、回転軸24の強制空冷をすることができる。ひいては、回転軸24から外部への抜熱量を大きくすることができ、良好な抜熱特性を得ることができる。
【0043】
また、このような回転軸24の強制空冷を実現するうえで、専用のファンをギヤモータ10に組み付ける必要がなく、ギヤモータ10の構成を簡素化できる。
【0044】
ギヤモータ10で生じた熱の主な抜熱態様は、熱伝導、輻射及び拡散に分類できる。ここで、ギヤモータ10の主要構成材を金属製とする金属製ギヤモータの場合、熱伝導による抜熱量が多くなる。ここでの主要構成材とは、例えば、モータ18のロータ28、ステータ26、モータ軸16、モータハウジング30の他、減速機22の入力軸20、減速機構32、減速機ハウジング36をいう。これに対して、ギヤモータ10の主要構成材に樹脂系素材と金属系素材を用いるハイブリッドギヤモータの場合、金属系素材よりも熱伝導率の低い樹脂系素材の部分では熱伝導し難くなる。このため、ハイブリッドギヤモータの場合、金属製ギヤモータと比べて、全抜熱量に対する熱伝導による抜熱量の割合が小さくなり、全抜熱量に対する対流による抜熱量の割合が大きくなる傾向がある。
【0045】
本実施形態によれば、気流発生部90によってホロー部56内で気流を発生させることで、ホロー部56内の空気の強制対流を促進できるため、対流による抜熱量を効果的に大きくすることができる。ひいては、ハイブリッドギヤモータのように、熱伝導による抜熱量が小さくなる場合でも、対流による抜熱量を大きくすることで、全抜熱量を効果的に大きくすることができる。
【0046】
(B)気流発生部90は、樹脂部分72と一体的に設けられる。よって、気流発生部90を金属部分74の内周に設ける場合と比べ、樹脂成形によって、複雑形状の気流発生部90を設けた樹脂部分72を容易に成形することができる。
【0047】
また、気流発生部90を金属部分74の内周に設ける場合、回転軸24のホロー部56に対する切削加工等による金属加工が必要となる。このような箇所に金属加工によって複雑形状の気流発生部90を設けるのは困難であり、実現できる形状、寸法に制約が生じる。この点、本実施形態によれば、樹脂成形によって、複雑形状の気流発生部90を設けた樹脂部分72を容易に成形できるため、実現できる形状、寸法の制限を緩和できる。
【0048】
(C)モータハウジング30及び減速機ハウジング36は、それらの内部に配置されるギヤモータ10の構成部品と比べて大体積になる傾向がある。このようなモータハウジング30及び減速機ハウジング36を樹脂系素材によって構成することで、これらを金属系素材によって構成する場合と比べて、効果的に軽量化を図ることができる。このように樹脂系素材を用いてモータハウジング30及び減速機ハウジング36を構成した場合、前述のように、これらにおいて熱伝導によって伝熱し難くなる。この場合でも、回転軸24のホロー部56の内周に気流発生部90を設けることで、ホロー部56内で拡散による伝熱を促進することができる。ひいては、良好な抜熱特性と軽量化との両立を図ることができる。
【0049】
(D)熱源となるロータ28において生じた熱の伝熱経路を検討する。この一例として、ロータ28→回転軸24→減速機構32→減速機ハウジング36→第1相手部材12の順で熱伝導によって伝熱する伝熱経路が考えられる。この他に、ロータ28→回転軸24→減速機構32→キャリヤ54→第2相手部材14の順で熱伝導によって伝熱する伝熱経路が考えられる。ここで、前述の通り、樹脂系素材は金属系素材よりも熱伝導率が小さい。よって、金属系素材と樹脂系素材の両方を回転軸24に用いる場合、金属系素材のみを用いる場合と比べ、回転軸24を経由する熱伝導による伝熱経路を通して抜熱し難くなる。この場合でも、モータ軸16の内周に気流発生部90を設けることで、熱源となるロータ28に近いモータ軸16内で拡散による伝熱を促進することができる。ひいては、熱伝導により抜熱し難いモータ軸16の熱を対流により効果的に抜熱できるようになる。
【0050】
(E)モータ軸16の内径Raは、入力軸20の内径Rbよりも大きくなる。これにより、モータ軸16の内径Raを入力軸20の内径Rb以下にする場合と比べ、気流発生部90の位置を径方向外側にずらすことができる。よって、モータ軸16のホロー部56内に挿通される物体(例えば、後述する挿通部材142)と気流発生部90との干渉を避け易くなる。ひいては、気流発生部90による巻き込みを防止し易くなる。
【0051】
次に、本実施形態のギヤモータ10に関する他の特徴を説明する。図1を参照する。ギヤモータ10は、モータ軸16の回転を検出する検出器100と、電力を用いる電機品102A、102Bとを備える。
【0052】
検出器100は、ロータリーエンコーダである。検出器100は、回転軸24と一体的に回転可能な被検出部材104と、被検出部材104を検出可能なセンサ106とを備える。例えば、被検出部材104はエンコーダディスクであり、センサ106は光学センサ又は磁気センサである。被検出部材104は、回転軸24の反負荷側端部に配置される。センサ106は、後述するセンサ基板(第2電機品102B)に搭載される。検出器100は、センサ106によって被検出部材104を検出することでモータ軸16の回転を検出可能である。
【0053】
本実施形態の電機品102A、102Bは、モータ18のステータ26及びロータ28とは別体に設けられる回路基板である。回路基板としての電機品102A、102Bは、モータ18を制御する制御基板からなる第1電機品102Aと、センサ106を搭載するセンサ基板からなる第2電機品102Bとを含む。制御基板には、モータ18を制御する制御素子108の他に、制御素子108による制御のもとでモータ18に電力を供給するドライバ素子110が実装される。制御素子108は、例えば、CPU、RAM、ROM等の組み合わせであり、ドライバ素子110は、例えば、ドライバIC等である。制御素子108は、不図示の配線を介してセンサ106に電気的に接続され、センサ106の検知結果に基づいてモータ18を制御する。
【0054】
電機品102A、102Bは、ホルダ112を介してモータハウジング30に取り付けられる。電機品102A、102Bは、回転軸24の外部において、モータ軸16に対して軸方向Xの反負荷側に配置される。電機品102A、102Bは、回転軸24に対して反負荷側にある軸方向空間64に配置されることになる。
【0055】
減速機22は、第2相手部材14を取り付けるための取付部材114を備える。本実施形態の取付部材114は、出力部材34(キャリヤ54)である。第2相手部材14は、減速機22の取付部材114に取り付けるための被取付部116を備える。被取付部116は、入力軸20に対して負荷側に配置される。被取付部116は、回転軸24に対して負荷側にある軸方向空間64に配置されることになる。本実施形態では、被取付部116を取付部材114に突き当てた状態で、ボルト118によって被取付部116、取付部材114及び第2内歯歯車44Bを共締めすることによって、第2相手部材14が減速機22に取り付けられる。
【0056】
回転軸24の気流発生部90は、ホロー部56内において軸方向Xの負荷側に向けて気流を発生させることができる。つまり、気流発生部90は、電機品102A、102Bのある軸方向空間64とは逆向きに気流を発生させることになる。これを実現するうえで、本実施形態のモータ18は、回転軸24の回転方向を切り替えることなく、常に一定の定回転方向(図3の例では周方向の他方側Db)に回転軸24を回転させることができる。また、これとともに、回転軸24の気流発生部90は、定回転方向に回転軸24が回転したとき、負荷側に向けて気流を発生させることができる。この他にも、これを実現するうえで、図6の例で説明するように、気流発生部90は、回転軸24の回転方向によらず、常に軸方向Xの負荷側に向けて気流を発生させてもよい。いずれにしても、ギヤモータ10は、気流発生部90によって常に負荷側に向けて気流を発生させるように構成されてもよいということになる。
【0057】
(F)これにより、回転軸24から内部空間66に放熱した熱を電機品102A、102Bとは軸方向Xで逆向きに送ることができる。ひいては、電機品102A、102Bの周囲の空間(軸方向空間64)が回転軸24から放熱した熱によって熱され難くなり、電機品102A、102Bの安全を確保できる。
【0058】
また、回転軸24のホロー部56内において発生した気流は、回転軸24の負荷側にある開口部62から外部(軸方向空間64)に放出される。回転軸24の外部に放出された気流は、キャリヤ54の貫通孔54aを通り抜けたうえで、回転軸24に対して負荷側にある第2相手部材14の被取付部116に当てられる。
【0059】
(G)これにより、気流によって第2相手部材14を冷却することで、第2相手部材14と取付部材114との間の温度差を大きくすることができ、これらを経由する熱伝導を促進することができる。また、減速機22における取付部材114の周辺構造(例えば、回転軸24、取付部材114)を気流によって冷却することで、発熱源となる高温のモータ軸16側から低温の取付部材114側への熱伝導を促進できる。ひいては、ギヤモータ10全体として抜熱量を増加させることができる。
【0060】
なお、前述した(F)、(G)の効果を得るうえで、気流発生部90によって発生する気流の向きが、回転軸24の回転方向によって、負荷側と反負荷側に切り替わっていてもよい。この場合でも、気流の向きが負荷側となるときに(F)、(G)に記載の効果を得ることができる。
【0061】
また、気流発生部90によって反負荷側に向かう気流を発生させた場合でも、その気流によって、電機品102A、102Bのある軸方向空間64での拡散による熱移動を促進でき、電機品102A、102Bを冷却することができる。ひいては、このような構成のもとでも、電機品102A、102Bの安全をある程度確保することができる。
【0062】
(第2実施形態)図5を参照する。本実施形態では気流発生部90の他の形態を説明する。本実施形態の気流発生部90のフィン92は、軸方向に沿って直線状に延びている。このような構成のもと、回転軸24が回転したとき、気流発生部90によって、負荷側及び反負荷側の一方又は両方に向かう気流が発生する。このようにフィン92の具体的な配列態様や個数は特に限定されない。
【0063】
このようなフィン92の構成のもと、ホロー部56の一方の開口部62(例えば、負荷側にある開口部62)を第2相手部材14によって塞いだ場合を考える。この場合、ホロー部56内において、負荷側に向かう気流と、その負荷側に向かう気流が第2相手部材14に当たって折り返すことで反負荷側に向かう気流とが発生する。この場合、ホロー部56の他方の開口部62(例えば、反負荷側にある開口部62)の一部において空気を取り込みつつ、その開口部62の他の箇所において空気を吹き出すことになる。このように、ホロー部56内に空気を取り込むための開口部62と、ホロー部56内に空気を吹き出すための開口部62とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
(第3実施形態)図6図7を参照する。本実施形態では気流発生部90の他の形態を説明する。本実施形態の気流発生部90は、軸方向Xに延びる可動式のフィン92である。本実施形態の気流発生部90(フィン92)は複数ある。フィン92は、全体として板状をなす。フィン92は、軸方向Xの一端側に設けられる基端部92aと、軸方向Xの他端側に設けられる先端部92bとを備える。フィン92の基端部92aは、回転軸24のホロー部56に繋がるとともに樹脂部分72と一体化されている固定端部となる。フィン92の先端部92bは、フィン92の基端部92aから延びる部分の先端側にあり、回転軸24のホロー部56に繋がらない自由端部となる。本実施形態において、フィン92の基端部92aは反負荷側に設けられ、フィン92の先端部92bは負荷側に設けられる。以下、軸方向Xにおいて気流発生部90(フィン92)の基端側から先端側に向かう方向を先端方向Dcという。
【0065】
図8(A)、図8(B)を参照する。図8(A)は、回転軸24が周方向の一方側(以下、正回転方向Dd1という)に回転している状態を示す。図8(B)は、回転軸24が周方向の他方側(以下、逆回転方向Dd2という)に回転している状態を示す
【0066】
フィン92は、少なくともフィン92の先端部92bを含む軸方向範囲において、回転軸24のホロー部56に対して、周方向の両側に動くことができる。本実施形態のフィン92は、少なくともフィン92の先端部92bを含む軸方向範囲において撓むように変形することで周方向の両側に動くことができる。この他にも、フィン92の変形を伴うことなく、フィン92の全体が周方向の両側に動くことができてもよい。これは、例えば、ヒンジ、ボールジョイント等の回転接続機構を介して、回転軸24のホロー部56にフィン92を径方向軸周りに回転可能に接続する場合を想定している。この場合、回転軸24とは別体にフィン92を設けることになる。
【0067】
フィン92を周方向に撓み変形させ易くするうえで、フィン92は、先端側に向かうに連れて周方向寸法La(図7参照)及び径方向寸法Lb(図6参照)の少なくとも一方を小さくするように構成されていてもよい。本実施形態のフィン92は、これら周方向寸法La及び径方向寸法Lbの両方を小さくするように構成される。これらの寸法は、フィン92の先端側に向かうに連れて段階的に小さくしてもよいし、連続的に小さくしてもよい。
【0068】
フィン92は、回転軸24の回転に伴い、フィン92に当たる空気の抵抗によって、少なくともフィン92の先端部92bを含む軸方向範囲において、回転軸24の回転方向とは周方向で反対方向(以下、反回転方向Deという)に動くことができる。このとき、フィン92は、フィン92の先端部92bを含む軸方向範囲において、フィン92の先端方向Dcに向かうに連れて反回転方向Deに向かうように、軸方向Xに対して傾斜する。これにより、回転軸24が回転している状態にあるとき、回転軸24の回転方向によらず、フィン92の先端方向Dcに、フィン92によって空気を押し流すことができる。
【0069】
例えば、図8(A)に示すように、回転軸24が正回転方向Dd1に回転したとき、フィン92の先端部92bを含む軸方向範囲において、フィン92は、正回転方向Dd1とは逆向きの反回転方向Deに動く。この結果、フィン92が正回転方向Dd1に回転している状態にあるとき、フィン92によって先端方向Dcに向かう気流Fを発生させることができる。また、図8(B)に示すように、回転軸24が逆回転方向Dd2に回転したとき、フィン92の先端部92bを含む軸方向範囲において、フィン92は、逆回転方向Dd2とは逆向きの反回転方向Deに動く。この結果、フィン92が逆回転方向Dd2に回転している状態にあるとき、フィン92によって先端方向Dcに向かう気流Fを発生させることができる。
【0070】
これにより、回転軸24の回転方向によらず、回転軸24のホロー部56内において常に同じ向き(先端方向Dc)の気流Fを発生させることができる。よって、ギヤモータ10において回転軸24の回転方向が切り替わる場合でも、常に同じ向きの気流Fを発生させることができる。
【0071】
このように、フィン92は可動式でもよいし、回転軸24の回転方向によらず動かなくともよい。また、ここで説明した条件を満たす可動式のフィン92の個数は特に限定されない。気流発生部90を構成する複数のフィン92のうちの一部が可動式のフィン92でもよいし、それらの全部が可動式のフィンでもよい。
【0072】
この他にも、気流発生部90は、フィン92を用いることなく、回転軸24の回転方向によらず、常に同じ向きの気流Fを発生させてもよい。このような気流Fを発生させるうえで、気流発生部90は、回転軸24の回転に伴い動いてもよいし、その回転に伴い動かなくともよい。また、このように回転軸24の回転に伴い動く場合、気流発生部90は、回転軸24の回転方向とは反対方向以外の方向に動いてもよい。
【0073】
本実施形態のギヤモータ10でも、前述した(A)~(G)で説明した構成要素(図示せず)を備えることで、それらの説明に対応する効果を得られる。
【0074】
(第4実施形態)図9を参照する。本実施形態では回転軸24の他の形態を説明する。回転軸24は、回転軸24における軸方向範囲の少なくとも一部に設けられる二重筒部130を備える。本実施形態の二重筒部130は、回転軸24におけるモータ軸16の軸方向範囲の一部に設けられる。
【0075】
二重筒部130は、筒状の外筒部132と、外筒部132の内側に配置される筒状の内筒部134と、内筒部134の軸方向端部(本実施形態では反負荷側の軸方向端部)と外筒部132との間に形成される筒間開口部136とを有する。外筒部132は、回転軸24の外周部を構成する。回転軸24のホロー部56は、二重筒部130の設けられる箇所において、外筒部132の内側に設けられる。内筒部134は、回転軸24のホロー部56の内部空間66を、外筒部132と内筒部134の間にある筒間空間138と、内筒部134の内側にある筒内空間140とに仕切る。
【0076】
ギヤモータ10は、回転軸24のホロー部56内に挿通される挿通部材142を備える。本実施形態の挿通部材142は、電源ケーブル、信号ケーブル等のケーブルである。ケーブルは、例えば、ギヤモータ10の制御基板(第1電機品102A)に接続される。挿通部材142の具体例は特に限定されない。この他にも、挿通部材142は、例えば、回転軸24とは別体であり出力部材34と一体的に回転するシャフトでもよい。挿通部材142は、回転軸24において二重筒部130の設けられる軸方向範囲において筒内空間140に配置される。
【0077】
気流発生部90は、回転軸24において二重筒部130の設けられる軸方向範囲において筒間空間138に配置される。気流発生部90は、同様の軸方向範囲において筒内空間140に配置されないということである。これにより、回転軸24のホロー部56内に挿通される挿通部材142と気流発生部90との干渉を内筒部134によって防止できる。ひいては、回転軸24が回転したときに、気流発生部90に挿通部材142が巻き込まれる事態を防止できる。
【0078】
内筒部134は、筒間空間138と内部空間66とを連通させる通気穴144を備える。通気穴144は、内筒部134を径方向に貫通する。本実施形態の内筒部134は、複数の通気穴144を備え、複数の通気穴144はメッシュ状に配列される。複数の通気穴144の配列態様は特に限定されず、軸方向X又は周方向に列状に配列されてもよい。この他にも、通気穴144の個数も特に限定されず、内筒部134は単数の通気穴144のみを備えていてもよい。この他にも、通気穴144の形状も特に限定されず、軸方向X又は周方向に長いスリット状をなしてもよい。
【0079】
通気穴144は、筒間空間138において気流発生部90が気流を発生させたときに、筒間空間138と筒内空間140との間で空気を通気させる役割を持つ。例えば、気流発生部90が筒間空間138において軸方向で筒間開口部136側(図示の例では反負荷側)に向かう気流を発生させる場合を考える。この場合、通気穴144を通して筒内空間140から筒間空間138に空気が取り込まれ、筒間空間138から筒間開口部136を通して空気が吹き出される。この場合、回転軸24のホロー部56内においては、図示の例では、気流発生部90によって、反負荷側に向かう気流が発生する。
【0080】
この他にも、気流発生部90が筒間空間138において軸方向Xで筒間開口部136とは反対側(図示の例では負荷側)に向く気流を発生させる場合を考える。この場合、筒間開口部136を通して筒間空間138に空気が取り込まれ、通気穴144を通して筒間空間138から筒内空間140に空気が吹き出される。この場合、回転軸24のホロー部56内においては、図示の例では、気流発生部90によって、負荷側に向かう気流が発生する。
【0081】
このように、内筒部134が通気穴144を備えることで、二重筒部130がある場合に、二重筒部130の筒内空間140でも気流を発生させることができる。ひいては、ホロー部56内の広い範囲で内部空間66から軸方向空間64への強制的な対流を促進することで、ホロー部56内の広い範囲で回転軸24の強制空冷をすることができる。
【0082】
本実施形態のギヤモータ10でも、前述した(A)~(G)で説明した構成要素(図示せず)を備えることで、それらの説明に対応する効果を得られる。なお、内筒部134が通気穴144を備えない場合でも、気流発生部90によって筒間空間138に気流を発生させることができる。この場合、前述と同様、筒間空間138において折り返すような気流が発生する。このとき、筒間開口部136の一部から空気を取り込みつつ、その筒間開口部136の他の箇所において空気を吹き出すことになる。この結果、筒間空間138にある空気を筒間開口部136を経由して軸方向空間64に吹き出すことで、強制的な対流を促進させることができる。よって、内筒部134が通気穴144を備えない場合でも、前述の(A)で説明したように、回転軸24の強制空冷をすることができる。
【0083】
各構成要素の他の変形形態を説明する。
【0084】
第1相手部材12、第2相手部材14の具体例は特に限定されない。第1相手部材12、第2相手部材14は、例えば、被動機械とベースの組み合わせの他に、ロボット装置の多関節アームを構成するベース部材及びアーム部材の何れかでもよい。ここでのロボット装置とは、例えば、産業用ロボット、サービスロボット等である。また、被動機械は、コンベアに限定されず、例えば、車輪、工作機械等でもよい。
【0085】
モータ軸16と入力軸20は一体的に構成される例を説明したが、互いに別体に構成されたうえで連結部材により連結されてもよい。この場合、モータ軸16及び入力軸20の何れが気流発生部90を有する回転軸24となってもよい。
【0086】
減速機22の減速機構32の具体例は特に限定されない。減速機構32は、撓み噛み合い型歯車機構の他にも、例えば、偏心揺動型歯車機構、遊星歯車機構、直交軸歯車機構、平行軸歯車機構等でもよい。撓み噛み合い型歯車機構の場合、その具体例は特に限定されない。筒型の他にも、例えば、カップ型、シルクハット型でもよい。偏心揺動型歯車機構の場合、センタークランクタイプ、振り分けタイプの何れでもよい。
【0087】
減速機22の出力部材34は、キャリヤ54である例を説明したが、減速機ハウジング36としてもよい。
【0088】
電機品の具体例は特に限定されない。電機品は、例えば、制御素子108、ドライバ素子110及びセンサ106のみによって構成されてもよいし、バッテリ等でもよい。電機品のセンサ106の用途は特に限定されない。センサ106は、回転検出器に用いられる場合の他、圧力検出器、温度検出器等に用いられてもよい。センサ106は、回転検出器に用いられる場合、例えば、レゾルバ、ホール素子等でもよい。
【0089】
回転軸24の樹脂部分72は軸本体部68を構成し、金属部分74は入力軸構成部70を構成する例を説明した。回転軸24において樹脂部分72と金属部分74は一体化されていればよく、それらの具体的な構成箇所は特に限定されない。例えば、回転軸24のホロー部56全体を樹脂部分72のみによって構成してもよい。また、金属部分74は、モータ軸16及び入力軸20の両方の外周側部分を構成していてもよいし、モータ軸16の外周側部分のみを構成してもよい。また、ホロー部56の大部分を金属部分74によって構成し、ホロー部56に設けられる気流発生部90のみを樹脂部分72によって構成してもよい。
【0090】
回転軸24の気流発生部90は、回転軸24の回転によって、ホロー部56内に気流を発生させることができればよい。これを実現するうえで、気流発生部90は、フィン92以外を用いてもよく、例えば、ホロー部56の内周に設けられる軸方向に延びる溝であってもよい。この溝は、ホロー部56の内周において軸方向に直線状又は螺旋状に延びてもよい。
【0091】
このようにフィン92以外を気流発生部90とする場合も、フィン92の特徴として説明した構成要素をフィン92以外の気流発生部90に適用してもよい。たとえば、気流発生部90は、フィン92のように、樹脂部分72と一体化されるとともに固定端部となる基端部92aと、基端部92aから延びる部分の先にあるとともに自由端部となる先端部92bとを備えていてもよい。また、このような気流発生部90は、回転軸24の回転に伴い変形してもよい。
【0092】
気流発生部90が発生させた気流Fによって、負荷側にある軸方向空間64から内部空間66に空気を取り込み、内部空間66から反負荷側にある軸方向空間64に空気を吹き出してもよい。
【0093】
気流発生部90は、樹脂部分72の内周に樹脂部分72とは別体に設けられもよい。この場合、気流発生部90は、金属系素材及び樹脂系素材の何れによって構成されてもよい。
【0094】
モータハウジング30及び減速機ハウジング36は樹脂系素材によって構成される例を説明したが、これに限定されない。モータハウジング30及び減速機ハウジング36は、例えば、金属系素材によって構成されてもよい。
【0095】
気流発生部90は、モータ軸16の内周に設けられる例を説明した。この他にも、気流発生部90は、入力軸20の内周に設けられてもよいし、モータ軸16及び入力軸20の両方の内周に設けられてもよい。
【0096】
モータ軸16の内径Raは、入力軸20の内径Rbよりも大きい例を説明した。この他にも、内径Raは、内径Rb以下であってもよい。
【0097】
回転軸24において二重筒部130の設けられる軸方向範囲は特に限定されない。二重筒部130は、回転軸24の軸方向範囲の全部に設けられてもよいし、入力軸20の軸方向範囲の一部または全部に設けられてもよい。
【0098】
第3実施形態の気流発生部90は、回転軸24の回転に伴い変形するという構成を、回転軸24の回転方向によらず同じ向きの気流を発生させるという目的のために用いている。この回転軸24の回転に伴い気流発生部90が変形するという構成は、この目的に限定されるものではなく、これとは別の目的に用いてもよい。この別の目的とは、例えば、気流の速度を変化させる目的である。
【0099】
この目的を達成するうえで、例えば、気流発生部90は、回転軸24の回転速度が遅いときは軸方向Xと平行となり、回転軸24の回転速度が速いときは軸方向Xに対して傾斜するように、回転軸24の回転方向とは反対方向に変形してもよい。これにより、回転軸24の回転速度が速くなったときに、回転軸24の回転速度が遅いときと比べて、気流発生部90が傾斜することで、気流発生部90によって発生する気流の速度を増大させ易くできる。いずれにしても、回転軸24の回転に伴い気流発生部90が変形することで、その変形する前後で気流の流れ方を変化させることができるとも捉えることができる。
【0100】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0101】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。この一例として、第3実施形態の可動式フィン92と第4実施形態の二重筒部130を組み合わせてもよい。同様に、第1、第2実施形態のフィン92と第4実施形態の二重筒部130を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…ギヤモータ、16…モータ軸、18…モータ、20…入力軸、22…減速機、24…回転軸、30…モータハウジング、36…減速機ハウジング、56…ホロー部、66…内部空間、72…樹脂部分、74…金属部分、90…気流発生部、92…フィン、102A、102B…電機品、130…二重筒部、132…外筒部、134…内筒部、138…筒間空間、144…通気穴。
図1
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図9