IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-洗浄装置 図1
  • 特開-洗浄装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181987
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20221201BHJP
   B01D 17/00 20060101ALI20221201BHJP
   B01D 17/025 20060101ALI20221201BHJP
   B01D 17/035 20060101ALI20221201BHJP
   B01D 17/06 20060101ALI20221201BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20221201BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B08B3/02 A
B01D17/00 503A
B01D17/025 502A
B01D17/025 504
B01D17/035 A
B01D17/06 502A
B05B1/02 101
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089254
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】村上 春彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 友也
(72)【発明者】
【氏名】穗田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】濱田 賢吾
【テーマコード(参考)】
3B201
4F033
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201AB42
3B201BB02
3B201BB22
3B201BB62
3B201BB94
3B201BB98
3B201CB15
3B201CD24
3B201CD43
4F033AA04
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA01
4F033NA01
4F033QA09
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB17
4F033QC07
4F033QD02
4F033QD04
4F033QD16
4F033QF08X
4F033QF13X
4F033QF17X
(57)【要約】
【課題】洗浄槽内に浮上した油脂分を排水堰から迅速かつ確実に分離回収する。
【解決手段】洗浄液を貯留するための洗浄槽(10)と、前記洗浄槽内の所定位置で洗浄対象物(W)を洗浄液に浸漬した状態に支持する支持手段(13)と、前記洗浄槽の一側(14)上部に設けられた第1排水堰(15)と、前記第1排水堰から溢出した洗浄液を受容する第1中間槽(21)および洗浄液から油脂分を分離する手段(30)を含む油水分離槽(20)と、前記油水分離槽で油脂分を分離した洗浄液を前記洗浄槽に循環させる循環手段(4)と、を備え、前記循環手段は、前記油水分離槽から吸入した洗浄液を前記洗浄槽内に微細気泡を含んだ状態で噴射する噴射ノズル(11)を備えており、前記噴射ノズルは前記洗浄槽内の一側下部に設けられ、かつ、前記洗浄対象物(W)の下部を横切って前記洗浄槽内の他側(17)に向かうように配向されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留するための洗浄槽と、
前記洗浄槽内の所定位置で洗浄対象物を洗浄液に浸漬した状態に支持する支持手段と、
前記洗浄槽の一側上部に設けられた第1排水堰と、
前記第1排水堰から溢出した洗浄液を受容する第1中間槽、および、洗浄液から油脂分を分離する手段を含む油水分離槽と、
前記油水分離槽で油脂分を分離した洗浄液を前記洗浄槽に循環させる循環手段と、
を備え、
前記循環手段は、前記油水分離槽から吸入した洗浄液を前記洗浄槽内に微細気泡を含んだ状態で噴射する噴射ノズルを備えており、
前記噴射ノズルは前記洗浄槽内の一側下部に設けられ、かつ、前記支持手段による洗浄対象物の下部を横切って前記洗浄槽内の他側に向かうように配向されている、洗浄装置。
【請求項2】
前記油水分離槽は、前記第2排水堰から溢出した洗浄液を受容する第2中間槽をさらに備え、前記油脂分を分離する手段は、前記第2中間槽またはそれより下流に配設され、
前記循環手段は、前記油脂分を分離する手段より下流側の第1取水口から吸入した洗浄液を前記噴射ノズルに循環させる第1の循環手段と、前記第1中間槽下部の第2取水口から吸入した洗浄液を前記洗浄槽内下部の供給口に循環させる第2の循環手段を備える、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記噴射ノズルは、前記洗浄槽の前記一側下部の一方の隅部に隣接して設けられ、前記供給口は、前記洗浄槽の前記一側下部に前記噴射ノズルと離間して他方の隅部に設けられ、前記第1排水堰は、前記洗浄槽の前記一側上部の一方の隅部に隣接して設けられ、前記第2排水堰は、前記第1排水堰と離れた前記第1中間槽の他方の隅に隣接して設けられている、請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽の液位が前記第1排水堰に維持されるように前記第2の循環手段を作動させ、かつ、洗浄対象物の洗浄時に前記第1の循環手段を作動させる制御装置を備え、
前記第2排水堰は、前記第1排水堰と同じかまたはそれより僅かに低く形成されている、請求項2または3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記噴射ノズルは、前記支持手段の下端角部から下部を横切って前記洗浄槽内の他側に向かうように仰角を有して配向されている、請求項3に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂などの付着した洗浄対象物、例えば表面処理前あるいは機械加工後の機械部品などの脱脂洗浄のための洗浄装置に関し、特に、水系洗浄剤と微細気泡を併用した水系洗浄のための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷の大きいフロン系や塩素系の溶剤や炭化水素系溶剤などを主成分とする洗浄剤から、水を主体とする水系洗浄剤と物理的手段を併用した水系洗浄への代替化が進んでいる。物理的手段として微細気泡を用いる水系洗浄では、微細気泡の油脂吸着作用によって油脂を洗浄対象物の表面から剥離させ、浮力によって液面に浮上させ、排水堰を利用して洗浄槽から油水分離槽に回収し、オイルスキマーで分離除去し、清浄化した洗浄液に微細気泡を含ませて洗浄槽に循環させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5430286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微細気泡を併用する洗浄装置では、洗浄槽で洗浄対象物から剥離され浮上した油脂を、迅速かつ確実に油水分離槽に回収する必要がある。しかし、特許文献1の装置では、油水分離槽の最下流部から吸入しかつ微細気泡を含ませた洗浄液を、洗浄槽の下部に単に循環させており、洗浄槽内での流れは考慮されていないため、浮上した汚れ(スラッジ、切削くずを含む)、油脂分の一部は洗浄槽の隅などに滞留する課題があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、洗浄槽内に浮上した油脂分を排水堰から迅速かつ確実に分離回収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の洗浄装置は、
洗浄液を貯留するための洗浄槽と、
前記洗浄槽内の所定位置で洗浄対象物を洗浄液に浸漬した状態に支持する支持手段と、
前記洗浄槽の一側上部に設けられた第1排水堰と、
前記第1排水堰から溢出した洗浄液を受容する第1中間槽、および、洗浄液から油脂分を分離する手段を含む油水分離槽と、
前記油水分離槽で油脂分を分離した洗浄液を前記洗浄槽に循環させる循環手段と、
を備え、
前記循環手段は、前記油水分離槽から吸入した洗浄液を前記洗浄槽内に微細気泡を含んだ状態で噴射する噴射ノズルを備えており、
前記噴射ノズルは前記洗浄槽内の一側下部に設けられ、かつ、前記支持手段による洗浄対象物の下部を横切って前記洗浄槽内の他側に向かうように配向されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る洗浄装置は、上記のように、洗浄槽の第1排水堰と同側の下部から、洗浄対象物の下部を横切って洗浄槽内の他側に向かうように微細気泡を含む洗浄液を噴射する構成により、微細気泡を含む洗浄液が、洗浄対象物の下部周辺に接触することで洗浄対象物の周囲や内空部に沿って上昇する流れと、洗浄槽内の他側に到達して上昇反転する流れが惹起され、洗浄槽の液面付近では第1排水堰に向かう流れが形成され、洗浄槽内に浮上した汚れ(スラッジ、切削くずを含む)、油脂分を第1排水堰から迅速かつ確実に第1中間槽に分離回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明実施形態に係る洗浄装置の内部構造を示す概略平断面図である。
図2】本発明実施形態に係る洗浄装置の内部構造を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2に示されるように、本発明実施形態に係る洗浄装置1は、洗浄対象物W(以下、単に対象物という)を洗浄するための洗浄槽10、洗浄液から汚れや油脂を分離するための油水分離槽20、および、それらの間で洗浄液を循環させる2系統の循環手段3、4を備える。
【0010】
洗浄槽10と油水分離槽20は、底面16と2組の対向側壁17,18を備えた有底角筒状の槽構造2の内部が、略中央において第1隔壁14で仕切られることにより画成されるか、または、第1隔壁14を共有してそれぞれ構成されかつ接合される。
【0011】
洗浄槽10の内部には、対象物Wを所定位置に支持する支持手段13が設けられている。支持手段13は、洗浄液の流れを可及的に遮らない支持構造、例えば、金網、多孔板、または、線材などで構成された洗浄カゴやフックなどの構造を有しており、図中破線で示される洗浄位置(13)と、図中二点鎖線で示される導入位置13′との間で、不図示の昇降装置により上下移動可能に構成されている。導入位置13′を含む洗浄槽10の上部空間は、遮蔽構造で覆われており、導入位置13′に隣接した対象物Wの搬入口19には開閉式のシャッターが設けられている。
【0012】
搬入口19に対して奥側となる、洗浄槽10の第1隔壁14の上部には、洗浄槽10内に貯留された洗浄液を油水分離槽20(第1中間槽21)に溢出(オーバーフロー)させて、液面付近に浮上する汚れや油分を洗浄槽10から排出するための第1排水堰15が形成されている。この第1排水堰15は、第1隔壁14の幅方向において、洗浄槽10の一方の隅部に隣接した一部に切欠形状に設けられている。
【0013】
洗浄槽10内の洗浄液を第1排水堰15から継続的に溢出させるためには、清浄な洗浄液が洗浄槽10に継続的に循環供給されなければならない。このような洗浄液の循環供給手段として、洗浄槽10の内部には、循環手段3により循環される洗浄液の供給口12と、循環手段4により循環される洗浄液の噴射ノズル11が設けられている。
【0014】
噴射ノズル11は、循環手段4を構成するポンプ42により供給管43を通じて圧送させる洗浄液の供給部であると同時に微細気泡の発生装置である。噴射ノズル11の内部では、加圧された洗浄液の剥離流による吸引を生じており、空気供給管47を通じて空気が吸入されると同時にせん断され、微細気泡を含む気液混合状態の洗浄液として洗浄槽10内に噴射されるように構成されている。吸入される空気流量は空気流量調整手段46(エアフローメータ)で所定流量に制御される。
【0015】
微細気泡は、気泡径が1mm以下の球状気泡、特に直径が0.1mm以下のファインバブル(マイクロバブル)が好適であり、さらに微細なナノバブルとすることもできる。このような微細気泡は、通常の気泡に比較して浮力が小さく、かつ、洗浄液中ではマイナスの電荷(ゼータ電位)を帯びているため、直ちに消滅せずに洗浄液中に分散して安定的に残存するが、洗浄液中で球状気泡がより安定的に維持されるように、水を主体とする洗浄液にアルコール系化合物や界面活性剤などの添加剤が微量添加されてもよい。
【0016】
上記のように洗浄液中でマイナス電荷をもつ微細気泡が対象物Wに接触すると、プラス電荷をもつ汚れや油分に微細気泡が吸着し、汚れや油分が気泡内に取り込まれ、電気的に中和することで対象物Wから剥離し、汚れや油分に作用する浮力により液面に浮上する。このように液面に浮上した汚れや油分を迅速かつ確実に第1排水堰15から分離回収するために、噴射ノズル11は、以下のように配設されている。
【0017】
図1および図2に示すように、噴射ノズル11は、第1排水堰15が設けられた洗浄槽10内の一方の隅部における第1隔壁14の下部に隣接して配置され、かつ、洗浄位置にある支持手段13の下側の角部に向けて、支持手段13の下部を横切って洗浄槽10内の他側に向かうように配向されている。噴射ノズル11は、洗浄槽10の側壁18および第1隔壁14に対しては水平面内で略45度の角度を有するかまたは略対角線上に配向され、洗浄槽10の底面16に対して10~35度の仰角を有して配向されている。
【0018】
一方、循環手段3を構成するポンプ32により供給管33を介して循環される洗浄液の供給口12は、噴射ノズル11とは離れて、洗浄槽10内の第1隔壁14に隣接した他の隅部に設けられており、噴射ノズル11と同様に洗浄槽10の下部に、底面16に近接して供給管33の下端に開口されている。
【0019】
油水分離槽20の内部は、第2隔壁26により第1中間槽21と第2中間槽22側とに区画され、第2中間槽22側には、隔壁28、29により、油水分離部23および洗浄液取水部24が画成されている。油水分離部23には洗浄液から油脂分を分離する手段としてオイルスキマー30が設けられている。
【0020】
第1中間槽21は、洗浄槽10に第1隔壁14を介して隣接し、洗浄槽10の第1排水堰15から溢出した洗浄液を受容するように構成されている。第2隔壁26の上部には、第1中間槽21に受容した洗浄液を、液位がL2以上になった場合に第2中間槽22に溢出させるための第2排水堰25が形成されている。第2排水堰25の高さ(L2)は、第1排水堰15の高さ(L1)と同じかまたは僅かに低く形成されている
【0021】
第2排水堰25は、第1排水堰15と離れた側の側壁18に隣接して、第2隔壁26の幅方向の一部に切欠形状に設けられており、第2排水堰25からの洗浄液の溢出により、第1中間槽21の内部、特に液面付近に、第1排水堰15側から第2排水堰25に向かう洗浄液の流れが形成されるようになっている。
【0022】
第1排水堰15に隣接した第1中間槽21の下部には、循環手段3を構成するポンプ32の取水口31が設けられており、ポンプ32の作動により取水口31から吸入された洗浄液は、フィルター34でろ過され、供給管33を通じて供給口12に圧送され、供給口12から洗浄槽10内に循環される。
【0023】
第2中間槽22は、第1中間槽21に第2隔壁26を介して隣接し、第1中間槽21の第2排水堰25から溢出した洗浄液を受容するように構成されている。第2中間槽22の下流側には隔壁28を介して油水分離部23および洗浄液取水部24が隣接しているが、第2中間槽22と油水分離部23は、隔壁28の第2排水堰25から離れた側に位置した連通部27を通じて連通している。したがって、第2中間槽22と油水分離部23および洗浄液取水部24は同じ液位L3となっている。この液位L3は、洗浄液取水部24に設けられた液面計45によって監視されている。
【0024】
第2中間槽22は、第1中間槽21の第2排水堰25から溢出した洗浄液の油脂分を浮上させつつ油水分離部23のオイルスキマー30に案内する機能を有している。オイルスキマー30としては、金属ベルトなど親油性の素材からなる無端ベルトに油脂分を吸着させ、洗浄液の外部でスクレーパーによってベルトから油脂分を掻き取り除去するベルト式が好適であるが、フロート式、ディスク式、ドラム式など、他の形式のオイルスキマーとすることもできる。
【0025】
洗浄液取水部24は、油水分離部23と、下部を除き液面変動範囲を含む上部が隔壁29で仕切られ、隔壁29の下方で油水分離部23と連通している。洗浄液中の油脂分は液面近傍に浮遊しており、隔壁29から洗浄液取水部24に流入することはできず、隔壁29の下方の連通部からは、オイルスキマー30で油脂分を分離され清浄化された洗浄水のみが洗浄液取水部24に流入するようになっている。
【0026】
洗浄液取水部24の下部には、循環手段4を構成するポンプ42の取水口41が設けられている。ポンプ42の作動により取水口41から吸入された洗浄液は、フィルター44でろ過され、供給管43を通じて噴射ノズル11に圧送され、噴射ノズル11から微細気泡を含んだ状態で洗浄槽10内に循環されるように構成されている。
【0027】
なお、2系統の循環手段3、4のポンプ32、42は、支持手段13の昇降装置と連動して、不図示の制御装置によりシーケンス制御される。すなわち、導入位置の支持手段13′に対象物Wを支持し、シャッター19を閉じる操作などにより支持手段13が降下して所定の洗浄工程が開始され、洗浄工程が終了すると支持手段13が上昇して対象物Wが搬出可能となる。
【0028】
次に、上記実施形態に基づいて洗浄装置の動作について説明する。
【0029】
洗浄工程において、循環手段3のポンプ32は常時作動させ、第1中間槽21の洗浄液が供給口12から常時循環供給されることで、洗浄槽10の液位L1は満水付近に維持され、第1排水堰15から第1中間槽21への洗浄液のオーバーフローと、それに伴う洗浄槽10の液面付近での第1排水堰15に向かう流れが形成されている。
【0030】
一方、循環手段4のポンプ42は、洗浄時にのみ断続的に作動するが、初回洗浄時など、洗浄液の入れ替えがあった場合には、事前にポンプ42を作動させ、洗浄槽10(および第1中間槽21)内の洗浄液を、微細気泡を含む気液混合状態としておいてもよい。
【0031】
このような状態で、対象物Wを支持した支持手段13を降下させ、対象物Wを洗浄液に浸漬すると同時に、循環手段4のポンプ42を作動させ、噴射ノズル11から微細気泡を含む洗浄液を噴射すると、図1および図2に矢印で示されるように、対象物Wを下部から包囲し対象物Wの周囲(および内空部)に沿って上昇する洗浄液の流れと、対象物Wの下部や周囲を横切って洗浄槽10内の他側(第1排水堰15と反対側の側壁17)に到達して上昇反転する流れが惹起され、対象物Wとの接触により気泡に吸着され、対象物Wから剥離した汚れや油脂は液面に浮上する。
【0032】
洗浄槽10の液面付近では、供給口12から常時循環供給される洗浄液によるオーバーフロー流れに加えて、噴射ノズル11から噴射される洗浄液により、図中2点鎖線で示されるように第1排水堰15に向かう流れが形成されており、このような洗浄液の流れによって、液面付近に浮上した汚れや油脂は迅速かつ確実に第1中間槽21に排出される。
【0033】
また、対象物Wの洗浄中は、噴射ノズル11からの洗浄液の噴射により油水分離槽20の洗浄液が洗浄槽10に供給されるので、第1中間槽21の液位L2も満水付近に維持されており、第2排水堰25から第2中間槽22への洗浄液のオーバーフローと、それに伴う液面付近での第2排水堰25に向かう流れが形成されている。
【0034】
そのため、第1中間槽21に流入した汚れや油脂は、液面付近に浮遊した状態で第1中間槽21内を第2排水堰25に向かって移動し、第2排水堰25から第2中間槽22に排出される。したがって、循環手段3のポンプ32の作動により取水口31から洗浄液が吸入されても、汚れや油脂が混入することはない。
【0035】
第2中間槽22は、油水分離部23および洗浄液取水部24と連通しているため、循環手段4のポンプ42の作動による取水口41からの洗浄液の吸入と、第2排水堰25からの洗浄液の流入によって、第2中間槽22内の洗浄液は、第2排水堰25側から油水分離部23側に流れている。そのため、第2中間槽22に洗浄液とともに流入した汚れや油脂は、油水分離部23に向かって移動し、油水分離部23においてオイルスキマー30で回収され、分離除去される。
【0036】
洗浄槽10内での所定時間の洗浄工程が終了すると、循環手段4のポンプ42は停止され、噴射ノズル11からの洗浄水および微細気泡の噴射も停止され、支持手段13が上昇して対象物Wが洗浄液から引き上げられる。この際、一時的に洗浄槽10内の洗浄液の液位L1が低下するが、先述したように循環手段3のポンプ32は作動を継続しており、次の対象物Wが投入される以前に、洗浄液の液位L1は満水付近に回復している。また、噴射ノズル11からの洗浄液および微細気泡の噴射を停止した後も、洗浄槽10内の微細気泡は短時間では消失せず、洗浄液中に分散して気液混合状態で残存しているので、次の洗浄工程でも、対象物Wが投入され次第、定格通りの洗浄を実施できる。
【0037】
支持手段13を降下させて洗浄液に対象物Wを浸漬する洗浄工程の初期段階では、対象物Wの周囲で洗浄液が流動し、対象物Wと洗浄液の良好な接触が得られ、比較的多くの汚れや油脂が対象物Wから剥離される。したがって、事前に循環手段3のポンプ32が作動しており、洗浄液の液位L1が満水付近に維持され、第1排水堰15に向かうオーバーフロー流れが形成されるとともに、洗浄液中に微細気泡が残存し気液混合状態に維持されていることで、洗浄工程の初期段階での洗浄効果を十分に得ることができ、かつ、対象物Wから遊離した汚れや油脂を確実に分離回収することができる。
【0038】
また、循環手段3のポンプ32により第1中間槽21から洗浄槽10に洗浄液を循環させる構成により、第1排水堰15からのオーバーフローを維持するために、循環手段4のポンプ42を常時作動させる必要がなくなり、オイルスキマー30の処理能力に依存せずに洗浄槽10に洗浄液を循環させることができ、また、部分的な量の洗浄液のみが油水分離部23側に循環するので、オイルスキマー30の処理能力に余剰が生じる。
【0039】
また、洗浄槽10から溢出した洗浄液を第1中間槽21で受容してから第2中間槽22側に流入させる構成により、第2中間槽22以降の液位L3の変動が少なくなり、汚れや油脂を十分に浮上させた状態でオイルスキマー30に誘導することができる。
【0040】
具体的な実施例を挙げると、例えば1回の洗浄工程が4~5分の対象物(例えばシリンダブロック)の場合、対象物の投入毎に噴射ノズル11からの噴射を20秒程度実施することで洗浄槽内に微細気泡が満たされ、その後も洗浄液中に微細気泡が3~4分存在することが確認された。したがって、洗浄工程の初期に噴射ノズル11からの噴射を連続的または断続的に実施することで、所望の洗浄効果を得つつもポンプの作動時間短縮による電力費の節減が見込める。
【0041】
洗浄装置1は、陽極酸化処理、めっき処理、酸洗処理など、金属の表面処理工程での前処理や行程中での洗浄や、切削加工やプレス加工など、機械加工後の金属部品の洗浄での用途が見込まれるが、水系洗浄では、洗浄の目的に応じて、アルカリ性、中性、または、酸性の洗浄液が使用される。
【0042】
微細気泡(マイクロバブル、ファインバブル)は、洗浄液がpH4程度またはそれ以下の酸性ではプラス電荷を帯び、それ以上ではマイナス電荷を帯びる特性がある。これは気泡の粒径によっても異なり、粒径が小さい程、電位の変化量が大きい。例えば、気泡径が1~40μmの微細気泡は収縮する特性をもち、その時の電位の変化量が大きくなる。そのような状況下では、微細気泡がプラス電荷をもつことで、その周囲に、反対の電荷をもつ陰イオン、スラッジ、油分、汚れ等が引き付けられる。
【0043】
一方、pH4以上の洗浄液では、微細気泡がマイナス電荷を帯びる特徴を生かして、マイナス電荷に引き寄せられる薬剤(プラス電荷を帯びる)を添加すると、微細気泡と共に洗浄槽10あるいはそれ以降の槽内に薬剤を循環させることができる。
【0044】
そこで、プラス電荷を帯びる添加剤として、防錆効果のあるブチル安息香酸を使用し、微細気泡の有無による添加剤の含有量を比較する実験を行った。洗浄液を循環させる配管を含む洗浄装置において水系洗浄液を使用する場合、防錆が必要になるが、ブチル安息香酸は比重が水より僅かに大きいため、洗浄槽内では下部に滞り易い。そのため、微細気泡を利用してこの傾向が改善されれば、防錆効果の向上につながると考えられる。
【0045】
実験では、洗浄水に0.2g/lのブチル安息香酸を添加した状態で2系統のポンプを20分間作動させ、5分後に洗浄槽内の上位(液面付近)と中位で洗浄液を採取し、ヘキサン抽出法によりブチル安息香酸の含有量を測定した。結果は以下の通りである。
【0046】
ブチル安息香酸の含有量(mg/l)
気泡なし 気泡あり
上位 3.1 9.6
中位 1.5 1.3
【0047】
実験結果から、気泡がある場合は、洗浄槽内の上位では、気泡がない場合の3倍以上の含有量となっており、微細気泡の特性を添加剤の伝達に利用することで、防錆効果の向上なども期待できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、洗浄液の2系統の循環手段3,4を有する場合について述べたが、第1中間槽21内の取水口31から供給管12に至る循環手段3を省略して、1系統の循環手段4のみでシステムを構成することもできる。その場合、第2排水堰25は、その位置で底部まで連通する連通部として、第1中間槽21の液位L2が第2中間槽22以降の液位L3と同じになるようにする必要がある。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内でさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0050】
1 洗浄装置
3、4 循環手段
10 洗浄槽
11 噴射ノズル
12 供給口
13 支持手段
14 第1隔壁
15 第1排水堰
20 油水分離槽
21 第1中間槽
22 第2中間槽
23 油水分離部
24 洗浄液取水部
25 第2排水堰
26 第2隔壁
30 オイルスキマー
31、41 取水口
32、42 ポンプ
33、43 供給管
34、44 フィルター
45 液面計
46 空気流量調整手段
図1
図2