(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181995
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】半田噴流装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20221201BHJP
B23K 1/08 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H05K3/34 506K
B23K1/08 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089264
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】596162131
【氏名又は名称】有限会社森永技研
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】永野 光春
【テーマコード(参考)】
4E080
5E319
【Fターム(参考)】
4E080AA01
4E080AB03
4E080CA11
4E080DA04
4E080EA02
5E319AA02
5E319AB01
5E319AC01
5E319BB02
5E319CC24
5E319CD07
5E319CD35
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】熱損傷を受け難いポンプ手段を採用して安定生産をなし得る半田噴流装置を提供する。
【解決手段】半田槽1に吐出口が上方へ突出して配された噴流ノズル2の内部に、該半田槽1に貯留した溶融半田Mを、ポンプ手段3で圧送して、吐出口から噴流させる半田噴流装置において、ポンプ手段3が、半田槽1の外側に配される動力用モータ32と、前記溶融半田M中に沈められる羽根車31aを有して、該羽根車の支軸312の上部を、半田槽Mよりも上方へ突き出させているポンプ主部31と、モータ32の回転軸321と横架軸33の一端部側とを係合させ、該回転軸321の回転を該横架軸33の回転へと伝動する一次伝動機構34と、横架軸33の他端部側に固着された円筒状第三磁気歯車351が支軸312の上部に固着された円筒状第四磁気歯車352と係合し、横架軸33の回転を該支軸312の回転へと磁力を使って伝動する二次伝動機構35と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田槽に吐出口が上方に突出して配された噴流ノズル内へ、該半田槽に貯留した溶融半田を、ポンプ手段で圧送して、前記吐出口から噴流させる半田噴流装置において、
前記ポンプ手段が、前記半田槽の外側に配される動力用モータと、
前記溶融半田中に沈められる羽根車を有して、該羽根車の支軸の上部を、前記半田槽よりも上方へ突き出させているポンプ主部と、
前記モータの回転軸と横架軸の一端部側とを係合させ、該回転軸の回転を該横架軸の回転へと伝動する一次伝動機構と、
前記横架軸の他端部側に固着された円筒状第三磁気歯車が前記支軸の上部に固着された円筒状第四磁気歯車と係合し、前記横架軸の回転を該支軸の回転へと磁力を使って伝動する二次伝動機構と、を具備することを特徴とする半田噴流装置。
【請求項2】
前記一次伝動機構は、前記回転軸の先端部に嵌挿固着された円筒状第一磁気歯車と、前記横架軸の一端部側に嵌挿固着された円筒状第二磁気歯車とが係合して、該回転軸の回転を該横架軸の回転へと磁力を使って伝動させるようにし、さらに該回転軸と前記支軸とが離間して鉛直起立し、且つ一端部側を該回転軸の先端部に近接させ、また他端部側を該支軸の上部に近接させた前記横架軸が、水平配設されている請求項1記載の半田噴流装置。
【請求項3】
前記第一磁気歯車と前記第二磁気歯車とが非接触で係合すると共に、前記第三磁気歯車と前記第四磁気歯車とが非接触で係合し、さらに該第一磁気歯車、該第二磁気歯車、該第三磁気歯車、及び該第四磁気歯車が全て同一部品で形成された請求項2記載の半田噴流装置。
【請求項4】
前記半田槽が、槽外形本体の外槽と、該外槽内で溶融半田中に沈むように配される吸込み孔付き横長筒部と該横長筒部上に起立する縦筒部と該縦筒部の下縁から延在して該横長筒部内に入り込む有底筒部とを有する内槽と、を備え、且つ前記吸込み孔域に前記ポンプ手段の羽根車を配し、該有底筒部の筒側面に前記横長筒部と導通する透孔を設けて、前記溶融半田が該透孔を潜って前記縦筒部の筒上端部分に装着された前記噴流ノズルの吐出口から噴流するようにした卓上タイプの請求2又は3に記載の半田噴流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子部品のリードや端子等に、噴流半田を接触させて半田付けを可能にする半田噴流装置で、詳しくは小ロット生産に好適な卓上タイプの半田噴流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1、2のような小ロット生産に好適な卓上半田付け装置を発明して、その製品を国内外に出荷販売している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5496968号公報
【特許文献2】特開2021-22627号公報
【0004】
特許文献1、2の卓上半田付け装置は、プリヒート用熱源を新たに設置することなくプリヒートを行い、品質安定,生産性を向上させるなど優れものの装置となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1、2の半田付け装置には、いずれも半田槽の溶融半田を噴流ノズルから噴流させるポンプ手段にベルト伝動機構が用いられており、時にベルトが損傷する虞があった。
特許文献2で説明すると、ポンプの羽根車31aを半田槽1内に配して、動力用モータ32を半田槽1外に設置し、該モータ32に固着したプーリmと該羽根車31aの支軸に固着したプーリmとにベルトbtを巻回したベルト伝動機構を採用している(
図10)。よって、例えば一連作業を終えた後の段取り替え掃除等で、高温の溶融半田Mが飛び散ると、半田槽1内の溶融半田Mと至近距離に配されているベルトbtに付着した。場合によっては、ゴム製ベルトbtが損傷し、ベルト交換を余儀なくされた。ベルト交換となると、ベルトbtのコストのみならず、交換に時間がかかり、生産性低下を招いた。
また、最近はこれまでの約300℃で半田付けを行っていた装置から、半田付けする箇所のエナメル被覆部分を溶かして半田付け可能な高温タイプの半田装置も製品化している。溶融半田Mの温度が約500℃に達しており、ベルト損傷が増加する傾向にあって問題化した。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、ベルト伝動機構に代って溶融半田からの熱損傷を受け難いポンプ手段を採用して安定生産をなし得、さらに非接触形磁気歯車の伝動機構によって品質向上も可能な半田噴流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、第1発明の要旨は、半田槽に吐出口が上方に突出して配された噴流ノズル内へ、該半田槽に貯留した溶融半田を、ポンプ手段で圧送して、前記吐出口から噴流させる半田噴流装置において、前記ポンプ手段が、前記半田槽の外側に配される動力用モータと、前記溶融半田中に沈められる羽根車を有して、該羽根車の支軸の上部を、前記半田槽よりも上方へ突き出させているポンプ主部と、前記モータの回転軸と横架軸の一端部側とを係合させ、該回転軸の回転を該横架軸の回転へと伝動する一次伝動機構と、前記横架軸の他端部側に固着された円筒状第三磁気歯車が前記支軸の上部に固着された円筒状第四磁気歯車と係合し、前記横架軸の回転を該支軸の回転へと磁力を使って伝動する二次伝動機構と、を具備することを特徴とする半田噴流装置にある。第2発明の半田噴流装置は、第1発明で、一次伝動機構は、前記回転軸の先端部に嵌挿固着された円筒状第一磁気歯車と、前記横架軸の一端部側に嵌挿固着された円筒状第二磁気歯車とが係合して、該回転軸の回転を該横架軸の回転へと磁力を使って伝動させるようにし、さらに該回転軸と前記支軸とが離間して鉛直起立し、且つ一端部側を該回転軸の先端部に近接させ、また他端部側を該支軸の上部に近接させた前記横架軸が、水平配設されていることを特徴とする。第3発明の半田噴流装置は、第2発明で、第一磁気歯車と前記第二磁気歯車とが非接触で係合すると共に、前記第三磁気歯車と前記第四磁気歯車とが非接触で係合し、さらに該第一磁気歯車、該第二磁気歯車、該第三磁気歯車、及び該第四磁気歯車が全て同一部品で形成されたことを特徴とする。第4発明の半田噴流装置は、第2発明又は第3発明で、半田槽が、槽外形本体の外槽と、該外槽内で溶融半田中に沈むように配される吸込み孔付き横長筒部と該横長筒部上に起立する縦筒部と該縦筒部の下縁から延在して該横長筒部内に入り込む有底筒部とを有する内槽と、を備え、且つ前記吸込み孔域に前記ポンプ手段の羽根車を配し、該有底筒部の筒側面に前記横長筒部と導通する透孔を設けて、前記溶融半田が該透孔を潜って前記縦筒部の筒上端部分に装着された前記噴流ノズルの吐出口から噴流するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半田噴流装置は、モータの回転軸と横架軸の一端部側とを係合させる一次伝動機構と、その横架軸の他端部側とポンプの支軸とを磁気歯車で係合させる二次伝動機構と、を具備するポンプ手段を採用しているので、熱損傷を受けるベルト伝動機構と違って耐熱性に優れた構造にでき、さらに磁気歯車を非接触で用いると摩耗等が発生せず、摩耗に伴う不純物が溶融半田に入り込むことがないので、高品質の半田付けも可能になるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の半田噴流装置の一形態で、その側面断面図である。
【
図4】
図3のポンプ手段に係る一次伝動機構と二次伝動機構の平面図である。
【
図5】コントローラの信号伝達を加えた
図1のV-V線断面図である。
【
図6】
図5の昇降機構,押圧手段が作動し、保持枠が下端に達した後、吐出口から溶融半田が噴流し、半田付けする説明断面図である。
【
図7】溶融半田にスルーホールが浸かった基板周りの拡大断面図である。
【
図8】半田付け終了後、基板上昇中にある基板周りの拡大断面図である。
【
図9】他態様の一次伝動機構を組み込んだポンプ手段周りの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る半田噴流装置について詳述する。
図1~
図9は本発明の半田噴流装置の一形態で、
図1はその側面断面図、
図2は
図1のII-II線断面図、
図3は
図1のポンプ手段周りの斜視図、
図4は
図3の一次伝動機構と二次伝動機構の平面図、
図5はコントローラの信号伝達を加えた
図1のV-V線断面図、
図6は
図5の昇降機構,押圧手段の作動後、吐出口から溶融半田が噴流する断面図、
図7は溶融半田にスルーホールが浸かった基板周りの拡大図、
図8は半田付け終了後、基板上昇中にある基板周りの拡大図、
図9は他態様の一次伝動機構を組み込んだポンプ手段周りの斜視図を示す。尚、図面を判り易くするため、発明要部を強調図示する。また断面表示のハッチングを一部省略すると共に、本発明に直接関係しない構成部分や部材等は省略する。
図5はモータ32の起動直後の断面図、
図1は保持枠45を上端位置にしたまま
図5から時間経過して、吐出口22に溶融半田Mが達した説明用の断面図とする。
【0011】
(1)実施形態1
半田噴流装置Pには、ケーシング9内にヒータHTで加熱した溶融半田Mを貯溜する半田槽1が設けられる。この半田槽1に吐出口22が上方に突出して配された噴流ノズル2内へ、ポンプ手段3で溶融半田Mを圧送して吐出口22から噴流させる卓上タイプの半田噴流装置Pになっている。ポンプ手段3の作動で、溶融半田Mが内槽1Bを通ってその縦筒部16上に取着された噴流ノズル2から溢れ出て、半田槽1内を循環する。尚、半田噴流装置Pは、起動スイッチS2の前に作業者が通常立って作業する
図1の側面断面図で、紙面右方を前方,前側、紙面左方を後方,後側、紙面上方を上方、紙面手前方向を左方、紙面奥方を右方、紙面左右横方向の線を含む紙面垂直面方向を水平方向という。
半田噴流装置Pは、ケーシング9と半田槽1と噴流ノズル2とヒータHTとポンプ手段3とコントローラCRとを具備する(
図1)。
【0012】
ケーシング9は平面視矩形の箱形容器である (
図1,
図2)。水平配設される底板90には、前立板91寄りに半田槽1が配され、該半田槽1と後立板92との間にポンプ手段3のモータ32が配される。前立板91,後立板92,両側立板93,94で底板90周縁を囲って半田槽1,モータ32等を収容する。後立板92の上縁で前方に上板95を延設し、該上板95の先で下降傾斜してモータ32を被う。一方、前立板91は上方部が後方に傾く傾板部分とし、その上縁から水平鍔が後方に張り出す。
【0013】
半田槽1は、槽外形本体の外槽1Aと、内槽1Bとを備える(
図1~
図5)。
外槽1Aは、板状の底部10,前壁部11,後壁部12,両側壁部13,14からなる上面開口の方形容器で、溶融半田Mを貯留する。
内槽1Bは、外槽1A内で溶融半田M中に沈むように配される吸込み孔15a付き横長筒部15と、該横長筒部15上に起立する縦筒部16と、該縦筒部16の下縁から延在して該横長筒部15内に入り込む有底筒部17と、を有する。
横長筒部15は角筒形にして横置きされ、その一端側筒口を後壁部12で塞いで、ここから底部10,両側壁部13,14と平行にして他端側筒口が前壁部11近くまで配される。他端側筒口を蓋15dで塞ぎ、該蓋15d寄り横長筒部15の上面に吐出孔15bを設ける。また後壁部12寄り横長筒部15の下面に吸込み孔15aを設け、該吸込み孔15aの上方に在る横長筒部15の上面にポンプ用孔を設ける。
縦筒部16は、下端筒口内に前記吐出孔15bを配した角筒体で、横長筒部15上に立設する。有底筒部17は縦筒部16よりも筒径を小さくして横長筒部15内へ延在し、該有底筒部17の筒側面に横長筒部15内と導通する透孔17aが設けられる(
図5)。そして、ポンプ手段3の停止時に、縦筒部16の上端が溶融半田Mの液面M1よりも高所位置に設定される。縦筒部16の筒上端部分には噴流ノズル2が着脱自在に装着される。
【0014】
噴流ノズル2は、基端部21の開口面積よりも上方側吐出口22の開口面積を広く設定した筒状体である(
図5)。噴流ノズル2は、縦筒部16の上端部分に下方側接続部となる基端部21を嵌合させて、半田槽1の上方に向け吐出口22側が突出するように取着される。詳しくは、基端部21を方形筒部とする一方、先端の吐出口22に向けて
図5のように装置左右方向に吐出口22を大きく広げた横長矩形とする。吐出口22の開口面積が広くなり、マスク治具51に一度に複数(四個)の基板52をセットできる。前記ポンプ用孔にポンプ手段3の支軸312を挿通させ、支軸下端部に固着した羽根車31aを吸込み孔15a域に配して、ポンプ手段3の作動により、吸込み孔15aから吸込んだ溶融半田Mを、
図1の矢印のごとく横長筒部15内,透孔17a,縦筒部16内を経て、噴流ノズル2の吐出口22から噴流させ、半田付けを可能とする(
図6)。
【0015】
ヒータHTは半田槽1内の溶融半田Mを加温して溶融維持する熱源で、ここでは、棒状のヒータHTを、
図5のごとく半田槽1内の底部10寄りで紙面垂直方向に二本配設する。
【0016】
ポンプ手段3は、半田槽1の外にモータ32を設置し、該モータ32の回転力を羽根車31aに伝えることにより、その遠心力を利用して外槽1A内に在る高温の溶融半田Mを、強制的に内槽1Bを通って、噴流ノズル2へと送り出す機器である。
モータ32を作動させることによって、ポンプ停止時の半田液面M1が縦筒部16内を上昇して(
図5の矢印)、溶融半田Mが吐出口22から噴流、すなわち溢れ出るようにするポンプ手段3は、ポンプ主部31とモータ32と一次伝動機構34と二次伝動機構35と、を具備する。
図6中、符号M2はオーバーフロー半田液を示す。
ここでは、外槽1Aに係る後壁部12寄りの両側壁部13,14上に受台381を載置し、該受台381に設けた軸受382にポンプ主部31の支軸312が回転自在に支えられる。また、受台381の上面と略同一水平レベルのベース板36が後壁部12域からケーシング9の後立板92近くにまで水平配設され、該ベース板36に、モータ32がそのフランジ部323をビスv1固定することによって取付けられる(
図2,
図3)。符号v2はベース板36を水平に配置固定するビスを示す。一次伝動機構34,二次伝動機構35の構成要素になる横架軸33は、横置きしてベース板36上の軸受37に回転自在に支えられる。
【0017】
ポンプ主部31は、溶融半田M中に沈められる羽根車31aを有するポンプ主要部で、該羽根車31aを下端部分で固定支持する支軸312の上部312aを、前記半田槽1よりも上方へ突き出させて設置される。ポンプ主部31の動力用モータ32は、前述のごとく半田槽1の外側に在り、隔壁99と後立板91間の空所に配されている。
そして、一次伝動機構34が、モータ32の上方向へ突き出す回転軸321と横架軸33の一端部331側とを係合させ、回転軸321の回転を横架軸33の回転へと伝動する。さらに、二次伝動機構35は、横架軸33の他端部332側に固着された円筒状第三磁気歯車351が支軸312の上部312aに固着された円筒状第四磁気歯車352と係合し、横架軸33の回転をポンプ主部31の支軸312の回転へと磁力を使って伝動するしくみになっている。
【0018】
ここで、「横架軸33の他端部332側に固着された円筒状第三磁気歯車351が支軸312の上部312aに固着された円筒状第四磁気歯車352と係合し」の係合とは、第三磁気歯車351が第四磁気歯車352と、直かに接触してかかわり合うだけでなく、非接触の状態でかかわり合うものでもよい。
磁気歯車そのものはミスミ、FEC等の公知部品であり、実開昭63-48386号,特開平3-285556号,特開2003-139213号,特開2005-114162号,特開2008-232349号等の公報が存在する。磁気歯車は、歯車の歯に代わって、磁力の吸引,反発を利用して動力を伝達する歯のない歯車であり、磁力歯車とも呼ばれる。例えば円筒形基体の外周面に、
図3,
図4のような永久磁石の磁気部531a(352a)を所定の厚みで形成し、所定厚みの層が一回り大きな外径円筒部となって円筒形基体に密着固定する円筒状磁気歯車351(352)である。磁気歯車は磁石を利用した非接触形の伝動機構として用いることができる。本実施形態はミスミの非接触磁力歯車標準タイプを使用する。
【0019】
前記磁気歯車が組込まれた二次伝動機構35は以下のごとくである。水平配設した横架軸33に支軸312を鉛直配設し、横架軸33と支軸312とが
図1の側面視で直交する。横架軸33の他端部332側に
図3,
図4のように第三磁気歯車351を嵌挿固着するとともに、支軸312の上部312aに第四磁気歯車352を嵌挿固着する。横架軸33の他端部332及び支軸312の上端部から磁気歯車を夫々嵌め入れた後、円筒形基体の半径方向に設けた図示しない孔を使って、ねじで磁気歯車を横架軸33及び支軸312に夫々螺着固定する。横架軸33側の第三磁気歯車351に係る円筒状磁気部351aと支軸312側の第四磁気歯車352に係る円筒状磁気部352aとは接触させることもできる。しかし、ここでは、
図4のように0.5mm以下の隙間εを確保して、両者を非接触としながら、横架軸33の回転をポンプ主部31の支軸312の回転へと磁力を使って伝動させる動力伝達機構とする。磁気歯車が固着された横架軸33,支軸312を直交させる形で且つ非接触状態にして動力を伝達している。
【0020】
本実施形態の一次伝動機構34は、二次伝動機構35と同様、回転軸321の先端部321aに嵌挿固着された円筒状第一磁気歯車341と、横架軸33の一端部331側に嵌挿固着された円筒状第二磁気歯車342とが係合して、該回転軸321の回転を該横架軸33の回転へと磁力を使って伝動させるようにしている。一次伝動機構34も、二次伝動機構35と同じく、第一磁気歯車341の円筒状磁気部341aと第二磁気歯車342の円筒状磁気部342aとを非接触にしている。回転軸321と支軸312とが離間して鉛直起立し、且つ一端部331側を該回転軸321の先端部321aに近接させ、また他端部332側を該支軸312の上部312aに近接させた前記横架軸33が水平配設されて、回転軸321と支軸312と横架軸33とで
図1のような側面視門型にする。回転軸321の軸線と横架軸33の軸線とが側面視で直交し、また横架軸33の軸線と支軸312の軸線が側面視で直交する。そして、第一~第四磁気歯車341,342,351,352に同一部品を採用する。部品管理のコスト低減や、回転軸321と支軸312と横架軸33の位置関係を単純化できる。
【0021】
モータ32は、本体をベース板36の下面に固定し、出力シャフトたる回転軸321がベース板36の円孔361を潜って上方へ突き出し、
図1のごとく横架軸33と側面視で交差する姿態にする。モータ32は半田槽1に貯留する溶融半田Mの高熱から確実に守るため、横架軸33で距離をとり且つ隔壁99を介して半田槽1の後方側に配されている。
起動スイッチS2でモータ32を動かすと、コントローラCRによってモータ32の回転軸321が所定回転数に制御され、
図4の回転軸321の回転に合わせ、横架軸33、さらに支軸312が回転して、支軸312の下端部分に固着した羽根車31aが、半田槽1の吸込み孔15a周りに在る溶融半田Mを噴流ノズル2の吐出口22へと送り出す。
【0022】
本実施形態では、さらに昇降機構4、押圧手段7、空冷手段8を付加した卓上半田付け装置になっている。
昇降機構4は、第一シリンダ41と保持枠45とを備え、両側壁部13,14近くにエアシリンダの第一シリンダ41が一対設けられる。第一シリンダ41のシリンダ本体から上方へ伸びる第一ロッド42の先端に、水平配設した保持枠45を固定する。ポンプ手段3域よりも前方側で、且つ半田槽1の上面開口部上方で、保持枠45が上下動する。吐出口22から溶融半田Mが噴流する状況下、第一ロッド42が後退すると、マスク治具51を介して保持枠45に支えられた基板52のスルーホール520が溶融半田Mに浸かる下端位置に配される(
図6)。一方、第一ロッド42が進出すると、基板52のスルーホール520が、噴流する溶融半田Mの液面M1から上方に離れた
図1,
図5の上端位置に配される。
【0023】
前記保持枠45に支えられる基板52のスルーホール520にリード531を挿入した電子部品53をケース54が覆うが、押圧手段7は、該ケース54の上面にあてがう盤状体63に接続し、該盤状体63をケース54の上面に当ててマスク治具51へ向け押圧する装置である。保持枠45上に立設する支柱61の上端で、吐出口22を跨ぐように天板62が固着される(
図6)。天板62上に押圧手段7たる第二エアシリンダ71の本体固定部が取着され、第二ロッド72が通孔を通って天板62の下方へ突き出る。第二ロッド下端に下面63bが水平の盤状体63を固着して、第二ロッド72が進出すると、盤状体63が複数のケース54の上面を押さえる。符号73はガイド軸を示す。
【0024】
空冷手段8は、盤状体63に流路81を設け、一端側入口孔82が圧縮エア供給用の導管83に接続し、盤状体63の下面に他端側出口孔80を設けて、導管83へのエア供給により、出口孔80からエアが吹き出す装置である。基板52上に載る電子部品53を覆うケース54へ、該エアを吹付ける。入口孔82に弁831を介在させて圧縮エア供給用の導管83を接続し、弁831を開にすると、エアが入口孔82,流路81を通って出口孔80から各ケース54へ吹付ける。
【0025】
コントローラCRは、昇降機構4及びポンプ手段3が起動し、保持枠45,基板52が下降して下端位置に達し、そして、プリヒート設定時間経過後に、ポンプ手段3による液面上昇中の溶融半田Mが吐出口22から噴流し、この噴流する溶融半田Mにスルーホール520が浸って半田付けを行い、その後、所要時間浸かった時点で、ポンプ手段3を停止させる等を有する制御手段である(
図5)。コントローラCRは、電子回路,電子タイマー,センサ等から構成され、一連動作をプログラムしておき、プログラム通りに動かすシーケンス制御を採用している。
【0026】
次に、上記半田噴流装置P、さらに半田付け装置を含めた一使用例と動作とを説明する。
まず、電源スイッチS1をオンにして、ヒータHTによって半田槽1に溶融半田Mを所定の高温度で貯留し、且つ
図5の初期状態にする。ここで、前処理として、
図5のケース54で覆った電子部品53搭載の基板52(以下、「被半田付け物」ともいう。)のマスク治具51へのセットと、フラックス塗布をする。
スルーホール520にリード531を挿入して電子部品53を載せた基板52を、マスク治具51に四個(複数)セットする。尚、本発明のリード531にはピンを含む。電子部品53を簡略図示するが、電子部品53を載せた基板52はケース54で覆われており、これが被半田付け物になる。続いて、被半田付け物がセットされたマスク治具51を、図示しないフラックス塗布装置(特許第5421955号)の上面開口上に置いて、フラックス塗布する。該塗布装置を用いて、スルーホール520から覗くリード531等の必要箇所にフラックス塗布を行う。フラックス塗布完了の被半田付け物が載ったマスク治具51を、保持枠45にセットして
図5の状態にする。
【0027】
しかる後、作業者が起動スイッチS2を押す。すると、昇降機構4及びポンプ手段3が起動し、溶融半田Mが吐出口22に到達する前に、昇降機構4の保持枠45と共に基板52が下降して、下端位置に達する。
【0028】
ポンプ手段3の方は、モータ32の回転軸321が
図4のように回って、第一磁気歯車341から第二磁気歯車342の横架軸33,第三磁気歯車351の回転へと伝動する。回転軸の先端部321aに、第一磁気部341aの磁極を軸方向に合わせながらも傾斜させてN極、S極と交互に配した第一磁気歯車341を嵌挿固着し、また側面視で回転軸321に直交させて配置した横架軸33の第一磁気歯車341との対向部位となる横架軸33の一端部へ、第二磁気部342aの磁極を横架軸方向に合わせながらも傾斜させてN極、S極と交互に配した第二磁気歯車342を嵌挿固着している。よって、第一磁気歯車341と第二磁気歯車342が対向する磁極間に作用する磁気の吸引及び反発を利用して、回転軸321の回転トルクが横架軸33の回転へと伝動する。
第一磁気歯車341から第二磁気歯車342への伝動と同様に、第三磁気歯車351の回転が第四磁気歯車352の支軸312、羽根車31aを回転させる。モータ32の回転が横架軸33を介して羽根車31aの回転へとつながり、吸込み孔15a域の溶融半田Mが横長筒部15内へ送り込まれる。横長筒部15内へ送り込まれた溶融半田Mは、透孔17aを通って縦筒部16内の半田液面M1が
図5の矢印のごとく上昇し、やがて、噴流ノズル2の吐出口22に達して溢れ出る所望の噴流装置となる(
図1,
図6)。
【0029】
さらに、半田槽1内に貯留した溶融半田Mを噴流ノズル2から噴流させた前記噴流装置が、その半田液面M1にプリント基板52等を浸漬させて半田付けする半田付け装置になる。
前記下端位置に先に到達した基板52は、半田槽1からの熱を近くで受け、また溶融半田Mの液面M1が縦筒部16、噴流ノズル2内を上昇し下から近づいてくる過程で、基板52に載る電子部品53のリード531,フラックスがプリヒートされる。プリヒートの設定時間完了時点で、吐出口22から溶融半田Mが噴流するタイミングになるように、コントローラCRで設定されている。かくして、吐出口22からの溶融半田Mの噴流によって半田付けが行なわれる。
ポンプ手段3による液面上昇中の溶融半田Mが吐出口22から噴流し、吐出口22からの溶融半田Mの噴流開始に伴い、該溶融半田Mにスルーホール520が浸かり、スルーホール520に挿入したリード531への半田付けに進む(
図6,
図7)。基板52,電子部品53に所要時間(3~5秒)をかけて半田付けが行われる。
【0030】
その後、噴流する溶融半田Mにスルーホール520が半田付け所要時間浸かった時点で、コントローラCRからポンプ手段3を停止させる指令が送られる。モータ32の停止により、横架軸33,支軸312の回転が止まる。吐出口22から噴流していた溶融半田Mの噴流が止まり、溶融半田液面M1が下降する。液面M1が噴流ノズル2の下方地点まで下がり、リード531に所望の半田付けを行った
図8の実装基板製品に仕上がる。リード531と半田が馴染んで、良好なフィレットFを形成する半田付け装置になっている。
【0031】
前記半田付けが終った段階で、昇降機構4の第一ロッド42が進出し、保持枠45、基板52が上昇し、初期位置へ戻る。作業者が半田付けを終えた基板52を外し、電子部品53の半田付け箇所にフラックス塗布した新たな基板52をマスク治具51、保持枠45にセットすれば、初期状態の半田噴流装置P(半田付け装置)になる。
後は、前述した作業を繰り返せば、半田噴流装置P(半田付け装置)を用いた半田付けを順次行うことができる。
【0032】
尚、ここでは押圧手段7,空冷手段8も設けており、これらを用いる場合は、起動スイッチS2のオンだけで、シーケンス制御によって、押圧手段7が昇降機構4よりも先に起動して、盤状体63でケース54を下方へ向けて押圧すると同時に又は該押圧後に、第一ロッド42が退動する指令を出す。空冷手段8に関しては、半田付け所要時間の経過と同時又はその直前からケース54へエア吹付けを行う指令を出す。
【0033】
(2)実施形態2
ここでは、実施形態1の一次伝動機構34に代わって、
図9のような歯車伝達機構ユニット345を用いる。歯車伝達機構ユニット345は、歯車を組合わせて、モータ回転軸321の回転軸方向と直交する回転軸方向に変えて、横架軸33へと伝達する。
図9では、歯車伝達機構ユニット345の下面から突き出すジョイント部345aにモータ回転軸321の先端部321aを接続し、歯車伝達機構ユニット345の前面から突き出す図示しない軸に横架軸33の一端部331を接続する。こうして、モータ32の回転軸321と横架軸33の一端部331側とを歯車伝達機構ユニット345で係合させ、回転軸321の回転を横架軸33の回転へと伝動している。尚、本実施形態のベース板36は受台381に立設させた起立板36Aとして、該起立板36Aに歯車伝達機構ユニット345を固定している。
他の構成は、実施形態1と同様で、その説明を省く。
図9中、実施形態と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0034】
(3)効果
このように構成した半田噴流装置Pは、二次伝動機構35が具備する横架軸33、支軸312、第三磁気歯車351、及び第四磁気歯車352を、耐熱性の金属製品にできる。横架軸33の他端部332側に固着された第三磁気歯車351が支軸312の上部312aに固着された第四磁気歯車352と係合し、横架軸33の回転を該支軸312の回転へと磁力を使って伝動する二次伝動機構35とを備えるポンプ手段3を採用すると、高温の溶融半田Mを貯留する半田槽1付近に配される横架軸33、第三磁気歯車351、第四磁気歯車352、及び支軸312の全てを耐熱性のある金属製部品にすることができる。
よって、半田付け終了後の掃除や段取り替え等で、従来のベルト伝動機構のベルトが熱損傷した場合の、ベルト交換費用や交換作業に伴う生産性低下の問題を解消できる。横架軸33、支軸312、第三磁気歯車351、及び第四磁気歯車352が耐熱性を有するので、作業中の不手際や何かのはずみで、横架軸33等に溶融半田Mが飛び散ったり付着したりしても、ベルト伝動のゴム製ベルトと違って特に支障ない。
また、横架軸33に必要長さをとれば、半田槽1に在る高温の溶融半田Mからの熱的影響を受けやすいモータ32を
図1のごとくの安全域へ離すことができる。
【0035】
さらに、回転軸321の先端部321aに嵌挿固着された第一磁気歯車341と、横架軸33の一端部331側に固着された第二磁気歯車342とが係合して、回転軸321の回転を横架軸33の回転へと磁力を使って伝動させる一次伝動機構34を採用すると、ポンプ手段3は全てを耐熱性金属部品にして、モータ32を除けば、溶融半田Mからの熱的損傷を免れることができる。
また、一次伝動機構34は、実施形態2のような歯車伝達機構ユニット345でもよいが、歯車伝達機構ユニット345等を採用すると、
図9のごとくその容積が大きくなるので、その分、モータ32を小さくしなければならず、モータ能力低下を余儀なくされる。これに対し、回転軸321と支軸312とが離間して鉛直起立し、且つ一端部331側を回転軸321の先端部321aに近接させ、また他端部332側を支軸312の上部312aに近接させた横架軸33が水平配設されると、回転軸321と支軸312と横架軸33とで側面視が
図1ごとくの門型形状になって、ポンプ手段3をシンプルにして小型化できる。
図9の歯車伝達機構ユニット345と違って、一次伝動機構34が
図1のごとくさほど場所をとらず、羽根車31aを回転させるに十分な必要能力のモータ32を設置できる。
【0036】
加えて、第一磁気歯車341、第二磁気歯車342、第三磁気歯車351、及び第四磁気歯車352が全て同一部品で形成されると、部品管理が楽で、部品管理のコスト低減につながる。
さらに、第一磁気歯車341と第二磁気歯車342とが非接触で係合すると共に、第三磁気歯車351と第四磁気歯車352とが非接触で係合すると、かみ合い歯車の伝達機構やベルト伝動機構等にみられる摩耗が起こらない。クリーンな環境を保ち、摩耗ゴミが半田槽1の溶融半田Mに入り込まなくなるため、高品質の半田付けを行うことができる。また、かみ合い歯車の伝達機構は、摩耗や騒音を抑えるためグリスアップを要するが、本発明は非接触で係合する機構を採用するので、グリスアップがいらない。
【0037】
さらにいえば、半田槽1の内槽1Bに係る有底筒部17の筒側面に横長筒部15と導通する透孔17aを設けて、溶融半田Mが透孔17aを潜って縦筒部16を経て噴流ノズル2の吐出口22から噴流するようにすると、羽根車31aによる吐出口22への溶融半田Mの偏流が抑えられる。該溶融半田Mを透孔17aに潜らせることによって、溶融半田Mは縦筒部16内の筒半径方向における上昇流を半田付けに好適な均等化させた上昇速度にて吐出口22へ到達する。むらのない品質安定させた半田付けが可能になる。
このように本半田噴流装置Pは、上述した種々の優れた効果を発揮し、多大な効を奏する。
【0038】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。半田槽1,噴流ノズル2,ポンプ手段3等の形状,大きさ,個数,材料,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0039】
1 半田槽
1A 外槽
1B 内槽
2 噴流ノズル
3 ポンプ手段
31 ポンプ主部
32 モータ
33 横架軸
34 一次伝動機構
341 第一磁気歯車
342 第二磁気歯車
35 二次伝動機構
351 第三磁気歯車
352 第四磁気歯車
M 溶融半田
P 半田噴流装置