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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181999
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20221201BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20221201BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/271 S
H01G11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089270
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 丈
【テーマコード(参考)】
5E078
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078JA02
5E078JA07
5E078JA10
5H040AA03
5H040AT02
5H040AY10
5H040CC15
5H040CC25
5H040CC34
5H040CC38
5H040LL06
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】各蓄電素子の性能劣化のバラつきを抑えることができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、積層体を保持する保持部と、を備え、複数の隣接部材のそれぞれは、蓄電素子間において、少なくとも所定方向と直交する方向における蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、所定方向において、積層体の中央部に配置される隣接部材の曲げ強度は、該積層体の端部に最も近い隣接部材の曲げ強度より大きい、蓄電装置である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、
前記積層体を保持する保持部と、を備え、
前記複数の隣接部材のそれぞれは、前記蓄電素子間において、少なくとも前記所定方向と直交する方向における前記蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、
前記所定方向において、前記積層体の中央部に配置される前記隣接部材の曲げ強度は、該積層体の端部に最も近い前記隣接部材の曲げ強度より大きい、蓄電装置。
【請求項2】
所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、
前記積層体を保持する保持部と、を備え、
前記複数の隣接部材のそれぞれは、前記蓄電素子間において、少なくとも前記所定方向と直交する方向における前記蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、
前記積層体における所定の隣接部材である第一隣接部材の曲げ強度は、該積層体における該第一隣接部材より前記所定方向の端部に近い位置に配置される第二隣接部材の曲げ強度より大きい、蓄電装置。
【請求項3】
前記積層体において隣り合う二つの隣接部材のうちの前記所定方向における該積層体の中央に近い隣接部材の曲げ強度は、該隣接部材より該積層体の端部に近い隣接部材の曲げ強度より大きい、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記積層体において前記所定方向の中央に近い隣接部材ほど曲げ強度が大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、
前記積層体を保持する保持部と、を備え、
前記複数の隣接部材のそれぞれは、前記隣り合う蓄電素子間において、少なくとも前記所定方向と直交する方向における前記蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、
前記積層体において、前記所定方向の端部に最も近い隣接部材から前記所定方向の中央又は中央に最も近い隣接部材に向かうに従って各隣接部材の曲げ強度が順に大きくなっている、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子が保持部材によって拘束されている蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の電池セルが配列方向に拘束されている組電池が知られている(特許文献1参照)。この組電池は、一方向に配列された一列の複数の電池セルと、複数の電池セルの配列方向の両端から、一列の複数の電池セルを狭持する一対のエンドプレートと、配列方向に垂直な方向から複数の電池セルを挟持すると共に、配列方向の両端で一対のエンドプレートを締結する一対のバインドバーと、を備える。そして、組電池において、一列の複数の電池セルは、一対のエンドプレートと一対のバインドバーとによって配列方向に緊締されている。
【0003】
このように、一列の複数の電池セルが一対のエンドプレートと一対のバインドバーとによって配列方向に緊締されているため、この組電池では、経年劣化等によって各電池セルが膨張しても、組電池における配列方向の寸法が変わらない。このため、配列方向の中央に近づくほど各電池セルの膨張した分が累積されて中央側の電池セルほど隣り合う電池セルから加えられる中央側への力(圧力)が大きくなり、これにより、中央側の電池セルほど電池性能の劣化が大きい。即ち、各電池セルの性能劣化にバラつきが生じる。
【0004】
複数の電池セルを備えた組電池の性能は、最も劣化した電池セルの性能に支配されるため、上記のように、組電池において各電池セルの性能劣化にバラつきが生じる、即ち、一部の電池セルの性能劣化が大きいと、該組電池の性能劣化が急速に進むことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-177935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本実施形態は、所定方向に並ぶ複数の蓄電素子が保持部によって保持された蓄電装置であって、各蓄電素子の性能劣化のバラつきを抑えることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の蓄電装置は、
所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、
前記積層体を保持する保持部と、を備え、
前記複数の隣接部材のそれぞれは、前記蓄電素子間において、少なくとも前記所定方向と直交する方向における前記蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、
前記所定方向において、前記積層体の中央部に配置される前記隣接部材の曲げ強度は、該積層体の端部に最も近い前記隣接部材の曲げ強度より大きい。
【0008】
かかる構成によれば、積層体が保持部に保持されることでX軸方向への該積層体の伸びが規制された状態であっても、積層体における所定方向の中央部に配置される隣接部材の曲げ強度が端部に最も近い隣接部材の曲げ強度より大きいため、前記中央部に配置された隣接部材より積層体の端部に近い位置に配置された各蓄電素子の膨張が前記中央部に配置された隣接部材より積層体の中央に近い位置に配置された蓄電素子に伝わり難くなる。これにより、前記中央に近い位置に配置された蓄電素子において各蓄電素子の膨張に起因する性能劣化が抑えられ、その結果、各蓄電素子の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0009】
また、本実施形態の蓄電装置は、
所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、
前記積層体を保持する保持部と、を備え、
前記複数の隣接部材のそれぞれは、前記蓄電素子間において、少なくとも前記所定方向と直交する方向における前記蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、
前記積層体における所定の隣接部材である第一隣接部材の曲げ強度は、該積層体における該第一隣接部材より前記所定方向の端部に近い位置に配置される第二隣接部材の曲げ強度より大きい。
【0010】
かかる構成によれば、積層体が保持部に保持されることでX軸方向への該積層体の伸びが規制された状態であっても、第一隣接部材の曲げ強度が、該第一隣接部材より所定方向における積層体の端部に近い位置に配置される第二隣接部材の曲げ強度より大きいため、第一隣接部材より積層体の端部に近い位置に配置される各蓄電素子の膨張が当該第一隣接部材より積層体の中央に近い位置に配置される蓄電素子に伝わり難くなる。これにより、前記中央に近い位置に配置される蓄電素子において各蓄電素子の膨張に起因する性能劣化が抑えられ、その結果、各蓄電素子の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0011】
前記蓄電装置では、
前記積層体において隣り合う二つの隣接部材のうちの前記所定方向における該積層体の中央に近い隣接部材の曲げ強度は、該隣接部材より該積層体の端部に近い隣接部材の曲げ強度より大きくてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、前記中央に近い隣接部材より積層体の端部に近い位置に配置される各蓄電素子の膨張が当該中央に近い隣接部材より積層体の中央に近い位置に配置される蓄電素子に伝わり難くなり、これにより、各蓄電素子の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0013】
また、前記蓄電装置では、
前記積層体において前記所定方向の中央に近い隣接部材ほど曲げ強度が大きくてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、各蓄電素子の膨張が所定方向における積層体の中央に近い蓄電素子へ伝わり難くなり、これにより、各蓄電素子の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0015】
また、本実施形態の蓄電装置は、
所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と各蓄電素子間に配置される複数の隣接部材とを含む積層体と、
前記積層体を保持する保持部と、を備え、
前記複数の隣接部材のそれぞれは、前記隣り合う蓄電素子間において、少なくとも前記所定方向と直交する方向における前記蓄電素子の一方の端縁から他方の端縁まで広がり、
前記積層体において、前記所定方向の端部に最も近い隣接部材から前記所定方向の中央又は中央に最も近い隣接部材に向かうに従って各隣接部材の曲げ強度が順に大きくなっている。
【0016】
かかる構成によっても、各蓄電素子の膨張が所定方向における積層体の中央に近い蓄電素子へ伝わり難くなり、これにより、各蓄電素子の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本実施形態によれば、所定方向に並ぶ複数の蓄電素子が保持部によって保持された蓄電装置であって、各蓄電素子の性能劣化のバラつきを抑えることができる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電装置の構成を一部省略した分解斜視図である。
図3図3は、前記蓄電装置における積層方向の各位置の隣接部材の曲げ強度を示す図である。
図4図4は、前記蓄電装置の積層方向の位置による隣接部材の曲げ強度の違いを説明するための模式図である。
図5図5は、他実施形態に係る蓄電装置の積層方向の各位置の隣接部材の曲げ強度を示す図である。
図6図6は、曲げ強度の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1図4を参照しつつ説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0020】
蓄電装置は、図1及び図2に示すように、複数の蓄電素子10を含む積層体Lと、積層体Lを保持する保持部材(保持部)4と、を備える。また、蓄電装置1は、積層体Lと保持部材4との間に配置される少なくとも一つのインシュレータ6と、異なる蓄電素子10同士を導通可能に接続する複数のバスバ8と、を備える。
【0021】
具体的に、積層体Lは、複数の蓄電素子10と複数の隣接部材2とを含む。この積層体Lにおいて、蓄電素子10と隣接部材2とは、所定方向に交互に配置されている。
【0022】
複数の蓄電素子10のそれぞれは、一次電池、二次電池、キャパシタ等である。本実施形態の蓄電素子10は、充放電可能な非水電解質二次電池である。より具体的には、蓄電素子10は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。
【0023】
具体的に、各蓄電素子10は、電極体と、電極体を電解液と共に収容するケース13と、少なくとも一部がケース13の外側に露出する外部端子14と、電極体と外部端子14とを接続する集電体と、を備える。
【0024】
電極体では、正極と負極とがセパレータを介して交互に積層されている。この電極体においてリチウムイオンが正極と負極との間を移動することにより、蓄電素子10が充放電する。
【0025】
ケース13は、開口を有するケース本体131と、ケース本体131の開口を塞ぐ(閉じる)板状の蓋板132と、を有する。本実施形態のケース本体131は、有底角筒状であり、ケース13は、直方体形状(六面形状)である。本実施形態のケース13は、扁平な直方体形状であり、複数の蓄電素子10は、積層体Lにおいて、ケース13(ケース本体131)の幅広な面(壁部)を、隣接部材2を介して対向させた状態でX軸方向に並んでいる。
【0026】
以下の説明では、複数の蓄電素子10が並ぶ方向(所定方向)を直交座標系のX軸、ケース13の幅狭な一対の面(壁部)が対向する方向を直交座標系のY軸、蓋板132の法線方向を直交座標系のZ軸とする。
【0027】
複数の隣接部材2のそれぞれは、絶縁性を有し、X軸方向に並ぶ蓄電素子10間、又は蓄電素子10と該蓄電素子10に対してX軸方向に並ぶ部材(本実施形態の例では、保持部材4の一部)との間に配置される。本実施形態の複数の隣接部材2のそれぞれは、樹脂によって形成されている。
【0028】
また、複数の隣接部材2それぞれは、隣接する蓄電素子10との間に温度調整用の流体(本実施形態の例では空気等の冷却流体)が流通可能な流路Rを形成する。これら複数の隣接部材2は、複数種の隣接部材を含み、本実施形態の複数の隣接部材2は、蓄電素子10間に配置される中間隣接部材(隣接部材)21と、X軸方向において最も端にある蓄電素子10の外側で該蓄電素子10と隣接する端部隣接部材22と、を含む。即ち、蓄電装置1は、隣接部材2として、中間隣接部材21と、端部隣接部材22と、を備える。本実施形態の蓄電装置1は、複数の中間隣接部材21と、二つ(一対)の端部隣接部材22と、を備える。これら複数の中間隣接部材21のそれぞれは、各蓄電素子10間に配置されている。
【0029】
複数の中間隣接部材(隣接部材)21のそれぞれは、X軸方向に隣り合う蓄電素子10間においてX軸方向と直交する方向に広がる第一本体部211と、第一本体部211と隣り合う蓄電素子10の該第一本体部211に対する移動を規制する少なくとも一つの第一規制部215と、を有する。
【0030】
第一本体部211は、蓄電素子10のケース13の幅広な面と対向し、その一部を該幅広な面に当接させている部位である。この第一本体部211は、隣接する蓄電素子10に対し、少なくともX軸方向と直交する方向における蓄電素子10の一方の端縁から他方の端縁まで広がっている。詳しくは、第一本体部211は、隣接する蓄電素子10のケース13における幅広の面に対し、少なくとも該面の中心部を挟んで対向する二つの端縁における一方の端縁から他方の端縁まで広がっている。本実施形態の第一本体部211は、X軸方向からみてケース13の幅広の面と同じ大きさ又は幅広の面より大きい(幅広の面が含まれる大きさである)。これにより、第一本体部211が、隣り合う蓄電素子10のケース13における幅広の面の周縁部全域で挟み込まれている。
【0031】
この第一本体部211は、隣接する蓄電素子10と共同して該蓄電素子10との間に温度調整用の流体が流通可能な流路Rを形成する。本実施形態の第一本体部211は、隣接する蓄電素子10との間に複数の流路Rを形成する。詳しくは、第一本体部211は、X軸方向の一方側に隣接する蓄電素子10との間に複数の流路Rを形成すると共に、X軸方向の他方側に隣接する蓄電素子10との間に複数の流路Rを形成する。この第一本体部211は、X軸方向から見て、隣接する蓄電素子10と対応する大きさの矩形状であり、該第一本体部211のX-Z面(X軸方向とZ軸方向とを含む面)に沿った断面が矩形波形形状である。
【0032】
第一規制部215は、矩形状の第一本体部211の少なくとも角部からX軸方向に延び、第一本体部211と隣接する蓄電素子10(詳しくはケース13)とY-Z面(Y軸方向とZ軸方向とを含む面)方向の外側から当接することによって該蓄電素子10の第一本体部211に対するY-Z面方向への相対移動を規制する。本実施形態の第一規制部215は、第一本体部211からX軸方向の両側に向けてそれぞれ延びている。
【0033】
二つの端部隣接部材(隣接部材)22のそれぞれは、X軸方向に隣り合う蓄電素子10と保持部材4(詳しくは、終端部材41)との間においてX軸方向と直交する方向に広がる第二本体部221と、第二本体部221と隣り合う蓄電素子10の該第二本体部221に対する移動を規制する少なくとも一つの第二規制部225と、を有する。
【0034】
第二本体部221は、蓄電素子10のケース13の幅広な面と一部を当接させた状態で対向する部位である。この第二本体部221は、隣接する蓄電素子10に対し、少なくともX軸方向と直交する方向における蓄電素子10の一方の端縁から他方の端縁まで広がっている。詳しくは、第二本体部221は、隣接する蓄電素子10のケース13における幅広の面に対し、少なくとも該面の中心部を挟んで対向する二つの端縁における一方の端縁から他方の端縁まで広がっている。本実施形態の第二本体部221は、X軸方向からみてケース13の幅広の面と同じ大きさ又は幅広の面より大きい(幅広の面が含まれる大きさである)。また、X軸方向から見て終端部材41は、蓄電素子10(詳しくは、ケース13)と同じ大きさ又は僅かに大きい。これにより、第二本体部221は、隣り合う終端部材41と蓄電素子10のケース13の幅広の面との各周縁部全域で挟み込まれている。
【0035】
この第二本体部221も、中間隣接部材21の第一本体部211と同様に、隣接する蓄電素子10と共同して該蓄電素子10との間に温度調整用の流体が流通可能な流路Rを形成する。本実施形態の第二本体部221は、隣接する蓄電素子10との間に複数の流路Rを形成する。この第二本体部221は、X軸方向から見て隣接する蓄電素子10と対応する大きさの矩形板状であり、本実施形態の第二本体部221は、Y軸方向に長尺な矩形状である。
【0036】
具体的に、第二本体部221は、積層体LにおけるX軸方向の一方側の端部又は他方側の端部においてX軸方向と直交する方向に広がり、且つ隣り合う蓄電素子10(ケース13の幅広の面)又は終端部材41と対向する二つの対向面2211と、蓄電素子10側の対向面2211から突出する複数の凸条2212と、を有する。複数の凸条2212のそれぞれは、Y軸方向に延び、Z軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0037】
第二規制部225は、矩形状の第二本体部221の少なくとも角部からX軸方向に延び、第二本体部221と隣接する蓄電素子10(詳しくはケース13)とY-Z面方向の外側から当接することによって該蓄電素子10の第二本体部221に対するY-Z面方向への相対移動を規制する。本実施形態の第二規制部225は、第二本体部221からX軸方向の一方側(蓄電素子10側)に向けて延びている。
【0038】
以上のように構成される複数の隣接部材2(中間隣接部材21)は、曲げ強度の異なる隣接部材2を含む。具体的には、図3に示すように、積層体LにおいてX軸方向の中央側の中間隣接部材21ほど曲げ強度が大きい。この強度分布のグラフでは、積層体Lにおける蓄電素子10の並び方向の端から中央に向かうにつれて曲げ強度が直線的に変化せずに、曲線的に変化している。この複数の中間隣接部材21の曲げ強度の違いは、例えば、隣接部材2の厚さ(X軸方向の寸法)の違いや、材質の違い、構造の違い(例えば、矩形波型の断面における矩形波のピッチの違い)、これらの組み合わせ等によって生じている。ここで、本実施形態における曲げ強度とは、図6に示すように、隣接部材2のY方向の両端部を支点9によって支持した状態で、YZ面の中央部(Y軸方向の中央部で且つZ軸方向の中央部)を押したときに、隣接部材2が折れ曲がったときの力Fを測定したものである。尚、各支点9は、Z軸方向に線状に延びる頂部によって隣接部材2を支持する。
【0039】
詳しくは、複数の中間隣接部材21において、積層体LにおけるX軸方向の中央部に配置される中間隣接部材21が最も曲げ強度が大きく、X軸方向の端(積層体LのX軸方向の端部に最も近い位置)に配置される中間隣接部材21が最も曲げ強度が小さい。尚、中央部に配置される中間隣接部材21とは、中間隣接部材21の数が奇数の場合は、X軸方向の中央にある一つの中間隣接部材21であり、中間隣接部材21の数が偶数の場合は、X軸方向の中央に最も近い二つの中間隣接部材21である。
【0040】
また、積層体Lにおいて隣接部材2の曲げ強度のX軸方向(蓄電素子10の積層方向)の強度分布が図3に示す状態の場合、積層体Lにおける所定の隣接部材2である第一隣接部材(例えば、図4のNo.7の隣接部材)2Aの曲げ強度は、該第一隣接部材2AよりX軸方向における積層体Lの端部に近い位置に配置される第二隣接部材(例えば、図4のNo.3の隣接部材)2Bの曲げ強度より大きい。また、積層体Lにおいて隣り合う二つの隣接部材2のうちのX軸方向における積層体Lの中央に近い隣接部材(例えば、図4のNo.7の隣接部材)2Aの曲げ強度は、該隣接部材2Aより該積層体Lの端部に近い隣接部材(例えば、図4のNo.6の隣接部材)2Cの曲げ強度より大きい。
【0041】
保持部材4は、積層体Lの周囲を囲むことで該積層体LをX軸方向に緊締した状態で保持する少なくとも一つの保持部(保持領域)を有する。本実施形態の保持部材4は、一つの保持部のみによって構成されている。この保持部は、積層体LのX軸方向の伸びを規制した状態で該積層体Lを保持する部位である。本実施形態の蓄電装置1では、一つの保持部が一つの積層体Lを保持する、換言すると、一つの保持部によって保持される複数の蓄電素子10と複数の隣接部材2が一つの積層体Lを構成する。
【0042】
保持部材4は、金属等の導電性を有する部材によって構成される。具体的に、保持部材4は、X軸方向において積層体L(X軸方向に並ぶ複数の蓄電素子10)の両側に配置される一対の終端部材41と、一対の終端部材41を接続する一対の接続部材42と、終端部材41と接続部材42と連結する複数の連結部材43と、を有する。
【0043】
一対の終端部材41は、X軸方向における積層体Lの両側に配置されている。具体的に、一対の終端部材41のそれぞれは、積層体LにおいてX軸方向の端(最も外側)に配置された蓄電素子10との間に端部隣接部材22を挟み込むように配置される。これら一対の終端部材41のそれぞれは、X軸方向から見て蓄電素子10と対応する大きさの矩形板状であり、各終端部材41の剛性は、各隣接部材2より高い。具体的に、各終端部材41は、Y軸方向に長尺な矩形状であり、Y軸方向の両端部にZ軸方向に間隔をあけて配置される複数の貫通孔411を有する。
【0044】
一対の接続部材42のそれぞれは、Y軸方向における積層体Lの両側に配置され、積層体Lに沿ってX軸方向に延びている。各接続部材42は、X軸方向に延び且つZ軸方向に間隔をあけて配置される一対の梁部421と、一対の梁部421の端部同士を連結する一対の端部連結部422と、X軸方向における途中位置において一対の梁部421同士を連結する中間連結部425と、を有する。本実施形態の接続部材42は、複数の中間連結部425を有する。
【0045】
各端部連結部422は、終端部材41のX軸方向の外側の面に沿って広がる固定片423を有し、固定片423は、終端部材41の貫通孔411とX軸方向から見て重なる位置に貫通孔424を有する。
【0046】
複数の連結部材43のそれぞれは、終端部材41の貫通孔411及び接続部材42(固定片423)の貫通孔424を挿通した状態で終端部材41と接続部材42とを連結する。本実施形態の各連結部材43は、ボルト431とナット432によって構成されている。
【0047】
インシュレータ6は、絶縁性を有する。このインシュレータ6は、接続部材42と、積層体L(複数の蓄電素子10)との間に配置される。具体的に、蓄電装置1は、一対のインシュレータ6を備え、各インシュレータ6は、接続部材42における少なくとも積層体Lと対向する領域をそれぞれ覆う。これにより、各インシュレータ6は、接続部材42と、積層体Lに含まれる複数の蓄電素子10との間を絶縁する。
【0048】
複数のバスバ8のそれぞれは、金属等の導電性を有する板状の部材である。各バスバ8は、蓄電素子10の外部端子14同士を導通させる。本実施形態の複数のバスバ8は、蓄電装置1に含まれる複数の蓄電素子10を直列に接続する(導通させる)。
【0049】
以上の蓄電装置1によれば、積層体Lが保持部材4に保持されることでX軸方向への該積層体Lの伸びが規制された状態であっても、積層体LにおけるX軸方向の中央部に配置される中間隣接部材21の曲げ強度が端部に最も近い中間隣接部材21の曲げ強度より大きい。このため、積層体Lの中央部に配置された中間隣接部材21より該積層体Lの端部に近い位置に配置された各蓄電素子10の膨張が前記中央部に配置された中間隣接部材21より積層体Lの中央(X軸方向の中央)に近い位置に配置された蓄電素子10に伝わり難くなる。詳しくは、以下の通りである。
【0050】
経年劣化等によって各蓄電素子10が膨らんだときに、保持部材4(保持部)によってX軸方向の積層体Lの寸法が変わらない(即ち、金属製の接続部材42によって接続されていることで一対の終端部材41同士の間隔が変わらない)ため、各蓄電素子10の膨らみが累積されて積層体LのX軸方向の中央に近い蓄電素子10ほどX軸方向の両側の蓄電素子から加わる力(挟み込まれる力)が大きくなりやすい。しかし、本実施形態の蓄電装置1では、積層体LのX軸方向の中央部の中間隣接部材21の曲げ強度が、積層体LのX軸方向の端(外側端)に最も近い中間隣接部材21の曲げ強度より大きいため、該中央部の中間隣接部材21より積層体LのX軸方向の端に近い各蓄電素子10の膨らみが該中央部の中間隣接部材21より積層体LのX軸方向の中央に近い位置に配置された蓄電素子10に伝わり難くなる。
【0051】
これにより、前記中央部の蓄電素子10において、前記劣化による各蓄電素子10の膨張によって加えられる力に起因する性能劣化が抑えられ、その結果、各蓄電素子10の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0052】
本実施形態の蓄電装置1では、積層体Lにおいて隣り合う二つの隣接部材2のうちのX軸方向における積層体Lの中央に近い中間隣接部材21の曲げ強度が、該中間隣接部材21より該積層体Lの端部に近い中間隣接部材21の曲げ強度より大きい。このため、積層体LのX軸方向の中央に近い中間隣接部材21より該積層体Lの端部に近い位置に配置される各蓄電素子10の膨張が当該中央に近い中間隣接部材21より積層体の中央に近い位置に配置される蓄電素子10に伝わり難くなる。これにより、各蓄電素子10の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0053】
また、本実施形態の蓄電装置1では、積層体LにおいてX軸方向の中央に近い中間隣接部材21ほど曲げ強度が大きい。このため、各蓄電素子10の膨張がX軸方向における積層体Lの中央に近い蓄電素子10へ伝わり難くなり、これにより、各蓄電素子10の性能劣化のバラつきが好適に抑えられる。
【0054】
しかも、全ての中間隣接部材21の曲げ強度を大きくすると、各中間隣接部材21の厚さが大きくなって蓄電装置1(積層体L)のX軸方向の寸法が大きくなったり、絶縁被覆した金属等の樹脂に比べて高価な材料で中間隣接部材21を形成すると、蓄電装置1の製造コストが大きくなったりするが、積層体Lにおいて蓄電素子10に加わる力の大きなX軸方向の中央に近い中間隣接部材21の強度を大きくし、積層体LのX軸方向の端部に近い中間隣接部材21の強度を小さくすることで、前記寸法の増大や製造コストの増大を抑えつつも各蓄電素子10の性能劣化のバラつきを好適に抑えることができる。
【0055】
尚、本発明の蓄電装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0056】
上記実施形態の蓄電装置1では、積層体LにおいてX軸方向の中央に近い中間隣接部材21ほど曲げ強度が大きいが、この構成に限定されない。
【0057】
例えば、積層体LにおけるX軸方向の中央部の所定の数の隣接部材(例えば、図4のNo.5~No.10の隣接部材)2の曲げ強度が、残りの(端部側の)隣接部材(例えば、図4のNo.1~No.4、No.11~No.14番の隣接部材)2の曲げ強度より大きい構成でもよい。この場合、前記所定の数の隣接部材2の各曲げ強度は、同じでもよく、中央に近い隣接部材2ほど大きくてもよい
【0058】
また、複数の隣接部材2のうちの一部の隣接部材(例えば、図4のNo.3~No.7の隣接部材)2において、中央に近い隣接部材2ほど曲げ強度が大きい構成でもよい。かかる構成によっても、中央に近い蓄電素子(例えば、図4のNo.7の隣接部材2と中央側で隣接する蓄電素子)10において少なくともX軸方向の一方側から加わる力(経年劣化等による蓄電素子10の膨らみに起因する力)が抑えられるため、全てが曲げ強度の小さな隣接部材2の場合に比べ、各蓄電素子10の性能劣化のバラつきが抑えられる。
【0059】
また、上記実施形態の蓄電装置1における隣接部材2の強度分布での蓄電素子10の並び方向の各位置での曲げ強度は、一つの隣接部材2の曲げ強度であるが、この構成に限定されない。例えば、移動平均のように、図4におけるNo.1~No.3の隣接部材2の曲げ強度の平均値、No.2~No.4の隣接部材2の曲げ強度の平均値、No.3~No.6番の隣接部材2の曲げ強度の平均値、No.4~No.7の隣接部材2の曲げ強度の平均値、No.5~No.8の隣接部材2の曲げ強度の平均値、No.6~No.9の隣接部材2の曲げ強度の平均値、No.7~No.10の隣接部材2の曲げ強度の平均値、・・・・のように、蓄電素子10の並び方向に連続して並ぶ複数の隣接部材2の平均値が図3に示される分布となるように構成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態の蓄電装置1において、保持部材4は、一つの保持部(保持領域)を有している、即ち、一つの積層体Lを保持しているが、この構成に限定されない。例えば、保持部材4は、X軸方向の途中位置において蓄電素子10間に配置され且つ一対の接続部材42に固定される固定部材(センタープレート等)、即ち、蓄電素子10の膨張等によって終端部材41とのX軸方向の間隔が変わらない部材を少なくとも一つ有することで、二つ以上の保持部を有していてもよい。
【0061】
より具体的には、保持部は、接続部材42に対してX軸方向の位置が固定された部材間(上記の例では終端部材41と固定部材との間であり、上記実施形態の例では、一対の終端部材41間)の領域のことであり、領域毎に積層体Lが配置される。即ち、上記実施形態の蓄電装置1において、例えば、一つの固定部材が配置される場合、該固定部材によって一対の終端部材41間の領域が仕切られることで二つの保持部(保持領域)が形成され、二つの固定部材が配置される場合、これら二つの固定部材によって一対の終端部材41間の領域が二か所で仕切られることで三つ位の保持部(保持領域)が形成される。
【0062】
この場合、保持部材4は、保持部の数と同じ数の積層体Lを保持し、これら複数の積層体Lのそれぞれにおいて、X軸方向の中央部に配置される隣接部材2の曲げ強度が、該積層体Lの端部に最も近い隣接部材2の曲げ強度より大きくなっている。このとき、複数の積層体Lのそれぞれにおいて、X軸方向の中央側の隣接部材2ほど曲げ強度が大きくなっている構成(強度分布)、より詳しくは、各積層体Lにおいて、X軸方向の端部に最も近い隣接部材2からX軸方向の中央又は中央に最も近い隣接部材2に向かうに従って各隣接部材2の曲げ強度が順に大きくなっている構成(強度分布)が好ましい。
【0063】
例えば具体的には、保持部材4が一つの固定部材を有することで、保持部材4に二つの保持部(一方の終端部材41と固定部材と一対の接続部材42によって構成される保持部、及び、他方の終端部材41と固定部材と一対の接続部材42によって構成される保持部)が構成されている、即ち、保持部材4がX軸方向に並ぶ二つの積層体Lを保持する場合、図5に示すように、各積層体Lでの隣接部材2の曲げ強度の分布が、それぞれX軸方向の中央側の隣接部材2ほど大きくなっている構成が好ましい。
【0064】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…蓄電装置、2、2C…隣接部材、2A…第一隣接部材(隣接部材)、2B…第二隣接部材(隣接部材)、21…中間隣接部材(隣接部材)、211…第一本体部、215…第一規制部、22…端部隣接部材(隣接部材)、221…第二本体部、2211…対向面、2212…凸条、225…第二規制部、4…保持部材、41…終端部材、411…貫通孔、42…接続部材、421…梁部、422…端部連結部、423…固定片、424…貫通孔、425…中間連結部、43…連結部材、431…ボルト、432…ナット、6…インシュレータ、8…バスバ、9…支点、10…蓄電素子、13…ケース、131…ケース本体、132…蓋板、14…外部端子、L…積層体、R…流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6