(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182000
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】偏光子片の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221201BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221201BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/38
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089271
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中田 美恵
(72)【発明者】
【氏名】矢仙 ムニリディン
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翔
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4J004
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA12
2H149BB01
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA23
2H149FA03W
2H149FA12Z
2H149FB01
2H149FB05
2H149FD46
2H291FA22
2H291FA94
2H291FA95
2H291FB02
2H291FC05
2H291FC08
2H291FC23
2H291LA13
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】偏光子に打痕が生じることを抑制でき、外観に優れた偏光子片を製造できる偏光子片の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の偏光子片の製造方法は、複数の第1貫通穴を有する長尺状の表面保護フィルムを、長尺状の偏光子に貼り合わせて積層体を形成する工程と、複数の第1貫通穴から露出する偏光子の部分を脱色処理して複数の非偏光部を形成する工程と、複数の非偏光部が形成された偏光子を含む積層体を、ロール状に巻き取る工程と、巻き取り後に、非偏光部を含む偏光子片を偏光子から複数切り出す工程とを含む。表面保護フィルムは、複数の第1貫通穴のうち幅方向の一端に位置する第1貫通穴と、表面保護フィルムの幅方向の一端縁との間に位置する第2貫通穴をさらに有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の表面保護フィルムであって、前記表面保護フィルムの長尺方向と直交する幅方向に間隔を空けて配置される複数の第1貫通穴を有する表面保護フィルムを、二色性物質を有する長尺状の偏光子に貼り合わせて、積層体を形成する工程と、
前記複数の第1貫通穴から露出する偏光子の部分を、前記第1貫通穴を介して脱色処理し、前記偏光子に複数の非偏光部を形成する工程と、
前記複数の非偏光部が形成された偏光子を含む積層体を、ロール状に巻き取る工程と、
前記巻き取り後に、前記非偏光部を含む偏光子片を前記偏光子から複数切り出す工程と、を含み、
前記表面保護フィルムは、
前記複数の第1貫通穴のうち前記幅方向の一端に位置する第1貫通穴と、前記表面保護フィルムの前記幅方向の一端縁との間に位置する第2貫通穴をさらに有する、偏光子片の製造方法。
【請求項2】
前記複数の第1貫通穴のそれぞれの開口面積は、実質的に互いに同じであり、
前記第2貫通穴の開口面積は、各前記第1貫通穴の開口面積に対して、0.5以上である、請求項1に記載の偏光子片の製造方法。
【請求項3】
前記複数の第1貫通穴のそれぞれの開口面積は、実質的に互いに同じであり、
前記第2貫通穴の開口面積は、各前記第1貫通穴の開口面積に対して、0.5以未満であり、
前記第2貫通穴は、前記長尺方向に間隔を空けて複数配置される、請求項1に記載の偏光子片の製造方法。
【請求項4】
前記表面保護フィルムは、
前記複数の第1貫通穴のうち前記幅方向の他端に位置する第1貫通穴と、前記表面保護フィルムの前記幅方向の他端縁との間に位置する第3貫通穴をさらに有する、請求項1から3のいずれかに記載の偏光子片の製造方法。
【請求項5】
前記幅方向の一端に位置する第1貫通穴と前記第2貫通穴との間の前記幅方向の間隔、および、前記第2貫通穴と前記表面保護フィルムの一端縁との間の前記幅方向の間隔のそれぞれは、前記複数の第1貫通穴のうち互いに隣り合う第1貫通穴の間の前記幅方向の間隔以下である、請求項1~4のいずれかに記載の偏光子片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タッチパネル式の情報処理装置の急速な普及により、カメラ性能等のさらなる向上が望まれている。また、画像表示装置の形状の多様化および高機能化に対応するために、部分的に偏光性能を有する偏光板が求められている。そのような偏光板として、化学処理により非偏光部が形成された偏光子が知られている。
非偏光部を有する偏光板の製造方法として、長尺状の偏光子中間体に複数の貫通穴を有する表面保護フィルムを貼り合わせた後、貫通穴から露出する偏光子中間体の部分を化学脱色処理して非偏光部を形成し、次いで、表面保護フィルム/偏光子中間体の構成を含む積層体をロール状に巻き取り、その後、偏光子中間体から非偏光部を含む偏光子を複数裁断することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、複数の貫通穴を有する表面保護フィルムを含む積層体をロール状に巻き取ると、巻き締まりによって、偏光子中間体に打痕(ホール跡)が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、複数の第1貫通穴を有する表面保護フィルムを含む積層体をロール状に巻き取っても、偏光子に打痕が生じることを抑制でき、外観に優れた偏光子片を製造できる偏光子片の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による偏光子片の製造方法は、長尺状の表面保護フィルムであって、前記表面保護フィルムの長尺方向と直交する幅方向に間隔を空けて配置される複数の第1貫通穴を有する表面保護フィルムを、二色性物質を有する長尺状の偏光子に貼り合わせて、積層体を形成する工程と、前記複数の第1貫通穴から露出する偏光子の部分を、前記第1貫通穴を介して脱色処理し、前記偏光子に複数の非偏光部を形成する工程と、前記複数の非偏光部が形成された偏光子を含む積層体を、ロール状に巻き取る工程と、前記巻き取り後に、前記非偏光部を含む偏光子片を前記偏光子から複数切り出す工程と、を含み、前記表面保護フィルムは、前記複数の第1貫通穴のうち前記幅方向の一端に位置する第1貫通穴と、前記表面保護フィルムの前記幅方向の一端縁との間に位置する第2貫通穴をさらに有する。
1つの実施形態においては、前記複数の第1貫通穴のそれぞれの開口面積は、実質的に互いに同じであり、前記第2貫通穴の開口面積は、各前記第1貫通穴の開口面積に対して、0.5以上である。
1つの実施形態においては、前記複数の第1貫通穴のそれぞれの開口面積は、実質的に互いに同じであり、前記第2貫通穴の開口面積は、各前記第1貫通穴の開口面積に対して、0.5以未満であり、前記第2貫通穴は、前記長尺方向に間隔を空けて複数配置される。
1つの実施形態においては、前記表面保護フィルムは、前記複数の第1貫通穴のうち前記幅方向の他端に位置する第1貫通穴と、前記表面保護フィルムの前記幅方向の他端縁との間に位置する第3貫通穴をさらに有する。
1つの実施形態においては、前記幅方向の一端に位置する第1の貫通穴と前記第2貫通穴との間の前記幅方向の間隔、および、前記第2貫通穴と前記表面保護フィルムの一端縁との間の前記幅方向の間隔のそれぞれは、前記複数の第1貫通穴のうち互いに隣り合う第1貫通穴の間の前記幅方向の間隔以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、ロール状に巻き取られた積層体のロール硬度(ロール内部応力)が局所的に高くなって偏光子に打痕が生じることを抑制でき、外観に優れた偏光子片を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の偏光子片の製造方法の1つの実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図1の第1の表面保護フィルムの概略斜視図である。
【
図3】
図1の積層体の幅方向に平行な方向の概略断面図である。
【
図4】
図3の積層体から第1の表面保護フィルムを除去した状態の概略断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る積層体の要部拡大平面図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態に係る積層体の要部拡大平面図である。
【
図8】本発明のさらに別の実施形態に係る積層体の要部拡大平面図である。
【
図9】本発明のさらに別の実施形態に係る積層体の要部拡大平面図である。
【
図10】本発明のさらに別の実施形態に係る積層体の要部拡大平面図である。
【
図11】本発明の比較例に係る積層体の要部拡大平面図である。
【
図12】本発明の別の比較例に係る積層体の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.偏光子片の製造方法の概略
図1は、本発明の偏光子片の製造方法の1つの実施形態を示す概略図であり;
図2は、
図1の表面保護フィルムの概略斜視図であり;
図3は、
図1の積層体の幅方向に平行な方向の概略断面図であり;
図4は、
図3の積層体から第1の表面保護フィルムを除去した状態の概略断面図であり;
図5は、
図3の積層体の要部拡大平面図である。
【0010】
図示例の偏光子片の製造方法は、複数の第1貫通穴1aを有する長尺状の表面保護フィルム1を、二色性物質を有する長尺状の偏光子21に貼り合わせて、積層体4を形成する工程(積層体の形成工程)と;複数の第1貫通穴1aから露出する偏光子21の部分を、第1貫通穴1aを介して脱色処理し、偏光子21に複数の非偏光部21aを形成する工程(偏光子の脱色処理工程)と;複数の非偏光部21aが形成された偏光子21を含む積層体4を、ロール状に巻き取る工程(積層体の巻取工程)と;巻き取り後に、非偏光部21aを含む偏光子片210を偏光子21から複数切り出す工程(偏光子片の切出工程)と;を含む。表面保護フィルム1は、長尺方向と直交する幅方向において、一端縁E1と、他端縁E2とを有する。複数の第1貫通穴1aは、表面保護フィルム1の幅方向に間隔を空けて配置される。表面保護フィルム1は、複数の第1貫通穴1aのうち幅方向の一端に位置する第1貫通穴1aと、表面保護フィルム1の幅方向の一端縁E1との間に位置する第2貫通穴1bをさらに有する。複数の貫通穴を有する表面保護フィルムを偏光子に貼り合わせた後、得られた積層体をロール状に巻き取ると、巻き締まりによって、積層体のロールの硬度(ロール内部応力)が局所的に高なる場合がある。とりわけ、積層体のロールの端部は、ロール内部応力が集中しやすく、硬度が高くなりやすい。この場合、積層体のロールにおける応力が集中する部分(具体的には、端部など)において、偏光子に打痕が生じるおそれがある。これに対して、上記のような方法によれば、表面保護フィルム1が、脱色処理に用いる複数第1貫通穴1aに加えて、幅方向の一端に位置する第1貫通穴1aと表面保護フィルム1の一端縁E1との間に位置する第2貫通穴1bを有しているので、積層体4のロール5の一端部にロール内部応力が集中することを抑制でき、積層体4のロール5の硬度(ロール内部応力)が局所的に高くなることを抑制できる。言い換えれば、ロール5における硬度(ロール内部応力)の均一性の向上を図ることができる。その結果、積層体4のロール5に含まれる偏光子21に打痕が生じることを抑制でき、偏光子21から、非偏光部21aを有し、かつ、外観に優れる偏光子片210を、複数切り出し得る。
【0011】
積層体4の幅方向の寸法は、代表的には500mm~2000mmであり、好ましくは1000mm~1500mmである。
第1貫通穴1aの平面視形状は、非偏光部21aに求められる形状に応じて適宜変更され得る。第1貫通穴1aの平面視形状として、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形等が挙げられ、好ましくは、円形が挙げられる。第2貫通穴1bの平面視形状は、特に制限されない。第2貫通穴1bの平面視形状として、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形等が挙げられ、好ましくは、円形が挙げられる。
【0012】
本発明の1つの実施形態においては、偏光子片の切出工程において、1枚の偏光子21のフィルムから、実質的に同一の構成を有する1種の偏光子片210が複数切り出される。本実施形態において、表面保護フィルム1が有する複数の第1貫通穴1aは、幅方向に互いに実質的に等間隔を空けて配置され、複数の第1貫通穴1aのそれぞれの開口面積は、実質的に互いに同じである。なお、偏光子片の切出工程において、1枚の偏光子21のフィルムから、実質的に互いに異なる構成を有する2種以上の偏光子片210が複数切り出されてもよい。この場合、複数の第1貫通穴1aは、幅方向に互いに異なる間隔を空けて配置されてもよく、複数の第1貫通穴1aのそれぞれの開口面積は、互いに異なってもよい。
【0013】
本発明の1つの実施形態においては、表面保護フィルム1は、幅方向に実質的に等間隔を空けて配置される複数の第1貫通穴1aからなる列1Aを、表面保護フィルム1の長尺方向に間隔を空けて複数有する。この場合、偏光子21を介して脱色処理する工程において、偏光子21に、幅方向に等間隔を空けて配置される複数の非偏光部21aからなる列を、偏光子21の長尺方向に間隔を空けて複数形成できる。そのため、長尺状の偏光子21から切り出し可能な偏光子片210の個数の向上を図ることができ、偏光子片210の製造効率の向上を図ることができる。互いに隣り合う列1Aの間の長尺方向の間隔は、代表的には10mm~500mmであり、好ましくは20mm~400mmである。
【0014】
第2貫通穴1bは、1つの列1Aに対して1つ設けられてもよく、1つの列1Aに対して複数設けられてもよい。1つの列1Aに対して1つの第2貫通穴1bが設けられる場合、第2貫通穴1bは、
図5~
図7に示すように、列1Aに含まれる複数の第1貫通穴1aを幅方向に一括して通る仮想線と重なるように位置してもよく、
図8に示すように、当該仮想線から長尺方向にずれて配置されてもよい。
【0015】
1つの列1Aに対して1つの第2貫通穴1bが設けられる場合、第2貫通穴1bの開口面積は、各第1貫通穴1aの開口面積に対して、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、1.0以上、さらに好ましくは、1.5以上であり、例えば、5.0以下、好ましくは、3.0以下である。なお、貫通穴(第1貫通穴1aまたは第2貫通穴1b)の開口面積は、表面保護フィルム1を厚み方向と直交する面方向に切断したときの断面における貫通穴の面積である。各第1貫通穴1aに対する第2貫通穴1bの開口面積(1つの第2貫通穴1bの開口面積/1つの第1貫通穴1aの開口面積;以下、第2貫通穴1bの開口面積比とする。)が上記下限以上、特に0.5以上であると、積層体4のロール5の硬度(ロール内部応力)が局所的に高くなることを安定して抑制でき得る。第2貫通穴1bの開口面積比が上記上限以下であると、表面保護フィルム1において第2貫通穴1bを設けるためのスペースを小さくでき、ひいては、偏光子21の製品(偏光子片210)の外側に位置するマージン部分を小さくでき得る。
【0016】
また、
図9に示すように、1つの列1Aに対して複数の第2貫通穴1bが設けられる場合、第2貫通穴1bの開口面積比が0.5以未満であっても、積層体4のロール5の硬度(ロール内部応力)が局所的に高くなることを安定して抑制でき得る。複数の第2貫通穴1bは、表面保護フィルム1の長尺方向に間隔を空けて配置される。1つの列1Aに対して設けられる第2貫通穴1bの個数は、例えば、2~10、好ましくは、2~8である。この場合、第2貫通穴1bの開口面積比は、好ましくは、0.5未満、より好ましくは、0.3以下、さらに好ましくは、0.2以下であり、例えば、0.01以上、好ましくは、0.5以下である。第2貫通穴1bの開口面積比が上記範囲であれば、偏光子21の製品外のマージン部分をより小さくできながら、積層体4のロール5の硬度(ロール内部応力)が局所的に高くなることを安定して抑制でき得る。
【0017】
本発明の1つの実施形態においては、複数の第1貫通穴1aのうち幅方向の一端に位置する第1貫通穴1aと第2貫通穴1bとの間の幅方向の間隔L2、および、第2貫通穴1bと表面保護フィルム1の一端縁E1との間の幅方向の間隔L3のそれぞれは、複数の第1貫通穴1aのうち互いに隣り合う第1貫通穴1aの間の幅方向の間隔L1以下である。互いに隣り合う第1貫通穴1aの間の幅方向の間隔L1は、代表的には10mm~400mmであり、好ましくは20mm~300mmである。複数の第1貫通穴1aのうち幅方向の一端に位置する第1貫通穴1aと表面保護フィルム1の一端縁E1との間隔L4が、互いに隣り合う第1貫通穴1aの間隔L1以上であると、複数の第1貫通穴1aの位置のバランスが悪く、複数の第1貫通穴1aの位置の均一性が低下する。そのため、積層体4のロール5の一端部にロール内部応力が集中しやすい。これに対して、第2貫通穴1bが上記の間隔L2および間隔L3を満たすように設けられると、複数の第1貫通穴1aと第2貫通穴1bとがバランスよく配置されるので、積層体4のロール5の一端部にロール内部応力が集中することを安定して抑制できる。
【0018】
本発明の1つの実施形態においては、
図8および
図10に示すように、表面保護フィルム1は、複数の第1貫通穴1aのうち幅方向の他端に位置する第1貫通穴1aと、表面保護フィルム1の幅方向の他端縁E2との間に位置する第3貫通穴1cをさらに有する。表面保護フィルム1が第3貫通穴1cを有すると、積層体4のロール5の他端部にロール内部応力が集中することを抑制でき、積層体4のロール5の硬度(ロール内部応力)が局所的に高くなることをより安定して抑制でき得る。表面保護フィルム1が複数の第1貫通穴1aからなる列1Aを長尺方向に間隔を空けて複数有する場合、第3貫通穴1cは、第2貫通穴1bと同様に、1つの列1Aに対して1つ設けられてもよく、1つの列1Aに対して複数設けられてもよい。
【0019】
以下、
図1~
図5を参照して、偏光子片の製造方法の詳細について説明する。
本発明の1つの実施形態では、表面保護フィルム1を、偏光子21および保護層22を含む偏光板2に貼り合わせて積層体4を形成し(積層体の形成工程)、次いで、偏光子21を部分的に脱色処理して複数の非偏光部21aを形成して(偏光子の脱色処理工程)、積層体4をロール状に巻き取った後(積層体の巻取工程)、偏光子21から、非偏光部21aを含む偏光子片210を含む偏光板片20を複数切り出す(偏光板片の切出工程)。なお、このような実施形態では、保護層22が予め偏光子21に貼り付けられた偏光板2が準備されるが、保護層22を設けるタイミングは、特に制限されない。保護層22が貼り付けられていない偏光子21に表面保護フィルム1を貼り合わせて、偏光子21の部分的な脱色後かつ積層体4の巻き取り前に保護層22を偏光子21に貼り付けてもよく、積層体4の巻き取り後かつ偏光板片20の切り出し前に保護層22を偏光子21に貼り付けてもよく、偏光子21から偏光子片210を切り出した後に各偏光子片210に保護層片220を貼り付けてもよい。
【0020】
B.積層体の形成工程
積層体の形成工程において、より詳しくは、第2の表面保護フィルム3を、ロールトゥロールにより、偏光板2が備える保護層22に貼り合わせた後、上記した表面保護フィルム1を、ロールトゥロールにより、偏光板2が備える偏光子21に貼り合わせて、積層体4を形成する。「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて貼り合わせることをいう。以下では、表面保護フィルム1を、第1の表面保護フィルム1として、第2の表面保護フィルム3と区別する。第2の表面保護フィルム3を第1の表面保護フィルム1よりも先に偏光板2に貼り合わせることにより、第1の表面保護フィルム1の第1貫通穴1aが打痕として偏光子21に転写されることを抑制でき得る。
【0021】
積層体4は、第1の表面保護フィルム1/偏光子21/保護層22/第2の表面保護フィルム3の積層構造を有する。なお、第1の表面保護フィルム1を偏光子21に貼り合わせた後に、第2の表面保護フィルム3を保護層22に貼り合わせることもでき、第2の表面保護フィルム3を用いることなく、第1の表面保護フィルム1を偏光子21に貼り合わせることもできる。
【0022】
B-1.偏光板
偏光板2は、長尺状を有しており、代表的にはロール状に巻回可能である。偏光板2は、偏光子21と、任意の適切な接着層(接着剤層、粘着剤層:図示せず)を介して貼り合わされる保護層22とを備える。
【0023】
B-1-1.偏光子
偏光子21としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子21を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。偏光子21を形成する樹脂フィルムは、二色性物質を含む。二色性物質として、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。二色性物質は、単独でまたは組み合わせて使用できる。二色性物質のなかでは、好ましくは、ヨウ素が挙げられる。例えば化学脱色処理により非偏光部21aを形成する場合、偏光子21に含まれるヨウ素錯体を適切に還元でき、例えばカメラ部に使用する際に適切な特性を、非偏光部21aに付与できるからである。
【0024】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理および延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0025】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0026】
偏光子21は、好ましくは二層以上の積層体から構成され、より好ましくは樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体から構成され得る。
【0027】
偏光子21の厚みは、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下であり、代表的には1μm以上、好ましくは3μm以上である。
【0028】
偏光子21は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子21の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子21の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0029】
B-1-2.保護層
保護層22は、偏光子21の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0030】
保護層22は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂として、例えば、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328329号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2006-337569号公報、特開2007-009182号公報、特開2009-161744号公報、特開2010-284840号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0031】
保護層22の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層22の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0032】
B-2.第1の表面保護フィルム
第1の表面保護フィルム1は、長尺状を有し、代表的にはロール状に巻回可能である。第1の表面保護フィルム1には、上記のように、複数の第1貫通穴1aと、第2貫通穴1bとが予め形成されている。また、第1の表面保護フィルム1には、必要に応じて、第3貫通穴1cが予め形成される。貫通穴の形成方法は、特に制限されず、例えば、機械加工、レーザー加工、化学反応によるエッチング加工等が挙げられる。第1の表面保護フィルム1は、基材11と、粘着剤層12とを有する。
【0033】
基材11は、任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられ、好ましくは、エステル系樹脂が挙げられる。基材11の材料がエステル系樹脂であると、第1の表面保護フィルム1の硬度の向上を図ることができ、搬送時および/または貼り合わせ時における貫通穴の変形を抑制し得る。
【0034】
基材11の厚みは、代表的には20μm~250μmであり、好ましくは30μm~150μmである。
【0035】
粘着剤層12は、任意の適切な粘着剤(感圧接着剤)から形成される。粘着剤として、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル系粘着剤が挙げられる。「(メタ)アクリル系粘着剤」とは、アクリル系粘着剤および/またはメタクリル系粘着剤をいう。
【0036】
粘着剤層12の厚みは、代表的には1μm~20μmであり、好ましくは3μm~10μmである。
【0037】
このような第1の表面保護フィルム1は、粘着剤層12が偏光子21と接触することにより、偏光板2に貼り付けられる。第1の表面保護フィルム1が偏光板2に貼り付けられた状態で、基材11は、粘着剤層12に対して偏光子21の反対側に位置する。
【0038】
B-3.第2の表面保護フィルム
第2の表面保護フィルム3は、長尺状を有し、代表的にはロール状に巻回可能である。第2の表面保護フィルム3は、貫通穴(第1貫通穴1a、第2貫通穴1bおよび第3貫通穴1c)を有しないこと以外は、第1の表面保護フィルム1と同様に説明され得る。第2の表面保護フィルム3は、基材11と同様に説明され得る基材31と、粘着剤層12と同様に説明され得る粘着剤層32とを有する。このような第2の表面保護フィルム3は、粘着剤層32が保護層22と接触することにより、偏光板2に貼り付けられる。第2の表面保護フィルム3が偏光板2に貼り付けられた状態で、基材31は、粘着剤層32に対して保護層22の反対側に位置する。
【0039】
C.偏光子の脱色処理工程
次いで、積層体4を化学的脱色処理に供して、複数の第1貫通穴1aから露出する偏光子21の部分に、処理液(代表的には、塩基性溶液)を第1貫通穴1aを介して接触させる。偏光子21に対する塩基性溶液の接触は、代表的には、
図1に示すように、積層体4を、搬送しながら塩基性溶液に浸漬することによって実施される。なお、積層体4を塩基性溶液に浸漬した後、積層体4を、搬送しながら洗浄液(例えば、水、アルコールおよびそれらの混合溶媒)に浸漬して洗浄してもよい。
【0040】
偏光子21が二色性物質としてヨウ素を含む場合、偏光子21の所定部分に塩基性溶液を接触させると、当該接触部分のヨウ素含有量が容易に低減され、当該接触部分に選択的に非偏光部21aを形成でき得る。これによって、偏光子21の所定部分を脱色でき、偏光子21に複数の非偏光部21aを形成でき得る。なお、ヨウ素錯体を破壊して非偏光部を形成した場合、非偏光部にヨウ素が残存し得る。すると、偏光子の使用に伴い再度ヨウ素錯体が形成され、非偏光部が所望の特性を有さなくなるおそれがある。これに対して、塩基性溶液と偏光子21との接触により非偏光部21aを形成すると、ヨウ素自体が、塩基性溶液の除去に伴って、偏光子21(実質的には、非偏光部21a)から除去される。その結果、偏光子21の使用に伴う非偏光部21aの特性変化を抑制し得る。
【0041】
非偏光部21aの二色性物質(代表的には、ヨウ素)の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。非偏光部の二色性物質の含有量がこのような範囲であれば、非偏光部21aに所望の透明性を十分に付与することができる。例えば、画像表示装置のカメラ部に非偏光部を対応させた場合に、明るさおよび色味の両方の観点から非常に優れた撮影性能を実現することができる。一方、非偏光部21aの二色性物質の含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。なお、二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
【0042】
非偏光部21a以外の偏光子21の部分における二色性物質の含有量と、非偏光部21aにおける二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。含有量の差がこのような範囲であれば、所望の透明性を有する非偏光部を形成することができる。
【0043】
非偏光部21aの透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上、とりわけ好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、非偏光部が所望の透明性を有する。その結果、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光板を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0044】
塩基性溶液は、塩基性化合物と、塩基性化合物を分散および/または溶解する溶媒とを含む。塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、単独でまたは組み合わせて使用できる。塩基性化合物のなかでは、好ましくはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられ、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。塩基性化合物がアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物を含むと、ヨウ素錯体を効率良くイオン化でき、より簡便に非偏光部を形成することができる。
【0045】
溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。溶媒としては、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。溶媒のなかでは、好ましくは、水、アルコールが挙げられる。溶媒が水および/またはアルコールを含むと、ヨウ素イオンを、偏光子21から溶媒に円滑に移行でき、塩基性溶液の除去に伴ってヨウ素イオンを容易に除去できる。
【0046】
塩基性溶液の濃度は、例えば、0.01N~5Nであり、好ましくは0.05N~3Nであり、より好ましくは0.1N~2.5Nである。塩基性溶液の濃度がこのような範囲であれば、第1貫通穴1aから露出する偏光子21の部分のヨウ素濃度を効率よく低減でき、かつ、当該部分を除く偏光子21におけるヨウ素錯体のイオン化を抑制できる。
【0047】
D.脱色処理の後処理工程
本発明の1つの実施形態では、偏光子の脱色処理後に後処理工程を含む。複数の第1貫通穴1aから露出する偏光子21の部分に処理液(代表的には、塩基性溶液)を接触させて非偏光部21aを形成すると、非偏光部21aにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩が生成し得る。これらは水酸化物イオンを生成し得、生成した水酸化物イオンは、非偏光部21a周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、非偏光領域(低濃度領域)を広げ得る。そこで、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩を低減させる後処理工程を実施することにより、経時的に非偏光領域が広がるのを抑制して、所望の非偏光部形状が維持され得ると考えられる。
【0048】
上記水酸化物イオンを生成し得る金属塩としては、代表的には、ホウ酸塩が挙げられる。ホウ酸塩は、例えば、上記した延伸処理に用いたホウ酸が塩基性溶液(代表的には、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物の溶液)に中和されて生成し得る。なお、ホウ酸塩(メタホウ酸塩)は、例えば、偏光子が加湿環境下に置かれることにより、加水分解されて水酸化物イオンを生成し得る。
【0049】
後処理工程では、複数の第1貫通穴1aから露出する非偏光部21aに、後処理液(代表的には、酸性溶液)を第1貫通穴1aを介して接触させる。非偏光部21aに対する酸性溶液の接触は、代表的には、
図1に示すように、積層体4を、搬送しながら酸性溶液に浸漬することによって実施される。なお、積層体4を酸性溶液に浸漬した後、積層体4を、搬送しながら洗浄液(例えば、水、アルコールおよびそれらの混合溶媒)に浸漬して洗浄してもよい。
【0050】
非偏光部21aに後処理液(代表的には、酸性溶液)を接触させると、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩を、後処理液(代表的には、酸性溶液)に移行でき、非偏光部21aにおけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩の含有量を低減させることができる。とりわけ、後処理液が酸性溶液であると、非偏光部21aに残存するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物を中和して、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を化学的に除去し得る。
【0051】
後処理工程後の非偏光部21aにおけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩の含有量は、好ましくは3.6重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下、とりわけ好ましくは0.5重量%以下である。
【0052】
酸性溶液は、酸性性化合物と、酸性性化合物を分散および/または溶解する溶媒とを含む。酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素、ホウ酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性化合物は、単独でまたは組み合わせて使用できる。酸性化合物の中では、好ましくは無機酸が挙げられ、より好ましくは塩酸、硫酸、硝酸が挙げられる。
【0053】
溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。溶媒としては、上記のC項「偏光子の脱色処理工程」で説明したとおりである。
【0054】
酸性溶液の濃度は、例えば、0.01N~5Nであり、好ましくは0.05N~3Nであり、より好ましくは0.1N~2.5Nである。
【0055】
E.積層体の巻取工程
次いで、複数の非偏光部21aが形成された偏光子21を含む積層体4を、任意の適切な巻き取り張力を付与しながら、図示しない回転軸によって、ロール状に連続的に巻き取る。これによって、積層体4のロール5が形成される。ロール5において、積層体4の第1の表面保護フィルム1は、当該第1の表面保護フィルム1が貼り付けられた偏光板2に対して、ロール5の径方向外側に位置し、第2の表面保護フィルム3は、当該第2の表面保護フィルム3が貼り付けられた偏光板2に対して、ロール5の径方向内側に位置する。
【0056】
巻き取り張力は、代表的には50N~300Nであり、好ましくは70N~250Nである。
巻き取り張力が上記上限以下であると、ロールに打痕が生じることを安定して抑制できる。巻き取り張力が上記下限以上であると、ロールに巻きずれが生じることを抑制できる。
【0057】
また、巻き取られる積層体4の長さ(巻きの長さ)は、代表的には50m~6000mであり、好ましくは150m~4000mである。巻きの長さが上記上限以下であると、ロールの中心にかかる応力が過度に大きくなることを抑制できる。巻きの長さが上記下限以上であると、偏光板片の生産性の向上を図ることができる。
【0058】
F.偏光子片の切出工程
次いで、ロール5から積層体4の一部を引き出した後、引き出した積層体4から第1の表面保護フィルム1を除去(代表的には、剥離)する。その後、図示しない検出部(代表的には、カメラ)が、非偏光部21aの位置を検出し、検出した非偏光部21aの位置を基準として、切り抜き線Cを設定する。次いで、打ち抜き刃(図示せず)を用いて、偏光板2を切り抜き線Cに沿って切り抜く。これによって、偏光板片20が、偏光板2から切り出される。偏光板片20は、非偏光部21aを含む偏光子片210と、保護層片220とを含む。言い換えれば、非偏光部21aを含む偏光子片210が、偏光子21から切り出される。
【0059】
偏光板片20の平面視形状は、上記した切り抜き線Cに対応しており、任意の適切な形状であり得る。偏光板片20の平面視形状として、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形等が挙げられ、好ましくは、矩形が挙げられる。矩形を有する偏光子片210は、長辺と短辺とを有する。偏光子片210の長辺方向は、偏光子21の吸収軸方向に対して実質的に平行であってもよく、偏光子21の吸収軸方向に対して交差していてもよい。本明細書において「実質的に平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±7°である場合を包含し、好ましくは0°±5°であり、さらに好ましくは0°±3°である。
【0060】
その後、上記の操作を繰り返し、打ち抜き刃(図示せず)を移動させて、偏光板2から、次の偏光板片20を切り出す。本発明の1つの実施形態では、打ち抜き刃(図示せず)を幅方向の一方から他方に直線的に移動させて、偏光板2から偏光板片20を順に切り出す。幅方向の一列において、偏光板2からの偏光板片20の切り抜きが完了した後は、偏光板2を所定の送りピッチ分、搬送して、次の一列について切り抜き操作を実施する。幅方向の一列における切り抜き操作および該操作後の偏光板2の1ピッチ分の搬送を1サイクルとして、所定回数これを繰り返すことにより、長尺状の偏光板2から、複数の偏光子片210を切り出すことができる。
【実施例0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0062】
(1)ロール硬度測定
実施例および比較例で得られた積層体のロールの表面に、ロールハードネス測定器(Tapio社製、測定方法;小型ハンマーの減速度測定、測定ピッチ;1mm(30叩打/秒))を接触させ、ロールの軸方向の一端から他端に向かって、1mmピッチで1080点測定した。表1に、ロールの最大硬度と、ロールの最小硬度と、それらの差(Gap)とを示す。
また、ロールから積層体を引き出して第1の表面保護フィルムを剥離し、目視により、偏光子1m2あたりの直径1mm以上の打痕の個数をカウントした。そして、打痕の個数を下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。
〇:打痕1つ以下
△:打痕2つ以上4つ以下
×:打痕5つ以上
【0063】
[実施例1]
1.偏光板の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm、幅:3900mm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成した。
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてのグルタルイミド構造を有するアクリル系樹脂フィルム(厚み:40μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約2.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をアクリル系樹脂フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離して、アクリル系樹脂フィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板(幅:1300mm)を得た。
【0064】
2.第1の表面保護フィルム
長尺のエステル系樹脂フィルム(基材、厚み:38μm、幅:1300mm)の一方の表面に、アクリル系粘着剤を厚みが5μmになるように塗布して、第1の表面保護フィルムを得た。第1の表面保護フィルムに、ピナクル(登録商標)刃を用いて、直径3mmの第1貫通穴を、幅方向に220mmおきに形成した。また、複数の第1貫通穴が幅方向に並ぶ列を、長尺方向に310mmおきに形成した。また、
図5に示すように、各列の数の第1貫通穴のうち幅方向の一端に位置する第1貫通穴と第1の表面保護フィルムの幅方向の一端縁との間に、直径3mmの第2貫通穴を形成した。第2貫通穴は、各列に含まれる複数の第1貫通穴を幅方向に一括して通る仮想線と重なるように配置した。
【0065】
3.第2の表面保護フィルム
長尺のエステル系樹脂フィルム(基材、厚み38μm、幅:1300mm)の一方の表面に、アクリル系粘着剤を厚みが5μmになるように塗布して、第2の表面保護フィルムを得た。
【0066】
4.積層体およびロールの作製
偏光板の保護層に第2の表面保護フィルムを貼り合わせた後、偏光板の偏光子に第1の表面保護フィルムを貼り合わせた。これによって、第1の表面保護フィルム/偏光板/第2の表面保護フィルムの構成を有する長尺状の積層体を得た。
次いで、長尺状の積層体を、巻き取り張力240N、巻き長さ4000mの条件で、回転軸によって巻き取った。これによって、積層体のロールを得た。
【0067】
[実施例2]
図6に示すように、第2貫通穴の直径を5mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体のロールを得た。
【0068】
[実施例3]
図7に示すように、第2貫通穴の直径を1mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体のロールを得た。
【0069】
[実施例4]
図9に示すように、第1貫通穴の各列に対応して、直径1mmの第2貫通穴を、長尺方向に並ぶように複数形成したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体のロールを得た。
【0070】
[実施例5]
図10に示すように、第1貫通穴の各列に対応して、複数の第2貫通穴に加えて、直径1mmの第3貫通穴を長尺方向に並ぶように複数形成したこと以外は、実施例4と同様にして、積層体のロールを得た。複数の第3貫通穴は、各列の数の第1貫通穴のうち幅方向の他端に位置する第1貫通穴と第1の表面保護フィルムの幅方向の他端縁との間に位置した。
【0071】
[実施例6]
図8に示すように、第2貫通穴を列に含まれる複数の第1貫通穴を一括して通る仮想線から長尺方向にずらして形成したこと、および、直径3mmの第3貫通穴を、各列の複数の第1貫通穴のうち幅方向の他端に位置する第1貫通穴と第1の表面保護フィルムの幅方向の他端縁との間に形成したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体のロールを得た。また、第3貫通穴は、上記の仮想線に対して、第1貫通穴の反対側にずらして形成された。
【0072】
[比較例1]
図11に示すように、第1の表面保護フィルムに第2貫通穴を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、積層体のロールを得た。
【0073】
[比較例2]
図12に示すように、複数の第1貫通穴の位置を変更したこと以外は、比較例1と同様にして、積層体のロールを得た。
【0074】
【0075】
[評価]
表1から明らかなように、所定の位置に第2貫通穴を形成することにより、積層体のロールの硬度(ロール内部応力)が局所的に高なることを抑制でき、偏光子に打痕が生じることが抑制でき得ることがわかる。
本発明の偏光子片の製造方法は、スマートフォン等の携帯電話、ノート型PC、タブレットPC等のカメラ付き画像表示装置(液晶表示装置、有機ELデバイス)に用いられる偏光子の製造に好適に用いられる。