(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182031
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】インクジェットインク及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20221201BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221201BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 116
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089323
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 俊博
(72)【発明者】
【氏名】高田 五朗
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FB01
2C056FB08
2C056FC01
2C056FD20
2H186AA15
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA08
2H186DA18
2H186FB04
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2H186FB15
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2H186FB32
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB58
4J039AD21
4J039BA13
4J039BA20
4J039BA35
4J039BC15
4J039BC16
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE26
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA18
4J039EA46
4J039FA04
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】ガラス基材との密着性に優れるインク膜を形成することが可能なインクジェットインク及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含み、無機酸化物の含有量は、インクジェットインクの全量に対して、15質量%~35質量%であり、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1以上である、インクジェットインク及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含み、
前記無機酸化物の含有量は、インクジェットインクの全量に対して、15質量%~35質量%であり、
前記無機酸化物の含有量に対する前記シランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1以上である、インクジェットインク。
【請求項2】
前記無機酸化物は、含水率が2質量%以上である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記無機酸化物は、酸化チタン又は酸化鉄である、請求項1又は請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記無機酸化物の含有量に対する前記シランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1~0.5である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記無機酸化物は、平均粒子径が100nm以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
有機溶剤をさらに含み、
前記有機溶剤の含有量は、インクジェットインクの全量に対して、30質量%~60質量%である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
有機溶剤をさらに含み、
前記有機溶剤中、表面張力が30mN/m以上の有機溶剤の質量割合は、15質量%以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記重合性モノマーは、環構造を有する重合性モノマーを含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含むインクを調製する工程と、
前記無機酸化物と前記シランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に、前記インクを用いてインクジェット記録方式でガラス基材上に画像を記録する工程と、
を含むインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記インクを調製する工程において、前記無機酸化物の含有量に対する前記シランカップリング剤の含有量の質量比率を0.1~0.5とする、請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェットインク及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上にインクを用いて画像を記録する際に、活性エネルギー線を用いて硬化させる方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、酸基を有する重合体、多官能チオール化合物、金属酸化物粒子、シランカップリング剤、及び、有機溶剤、を含有し、酸基を有する重合体の酸価が100~300mgKOH/gであり、組成物の全固形分に対する、多官能チオール化合物の含有量A1と、組成物の全固形分に対する、シランカップリング剤の含有量A2とが、特定の式を満たす硬化性組成物が記載されている。また、特許文献2には、エチレン性不飽和結合当量が1200以上、またはエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性成分と、光重合性モノマーと、白色顔料と、オキシム系光重合開始剤と、シランカップリング剤と、を含む透明基材用硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-151321号公報
【特許文献2】特開2020-138992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス基材上にインクを付与することにより得られる画像記録物において、ガラス基材との密着性に優れるインク膜を形成することが求められる場合がある。
【0006】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の実施形態が解決しようとする課題は、ガラス基材との密着性に優れるインク膜を形成することが可能なインクジェットインク及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は以下の態様を含む。
<1> 無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含み、無機酸化物の含有量は、インクジェットインクの全量に対して、15質量%~35質量%であり、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1以上である、インクジェットインク。
<2> 無機酸化物は、含水率が2質量%以上である、<1>に記載のインクジェットインク。
<3> 無機酸化物は、酸化チタン又は酸化鉄である、<1>又は<2>に記載のインクジェットインク。
<4> 無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1~0.5である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のインクジェットインク。
<5> 無機酸化物は、平均粒子径が100nm以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のインクジェットインク。
<6> 有機溶剤をさらに含み、有機溶剤の含有量は、インクジェットインクの全量に対して、30質量%~60質量%である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク。
<7> 有機溶剤をさらに含み、有機溶剤中、表面張力が30mN/m以上の有機溶剤の質量割合は、15質量%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインクジェットインク。
<8> 重合性モノマーは、環構造を有する重合性モノマーを含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク。
<9> 無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含むインクを調製する工程と、無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に、インクを用いてインクジェット記録方式でガラス基材上に画像を記録する工程と、を含むインクジェット記録方法。
<10> インクを調製する工程において、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率を0.1~0.5とする、<9>に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ガラス基材との密着性に優れるインク膜を形成することが可能なインクジェットインク及びインクジェット記録方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の活性エネルギー線硬化型下塗り組成物、インクセット、及び画像記録方法について詳細に説明する。
【0010】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
本明細書において、「画像」とは、インクを付与することによって形成される膜全般を意味し、「画像記録」とは、画像(すなわち、膜)の形成を意味する。
また、本明細書における「画像」の概念には、ベタ画像(solid image)も包含される。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。また、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。
【0014】
本開示のインクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう)は、無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含み、無機酸化物の含有量は、インクジェットインクの全量に対して、15質量%~35質量%であり、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1以上である。
【0015】
本開示のインクを、例えば、ガラス基材上に付与した後に活性エネルギー線を照射することにより、基材上に画像としてインク膜が形成された画像記録物を得ることができる。本開示のインクを用いると、ガラス基材との密着性に優れるインク膜を形成することができる。この理由は以下のように推測される。
【0016】
本開示のインクでは、無機酸化物の含有量が15質量%~35質量%であり、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率が0.1以上であるため、無機酸化物に含まれる水分によってシランカップリング剤が反応し、ガラス基材への密着性が向上すると推測される。
【0017】
一方、特許文献1では、インクにおける無機酸化物の含有量が少ない。また、特許文献2では、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率が小さい。そのため、無機酸化物に含まれる水分によるシランカップリング剤の反応が不十分であり、ガラス基材への密着性の向上は期待できない。
【0018】
以下、本開示のインクに含まれる各成分について説明する。
【0019】
[インクジェットインク]
本開示のインクは、インクジェットインクである。インクジェットインクとは、インクジェット記録方式を用いて画像を記録する際に用いられるインクのことをいう。
【0020】
本開示のインクは、無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含む。
【0021】
<無機酸化物>
本開示のインクは、少なくとも1種の無機酸化物を含有する。
【0022】
無機酸化物の種類は特に限定されないが、ガラス基材との密着性を向上させる観点から、無機酸化物の含水率は2.0質量%以上であることが好ましく、2.4質量%以上であることがより好ましく、2.8質量%以上であることがさらに好ましい。無機酸化物の含水率が2質量%以上であると、無機酸化物に含まれる水分がシランカップリング剤と反応するため、ガラス基材との密着性が向上すると考えられる。無機酸化物の含水率の上限値は特に限定されないが、例えば、5質量%である。
【0023】
本開示において、含水率は、相対湿度50%のときの平衡含水率を意味する。
無機酸化物の含水率は、以下の方法を用いて測定される。
【0024】
無機酸化物の含水率は、カールフィッシャー法等の公知の方法により測定することができる。カールフィッシャー法とは、下記式1のように、水と選択的に、且つ定量的に反応するカールフィッシャー試薬(ヨウ素、二酸化硫黄、塩基、及びアルコール等の溶剤より構成される試薬)を用いて含水率を測定する方法である。
I2+SO2+3塩基+ROH+H2O→2塩基・HI+塩基・HSO4R …(1)
無機酸化物の含水率は、例えば、陽極液に電量滴定法試薬(製品名「アクアミクロンAX」、三菱ケミカル社製)を、陰極液に電量滴定法試薬(製品名「アクアミクロンCXU」、三菱ケミカル社製)を用いて測定される。ブランクとして、測定用バイアル瓶にサンプリングした実験室の空気を入れ、測定する。無機酸化物(90mg)を300℃で加熱し、水分を蒸発させ、電量滴定法により含水量を測定する。
【0025】
無機酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素(シリカ)、及び酸化アルミニウム(アルミナ)が挙げられる。また、無機酸化物は、2種以上の金属酸化物を混合し、焼成することで得られる複合酸化物であってもよい。
【0026】
中でも、無機酸化物は、含水率の観点から、酸化チタン又は酸化鉄であることが好ましい。
【0027】
無機酸化物は、粒子形状を有することが好ましい。粒子形状は、真球であってもよく、楕円球であってもよい。
【0028】
無機酸化物の平均粒子径は、粒子における最大長さをいう。無機酸化物の平均粒子径は、吐出性の観点から100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。無機酸化物の平均粒子径の下限値は特に限定されず、例えば、10nmである。
【0029】
無機酸化物の平均粒子径は、ナノトラック粒度分布測定装置(製品名「UPA-EX150」、日機装社製)を用いて、動的光散乱法により測定され、体積平均粒子径として得られる。
【0030】
無機酸化物の含有量は、インクの全量に対して、15質量%~35質量%であり、20質量%~30質量%であることが好ましい。無機酸化物の含有量が15質量%以上であると、無機酸化物に含まれる水分がシランカップリング剤と反応し、ガラス基材との密着性に優れるインク膜が得られる。一方、無機酸化物の含有量が35質量%以下であると、無機酸化物によってガラス基材との密着性が阻害されることなく、ガラス基材との密着性に優れるインク膜が得られる。
【0031】
<シランカップリング剤>
本開示のインクは、少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する。
【0032】
本開示において、「シランカップリング剤」とは、加水分解性基と、加水分解性基以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくとも一方によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアシルオキシ基が挙げられる。中でも、加水分解性基は、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、及びフェニル基が挙げられる。中でも、加水分解性基以外の官能基は、重合性基であることが好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、重合性基を有するアルコキシシランであることが好ましく、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランであることがより好ましい。
【0033】
シランカップリング剤は市販品であってもよい。市販品としては、例えば、信越シリコーン社製のKA-1003、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBE-603,KBM-903,KBE-903,KBE-9103,KBM-573、KBM-575、KBM-6123、KBE-585、KBM-703、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007、KBM-04、KBE-04、KBM-13、KBE-13、KBE-22、KBE-103、HMDS-3、KBM-3063、KBM-3103C、KPN-3504、及びKF-99が挙げられる。
【0034】
シランカップリング剤の含有量は、インクの全量に対して、1質量%~15質量%であることが好ましく、3質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0035】
<重合性モノマー>
本開示のインクは、少なくとも1種の重合性モノマーを含有する。
【0036】
本開示において、「モノマー」とは分子量が1000未満の化合物のことをいう。分子量は、化合物を構成する元素の種類及び数から算出することができる
【0037】
本開示において、「重合性モノマー」とは、重合性基を有するモノマーのことをいう。
【0038】
重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、硬化性の観点から、ラジカル重合性基であることが好ましい。また、ラジカル重合性基は、硬化性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
【0039】
重合性モノマーは、重合性基を1つ有する単官能重合性モノマーであってもよく、重合性基を2つ以上有する多官能重合性モノマーであってもよい。硬化性の観点から、重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合は50質量%であることが好ましく、80質量%以上であるがより好ましい。重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合は100質量%であってもよい。すなわち、インクに含まれる重合性モノマーは、多官能重合性モノマーのみであってもよい。
【0040】
-単官能重合性モノマー-
単官能重合性モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
【0041】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートが挙げられる。
【0042】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0043】
単官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-ブチルスチレン、3-ヘキシルスチレン、4-ヘキシルスチレン、3-オクチルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4-t-ブトキシカルボニルスチレン及び4-t-ブトキシスチレンが挙げられる。
【0044】
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
【0045】
単官能N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム及びN-ビニルピロリドンが挙げられる。
【0046】
-多官能重合性モノマー-
多官能重合性モノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレート及び多官能ビニルエーテルが挙げられる。
【0047】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0048】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びPO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0049】
中でも、重合性モノマーは、耐アルコール性を向上させる観点から、環構造を有する重合性モノマーを含むことが好ましい。環は、脂肪族環であってもよく、芳香環であってもよい、また、環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、環には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。また、環構造に含まれる環は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基が挙げられる。
【0050】
中でも、環構造を有する重合性モノマーは、縮合芳香環を有する重合性モノマー、又は、ビスフェノール構造を有する重合性モノマーであることが好ましい。縮合芳香環は、密にパッキングしやすいため、耐アルコール性が向上すると考えられる。同様に、ビスフェノール構造における2つのベンゼン環は、密にパッキングしやすいため、耐アルコール性が向上すると考えられる。
【0051】
縮合芳香環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、及びフルオレン環が挙げられる。中でも、縮合芳香環は、フルオレン環であることが好ましい。フルオレン環は、密にパッキングしやすいため、耐アルコール性がより向上すると考えられる。
【0052】
耐アルコール性を向上させる観点から、環構造を有する重合性モノマーの含有量は、インク全量に対して、3質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましい。
【0053】
硬化性の観点から、重合性モノマーの含有量は、インク全量に対して、5質量%~40質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0054】
<重合開始剤>
本開示のインクは、少なくとも1種の重合開始剤を含有する。重合開始剤は、ラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0055】
重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系重合開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、ヒドロキシアセトフェノン系重合開始剤、アミノアルキルフェノン系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、ベンゾイン系重合開始剤、ベンゾインエーテル系重合開始剤、キサントン系重合開始剤、及びオキシム系重合開始剤が挙げられる。
【0056】
中でも、重合開始剤は、インクの保存安定性の観点から、アシルホスフィンオキシド系重合開始剤、ヒドロキシアセトフェノン系重合開始剤、及びキサントン系重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アシルホスフィンオキシド系重合開始剤、ヒドロキシアセトフェノン系重合開始剤、及びキサントン系重合開始剤の併用がより好ましい。
【0057】
アシルホスフィンオキシド系重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins B.V.社製)、及び(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO-L」、IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
【0058】
ヒドロキシアセトフェノン系重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(製品名「Omnirad 1173」、IGM Resins B.V.社製)及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン(製品名「Omnirad 2959」、IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
【0059】
キサントン系重合開始剤としては、例えば、Lambson社製のSPEEDCUREシリーズ(例:SPEEDCURE 7010、SPEEDCURE CPTX、SPEEDCURE ITX等)が挙げられる。
【0060】
重合開始剤の含有量は、インクの全量に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。重合開始剤の含有量の上限値は特に限定されないが、例えば、10質量%である。
【0061】
アシルホスフィンオキシド系重合開始剤の含有量は、インクの全量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ヒドロキシアセトフェノン系重合開始剤の含有量は、インクの全量に対して0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。キサントン系重合開始剤の含有量は、インクの全量に対して0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
【0062】
<有機溶剤>
本開示のインクは、少なくとも1種の有機溶剤を含有することが好ましい。
【0063】
有機溶剤の種類は特に限定されず、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、アミド、アルキルハライド、及びスルホキシドが挙げられる。
【0064】
中でも、インクの吐出性の観点から、有機溶剤は、エーテルを含むことが好ましく、(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテルを含むことがより好ましい。
【0065】
また、有機溶剤は、表面張力が30mN/m以上の有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤中、表面張力が30mN/m以上の有機溶剤の質量割合は、15質量%以上であることが好ましい。表面張力が30mN/m以上の有機溶剤の質量割合が15質量%以上であると、インクの表面張力が低くなりすぎず、打滴干渉が抑制されるため、画質が向上する。表面張力が30mN/m以上の有機溶剤の質量割合は、インクの吐出性の観点から、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
表面張力が30mN/m以上の有機溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン(表面張力43.0mN/m)、安息香酸エチル(表面張力34.8mN/m)、テルピネオール異性体混合物(表面張力33.2mN/m)、及びイソホロン(表面張力32.3mN/m)が挙げられる。
【0067】
有機溶剤の表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計(製品名「DY-300」)を用いて、プレート法によって測定される。
【0068】
有機溶剤の含有量は、インクの全量に対して、30質量%~60質量%であることが好ましく、35質量%~50質量%であることがより好ましい。
【0069】
<着色剤>
本開示のインクは、少なくとも1種の着色剤を含有することが好ましい。
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられる。耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点から、着色剤は、顔料であることが好ましい。
【0070】
着色剤として顔料を用いる場合、顔料は顔料分散液としてインクに含有させることができる。顔料分散液は、顔料を分散剤を用いて液状媒体中に分散させることにより得られる液体であり、顔料、分散剤及び液状媒体を少なくとも含む。分散剤の詳細については後述する。また、液状媒体は、有機溶剤であってもよく、重合性モノマーであってもよい。
【0071】
顔料としては、通常市販されている有機顔料及び無機顔料のいずれも使用することができる。顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002-12607号公報、特開2002-188025号公報、特開2003-26978号公報及び特開2003-342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0072】
インクを、遮光膜を形成するために用いる場合には、着色剤は、黒色の着色剤であることが好ましく、黒色顔料であることがより好ましく、カーボンブラックであることがさらに好ましい。
【0073】
インクが着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、インクの全量に対して0.5質量%~15質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましく、2質量%~6質量%がさらに好ましい。
【0074】
<分散剤>
着色剤として顔料を用いる場合、顔料は顔料分散液としてインクに含有させることができる。顔料は、分散剤を用いて液状媒体中に分散させることができる。分散剤としては、通常公知のものを用いることができる。分散剤は、分散安定性の観点から、親水性の構造と疎水性の構造の両方を有する化合物であることが好ましい。
【0075】
分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の分子量1000未満の低分子量分散剤が挙げられる。
【0076】
また、分散剤としては、親水性モノマーと疎水性モノマーとを共重合させることにより得られる分子量1000以上の高分子量分散剤が挙げられる。親水性モノマーは、分散安定性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。解離性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー及びリン酸基含有モノマーが挙げられる。疎水性モノマーは、分散安定性の観点から、芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有する芳香族基含有モノマー、又は、脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂肪族炭化水素基含有モノマーであることが好ましい。ポリマーは、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0077】
分散剤は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、
DISPERBYK-101、DISPERBYK-102、DISPERBYK-103、DISPERBYK-106、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、DISPERBYK-182(以上、BYKケミー社製);及び
SOLSPERSE3000、SOLSPERSE5000、SOLSPERSE9000、SOLSPERSE12000、SOLSPERSE13240、SOLSPERSE13940、SOLSPERSE17000、SOLSPERSE22000、SOLSPERSE24000、SOLSPERSE26000、SOLSPERSE28000、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE36000、SOLSPERSE39000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE71000(以上、Lubrizol社製)
が挙げられる。
【0078】
顔料を分散するための分散装置としては、公知の分散装置を用いることができ、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アトライター、超音波分散機及びディスパーが挙げられる。
【0079】
インク中、顔料の含有量に対する分散剤の含有量は、分散安定性の観点から、質量基準で0.5~3.0であることが好ましく、1.0~2.0であることがより好ましい。
【0080】
<重合禁止剤>
本開示のインクは、少なくとも1種の重合禁止剤を含有することが好ましい。
【0081】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン化合物、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、及びニトロキシルラジカルが挙げられる。
【0082】
中でも、重合禁止剤は、ニトロソアミン化合物であることがさらに好ましい。
【0083】
ニトロソアミン化合物としては、例えば、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩及びN-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンが挙げられる。中でも、ニトロソアミン化合物は、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩であることが好ましい。
【0084】
重合禁止剤の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全量に対して0.5質量%~2質量%であることが好ましい。
【0085】
<添加剤>
本開示のインクは、必要に応じて、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩、塩基性化合物等の添加剤を含有してもよい。
【0086】
<シランカップリング剤/無機酸化物>
本開示のインクにおいて、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率は、0.1以上であり、0.1~0.5であることが好ましく、0.15~0.3であることがより好ましい。上記質量比率が0.1以上であると、無機酸化物に含まれる水分によってシランカップリング剤が反応し、ガラス基材への密着性が向上する。
【0087】
<物性>
インクの粘度は、0.5mPa・s~30mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~20mPa・sであることがより好ましく、2mPa・s~15mPa・sであることが好ましく、3mPa・s~10mPa・sであることがさらに好ましい。粘度は、粘度計を用いて25℃で測定され、例えば、東機産業社製のTV-22型粘度計を用いて測定される。
【0088】
インクの表面張力は、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましい。表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計(製品名「DY-300」)を用いて、プレート法によって測定される。
【0089】
<用途>
本開示のインクは、遮光膜を形成するために用いられることが好ましい。遮光膜が形成される対象は特に限定されず、例えば、電子デバイス(例えば、固体撮像素子、タッチパネル等)、表示装置(例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等)、及び光学部材(例えば、光学レンズ等)が挙げられる。本開示のインクは、特に、光学レンズの遮光膜を形成するために好適に用いられる。
【0090】
[インクジェット記録方法]
本開示のインクジェット記録方法は、無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含むインクを調製する工程と、無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に、インクを用いてインクジェット記録方式でガラス基材上に画像を記録する工程と、を含む。
【0091】
(インク調製工程)
本開示のインクジェット記録方法は、無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含むインクを調製する工程(以下、「インク調製工程」ともいう)を含む。
【0092】
無機酸化物、重合性モノマー、重合開始剤、及びシランカップリング剤の好ましい態様は上記のとおりである。調製されるインクには、無機酸化物、重合性モノマー、重合開始剤、及びシランカップリング剤以外に添加剤が含まれていてもよい。
【0093】
インク調製工程では、無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を一度に混合してもよく、複数に分けて準備した液を別途混合してもよい。複数に分けて準備した液を別途混合する方法としては、例えば、無機酸化物、重合性モノマー、及び重合開始剤を含む第1液と、シランカップリング剤を含む第2液と、を準備し、第1液と第2液とを任意のタイミングで混合する方法が挙げられる。液を複数に分けて準備する場合、無機酸化物を含む第1液とシランカップリング剤を含む第2液とを含む2種以上の異なる液を準備することが好ましい。
【0094】
インク調製工程では、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率を0.1~0.5とすることが好ましく、0.15~0.3とすることがより好ましい。上記質量比率を0.1~0.5とすることにより、無機酸化物に含まれる水分によってシランカップリング剤が反応し、ガラス基材への密着性が向上する。
【0095】
(画像記録工程)
本開示のインクジェット記録方法は、無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に、インクを用いてインクジェット記録方式でガラス基材上に画像を記録する工程(以下、「画像記録工程」ともいう)を含む。
【0096】
本開示のインクジェット記録方法では、無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に画像を記録することにより、再吐出性に優れる。なお、再吐出性とは、インクを連続的に吐出した後、一旦吐出を止め、一定時間空けた後、再度吐出した際の吐出性を意味する。
【0097】
「無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に画像を記録する」とは、例えば、以下の方法で行われる。「無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点」とは、無機酸化物とシランカップリング剤とが接触可能な状態に置かれたときを指す。無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を一度に混合してインクを調製する場合には、インクを調製した時点から7日以内に画像を記録する。また、例えば、無機酸化物、重合性モノマー、及び重合開始剤を含む第1液と、シランカップリング剤を含む第2液と、を準備し、第1液と第2液とを任意のタイミングで混合する場合には、第1液と第2液とを混合した時点から7日以内に画像を記録する。
【0098】
ガラス基材の厚さは特に限定されず、例えば、0.1mm~10mmである。
【0099】
インクジェット記録方式は、画像を記録し得る方式であれば特に限定されず、公知の方式を用いることができる。インクジェット記録方式としては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及び、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式が挙げられる。
【0100】
インクジェット記録方式に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
【0101】
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面にパターン形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、ライン方式では、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式と比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0102】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの打滴量は、1pL(ピコリットル)~100pLであることが好ましく、3pL~80pLであることがより好ましく、3pL~50pLであることがさらに好ましい。
【0103】
画像記録工程では、ガラス基材上にインクを付与した後に、付与されたインクに活性エネルギー線を照射することが好ましい。
【0104】
活性エネルギー線としては、例えば、γ線、β線、電子線、紫外線、及び可視光線が挙げられる。中でも、活性エネルギー線は紫外線であることが好ましい。
【0105】
紫外線のピーク波長は、例えば、200nm~405nmであることが好ましく、250nm~400nmであることがより好ましく、300nm~400nmであることがさらに好ましい。
【0106】
紫外線照射用の光源としては、水銀ランプ、ガスレーザー及び固体レーザーが主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプ及び紫外線蛍光灯が広く知られている。また、UV-LED(紫外線発光ダイオード)及びUV-LD(紫外線レーザダイオード)は小型、高寿命、高効率、かつ、低コストであり、紫外線照射用の光源として期待されている。中でも、紫外線照射用の光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、又はUV-LEDであることが好ましい。
【実施例0107】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
<実施例1~実施例15、比較例1~比較例5>
<<インクの調製>>
まず、黒色顔料分散液を調製した。
【0109】
黒色顔料(製品名「スペシャルブラック250」、オリオン エンジニアドカーボンズ社製)40質量部と、分散剤(製品名「SOLSPERSE39000」、Lubrizol社製)29質量部と、分散剤(製品名「SOLSPERSE5000」、Lubrizol社製)1質量部と、分散媒としてフェノキシエチルアクリレート(製品名「ビスコート#192」、大阪有機化学工業社製)30質量部と、を分散機モーターミルM50(アイガー社製)に投入し、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散処理を行い、黒色顔料分散液を得た。
【0110】
次に、調製した黒色顔料分散液と、下記表1及び表2に記載の無機酸化物、重合性モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、及び有機溶剤を、各成分が表1及び表2に記載の含有量(質量%)になるよう混合した。さらに、得られた混合液にシランカップリング剤を添加し、インクを得た(インク調製工程)。なお、比較例1では、シランカップリング剤を添加せずに、インクを調製した。
【0111】
表1及び表2に記載されている各成分の詳細は以下のとおりである。なお、平均粒子径及び含水率の測定方法は、既述したとおりである。
【0112】
<無機酸化物>
・酸化チタン1:製品名「TTO-55(B)」、石原産業社製、平均粒子径40nm、含水率2.8質量%
・酸化チタン2:製品名「CR-90」、石原産業社製、平均粒子径250nm、含水率2.5質量%
・酸化鉄(III):製品名「酸化鉄(III)、20~40nm」、富士フイルムワコーケミカル社製、平均粒子径30nm、含水率2.5質量%
【0113】
<着色剤>
・黒色顔料:製品名「スペシャルブラック250」、オリオン エンジニアドカーボンズ社製
【0114】
<分散剤>
・SOLSPERSE39000:塩基性顔料分散剤(Lubrizol社製)
・SOLSPERSE5000:銅フタロシアニンスルホン酸アンモニウム塩(Lubrizol社製)
【0115】
<重合性モノマー>
・A-BPFE-2:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート(製品名「A-BPFE-2」、新中村化学工業社製;縮合芳香環を有する重合性モノマー)
・A-BPE:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート m+n=10(製品名「A-BPE-10」、新中村化学工業社製;ビスフェノール構造を有する重合性モノマー)
・DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート(製品名「DPGDA」、ダイセル・オルネクス社製)
・DVE-3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(製品名「DVE-3」、BASF社製)
【0116】
<重合開始剤>
・Omnirad 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IGM Resins B.V.社製)
・Omnirad 2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン(IGM Resins B.V.社製)
・ITX:2-イソプロピルチオキサントン(製品名「SPEEDCURE ITX」、Lambson社製)
【0117】
<重合禁止剤>
・FLORSTAB UV-12(Kromachem社製):N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
【0118】
<有機溶剤>
・DEGdEE:ジエチレングリコールジエチルエーテル(表面張力25.0mN/m)
・安息香酸メチル(表面張力34.8mN/m)
・イソホロン(表面張力32.3mN/m)
【0119】
<シランカップリング剤>
・ビニルトリメトキシシラン:製品名「KBM-1003」、信越シリコーン社製
・3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン:製品名「KBM-5103」、信越シリコーン社製
【0120】
<<画像記録>>
インクジェット記録装置(製品名「DMP-3000」、富士フイルム社製)を用いて、ガラス基板(コーニング1737 、コーニング社製)上に、調製したインクを付与した。具体的には、打滴量10pL(ピコリットル)及び解像度600×600dpi(dot per inch)の条件で、インクを付与し、100%ベタ画像及び10ポイントの文字画像を記録した。露光量1200mJ/cm2で紫外線を照射し、画像記録物を得た(画像記録工程)。
【0121】
[評価]
得られた画像記録物を用いてガラス密着性、耐アルコール性、及び画質の評価を行った。調製したインクを用いて連続吐出性の評価を行った。評価方法は以下のとおりである。
【0122】
<ガラス密着性>
得られた画像記録物を、温度60℃、湿度90%RHの環境下で48時間保管した。その後、画像記録物のベタ画像部分において、クロスハッチテープ密着試験を行い、JIS K5600-5-6:1999(ISO2409に対応)に従い、評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:分類0
B:分類1
C:分類2~分類5
【0123】
<耐アルコール性>
綿棒をエタノールに浸した。画像記録物のベタ画像部分を、エタノールが浸透した綿棒で10回擦った。その後、擦られた画像と綿棒とを目視で観察し、耐アルコール性の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:画像の剥がれが確認されず、かつ、綿棒への色移りが全く確認されなかった。
B:画像の剥がれは確認されなかったが、綿棒への色移りが確認された。
C:画像の剥がれが確認され、かつ、綿棒への色移りが確認された。
【0124】
<連続吐出性>
インクジェット記録装置(製品名「DMP-3000」、富士フイルム株式会社製)を用いて、1時間連続してインクを吐出した。その後、吐出曲がりの発生率を算出し、不吐出ノズルの有無を確認した。吐出曲がりの発生率、及び、不吐出ノズルの有無に基づいて、連続吐出性を評価した。評価基準は以下のとおりである。なお、吐出曲がりとは、インクの着弾位置のずれを意味する。また、不吐出ノズルとは、インクが全く吐出されないノズルを意味する。吐出曲がりの発生率は以下の式に基づいて算出した。
吐出曲がりの発生率(%)=(吐出曲がりの発生したノズルの数/ノズルの総数)×100
A:吐出曲がりの発生率は10%未満であった。
B:吐出曲がりの発生率が10%以上20%未満であり、かつ、不吐出ノズルがなかった。
C:吐出曲がりの発生率が10%以上20%未満であり、かつ、不吐出ノズルがあった。
D:吐出曲がりの発生率が20%以上であった。
【0125】
<画質>
画像記録物の文字画像を観察し、視認性に基づいて画質を評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:滲みがなく、文字が視認できた。
B:滲みがわずかに見られるが、実用上問題ないレベルであった。
C:擦れ又は滲みにより文字が視認できなかった。
【0126】
表1及び表2に評価結果を示す。
【0127】
表1及び表2において、「シランカップリング剤/無機酸化物」は、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率を意味する。「表面張力30mN/m以上溶剤の割合」は、有機溶剤に占める、表面張力が30mN/m以上である有機溶剤の割合を意味し、単位は%である。
【0128】
【0129】
【0130】
表1及び表2に示すように、実施例1~実施例15では、無機酸化物、シランカップリング剤、重合性モノマー、及び重合開始剤を含み、無機酸化物の含有量が、インクジェットインクの全量に対して、15質量%~35質量%であり、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率が、0.1以上であるため、ガラス基材との密着性に優れることが分かった。
【0131】
一方、比較例1では、インクにシランカップリング剤が含まれていないため、ガラス基材との密着性に劣ることが分かった。
【0132】
比較例2及び比較例4では、無機酸化物の含有量が15質量%未満であるため、ガラス基材との密着性に劣ることが分かった。
【0133】
比較例3では、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率が、0.1未満であるため、ガラス基材との密着性に劣ることが分かった。
【0134】
比較例5では、無機酸化物の含有量が35質量%超であるため、ガラス基材との密着性に劣ることが分かった。
【0135】
実施例2では、無機酸化物の含有量に対するシランカップリング剤の含有量の質量比率が0.5以下であるため、実施例8と比較して、ガラス基材との密着性、及び、耐アルコール性に優れることが分かった。
【0136】
実施例2では、無機酸化物の平均粒子径が100nm以下であるため、実施例11と比較して連続吐出性に優れることが分かった。
【0137】
実施例2では、表面張力30mN/m以上の有機溶剤の質量割合が15質量%以上であるため、実施例10と比較して、画質に優れることが分かった。
【0138】
実施例2では、環構造を有する重合性モノマーを含むため、実施例1と比較して、耐アルコール性に優れることが分かった。
【0139】
実施例2では、有機溶剤の含有量が30質量%以上であるため、実施例14と比較して、連続吐出性に優れることが分かった。
【0140】
実施例2では、有機溶剤の含有量が60質量%以下であるため、実施例15と比較して、連続吐出性に優れかつ、画質に優れることが分かった。
【0141】
<実施例101~実施例102、比較例101~102>
インクを調製した後、異なるタイミングで画像記録を行った。
<<インクの調製>>
実施例2と同様の方法でインクを調製した。
【0142】
<<画像記録>>
実施例101では、シランカップリング剤を添加してから速やかに、画像記録を行った。
実施例102では、シランカップリング剤を添加した後、インクを温度25℃湿度45%RHの環境下で5日間保管した。5日後、画像記録を行った。
比較例101では、シランカップリング剤を添加した後、インクを温度25℃湿度45%RHの環境下で8日間保管した。8日後、画像記録を行った。
比較例102では、シランカップリング剤を添加した後、インクを温度6℃湿度50%RHの環境下で8日間保管した。8日後、画像記録を行った。
【0143】
[評価]
得られたインクを用いて再吐出性の評価を行った。評価方法は以下のとおりである。
【0144】
<再吐出性>
インクジェット記録装置(製品名「DMP-3000」、富士フイルム株式会社製)を用いて、30分間連続してインクを吐出した。その後、3時間吐出を止めた。3時間後に、30秒間インクをパージした後、吐出曲がりの発生率を算出し、不吐出ノズルの有無を確認した。吐出曲がりの発生率、及び、不吐出ノズルの有無に基づいて、再吐出性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:吐出曲がりの発生率は10%未満であった。
B:吐出曲がりの発生率が10%以上20%未満であり、かつ、不吐出ノズルがなかった。
C:吐出曲がりの発生率が10%以上20%未満であり、かつ、不吐出ノズルがあった。
D:吐出曲がりの発生率が20%以上であった。
【0145】
表3に評価結果を示す。
【0146】
【0147】
表3に示すように、実施例101及び実施例102では、無機酸化物とシランカップリング剤とが混合された時点から7日以内に画像を記録したため、再吐出性に優れることが分かった。
【0148】
次に、実施例1~実施例15のインクをそれぞれ用いて、レンズの側面上に遮光膜を形成した。遮光膜の形成方法は、以下のとおりである。
【0149】
<遮光膜の形成>
インクジェット記録装置(製品名「DMP-3000」、富士フイルム株式会社製)を用いて、レンズ保持回転治具でレンズを保持しながら、レンズの側面に、調製したインクを付与した。レンズとして、球面両凹レンズ(製品名「SLB-25B-25N」、シグマ光機社製)を用いた。具体的には、打滴量10pL(ピコリットル)及び解像度600×600dpi(dot per inch)の条件で、インクを付与し、100%ベタ画像を記録した。画像記録後、ドライヤで乾燥した。その後、紫外発光ダイオード(製品名「NC4U134」、日亜化学工業社製)を用いて、紫外線(波長365nm)を、1200mJ/cm2の露光量で照射することにより、レンズの側面上に厚み0.5μmの硬化膜を形成した。さらに、硬化膜が形成されたレンズを、85℃、85%RHの恒温槽に。30分間入れ、シランカップリング処理を行った。これにより、遮光膜が形成されたレンズを得た。
【0150】
実施例1~実施例15のインクをそれぞれ用いて得られた、遮光膜が形成されたレンズについて、上記ガラス密着性の評価方法と同様の方法で、ガラス密着性の評価を行った。
【0151】
その結果、ガラス基板上にインクを付与して得られた各画像記録物における評価結果(すなわち、表1及び表2に記載の評価結果)と同様の評価結果が得られた。