(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182043
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両運動制御装置、および、車両運動制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/00 20060101AFI20221201BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20221201BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20221201BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W60/00
B60W40/02
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089343
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奈須 真吾
(72)【発明者】
【氏名】上野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勝
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BB27
3D241BC01
3D241BC02
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5H181AA01
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5H181CC04
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5H181CC14
5H181FF04
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5H181LL01
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5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】 本発明は、自車両の近傍の情報だけでなく遠方の情報も考慮した自車両の速度を設定することで、走行中の自車両に生じる急な車両挙動の発生を抑制できる車両運動制御装置を提供する。
【解決手段】 車両の近傍情報を取得する近傍情報取得部と、前記車両の遠方情報を取得する遠方情報取得部と、前記近傍情報と前記遠方情報に基づいて、前記車両の走行目標となる速度指令値を生成する速度計画部と、を備えることを特徴とする車両運動制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の近傍情報を取得する近傍情報取得部と、
前記車両の遠方情報を取得する遠方情報取得部と、
前記近傍情報と前記遠方情報に基づいて、前記車両の走行目標となる速度指令値を生成する速度計画部と、
を備えることを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運動制御装置において、
前記近傍情報に基づいて、前記車両の走行目標となる経路指令値を生成する経路計画部を更に備え、
前記速度計画部は、前記経路指令値に基づいて、前記車両の速度指令値を生成することを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両運動制御装置において、
前記遠方情報に基づいて、前記経路指令値より遠方までの経路である遠方経路を生成する遠方経路生成部を更に備えることを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両運動制御装置において、
前記速度計画部は、前記経路指令値と前記遠方経路を走行する時に生じる車両挙動に関する物理量が規定値以内になる速度指令値を生成することを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の車両運動制御装置において、
前記速度計画部は、前記経路指令値に基づく速度指令値と、前記遠方経路に基づく速度指令値のうち、低速の速度指令値を選択して出力することを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れか一項に記載の車両運動制御装置において、
前記速度計画部は、演算負荷の大きさ、または、前記遠方情報の精度に基づいて、前記速度指令値の生成に用いる情報の優先度の変更、あるいは、前記速度指令値の生成に用いる情報の選択を行うことを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の車両運動制御装置において、
前記近傍情報とは、前記車両の周辺環境を検出するセンサから取得した、車両周辺の情報であり、
前記遠方情報とは、地図情報を記録した地図情報記憶部から取得した、車両周辺の情報であることを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項8】
車両の近傍情報を取得するステップと、
前記車両の遠方情報を取得するステップと、
前記近傍情報と前記遠方情報に基づいて、前記車両の走行目標となる速度指令値を生成するステップと、
を備えることを特徴とする車両運動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運動を制御する車両運動制御装置、および、車両運動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転支援や自動運転に代表される車両運動制御技術の一種として、車両の走行目標となる走行経路や走行速度といった情報で構成される走行軌道を生成し、その走行軌道に沿って車両が走行するようにパワートレイン、ブレーキ、ステアリングなどを制御する技術が知られている。最も単純な走行経路制御としては、例えば、車線中央を走行経路に設定する車線維持制御がある。
【0003】
また、より高度な走行経路制御技術としては、特許文献1に開示されるものがある。例えば、特許文献1の請求項1には、「上記周辺車両検出部によって検出された周辺車両の周囲に許容可能な相対速度の上限値を規定した制限速度分布を設定する速度分布設定部と、この速度分布設定部によって設定された制限速度分布を満足するように自車両の速度及び/又は操舵を制御する制御部と、を有し、上記速度分布設定部は、上記車両情報受信部により周辺車両の走行状態に関する情報を取得できた場合と、取得できない場合で異なる制限速度分布を設定する」車両制御装置が記載されており、また、請求項2には、「周辺車両の走行状態に関する情報を取得できない場合には、上記制限速度分布における制限速度を低下させる」車両制御装置が記載されている。
【0004】
このように、特許文献1には、自車両とその周辺を走行している周辺車両の間の相対速度の制限値設定による車両運動制御を対象としており、周辺車両の走行状態に関する情報の取得の可否によってその設定を変え、周辺車両の走行状態に関する情報が取得できない場合は制限速度を下げることで周辺車両の挙動によって自車両で急な減速や操舵が行われ、運転者に不安感を与えるのを抑制する車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の車両制御装置は、自車センサでは検知できない、遠方のカーブなどを考慮した自車速度を設定して乗員の乗り心地や快適性を改善するものではない。このため、同文献の車両制御装置を利用すると、自車センサが検知した自車両の周辺(近傍)の情報のみを考慮して自車速度を設定した後、所定距離前進した位置で前方のカーブを検出した場合などに、設定速度より自車速度を大きく低下させる必要が生じ、車両の挙動が不安定になることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、自車両の近傍の情報だけでなく遠方の情報も考慮した自車両の速度を設定することで、車両の不安定挙動の発生を抑制する車両運動制御装置、および、車両運動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明の車両運動制御装置は、車両の近傍情報を取得する近傍情報取得部と、前記車両の遠方情報を取得する遠方情報取得部と、前記近傍情報と前記遠方情報に基づいて、前記車両の走行目標となる速度指令値を生成する速度計画部と、を備える車両運動制御装置とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両運動制御装置または車両運動制御方法によれば、自車両の近傍の情報と遠方の情報の双方を考慮した速度指令値を生成することで、急制動などの車両に生じる不安定挙動を抑制することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施例1の走行軌道生成ユニットの機能ブロック図。
【
図4】実施例1の走行速度生成部の処理概要を示すフローチャート。
【
図6A】走行経路Aの走行時に従来の制御を使用する場合の経路指令値グラフ。
【
図6B】走行経路Aの走行時に従来の制御を使用する場合の速度指令値グラフ。
【
図6C】走行経路Aの走行時に実施例1の制御を使用する場合の遠方経路グラフ。
【
図6D】走行経路Aの走行時に実施例1の制御を使用する場合の速度指令値グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車両運動制御装置の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似する構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。また、周知技術についても、その説明を省略する場合がある。
【実施例0012】
まず、
図1から
図6Dを用い、本発明の実施例1の車両運動制御装置2を説明する。
【0013】
<車載システム1>
図1は、本実施例の車両運動制御装置2を有する車載システム1の機能ブロック図である。車載システム1は、自車両に搭載され、運転支援や自動運転などの車両運動制御を実行するためのシステムであり、図示するように、車外通信装置11、GNSS(Global Navigation Satellite System)12、地図情報記憶部13、センサ14、HMI(human machine interface)ユニット15、車両運動制御装置2、パワートレインシステム6、ブレーキシステム7、ステリングシステム8を有する。以下、順次説明する。
【0014】
<車両運動制御装置2の情報源群>
車外通信装置11は、無線通信により、自車両と他車両の間の車車間通信、又は、自車両と路側機の間の路車間通信を実行し、車両や周辺環境などの情報を、送受信する。
【0015】
GNSS12は、準天頂衛星やGPS(Global Positioning System)衛星などの人工衛星から発信される電波を受信し、自車両の位置などの情報を取得する。
【0016】
地図情報記憶部13は、ナビゲーションシステムなどで使用される一般的な道路情報、道路の幅や道路の曲率などのカーブに関する情報を有する道路情報、路面状況や交通状況などの情報、他車両の走行状態の情報である、車両や周辺環境などの情報を記憶する。なお、車両や周辺環境などの情報は、車外通信装置11を介して、車車間通信や路車間通信で取得される情報により、逐次更新される。
【0017】
センサ14は、画像センサ、ミリ波レーダ、ライダーなどの車両や周辺環境などの情報を検出する外界認識センサや、ドライバによる操作、車両の速度、加速度、加加速度、角速度、車輪の操舵角などの情報を検出するセンサである。外界認識センサにより検出する車両や周辺環境などの情報は、例えば、自車両の周辺に存在する障害物、標識、車線境界線、車線外側線、建造物、歩行者、他の車両などの各種物体の情報である。また、センサ14は、例えば、画像センサが撮像する画像データの白線と路面の輝度との差に基づいて、車線境界線や車線外側線などを認識する。
【0018】
HMIユニット15は、走行モードの選択や目的地の設定などのユーザの入力操作により受け付けられる情報、車外通信装置11、GNSS12、センサ14により取得される情報、地図情報記憶部13に記録される情報から、ユーザが必要とする情報を、ディスプレイに表示し、スピーカから音声案内する。また、HMIユニット15は、ユーザに注意喚起する警報を発生する。
【0019】
ここで、走行モードには、例えば、コンフォートモード、エコノミモード、スポーツモードなどがあり、走行モードは、ユーザが任意に設定し、若しくは、ユーザが予め設定し、又は、走行状況情報に基づいて後述の運行管理ユニット3により設定され、車両の速度、加速度、加加速度などが設定される。つまり、走行モードにより、車両の挙動の上限値が変化する。また、走行モードには、移動時間を最短にする最短時間モードや移動距離を最短にする最短距離モードなどがある。
【0020】
<車両運動制御装置2>
車両運動制御装置2は、
図1に示すように、運行管理ユニット3、走行軌道生成ユニット4、走行制御ユニット5を有する。この車両運動制御装置2は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、半導体メモリなどの主記憶装置や補助記憶装置、及び、通信装置などのハードウェアを有し、車両を統括制御するECU(Electronic Control Unit)であり、主記憶装置にロードされるプログラムを演算装置で実行することにより、運行管理ユニット3等の様々な機能を実現するものである。なお、本実施例では、説明の都合上、運行管理ユニット3、走行軌道生成ユニット4、走行制御ユニット5は分離した構成を有するが、必ずしも分離した構成を有する必要はなく、これらユニットを実際の車両に使用する場合には、上位のコントローラにより、これらユニットの様々な機能を実現してもよい。
【0021】
運行管理ユニット3は、車外通信装置11、GNSS12、センサ14により取得される情報、地図情報記憶部13に記録される地図情報に基づいて、自車両の位置の情報、自車両の周辺に存在する各種物体の情報(車両や周辺環境などの情報)、横加速度、ヨーレイト、横加加速度といった車両の挙動に関する情報を生成する。また、運行管理ユニット3は、これら自車両の位置の情報、各種物体の情報、車両の挙動に関する情報を、車外通信装置11を介して、定期的に他の車両や路側機に送信すると共に、地図情報記憶部13にも送信し、地図情報記憶部13に記憶される地図情報を逐次更新する。さらに、運行管理ユニット3は、これら自車両の位置の情報、各種物体の情報、車両の挙動に関する情報や、HMIユニット15により受け付けられる情報(例えば、走行モードや目的地)に基づいて、車両の現在位置から目的地までの経路の情報を設定する。なお、以下、運行管理ユニット3により、生成される情報や設定される情報を、「走行状況情報」と称する場合がある。
【0022】
走行軌道生成ユニット4は、
図2に示すように、情報取得部41、経路計画部42、速度計画部43、情報出力部44を有する。走行軌道生成ユニット4は、運行管理ユニット3から送信されて情報取得部41で取得した走行状況情報に基づいて、経路計画部42では車両が道路を走行する際の走行目標となる経路(以下「経路指令値P」と称する)を生成する。ここで、経路指令値Pは、例えば、センサ14などで取得した自車両の近傍の情報、または、地図情報記憶部13などに記録されている遠方の地図情報と前述の近傍の情報を合成した情報、の何れかに基づいて生成した指令値であるが、経路指令値Pの生成方法は限定しない。そして、速度計画部43では、経路指令値Pと走行経路情報に基づいて車両が道路を走行する際の走行目標となる速度(以下「速度指令値」と称する)を生成し、情報出力部44では経路指令値Pと速度指令値といった情報で構成される走行軌道を出力する。なお、速度計画部43の詳細は後述する。
【0023】
走行制御ユニット5は、走行軌道生成ユニット4から出力される走行軌道に、車両が追従して走行するように、目標駆動力、目標制動力、目標操舵角などを設定し、パワートレインシステム6、ブレーキシステム7、ステアリングシステム8を制御する。
【0024】
<車両運動制御装置2の制御対象群>
パワートレインシステム6は、ドライバによる操作や走行制御ユニット5から出力される目標駆動力に基づいて、内燃機関や電動機などにより発生する駆動力を制御する。
【0025】
ブレーキシステム7は、ドライバによる操作や走行制御ユニット5から出力される目標制動力に基づいて、ブレーキキャリパなどにより発生する制動力を制御する。
【0026】
ステアリングシステム8は、ドライバによる操作や走行制御ユニット5から出力される目標操舵角に基づいて、車輪の操舵角を制御する。
【0027】
<速度計画部43>
次に、
図3を用いて、速度計画部43の詳細を説明する。
図3は、速度計画部43の機能ブロック図である。速度計画部43は、車両の位置や速度、挙動の上限値、経路指令値Pなどに基づいて、車両の速度指令値を生成するものであり、情報取得部43a、遠方経路生成部43b、遠方速度生成部43c、走行速度生成部43d、情報出力部43eを有する。以下、順次説明する。
【0028】
情報取得部43aは、運行管理ユニット3から走行状況情報を取得するとともに、経路計画部42から経路指令値Pを取得し、それらを速度計画部43内の各部に出力する。
【0029】
遠方経路生成部43bは、情報取得部43aから取得した走行状況情報に含まれる周辺地図に基づいて、センサ14では検知できない遠方(例えば、自車両の前方200m)までの経路(以下「遠方経路F」と称する)を生成する。なお、経路計画部42で経路指令値Pを生成する際には、自車両と周辺車両の衝突回避など考慮する必要があるため演算負荷が大きく、長距離に対応した経路指令値Pを生成できないので、本実施例では、遠方経路生成部43bで演算負荷の小さい遠方経路Fを生成することで、経路指令値Pでは対応できない遠方の経路情報を補っている。ここで、遠方経路生成部43bで生成される遠方経路Fは、経路指令値Pと始点が同じ経路や、始点が経路指令値Pの終点と同じ経路であっても良く、遠方経路Fの定義を限定しない。
【0030】
遠方速度生成部43cは、情報取得部43aからの走行状況情報と、遠方経路生成部43bからの遠方経路Fに基づいて、自車両が遠方経路Fを走行する際に生じる車両挙動に関する物理量が規定値以内になる速度(以下「遠方速度」と称する)を生成する。ここで、規定値とは、乗り心地等を考慮して予め定めた所定値や、センサ14などで取得した路面摩擦係数に基づく車両限界の値であっても良く、規定値の定義は限定しない。また、車両挙動に関する物理量が規定値以内になる速度とは、横加速度の規定値を走行経路の曲率で除算した値の平方根を求めて得られる定常円旋回を想定した速度や、前後加速度の規定値を積分して求めた速度や、一般的な道路における法定最高速度や任意に定めた制限速度であっても良く、車両挙動に関する物理量が規定値以内になる速度を求める方法は限定しない。
【0031】
走行速度生成部43dは、情報取得部43aからの走行状況情報と経路指令値P、遠方速度生成部43cからの遠方速度に基づいて、自車両が経路指令値Pを走行する際の速度指令値を生成する。ここで、走行速度生成部43dは、遠方経路Fの距離の長さに対して経路指令値Pの距離の長さがほぼ同じ場合には、経路指令値Pのみから速度指令値を生成しても良く、走行速度生成部43dが速度指令値を生成するための入力値の種類は限定しない。また、走行速度生成部43dは、車両運動制御装置2の演算負荷が非常に高い場合や、遠方経路Fの精度が非常に低い場合には、遠方経路Fを用いる優先度を下げたり、遠方経路Fを用いずに速度指令値を生成したりしても良く、走行速度生成部43dが速度指令値を生成するために用いる入力値の選定方法は限定しない。
【0032】
情報出力部43eは、走行速度生成部43dからの速度指令値を情報出力部44へ出力する。
【0033】
<走行速度生成部43dの処理>
次に、
図4のフローチャートを用いて、走行速度生成部43dの処理概要を説明する。
【0034】
まず、ステップS1では、走行速度生成部43dは、情報取得部43aから走行状況情報と経路指令値Pを取得し、遠方速度生成部43cから遠方速度を取得する。
【0035】
次に、ステップS2では、走行速度生成部43dは、ステップS1で取得した走行状況情報と経路指令値Pに基づいて、経路指令値Pのみを走行する際に生じる車両挙動に関する物理量が規定値以内になる速度(以下「近傍速度」と称する)を生成する。
【0036】
ステップS31では、走行速度生成部43dは、ステップS1で取得した遠方速度と、ステップS2で生成した近傍速度に基づいて、経路指令値Pと遠方経路Fの重複範囲で近傍速度が遠方速度より大きいか否かを判定する。そして、近傍速度が遠方速度より大きい場合は(ステップS31、YES)ステップS32に進み、近傍速度が遠方速度以下の場合(ステップS31、NO)ステップS33に進む。ここで、近傍速度と遠方速度の大きさを比較する範囲は、経路指令値Pと遠方経路Fが重複している全ての範囲や、経路指令値Pの終点のみであっても良く、近傍速度と遠方速度の大きさを比較する範囲の定義は限定しない。
【0037】
ステップS32では、走行速度生成部43dは、相対的に低速の遠方速度を選択し、一方、ステップS33では、走行速度生成部43dは、相対的に低速の近傍速度を選択する。
【0038】
ステップS4では、選択された遠方速度または近傍速度に基づいて、自車両が経路指令値Pとその先の遠方経路Fを走行する際に生じる車両挙動に関する物理量が規定値以内になる速度である速度指令値を生成する。
【0039】
ステップS5では、ステップS4で生成した速度指令値を情報出力部43eに出力する。
【0040】
<走行経路A>
次に、自車両Vが
図5の走行経路Aを走行する状況下で時々刻々と生成される経路指令値Pや速度指令値について、
図6Aから
図6Dを用いて説明する。
【0041】
図5は、自車両Vが走行する走行経路Aの平面図であり、ある時間T
nにおいて自車両Vの走行可能領域Rの範囲内に設定された経路指令値Pと遠方経路Fを例示したものである。この走行可能領域Rには、右旋回の始点に変曲点Iが存在し、変曲点Iまでの区間を直線路Sと定義し、変曲点I以降の区間をカーブCと定義する。
図5に示す時間T
nでは、自車両Vのセンサ14は走行可能領域Rのうち直線路Sの領域しか検出できないため、自車両Vの経路計画部42が生成した経路指令値Pは、図中の矢印で例示するように直線状であるが、自車両Vが前進して変曲点Iに近づくと、センサ14がカーブCを検知するため、経路指令値Pは曲線状に変化することになる。
【0042】
図6Aは、
図5の自車両Vに従来制御を使用する場合の経路指令値Pの曲率のグラフであり、
図6Bは、
図6Aの経路指令値Pに基づいて生成された速度指令値の一例である。また、
図6Cは、
図5の自車両Vに本実施例の制御を使用する場合の遠方経路Fの曲率のグラフであり、
図6Dは、
図5の自車両Vに本実施例の制御を使用する場合の速度指令値である。なお、各図は、時間T
nから時間T
n+4の期間に生成された経路指令値等を例示したものであり、各図において、破線は時間T
nの値、点線は時間T
n+1の値、一点鎖線は時間T
n+2の値、長破線は時間T
n+3の値、長二点鎖線は時間T
n+4の値を示す。
【0043】
図6Aに示すように、車両Vが
図5の位置にいる時間T
nの経路指令値Pの曲率は0(直線)である。この時間T
nにおいて、経路指令値Pのみに基づいて速度指令値を生成する従来制御では、前後加速度などの主に自車両Vの前後運動に関する規定値に基づいて速度指令値を生成するため、規定値に対して余裕がある場合には、
図6Bの時間T
nの速度指令値(破線)に示すように、増速する速度指令値が生成される。
【0044】
そして、自車両Vが前進してカーブCに近づくと、
図6Aの時間T
n+2から時間T
n+4の経路指令値Pに示すように、カーブCの曲率に対応する経路指令値Pが生成され、経路指令値Pの曲率に応じ、横加速度などの自車両Vの横運動を含む規定値に基づく、急減速する速度指令値(
図6B参照)が生成される。
【0045】
このように、
図6A,
図6Bに例示した従来制御では、センサ14がカーブCを検知した時間の前後で速度指令値の変化が大きくなるため、前後加速度の規定値内の減速では速度指令値が指定する急減速に追従できず、乗員の乗り心地や快適性を損なう急峻な速度変化が発生することがある。
【0046】
一方、本実施例の速度制御では、
図4のフローチャートで説明したように、時間T
nの時点から、
図6Aに例示した経路指令値Pの曲率に加え、
図6Cに例示するカーブCを含む遠方経路Fの曲率も考慮した速度指令値を生成する。この結果、
図6Dに例示するように、ある時間に生成した速度指令値と次の時間に生成した速度指令値が常に略一致するため、従来制御に比べ速度変化が緩やかになるだけでなく、車両挙動に関する物理量を、乗員の乗り心地や快適性を損なわない規定値以内に収めることができる。
【0047】
従って、本実施例により、速度の変化を緩やかにできるだけでなく、車両挙動に関する物理量を規定値に収められることが分かる。つまり、本実施例の速度制御を採用すれば、従来方法に比較して、急制動などによる自車両の不安定挙動の発生を抑制できるため、乗員の乗り心地が向上する。
走行速度候補生成部43fは、情報取得部43aからの走行状況情報と経路指令値P、及び、遠方速度生成部43cからの遠方速度に基づいて、経路指令値Pと遠方経路Fの何れかあるいは両方を走行する時に生じる車両挙動に関する物理量が規定値以内になる複数の速度指令値を生成し、走行速度選択部43gに出力する。
走行速度選択部43gは、情報取得部43aからの走行状況情報が示す現状の走行モード(最短時間モードやエコノミモードなど)、及び、走行速度候補生成部43fからの複数の速度指令値候補に基づいて、1つを速度指令値として選択し、情報出力部43eが走行制御ユニット5に出力する。例えば、走行状況情報が最短時間モードを示す場合には、走行速度候補生成部43fが生成した複数の速度指令値候補の中から、移動時間が最短の速度指令値候補を選択し、走行状況情報がエコノミモードを示す場合には、複数の速度指令値候補の中から消費エネルギが最小の速度指令値候補を選択する。つまり、走行速度選択部43gでは、複数の速度指令値候補の中から移動時間が最短の速度指令値を選択したり、複数の速度指令値候補から消費エネルギが最小の速度指令値を選択したりする。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。