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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182068
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】燃料電池用イオン交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221201BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M8/04 N
C02F1/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089382
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塚本 啓介
(72)【発明者】
【氏名】森下 豪人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 洋志
【テーマコード(参考)】
4D025
5H127
【Fターム(参考)】
4D025AA06
4D025BA24
4D025BB15
4D025BB18
5H127AB04
5H127AC01
5H127AC03
5H127CC07
5H127EE22
(57)【要約】
【課題】取付対象に対する取付姿勢の自由度を向上できる燃料電池用イオン交換器を提供する。
【解決手段】燃料電池の冷却水回路に設けられるイオン交換器10は、イオン交換樹脂を収容するハウジング20であり、冷却水を内部に導入する導入部及びイオン交換樹脂を通過した冷却水を導出する導出部41を有するハウジング20と、ハウジング20に対して着脱自在に設けられて取付対象に対して取り付けられる取付部材60とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の冷却水回路に設けられるイオン交換器であって、
イオン交換樹脂を収容するハウジングであり、冷却水を内部に導入する導入部及び前記イオン交換樹脂を通過した冷却水を導出する導出部を有するハウジングと、
前記ハウジングに対して着脱自在に設けられて取付対象に対して取り付けられる取付部材と、を備える、
燃料電池用イオン交換器。
【請求項2】
前記ハウジングは、第1開口を有する有底筒状の第1ケーシングと、第2開口を有するとともに、前記第1開口を通じて前記第1ケーシングの内部に挿入されて前記第1開口を塞ぐ有底筒状の第2ケーシングと、を備え、
前記イオン交換樹脂を収容するとともに、前記第2開口を通じて前記第2ケーシングの内部に挿入される筒状のカートリッジを備え、
前記導入部は、前記第1ケーシングに設けられており、
前記導出部は、前記第1ケーシング及び前記第2ケーシングの少なくとも一方に設けられており、
前記取付部材は、前記第1ケーシングに対して着脱自在に設けられている、
請求項1に記載の燃料電池用イオン交換器。
【請求項3】
前記第1ケーシングの周方向を単に周方向とするとき、
前記第1ケーシングの外周面には、複数の係合凸部が前記周方向において所定の間隔をあけて設けられており、
前記取付部材は、前記周方向に延びる本体部と、前記本体部から前記第1ケーシングの外周側に延びる取付部と、を有しており、
前記本体部の内周面には、前記係合凸部に係合される複数の係合凹部が前記周方向において前記所定の間隔をあけて設けられている、
請求項2に記載の燃料電池用イオン交換器。
【請求項4】
燃料電池の冷却水回路に設けられるイオン交換器であって、
第1開口を有する有底筒状の第1ケーシングと、
第2開口を有するとともに、前記第1開口を通じて前記第1ケーシングの内部に挿入されて記第1開口を塞ぐ有底筒状の第2ケーシングと、
イオン交換樹脂を収容するとともに、前記第2開口を通じて前記第2ケーシングの内部に挿入される筒状のカートリッジと、を備え、
前記第1ケーシングには、冷却水を導入する導入部が設けられており、
前記第2ケーシングには、前記イオン交換樹脂を通過した冷却水を導出する導出部が設けられており、
前記第1ケーシングには、取付対象に対して取り付けられる取付部が設けられており、
前記第1ケーシングの内周面には、規制凸部が設けられており、
前記第2ケーシングの外周面には、前記第2ケーシングの周方向に延びるとともに前記規制凸部を収容して前記規制凸部の前記周方向の一側への移動を規制する規制凹部が設けられており、
前記規制凹部は、前記周方向において所定の間隔をあけて複数設けられている、
燃料電池用イオン交換器。
【請求項5】
前記第2ケーシングの外周面には、係止凸部が設けられており、
前記第1ケーシングの内周面には、前記係止凸部を収容するとともに前記規制凹部と同数の係止凹部が前記第1ケーシングの周方向において前記所定の間隔をあけて設けられており、
前記係止凹部は、前記規制凹部により前記規制凸部の前記周方向の前記一側への移動が規制されている状態において、前記係止凸部の前記周方向の前記一側とは反対側への移動を規制する、
請求項4に記載の燃料電池用イオン交換器。
【請求項6】
前記取付部は、前記第1ケーシングに対して着脱自在に構成されている、
請求項4または請求項5に記載の燃料電池用イオン交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用イオン交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、発電部を冷却するための冷却水が流通する冷却水回路が設けられている。また、冷却水回路には、冷却水に含まれる金属イオンなどをイオン交換樹脂に吸着させて除去するイオン交換器が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のイオン交換器は、下側ケーシング、上側ケーシング、及びカートリッジを備えている。
下側ケーシングは、上部に開口を有する有底筒状である。下側ケーシングの下部には、導入ポートが設けられている。下側ケーシングの周壁の上部には、導出ポートが設けられている。
【0004】
上側ケーシングは、蓋部と、同蓋部から下方に延びるとともに下部に開口を有する筒状部とを有している。筒状部には、上記導出ポートに連通する連通孔が設けられている。
カートリッジは、筒状部の下部の開口を通じて筒状部の内部に組み付けられている。カートリッジには、イオン交換樹脂が収容されている。
【0005】
上側ケーシングは、カートリッジが取り付けられた状態で下側ケーシングの開口を通じて周壁の内部に組み付けられている。
下側ケーシングには、ブラケットが一体に形成されている。イオン交換器は、ブラケットを介して取付対象に対して取り付けられる。
【0006】
こうしたイオン交換器においては、導入ポートを通じて下側ケーシングの内部に冷却水が導入されると、冷却水は、カートリッジの内部を上方に向かって流れるとともに、上側ケーシングの連通孔を通じて導出ポートへと導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-110841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした燃料電池用イオン交換器においては、取付対象に対するイオン交換器の取付姿勢の自由度の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための燃料電池用イオン交換器は、イオン交換樹脂を収容するハウジングであり、冷却水を内部に導入する導入部及び前記イオン交換樹脂を通過した冷却水を導出する導出部を有するハウジングと、前記ハウジングに対して着脱自在に設けられて取付対象に対して取り付けられる取付部材と、を備える。
【0010】
同構成によれば、ハウジングに対する取付部材の装着姿勢を変更したり、形状の異なる取付部材に変更したりすることが可能となる。したがって、取付対象に対するイオン交換器の取付姿勢の自由度を向上できる。
【0011】
また、上記課題を解決するための燃料電池用イオン交換器は、第1開口を有する有底筒状の第1ケーシングと、第2開口を有するとともに、前記第1開口を通じて前記第1ケーシングの内部に挿入されて記第1開口を塞ぐ有底筒状の第2ケーシングと、イオン交換樹脂を収容するとともに、前記第2開口を通じて前記第2ケーシングの内部に挿入される筒状のカートリッジと、を備えている。前記第1ケーシングには、冷却水を導入する導入部が設けられており、前記第2ケーシングには、前記イオン交換樹脂を通過した冷却水を導出する導出部が設けられており、前記第1ケーシングには、取付対象に対して取り付けられる取付部が設けられており、前記第1ケーシングの内周面には、規制凸部が設けられており、前記第2ケーシングの外周面には、前記第2ケーシングの周方向に延びるとともに前記規制凸部を収容して前記規制凸部の前記周方向の一側への移動を規制する規制凹部が設けられており、前記規制凹部は、前記周方向において所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0012】
同構成によれば、第1開口を通じて第1ケーシングの内部に第2ケーシングを挿入して相対回転させると、第1ケーシングの内周面に設けられた規制凸部が、第2ケーシングの外周面に設けられた規制凹部内を周方向に相対移動する。そして、規制凸部が規制凹部の周方向における端に当接すると、規制凸部の周方向の一側への移動が規制凹部によって規制されることで、第1ケーシングに対して第2ケーシングが組み付けられる。
【0013】
また、上記構成によれば、上記規制凹部が、周方向において所定の間隔をあけて複数設けられている。このため、規制凸部を収容する規制凹部を変更することによって、第1ケーシングに対して組み付けられる第2ケーシングの周方向における位置を変更することができる。これにより、第1ケーシングに対する導出部の位置を変更することができる。したがって、取付対象に対するイオン交換器の取付姿勢の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃料電池用イオン交換器の一実施形態について、イオン交換器が適用される燃料電池の冷却水回路の概略図。
図2】イオン交換器の斜視図。
図3】イオン交換器の分解斜視図。
図4】第2ケーシングの側面図。
図5】カートリッジの側面図。
図6】第1ケーシングの中心軸線に沿う断面図。
図7】イオン交換器の中心軸線に沿う断面図。
図8】(a)、(b)は、第2ケーシングに対してカートリッジを組み付ける過程を示す斜視図、(c)は、(b)の一部を拡大して示す側面図。
図9】(a)、(b)は、第1ケーシングに対して第2ケーシングを組み付ける過程を示す斜視図。
図10】イオン交換器の平面図であって、(a)は、第1位置にて取り付けられた取付部材を示す図、(b)は、第2位置にて取り付けられた取付部材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図10を参照して、一実施形態について説明する。なお、本実施形態の燃料電池用イオン交換器(以下、イオン交換器10)は、車載燃料電池の冷却水回路に適用されるものである。
【0016】
図1に示すように、燃料電池の冷却水回路91には、冷却水を吸引して吐出するポンプ92、燃料電池90、及び外気との熱交換により冷却水を冷却する熱交換器93が設けられている。また、冷却水回路91には、熱交換器93を迂回する迂回路94が設けられている。迂回路94の途中には、冷却水に含まれるイオンを吸着して除去するイオン交換器10が設けられている。迂回路94の下流端には、三方弁95が設けられている。
【0017】
図2及び図3に示すように、イオン交換器10は、イオン交換樹脂51を収容するハウジング20と、ハウジング20に対して着脱自在に設けられて取付対象である燃料電池スタック(図示略)に対して取り付けられる取付部材60とを備えている。
【0018】
ハウジング20は、冷却水を内部に導入する導入部31及びイオン交換樹脂51を通過した冷却水を導出する導出部41を有している。
ハウジング20は、第1開口32を有する有底筒状の第1ケーシング30と、第2開口42を有するとともに、第1開口32を通じて第1ケーシング30の内部に挿入されて第1開口32を塞ぐ有底筒状の第2ケーシング40とを有している。
【0019】
また、イオン交換器10は、イオン交換樹脂51を収容するとともに、第2開口42を通じて第2ケーシング40の内部に挿入される筒状のカートリッジ50を備えている。
第1ケーシング30、第2ケーシング40、及びカートリッジ50は、硬質樹脂材料によって形成されている。
【0020】
なお、第1ケーシング30、第2ケーシング40、及びカートリッジ50は、同一の中心軸線Xを有していることから、以降において、同中心軸線Xに沿う方向を軸線方向Aとして説明する。
【0021】
また、上記中心軸線Xを中心とする第1ケーシング30、第2ケーシング40、及びカートリッジ50の周方向を単に周方向Cとして説明する。
<第1ケーシング30>
図2及び図3に示すように、第1ケーシング30は、第1開口32を取り囲む筒状の周壁33と、周壁33の第1開口32とは反対側を塞ぐ底壁34とを有している。底壁34には、冷却水を導入する筒状の導入部31が設けられている。導入部31は、底壁34から軸線方向Aに延びている。導入部31には、迂回路94と導入部31とを接続する接続部材80が接続されている。接続部材80は、軸線方向Aに延びるとともに屈曲して軸線方向Aと直交する方向に延びており、側面視L字状である。導入部31が、接続部材80の接続口81に挿入されている。
【0022】
第1ケーシング30の外周面33bには、取付部材60が係合される複数の係合凸部37が周方向Cにおいて所定の間隔をあけて設けられている。係合凸部37は、軸線方向Aに延びる三角柱状である。本実施形態では、12個の係合凸部37が30度の位相間隔をあけて設けられている。
【0023】
<第2ケーシング40>
図3及び図4に示すように、第2ケーシング40は、第1開口32の内部に挿入される筒状部40a及び筒状部40aから第1ケーシング30の底壁34とは反対側に向かって突出する蓋部40bを有している。
【0024】
筒状部40aは、底壁34に向かって開口する第2開口42を有している。
蓋部40bの外径は、筒状部40aの外径よりも小さい。蓋部40bは、頂壁44を有している。
【0025】
筒状部40aと蓋部40bとの間には、外周側に向かって突出するフランジ40cが設けられている。フランジ40cは、第2ケーシング40が第1ケーシング30に挿入された状態において、第1開口32を塞ぐように構成されている。
【0026】
蓋部40bの外周面には、導出部41が突設されている。導出部41は、蓋部40bの内部と連通している。筒状部40aの外周面43bには、シール溝43cが設けられている。シール溝43cには、第2ケーシング40の外周面43bと第1ケーシング30の内周面33aとの間をシールする環状のシール部材96が設けられている。
【0027】
図3及び図4に示すように、筒状部40aには、周方向Cに延びるガイド孔70が設けられている。ガイド孔70は、筒状部40aを貫通している。ガイド孔70は、第2開口42の縁部に開口するとともに軸線方向Aにおいて第2開口42とは反対側に向かって延びる第1部分70aと、第1部分70aに対して屈曲するとともに周方向Cに延びる第2部分70bとを有している。
【0028】
第1部分70aの先端部における周方向Cの幅は、第2開口42に近づくほど大きくなっている。
筒状部40aには、軸線方向Aにおいてガイド孔70を両側から挟むとともに周方向Cに延びる一対の孔71が設けられている。ガイド孔70と孔71とは互いに近接して設けられている。
【0029】
第2部分70bの途中には、第2部分70bの幅、すなわち軸線方向Aの長さが部分的に小さくされた絞り部72が設けられている。
ガイド孔70は、周方向Cにおいて間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、2つのガイド孔70が、180度の位相間隔をあけて設けられている。
【0030】
<カートリッジ50>
図3及び図7に示すように、カートリッジ50の両端の開口には、メッシュ52が設けられている。両方のメッシュ52によって、カートリッジ50からのイオン交換樹脂51の漏出が阻止されるとともに、冷却水の流通が許容されている。
【0031】
図3及び図5に示すように、カートリッジ50の外周面には、径方向に突出する複数の突起53が設けられている。複数の突起53は、上記ガイド孔70に対応して、周方向Cにおいて互いに間隔をあけて設けられている。本実施形態では、2つの突起53が180度の位相間隔をあけて設けられている。
【0032】
図8(b)及び図8(c)に示すように、第2ケーシング40に対してカートリッジ50が組み付けられた状態において、突起53は、ガイド孔70の第2部分70bの先端70cと絞り部72との間に位置している。突起53は、先端70cと絞り部72とによって、周方向Cの双方における移動が規制されている。
【0033】
<規制機構100>
図3及び図6に示すように、第1ケーシング30の内周面33aには、規制凸部35が設けられている。規制凸部35は、周方向Cにおいて所定の間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、4つの規制凸部35が、90度の位相間隔をあけて設けられている。
【0034】
図4に示すように、第2ケーシング40の外周面43bには、規制凹部45が設けられている。より詳しくは、筒状部40aの外周面43bにおいてガイド孔70が設けられている部分とフランジ40cとの間の部分の外径は、ガイド孔70が設けられている部分の外径よりも大きい。この外径が大きくされている部分に、上記規制凹部45が設けられている。
【0035】
規制凹部45は、第2開口42に向かって開口する開口部45aと、開口部45aに連なるとともに軸線方向A及び周方向Cの双方に対して傾斜して延びる傾斜部45bと、傾斜部45bに連なるとともに周方向Cに延びるスライド部45cとを有している。
【0036】
規制凹部45は、周方向Cにおいて所定の間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、4つの規制凹部45が、90度の位相間隔をあけて設けられている。
図9(b)に示すように、第1ケーシング30に対して第2ケーシング40が組み付けられた状態において、第1ケーシング30の規制凸部35は、規制凹部45のスライド部45cの先端側の部分に収容されている。このとき、規制凸部35の周方向Cの一側への移動が規制凹部45の先端によって規制されている。
【0037】
規制凸部35と規制凹部45とによって、第1ケーシング30に対する第2ケーシング40の回転を規制する規制機構100が構成されている。
<係止機構110>
図3図4図7及び図8に示すように、第2ケーシング40の外周面43bには、1つの係止凸部46が設けられている。より詳しくは、筒状部40aにおいて規制凹部45が設けられている部分とフランジ40cとの間の部分には、周方向Cに延在するとともに係止凸部46を含む延在部47が設けられている。
【0038】
筒状部40aには、延在部47を弾性変形させやすくするためのスリット48及び切欠部49が設けられている。スリット48は、延在部47の軸線方向Aの両側において周方向Cに延びる一対の直線部48aと、直線部48aの一端同士を連通する連通部48bとを有している。
【0039】
切欠部49は、フランジ40cに開口するとともに延在部47の内周側に設けられている。したがって、延在部47は、片持ちにて筒状部40aの本体部分に連結されている。
図2図3図6図7及び図9に示すように、第1ケーシング30の内周面33aには、係止凸部46を収容するとともに規制凹部45と同数の係止凹部36が周方向Cにおいて所定の間隔をあけて設けられている。
【0040】
係止凹部36は、第1ケーシング30の周壁33を貫通している。本実施形態では、4つの係止凹部36が、90度の位相間隔をあけて設けられている。
図9(b)に示すように、係止凹部36は、規制凹部45により規制凸部35の周方向Cの一側への移動が規制されている状態において、係止凸部46に当接することで係止凸部46の周方向Cの一側とは反対側への移動を規制する。
【0041】
係止凹部36と係止凸部46とによって、係止機構110が構成されている。
<取付部材60>
図2図3、及び図10に示すように、取付部材60は、第1ケーシング30の周壁33の外周面33bに対して、着脱自在に設けられている。
【0042】
取付部材60は、硬質樹脂材料によって形成されている。
取付部材60は、周方向Cに延びる円弧状の本体部61と、本体部61から第1ケーシング30の外周側に延びる取付部62とを有している。取付部62は、本体部61の周方向Cの両端に設けられている。
【0043】
本体部61の内周面61aには、第1ケーシング30の係合凸部37に係合される複数の係合凹部63が周方向Cにおいて所定の間隔をあけて設けられている。
本実施形態では、7個の係合凹部63が、周方向Cにおいて係合凸部37同士の間隔と同一の所定の間隔をあけて設けられている。
【0044】
次に、イオン交換器10の組み付け手順について説明する。
まず、第2ケーシング40に対してカートリッジ50を組み付ける手順について説明する。
【0045】
第2開口42を通じて第2ケーシング40の内部にカートリッジ50を挿入する。
このとき、図8(a)に示すように、突起53が、ガイド孔70の第1部分70a内に挿入されて第1部分70aと第2部分70bとの間の屈曲部分の内壁に当接するまで移動する。
【0046】
次に、図8(b)及び図8(c)に示すように、カートリッジ50に対して第2ケーシング40を矢印B方向に回転させることにより、突起53が、第2部分70b内を第2部分70bの先端側に向かって移動する。
【0047】
このとき、図8(c)に二点鎖線にて示すように、突起53が絞り部72を通過する際に、絞り部72の幅が広がるように絞り部72の縁部が弾性変形する。本実施形態では、第2部分70bの両側に一対の孔71が設けられているため、絞り部72の縁部が弾性変形しやすい。
【0048】
次に、カートリッジ50が組み付けられた第2ケーシング40を第1ケーシング30に対して組み付ける手順について説明する。
まず、第1開口32を通じて第1ケーシング30の内部に第2ケーシング40を挿入する。
【0049】
次に、第1ケーシング30に対して第2ケーシング40を矢印B方向に回転させることにより、規制凸部35は、規制凹部45の開口部45a、傾斜部45b、及びスライド部45cの順に相対移動する。
【0050】
図9(a)には、規制凸部35が傾斜部45b内に位置している状態を示している。
このとき、係止凸部46を含む延在部47は、切欠部49に向かって、すなわち内周側に向かって弾性変形しつつ回転する。
【0051】
図9(b)に示すように、規制凸部35がスライド部45cの先端まで移動すると、係止凸部46は、係止凹部36内に収容される。
このようにしてイオン交換器10が組み付けられる。
図7に示すように、イオン交換器10においては、接続部材80及び導入部31を通じて第1ケーシング30の内部に冷却水が導入される。冷却水は、カートリッジ50の内部を同図の上方に向かって流れるとともに、第2ケーシング40の蓋部40bの内部へ移動する。そして、冷却水は、導出部41を通じてイオン交換器10の外部に導出される。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図10(a)に示すように、第1ケーシング30の外周面33bに対して取付部材60が取り付けられると、第1ケーシング30の外周面33bに設けられた複数の係合凸部37に、本体部61の内周面61aに設けられた複数の係合凹部63が係合される。これにより、第1ケーシング30の外周面33bに対して取付部材60が周方向Cに相対回転することが規制される。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)取付部材60は、第1ケーシング30に対して着脱自在に設けられている。
こうした構成によれば、第1ケーシング30に対する取付部材60の装着姿勢を変更することが可能となる。したがって、取付対象である燃料電池スタックに対するイオン交換器10の取付姿勢の自由度を向上できる。
【0054】
(2)第1ケーシング30の外周面33bには、複数の係合凸部37が周方向Cにおいて所定の間隔をあけて設けられている。取付部材60は、周方向Cに延びる本体部61と、本体部61から第1ケーシング30の外周側に延びる取付部62とを有している。本体部61の内周面61aには、係合凸部37に係合される複数の係合凹部63が周方向Cにおいて上記所定の間隔をあけて設けられている。
【0055】
こうした構成によれば、上記作用を奏する。また、複数の係合凸部37及び複数の係合凹部63が、周方向Cにおいて同一の間隔にて設けられている。このため、図10(a)及び図10(b)に示すように、互いに係合される係合凸部37と係合凹部63とを変更することによって、第1ケーシング30に対して装着される取付部材60の周方向Cにおける位置を変更することができる。
【0056】
(3)第1ケーシング30の内周面33aには、規制凸部35が設けられている。また、第2ケーシング40の外周面43bには、周方向Cに延びるとともに規制凸部35を収容して規制凸部35の周方向Cの一側への移動を規制する規制凹部45が設けられている。規制凹部45は、周方向Cにおいて所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0057】
こうした構成によれば、規制凸部35を収容する規制凹部45を変更することによって、第1ケーシング30に対して組み付けられる第2ケーシング40の周方向Cにおける位置を変更することができる。これにより、第1ケーシング30に対する導出部41の位置を変更することができる。したがって、取付対象に対するイオン交換器10の取付姿勢の自由度を向上できる。
【0058】
(4)第2ケーシング40の外周面43bには、係止凸部46が設けられている。また、第1ケーシング30の内周面33aには、係止凸部46を収容するとともに規制凹部45と同数の係止凹部36が第1ケーシング30の周方向Cにおいて所定の間隔をあけて設けられている。係止凹部36は、規制凹部45により規制凸部35の周方向Cの一側への移動が規制されている状態において、係止凸部46の周方向Cの一側とは反対側への移動を規制する。
【0059】
こうした構成によれば、第1ケーシング30に対して第2ケーシング40が組み付けられると、第2ケーシング40の外周面43bに設けられた係止凸部46が、第1ケーシング30の内周面33aに設けられた係止凹部36に係止される。これにより、規制凹部45により規制凸部35の周方向Cの一側への移動が規制されている状態において、係止凸部46の周方向Cの一側とは反対側への移動が規制される。
【0060】
また、上記構成によれば、規制凹部45と同数の係止凹部36が、周方向Cにおいて所定の間隔をあけて設けられている。このため、規制凸部35を収容する規制凹部45を変更した場合であっても、係止凸部46がいずれかの係止凹部36に収容される。したがって、第1ケーシング30に対して組み付けられる第2ケーシング40の周方向Cにおける位置を変更した場合であっても、第1ケーシング30と第2ケーシング40との相対回動を規制することができる。
【0061】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・接続部材80の屈曲角度を適宜変更することができる。
・接続部材80を省略することもできる。この場合、導入部31を接続部材80のように屈曲させてもよい。
【0063】
・第1ケーシング30の係合凸部37は三角柱状に限定されず、半円柱状などの他の形状にしてもよい。この場合、係合凸部37の形状に応じて取付部材60の係合凹部63を適宜変更すればよい。
【0064】
・ハウジング20に1つの固定部を設けるとともに、同固定部に対して取付部材を着脱自在に設けるようにしてもよい。この場合であっても、形状の異なる取付部材に変更することで、取付対象に対するハウジング20の取付姿勢の自由度を向上できる。
【0065】
・例えば、第1ケーシング30の周壁33が軸線方向Aにおいて第2ケーシング40の頂壁44の位置まで延びている構成の場合には、第2ケーシング40の周壁及び第1ケーシング30の周壁33の双方に導出部を設けることができる。すなわち、周壁33に筒状の導出部を設けるとともに、第2ケーシング40の周壁に導出部に連通する導出部を設ければよい。
【0066】
・第1ケーシング30からの第2ケーシング40の抜け出しを規制する他の構成を採用する場合には、係止凹部36及び係止凸部46を省略することもできる。
・取付部材60に代えて、取付部62が第1ケーシング30と一体に設けられるものであってもよい。この場合であっても、上記効果(3),(4)を奏することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…イオン交換器
20…ハウジング
30…第1ケーシング
31…導入部
32…第1開口
33…周壁
33a…内周面
33b…外周面
34…底壁
35…規制凸部
36…係止凹部
37…係合凸部
40…第2ケーシング
40a…筒状部
40b…蓋部
40c…フランジ
41…導出部
42…第2開口
43b…外周面
43c…シール溝
44…頂壁
45…規制凹部
45a…開口部
45b…傾斜部
45c…スライド部
46…係止凸部
47…延在部
48…スリット
48a…直線部
48b…連通部
49…切欠部
50…カートリッジ
51…イオン交換樹脂
52…メッシュ
53…突起
60…取付部材
61…本体部
61a…内周面
62…取付部
63…係合凹部
70…ガイド孔
70a…第1部分
70b…第2部分
70c…先端
71…孔
72…絞り部
80…接続部材
81…接続口
90…燃料電池
91…冷却水回路
92…ポンプ
93…熱交換器
94…迂回路
95…三方弁
96…シール部材
100…規制機構
110…係止機構
図1
図2
図3
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