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特開2022-182069ステータ、モータの冷却構造、及びステータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182069
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ステータ、モータの冷却構造、及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20221201BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089383
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榊原 孝頼
【テーマコード(参考)】
5H609
5H615
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ16
5H609QQ18
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP08
5H615PP13
5H615PP14
5H615QQ12
5H615SS04
5H615SS09
(57)【要約】
【課題】ステータの冷却効率を高めることができるステータ、モータの冷却構造、及びステータの製造方法を提供する。
【解決手段】ステータ30は、環状のヨーク41、ヨーク41から径方向の内側に突出した複数のティース42、及び周方向において互いに隣り合うティース42同士の間に形成された複数のスロット43を有するステータコア40と、スロット43の内部に配置されたコイル50とを備える。スロット43の内部には、ステータコア40の軸線方向に延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプ60が、ステータコア40の径方向においてコイル50と並んで設けられている。パイプ60の外周面は、スロット43の内面及びコイル50の外面の双方に密着している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨーク、前記ヨークから径方向の内側に突出した複数のティース、及び周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に形成された複数のスロットを有するステータコアと、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備えるステータであって、
前記スロットの内部には、前記ステータコアの軸線方向に延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプが、前記径方向において前記コイルと並んで設けられており、
前記パイプの外周面は、前記スロットの内面及び前記コイルの外面の双方に密着している、
ステータ。
【請求項2】
前記パイプは、前記スロットの内部において前記コイルよりも前記径方向の外側に設けられており、
前記パイプの外周面は、前記パイプの周方向の全体にわたって前記スロットの内面及び前記コイルの外面の双方に密着している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記ステータコアの前記軸線方向における端面に設けられた樹脂プレートを備え、
前記パイプは、前記スロットから前記軸線方向において前記端面よりも突出した突出部を有しており、
前記突出部の外周面には、前記パイプの内外を連通する連通孔が設けられており、
前記樹脂プレートの内部には、前記径方向に開口するとともに前記連通孔に前記冷媒を供給する供給路が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記複数のスロットの各々の内部には、前記パイプが設けられており、
前記樹脂プレートの内部には、前記パイプの各々の前記連通孔に前記冷媒を供給する複数の前記供給路と、前記周方向に延びるとともに前記供給路の各々を連通する連通路とが設けられている、
請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記樹脂プレートの内部には、前記連通路から分岐して延びるとともに、前記コイルのうち前記スロットから前記軸線方向において突出したコイルエンドに向けて前記冷媒を供給する分岐供給路が設けられている、
請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記径方向と鉛直方向とが一致するように配置された請求項3~請求項5のいずれか一項に記載のステータと、
前記ステータの鉛直方向の上方に配置され、前記ステータに向けて前記冷媒を吐出する冷媒パイプと、を備え、
前記冷媒パイプは、前記樹脂プレートの前記供給路に向けて前記冷媒を吐出する吐出口を有している、
モータの冷却構造。
【請求項7】
環状のヨーク、前記ヨークから径方向の内側に突出した複数のティース、及び周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に形成された複数のスロットを有するステータコアと、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備えるステータの製造方法であって、
前記スロットの内部に前記ステータコアの軸線方向に沿って延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプを配置するパイプ配置工程と、
前記スロットの内部に前記コイルを配置するコイル配置工程と、
前記スロットの内部に配置された前記パイプと前記コイルとを一括して押圧することで、前記パイプが前記パイプの周方向において前記スロットの内面及び前記コイルの外面の双方に密着するように前記パイプを塑性変形させる押圧工程と、を備える、
ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、モータの冷却構造、及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを構成するステータは、複数のスロットを有するステータコアと、スロットの内部に配置されたコイルとを備えている。モータにおいては、通電に伴うコイルの発熱によってステータ全体が発熱するため、オイルなどの冷媒を吹き付けることでステータの冷却が行われることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のモータの冷却構造では、ステータコアの径方向と鉛直方向とが一致するようにステータが配置されている。ステータの上方には、ステータに冷媒を供給する供給路が設けられている。供給路は、ステータの上方においてステータコアの軸線方向に延びる主供給路と、主供給路から分岐して延びる複数の副供給路とを有している。副供給路は、コイルのうち軸線方向においてスロットから突出したコイルエンドを指向している。これにより、コイルエンドに冷媒が供給されることで、コイルエンドを介してコイルが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-102983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のモータの冷却構造では、コイルエンドには冷媒が供給される一方、コイルのうちスロットの内部に配置された部分には冷媒が供給されない。このため、ステータを冷却させる上では、なお改善の余地を残している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのステータは、環状のヨーク、前記ヨークから径方向の内側に突出した複数のティース、及び周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に形成された複数のスロットを有するステータコアと、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備えるステータであって、前記スロットの内部には、前記ステータコアの軸線方向に延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプが、前記径方向において前記コイルと並んで設けられており、前記パイプの外周面は、前記スロットの内面及び前記コイルの外面の双方に密着している。
【0007】
同構成によれば、スロットの内部に金属製のパイプが設けられている。パイプの外周面は、スロットの内面及びコイルの外面の双方に密着しているため、パイプの内部に冷媒を流すことで、当該パイプを介してステータコアとコイルとを冷却することができる。これにより、ステータの内部を冷却することができる。したがって、ステータの冷却効率を高めることができる。
【0008】
上記課題を解決するためのステータの製造方法は、環状のヨーク、前記ヨークから径方向の内側に突出した複数のティース、及び周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に形成された複数のスロットを有するステータコアと、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備えるステータの製造方法であって、前記スロットの内部に前記ステータコアの軸線方向に沿って延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプを配置するパイプ配置工程と、前記スロットの内部に前記コイルを配置するコイル配置工程と、前記スロットの内部に配置された前記パイプと前記コイルとを一括して押圧することで、前記パイプが前記パイプの周方向において前記スロットの内面及び前記コイルの外面の双方に密着するように前記パイプを塑性変形させる押圧工程と、を備える。
【0009】
同方法によれば、上記ステータの作用効果に準じた作用効果を奏するステータを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態におけるモータを示す断面図。
図2】ステータにおけるスロットの内部を示す断面図。
図3図1の3-3線に沿った断面図。
図4図3の4-4線に沿った断面図。
図5図4のA部における拡大断面図。
図6図4のB部における拡大断面図。
図7図4のC部における拡大断面図。
図8】ステータの製造方法におけるパイプ配置工程を示す断面図。
図9】ステータの製造方法におけるコイル配置工程を示す断面図。
図10】ステータの製造方法における押圧工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図10を参照して、ステータ、モータの冷却構造、及びステータの製造方法の一実施形態について説明する。
各図面においては、構成の一部が誇張または簡略化されている場合がある。また、各図面においては、各構成の寸法比率が実際とは異なる場合がある。
【0012】
(モータ10)
図1に示すように、モータ10は、ロータ20と、ステータ30とを備えている。ロータ20及びステータ30は、図示しないハウジングに収容されている。ステータ30は、円筒状をなしている。本実施形態のモータ10は、ステータ30の内側においてロータ20が回転自在に設けられた所謂インナーロータ型である。モータ10は、ステータ30の径方向と鉛直方向とが一致する姿勢にて配置されている。
【0013】
モータ10は、ステータ30に向けて冷媒を吐出する冷媒パイプ90を備えている。冷媒パイプ90は、上記ハウジングの内部におけるステータ30の上方に配置されている。冷媒としては、例えばオートマチックトランスミッションオイルが用いられる。
【0014】
(ロータ20)
図示は省略するが、ロータ20は、複数の磁極を構成する円筒状の回転体と、回転体に一体に設けられた回転軸とを有している。回転体の内部には、例えば、複数の永久磁石が収容されている。
【0015】
(ステータ30)
図1図3に示すように、ステータ30は、ステータコア40と、コイル50と、複数のパイプ60と、樹脂プレート70,80とを備えている。ステータコア40は、円筒状をなしている。コイル50は、ステータコア40に巻回されている。各パイプ60は、ステータコア40の内部に設けられている。樹脂プレート70,80は、ステータコア40の軸線方向における一端面及び他端面にそれぞれ設けられている。なお、図1では、樹脂プレート70の一部が破断されて図示されている。
【0016】
以降において、ステータコア40の軸線方向、径方向、及び周方向を単にそれぞれ軸線方向、径方向、及び周方向と称する。
(ステータコア40)
図1及び図2に示すように、ステータコア40は、ヨーク41と、複数のティース42と、複数のスロット43とを有している。ヨーク41は円環状をなしている。複数のティース42は、ヨーク41から径方向の内側に突出するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。スロット43は、周方向において隣り合うティース42同士の間に1つずつ形成されている。各スロット43は、径方向の内側及び軸線方向の両側において開口している。各スロット43の内部には、スロット43の内面を覆う図示しない絶縁紙が設けられている。
【0017】
図1に示すように、ステータコア40は、ヨーク41から径方向の外側に突出した3つの固定部44を有している。3つの固定部44は、周方向に互いに間隔をおいて設けられている。各固定部44には、固定部44を軸線方向に貫通するボルト孔44aが設けられている。ボルト孔44aに挿入された図示しないボルトが上記ハウジングに締結されることで、ステータ30がハウジングに対して固定されている。
【0018】
こうしたステータコア40は、例えば、軸線方向において積層された複数の電磁鋼板が互いに接合されることにより構成されている。
(コイル50)
コイル50は、U相、V相、及びW相を構成する3つの相巻線により構成されている。各相巻線は、複数のティース42に跨がって巻回されている。各相巻線は、例えば、U字状に形成された図示しない複数のセグメントコイルが互いに接合されることにより構成されている。
【0019】
コイル50は、導体と、導体の外周を被覆する絶縁被覆とを有している。導体は、例えばアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。各図においては、絶縁被覆の図示が省略されている。
【0020】
コイル50の長さ方向に直交する断面形状は、例えば、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。
図3に示すように、コイル50は、配置部51と、コイルエンド52a,52bとを有している。配置部51は、コイル50のうちスロット43の内部に配置された部分である。コイルエンド52a,52bは、コイル50のうち配置部51から軸線方向の両側に延びる部分であって、スロット43の外部に配置された部分である。異なる2つのスロット43の内部に配置された配置部51同士は、コイルエンド52a,52bによって連結されている。
【0021】
図2に示すように、各スロット43の内部には、配置部51が径方向に6列に並んだ状態で配置されている。各配置部51は、長辺がスロット43の幅に沿った状態でスロット43の内部に配置されている。本実施形態における配置部51の幅、すなわち長辺の長さは、スロット43の幅と同一である。配置部51の幅方向における両側の外面は、スロット43の内面に密着している。また、径方向において互いに隣り合う配置部51の外面同士は、径方向において密着している。
【0022】
(パイプ60)
各パイプ60は、スロット43の内部においてコイル50よりも径方向の外側に設けられている。より詳しくは、パイプ60は、各スロット43の内部における全ての配置部51よりも径方向の外側に設けられている。本実施形態では、全てのスロット43の内部にパイプ60が1つずつ設けられている。
【0023】
パイプ60は、軸線方向に延びている。パイプ60は、例えば、アルミニウム合金などの金属材料により形成されている。
パイプ60の長さ方向に直交する断面形状は、環状をなしている。同断面形状における外縁及び内縁は、例えば、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。
【0024】
本明細書における「環状」は、端部を有しない連続形状を形成する任意の構造を指す。「環状」の形状には、円形、楕円形、及び尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
パイプ60は、長辺がスロット43の幅に沿った状態でスロット43の内部に配置されている。本実施形態におけるパイプ60の幅、すなわち長辺の長さは、スロット43の幅と同一である。パイプ60の幅方向における両側の外面と、パイプ60の径方向における外側の外面とは、スロット43の内面に密着している。また、パイプ60の径方向における内側の外面は、配置部51の外面に密着している。したがって、スロット43の内部におけるパイプ60の外周面は、パイプ60の周方向の全体にわたってスロット43の内面及び配置部51の外面の双方に密着している。
【0026】
図3に示すように、各パイプ60は、スロット43の軸線方向における両側から突出した2つの突出部61a,61bを有している。突出部61aの端部は、軸線方向において開口している。突出部61bの端部は、軸線方向において閉塞されている。
【0027】
突出部61bの外周面には、パイプ60の内外を連通する連通孔62が設けられている。連通孔62は、突出部61bの外周面のうち径方向における外側の部分に開口している。すなわち、連通孔62は、突出部61bの外周面のうちコイルエンド52bとは反対側の部分に設けられている。連通孔62の断面形状は、例えば円形状をなしている。
【0028】
(樹脂プレート70,80)
図1に示すように、樹脂プレート70は、環状部71と、複数の延在部72とを有している。環状部71は、円環状をなしている。複数の延在部72は、環状部71から径方向の内側に延在するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。樹脂プレート70は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
【0029】
環状部71は、ヨーク41の軸線方向における端面に接触している。環状部71の外径は、ヨーク41の外径よりも小さい。環状部71は、径方向において各パイプ60の突出部61aに接触している。
【0030】
各延在部72は、各ティース42の軸線方向における端面に接触している。延在部72は、平面視においてティース42と同一の形状をなしている。樹脂プレート70には、ティース42と同数の延在部72が設けられている。各延在部72は、周方向においてコイルエンド52aに接触している。
【0031】
図4に示すように、樹脂プレート80は、樹脂プレート70と共通の構造を有している。すなわち、樹脂プレート80は、環状部81と、複数の延在部82とを有している。環状部81は、円環状をなしている。複数の延在部82は、環状部81から径方向の内側に延在するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。樹脂プレート80は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
【0032】
環状部81は、ヨーク41の軸線方向における端面に接触している。環状部81の外径は、ヨーク41の外径よりも小さい。環状部81は、径方向において各パイプ60の突出部61bに接触している。
【0033】
各延在部82は、各ティース42の軸線方向における端面に接触している。延在部82は、平面視においてティース42と同一の形状をなしている。樹脂プレート80には、ティース42と同数の延在部82が設けられている。各延在部82は、周方向においてコイルエンド52bに接触している。
【0034】
図4図6に示すように、樹脂プレート80の内部には、複数の第1供給路83、連通路84、複数の第2供給路85、及び複数の分岐供給路86が設けられている。第1供給路83及び第2供給路85は、供給路の一例である。
【0035】
(第1供給路83)
図5に示すように、各第1供給路83は、樹脂プレート80の径方向における外側及び内側に開口している。より詳しくは、第1供給路83は、環状部81の外周面及び内周面に開口している。第1供給路83は、径方向において環状部81を貫通している。第1供給路83は、パイプ60の連通孔62に連通している。第1供給路83の長さ方向に直交する断面形状は、例えば円形状をなしている。第1供給路83の直径は、例えば連通孔62の直径と同一である。本実施形態の第1供給路83と連通孔62とは段差なく連なっている。
【0036】
図4及び図6に示すように、ステータ30は、連通孔62の開口方向が水平方向と一致した2つのパイプ60を有している。上記2つのパイプ60の長辺は、鉛直方向に沿って延びている。上記2つのパイプ60は、ステータ30の中心軸を挟んで互いに反対側に設けられている。図4に示すように、各第1供給路83は、上記2つのパイプ60よりも上方に位置する複数のパイプ60の各々に対応して設けられている。
【0037】
以降において、上記2つのパイプ60よりも上方に位置する複数のパイプ60を「上方パイプ群」と称することがある。上方パイプ群に含まれるパイプ60の各々における連通孔62は、樹脂プレート80の外周側に向かうほど上方に位置するように開口している。
【0038】
(連通路84)
連通路84は、環状部81の全周にわたって周方向に延びている。すなわち、連通路84は、円環状をなしている。連通路84によって、複数の第1供給路83が連通されている。連通路84の長さ方向に直交する断面形状は、例えば円形状をなしている。
【0039】
(第2供給路85)
図6及び図7に示すように、各第2供給路85は、樹脂プレート80の径方向における内側に開口している。より詳しくは、第2供給路85は、環状部81の内周面に開口している。第2供給路85は、連通路84から径方向の内側に分岐して延びている。換言すると、連通路84によって、複数の第2供給路85が連通されている。第2供給路85の長さ方向に直交する断面形状は、例えば円形状をなしている。
【0040】
図4に示すように、各第2供給路85は、全てのパイプ60のうち上方パイプ群を除く複数のパイプ60の各々に対応して設けられている。したがって、全ての第2供給路85は、全ての第1供給路83よりも下方に位置している。なお、最上位の第2供給路85よりも下方に位置する第2供給路85の各々は、連通路84から樹脂プレート80の内周側に向かうほど上方に位置するように延びている。
【0041】
(分岐供給路86)
図6に示すように、各分岐供給路86は、連通路84から分岐して延びている。各分岐供給路86は、周方向において互いに隣り合う2つの第2供給路85の間に位置している。分岐供給路86は、上記2つの第2供給路85に対して傾斜して延びている。より詳しくは、分岐供給路86は、連通路84から樹脂プレート80の内周側に向かうほど下方に位置するように傾斜して延びている。分岐供給路86の長さ方向に直交する断面形状は、例えば円形状をなしている。
【0042】
分岐供給路86は、延在部82の側面に開口している。図示は省略するが、分岐供給路86の端部は、軸線方向においてステータコア40から離れる方向に延びるとともに、樹脂プレート80の軸線方向における端面に開口している。これにより、分岐供給路86がコイルエンド52bの外周面によって閉塞されることがないため、分岐供給路86の内部に冷媒を流すことができる。
【0043】
(冷媒パイプ90)
図3に示すように、冷媒パイプ90は、冷媒が吐出される複数の吐出口91,92,93,94を有している。本実施形態の冷媒パイプ90は、吐出口91,92,93,94を3つずつ有している。各吐出口91は、コイルエンド52aに向けて冷媒を吐出する。各吐出口92は、ステータコア40の外周面に向けて冷媒を吐出する。各吐出口93は、樹脂プレート80の第1供給路83に向けて冷媒を吐出する。各吐出口94は、コイルエンド52bに向けて冷媒を吐出する。
【0044】
冷媒パイプ90には、図示しないポンプが接続されている。同ポンプが駆動することにより、各吐出口91,92,93,94から冷媒が吐出される。
図4に示すように、3つの吐出口93は、冷媒パイプ90の周方向に互いに間隔をおいて設けられている。こうした配置は、吐出口91,92,94についても同様である。
【0045】
(モータ10の冷却態様)
次に、図3図7を参照して、モータ10の冷却態様について説明する。各図においては、冷媒の流れが矢印によって示されている。
【0046】
図3に示すように、吐出口91から吐出された冷媒は、コイルエンド52aに供給される。吐出口92から吐出された冷媒は、ステータコア40に供給される。吐出口93から吐出された冷媒は、樹脂プレート80に供給される。吐出口94から吐出された冷媒は、コイルエンド52bに供給される。
【0047】
図5に示すように、吐出口93から吐出された冷媒は、第1供給路83に流入する。第1供給路83に流入した冷媒は、当該第1供給路83にそれぞれ連通するパイプ60の内部及び連通路84に流入する。図3に示すように、パイプ60の内部に流入した冷媒は、軸線方向において突出部61bから突出部61aに向かって流れる。これにより、パイプ60の内部を流れた冷媒が突出部61aから流出するとともにコイルエンド52aに供給される。
【0048】
図6に示すように、連通路84に流入した冷媒は、連通路84にそれぞれ連通する第2供給路85及び分岐供給路86に流入する。第2供給路85に流入した冷媒は、パイプ60の内部に流入する。分岐供給路86に流入した冷媒は、コイルエンド52bに供給される。
【0049】
図7に示すように、連通路84に流入した冷媒は、連通路84の下部に貯留される。連通路84の内部に貯留された冷媒の液面が、樹脂プレート80の下部に設けられた第2供給路85を通じてパイプ60の内面に到達すると、冷媒が当該パイプ60の内部に流入する。これにより、冷媒がパイプ60の内部を流れることとなる。
【0050】
以上のようにして、冷媒がステータ30の内外を流れることによって、ステータ30の全体が冷却される。
(ステータ30の製造方法)
ステータ30の製造方法は、パイプ配置工程と、コイル配置工程と、押圧工程とを備えている。本実施形態のステータ30の製造方法では、パイプ配置工程と、コイル配置工程と、押圧工程とがこの順で行われる。
【0051】
(パイプ配置工程)
図8に示すように、パイプ配置工程では、スロット43の内部にパイプ60が配置される。このときのパイプ60の幅は、スロット43の幅よりも小さい。すなわち、パイプ配置工程では、パイプ60が、幅方向においてスロット43との間に隙間を有した状態でスロット43の内部に配置される。
【0052】
(コイル配置工程)
図9に示すように、コイル配置工程では、パイプ60が配置されたスロット43の内部にコイル50の配置部51が配置される。このときの配置部51の幅は、スロット43の幅よりも小さい。すなわち、コイル配置工程では、配置部51が、幅方向においてスロット43との間に隙間を有した状態でスロット43の内部に配置される。
【0053】
コイル配置工程では、6つの配置部51がスロット43の内部において径方向に並んだ状態で配置される。このとき、スロット43の内部には、6つの配置部51と1つのパイプ60とが径方向の内側から外側に向かって順に並んでいる。
【0054】
(押圧工程)
図9及び図10に示すように、押圧工程では、押圧治具100によって、スロット43の内部に配置された各配置部51と、パイプ60とが径方向の外側に向けて一括して押圧される。
【0055】
押圧治具100は、配置部51を押圧する押圧面101を有している。押圧面101は、軸線方向に延びている。押圧面101の軸線方向における長さは、スロット43の軸線方向における長さよりも大きい。押圧治具100の幅は、スロット43の幅と同一である。
【0056】
なお、押圧治具100の幅がスロット43の幅と同一であるとは、完全に同じである場合だけではなく、スロット43の内部における押圧治具100の径方向への移動が可能となる程度に、押圧治具100の幅がスロット43の幅よりも僅かに小さい場合も含む。
【0057】
押圧治具100によって各配置部51とパイプ60とが押圧されることで、各配置部51とパイプ60とがスロット43の内面に沿って塑性変形する。このとき、各配置部51の幅及びパイプ60の幅がスロット43の幅と同一となる。これにより、パイプ60の外周面が、パイプ60の周方向の全体にわたってスロット43の内面及び配置部51の外面の双方に密着する。
【0058】
上述した工程が各スロット43において行われることによってステータ30が製造される。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
(1)ステータ30は、ヨーク41、複数のティース42、及び複数のスロット43を有するステータコア40と、スロット43の内部に配置されたコイル50とを備える。スロット43の内部には、軸線方向に延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプ60が、径方向においてコイル50と並んで設けられている。パイプ60の外周面は、スロット43の内面及びコイル50の外面の双方に密着している。
【0060】
こうした構成によれば、スロット43の内部に金属製のパイプ60が設けられている。パイプ60の外周面は、スロット43の内面及びコイル50の外面の双方に密着しているため、パイプ60の内部に冷媒を流すことで、当該パイプ60を介してステータコア40とコイル50とを冷却することができる。これにより、ステータ30の内部を冷却することができる。したがって、ステータ30の冷却効率を高めることができる。
【0061】
(2)パイプ60は、スロット43の内部においてコイル50よりも径方向の外側に設けられている。パイプ60の外周面は、パイプ60の周方向の全体にわたってスロット43の内面及びコイル50の外面の双方に密着している。
【0062】
こうした構成によれば、パイプ60の外周面がステータコア40とコイル50との双方に対して、より広い範囲にて密着するため、ステータコア40及びコイル50と、パイプ60との間の熱伝達が起こりやすくなる。したがって、ステータ30の冷却効率を一層高めることができる。
【0063】
(3)ステータ30は、ステータコア40の軸線方向における端面に設けられた樹脂プレート80を備える。パイプ60は、スロット43から突出した突出部61bを有している。突出部61bの外周面には、パイプ60の内外を連通する連通孔62が設けられている。樹脂プレート80の内部には、径方向に開口するとともに連通孔62に冷媒を供給する第1供給路83及び第2供給路85が設けられている。
【0064】
こうした構成によれば、樹脂プレート80の内部に設けられた第1供給路83及び第2供給路85を介してパイプ60の内部に冷媒が供給される。これにより、冷媒が樹脂プレート80の内部を流れるため、ステータコア40及び樹脂プレート80の双方が冷却される。したがって、ステータ30の冷却効率をより一層高めることができる。
【0065】
(4)各スロット43の内部には、パイプ60が設けられている。樹脂プレート80の内部には、各パイプ60の連通孔62に冷媒を供給する複数の第1供給路83と、周方向に延びるとともに各第1供給路83を連通する連通路84とが設けられている。
【0066】
こうした構成によれば、連通路84を介して各第1供給路83に冷媒が分配される。これにより、複数のパイプ60の内部に冷媒を流すことができる。したがって、ステータ30の内部におけるより広い範囲を冷却することができる。
【0067】
(5)樹脂プレート80の内部には、連通路84から分岐して延びるとともに、コイルエンド52bに向けて冷媒を供給する分岐供給路86が設けられている。
ステータコア40の径方向と鉛直方向とが一致するようにステータ30が配置される場合には、ステータ30における鉛直方向の下方の部分ほど、連通路84を流れる冷媒が径方向に開口する第2供給路85に流入しにくくなる。このため、第2供給路85を介してパイプ60の内部に冷媒が流入しにくくなる。
【0068】
この点、本実施形態のように、分岐供給路86が連通路84から離れるほど下方に位置するようにステータ30が配置されれば、分岐供給路86に冷媒が流入するようになる。このため、冷媒が分岐供給路86を介してコイルエンド52bに供給されやすくなる。これにより、冷媒が流入しにくいパイプ60と並んで設けられたコイル50のコイルエンド52bを冷却することができる。
【0069】
(6)モータ10は、径方向と鉛直方向とが一致するように配置されたステータ30と、ステータ30の鉛直方向の上方に配置され、ステータ30に向けて冷媒を吐出する冷媒パイプ90とを備えている。冷媒パイプ90は、樹脂プレート80の第1供給路83に向けて冷媒を吐出する吐出口93を有している。
【0070】
こうした構成によれば、冷媒パイプ90の吐出口93から吐出された冷媒が、樹脂プレート80の第1供給路83に流入しやすくなる。このため、第1供給路83を介してパイプ60の内部に冷媒が円滑に供給されやすくなる。これにより、ステータ30の内部を冷却することができる。したがって、ステータ30の冷却効率を高めることができる。
【0071】
(7)ステータ30の製造方法は、パイプ配置工程と、コイル配置工程と、押圧工程とを備える。パイプ配置工程では、スロット43の内部に軸線方向に沿って延びるとともに冷媒が流れる金属製のパイプ60を配置する。コイル配置工程では、スロット43の内部にコイル50を配置する。押圧工程では、スロット43の内部に配置されたパイプ60とコイル50とを一括して押圧することで、パイプ60がパイプ60の周方向においてスロット43の内面及びコイル50の外面の双方に密着するようにパイプ60を塑性変形させる。
【0072】
こうした方法によれば、上記作用効果(1)に準じた作用効果を奏するステータ30を製造することができる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0073】
・コイル50及びパイプ60は、例えば銅合金などのアルミニウム合金とは異なる金属材料により形成されていてもよい。また、コイル50及びパイプ60は、互いに異なる金属材料により形成されていてもよい。
【0074】
・1つのスロット43の内部に配置される配置部51の数は、適宜変更されてもよく、例えば、8つであってもよい。
・樹脂プレート80の延在部82とコイルエンド52bとの間には、周方向において隙間が設けられていてもよい。この場合、分岐供給路86は、軸線方向において開口していなくてもよく、延在部82の側面にのみ開口していてもよい。
【0075】
・各スロット43の内部に複数のパイプ60が設けられていてもよい。
・パイプ60の突出部61a及び突出部61bの双方が軸線方向において開口していてもよい。このとき、突出部61aの流路断面積を突出部61bの流路断面積よりも小さくすることで、突出部61aから流出する冷媒の流量よりも突出部61bから流出する冷媒の流量の方が大きくなるように設定してもよい。
【0076】
・パイプ60は、スロット43の内部において、径方向に並ぶ配置部51同士の間に設けられていてもよいし、全ての配置部51よりも径方向の内側に設けられていてもよい。これらの場合、例えば、連通孔62がパイプ60の幅方向における外面に設けられるとともに、第1供給路83及び第2供給路85が延在部82の側面に開口していることが好ましい。パイプ60が配置部51同士の間に設けられたステータ30の製造においては、第1コイル配置工程と、パイプ配置工程と、第2コイル配置工程と、押圧工程とがこの順で行われる。第1コイル配置工程では、複数の配置部51の一部がスロット43の内部に配置される。第2コイル配置工程では、上記複数の配置部51の一部とパイプ60とが配置されたスロット43の内部に、残りの配置部51が配置される。また、パイプ60が全ての配置部51よりも径方向の内側に設けられたステータ30の製造においては、コイル配置工程の後にパイプ工程が行われる。
【0077】
・冷媒パイプ90は、軸線方向に延びる主流路と、主流路から分岐して延びるとともに吐出口93が設けられた副流路とを有するものであってもよい。
・分岐供給路86は、連通路84からコイルエンド52bに向かうほど軸線方向においてステータコア40から離れるように傾斜して延びていてもよい。
【0078】
・樹脂プレート80から分岐供給路86が省略されてもよい。
・上記実施形態では、各スロット43の内部にパイプ60が1つずつ設けられていたが、複数のスロット43のうち少なくとも1つのスロット43の内部にパイプ60が設けられていてもよい。すなわち、パイプ60が設けられたスロット43と、パイプ60が設けられていないスロット43とが混在していてもよい。この場合、パイプ60が設けられていないスロット43には、パイプ60と同一の外形をなす柱状のダミー部材を設けることが好ましい。これにより、各スロット43の内部におけるコイル50の位置がスロット43毎に異なることを抑制できる。
【0079】
・連通路84は、円弧状に延びるものであってもよい。すなわち、連通路84は、周方向において互いに反対側に位置する2つの端部を有していてもよい。この場合、上記2つの端部は、ステータ30の下部に位置することが好ましい。
【0080】
・パイプ60から突出部61a,61bが省略されてもよい。この場合、軸線方向に開口するパイプ60の端部が、ステータコア40の軸線方向における端面と面一であってもよい。この構成では、樹脂プレート80によって上記端部を軸線方向から覆うとともに、当該端部に連通する第1供給路83及び第2供給路85を設けることができる。
【0081】
・突出部61bに対して、冷媒パイプ90が直接接続されたり、冷媒パイプ90から延びる配管が接続されたりしてもよい。この場合、ステータ30から樹脂プレート70,80が省略されてもよい。
【0082】
・樹脂プレート80は、供給路として第1供給路83及び第2供給路85のどちらか一方のみを有していてもよい。樹脂プレート80が供給路として第2供給路85のみを有する場合には、樹脂プレート80は、環状部81の径方向における外側に開口するとともに連通路84に冷媒を導入する導入路を有していてもよい。この場合、上記導入路及び連通路84を介して第2供給路85に冷媒が流入する。
【0083】
・スロット43の内部におけるパイプ60の外周面は、パイプ60の周方向の全体にわたってスロット43の内面及びコイル50の外面の双方に密着していなくてもよい。スロット43の内部におけるパイプ60の外周面は、パイプ60の周方向においてスロット43の内面及びコイル50の外面のどちらにも接触しない部分を有していてもよい。すなわち、パイプ60の外周面とスロット43の内面との間には、部分的に隙間が設けられていてもよい。同様に、コイル50の外面とスロット43の内面との間には、部分的に隙間が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…モータ
20…ロータ
30…ステータ
40…ステータコア
41…ヨーク
42…ティース
43…スロット
44…固定部
44a…ボルト孔
50…コイル
51…配置部
52a,52b…コイルエンド
60…パイプ
61a,61b…突出部
62…連通孔
70,80…樹脂プレート
71,81…環状部
72,82…延在部
83…第1供給路(供給路)
84…連通路
85…第2供給路(供給路)
86…分岐供給路
90…冷媒パイプ
91,92,93,94…吐出口
100…押圧治具
101…押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10