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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182087
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221201BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G21/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089417
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123375
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】荒川 幸二郎
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA04
2H033BA11
2H033BB12
2H033BB30
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB36
2H033BB37
2H033CA26
2H033CA40
2H270KA04
2H270LA25
2H270LD05
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】センサにおける付着物の堆積を抑制することを目的とする
【解決手段】画像形成装置は、幅方向に延在して回転可能に設けられ、媒体を搬送する回転部材と、回転部材を、画像形成時に媒体を搬送する正方向、および正方向と反対の逆方向に回転させる駆動部と、回転部材の表面に当接するセンサと、幅方向における回転部材とセンサとの相対位置を変更する位置変更部とを有する。画像形成装置は、第1の動作を行う。第1の動作では、駆動部が回転部材を当該逆方向に回転させ、且つ、位置変更部が、幅方向における回転部材とセンサとの相対位置を、回転部材の幅方向の一端とセンサとの距離が第1の距離となる第1の相対位置から、回転部材の一端とセンサとの距離が第2の距離となる第2の相対位置に変更する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に延在して回転可能に設けられ、媒体を搬送する回転部材と、
前記回転部材を、画像形成時に前記媒体を搬送する正方向、および前記正方向と反対の逆方向に回転させる駆動部と、
前記回転部材の表面に当接するセンサと、
前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を変更する位置変更部とを有し、
前記駆動部が前記回転部材を前記逆方向に回転させ、且つ、前記位置変更部が、前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を、前記回転部材の前記幅方向の一端と前記センサとの距離が第1の距離となる第1の相対位置から、前記回転部材の前記一端と前記センサとの距離が第2の距離となる第2の相対位置に変更する、第1の動作を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の動作を行った後、
前記第2の相対位置を維持したまま、前記駆動部が前記回転部材を前記逆方向に回転させる第2の動作を実行し、
さらに、前記駆動部が前記回転部材を前記正方向に回転させ、前記位置変更部が、前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を、前記第2の相対位置から前記第1の相対位置に変更する、第3の動作を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の動作、
前記第2の動作、
前記第3の動作、および、
前記第1の相対位置を維持したまま、前記駆動部が前記回転部材を前記正方向に回転させる第4の動作
を順に行う一連の動作を清掃動作とし、
印刷ジョブに基づいて画像形成を行う画像形成部を備え、
前記印刷ジョブに含まれる印刷ページ数が第1の閾値を超える印刷を前記画像形成部が行った場合に、前記清掃動作を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷ジョブに含まれる印刷ページ数が第2の閾値を超える印刷を前記画像形成部が行った場合に、前記清掃動作を複数回実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第4の動作において前記駆動部が前記回転部材を前記正方向に回転させる回転量は、前記第2の動作において前記駆動部が前記回転部材を前記逆方向に回転させる回転量よりも多い
ことを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記回転部材と、前記回転部材に当接してニップを形成する定着部材とを有し、
前記回転部材と前記定着部材とを互いに接触させ、また離間させる離接機構をさらに備え、
前記第1の動作を行う前に、前記離接機構により前記回転部材と前記定着部材とを互いに離間させる
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記位置変更部は、
前記駆動部の回転が伝達される第1のはす歯ギアと、
前記回転部材に接続され、前記第1のはす歯ギアと噛み合い、前記第1のはす歯ギアの回転を前記回転部材に伝達する第2のはす歯ギアと
を有し、
前記駆動部の回転によって前記回転部材を前記幅方向に移動させることで、前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を変化させる
ことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記位置変更部は、前記回転部材を前記幅方向に移動させる回転部材移動機構を有し、
前記回転部材移動機構が前記回転部材を前記幅方向に移動させることで、前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を変化させる
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
幅方向に延在して回転可能に設けられ、媒体を搬送する回転部材と、
前記回転部材を、画像形成時に前記媒体を搬送する正方向、および前記正方向と反対の逆方向に回転させる駆動部と、
前記回転部材の表面に当接するセンサと、
前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を変更する位置変更部とを有し、
前記位置変更部が、前記幅方向における前記回転部材と前記センサとの相対位置を、前記回転部材の前記幅方向の一端と前記センサとの距離が第1の距離となる第1の相対位置から、前記回転部材の前記一端と前記センサとの距離が第2の距離となる第2の相対位置に変更する、第1の動作と、
前記第2の相対位置を維持したまま、前記駆動部が前記回転部材を前記逆方向に回転させる、第2の動作と
を実行することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、媒体上に画像を形成する画像形成装置に関し、回転部材に接触する接触式のセンサを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-15920号公報(段落0042参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転部材と当接する接触式のセンサの場合、回転部材とセンサとの接触部分に付着物が溜まり、これにより検出精度が低下し、画像品位に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、センサにおける付着物の堆積を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像形成装置は、幅方向に延在して回転可能に設けられ、媒体を搬送する回転部材と、回転部材を、画像形成時に媒体を搬送する正方向、および正方向と反対の逆方向に回転させる駆動部と、回転部材の表面に当接するセンサと、幅方向における回転部材とセンサとの相対位置を変更する位置変更部とを有する。画像形成装置は、第1の動作を実行する。第1の動作では、駆動部が回転部材を当該逆方向に回転させ、且つ、位置変更部が、幅方向における回転部材とセンサとの相対位置を、回転部材の幅方向の一端とセンサとの距離が第1の距離となる第1の相対位置から、回転部材の当該一端とセンサとの距離が第2の距離となる第2の相対位置に変更する。
【0007】
本開示の画像形成装置は、また、幅方向に延在して回転可能に設けられ、媒体を搬送する回転部材と、回転部材を、画像形成時に媒体を搬送する正方向、および正方向と反対の逆方向に回転させる駆動部と、回転部材の表面に当接するセンサと、幅方向における回転部材とセンサとの相対位置を変更する位置変更部とを有する。画像形成部は、第1の動作と第2の動作とを実行する。第1の動作では、位置変更部が、幅方向における回転部材とセンサとの相対位置を、回転部材の幅方向の一端とセンサとの距離が第1の距離となる第1の相対位置から、回転部材の一端とセンサとの距離が第2の距離となる第2の相対位置に変更する。第2の動作では、第2の相対位置を維持したまま、駆動部が回転部材を逆方向に回転させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回転部材を逆方向に回転させ、また、回転部材とセンサとの幅方向における相対位置を変化させるため、センサに堆積した付着物を分散させることができ、これにより画像品位の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態の画像形成装置の基本構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態の定着装置を示す断面図である。
図3】第1の実施の形態の定着ベルトとその内側の構成要素を示す斜視図である。
図4】第1の実施の形態の加圧ローラを示す正面図である。
図5】第1の実施の形態の定着装置を示す斜視図である。
図6】第1の実施の形態の定着装置を示す背面図である。
図7】第1の実施の形態の定着装置の軸受の周囲を示す側面図である。
図8】第1の実施の形態の定着装置の軸受の取り付け構造を示す斜視図である。
図9】第1の実施の形態の定着装置の軸受を示す斜視図である。
図10】第1の実施の形態の定着装置の軸受の取り付け構造を示す断面図である。
図11】第1の実施の形態の定着装置の動作を示す図(A),(B)である。
図12】第1の実施の形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図13】第1の実施の形態の画像形成装置の印刷動作を示すタイミングチャートである。
図14】第1の実施の形態の画像形成装置のクリーニング動作を示すタイミングチャートである。
図15】第1の実施の形態の画像形成装置のクリーニング動作を示すタイミングチャートである。
図16】第1の実施の形態の作用を説明するための模式図(A),(B)である。
図17】第1の実施の形態の作用を説明するための模式図(A),(B)である。
図18】第1の実施の形態の画像形成装置のクリーニング動作を示すフローチャートである。
図19】比較例の定着装置を示す斜視図(A)および正面図(B)である。
図20】第2の実施の形態の画像形成装置の定着装置を示す断面図である。
図21】第2の実施の形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図22】第2の実施の形態の画像形成装置のクリーニング動作を示すタイミングチャートである。
図23】変形例1の画像形成装置の定着装置を示す図(A),(B)である。
図24】変形例2の画像形成装置の定着装置を示す図(A),(B)である。
図25】変形例3の画像形成装置の定着装置を示す図(A),(B)である。
図26】変形例4の画像形成装置の定着装置を示す図(A),(B)である。
図27】変形例4の画像形成装置の定着装置の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施の形態.
<画像形成装置の構成>
まず、第1の実施の形態における画像形成装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態における画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法を用いてカラー画像を形成するプリンタである。
【0011】
画像形成装置1は、印刷用紙等の媒体Pを供給する媒体供給部80と、トナー像を形成する画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cと、トナー像を媒体Pに転写する転写ユニット70と、媒体Pにトナー像を定着する定着装置10と、媒体Pを排出する媒体排出部90と、これらを収容する筐体1Aとを備えている。
【0012】
媒体供給部80は、媒体Pを積載状態で収容する媒体収容部としての給紙トレイ81と、給紙トレイ81に積載された媒体Pを搬送路に送り出すフィードローラ82と、媒体Pを搬送路に沿って搬送する搬送ローラ対83とを有する。
【0013】
画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cは、媒体Pの搬送路に沿って、この順に配列されている。画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cは、それぞれブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのトナー(現像剤)を用いてトナー像を形成する。画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cは、トナーを除いて共通の構成を有するため、「画像形成ユニット60」として説明する。
【0014】
画像形成ユニット(画像形成部)60は、像担持体としての感光体ドラム61と、帯電部材としての帯電ローラ62と、現像剤担持体としての現像ローラ64と、供給部材としての供給ローラ65と、層規制部材としての規制ブレード66と、クリーニング部材67とを有する。感光体ドラム61の表面に対向するように、露光ヘッド63が設けられている。
【0015】
感光体ドラム61は、導電性の基体の表面に感光層(電荷発生層および電荷輸送層)を設けたドラム状の部材であり、後述するメインモータの回転により図中時計回りに回転する。
【0016】
帯電ローラ62は、感光体ドラム61の表面に当接するように配置されたローラであり、感光体ドラム61に追従して回転する。帯電ローラ62は、帯電電圧を付与され、感光体ドラム61の表面を一様に帯電させる。
【0017】
露光ヘッド63は、LED(発光ダイオード)等の発光素子およびレンズアレイを有する。露光ヘッド63は、一様に帯電した感光体ドラム61の表面に光を照射して、静電潜像を形成する。
【0018】
現像ローラ64は、感光体ドラム61に当接するように配置されたローラであり、感光体ドラム61からの回転伝達により回転する。現像ローラ64は、表面にトナーを担持し、感光体ドラム61の表面に形成された潜像を現像する。
【0019】
供給ローラ65は、現像ローラ64に当接または対向するように配置されたローラであり、感光体ドラム61からの回転伝達により回転する。供給ローラ65は、表面にトナーを担持し、現像ローラ64に供給する。
【0020】
規制ブレード66は、現像ローラ64に当接するように配置された金属製のブレードである。規制ブレード66は、現像ローラ64の表面に押し当てられ、現像ローラ64の表面のトナー層の厚さを規制する。
【0021】
クリーニング部材67は、弾性体で構成されたローラまたはブレードであり、感光体ドラム61の表面に残存したトナーを掻き取る。
【0022】
また、各画像形成ユニット60には、現像ローラ64および供給ローラ65にトナーを供給する現像剤供給部としてのトナーカートリッジ68が着脱可能に備えられている。
【0023】
転写ユニット70は、画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cの各感光体ドラム61に対向するように配置された4つの転写ローラ71と、各感光体ドラム61と転写ローラ71との間を通過する無端状の転写ベルト72を有する。転写ベルト72は、ベルト駆動ローラ73およびテンションローラ74に張架されている。
【0024】
転写ローラ71には、感光体ドラム61に形成されたトナー像を媒体Pに転写するための転写電圧が印可される。転写ベルト72は、媒体Pを静電気力により吸着保持して搬送する。ベルト駆動ローラ73は、無端状の転写ベルト72を駆動する。テンションローラ74は、転写ベルト72に張力を付与する。
【0025】
定着装置10は、媒体Pの搬送路に沿って画像形成ユニット60の下流側に配置されている。定着装置10は、定着ベルト11と加圧ローラ18とを有し、媒体P上のトナー像に熱と圧力を加えて媒体Pに定着させる。定着装置10の構成については、後述する。
【0026】
媒体排出部90は、媒体Pの搬送路に沿って定着装置10の下流側に配置されている。媒体排出部90は、トナー像が定着した媒体Pを装置外に排出する排出ローラ対91,92を有する。画像形成装置1の上部カバー1Bには、排出された媒体Pを載置するためのスタッカ部93が設けられている。
【0027】
また、媒体Pの搬送路に沿って、媒体Pの位置を検知するセンサM1~M4が配置されている。給紙センサM1は搬送ローラ対83の上流側に配置され、書き出しセンサM2は搬送ローラ対83の下流側に配置されている。定着INセンサM3は定着装置10の上流側に配置され、定着OUTセンサM4は定着装置10の下流側に配置されている。これらのセンサM1~M4の出力信号に基づき、媒体Pの搬送制御あるいは露光ヘッド63の発光タイミングの制御が行われる。
【0028】
図1において、感光体ドラム61の軸方向を、X方向とする。X方向は、定着ベルト11の幅方向であり、画像形成装置1内の各ローラの軸方向でもある。媒体Pが定着装置10を通過するときの搬送方向(媒体Pの移動方向)を、Y方向とする。X方向とY方向に直交する方向を、Z方向とする。
【0029】
Y方向については、媒体Pが定着装置10を通過するときの搬送方向を+Y方向とし、その反対方向を-Y方向とする。X方向については、+Y方向を向いて右手方向を+X方向とし、左手方向を-X方向とする。Z方向については、図1の上方向を+Z方向とし、下方向を-Z方向とする。
【0030】
<定着装置の構成>
次に、定着装置10の構成要素について説明する。図2は、定着装置10を示す断面図である。定着装置10は、無端状ベルトである定着部材としての定着ベルト11と、定着ベルト11の内周側に配置されたヒータ15と、定着ベルト11の外周側に配置された回転部材(または加圧部材)としての加圧ローラ18とを有する。
【0031】
図3は、定着ベルト11と、その内周側に配置された構成要素を示す斜視図である。上記の通り、定着ベルト11の幅方向はX方向である。定着ベルト11の外径は、例えば、18mmである。定着ベルト11の周長は、例えば、約57mmである。
【0032】
定着ベルト11は、基層と、基層の表面を覆う離型層とを有する。基層と離型層の間に、弾性層を設けてもよい。基層は、ニッケル若しくはステンレス鋼(SUS)等の金属、またはポリイミド(PI)等の樹脂で形成される。離型層は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂で形成される。弾性層は、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、またはフッ素ゴム等のゴム材料で形成される。
【0033】
定着ベルト11の内周側には、ステイ12と、ヒータ支持部材13と、ヒータセンサ14と、ヒータ15とが配置されている。
【0034】
ステイ12は、X方向に長い部材であり、X方向に直交する面において略コの字状の断面を有する。より具体的には、ステイ12は、Y方向に相対する2つの側板部12bと、側板部12bの上端同士をつなぐ天板部12aとを有する。ステイ12は、例えば板金で形成され、ヒータ支持部材13、ヒータセンサ14およびヒータ15を支持する。ステイ12のX方向の両端は、後述する可動フレーム23に固定されている。
【0035】
ヒータ支持部材13は、ステイ12の下側(-Z方向)に固定されている。ヒータ支持部材13は、ステイ12の2つの側板部12bの内側に固定される2つの側板部13bと、側板部13bの下端同士をつなぐ底板部13aとを有して構成される。ヒータ支持部材13は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂で形成される。
【0036】
ヒータ15は、定着ベルト11を加熱する面状ヒータである。ヒータ15は、絶縁性と強度を有する基材層と、電熱線からなる発熱層と、発熱層を両面から覆う絶縁層と、発熱層を電気的に接続される導線層とを有する。ヒータ15は、発熱層への電流供給によって発熱する。ヒータ15の上面は、ヒータ支持部材13の底板部13aに取り付けられている。
【0037】
ヒータセンサ14は、ヒータ支持部材13に支持されている。ヒータセンサ14は、また、ヒータ支持部材13に形成された開口部を介して、ヒータ15の上面に当接している。ヒータセンサ14は、ヒータ15の温度を検知し、検知信号を出力する。ヒータセンサ14の出力信号は、後述するヒータ制御部113(図12)に送られ、これに基づいてヒータ15の温度制御が行われる。
【0038】
定着ベルト11は、X方向(すなわち幅方向)の両端において、一対のベルトガイド17によって支持されている。ベルトガイド17は、定着ベルト11を内周側から支持する円筒部17aと、定着ベルト11の幅方向端面に当接する環状部17bとを有する。ベルトガイド17は、後述する可動フレーム23に取り付けられている。
【0039】
図2に示すように、加圧ローラ18は、定着ベルト11の下方に配置されている。加圧ローラ18の軸方向は、X方向である。加圧ローラ18の外径は、例えば、25mmである。加圧ローラ18の周長は、例えば、約79mmである。
【0040】
加圧ローラ18は、芯金18aと、芯金18aの表面に形成された弾性層18bと、弾性層18bの表面を覆う離型層18cとを有する。芯金18aは、金属で形成される。弾性層18bは、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム等の樹脂で形成される。離型層18cは、PFA、PTFE等の樹脂で構成される。
【0041】
加圧ローラ18は、後述する付勢部材24の付勢力によって定着ベルト11に押圧され、弾性層18bが押し潰されることにより定着ニップが形成される。また、加圧ローラ18は、後述する定着モータ43からの回転伝達により回転する。
【0042】
図4は、加圧ローラ18を示す正面図である。図4に示すように、加圧ローラ18の軸方向両端には、X方向に延在する軸部18eが形成されている。加圧ローラ18の各軸部18eは、後述する軸受25によって回転可能に支持されている。
【0043】
加圧ローラ18における各軸部18eの根元部分には、軸部18eよりも直径の太い大径部18dが形成されている。軸部18eおよび大径部18dは、芯金18a(図2)の一部である。大径部18dは、X方向に直交する端面であるストッパ面18fを有する。
【0044】
加圧ローラ18は、後述するようにX方向に所定量(例えば6mm)移動する。上記のストッパ面18fは、加圧ローラ18の+X方向および-X方向に移動した際のストッパとして機能する。加圧ローラ18の一方の軸部18eの先端部(符号Hで示す)には、定着ギア41が取り付けられる。
【0045】
加圧ローラ18の軸方向において、弾性層18b(図2)および離型層18cを含む部分を、ローラ部分と称する。加圧ローラ18のローラ部分は、定着ベルト11との間で定着ニップを形成する。
【0046】
図5および図6は、定着装置10を示す斜視図および正面図である。図5および図6に示すように、定着装置10は、X方向に相対するフレームとしての一対のサイドフレーム21と、サイドフレーム21の下端をつなぐ底部フレーム20とを有する。
【0047】
上述した定着ベルト11、ステイ12、ヒータ支持部材13、ヒータセンサ14、ヒータ15、および加圧ローラ18は、一対のサイドフレーム21の間に配置されている。また、加圧ローラ18は、これら一対のサイドフレーム21によって回転可能に支持されている。
【0048】
一対のサイドフレーム21のX方向の内側には、一対の可動フレーム23が設けられている。各可動フレーム23は板金で構成され、各サイドフレーム21に設けられたX方向の支軸22により回動可能に支持されている。支軸22は、定着ベルト11と加圧ローラ18との間の定着ニップよりも上流側すなわち-Y方向に配置されている。各可動フレーム23は、支軸22に係合する支軸受け部23a(図2)を有する。
【0049】
各可動フレーム23には、ステイ12(図3)のX方向端部が固定されている。また、各可動フレーム23には、定着ベルト11を支持するベルトガイド17が取り付けられている。これにより、一対の可動フレーム23は、一対のベルトガイド17を介して定着ベルト11を支持し、且つ、ステイ12とそれに支持される各構成要素(ヒータ支持部材13、ヒータセンサ14およびヒータ15)を支持する。
【0050】
図5に示すように、定着装置10は、可動フレーム23を付勢する付勢部材24を有する。付勢部材24は、例えばコイルばねである。付勢部材24の一端は、可動フレーム23に形成された係合片23bに固定され、他端は、サイドフレーム21に形成された係合片21aに固定されている。付勢部材24は、図5に矢印C1で示す方向に可動フレーム23を付勢する。
【0051】
加圧ローラ18の+X方向の軸部18eには、第1のはす歯ギアとしての定着ギア41が取り付けられている。定着ギア41には、第2のはす歯ギアとしての駆動ギア42が噛み合っている。駆動ギア42は、画像形成装置1の筐体内に設けられた支持部に支持されている。駆動ギア42には、後述する定着モータ43から回転が伝達される。定着ギア41および駆動ギア42はいずれも、はす歯ギアである。
【0052】
定着ギア41のモジュールは1、歯数は27、圧力角は20度、ねじれ角は20度であり、ねじれ方向は右ねじれである。駆動ギア42のモジュールは1、歯数は31、圧力角は20度、ねじれ角は20度であり、ねじれ方向は左ねじれである。
【0053】
定着ギア41および駆動ギア42が共にはす歯ギアであるため、回転時には両者の間にX方向(スラスト方向)の力が作用する。また、加圧ローラ18の各軸部18eは、X方向の所定の移動量をカバーするだけの長さを有する。加圧ローラ18のX方向の移動量は、ここでは6mmである。
【0054】
加圧ローラ18がX方向に移動しても定着ギア41と駆動ギア42との噛み合いが外れないよう、駆動ギア42のX方向の幅は、定着ギア41のX方向の幅よりも広く設定されている。加圧ローラ18のX方向の移動量を6mmとすると、定着ギア41の幅は8mmであり、駆動ギア42の幅は18mmである。
【0055】
図7は、定着装置10を示す側面図である。図8は、サイドフレーム21における軸受25の取り付け構造を示す分解斜視図である。図9は、軸受25の形状を示す斜視図である。図10は、サイドフレーム21における軸受25の取り付け構造を示す断面図である。
【0056】
図7および図8に示すように、加圧ローラ18の各軸部18eは、軸受25によってサイドフレーム21に支持されている。軸受25は、サイドフレーム21に形成された溝部21b(図8)に取り付けられている。
【0057】
図9に示すように、軸受25は、加圧ローラ18の軸方向(X方向)に対向する一対のフランジ部25a,25bと、これらの間に配置された胴部25cを有する。
【0058】
フランジ部25a,25bは胴部25cの外周よりも外側に張り出している。フランジ部25a,25bおよび胴部25cはいずれも正方形であるが、これに限定されるものではない。フランジ部25a,25bのX方向の間隔は、サイドフレーム21の厚さよりも僅かに広い。
【0059】
サイドフレーム21の溝部21bに軸受25を取り付けると、図10に示すように、軸受25の胴部25cが溝部21bに係合し、フランジ部25a,25bがサイドフレーム21をX方向両側から挟み込む。そのため、加圧ローラ18がX方向に移動しても、軸受25がサイドフレーム21の溝部21bから外れることがない。
【0060】
図5に示すように、定着装置10は、加圧ローラ18の表面温度を検出するセンサ(温度センサ)としてのサーミスタ30を備える。サーミスタ30は、素子である温度検出部31と、温度検出部31を保持する接触部32と、接触部32を片持ち梁状に支持する板バネ部33と、板バネ部33の下端を支持する筐体部34とを有する。
【0061】
サーミスタ30の筐体部34は、定着装置10の底部フレーム20の取り付け辺20a(図8)に固定されている。板バネ部33は、筐体部34から+Z方向に延在している。接触部32は、耐熱性と絶縁性を有するポリイミド樹脂製のテープで構成され、温度検出部31である素子を両面から挟み込んでいる。接触部32と加圧ローラ18との接触幅は、X方向において5mmである。
【0062】
板バネ部33のバネ特性を考慮し、接触部32の温度検出部31が一定の押圧力で加圧ローラ18の表面に押し当てられるように、筐体部34が底部フレーム20に固定されている。なお、筐体部34は、ヒータ制御部113(図12)に検知信号を出力するリード線を内蔵している。
【0063】
図11(A),(B)は、ギア41,42の作用を説明するための図である。図11(A)は、定着ベルト11および加圧ローラ18が正方向に回転している状態を示す。図11(B)は、定着ベルト11および加圧ローラ18が逆方向に回転している状態を示す。
【0064】
ここで、正方向とは、画像形成時(印刷動作)時の定着ベルト11および加圧ローラ18の回転方向を言う。逆方向とは、正方向と反対の方向を言う。
【0065】
また、定着装置10に対して未定着の媒体Pが搬入される側を上流側とし、定着済の媒体Pが排出される側を下流側とすると、上流側から下流側に媒体Pを搬送する際の加圧ローラ18の回転方向を、正方向と称する。
【0066】
図11(A),(B)には、加圧ローラ18の回転の正方向を矢印R1で示し、逆方向を矢印R2で示す。以下では、正方向をR1方向と称し、逆方向をR2方向と称する。
【0067】
上記の通り、加圧ローラ18の軸部18eには定着ギア41が固定され、定着ギア41は駆動ギア42と噛み合っている。定着モータ43(図12)の回転によって駆動ギア42が回転し、この駆動ギア42に噛み合う定着ギア41が回転することにより、加圧ローラ18が回転する。
【0068】
図11(A)に示すように、加圧ローラ18がR1方向に回転すると、はす歯ギアである定着ギア41と駆動ギア42との噛み合いにより、定着ギア41に-X方向の力が作用し、加圧ローラ18が-X方向に付勢される。
【0069】
この付勢力により、加圧ローラ18は-X方向に移動し、加圧ローラ18の-X側のストッパ面18fが軸受25に当接することにより、加圧ローラ18のX方向の位置が定まる。このときの加圧ローラ18のX方向の位置を、通常位置と称する。
【0070】
加圧ローラ18が通常位置にあるとき、加圧ローラ18の-X方向の端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D1(第1の距離)である。画像形成時の定着動作は、加圧ローラ18が通常位置にある状態で行われる。加圧ローラ18が通常位置にあるときの加圧ローラ18とサーミスタ30との相対位置を、第1の相対位置と称する。
【0071】
図11(B)に示すように、加圧ローラ18がR2方向に回転すると、定着ギア41と駆動ギア42との噛み合いにより、定着ギア41に+X方向の力が作用し、加圧ローラ18が+X方向に付勢される。
【0072】
この付勢力により、加圧ローラ18は+X方向に移動し、加圧ローラ18の+X側のストッパ面18fが軸受25に当接することにより、加圧ローラ18のX方向の位置が定まる。このときの加圧ローラ18のX方向の位置を、清掃位置と称する。
【0073】
加圧ローラ18が清掃位置にあるとき、加圧ローラ18の-X方向の端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D2(第2の距離)である。加圧ローラ18が清掃位置にあるときの加圧ローラ18とサーミスタ30との相対位置を、第2の相対位置と称する。
【0074】
図11(A),(B)に示すように、定着ベルト11は可動フレーム23に固定され、サーミスタ30は底部フレーム20に固定されているため、加圧ローラ18がX方向に移動しても、定着ベルト11およびサーミスタ30はX方向に移動しない。すなわち、加圧ローラ18と定着ベルト11およびサーミスタ30とのX方向の相対位置が変化する。
【0075】
定着ギア41および駆動ギア42は、加圧ローラ18とサーミスタ30とのX方向の相対位置を変更する位置変更部を構成する。定着ギア41および駆動ギア42は、定着モータ43と共に、加圧ローラ18を回転させる回転部を構成する。
【0076】
なお、図11(A),(B)では、距離D1,D2を、加圧ローラ18のローラ部分の-X方向の端部からサーミスタ30までのX方向距離として示しているが、加圧ローラ18の軸部18eの-X方向の端部からサーミスタ30までのX方向距離としてもよい。
【0077】
<画像形成装置の制御系>
次に、画像形成装置1の制御系について説明する。図12は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。図12では、画像形成装置1の制御系のうち、上位装置からの印刷コマンドおよび印刷データの受信および処理に関する部分は省略している。
【0078】
画像形成装置1は、制御部100を有する。制御部100は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等を有する。制御部100は、上位装置から受信した印刷コマンドおよび印刷データに基づき、画像形成装置1の印刷動作を行う。制御部100は、また、印刷カウント記憶部101と、清掃カウント記憶部102とを有するが、これらについては、後述する。
【0079】
画像形成装置1は、さらに、センサ群103と、操作部104と、表示部105と、帯電電圧制御部106と、現像電圧制御部107と、転写電圧制御部108と、ヘッド制御部109と、メインモータ制御部110と、定着制御部111と、搬送モータ制御部114と、ベルト駆動制御部115とを備える。
【0080】
センサ群103は、搬送路における媒体Pの位置を検出するためのセンサ、具体的には、給紙センサM1、書き出しセンサM2、定着INセンサM3、および定着OUTセンサM4を含む。センサ群103は、また、図示しない温度センサ、湿度センサおよび濃度センサ等を含む。
【0081】
操作部104は、操作者が指示を入力するためのスイッチおよびキー等を有する。表示部105は、画像形成装置1の状態を表示するディスプレイ(例えばLED)を有する。操作部104および表示部105は、例えば操作パネルとして、上部カバー1B等に配置されている。
【0082】
帯電電圧制御部106は、帯電ローラ62に印加される帯電電圧を制御する。帯電ローラ62に印加される帯電電圧により、感光体ドラム61の表面が一様に帯電する。
【0083】
現像電圧制御部107は、現像ローラ64に印加される現像電圧を制御する。現像ローラ64に印加される現像電圧により、感光体ドラム61の表面の静電潜像が現像される。
【0084】
転写電圧制御部108は、転写ローラ71に印加される現像電圧を制御する。転写ローラ71に印加される現像電圧により、感光体ドラム61のトナー像が転写ベルト72上の媒体Pに転写される。
【0085】
ヘッド制御部109は、各色のイメージデータに基づき、露光ヘッド63の発光を制御する。露光ヘッド63の発光により、感光体ドラム61の表面が露光され、静電潜像が形成される。
【0086】
メインモータ制御部110は、感光体ドラム61を回転駆動するメインモータ120の回転を制御する。メインモータ120の回転は、感光体ドラム61の他、現像ローラ64および供給ローラ65にも伝達される。
【0087】
定着制御部111は、モータ制御部112とヒータ制御部113とを有する。モータ制御部112は、加圧ローラ18を回転させる定着モータ43の回転を制御する。モータ制御部112は、また、サーミスタ30の出力信号を受信し、加圧ローラ18の表面温度の検出値から、加圧ローラ18の外径の熱膨張量を反映した速度補正値を算出する。
【0088】
モータ制御部112は、印刷速度に相当する加圧ローラ18の回転速度に対して、上記の速度補正値を加味した回転速度となるように、定着モータ43を制御する。定着モータ43の回転は、上述した駆動ギア42および定着ギア41を介して加圧ローラ18に伝達される。なお、排出ローラ対91,92も、定着モータ43からの回転伝達によって回転する。
【0089】
定着制御部111のヒータ制御部113は、上述したヒータセンサ14の出力信号を受信する。ヒータ制御部113は、ヒータセンサ14による検出温度が目標温度となるように最適なヒータ加熱量を算出し、ヒータ15の発熱を制御する。
【0090】
搬送モータ制御部114は、媒体Pを搬送するための搬送モータ121の回転を制御する。搬送モータ121の回転により、フィードローラ82および搬送ローラ対83がそれぞれ所定のタイミングで回転し、搬送路に沿って媒体Pを搬送する。
【0091】
ベルト駆動制御部115は、転写ベルト72を走行するためのベルト駆動モータ122の回転を制御する。ベルト駆動モータ122の回転によりベルト駆動ローラ73が回転し、転写ベルト72が走行する。
【0092】
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1の動作について、図1および図12を参照して説明する。画像形成装置1の制御部100は、上位装置から印刷コマンドと印刷データを受信すると、画像形成(印刷動作)を開始する。
【0093】
制御部100は、まず、搬送モータ制御部114により搬送モータ121を駆動する。これにより、フィードローラ82が回転し、給紙トレイ81に収納された媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す。さらに搬送ローラ対83が、媒体Pを搬送路に沿って転写ユニット70まで搬送する。
【0094】
転写ユニット70では、ベルト駆動ローラ73の回転によって転写ベルト72が走行し、媒体Pを吸着保持して搬送する。媒体Pは、画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cの順に通過する。
【0095】
制御部100は、各画像形成ユニット60においてトナー像の形成を行う。すなわち、電圧制御部106,107により帯電ローラ62に帯電電圧が印加され、現像ローラ64に現像電圧が印加される。
【0096】
また、メインモータ制御部110によりメインモータ120が回転し、感光体ドラム61が回転する。これに伴い、帯電ローラ62、現像ローラ64および供給ローラ65も回転する。帯電ローラ62は、その帯電電圧により、感光体ドラム61の表面を一様に帯電させる。
【0097】
さらに、ヘッド制御部109が各色のイメージデータに基づいて露光ヘッド63を発光させる。露光ヘッド63は、一様に帯電された感光体ドラム61の表面を露光し、これにより感光体ドラム61の表面に静電潜像が形成される。
【0098】
感光体ドラム61の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ64に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム61の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム61の回転によりトナー像が転写ベルト72の表面に接近すると、転写電圧制御部108により転写ローラ71に転写電圧が印加される。これにより、感光体ドラム61に形成されたトナー像が、転写ベルト72上の媒体Pに転写される。媒体Pに転写されなかったトナーは、クリーニング部材67によって掻き取られる。
【0099】
このように、各画像形成ユニット60K,60Y,60M,60Cで形成された各色のトナー像が媒体Pに順次転写され、互いに重ね合される。各色のトナー像が転写された媒体Pは、転写ベルト72によってさらに搬送され、定着装置10に到達する。
【0100】
定着装置10では、モータ制御部112により駆動された定着モータ43の回転によって加圧ローラ18が回転し、これに追従して定着ベルト11が回転している。また、ヒータ制御部113によってヒータ15が加熱され、所定の定着温度に達している。定着装置10に搬送された媒体Pは、定着ベルト11と加圧ローラ18との間で加熱および加圧され、トナー像が媒体Pに定着される。
【0101】
トナー像が定着した媒体Pは、排出ローラ対91,92により、画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部93上に積載される。これにより、媒体Pへのカラー画像の形成が完了する。
【0102】
<定着装置の定着動作>
次に、上記の印刷動作における定着装置10の動作について説明する。図13は、印刷動作時の定着装置10の動作を示すタイミングチャートである。オペレータは、画像形成装置1の電源スイッチを投入したのち、印刷ジョブを開始する処理を行う(図13のタイミングa1)。印刷ジョブを開始する処理とは、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位装置からの印刷ジョブの送信などである。
【0103】
印刷ジョブの開始に伴い、定着制御部111のヒータ制御部113は、ヒータ15に電力を供給する(タイミングa2)。ヒータ制御部113は、ヒータセンサ14およびサーミスタ30の検知温度に基づき、ヒータ15への電力供給を制御する。
【0104】
さらに、定着制御部111のモータ制御部112が、定着モータ43を回転させる(タイミングa3)。定着モータ43の回転は、駆動ギア42を介して定着ギア41に伝達され、加圧ローラ18がR1方向(正方向)に回転する。加圧ローラ18がR1方向に回転すると、加圧ローラ18に接する定着ベルト11も追従して回転する。
【0105】
上述した付勢部材24(図2)の付勢力により、定着ベルト11は加圧ローラ18に押し当てられ、両者の間に定着ニップが形成されている。媒体供給部80から供給され、転写ユニット70でトナー像が転写された媒体Pは、定着装置10に到達して加圧ローラ18と定着ベルト11との間の定着ニップに送り込まれる。図13のタイミングa4は、媒体Pの先端が定着INセンサM3を通過するタイミングである。
【0106】
そして、ヒータ15で加熱された定着ベルト11による熱と、定着ベルト11と加圧ローラ18との間の圧力とによって、媒体Pの表面のトナー像が溶融し、媒体Pに定着する。トナー像が定着した媒体Pは、定着装置10から排出されて媒体排出部90に向かう。
【0107】
媒体排出部90では、媒体Pが排出ローラ対91,92によって搬送され、画像形成装置1の外部に排出されて、スタッカ部93に載置される。図13のタイミングa5は、媒体Pの後端が定着OUTセンサM4に通過したタイミングである。
【0108】
媒体Pの定着装置10から排出されると、所定時間後にモータ制御部112が定着モータ43の回転を停止し(タイミングa6)、さらにヒータ制御部113がヒータ15への電力供給を停止する(タイミングa7)。これにより、1つの印刷ジョブが完了する(タイミングa8)。
【0109】
<清掃動作>
次に、本実施の形態における定着装置10の清掃動作について説明する。図14は、清掃動作を示すタイミングチャートである。
【0110】
画像形成装置1の制御部100は、上記の印刷ジョブ(図13)が行われていないときに、清掃動作を実行する。清掃動作の間は、ヒータ15への電力供給は常にオフであり、定着装置10への媒体Pの搬送も行われない。
【0111】
清掃動作の開始と共に、定着制御部111のモータ制御部112が、定着モータ43をR2方向に回転させる(タイミングt1)。定着モータ43の回転は、駆動ギア42を介して定着ギア41に伝達され、図11(B)に示したように加圧ローラ18がR2方向(逆方向)に回転する。
【0112】
定着ギア41と駆動ギア42との噛み合いにより+X方向の力が発生し、加圧ローラ18が+X方向に移動する(タイミングt1~t2)。
【0113】
加圧ローラ18のストッパ面18fが軸受25に当接すると、加圧ローラ18の+X方向の移動が停止する(タイミングt2)。すなわち、加圧ローラ18が清掃位置に到達する。タイミングt1~t2の動作は、第1の動作に相当する。
【0114】
この状態で、モータ制御部112は、定着モータ43のR2方向の回転を継続する(タイミングt2~t3)。すなわち、加圧ローラ18は、清掃位置でさらにR2方向に回転する。タイミングt2~t3の動作は、第2の動作に相当する。
【0115】
次に、モータ制御部112は、定着モータ43の回転を一旦停止する(タイミングt3~t4)。
【0116】
次に、モータ制御部112は、定着モータ43をR1方向に回転させる(タイミングt4)。これにより、図11(A)に示したように加圧ローラ18がR1方向(正方向)に回転する。
【0117】
定着ギア41と駆動ギア42との噛み合いにより-X方向の力が発生し、加圧ローラ18が-X方向に移動する(タイミングt4~t5)。タイミングt4~t5の動作は、第3の動作に相当する。
【0118】
加圧ローラ18のストッパ面18fが軸受25に当接すると、加圧ローラ18の-X方向の移動が停止する(タイミングt5)。すなわち、加圧ローラ18が通常位置に到達する。
【0119】
この状態で、モータ制御部112は、定着モータ43のR1方向の回転を継続する(タイミングt5~t6)。すなわち、加圧ローラ18は、通常位置でさらにR1方向に回転する。タイミングt5~t6の動作は、第4の動作に相当する。
【0120】
その後、モータ制御部112は、定着モータ43の回転を停止し(タイミングt6)、これにより清掃動作が終了する。
【0121】
清掃動作の終了時には、加圧ローラ18は、X方向における通常位置に戻っている。そのため、定着装置10は定着動作を開始可能な状態にある。
【0122】
上記の清掃動作において、加圧ローラ18が+X方向に移動しながらR2方向に回転する時間(タイミングt1~t2)は、3秒である。加圧ローラ18が清掃位置でR2方向に回転する時間(タイミングt2~t3)は、1秒である。
【0123】
また、加圧ローラ18が-X方向に移動しながらR1方向に回転する時間(タイミングt4~t5)は、3秒である。加圧ローラ18が通常位置でR1方向に回転する時間(タイミングt5~t6)は、3秒である。
【0124】
この例では、加圧ローラ18をR2方向に回転させる時間の合計T1は、4秒である。加圧ローラ18をR1方向に回転させる時間の合計T2は、6秒である。時間T1と時間T2との比は、T1:T2=1:1.5である。
【0125】
図15は、複数回の清掃動作を行う清掃シーケンスを示すタイミングチャートである。1回の清掃動作は、図14を参照して説明したタイミングt1~t6の動作である。画像形成装置1の制御部100は、印刷ジョブが行われていないときに、n回の清掃動作P1,P2…Pnを行うことが望ましい。清掃シーケンスに含まれる清掃動作の回数nについては、後述する。
【0126】
図16(A),(B)は、清掃動作の作用を説明するための模式図である。サーミスタ30は、上記の通り、温度検出部31を含む接触部32が加圧ローラ18の表面に押し当てられるように配置されている。
【0127】
印刷動作が継続すると、図16(A)に示すように、加圧ローラ18の表面の紙粉あるいはトナー等の付着物Tが、サーミスタ30の接触部32と加圧ローラ18の表面との間に堆積する。
【0128】
印刷動作中の加圧ローラ18の回転方向はR1方向(正方向)であるため、サーミスタ30の接触部32の図中下側のエリアに、付着物Tが堆積しやすい。
【0129】
図16(B)に示すように、清掃動作において加圧ローラ18をR2方向に回転させると、サーミスタ30の接触部32に溜まっていた付着物Tが、加圧ローラ18の表面に追従してサーミスタ30の接触部32から離れていく。
【0130】
さらに、加圧ローラ18がR2方向に回転しながらスラスト方向(+X方向)にも移動するため、付着物Tはサーミスタ30の接触部32からX方向にも離れていく。これにより、サーミスタ30の接触部32に溜まっていた付着物Tを、加圧ローラ18の表面に分散することができる。
【0131】
図17(A)は、清掃動作における、サーミスタ30の接触部32の加圧ローラ18上の接触軌道を説明するための模式図である。なお、実際にはサーミスタ30は静止しており、加圧ローラ18が移動・回転しているが、図17(A)では加圧ローラ18の表面に対するサーミスタ30の接触部32の軌道を示している。
【0132】
加圧ローラ18がR2方向(逆方向)に回転しながら+X方向に移動すると(図14のタイミングt1~t2)、サーミスタ30の接触部32は、加圧ローラ18上でR1方向と-X方向に相対移動することになる。この軌道を、軌道E1と称する。サーミスタ30の接触部32に溜まっていた付着物Tは、軌道E1に沿って分散する。
【0133】
加圧ローラ18が+X方向の移動限界である清掃位置に達してさらに回転を続けると(タイミングt2~t3)、サーミスタ30の接触部32は、加圧ローラ18上でR1方向に相対移動することになる。この軌道を、軌道E2と称する。サーミスタ30の接触部32に残っていた付着物Tは、軌道E2に沿って分散する。
【0134】
その後、加圧ローラ18がR1方向(正方向)に回転しながら-X方向に移動すると(タイミングt4~t5)、サーミスタ30の接触部32は、加圧ローラ18上でR2方向と+X方向に相対移動することになる。この軌道を、軌道E3と称する。この時点ではサーミスタ30の接触部32には付着物Tが殆ど残っていないため、軌道E3に付着物Tが分散されることは殆どない。
【0135】
また、この軌道E3は、上記の軌道E1とは重ならないため、軌道E1に分散された付着物Tがサーミスタ30の接触部32に再付着することが防止される。
【0136】
加圧ローラ18が-X方向の移動限界である通常位置に達してさらに回転を続けると(タイミングt5~t6)、サーミスタ30の接触部32は、加圧ローラ18上でR2方向に相対移動することになる。この軌道を、軌道E4と称する。
【0137】
図14に示したタイミングt5~t6の時間間隔(例えば3秒)は、タイミングt2~t3の時間間隔(例えば1秒)よりも長い。そのため、軌道E4は軌道E2よりも距離eだけ長い。
【0138】
そのため、サーミスタ30の接触部32は、清掃動作開始時の出発点を距離eだけR2方向にオーバーランした位置Gまで達し、そこで清掃動作が終了する。上述した4つの軌道E1~E4が、1回の清掃動作におけるサーミスタ30の接触部32の移動軌跡(ループ)となる。
【0139】
図17(B)は、複数回の清掃動作を行った場合の、サーミスタ30の接触部32の加圧ローラ18上の移動軌跡を説明するための模式図である。F1は、1回目の清掃動作における移動軌跡(すなわち軌道E1~E4)である。F2は、2回目の清掃動作における移動軌跡である。F3は、3回目の清掃動作における移動軌跡である。
【0140】
上記の通り、1回の清掃動作の開始時と終了時とでは、加圧ローラ18の表面に対してサーミスタ30の接触部32がR2方向に距離eだけ相対移動する。
【0141】
そのため、3回の清掃動作を行った場合、1回目、2回目、および3回目の清掃動作の開始時のサーミスタ30の接触部32の加圧ローラ18に対する相対位置が、図17(B)に符号32(1)、32(2)、32(3)で示すように変化する。
【0142】
3回の清掃動作の移動軌跡F1,F2,F3は、重ならないように設定されている。移動軌跡F1,F2,F3が重ならないことにより、サーミスタ30の接触部32から加圧ローラ18の表面に分散した付着物Tが接触部32に再付着することが防止される。
【0143】
図17(B)には、3回の清掃動作を行う場合を示したが、3回以上の清掃動作を行う場合にも同様のことが当てはまる。
【0144】
<清掃シーケンス>
次に、複数回の清掃動作を行う清掃シーケンスの具体例について説明する。清掃動作の回数が少なすぎると、サーミスタ30の接触部32における付着物Tの堆積を十分に低減することができず、検出精度の低下を招く可能性がある。一方、清掃動作の回数が多すぎると、サーミスタ30の接触部32から分散された付着物Tが加圧ローラ18の表面全体に広がり、サーミスタ30の接触部32への再付着の可能性が増加する。
【0145】
そこで、1回の清掃シーケンス中の清掃動作の回数を、以下のようにして決定する。ここでは、サーミスタ30の接触部32と加圧ローラ18との周方向の接触幅を、5mmとする。また、加圧ローラ18の周長は、79mmとする。
【0146】
図17(A)に示した軌道E1と軌道E3とが重ならないようにするため、清掃動作の上限値Vは、加圧ローラ18の周長(79mm)をサーミスタ30の接触部32の接触幅(5mm)の2倍で除算した値、すなわち79÷(5×2)≒7回となる。
【0147】
また、印刷ジョブ当たりの印刷ページ数(印刷量)が多いほど、サーミスタ30の接触部32に付着物Tが溜まりやすい。そのため、制御部100は、印刷ジョブに含まれる印刷カウントに応じて、清掃動作の回数の異なる2つの清掃シーケンスA,Bを実行する。
【0148】
清掃シーケンスAでは、例えば1回の清掃動作を実行する。一方、清掃シーケンスBでは、例えば7回の清掃動作を実行する。これらの回数はあくまでも一例であり、適宜変更することができる。
【0149】
制御部100は、印刷カウント記憶部101と清掃カウント記憶部102とを有している。印刷カウント記憶部101では、所定サイズの媒体Pが定着装置10を通過する毎に、1カウントを加算し、記憶する。ここでは、A4用紙の1頁分に相当する長さ216mmの媒体Pが定着装置10を通過する毎に、1カウントを加算して記憶する。
【0150】
清掃カウント記憶部102は、前回の清掃シーケンスが実行されてからの印刷カウントの加算分を、清掃カウントNとして記憶する。清掃シーケンスが終了すると、清掃カウントNはリセットされる。
【0151】
また、制御部100は、清掃シーケンスの実行する間隔に相当する清掃カウント閾値Ncを記憶している。清掃カウントNと清掃カウント閾値Ncとを比較して、清掃シーケンスを実行するか否か、および清掃シーケンスA,Bの何れを実行するかを判断する。
【0152】
図18は、清掃シーケンスの流れを示すフローチャートである。画像形成装置1が印刷ジョブに基づく印刷動作を行う際、制御部100は、216mmの媒体Pが定着装置10を通過する毎に、印刷カウントCおよび清掃カウントNを1ずつ増加させる(ステップS101)。
【0153】
印刷ジョブが終了すると(ステップS102でYes)、清掃カウントNが清掃カウント閾値Ncを超えたか否かを判断する。清掃カウントNが清掃カウント閾値Nc以下である場合には(ステップS103でNo)、待機状態に移行する。なお、清掃カウント閾値Ncは、第1の閾値とも称する。
【0154】
清掃カウントNが清掃カウント閾値Ncを超えていた場合には(ステップS103でYes)、清掃カウントNが清掃カウント閾値Ncの1.5倍(Nc×1.5)を超えたか否かを判断する(ステップS104)。なお、Nc×1.5は、第2の閾値とも称する。
【0155】
清掃カウントNが清掃カウント閾値Ncの1.5倍を超えていた場合には(ステップS104でYes)、清掃シーケンスBを実行する(ステップS105)。清掃シーケンスBでは、例えば7回の清掃動作を実行する。清掃シーケンスBが完了すると、清掃カウントNをリセットし(ステップS106)、待機状態に移行する。
【0156】
一方、清掃カウントNが清掃カウント閾値Ncの1.5倍以下である場合には(ステップS104でNo)、清掃シーケンスAを実行する(ステップS107)。清掃シーケンスAでは、例えば1回の清掃動作を実行する。清掃シーケンスAが完了すると、清掃カウントNをリセットし(ステップS108)、待機状態に移行する。
【0157】
清掃カウント閾値Ncをあまり大きく設定すると、清掃シーケンスの実行前のサーミスタ30の接触部32における付着物Tの堆積量が多くなり、付着物Tが接触部32に固着して清掃が困難になる可能性がある。そのため、清掃カウント閾値Ncは、使用する媒体Pの紙粉発生の度合い、印刷画像における平均的なトナー使用量などを考慮して決定する。
【0158】
清掃シーケンスBは、印刷ジョブ当たりの印刷ページ数が多く、印刷ジョブ終了時に清掃カウント閾値Ncに対して清掃カウントNが大幅に超過する場合、すなわちサーミスタ30の接触部32における付着物Tの堆積量が多いと想定される場合に実行される。清掃シーケンスBは、清掃シーケンスAよりも清掃動作の回数が多いため清掃効果は高いが、所要時間は長い。
【0159】
以上の清掃動作によってサーミスタ30の接触部32から離間した付着物Tは、加圧ローラ18の表面のほか、定着ベルト11の表面に付着する場合もある。これらの付着物Tは、清掃シーケンス終了後の印刷ジョブにおいて定着装置10を通過する媒体Pに付着し、媒体Pと共に定着装置10の外部に排出される。
【0160】
この場合も、清掃シーケンスでサーミスタ30の接触部32から除去される付着物Tの量は、媒体P上のトナー像に対して少量であり目立たないため、印刷画像品質への影響は僅かである。
【0161】
なお、上記の説明では、はす歯ギアであるギア41,42のねじれ角のため、加圧ローラ18がR1方向に回転しながら-X方向に移動し、R2方向に回転しながら+X方向に移動したが(図11(A),(B))、-X方向と+X方向は逆であってもよい。
【0162】
<比較例>
図19(A),(B)は、比較例の定着装置10Fを示す斜視図および正面図である。比較例の定着装置10Fでは、加圧ローラ18に平歯車である定着ギア45が取り付けられている。定着ギア45には、平歯車である駆動ギア46が噛み合っている。また、加圧ローラ18は、X方向に移動しないようにサイドフレーム21に取り付けられている。これらの点を除き、定着装置10Fは、実施の形態1の定着装置10と同様に構成されている。
【0163】
比較例の定着装置10Fでは、加圧ローラ18がX方向に移動しないため、加圧ローラ18とサーミスタ30とのX方向の相対位置が変化しない。そのため、清掃動作において加圧ローラ18をR2方向(図19(B))に回転させ、サーミスタ30の接触部32に溜まった付着物を加圧ローラ18に移しても、その付着物はX方向においてサーミスタ30と同じ位置に留まり、サーミスタ30に再付着する可能性が高い。
【0164】
これに対し、第1の実施の形態では、加圧ローラ18がX方向に移動しながらR1方向とR2方向に回転するため、加圧ローラ18とサーミスタ30とのX方向位置が変化する。そのため、加圧ローラ18の広い範囲に付着物Tを分散することができ、サーミスタ30への付着物Tの再付着を生じにくくすることができる。
【0165】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、第1の実施の形態では、加圧ローラ18(回転部材)と、加圧ローラ18をR1方向(正方向)およびR2方向(逆方向)に回転する駆動部(定着ギア41、駆動ギア42および定着モータ43)と、加圧ローラ18の表面に当接するサーミスタ30(センサ)と、加圧ローラ18とサーミスタ30とのX方向の相対位置を変更する位置変更部(定着ギア41および駆動ギア42)とを有する。位置変更部は、加圧ローラ18をR2方向に回転させ、また、加圧ローラ18とサーミスタ30との相対位置を、加圧ローラ18の幅方向一端(-X方向の一端)とサーミスタ30との距離が距離D1となる第1の相対位置から、当該距離が距離D2となる第2の相対位置に変更する。
【0166】
そのため、サーミスタ30に堆積した付着物Tを、加圧ローラ18の表面に分散することができ、サーミスタ30の検知精度を向上することができる。その結果、定着装置10における温度制御の精度を高め、印刷品位を向上することができる。
【0167】
特に、定着ギア41と駆動ギア42とがはす歯ギアであり、加圧ローラ18がX方向に移動可能に構成されているため、簡単な構成で、加圧ローラ18を回転させながらX方向に移動させることができる。
【0168】
また、加圧ローラ18が清掃位置および通常位置に到達している状態で、加圧ローラ18をさらに回転させるため、加圧ローラ18の表面からサーミスタ30への付着物Tの再付着を防止することができる。
【0169】
また、加圧ローラ18が清掃位置にあるときの加圧ローラ18の回転量が、加圧ローラ18が通常位置にあるときの加圧ローラ18の回転量と異なるため、複数回の清掃動作を繰り返しても加圧ローラ18の表面からサーミスタ30への付着物Tの再付着が発生しにくい。
【0170】
また、印刷ジョブに含まれる印刷ページ数に応じて、清掃動作を実行するか否かを決定し、また清掃動作の回数を決定するため、サーミスタ30における付着物Tの堆積状況に応じた適度な清掃を行うことができる。
【0171】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。図20は、実施の形態2の画像形成装置の定着装置10Aを示す断面図である。定着装置10Aは、定着ベルト11と加圧ローラ18とを互いに接触または離間させる離接機構が設けられている。
【0172】
上記の通り、定着ベルト11とその内周側の各部材(ステイ12、ヒータ支持部材13、ヒータセンサ14、ヒータ15)は、可動フレーム23に取り付けられている。可動フレーム23は、支軸22によりサイドフレーム21に回動可能に取り付けられている。
【0173】
実施の形態2の定着装置10Aは、可動フレーム23を押圧して支軸22の周りに回動させるカム28を備える。カム28は、X方向の回転軸である軸部28bを有し、この軸部28bは各サイドフレーム21に回転可能に支持されている。
【0174】
カム28は、回転中心(軸部28bの中心)から外周面28aまでの距離が周方向によって変化する偏心カムである。カム28の外周面28aは、可動フレーム23に形成された当接片23cに当接する。
【0175】
カム28は、離接モータ44(図21)からの回転伝達によって回転する。カム28および離接モータ44は、離接機構を構成する。
【0176】
定着動作時には、カム28は、可動フレーム23の当接片23cに対する押圧量が最も少ない位置にある。この場合、可動フレーム23は、付勢部材24の付勢力により、支軸22を中心として矢印C1で示す方向に回動し、定着ベルト11と加圧ローラ18との間に定着ニップが形成される。
【0177】
一方、カム28が軸部28bを中心として図中時計回りに回転すると、カム28の外周面28aが可動フレーム23の当接片23cを図中矢印Fで示す方向に押圧する。これにより、可動フレーム23は、付勢部材24の付勢力に抗して、支軸22を中心として図中矢印C2で示す方向に回動する。可動フレーム23が矢印C2で示す方向に回動すると、定着ベルト11が加圧ローラ18の表面から離間して上昇する。
【0178】
図21は、実施の形態2の画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。図21に示すように、実施の形態2の制御系は、実施の形態1の制御系に、カム28を回転させる離接モータ44と、離接モータ44の回転を制御する離接モータ制御部116を加えたものである。
【0179】
離接モータ制御部116は、制御部100の制御により、離接モータ44の回転を制御し、定着ベルト11と加圧ローラ18とを互いに接触または離間させる。実施の形態2の制御系は、離接モータ44および離接モータ制御部116を除き、実施の形態1の制御系と同様に構成されている。
【0180】
図22は、実施の形態2の清掃動作を示すタイミングチャートである。図22に示すように、実施の形態2では、清掃動作の開始(タイミングt1)の前に、定着ニップを開放する動作が行われる(タイミングt0)。
【0181】
すなわち、離接モータ制御部116が離接モータ44を回転させ、カム28が回転して可動フレーム23の当接片23cを押圧する。これにより、可動フレーム23が図20に矢印C2で示した方向に回動し、定着ベルト11が加圧ローラ18の表面から離間する。
【0182】
その後、実施の形態1と同様、清掃動作が行われる(タイミングt1~t6)。清掃動作の完了後、定着ニップを形成する動作が行われる(タイミングt7)。
【0183】
すなわち、離接モータ制御部116が離接モータ44を回転させ、カム28が可動フレーム23の当接片23cに対する押圧量が最小となる位置まで回転する。これにより、可動フレーム23が付勢部材24の付勢力によって図21に矢印C1で示した方向に回動し、定着ベルト11が加圧ローラ18の表面に当接し、定着ニップが形成される。
【0184】
また、複数の清掃動作を含む清掃シーケンス(図15参照)を実行する場合には、清掃シーケンスの開始前、すなわち最初の清掃動作P1の開始前に、定着ニップを開放する。そして、清掃シーケンスの完了後、すなわち最後の清掃動作Pnの完了後に、定着ニップを形成する。
【0185】
上述した実施の形態1では、清掃動作時には、定着ベルト11と加圧ローラ18との間に定着ニップが形成された状態で加圧ローラ18をX方向に移動させるため、加圧ローラ18に作用する摩擦力等の外力が比較的大きい。
【0186】
これに対し、実施の形態2では、清掃動作時に加圧ローラ18が定着ベルト11に接していないため、加圧ローラ18に作用する摩擦力等の外力が少なく、従って加圧ローラ18のX方向移動をスムースに行うことができる。
【0187】
また、加圧ローラ18のX方向移動が外力によって妨げられることがないため、付着物Tの軌道の重なり等によるサーミスタ30への再付着を抑制することができる。
【0188】
以上説明したように、実施の形態2では、加圧ローラ18と定着ベルト11とを互いに接近および離間させる離接機構(カム28および離接モータ44)が設けられ、定着ベルト11と加圧ローラ18とを互いに離間させた状態で清掃動作を行う。そのため、清掃動作時に加圧ローラ18に作用する外力が少なく、加圧ローラ18のX方向移動をスムースに行うことができる。
【0189】
なお、ここではカム28および離接モータ44を用いて加圧ローラ18と定着ベルト11との離接動作を行ったが、他の機構を用いて離接動作を行ってよい。
【0190】
上述した実施の形態1,2では、清掃動作時に、はす歯ギアのギア41,42を用いて加圧ローラ18を回転させながらX方向に移動させ、これにより加圧ローラ18とサーミスタ30とのX方向の相対位置を変化させた。
【0191】
しかしながら、本開示はこのような構成に限定されるものではなく、回転部材(例えば加圧ローラ18)を定着動作時の回転方向とは逆方向に回転させ、且つ、回転部材とセンサ(例えばサーミスタ30)との幅方向(X方向)の相対位置を、回転部材の幅方向一端部とセンサとの距離が距離D1(第1の距離)となる第1の相対位置から、回転部材の当該一端部とセンサとの距離が距離D2(第2の距離)となる第2の相対位置に変更すればよい。
【0192】
また、はす歯ギアを利用して回転部材を幅方向(X方向)に移動させる構成に限らず、他の機構を用いて回転部材を幅方向に移動させてもよい(後述する変形例1)。
【0193】
また、回転部材を幅方向(X方向)に移動させる構成に限らず、センサを幅方向に移動させてもよい(後述する変形例2)。
【0194】
また、回転部材は、加圧ローラ18に限らず、例えば定着ベルト11であってもよい(後述する変形例3)。
【0195】
また、加圧ローラ18の回転方向に応じて、2系統の回転伝達機構を設けてもよい(後述する変形例4)。
【0196】
また、センサは、サーミスタ30に限定されるものではなく、回転部材に接触するセンサであれば、他の種類のセンサであってもよい。
【0197】
以下では、変形例1~4について説明する。
【0198】
変形例1.
まず、変形例1について説明する。図23(A),(B)は、変形例1の定着装置10Bを示す図である。上述した実施の形態1,2では、はす歯ギアであるギア41,42を用いて加圧ローラ18をX方向に移動させたが、この変形例1では、カム47を用いて加圧ローラ18をX方向に移動させる。
【0199】
加圧ローラ18には、はす歯ギアの定着ギア41の代わりに、平歯車の定着ギア45が取り付けられている。この定着ギア45には、平歯車の駆動ギア46が噛み合っている。
【0200】
定着ギア45および駆動ギア46のX方向の幅は、実施の形態1の定着ギア41および駆動ギア42と同様である。定着ギア45および駆動ギア46には、実施の形態1の定着ギア41および駆動ギア42と同様、定着モータ43(図12)から回転が伝達される。
【0201】
回転部材移動機構(位置変更部)としてのカム47は、加圧ローラ18の+X側の軸部18eの端面に当接するように設けられている。カム47は、例えばY方向の回転軸である軸部47aを有する。軸部47aは、画像形成装置1の筐体内の支持部によって支持され、モータ等によって回転駆動される。
【0202】
カム47は、回転中心(軸部47aの中心)から外周面までの距離が周方向位置によって変化する偏心カムである。カム47は、加圧ローラ18の軸部18eの端面に当接している。カム47が回転することにより、加圧ローラ18に対する-X方向の押し出し量が変化する。
【0203】
加圧ローラ18は、実施の形態1と同様、X方向に移動可能に取り付けられている。また、加圧ローラ18の-X方向の端部とサイドフレーム21との間には、加圧ローラ18を+X方向に付勢する付勢部としてのコイルばね48が設けられている。
【0204】
そのため、加圧ローラ18のX方向の位置は、カム47の加圧ローラ18に対する-X方向の押し出し量によって決定される。なお、カム47の外周面(すなわち輪郭)は、カム47の回転に伴って加圧ローラ18のX方向位置が徐々に変化するように形成されている。
【0205】
図23(A)では、加圧ローラ18が最も-X方向に移動した通常位置にある。このときの加圧ローラ18の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D1(第1の距離)である。
【0206】
図23(B)では、加圧ローラ18が最も+X方向に移動した清掃位置にある。このときの加圧ローラ18の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D2(第2の距離)である。ここではD1>D2であるが、逆であってもよい。
【0207】
清掃動作時において、図14に示したタイミングt1~t2では、図23(B)に示したように、カム47により加圧ローラ18を+X方向に移動させる。これにより、加圧ローラ18が清掃位置まで移動する。また、定着モータ43により加圧ローラ18がR2方向に回転する。
【0208】
また、清掃動作時において、図14に示したタイミングt4~t5では、図23(A)に示したように、カム47により加圧ローラ18を-X方向に移動させる。これにより、加圧ローラ18が通常位置まで移動する。また、定着モータ43により加圧ローラ18がR1方向に回転する。
【0209】
変形例1における清掃動作は、カム47によって加圧ローラ18をX方向に移動する点を除き、実施の形態1における清掃動作と同様である。なお、清掃動作の終了後の定着動作は、図23(A)に示した状態で行われる。
【0210】
以上説明したように、この変形例1によれば、カム47によって加圧ローラ18をX方向に移動させるため、加圧ローラ18のX方向の移動範囲を広く設定することができる。そのため、サーミスタ30に堆積した付着物Tを、加圧ローラ18の広い範囲に分散させ、清掃効率を高めることができる。
【0211】
なお、ここではカム47を用いて加圧ローラ18をX方向に移動させたが、他の機構を用いて加圧ローラ18をX方向に移動させてもよい。
【0212】
変形例2.
次に、変形例2について説明する。図24(A),(B)は、変形例2の定着装置10Cを示す図である。上述した実施の形態1,2および変形例1では、加圧ローラ18をX方向に移動させたが、この変形例2では、サーミスタ30をX方向に移動させる。
【0213】
サーミスタ30は、例えば、センサ移動機構(位置変更部)としての送りねじ機構35に支持されている。送りねじ機構35は、X方向を軸方向とする送りねじ37と、送りねじ37に螺合してX方向に移動する可動体36と、送りねじ37を回転させるモータ38とを有する。送りねじ機構35は、底部フレーム20に取り付けられている。
【0214】
サーミスタ30の筐体部34は、可動体36に固定されている。サーミスタ30のX方向の位置は、モータ38の回転によって決定される。
【0215】
図24(A)では、サーミスタ30が最も+X方向に移動した通常位置にある。このときの加圧ローラ18の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D1(第1の距離)である。
【0216】
図24(B)では、サーミスタ30が最も-X方向に移動した清掃位置にある。このときの加圧ローラ18の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D2(第2の距離)である。ここではD1>D2であるが、逆であってもよい。
【0217】
加圧ローラ18には、変形例1と同様、定着モータ43の回転が、平歯車である定着ギア45および駆動ギア46を介して伝達される。加圧ローラ18は、R1方向およびR2方向に回転する。但し、この変形例2では、加圧ローラ18は、X方向に移動しないようにサイドフレーム21に取り付けられている。
【0218】
清掃動作時において、図14に示したタイミングt1~t2では、図24(B)に示したように、送りねじ機構35によりサーミスタ30が-X方向に移動し、清掃位置に到達する。また、定着モータ43により加圧ローラ18がR2方向に回転する。
【0219】
また、清掃動作時において、図14に示したタイミングt4~t5では、図24(A)に示したように、送りねじ機構35によりサーミスタ30が+X方向に移動し、通常位置に到達する。また、定着モータ43により加圧ローラ18がR1方向に回転する。
【0220】
変形例2における清掃動作は、加圧ローラ18の代わりにサーミスタ30をX方向に移動させる点を除き、実施の形態1における清掃動作と同様である。また、清掃動作の終了後の定着動作は、図25(A)に示した状態で行われる。
【0221】
以上説明したように、この変形例2によれば、サーミスタ30をX方向に移動することにより、サーミスタ30に堆積した付着物Tを加圧ローラ18の表面に分散させることができる。
【0222】
なお、ここでは送りねじ機構35を用いてサーミスタ30をX方向に移動させたが、他の機構を用いてサーミスタ30をX方向に移動させてもよい。
【0223】
変形例3.
次に、変形例3について説明する。図25(A),(B)は、変形例3の定着装置10Dを示す図である。上述した実施の形態1,2および変形例1では加圧ローラ18をX方向に移動させ、変形例2ではサーミスタ30をX方向に移動させた。これに対し、変形例3では、サーミスタ30が定着ベルト11に接触しており、定着ベルト11を含むユニット(可動ユニット50)をX方向に移動させる。
【0224】
サーミスタ30を支持するため、定着装置10Dは、一対のサイドフレーム21をつなぐ上部フレーム29を有する。上部フレーム29の所定位置(例えばX方向中央)には、サーミスタ30の筐体部34が固定されている。板バネ部33は筐体部34から-Z方向に延在し、その先端に接触部32が取り付けられている。接触部32は、一定の押圧力で定着ベルト11の表面に押し当てられている。
【0225】
また、実施の形態1で説明した通り、定着ベルト11とその内周側の各部材(ステイ12、ヒータ支持部材13、ヒータセンサ14、およびヒータ15)は、可動フレーム23に取り付けられている。可動フレーム23は、支軸51により各サイドフレーム21に回動可能に取り付けられている。
【0226】
この変形例3の支軸51は、実施の形態1の支軸22よりもX方向に長い。可動フレーム23は、支軸51に沿ってX方向に移動可能に支持されている。支軸51は、X方向に長い軸部51aと、そのX方向両端に形成されたストッパ部51b,51cとを有する。ストッパ部51b,51cは、可動フレーム23のX方向の移動範囲を規制する。
【0227】
一対の可動フレーム23とそれに挟まれた各部材(定着ベルト11、ステイ12、ヒータ支持部材13、ヒータセンサ14、およびヒータ15)は可動ユニット50を構成する。可動ユニット50は、一対のサイドフレーム21の間で、支軸51に沿ってX方向に移動可能である。
【0228】
また、一対の可動フレーム23のうち、-X側の可動フレーム23とサイドフレーム21との間には、付勢部材としてのコイルばね52が設けられている。コイルばね52は、可動ユニット50を+X方向に付勢している。
【0229】
また、+X側の可動フレーム23に対向するように、ユニット移動機構(位置変更部)としてのカム機構53が設けられている。カム機構53は、可動フレーム23に当接するピン54と、このピン54に当接するカム55とを有する。
【0230】
ピン54は、例えば+X側のサイドフレーム21に、X方向に移動可能に取り付けられている。ピン54の一端は可動フレーム23に当接し、他端はカム55に当接する。
【0231】
カム55は、Y方向の回転軸である軸部55aを有する。この軸部55aは、画像形成装置1の筐体内の支持部に支持され、モータ等によって回転する。カム55は、回転中心(軸部55aの中心)から外周面までの距離が周方向位置によって変化する偏心カムである。カム55は、ピン54の端面に当接している。カム55が回転することにより、ピン54の-X方向の押し出し量が変化する。
【0232】
可動ユニット50は、上記の通り、コイルばね52によって+X方向に付勢されている。そのため、ピン54の-X方向への押出量によって、可動ユニット50のX方向の位置が決定される。なお、カム55の外周面は、カム55の回転(ピン54の押し出し)に伴って可動ユニット50のX方向位置が徐々に変化するように形成されている。
【0233】
図25(A)では、可動ユニット50が最も+X方向に位置した通常位置にある。定着ベルト11の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D1(第1の距離)である。
【0234】
図25(B)では、可動ユニット50が最も-X方向に位置した清掃位置にある。定着ベルト11の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D2(第2の距離)である。ここでは、D1<D2であるが、逆であってもよい。
【0235】
加圧ローラ18には、変形例1,2と同様、定着モータ43の回転が、平歯車である定着ギア45および駆動ギア46を介して伝達される。加圧ローラ18は、R1方向およびR2方向に回転する。但し、この変形例3では、加圧ローラ18は、X方向に移動しないようにサイドフレーム21に取り付けられいる。
【0236】
清掃動作時において、図14に示したタイミングt1~t2では、図25(B)に示したように、カム55によりピン54を-X方向に徐々に押し出す。これにより、可動ユニット50が-X方向に移動し、定着ベルト11が清掃位置に到達する。また、定着モータ43により加圧ローラ18がR2方向に回転する。
【0237】
また、清掃動作時において、図14に示したタイミングt4~t5では、図25(A)に示したように、カム55によるピン54の-X方向の押し出し量を徐々に小さくする。これにより、可動ユニット50が+X方向に移動し、定着ベルト11が通常位置に到達する。また、定着モータ43により加圧ローラ18がR1方向に回転する。
【0238】
変形例3における清掃動作は、上記のようにカム機構53(ピン54およびカム55)によって可動ユニット50をX方向に移動させる点と、加圧ローラ18をX方向に移動させない点を除き、実施の形態1における清掃動作と同様である。また、定着動作は、図25(A)に示した状態で行われる。
【0239】
以上説明したように、この変形例3では、加圧ローラ18を回転させながら定着ベルト11をX方向に移動することにより、サーミスタ30に堆積した付着物Tを定着ベルト11の表面に分散させることができる。
【0240】
また、定着ベルト11を含む可動ユニット50をX方向に移動させるため、回転軸を有さない定着ベルト11をX方向に移動させることが可能になる。
【0241】
ここではカム機構53を用いて可動ユニット50をX方向に移動させたが、他の機構を用いて可動ユニット50をX方向に移動させてもよい。
【0242】
ここでは定着装置10Dの上部フレーム29でサーミスタ30を支持しているが、媒体Pの搬送を妨げない位置でサーミスタ30を支持できるものであれば、他の部材でサーミスタ30を支持しても良い。例えば、サイドフレーム21に着脱可能に取り付けられる蓋部でサーミスタ30を支持してもよい。あるいは、定着装置10Dの外部の画像形成装置1の筐体に設けた部材でサーミスタ30を支持してもよい。
【0243】
変形例4.
次に、変形例4について説明する。図26(A),(B)は、変形例4の定着装置10Eの構成および動作を示す図である。
【0244】
上述した実施の形態1~4では、定着ギア41および駆動ギア42(または定着ギア45および駆動ギア46)という1系統のギア列を用いて加圧ローラ18を回転させたが、この変形例4では、回転方向に応じて2系統のギア列(回転伝達機構)を用いて加圧ローラ18を回転させる。
【0245】
変形例1と同様に、加圧ローラ18の-X側の軸部18eには定着ギア45が取り付けられ、この定着ギア45に噛み合うように駆動ギア46が設けられている。駆動ギア46のX方向の幅は、加圧ローラ18のX方向の移動量の分だけ、定着ギア45のX方向の幅よりも広い。定着ギア45および駆動ギア46は、加圧ローラ18をR1方向に回転させる際に用いられる第1の回転伝達機構である。
【0246】
加圧ローラ18の-X側の軸部18eには定着ギア203が取り付けられ、この定着ギア203に噛み合うように駆動ギア204が設けられている。定着ギア203は、画像形成装置1の筐体内の支持部に回転可能に支持されている。駆動ギア204のX方向の幅は、加圧ローラ18のX方向の移動量の分だけ、定着ギア203のX方向の幅よりも広い。定着ギア203および駆動ギア204は、加圧ローラ18をR2方向に回転させる際に用いられる第2の回転伝達機構である。
【0247】
また、定着モータ43の回転を、駆動ギア46または駆動ギア204のいずれか一方に選択的に伝達する切替機構200が設けられている。切替機構200は、上記の第1の回転伝達機構および第2の回転伝達機構を選択するものである。
【0248】
さらに、加圧ローラ18の+X側の軸部18eの端面を付勢するように、回転部材移動機構(位置変更部)としてのソレノイド201が設けられている。ソレノイド201は、-X方向に突出するプランジャ202を有する。ソレノイド201は、プランジャ202の先端が軸部18eの端面に当接するように配置されている。
【0249】
また、加圧ローラ18の-X側(ソレノイド201と反対側)には、加圧ローラ18の軸部18eの端面を+X方向に付勢する付勢部材としてのコイルばね205が設けられている。
【0250】
図26(A)に示すように、ソレノイド201のプランジャ202が-X方向に突出すると、プランジャ202に付勢されて加圧ローラ18が-方向に移動する。このときの加圧ローラ18の位置は、通常位置である。加圧ローラ18の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D1(第1の距離)である。
【0251】
加圧ローラ18が通常位置にあるときには、定着モータ43の回転は、切替機構200によって駆動ギア46に伝達され、さらに定着ギア45に伝達される。加圧ローラ18は、R1方向(正方向)に回転する。
【0252】
図26(B)に示すように、ソレノイド201のプランジャ202が+X方向に退避すると、コイルばね205の付勢力により加圧ローラ18が+方向に移動する。このときの加圧ローラ18の位置は、清掃位置である。加圧ローラ18の-X方向端部からサーミスタ30までのX方向の距離は、距離D2(第2の距離)である。
【0253】
加圧ローラ18が清掃位置にあるときには、定着モータ43の回転は、切替機構200によって駆動ギア204に伝達され、さらに定着ギア203に伝達される。加圧ローラ18は、R2方向(逆方向)に回転する。
【0254】
清掃動作時において、図14に示したタイミングt1~t2では、図26(B)に示したようにソレノイド201のプランジャ202を-X方向に突出させる。これにより、加圧ローラ18が-X方向に移動し、清掃位置に到達する。その後のタイミングt2~t3では、定着モータ43により加圧ローラ18をR2方向に回転させる。
【0255】
また、清掃動作時において、図14に示したタイミングt4~t5では、図26(A)に示したようにソレノイド201を+X方向に退避させる。これにより、加圧ローラ18は+X方向に移動し、通常位置に到達する。その後のタイミングt5~t6では、定着モータ43により加圧ローラ18をR1方向に回転させる。
【0256】
この変形例4においても、清掃動作時の加圧ローラ18のR2方向の回転により、サーミスタ30の接触部32に堆積した付着物Tを分散させることができる。また、清掃動作の終了後の定着動作は、図26(A)に示した状態で行われる。
【0257】
実施の形態1~2および変形例1~3では、加圧ローラ18を軸方向に移動させながらR1方向およびR2方向に回転させた。これに対し、この変形例4では、加圧ローラ18を-X方向に移動させた後にR2方向に回転させ、加圧ローラ18を+X方向に移動させた後にR1方向に回転させる。
【0258】
そのため、加圧ローラ18の表面におけるサーミスタ30の接触部32の移動軌跡は、図27に示すように、軌道E1,E3がX方向に平行になる。そのため、サーミスタ30の接触部32に溜まった付着物Tを効果的に広範囲に分散させるという点では、この変形例4よりも、実施の形態1~2および変形例1~3の方が優れている。
【0259】
以上説明したように、この変形例4によれば、加圧ローラ18の回転方向に応じて2つの回転伝達機構を用いた構成においても、サーミスタ30の接触部32に堆積した付着物Tを分散させることができる。
【0260】
ここでは切替機構200を介して定着モータ43の回転を駆動ギア46,204の何れかに伝達しているが、定着モータ43の回転を駆動ギア46,204の両方に同時に伝達してもよい。このように構成すれば、加圧ローラ18のX方向両端に回転が伝達されるため、加圧ローラ18の一端のみに回転が伝達される場合と比較して、加圧ローラ18のねじれが生じにくい。そのため、加圧ローラ18のねじれによる画像品質への影響を抑制できるというメリットがある。
【0261】
また、ここでは加圧ローラ18をX方向に移動させるためにソレノイド201を用いたが、ソレノイド201に限らず、他の機構を用いて加圧ローラ18をX方向に移動させてもよい。
【0262】
図27に示したサーミスタ30の接触部32の移動軌跡は、変形例1~3の定着装置10B,10C,10Dでも実現することができる。例えば、変形例1(図23(A),(B))において、カム47によって加圧ローラ18を+X方向に移動させてから、定着モータ43によって加圧ローラ18をR2方向に回転させ、カム47によって加圧ローラ18を-X方向に移動させてから、定着モータ43によって加圧ローラ18をR1方向に回転させてもよい。
【0263】
上記の各実施の形態では、カラー画像を形成する画像形成装置について説明したが、本開示は単色(モノクロ)画像を形成する画像形成装置に適用することもできる。また、本開示は、例えば、電子写真方式を利用して媒体に画像を形成する画像形成装置(例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ、複合機等)に利用することができる。
【符号の説明】
【0264】
1 画像形成装置、 10,10A,10B,10C,10D,10E 定着装置、 11 定着ベルト(回転部材)、 12 ステイ、 13 ヒータ支持部材、 14 温度センサ、 15 ヒータ、 18 加圧ローラ(回転部材)、 20 底フレーム、 21 サイドフレーム、 22 支軸、 23 可動フレーム、 24 付勢部材、 25 軸受、 28 カム、 30 サーミスタ(センサ、温度センサ)、 31 温度検出部(素子部)、 32 接触部、 33 板バネ部、 34 筐体部、 35 送りねじ機構(センサ移動機構)、 41 定着ギア、 42 駆動ギア、 43 定着モータ、 45 定着ギア、 46 駆動ギア、 47 カム(回転部材移動機構)、 48 コイルばね(押圧部材)、 49 離接モータ(離接機構)、 50 可動ユニット、 51 コイルばね(押圧部材)、 52 支軸、 53 カム機構(ユニット移動機構)、 60,60K,60Y,60M,60C 画像形成ユニット(画像形成部)、 61 感光体ドラム(像担持体)、 62 帯電ローラ(帯電部材)、 63 露光ヘッド(露光装置)、 64 現像ローラ(現像剤担持体)、 65 供給ローラ(供給部材)、 70 転写ユニット、 80 媒体供給部、 90 媒体排出部、 100 制御部、 101 印刷カウント記憶部、 102 清掃カウント記憶部、 111 定着制御部、 112 モータ制御部、 113 ヒータ制御部、 200 回転伝達機構、 201 ソレノイド、 202 プランジャ、 203 定着ギア、 204 駆動ギア、 211 ヒータ制御部、 D1 距離(第1の距離)、 D2 距離(第2の距離)、 E1~E4 軌道、 N 清掃カウント、 Nc 清掃カウント閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
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