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特開2022-182093樹脂膜、樹脂膜の作成方法および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182093
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】樹脂膜、樹脂膜の作成方法および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20221201BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20221201BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G02B5/02 A
G02B1/111
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089426
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】横手 恵紘
【テーマコード(参考)】
2H042
2H291
2K009
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA40X
2H291FA43X
2H291FA82Z
2H291FA85Z
2H291FA95X
2H291FB02
2H291FB12
2H291FB22
2H291FB23
2H291FC07
2H291FC32
2H291FC33
2H291FD07
2H291FD35
2H291GA23
2H291HA11
2H291LA02
2H291LA22
2H291LA25
2H291PA65
2K009AA04
2K009CC02
2K009CC09
2K009CC21
2K009DD02
(57)【要約】
【課題】例えば、ディスプレイに適用した場合に、視野角特性や反射防止特性を向上させることができる樹脂膜等を提供する。
【解決手段】樹脂膜は、低屈折率層17と、異方拡散層16とを備える。低屈折率層17は、1.40以下の屈折率を有する。異方拡散層16は、光を異方拡散させる。また、異方拡散層16は、異方性粒子162と、樹脂部161と、を含む。異方性粒子162は、異方形状を有し、長軸方向が一方向に沿って配列する。樹脂部161は、異方性粒子162を分散し、樹脂からなる。樹脂膜の正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.40以下の屈折率を有する低屈折率層と、
光を異方拡散させる異方拡散層と、
を備え、
前記異方拡散層は、
異方形状を有し、長軸方向が一方向に沿って配列する異方性粒子と、当該異方性粒子を分散し、樹脂からなる樹脂部と、を含み、
正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下である樹脂膜。
【請求項2】
前記異方性粒子は、長軸方向の屈折率と短軸方向の屈折率とが異なる請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項3】
前記樹脂部の屈折率をn、前記異方性粒子の長軸方向の屈折率をnax、当該異方性粒子の短軸方向の屈折率をnayとしたときに、下記(I)および(II)の関係の少なくとも一方が成り立つ請求項2に記載の樹脂膜。
(I)|n-nax|<0.04かつ0.04<|n-nay|<0.50
(II)|n-nay|<0.04かつ0.04<|n-nax|<0.50
【請求項4】
前記異方性粒子は、長軸方向の長さが、1μm以上200μm以下であり、短軸方向の長さが、0.1μm以上10μm以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項5】
前記異方性粒子の長軸方向の長さと短軸方向の長さとの比であるアスペクト比が、10以上である請求項4に記載の樹脂膜。
【請求項6】
前記異方性粒子と前記樹脂部との界面が相溶している請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項7】
前記樹脂部の屈折率が1.45以上1.65以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項8】
前記異方性粒子は、金属酸化物、炭酸塩化合物、水酸化化合物およびリン酸塩化合物のうち少なくとも1つを含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項9】
前記樹脂部および前記低屈折率層の屈折率の差が、0.1以上である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項10】
前記異方拡散層は、ヘイズ値が20%以上80%以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項11】
前記異方拡散層は、異方拡散度が3以上である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項12】
屈折率が1.60以上の高屈折率層をさらに備える請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項13】
屈折率が1.54以上のハードコート層をさらに備える請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項14】
前記低屈折率層および前記異方拡散層を支持する基材をさらに備え、
前記基材は、前記低屈折率層および前記異方拡散層の間に設けられる請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項15】
前記異方拡散層は、前記低屈折率層を支持する基材として機能する請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項16】
1.40以下の屈折率を有する低屈折率層を作成する低屈折率層作成工程と、
異方形状を有し、長軸方向が一方向に沿って配列する異方性粒子と、当該異方性粒子を分散し、樹脂からなる樹脂部と、を含み、正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下である、光を異方拡散させる異方拡散層を作成する異方拡散層作成工程と、
を含む樹脂膜の作成方法。
【請求項17】
前記異方拡散層は、前記低屈折率層を支持する基材であり、
前記低屈折率層作成工程は、前記低屈折率層を前記基材上に形成する請求項16に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項18】
前記異方拡散層は、延伸されることで作成される請求項16に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項19】
画像の表示を行う表示手段と、
前記表示手段の表面に設けられ、請求項1乃至15の何れか1項に記載の樹脂膜と、
を備える表示装置。
【請求項20】
基材と、
前記基材上に設けられ、請求項1乃至15の何れか1項に記載の樹脂膜と、
を有する光学部材。
【請求項21】
光を偏光させる偏光手段と、
前記偏光手段上に設けられ、請求項1乃至15の何れか1項に記載の樹脂膜と、
を有する偏光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜等に関する。より詳しくは、表示装置の表示手段の表面に設ける樹脂膜等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等の表示装置が知られている。また、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD:Electroluminescence Display)、フィールドエミッションディスプレイ(FED:Field Emission Display)等の表示装置が知られている。これらの表示装置の画像表示面には、通常、低屈折率層を有する反射防止フィルムや防眩フィルムが設けられている。そして、低屈折率層により、観察者および観察者の背景等の映り込みを抑制する。
低屈折率層は、通常は、反射防止フィルムの最表面に設けられている。そして、低屈折率層および低屈折率層と下層との界面からの反射光が打ち消しあうことによって反射光を低減し、映り込みを抑制する。
液晶ディスプレイはその画像表示原理より、他の画像表示装置と比べて斜め方向から観察した際の画質(視野角特性)が劣る傾向にある。具体的には、斜め方向からの観察時の輝度やコントラスト比が正面観察時と比較して大きく低下してしまう。
一方、近年、画像光を拡散する拡散層を適用して、液晶ディスプレイの視野角特性を改善する方法が注目を集めている。
【0003】
特許文献1には、反射防止フィルムについて記載されている。この反射防止フィルムは、透明基材上に、少なくとも1層の光拡散層を有する。そして、その上に少なくとも1層の低屈折率層を有する反射防止フィルムにおいて、光拡散層がヘイズ値40%以上である。そして、低屈折率層が熱硬化型または電離放射線硬化型の含フッ素樹脂の硬化物からなる。また、5度入射における鏡面反射率の450nmから650nmまでの波長領域での平均値が2.5%以下である。
【0004】
特許文献2には、光学構造体について記載されている。この光学構造体は、反射防止フィルム下部に配置される。この光学構造体は、低屈折率層と高屈折率層とを備える。低屈折率層と高屈折率層との界面は凹凸形状をなす。凹凸形状の凹部は低屈折率層側に凹む。凸部は高屈折率層側に凸となる。凹部及び凸部のそれぞれは、低屈折率層及び高屈折率層の面方向に沿って延びる平坦部を有する。凹凸形状の側面では、凹部の平坦部を挟んで隣り合う2つの側面が低屈折率層側に向けて先細り形状を形成する。凸部の平坦部を挟んで隣り合う2つの側面が高屈折率層側に向けて先細り形状を形成する。そして高屈折率層が表示装置の表示面側に向けられるように配置される。屈折率差を持った凹凸構造界面での屈折および回折を利用して、画像光を特定方向に拡散させる。
【0005】
特許文献3には、異方性光拡散粘着積層体が記載されている。この異方性光拡散粘着積層体は、粘着剤を含有する粘着層を2層以上有する粘着積層体である。その少なくとも1層の粘着層は、粘着剤と屈折率の異なる針状フィラーを含有する。そして、針状フィラーが略同一方向に配向して分散されている。また、この異方性光拡散粘着積層体においては、針状フィラーの配向方向が互いに異なる2層の粘着層を有していてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-114304号公報
【特許文献2】特開2020-16881号公報
【特許文献3】特開2004-258105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光拡散層を適用する方法は、画像光を等方的に拡散させるため、正面観察時の輝度およびコントラスト比を大幅に低下させてしまう。
低屈折率層と高屈折率層との界面を、凹凸形状をなすようにする方法は、微細な構造を転写した高価なフィルムを使用する必要がある。また、凹凸形状を有するフィルムをディスプレイ内に接着する必要があるため、必要部材数の増加や製造工程の複雑化を招く。さらに、照明などの外光が入射した際にも凹凸形状による回折で色割れが発生し、ディスプレイ上に虹色のムラが視認されてしまう。
また、異方性光拡散粘着積層体を使用する方法は、粘着樹脂中に針状フィラーを配合することで特定方向に偏った光拡散を可能とする。これらをディスプレイ内に適用することで視野角を拡大することが可能となる。しかしディスプレイ内に新たに光拡散性の大きい粘着層を設ける必要がある。そのため、ディスプレイの正面方向の輝度やコントラストの低下を招きやすい。また、必要部材数の増加や製造工程の複雑化により製造コストの増加をもたらす。さらに、外光が入射した際の粘着層からの光散乱の影響が大きい。そして、反射防止フィルムを設けてもディスプレイ表面の反射率が、低下せずディスプレイが白みを帯びて見えてしまう。
本発明は、例えば、ディスプレイに適用した場合に、視野角特性や反射防止特性を向上させることができる樹脂膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂膜は、低屈折率層と、異方拡散層とを備える。低屈折率層は、1.40以下の屈折率を有する。異方拡散層は、光を異方拡散させる。また、異方拡散層は、異方性粒子と、樹脂部と、を含む。異方性粒子は、異方形状を有し、長軸方向が一方向に沿って配列する。樹脂部は、異方性粒子を分散し、樹脂からなる。樹脂膜の正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下である。
【0009】
ここで、異方性粒子は、長軸方向の屈折率と短軸方向の屈折率とが異なるようにすることができる。
また、樹脂部の屈折率をnとする。異方性粒子の長軸方向の屈折率をnaxとする。異方性粒子の短軸方向の屈折率をnayとする。このとき、下記(I)および(II)の関係の少なくとも一方が成り立つ。
(I)|n-nax|<0.04かつ0.04<|n-nay|<0.50
(II)|n-nay|<0.04かつ0.04<|n-nax|<0.50
【0010】
さらに、異方性粒子は、長軸方向の長さが、1μm以上200μm以下であるようにすることができる。さらに、異方性粒子は、短軸方向の長さが、0.1μm以上10μm以下であるようにすることができる。
またさらに、異方性粒子の長軸方向の長さと短軸方向の長さとの比であるアスペクト比が、10以上にすることができる。
そして、異方性粒子と樹脂部との界面が相溶するようにすることができる。
【0011】
また、樹脂部の屈折率が1.45以上1.65以下であるようにすることができる。
さらに、異方性粒子は、金属酸化物、炭酸塩化合物、水酸化化合物およびリン酸塩化合物のうち少なくとも1つを含むようにすることができる。
またさらに、樹脂部および低屈折率層の屈折率の差が、0.1以上であるようにすることができる。
そして、異方拡散層は、ヘイズ値が20%以上80%以下であるようにすることができる。
また、異方拡散層は、異方拡散度が3以上であるようにすることができる。
【0012】
そして、屈折率が1.60以上の高屈折率層をさらに備えるようにすることができる。
また、屈折率が1.54以上のハードコート層をさらに備えるようにすることができる。
そして、低屈折率層および異方拡散層を支持する基材をさらに備えるようにすることができる。この基材は、低屈折率層および異方拡散層の間に設けられる。
また、異方拡散層は、低屈折率層を支持する基材として機能するようにすることができる。
【0013】
また、本発明の樹脂膜の作成方法は、低屈折率層作成工程と、異方拡散層作成工程とを含む。低屈折率層作成工程は、1.40以下の屈折率を有する低屈折率層を作成する。異方拡散層作成工程は、光を異方拡散させる異方拡散層を作成する。異方拡散層は、異方性粒子と、樹脂部と、を含む。異方性粒子は、異方形状を有し、長軸方向が一方向に沿って配列する。樹脂部は、異方性粒子を分散し、樹脂からなる。樹脂膜の正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下である。
【0014】
そして、異方拡散層は、低屈折率層を支持する基材とすることができる。この場合、低屈折率層作成工程は、低屈折率層を基材上に形成する。
また、異方拡散層は、延伸されることで作成されるようにすることができる。
【0015】
そして、本発明の表示装置は、画像の表示を行う表示手段と、表示手段の表面に設けられる上記樹脂膜とを備える。
また、本発明の光学部材は、基材と、基材上に設けられる上記樹脂膜とを備える。
さらに、本発明の偏光部材は、光を偏光させる偏光手段と、偏光手段上に設けられる上記樹脂膜とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、ディスプレイに適用した場合に、視野角特性や反射防止特性を向上させることができる樹脂膜等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、本実施の形態が適用される表示装置について説明した図である。(b)は、図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネルの構成の一例を示したものである。
図2】基材、異方拡散層および低屈折率層について示した図である。
図3】(a)~(c)は、異方拡散層を説明した図である。
図4】(a)~(e)は、樹脂膜の構成の例について示した図である。
図5】(a)~(b)は、本実施の形態が適用される偏光板の構成の例について示した図である。
図6】(a)は、図2に示すような層構造の樹脂膜の作成方法を示したフローチャートである。(b)は、異方拡散層、低屈折率層の作成方法を説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定するものではない。またその要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0019】
<表示装置の説明>
図1(a)は、本実施の形態が適用される表示装置1について説明した図である。
図示する表示装置1は、例えばPC(Personal Computer)用の液晶ディスプレイ、あるいは液晶テレビなどである。表示装置1は、液晶パネル1aに画像を表示する。
【0020】
<液晶パネル1aの説明>
図1(b)は、図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネル1aの構成の一例を示したものである。
液晶パネル1aは、画像の表示を行う表示手段の一例である。本実施の形態の液晶パネル1aは、例えば、VA型液晶パネルである。図示する液晶パネル1aは、バックライト11と、偏光フィルム12aとを有する。また、液晶パネル1aは、位相差フィルム13aと、液晶14と、位相差フィルム13bと、偏光フィルム12bとを有する。さらに、液晶パネル1aは、基材15と、異方拡散層16と、低屈折率層17とを有する。そしてこれらは、この順で内部側から表面側に向け積層する構造となる。なお、以下、偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとを区別しない場合は、単に、偏光フィルム12と言うことがある。本実施の形態で、異方拡散層16および低屈折率層17の積層体は、樹脂膜の一例である。また、基材15、異方拡散層16、低屈折率層17の積層体も樹脂膜の一例である。
【0021】
バックライト11は、液晶14に対し光を照射する。バックライト11は、例えば、冷陰極蛍光ランプや白色LED(Light Emitting Diode)である。
偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、光を偏光させる偏光手段の一例である。偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとは、偏光方向が互いに直交するようになっている。偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA:poly-vinyl alcohol)にヨウ素化合物分子を含ませた樹脂フィルムを備える。そしてこれをトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)からなる樹脂フィルムで挟み接着したものである。ヨウ素化合物分子を含ませることで光が偏光する。
【0022】
位相差フィルム13a、13bは、液晶パネル1aの視野角依存性を補償する。液晶14を透過した光は、直線偏光から楕円偏光に偏光状態が変化する。例えば、黒表示させた場合、液晶パネル1aを鉛直方向から見たときは、黒色に見える。一方、液晶パネル1aを斜め方向から見たときは、液晶14のリタデーションが発生する。また、偏光フィルム12の軸が90°ではなくなる。そのため、光抜けが生じて、コントラストが低下するという問題が生じる。即ち、液晶パネル1aに視野角依存性が生じる。位相差フィルム13a、13bは、この楕円偏光を直線偏光に戻す機能を有する。これにより、位相差フィルム13a、13bは、液晶パネル1aの視野角依存性を補償することができる。
【0023】
液晶14には、図示しない電源が接続され、この電源により電圧を印加すると液晶14の配列方向が変化する。そして液晶14は、これにより、光の透過状態を制御する。
VA型液晶パネルの場合、液晶14に電圧を印加していないとき(電圧OFF)は、液晶分子が、図中垂直方向に配列する。そして、バックライト11から光を照射すると、まず、偏光フィルム12aを光が通過して偏光となる。そして、偏光は、液晶14をそのまま通過する。さらに、偏光フィルム12bは、偏光方向が異なるため、この偏光を遮断する。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できない。即ち、液晶14に電圧を印加しない状態では、液晶の色は、「黒」となる。
【0024】
対して、液晶14に最大電圧を印加しているときは、液晶分子が、図中水平方向に配列する。そして、偏光フィルム12aを通過した偏光は、液晶14の作用により偏光の方向が90度回転する。そのため、偏光フィルム12bは、この偏光を遮断せず、透過させる。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できる。即ち、液晶14に最大電圧を印加している状態では、液晶の色は、「白」となる。また、電圧は、電圧OFFと最大電圧の間とすることもできる。この場合、液晶14は、図中上下方向と図中上下方向に対する垂直方向の間の状態となる。即ち、液晶14は、上下方向および垂直方向の双方に交差する方向である斜め方向に配列する。この状態では、液晶の色は、「グレー」となる。よって、液晶14に印加する電圧をOFFから最大電圧の間で調整することで、黒、白の他に、中間階調が表現できる。そして、これにより画像を表示する。
なお、図示はしていないが、カラーフィルタを使用することでカラー画像を表示することもできる。
【0025】
図2は、基材15、異方拡散層16および低屈折率層17について示した図である。
ここで、図中、上側は、液晶パネル1aの表面側であり、下側は、液晶パネル1aの内部側である。
【0026】
基材15は、異方拡散層16および低屈折率層17を形成するための支持体である。基材15は、全光線透過率85%以上の透明基材であることが好ましい。基材15は、例えば、上述したトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)が用いられる。またこれに限られるものではなく、ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)等を使用することもできる。ただし本実施の形態では、トリアセチルセルロース(TAC)をより好適に使用することができる。基材15は、例えば、20μm以上200μm以下の厚さを有する。
【0027】
異方拡散層16は、光を異方拡散させる。ここで、「異方拡散」とは、特定方向に強い光拡散性を有する性質である。そして、「異方拡散層」は、特定方向に強い光拡散性を有する拡散層である。異方拡散層を有する部材にレーザー光など等方的な光(円形)を照射した場合、その透過光は直線状または楕円状となる。
【0028】
図3(a)~(c)は、異方拡散層16を説明した図である。
このうち、図3(a)は、異方拡散層16を図2のIII方向から見た図である。
図2および図3(a)に示すように、異方拡散層16は、少なくとも、樹脂部161と、異方性粒子162とを備える。
樹脂部161は、異方性粒子162を分散し、樹脂からなる。よって、樹脂部161は、異方性粒子162を、長軸方向が一方向に沿って配列するように固定する分散層であると言うこともできる。
異方性粒子162は、異方形状を有し、樹脂部161内で長軸方向が一方向に沿って配列する。この場合、図2に示すように、異方性粒子162は、長軸方向が、異方拡散層16の面内方向に沿って配列する。またこの場合、図3(a)に示すように、図中上下方向に沿って配列する。
【0029】
樹脂部161は、上述したように樹脂からなる。樹脂部161の屈折率が1.45以上1.65以下であることが好ましい。異方拡散層16の正反射光成分を除いた反射率であるSCE(Specular Component Exclude)は、1.0%以下であることが必要である。樹脂部161の屈折率を、この範囲とすることで、SCEが1.0%以下になりやすくなる。対して、この範囲を外れると、SCEが1.0%を越えやすくなる。
また、樹脂部161および低屈折率層17の屈折率の差が、0.1以上であることが好ましい。樹脂部161および低屈折率層17の屈折率の差をより大きくすることにより、反射率をさらに低減することができる。
【0030】
樹脂部161を構成する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を使用することができる。また、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂を使用することができる。
【0031】
異方性粒子162は、異方形状であり、本実施の形態では、楕円球形状をなす。そして、異方性粒子162は、この形状に起因して、長軸方向の屈折率と短軸方向の屈折率とが異なる。これにより、異方拡散層16に、異方拡散性が発現する。また、異方性粒子162の有する屈折率と、樹脂部161との屈折率は、異なる。なお、異方性粒子162の形状は、異方形状であれば、特に限られるものではない。例えば、紡錘形状、針状形状、繊維状形状、円筒形状、円盤形状などであってもよい。
【0032】
図3(b)、(c)は、異方性粒子162の屈折率について示した図である。ここでは、異方性粒子162の長軸方向の屈折率をnax、短軸方向の屈折率をnay、樹脂部161の屈折率をnとしている。この場合、異方拡散方向は、図中横方向であるとき、図3(b)の場合、屈折率naxと屈折率nとの差は、小さい方が好ましい。また、図3(c)の場合、屈折率nayと屈折率nとの差は、小さい方が好ましい。つまり、異方拡散方向の垂直方向の異方性粒子162の屈折率nax、nayと、樹脂部161の屈折率nとの差は、小さい方が好ましい。
さらに具体的には、下記(I)および(II)の関係の少なくとも一方が成り立つことが好ましい。異方性粒子162と樹脂部161との屈折率を以下の範囲内とすることで、異方拡散方向と垂直な方向の後方散乱を抑制する。そして、異方拡散層16のSCEを低くすることが可能となる。
【0033】
(I)|n-nax|<0.04かつ0.04<|n-nay|<0.50
(II)|n-nay|<0.04かつ0.04<|n-nax|<0.50
【0034】
また、異方拡散層16のSCEを、1.0%以下にするため、異方拡散層16の長さやアスペクト比が下記の範囲であることが好ましい。そしてこの範囲を外れると、SCEが1.0%を越えやすくなる。
即ち、異方性粒子162は、長軸方向の長さが、0.5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、異方性粒子162は、長軸方向の長さが、1μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
そして、異方性粒子162は、短軸方向の長さが、0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。また、異方性粒子162は、短軸方向の長さが、0.1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
異方性粒子162を、このようなサイズにすることで、良好な異方拡散性を確保しつつ、異方性粒子162と樹脂部161との界面での後方散乱を抑制し、異方拡散層のSCEを低減しやすくなる。
【0035】
さらに、異方性粒子162の長軸方向の長さと短軸方向の長さとの比であるアスペクト比が、10以上であることが好ましい。また、アスペクト比が、20以上であることがさらに好ましい。異方性粒子162のアスペクト比をこの範囲とすることで、ディスプレイの視野角特性を向上させることが可能な異方拡散性を確保しやすくなる。
【0036】
また、同様の観点から、異方性粒子162と樹脂部161との界面が相溶していることが好ましい。これにより、両者の界面での屈折率が、連続して変化し、後方散乱を低減することが可能となる。そして、SCEをさらに小さくしやすくなる。なお、この場合、異方性粒子162と樹脂部161と境界は、相溶しているため、曖昧である。しかしこの場合でも異方性粒子162は、樹脂部161中に粒子として存在することは、明らかである。界面の相溶化の方法としては、相溶化剤を配合する方法が挙げられる。また、詳しくは後述するが、異方拡散層16を作成する塗布溶液の塗布(塗工)時に異方性粒子162の成分を溶解する溶剤を配合する方法が挙げられる。界面が相溶していることは、異方拡散層16の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で確認することができる。
【0037】
異方性粒子162は、例えば、金属酸化物、炭酸塩化合物、水酸化化合物およびリン酸塩化合物のうち少なくとも1つを含む。金属酸化物は、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などである。また、異方性粒子162は、例えば、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、炭化窒素、塩基性硫酸マグネシウムなどの化合物である。また、異方性粒子162は、ガラスファイバ、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂などである。
【0038】
異方拡散層16は、ヘイズ値が20%以上80%以下であることが好ましい。また、ヘイズ値が30%以上65%以下であることがさらに好ましい。これにより、異方拡散層16をディスプレイに搭載した際にぎらつきの少ないシャープな画質を確保することが可能となる。
【0039】
なお、異方拡散層16の異方拡散性は、変角光度計(ゴニオフォトメーター)で測定することが可能である。光線を異方拡散層16に対し入射角0°(垂直方向)で照射した際の透過光を、受光角を変化させながら取得する。そしてこれにより、透過散乱光の強度分布状態を測定する。これを異方拡散方向と異方拡散方向に対して垂直な方向とで取得することで異方拡散性を定量的に評価することが可能となる。本実施の形態では、異方拡散性は、異方拡散度(ADV)にて評価する。異方拡散度は、以下の数式により算出できる。そして、異方拡散層16は、異方拡散度(ADV)が3以上であることが好ましい。また、ADVは、15以上であることがより好ましく、25以上であることがさらに好ましい。
【0040】
ADV=(変角光度計で測定した異方拡散方向の5°透過光量)/(変角光度計で測定した異方拡散方向と垂直方向の5°透過光量)
【0041】
低屈折率層17は、液晶パネル1aの反射率を低減させるための機能層である。
低屈折率層17は、屈折率が小さい。具体的には、低屈折率層17は、屈折率が、1.40以下であることが必要である。また、屈折率が、1.20以上1.35以下であることが好ましい。これにより、反射率が小さい液晶パネル1aが実現できる。低屈折率層17は、単層で形成しても多層で形成してもよいが、製造コストの観点からなるべく少ない層数で形成することが好ましい。低屈折率層17は、厚さが50nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0042】
そして、低屈折率層17は、バインダ171と、バインダ171中に分布する中空シリカ粒子172とを含む。また、低屈折率層17は、バインダ171の表面側に主に分布する表面改質剤173をさらに含む。
【0043】
バインダ171は、網目構造となっており、中空シリカ粒子172同士を連結する。バインダ171は、主成分として樹脂を含む。樹脂としては、含フッ素樹脂を含んでいてもよい。この場合、樹脂は、全て含フッ素樹脂でもよく、一部が含フッ素樹脂であってもよい。含フッ素樹脂は、フッ素を含む樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。また、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)である。さらに、例えば、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)である。含フッ素樹脂は、屈折率が低い。そのため、含フッ素樹脂を使用することで、低屈折率層17が、より低屈折率になりやすく、反射率をより低減することができる。
【0044】
また、含フッ素樹脂は、光硬化性含フッ素樹脂であることがさらに好ましい。光硬化性含フッ素樹脂は、下記一般式(1)~(2)で示す光重合性含フッ素モノマーが光重合したものである。そして、構造単位Mを0.1モル%以上100モル%以下含む。また構造単位Aを0モル%を超え99.9モル%以下含む。さらに数平均分子量が30,000以上1,000,000以下である。
【0045】
【化1】
【0046】
一般式(1)中、構造単位Mは一般式(2)で示す含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。また、構造単位Aは一般式(2)で示す含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である。
一般式(2)中、XおよびXは、HまたはFである。また、XはH、F、CHまたはCFである。XおよびXは、H、FまたはCFである。Rfは、炭素数1以上40以下の含フッ素アルキル基または炭素数2以上100以下のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に、Yが1個以上3個以下結合している有機基である。なおYは末端にエチレン性炭素-炭素二重結合を有する炭素数2以上10以下の1価の有機基である。また、aは0、1、2または3であり、bおよびcは、0または1である。
光重合性含フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のOPTOOL AR-110を例示することができる。また、ダイセルオルネクス社製のEBECRYL8110、共栄社化学社製のLINCシリーズなどを例示することができる。
また、フッ素原子を含まないバインダの具体例としては、共栄社化学製のライトアクリレートPOB-A、NP-A、DCP-A、TMP-A、UA-306I、UA-306Hが挙げられる。さらに、新中村化学社製のNKエステルA-DOD-N、A-200、A-BPE-4が挙げられる。またさらに、東亞合成社製のアロニックスM-315、M-306、M-408が挙げられる。またさらに、日本化薬社製のKAYARAD DPHA、DPEA-12などが挙げられる。これらのバインダは、膜強度を向上させる上で有効である。
【0047】
中空シリカ粒子172は、外殻層を有し、外殻層の内部は中空または多孔質体となっている。外殻層及び多孔質体は、主に酸化ケイ素(SiO)にて構成する。また外殻層の表面側には、光重合性基および水酸基が多数結合している。光重合性基と外殻層とは、Si-O-Si結合及び水素結合のうち、少なくとも一方の結合を介して結合している。光重合性基としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基を挙げることができる。すなわち、中空シリカ粒子172は、光重合性基として、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうち少なくとも一方を含む。光重合性基は、電離放射線硬化性基とも称する。中空シリカ粒子172は少なくとも光重合性基を有していればよく、これらの官能基の数、種類は特に限定しない。
【0048】
中空シリカ粒子172の平均一次粒子径は、35nm以上120nm以下であることが好ましい。また、中空シリカ粒子172の平均一次粒子径が、50nm以上100nm以下であることがより好ましい。平均一次粒子径が35nm未満の場合、中空シリカ粒子172の空隙率が小さくなりやすい。そのため、低屈折率層17の屈折率を下げる効果が生じにくくなる。また、中央粒径が120nmを超える場合、低屈折率層17の表面の凹凸が顕著になりやすい。そのため、防汚性や耐擦傷性が低下しやすい。
【0049】
中空シリカ粒子172の平均一次粒子径は、粒子分散液の乾燥膜のSEM、TEMおよびSTEMを用いた観察像により測定することが可能である。
【0050】
中空シリカ粒子172の配合量は、低屈折率層17の中で30質量%以上65質量%以下であることが好ましい。中空シリカ粒子172の配合量が30質量%未満であると、低屈折率層17の反射率が高くなりやすい。また、中空シリカ粒子172の配合量が65質量%を超えると、膜強度が低下しやすくなる。さらに、付着物が目立ちやすく、拭き取りがしにくくなる。
【0051】
また、中空シリカ粒子172は、中空シリカ粒子172の粒径に対する頻度曲線(粒度分布曲線)に複数の極大値を有するようにすることができる。つまり、この場合、中空シリカ粒子172は、粒径分布の異なる複数のものからなる。例えば、中空シリカ粒子172の平均一次粒子径が、30nm、60nm、75nmのものの中から複数選択し、混合して使用する。
【0052】
表面改質剤173は、バインダ171の表面側に主に分布し、低屈折率層17の表面を改質する。即ち、表面改質剤173は、低屈折率層17の表面側に偏析している。なお、バインダ171の内部に存在しても、低屈折率層17の機能を損なうものではない。
本実施の形態では、表面改質剤173は、撥油性の表面改質剤および親油性の表面改質剤を含む。
【0053】
撥油性の表面改質剤は、バインダ171等に配合し表面に偏析することで、膜表面の撥油性を向上させる役割を担う。撥油性の表面改質剤の効果は、オレイン酸等の接触角を測定することで確認することができる。この場合、撥油性の表面改質剤の添加時と未添加時との膜表面の接触角の差(添加時の接触角-未添加時の接触角)により、効果を確認できる。この場合、撥油性の表面改質剤を添加すると接触角は、大きくなる。そして、接触角の差が、10°以上のものが好ましい。また、接触角の差が、20°以上のものがより好ましく、30°以上のものがさらに好ましい。
【0054】
撥油性の表面改質剤は、光重合性基を有するフッ素系化合物であることが好ましい。
具体的な撥油性の表面改質剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKY-1203、KY-1207が挙げられる。また、例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC-HPが挙げられる。さらに、例えば、DIC株式会社製のメガファックF-477、F-554、F-556、F-570、RS-56、RS-58、RS-75、RS-78、RS-90が挙げられる。またさらに、例えば、株式会社フロロテクノロジー製のFS-7024、FS-7025、FS-7026、FS-7031、FS-7032が挙げられる。またさらに、例えば、第一工業製薬株式会社製のH-3593、H-3594が挙げられる。さらに、例えば、AGC株式会社製のSURECO AF Seriesが挙げられる。そして、例えば、株式会社ネオス製のフタージェントF-222F、M-250、601AD、601ADH2が挙げられる。
【0055】
親油性の表面改質剤は,バインダ171等に配合し表面に偏析することで、膜表面の親油性を向上させる役割を担う。親油性の表面改質剤の効果は、オレイン酸等の接触角を測定することで確認することができる。この場合、親油性の表面改質剤の未添加時と添加時との膜表面の接触角の差(未添加時の接触角-添加時の接触角)により、効果を確認できる。この場合、親油性の表面改質剤を添加すると接触角は、小さくなる。そして、接触角の差が、3°以上のものが好ましい。また、接触角の差が、5°以上のものがより好ましく、7°以上のものがさらに好ましい。
【0056】
具体的な親油性の表面改質剤としては、例えば、三洋化成工業株式会社製のメルクリア350Lが挙げられる。また、例えば、株式会社ネオス製のフタージェント730LM、602A、650A、650ACが挙げられる。
【0057】
低屈折率層17は、皮脂等の付着物が付着しても、付着物が目立ちにくい。また、付着物の拭き取り除去が容易である。これは、中空シリカ粒子172を多く含有させても同様である。
【0058】
また、本実施の形態の樹脂膜の構成は、図2に示した形態に限られるものではない。
図4(a)~(e)は、樹脂膜の構成の例について示した図である。
このうち、図4(a)は、図2の場合と同様であり、基材15、異方拡散層16および低屈折率層17が、この順で積層する。
図4(b)は、基材15、異方拡散層16、ハードコート層18および低屈折率層17が、この順で積層した例を示した図である。即ち、図4(a)の場合に比較して、異方拡散層16と低屈折率層17との間に、ハードコート層18が形成されている。この場合、樹脂膜の強度を向上させることができる。ハードコート層18の屈折率は、1.54以上であることが好ましい。これにより、低屈折率層17のみの場合よりも反射率を低減することができる。そして、より優れた映り込み防止性を付与することが可能である。
【0059】
図4(c)は、基材15、異方拡散層16、ハードコート層18、高屈折率層19および低屈折率層17が、この順で積層した例を示した図である。即ち、図4(b)の場合に比較して、ハードコート層18と低屈折率層17との間に、高屈折率層19が形成されている。高屈折率層19は、低屈折率層17よりも屈折率が高い層である。高屈折率層19の屈折率は、1.60以上であることが好ましい。これにより、低屈折率層17のみの場合よりも反射率を低減することができる。そして、より優れた映り込み防止性を付与することが可能である。
【0060】
図4(d)は、異方拡散層16、基材15、ハードコート層18、高屈折率層19および低屈折率層17が、この順で積層した例を示した図である。つまり、図4(a)に比較して、異方拡散層16が、基材15に対し、内部側に移動した場合を示している。この場合、基材15は、低屈折率層17および異方拡散層16の間に設けられる、と言うこともできる。
【0061】
図4(e)は、基材15に異方拡散層16の機能を持たせた場合を示している。つまり、基材15を構成する樹脂の中に、異方性粒子162を分散させた場合を示している。この場合、異方拡散層16は、低屈折率層17を支持する基材15として機能する、と言うこともできる。
【0062】
ハードコート層18は、液晶パネル1aに傷を生じさせにくくするための機能層である。ハードコート層18は、例えば、樹脂を主成分とする母材としてのバインダからなる。バインダとしては、低屈折率層17で例示したものと同様のものを用いることができる。
また、バインダの他に、金属酸化物粒子を含ませることもできる。金属酸化物粒子として、例えば、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化セリウム等を使用することができる。これにより、ハードコート層18のハードコート性が向上する。
さらに、導電性物質を添加してもよい。導電性物質は、例えば、金属微粒子や導電性ポリマーなどである。より具体的には、導電性物質は、例えば、アンチモン(Sb)、リン(P)、インジウム(In)をドープした錫酸化物、フッ素系アニオンやアンモニウム塩を含んだイオン液体、PEDOT/PSSなどの導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどである。また、導電性物質は、1種類に限らず2種類以上添加させてもよい。これによりハードコート層18の表面抵抗値が低くなり、ハードコート層18に帯電防止機能を付与することができる。
【0063】
液晶パネル1aを低反射化するためには、ハードコート層18の屈折率は、1.48以上1.65以下が好ましい。また、1.50以上1.60以下とすることがより好ましく、1.54以上1.56以下とすることがさらに好ましい。ハードコート層18を高屈折率化することで反射率を低減することが可能である。一方、ハードコート層18の屈折率が高すぎると反射率の角度依存性の悪化や色感の調整が困難となる。
また、ハードコート層18の厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。また、ハードコート層18の厚みは、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0064】
高屈折率層19は、低屈折率層17の下層に設けられ、反射率をさらに低減させるための機能層である。
高屈折率層19は、バインダと高屈折率粒子とを含む。高屈折率層19は、例えば、バインダと高屈折率粒子を含んだ塗布溶液から形成することが可能である。高屈折率層19は、単層で形成しても多層で形成してもよいが、製造コストの観点からなるべく少ない層数で形成することが好ましい。
【0065】
液晶パネル1aを低反射化するためには、高屈折率層19の屈折率は高くすることが好ましい。具体的な屈折率としては、1.55以上1.80以下が好ましく、1.60以上1.75以下とすることがより好ましい。
また、高屈折率層19の厚みの上限としては、500nm以下が好ましい。また、350nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。そして、高屈折率層19の厚みの下限としては、50nm以上が好ましい。また、80nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。
【0066】
高屈折率粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、チタン酸バリウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、硫化亜鉛などが挙げられる。耐久安定性の観点から、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)が特に好ましい。
【0067】
高屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、1nm以上200nm以下が好ましい。また、3nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
高屈折率粒子の平均一次粒子径は、粒子分散液の乾燥膜のSEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)およびSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いた観察像により測定することが可能である。
【0068】
上記高屈折率粒子は、凝集を抑制する観点で分散安定化処理が施されていることが好ましい。分散安定化の手段としては、粒子を表面処理したものを用いたり、分散剤を添加する手段が挙げられる。また、高屈折率粒子よりも表面電荷量の少ない別の粒子を添加する手段も挙げられる。
【0069】
高屈折率粒子の含有量は、バインダ100質量部に対して、20質量部以上500質量部以下であることが好ましい。また、50質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましい。
【0070】
バインダとしては、低屈折率層17で例示したものと同様のものを用いることができる。ただし、高屈折率粒子の含有量を低減するためにバインダの屈折率は1.50以上1.70以下程度であることが好ましい。
高屈折率層19は、バインダ、高屈折率粒子の他に必要に応じて、他の成分を含有してもよい。例えば、重合開始剤、紫外線吸収材、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤および希釈溶媒を含んでいてもよい。レベリング剤や界面活性剤等の添加により高屈折率層19の表面状態を制御する、その結果、上層の性能を改善することが可能となる。この場合、上層は、例えば、低屈折率層17である。
【0071】
また、本実施の形態の樹脂膜を有するフィルムを偏光板の表面フィルムとして使用することができる。
図5(a)~(b)は、本実施の形態が適用される偏光板の構成の例について示した図である。
図5(a)に示す偏光板は、基材15a、接着層21aおよび偏光フィルム12が積層する。そして、さらにその上に、接着層21b、基材15b、異方拡散層16および低屈折率層17が積層する。なおこの場合、基材および接着層は、それぞれ2層形成されるが、同じ材料から構成されていてもよい。また、異なる材料から構成されていてもよい。
この場合、基材15a上に偏光フィルム12を接着層21aにより貼り合わせる。そして、さらにその上に、基材15b、異方拡散層16および低屈折率層17からなる樹脂膜を、接着層21bにより貼り合わせる。接着層21a、21bは、例えば、UV(ultraviolet)接着剤による層である。また、接着層21a、21bは、PSA(Pressure Sensitive Adhesive:感圧接着剤)であってもよい。さらに、接着層21a、21bは、OCA(Optical Clear Adhesive)であってもよい。またさらに、接着層21a、21bは、OCR(Optical Clear Resin)であってもよい。そしてこの中でも、UV接着剤を好適に用いることができる。
【0072】
また、図5(b)に示す偏光板は、基材15a、接着層21aおよび偏光フィルム12が積層する。そして、その上に、接着層21bおよび基材15cが積層する。さらにその上に、接着層21c、基材15b、異方拡散層16および低屈折率層17が積層する。つまり、図5(b)に示す偏光板は、図5(a)の偏光板に比較して、基材15c、接着層21cが加わる点が異なる。この場合、例えば、接着層21a、21bを、UV接着剤による層とし、接着層21cをPSAによる層とすることができる。
【0073】
<樹脂膜の作成方法の説明>
次に、図2に示すような層構造の樹脂膜の作成方法の説明を行う。
図6(a)は、図2に示すような層構造の樹脂膜の作成方法を示したフローチャートである。
まず、異方拡散層16を作成する(ステップ101:異方拡散層作成工程)。異方拡散層16は、基材15上に塗工してもよいし、溶融押出などにより異方拡散フィルムを形成してもよい。
また必要に応じ、異方拡散層16を延伸する(ステップ102:延伸工程)。異方拡散層16を延伸することで、異方性粒子162の配向性が向上し、異方拡散性を向上させることができる。また、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂等の有機粒子を含んだ異方拡散層16を上記樹脂のガラス転移点付近で延伸することで、有機粒子が異方形状となり異方拡散性が大幅に向上する。即ち、延伸前は、等方性粒子を含む等方拡散のフィルムである。これが、延伸することで、等方性粒子が異方性粒子162に変化する。その結果、異方性粒子162を含む異方拡散のフィルムとなる。
【0074】
さらに、異方拡散層16上に、低屈折率層17を作成する(ステップ103:低屈折率層作成工程)。
【0075】
また、異方拡散層16、低屈折率層17の各層は、何れも以下の方法で作成することができる。
図6(b)は、異方拡散層16、低屈折率層17の作成方法を説明したフローチャートである。
まず、各層を形成するための塗布溶液を準備する(ステップ201:準備工程)。ここで、「準備」とは、塗布溶液を作成することで準備する場合の他、塗布溶液を購入して準備する場合も含む。
【0076】
塗布溶液は、固形分と溶媒とからなる。
異方拡散層16を作成する場合、固形分は、樹脂部161の基となるモノマー、オリゴマーおよびポリマーを含む。また、固形分は、異方性粒子162を含む。モノマーおよび/またはオリゴマーは、重合することで、樹脂部161に含まれる樹脂となる。本実施の形態では、重合は、光重合や熱重合等である。ここでは、以下、このモノマーおよび/またはオリゴマーを、「バインダ成分」と言うことがある。
低屈折率層17を作成する場合、固形分は、バインダ171の基となるバインダ成分を含む。また、固形分は、中空シリカ粒子172および表面改質剤173を含む。
また各層の固形分として、光重合開始剤を含む。またさらに、固形分として、分散剤、消泡剤、紫外線吸収材、レベリング剤などを含んでいてもよい。
そして、それぞれの固形分を溶媒に投入し、撹拌することで、各層ごとの塗布溶液を作成できる。
【0077】
溶媒は、固形分を分散する。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンを使用することができる。また、MEK(メチルエチルケトン:methyl ethyl ketone)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、エタノール、メタノール、ノルマルプロピルアルコールを使用することができる。さらに、イソプロピルアルコール、Tert-ブチルアルコール、1-ブタノール、ミネラルスピリット、オレイン酸、シクロヘキサノンを使用することができる。またさらに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-methylpyrrolidone)、DMP(フタル酸ジメチル:dimethyl phthalate)、ジメチルカーボネート、ジオキソランを使用することができる。
塗布溶液の固形分濃度は、例えば2wt%以上80wt%以下とすることができる。異方拡散層16は、固形分濃度を高くして高粘度の状態で塗工する。これにより、塗工時に強いシェアフォースがかかり、異方性粒子162の配向性を向上させることができる。また、低屈折率層17などのnmオーダーの超薄膜を形成する際は、固形分濃度を低くして塗工時の膜厚均一性を確保することが望ましい。
【0078】
図6(b)に戻り、次に、塗布溶液を塗布(塗工)し塗布膜を作成する(ステップ202:塗布工程)。塗布を行う方法は、特に限られるものではないが、ダイ方式やマイクログラビア方式で塗布する方法で行うことができる。また、塗布溶液を滴下し、回転させ、遠心力で、均一な厚さの膜状体を作成する方法を採用することもできる。塗布溶液は加温した状態で塗工してもよい。
この際に、低屈折率層17の表面改質剤は、塗布膜の表面側に偏析する。
【0079】
さらに、塗布した塗布膜を乾燥させる(ステップ203:乾燥工程)。乾燥は、室温で放置して、溶媒を揮発させる方法や、加熱または真空引きなどにより溶媒を強制的に除去する方法により行うことができる。
【0080】
そして、紫外線や熱などのエネルギーの光を照射し、塗布膜中のバインダ成分を重合させる。これにより、塗布膜中のバインダ成分が硬化し、樹脂部161、バインダ171となる(ステップ204:重合工程)。以上の工程により、異方拡散層16、低屈折率層17の各層を形成することができる。なお、乾燥工程と重合工程は、塗布した塗布溶液を硬化させる硬化工程として捉えることができる。
【0081】
以上詳述した樹脂膜によれば、異方拡散層16を設けている。これにより入射光を特定方向に散乱させる。そして、優れた反射防止特性や表面輝度およびコントラストを維持しつつ、ディスプレイの視野角拡大を実現する。
また、以上詳述した樹脂膜によれば、異方性粒子162と樹脂部161の屈折率を上記(I)、(II)の式のように、最適化する。これにより、異方拡散層16内の後方散乱を抑制し、SCEを低減することが可能となる。そして、低屈折率層17を設けた際にも優れた反射防止特性を発現する。
また、ハードコート層18、高屈折率層19を設ける場合、屈折率を上述したようにし、反射率の低減に対し最適化を図ることができる。つまり、低屈折率層17のみの場合よりも反射率を低減することができる。そして、より優れた映り込み防止性を付与することが可能である。
また、図5に示したように、接着層21を用いて、樹脂膜と偏光フィルム12との貼り合わせが可能である。これにより、凹凸構造体タイプの異方拡散フィルムと比較して、層の積層数を大幅に削減することができる。そして、ディスプレイの輝度向上および製造コストダウンに寄与する。そして、凹凸構造体を用いないため、照明などの外光が入射した際にも構造体による回折由来の虹ムラが発生せず、優れた映り込み防止効果が発現する。
【0082】
なお、上述した例では、表示装置1は、液晶パネルに異方拡散層16、低屈折率層17を形成する場合を示した。ただし、これに限るものではなく、例えば、有機ELやブラウン管に形成してもよい。
またこれらの層を、ガラスやプラスチックなどの材料からなるレンズなどの表面に形成してもよい。この場合、レンズ等は基材の一例である。また、異方拡散層16、低屈折率層17を形成したレンズ等は、光学部材の一例である。また、基材として、TAC等からなるフィルムを使用することができる。そして、このフィルム上にこれらの層を形成してもよい。これは、低屈折率フィルムまたは反射防止フィルムとして使用できる。これも光学部材の一例である。
【0083】
さらに、上述した例では、光重合でバインダ成分を重合させる場合を示したが、熱重合でバインダ成分を重合させてもよい。
また、図4(e)で示したように、異方拡散層16を基材15として使用してもよい。
【実施例0084】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定するものではない。
【0085】
〔異方拡散層16の形成〕
まず、異方拡散層16の作成方法について説明する。ここでは、以下に示す方法で、異方拡散層16として、異方拡散層AD-1~AD-10を作成した。また、等方性拡散層ID-1~ID-2を作成した。等方性拡散層ID-1~ID-2は、等方的な光拡散性を有する拡散層である。異方拡散層AD-1~AD-10は、異方性粒子162を含む。対して、等方性拡散層ID-1~ID-2は、等方性粒子を含む。
【0086】
(異方拡散層AD-1)
異方拡散層AD-1は、以下のようにして作成した。
屈折率1.51のアクリロイル基を有するアクリルオリゴマーを、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、異方性粒子162として針状炭酸カルシウム粒子を、アクリルオリゴマー100質量部に対して65質量部配合した。この針状炭酸カルシウム粒子は、長軸方向の長さの平均が、20μm、短軸方向の長さの平均が、0.6μmである。また、屈折率は、長軸方向で1.66、短軸方向で1.50である。さらに、光重合開始剤(IGM Resin社製イルガキュア127)を4質量部配合した。その後、メチルエチルケトンおよびジメチルカーボネートを加え、固形分濃度が80質量%となるように調整した。
この組成物を、基材15であるTACフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。このTACフィルムは、フィルム厚が60μmである。次に、80℃にて2分間乾燥後、照度200mW/cmの高圧水銀ランプを3秒間照射して硬化した。これによりフィルム状の基材15上に異方拡散層AD-1を得た。異方拡散層AD-1の膜厚は、10μmであった。
【0087】
(異方拡散層AD-2)
異方性粒子162を変更したことを除き、異方拡散層AD-1と同様の方法で、異方拡散層AD-2を作成した。この異方性粒子162は、針状炭酸カルシウム粒子であるが、長軸方向長さの平均が、160μm、短軸方向長さの平均が、8μmである。即ち、異方拡散層AD-1よりも大きいものを使用した。また、屈折率は、長軸方向が1.66、短軸方向が1.50である。異方拡散層AD-2の膜厚は、10μmであった。
【0088】
(異方拡散層AD-3)
異方性粒子162を変更したことを除き、異方拡散層AD-1と同様の方法で、異方拡散層AD-3を作成した。この異方性粒子162は、針状炭酸カルシウム粒子であるが、長軸方向長さの平均が、3μm、短軸方向長さの平均が、0.2μmである。即ち、異方拡散層AD-1よりも小さいものを使用した。また、屈折率は、長軸方向が1.66、短軸方向が1.50である。異方拡散層AD-3の膜厚は、10μmであった。
【0089】
(異方拡散層AD-4)
異方拡散層AD-4は、以下のようにして作成した。異方拡散層AD-1に対し異方性粒子162を変更し、以下のようにして作成した。
屈折率1.49のアクリロイル基を有するアクリルオリゴマーを、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、異方性粒子162として塩基性硫酸マグネシウムファイバを、アクリルオリゴマー100質量部に対して80質量部配合した。この塩基性硫酸マグネシウムファイバは、長軸方向の長さの平均が、30μm、短軸方向の長さの平均が、0.8μmである。また、屈折率は、長軸方向で、1.55、短軸方向で、1.50である。さらに、光重合開始剤(IGM Resin社製イルガキュア127)を4質量部配合した。その後、メチルエチルケトンおよびジメチルカーボネートを加え、固形分濃度が70質量%となるように調整した。
この組成物を、基材15であるTACフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。このTACフィルムは、フィルム厚が60μmである。次に、80℃にて2分間乾燥後、照度200mW/cmの高圧水銀ランプを3秒間照射して硬化した。これによりフィルム状の基材15上に異方拡散層AD-4を得た。異方拡散層AD-4の膜厚は、10μmであった。
【0090】
(異方拡散層AD-5)
異方拡散層AD-5は、異方拡散層AD-1に対し異方性粒子162を変更し、以下のようにして作成した。
屈折率1.49のアクリロイル基を有するアクリルオリゴマーを、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、異方性粒子162として針状酸化チタン粒子を、アクリルオリゴマー100質量部に対して30質量部配合した。この針状酸化チタン粒子は、長軸方向の長さの平均が、20μm、短軸方向の長さの平均が、0.2μmである。また、屈折率は、長軸方向で、2.27、短軸方向で、2.10である。さらに、光重合開始剤(IGM Resin社製イルガキュア127)を4質量部配合した。その後、メチルエチルケトンおよびジメチルカーボネートを加え、固形分濃度が75質量%となるように調整した。
この組成物を、基材15であるTACフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。このTACフィルムは、フィルム厚が60μmである。次に、80℃にて2分間乾燥後、照度200mW/cmの高圧水銀ランプを3秒間照射して硬化した。これによりフィルム状の基材15上に異方拡散層AD-5を得た。異方拡散層AD-5の膜厚は、10μmであった。
【0091】
(異方拡散層AD-6)
異方拡散層AD-6は、異方拡散層AD-1に対し異方性粒子162を変更し、以下のようにして作成した。
屈折率1.49のアクリロイル基を有するアクリルオリゴマーを、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、異方性粒子162としてガラス長繊維を、アクリルオリゴマー100質量部に対して40質量部配合した。このガラス長繊維は、長軸方向の長さの平均が、120μm、短軸方向の長さの平均が、4μmである。また、屈折率は、1.55である。さらに、光重合開始剤(IGM Resin社製イルガキュア127)を4質量部配合した。その後、メチルエチルケトンおよびジメチルカーボネートを加え、固形分濃度が65質量%となるように調整した。
【0092】
この組成物を、基材15であるTACフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。このTACフィルムは、フィルム厚が60μmである。次に、80℃にて2分間乾燥後、照度200mW/cmの高圧水銀ランプを3秒間照射して硬化した。これによりフィルム状の基材15上に異方拡散層AD-6を得た。異方拡散層AD-6の膜厚は、10μmであった。
【0093】
(異方拡散層AD-7)
異方性粒子162を変更したことを除き、異方拡散層AD-1と同様の方法で、異方拡散層AD-7を作成した。この異方性粒子162は、針状炭酸カルシウム粒子であるが、長軸方向長さの平均が、0.8μm、短軸方向長さの平均が、0.1μmである。即ち、異方拡散層AD-3よりもさらに小さいものを使用した。また、屈折率は、長軸方向が1.66、短軸方向が1.50である。異方拡散層AD-7の膜厚は、10μmであった。
【0094】
(異方拡散層AD-8)
異方性粒子162を変更したことを除き、異方拡散層AD-1と同様の方法で、異方拡散層AD-8を作成した。この異方性粒子162は、針状炭酸カルシウム粒子であるが、長軸方向長さの平均が、250μm、短軸方向長さの平均が、12μmである。即ち、異方拡散層AD-2よりもさらに大きいものを使用した。また、屈折率は、長軸方向が1.66、短軸方向が1.50である。異方拡散層AD-8の膜厚は、10μmであった。
【0095】
(異方拡散層AD-9)
屈折率1.50のポリメタクリル酸メチル樹脂を、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、異方性粒子162としてポリスチレン粒子を、ポリメタクリル酸メチル樹脂100質量部に対して70質量部配合した。このポリスチレン粒子は、平均粒径が、5μmである。また、屈折率は、1.60である。その後、メチルエチルケトンを加え、固形分濃度が70質量%となるように調整した。
この組成物を、離型処理PETフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。次に、80℃にて5分間乾燥後、PETフィルムから剥がすことで、膜厚600μmの樹脂膜を得た。この樹脂膜をポリスチレンのガラス転移点付近(90℃以上120℃以下)の雰囲気にて3.5倍に延伸し、異方拡散層AD-9を得た。異方拡散層AD-9の膜厚は、60μmであった。
【0096】
(異方拡散層AD-10)
異方性粒子162を変更したことを除き、異方拡散層AD-1と同様の方法で、異方拡散層AD-10を作成した。この異方性粒子162は、針状炭酸カルシウム粒子であるが、長軸方向長さの平均が、220μm、短軸方向長さの平均が、12μmである。即ち、異方拡散層AD-8よりもさらに大きいものを使用した。また、屈折率は、長軸方向が1.66、短軸方向が1.50である。異方拡散層AD-10の膜厚は、10μmであった。
【0097】
(等方性拡散層ID-1)
等方性拡散層ID-1は、以下のようにして作成した。
屈折率1.51のアクリロイル基を有するアクリルオリゴマーを、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、異方性粒子162として炭酸カルシウム粒子を、アクリルオリゴマー100質量部に対して65質量部配合した。この炭酸カルシウム粒子は、平均粒径が、3μmである。また、屈折率は、1.65である。さらに、光重合開始剤(IGM Resin社製イルガキュア127)を4質量部配合した。その後、メチルエチルケトンおよびジメチルカーボネートを加え、固形分濃度が65質量%となるように調整した。
この組成物を、基材15であるTACフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。このTACフィルムは、フィルム厚が60μmである。次に、80℃にて2分間乾燥後、照度200mW/cmの高圧水銀ランプを3秒間照射して硬化した。これによりフィルム状の基材15上に等方性拡散層ID-1を得た。等方性拡散層ID-1の膜厚は、10μmであった。
【0098】
(等方性拡散層ID-2)
等方性拡散層ID-2は、以下のようにして作成した。
屈折率1.50のポリメタクリル酸メチル樹脂を、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤中に溶解させた。この混合液に、ポリスチレン粒子を樹脂100質量部に対し、70質量部配合した。このポリスチレン粒子は、平均粒径が、5μmである。また、屈折率は、1.60である。その後、メチルエチルケトンを加え、固形分濃度が70質量%となるように調整した。
この組成物を、離型処理PETフィルムに、バーコーターを用いて塗工した。次に、80℃にて5分間乾燥させた。乾燥後、PETフィルムから剥がすことで、膜厚60μmの樹脂膜を得た。
【0099】
〔ハードコート層18の形成〕
ここでは、表1に示す組成でハードコート層18の塗布溶液HC-1~HC-3を作成した。
【0100】
(塗布溶液HC-1)
塗布溶液HC-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマーを含む。また、塗布溶液HC-1は、光重合開始剤、消泡剤および溶媒を含む。バインダ成分は、共栄社化学株式会社製のUA-306Tを使用した。バインダ成分は、さらに、大阪有機化学工業株式会社製のビスコート#300、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30を使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184を使用した。またさらに、消泡剤として、コルコート株式会社製のNR-121X-9IPAを使用した。そして、消泡剤として、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、固形分であり、配合比は、表1に示した通りである。
そして、これらの固形分は、50質量%となるように、溶媒に投入し、撹拌した。溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルアセテートを使用した。
【0101】
(塗布溶液HC-2)
塗布溶液HC-2は、塗布溶液HC-1に比較して、金属酸化物粒子を添加した。この金属酸化物粒子は、平均一次粒径が30nmのナノ粒子であるジルコニウム酸化物を使用した。また、静電気防止剤であるコルコート株式会社製のNR-121X-9IPAを使用しなかった。これらの配合比は、表1に示した通りである。
【0102】
(塗布溶液HC-3)
塗布溶液HC-3は、塗布溶液HC-1に比較して、溶媒を変更した。即ち、溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルアセテートに加え、ジメチルカーボネートを使用した。これらの配合比は、表1に示した通りである。これにより、塗布溶液HC-3を作成した。
【0103】
塗布溶液HC-1~HC-3は、ワイヤバーにより塗布し、塗布膜を作成した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、80℃で1分間加熱することで乾燥した。そして、紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、ハードコート層18を形成することができた。
【0104】
【表1】
【0105】
〔高屈折率層19の形成〕
次に、高屈折率層19の作成方法について説明する。ここでは、表2に示す組成で高屈折率層19の塗布溶液HR-1を作成した。
【0106】
(塗布溶液HR-1)
塗布溶液HR-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマー、高屈折率粒子、光重合開始剤を含む。また、塗布溶液HR-1は、表面改質剤、および溶媒を含む。バインダ成分は、日本化薬株式会社製のKAYARAD DPHAを使用した。また、高屈折率粒子は、平均一次粒子径が10nmのナノ粒子であるジルコニウム酸化物を使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184を使用した。そして、表面改質剤は、DIC株式会社製のメガファックF-568を使用した。これらは、固形分であり、配合比は、表2に示した通りである。
そして、これらの固形分は、10質量%となるように、溶媒であるメチルイソブチルケトンに投入し、撹拌した。これにより、高屈折率層19の塗布溶液HR-1を作成した。
【0107】
塗布溶液HR-1は、ワイヤバーにより塗布し、塗布膜を作成した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、80℃で2分間加熱することで乾燥した。そして、紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、高屈折率層19を形成することができた。
【0108】
【表2】
【0109】
〔低屈折率層17の形成〕
次に、低屈折率層17の作成方法について説明する。ここでは、表3に示す組成で低屈折率層17の塗布溶液を作成した。
【0110】
(塗布溶液LR-1)
塗布溶液LR-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマー、中空シリカ粒子172を含む。また、塗布溶液LR-1は、光重合開始剤、撥油性の表面改質剤173、親油性の表面改質剤173を含む。さらに、塗布溶液は、消泡剤および溶媒を含む。バインダ成分は、ダイキン工業株式会社製のオプツール AR-100を使用した。さらに、バインダ成分は、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30を使用した。また、中空シリカ粒子172は、平均一次粒子径75nmのものを使用した。そして、中空シリカ粒子172の他に中実シリカ粒子として、平均一次粒子径10nmのものを使用した。中実シリカ粒子は、内部が中空ではなく、中実であるシリカ粒子である。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184を使用した。そして、撥油性の表面改質剤173として、信越化学工業株式会社製のKY-1203を使用した。さらに、親油性の表面改質剤173として、DIC株式会社製のメガファックRS-58を使用した。またさらに、親油性の表面改質剤173として、株式会社ネオス製のフタージェント650Aを使用した。そして、消泡剤として、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、固形分であり、質量配合比は、表3に示した通りである。
【0111】
そして、これらの固形分は、溶媒であるメチルイソブチルケトンおよびn-ブチルアルコールの混合液に投入し、撹拌した。このとき、固形分は、5質量%となるようにした。これにより、低屈折率層17の塗布溶液LR-1を作成した。なお、溶媒の質量配合比は、表3に示した通りである。
【0112】
(塗布溶液LR-2)
塗布溶液LR-2は、バインダ成分は、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30を使用した。また、バインダ成分は、新中村化学工業株式会社製のNKエステルA-200を使用した。そして、中空シリカ粒子172は、平均一次粒子径60nmのものを使用した。そして、中空シリカ粒子172の他に中実シリカ粒子として、平均一次粒子径10nmのものを使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE127を使用した。そして、撥油性の表面改質剤173として、信越化学工業株式会社製のKY-1203を使用した。さらに、親油性の表面改質剤173として、DIC株式会社製のメガファックRS-90を使用した。そして、消泡剤として、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、固形分であり、質量配合比は、表3に示した通りである。
【0113】
そして、これらの固形分は、溶媒であるメチルイソブチルケトンおよびTert-ブチルアルコールの混合液に投入し、撹拌した。このとき、固形分は、5質量%となるようにした。これにより、低屈折率層17の塗布溶液LR-2を作成した。なお、溶媒の質量配合比は、表3に示した通りである。
【0114】
塗布溶液LR-1~LR-2は、ワイヤバーにより塗布し、塗布膜を作成した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、60℃で3分間加熱することで乾燥した。そして、窒素ガス置換雰囲気下紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、低屈折率層17を形成することができた。
【0115】
【表3】
【0116】
〔樹脂膜の構成〕
次に以上記載した異方拡散層16、ハードコート層18、高屈折率層19、低屈折率層17の組み合わせについて説明する。ここでは、この順で、基材15上に、表4~6に示す組み合わせでこれらの各層を作成した。ただし、表4~6に示すように、各層の少なくとも1つを作成しなかった場合もある。
【0117】
(実施例1)
実施例1では、表4に示すように、基材15上に、異方拡散層16として異方拡散層AD-1を作成した。また、塗布溶液HC-1を用いて、異方拡散層16上に、ハードコート層18を作成した。さらに、塗布溶液LR-1を用いて、ハードコート層18上に、低屈折率層17を作成した。実施例1では、高屈折率層19は、形成しなかった。
【0118】
(実施例2~12)
実施例2~12として、表4~5に示す異方拡散層や塗布溶液の組み合わせで、樹脂膜を構成する各層を作成した。
このうち、実施例2は、実施例1に対し、異方拡散層AD-1ではなく、異方拡散層AD-2を使用した場合である。実施例2は、異方性粒子162として、大きさが、より好ましい範囲の中で上限に近いものを使用した場合である。
また、実施例3は、実施例1に対し、異方拡散層AD-1ではなく、異方拡散層AD-3を使用した場合である。実施例3は、異方性粒子162として、大きさが、より好ましい範囲の中で下限に近いものを使用した場合である。さらに、実施例3は、異方性粒子162として、アスペクト比が、好ましい範囲の中で下限に近いものを使用した場合である。
さらに、実施例4は、実施例1に対し、塗布溶液HR-1を使用し、高屈折率層19を作成した場合である。
またさらに、実施例5は、実施例1に対し、ハードコート層18を作成しなかった場合である。
そして、実施例6は、実施例1に対し、塗布溶液HC-2を使用し、ハードコート層18を作成した場合である。
また、実施例7~11は、実施例1に対し、異方拡散層AD-4~AD-8をそれぞれ使用した場合である。このうち、実施例7~9は、実施例1に対し、異方性粒子162の種類を変更している。また、実施例10~11は、異方性粒子162の大きさおよびアスペクト比の少なくとも一方が、より好ましい範囲から外れる場合である。
さらに、実施例12は、実施例1に対し、異方拡散層AD-9が基材15としても機能する場合である。また、異方性粒子162と樹脂部161とが相溶する場合である。
【0119】
(比較例1~5)
比較例1~5として、表6に示す異方拡散層、等方性拡散層、塗布溶液の組み合わせで、各層を作成した。
このうち、比較例1は、実施例1に対し、異方性粒子162を含まない場合である。
比較例2、3は、実施例1に対し、異方拡散層ではなく、等方性拡散層を形成した場合である、即ち、比較例2、3は、それぞれ等方性拡散層ID―1、等方性拡散層ID-2を形成している。
比較例4は、実施例1に対し、異方拡散層AD-10の正反射光成分を除いた反射率が、1.0%以下にならず、超える場合である。
比較例5は、実施例1に対し、低屈折率層17を作成しなかった場合である。
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
〔評価方法〕
実施例1~12、比較例1~5について、以下の項目について評価を行った。
【0124】
(膜厚、屈折率)
樹脂膜を構成する各層の膜厚を測定した。また、樹脂膜を構成するハードコート層18、高屈折率層19、低屈折率層17の屈折率を測定した。
膜厚および屈折率は、J.A.Woollam社製の分光エリプソメーター(VUV-VASE)を用いて測定した。このとき、同一サンプル内でn=3点で測定し、平均値を採用した。
【0125】
(SCI反射率、SCE反射率)
樹脂膜のSCI反射率(正反射光の反射率)、および異方拡散層16のSCE反射率(正反射光成分を除いた反射率)を測定した。
SCI反射率およびSCE反射率は、コニカミノルタ社製のCM-2600dを使用して測定した。測定は測定フィルム裏面に黒色のPETフィルムを張り付けた後に行った。SCI反射率は、小さい方が、よい結果となる。SCI反射率は、1.0%以下となることが必要である。
【0126】
(ヘイズ値)
異方拡散層16のヘイズ値を測定した。ヘイズ値は、日本電色工業社製のヘイズメーターNDH5000Wを用いて測定した。このとき、同一サンプル内でn=3点で測定し、平均値を採用した。
【0127】
(ADV)
異方拡散層16のADV(異方拡散度)を測定した。ADVは、村上色彩技術研究所社製の変角光度計GP-200を用いて測定した。
入射光がサンプル面と垂直になるようにサンプルを配置し、透過光の異方拡散方向および垂直方向の輝度分布を測定した。輝度分布は、-50°以上+50°以下の範囲で測定した。そして、異方拡散方向の5°の透過光量と、異方拡散方向と垂直方向の5°の透過光量の比をADVとした。
【0128】
(視野角特性)
視野角特性として、正面輝度、正面コントラスト、60°輝度を測定した。これらは、オートロニック・メルシャス社製のConoScopeを用いて測定した。作成したサンプルを拡散方向がディスプレイの横方向になるようにVAパネル上に取り付けた後、黒表示(階調0)および白表示(階調255)の際のディスプレイ横方向の輝度分布を測定した。輝度分布は、-80°以上+80°以下の範囲で測定した。60°輝度は-60°と+60°の輝度の平均値を採用した。また、白表示時の正面(0°)の輝度を正面輝度として測定した。また、白表示時の正面の輝度と黒表示時の正面の輝度の比率を、正面コントラストとした。
【0129】
このときの評価は、以下のようにした。
正面輝度は、400cd/m以上であるときを、「A」とした。また、正面輝度が、350cd/m以上400cd/m未満であるときを、「B」とした。さらに、正面輝度が、300cd/m以上350cd/m未満であるときを、「C」とした。またさらに、正面輝度が、300cd/m未満であるときを、「D」とした。
【0130】
また、正面コントラストは、3000以上であるときを、「A」とした。また、正面コントラストが、2300以上3000未満であるときを、「B」とした。さらに、正面コントラストが、1800以上2300未満であるときを、「C」とした。またさらに、正面コントラストが、1800未満であるときを、「D」とした。
【0131】
そして、60°輝度は、30%以上であるときを、「A」とした。また、60°輝度が、23%以上30%未満であるときを、「B」とした。さらに、60°輝度が、18%以上23%未満であるときを、「C」とした。またさらに、60°輝度が、18%未満であるときを、「D」とした。
そして、評価が、AまたはBの場合を合格とし、評価が、CまたはDの場合を不合格とした。
【0132】
(ディスプレイへの映り込み)
サンプルを粘着フィルムを用いてディスプレイに張り合わせ後、ディスプレイ点灯時の画面への外光の映り込みの様子を目視にて判定した。
【0133】
このときの評価は、以下のようにした。
外光の映り込みが非常に少なく、映像の視認性に優れるときを、「A」とした。また、多少外光の映り込みが確認できるが、映像の視認性への影響は軽微であるときを、「B」とした。さらに、外光の映り込みが目立つことが多く、映像の視認性の低下を確認できるときを、「C」とした。またさらに、外光の映り込みが激しく、映像の視認性が悪いときを、「D」とした。そして、評価が、AまたはBの場合を合格とし、評価が、CまたはDの場合を不合格とした。
【0134】
〔評価結果〕
評価結果を、表4~6に示す。なお、ハードコート層18、高屈折率層19、低屈折率層17の屈折率については、表1~3に示す。
低屈折率層17の屈折率は、表3に示すように、1.40以下となり、良好な結果を得た。
そして、表4~5に示すように、実施例1~12は、SCE反射率について、1.0%以下となり、良好な結果を得た。
実施例1~7は、異方性粒子162として、針状炭酸カルシウム粒子または塩基性硫酸マグネシウムファイバを使用した場合である。また、異方性粒子162の大きさおよびアスペクト比の双方が、より好ましい範囲となる場合である。つまり、異方性粒子162は、短軸方向の長さが、0.1μm以上10μm以下である。まら、異方性粒子162は、長軸方向の長さと短軸方向の長さとの比であるアスペクト比が、10以上である。実施例1~7の場合、視野角特性である、正面輝度、正面コントラスト、60°輝度について、評価が全てAであった。また、ディスプレイへの映り込みについても、評価が全てAであった。
【0135】
実施例8は、異方性粒子162として、針状酸化チタン粒子を使用した場合である。また、実施例9は、異方性粒子162として、ガラス長繊維を使用した場合である。この場合、視野角特性およびディスプレイへの映り込みについて、評価がAまたはBであり、合格の範囲となった。
【0136】
実施例10、11は、異方性粒子162の大きさおよびアスペクト比の少なくとも一方が、より好ましい範囲から外れる場合である。この場合、視野角特性およびディスプレイへの映り込みについて、評価が全てBであり、合格の範囲となった。
実施例12は、異方性粒子162と樹脂部161とが相溶する場合である。この場合、視野角特性およびディスプレイへの映り込みについて、評価が全てAであった。
【0137】
比較例1は、異方性粒子162を含まない場合である。この場合、60°輝度について、Dとなり、不合格であった。
比較例2、3は、異方拡散層を使用せず、等方性拡散層を使用する場合である。この場合、正面輝度、正面コントラスト、60°輝度について、CまたはDとなり、不合格であった。
比較例4は、正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下にならず、超える場合である。この場合、正面輝度、正面コントラスト、ディスプレイへの映り込みついて、CまたはDとなり、不合格であった。
比較例5は、低屈折率層17を設けなかった場合である。この場合、ディスプレイへの映り込みついて、Dとなり、不合格であった。
また、実施例1に関して、異方拡散層16の位置を基材15(TAC)の裏面に変更したフィルムを作成し同様の評価を行った。その結果、実施例1と同等の性能を確保可能であることを確認した。
【0138】
以上の結果により、樹脂膜には、異方拡散層16と、屈折率が1.40以下の低屈折率層17とが必要であることがわかる。また、正反射光成分を除いた反射率が1.0%以下であることが必要であることがわかる。
【符号の説明】
【0139】
1…表示装置、1a…液晶パネル、11…バックライト、12、12a、12b…偏光フィルム、13、13a、13b…位相差フィルム、14…液晶、15…基材、16…異方拡散層、17…低屈折率層、18…ハードコート層、19…高屈折率層、161…樹脂部、162…異方性粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6