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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182099
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089432
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】近川 法之
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA06
3L211BA07
3L211DA93
(57)【要約】
【課題】アスピレータの性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】車両用空調装置1は、ケース本体と、蒸発器20及びヒータコア40と、車室内の空気を温度検出部へ導くアスピレータ50と、を備える。ケース本体は、蒸発器20及びヒータコア40が収容されるケース上流部12と、ケース上流部12を流通した空気が流通するケース下流部13と、を一体的に有する。ケース上流部12は、空気をZ軸方向に流通させる第1流路部16aと、第1流路部16aの下流側に接続し、空気をY軸方向に流通させる第2流路部16bと、を有する。アスピレータ50は、上流端に取入口53dが形成され該取入口53dからケース本体内の空気を導入する一次空気導入部53を有し、ケース本体の中央部に設けられている。一次空気導入部53は、上流端が第2流路部16bにZ軸方向から接続されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された空気の温度を調整して、車室内へ供給する車両用空調装置であって、
外殻を為し、内部を空気が流通する筐体と、
前記筐体の内部に収容され、前記筐体内を流通する空気を冷却する冷却部と、
前記筐体の内部に収容され、前記筐体内を流通する空気を加熱する加熱部と、
前記筐体の内部の空気を導入することで、前記車室内の空気を温度検出部へ導くアスピレータと、を備え、
前記筐体は、前記冷却部及び前記加熱部が収容される筐体上流部と、前記筐体上流部を流通した空気が流通する筐体下流部と、を一体的に有し、
前記筐体上流部は、空気を第1方向に流通させる第1流路部と、前記第1流路部の下流側に接続し、空気を前記第1方向と交差する方向である第2方向に流通させる第2流路部と、を有し、
前記アスピレータは、上流端に取入口が形成され該取入口から前記筐体内の空気を導入する導入部を有し、前記筐体の前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向である第3方向の中央部に設けられていて、
前記導入部は、前記上流端が前記第2流路部に前記第1方向から接続されている車両用空調装置。
【請求項2】
前記取入口は、前記第2流路部を流通する空気の主流の外側に設けられている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第2流路部は、前記加熱部よりも下流側に設けられている請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記加熱部へ空気を導く加熱流路を閉鎖する閉鎖位置と前記加熱流路を閉鎖しない開放位置とを移動可能な第1ダンパ部と、前記第1ダンパ部が前記閉鎖位置に位置している状態において前記冷却部と前記取入口との間に配置される第2ダンパ部と、を有するエアミックスダンパを備え、
前記第2ダンパ部には、切欠きが形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のダッシュボードの内部には、車内の空気を調節する車両用空調装置が設けられている。このような車両用空調装置は、車室内の温度を検出する室温センサと、室温センサが配置されるセンサ設置部へ車室内の空気を導くためのアスピレータを備えているものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-79719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、本体ケースの幅方向の端部に、他の部品(例えば、車両用空調装置を制御する制御装置)を配置する場合がある。この場合には、アスピレータを端部に取り付けることができない。このため、特許文献1に記載の装置のように、アスピレータを本体ケースの幅方向の中央に取り付ける場合がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、アスピレータの本体部に空気を導入する空気導入管の上流端に形成された開口(空気取入口)が、空調ケース内における空気の流れにおける下流側に開口している。具体的には、エバポレータを通過した空気と、ヒータコアを通過した空気とが合流する領域よりも下流側の領域(以下、「下流側領域」と称する。)に開口している。下流側領域を流通する空気は、圧力が低減している場合がある。このため、特許文献1の装置では、空気を導入する空間の圧力とアスピレータの本体部の内部の圧力差が小さくなり、空気導入管の空気取入口から好適に空気を取り入れることができず、アスピレータの性能を低減させてしまう可能性があった。アスピレータの性能が低減すると、室温センサに車室内の空気を導くことができずに、室温センサが好適に温度を検出することができなくなり、室温の制御が好適に行われなくなる可能性があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、アスピレータの性能を向上させることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の車両用空調装置は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る車両用空調装置は、導入された空気の温度を調整して、車室内へ供給する車両用空調装置であって、外殻を為し、内部を空気が流通する筐体と、前記筐体の内部に収容され、前記筐体内を流通する空気を冷却する冷却部と、前記筐体の内部に収容され、前記筐体内を流通する空気を加熱する加熱部と、前記筐体の内部の空気を導入することで、前記車室内の空気を温度検出部へ導くアスピレータと、を備え、前記筐体は、前記冷却部及び前記加熱部が収容される筐体上流部と、前記筐体上流部を流通した空気が流通する筐体下流部と、を一体的に有し、前記筐体上流部は、空気を第1方向に流通させる第1流路部と、前記第1流路部の下流側に接続し、空気を前記第1方向と交差する方向である第2方向に流通させる第2流路部と、を有し、前記アスピレータは、上流端に取入口が形成され該取入口から前記筐体内の空気を導入する導入部を有し、前記筐体の前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向である第3方向の中央部に設けられていて、前記導入部は、上流端が前記第2流路部に前記第1方向から接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アスピレータの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の斜視図である。
図2】本開示の実施形態に係る空調ユニットの要部を示す斜視図である。
図3】本開示の実施形態に係る空調ユニットの縦断面図であってヒータコアに空気を導かない状態を示している。
図4】本開示の実施形態に係る空調ユニットの縦断面図であってヒータコアに空気を導く状態を示している。
図5】本開示の実施形態に係るHVACユニットに設けられるエアミックスダンパの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用空調装置1の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、上下方向をZ軸方向とし、Z軸方向と直交する方向のうち、空調ユニット2とブロアユニット3とが並ぶ方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向をY軸方向として説明する。
【0011】
本実施形態に係る車両用空調装置1は、自動車のインスツルメントパネルで規定された空間に設けられるものである。車両用空調装置1は、図1に示すように、車外空気(外気)または車室内空気(内気)を温調し、車室内に吹出す空調ユニット2(HVACユニット;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)と、HVACユニットに外気または内気を供給するブロアユニット3と、を備えている。空調ユニット2とブロアユニット3とは、X軸方向に隣接して設けられている。
【0012】
図1及び図2等に示すように、空調ユニット2(HVACユニット)は、ケース本体10(図2では、図示の関係上、ケース本体10の一部を省略して図示している。)を備えている。また、空調ユニット2は、図2から図4に示すように、ケース本体10に収容される蒸発器(冷却部)20、エアミックスダンパ30及びヒータコア(加熱部)40を備えている。
【0013】
図1に示すように、ケース本体(筐体)10は、X軸方向に並ぶ第1ケース10A及び第2ケース10Bを一体的に有している。第1ケース10Aの側壁(第2ケース10Bと面する側壁とは反対側の側壁)には、ブロアユニット3が接続されている。また、第2ケース10Bの側壁(第1ケース10Aと面する側壁とは反対側の側壁)には、後述するエアミックスダンパ30を回転させるアクチュエータ等が設けられている。なお、第1ケース10A及び第2ケース10Bは、略同一の構造を為しているので、以下の説明では、第1ケース10A及び第2ケース10Bを分けて説明する必要がある場合を除き、第1ケース10A及び第2ケース10Bを分けて説明せず、単にケース本体10と称して説明する。
【0014】
図3及び図4に示すように、ケース本体10の内部には、ブロアユニット3から送風されてくる空気を車室内へ導く空気流路14が形成されている。空気流路14は、ヒータコア40が配置される加熱流路14aと、ヒータコア40をバイパスするバイパス流路14bと、バイパス流路14bを流通した空気と加熱流路14aを流通した空気とが混合した空気が流通するエアミックス流路14cと、を有している。
【0015】
また、ケース本体10は、蒸発器20及びヒータコア40が収容されるケース上流部(筐体上流部)12と、ケース上流部12を流通した空気が流通するケース下流部(筐体下流部)13と、を有している。
【0016】
ケース上流部12は、主に、バイパス流路14b及び加熱流路14aを規定している。ケース上流部12は、加熱流路14aを規定する加熱流路規定部16を有している。
【0017】
加熱流路規定部16は、空気をZ軸方向(第1方向)に流通させる第1流路部16aと、第1流路部16aの下流側に設けられ、空気をY軸方向(第2方向)に流通させる第2流路部16bと、を有する。
第1流路部16aは、Z軸方向及びX軸方向に延在している。第1流路部16aは、ヒータコア40と対向するように設けられている。
第2流路部16bは、第1流路部16aの上端から略直角に湾曲してY軸方向に延在している。第2流路部16bの下流端部は、Y軸方向及びX軸方向に延在しており、この下流端部に後述するアスピレータ50の一次空気導入部53が接続している。
【0018】
ケース下流部13は、主に、エアミックス流路14cを規定している。ケース下流部13は、ケース上流部12の上端に接続されている。ケース下流部13には、乗員の顔近傍へ送風を行うためのフェイス吹出口17、車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うためのデフ吹出口18及び乗員の足近傍へ送風を行うためのフット吹出口19が形成されている。
【0019】
蒸発器20は、図3及び図4に示すように、ケース本体10に収容され、空気流路14中に配置されている。蒸発器20は、空気流路14の上流部に設けられている。蒸発器20は、図示省略の冷凍サイクルを構成している。蒸発器20は、Z軸方向に延在する複数のチューブを有し、複数のチューブがX軸方向及びY軸方向に所定の間隔で並んで配置されている。複数のチューブの内部には、冷媒サイクルを循環する冷媒が流通している。蒸発器20は、チューブ内を流通する冷媒と、空気流路14を流通する空気とを熱交換させることで、空気流路14を流通する空気を冷却する。
また、空気流路14は、蒸発器20の下流側において、バイパス流路14bと加熱流路14aとに分岐している。
【0020】
エアミックスダンパ30は、バイパス流路14bと加熱流路14aとの分岐部に設けられている。エアミックスダンパ30は、ケース本体10に回転可能に設けられる回転軸31(図5参照)に固定されている。エアミックスダンパ30は、図5に示すように、回転軸31を挟んで上流側(蒸発器20側)に設けられるメインダンパ(第1ダンパ部)32と、下流側(ヒータコア40側)に設けられるサブダンパ(第2ダンパ部)33と、を一体に有している。メインダンパ32とサブダンパ33とは、鈍角を為すように接続されている。
メインダンパ32は、ヒータコア40へ空気を導く加熱流路14aを閉鎖する閉鎖位置(図3参照)と、加熱流路14aを閉鎖しない開放位置(図4参照)とを移動とされている。メインダンパ32は、ヒータコア40に空気を導かない状態において、加熱流路14aを閉鎖する。
サブダンパ33は、メインダンパ32が閉鎖位置に位置している状態において蒸発器20と取入口53dとの間に配置される。
【0021】
以下の説明では、第1ケース10A内に収容されるエアミックスダンパ30を第1エアミックスダンパ30Aと称し、第2ケース10B内に収容されるエアミックスダンパ30を第2エアミックスダンパ30Bと称する。また、第1エアミックスダンパ30Aと第2エアミックスダンパ30Bとを分けて説明する必要がない場合には、単にエアミックスダンパ30と称して説明する。
第1エアミックスダンパ30Aのサブダンパ33(以下、「第1サブダンパ33A」と称する)及び第2エアミックスダンパ30Bのサブダンパ33(以下、「第2サブダンパ33Bと称する」)は、X軸方向の端部に形成される切欠き34を有している。第1サブダンパ33Aに形成されている切欠き34は、第2サブダンパ33B側の端部に形成されている。また、空気の流通方向における下流側(すなわち、回転軸31から遠い側)の端部に形成されている。
第2サブダンパ33Bに形成されている切欠き34は、第1サブダンパ33A側の端部に形成されている。なお、図3及び図4は、サブダンパ33に形成された切欠き34を通過する断面で切断した断面図であるので、図示の関係上サブダンパ33が図示されていない。
【0022】
ヒータコア40は、加熱流路14a中に配置されている。ヒータコア40は、例えば、Z軸方向に延在する複数のチューブを有し、複数のチューブがX軸方向及びY軸方向に所定の間隔で並んで配置されている。複数のチューブの内部には、エンジン(図示省略)を冷却するエンジン冷却水が流通している。ヒータコア40は、チューブ内を流通するエンジン冷却水と、加熱流路14aを流通する空気とを熱交換させることで、加熱流路14aを流通する空気を加熱する。
【0023】
バイパス流路14bと加熱流路14aとは、エアミックスダンパ30の上方で合流している(図3の領域B参照)。合流した空気流路14は、ケース本体10に形成されているフェイス吹出口17、フット吹出口19及びデフ吹出口18に接続している。空気流路14には、フェイス吹出口17から空気を吹出すか、デフ吹出流路から空気吹出すかを切替え可能なデフ/フェイスダンパ42が設けられている。また、空気流路14には、フット吹出口19から空気を吹出すか否かを切替え可能なフットダンパ43が設けられている。
【0024】
次に、空調ユニット2に導入された空気の流れについて説明する。
空調ユニット2は、ブロアユニット3から送られてくる空気を、蒸発器20を通過させることで冷却する。冷却された空気は、加熱流路14a及び/又はバイパス流路14bに導入される。このとき、空調ユニット2は、エアミックスダンパ30の回動位置を調整することで、加熱流路14aに導入される空気(ヒータコア40に導かれる空気)の量と、バイパス流路14bに導入される空気(ヒータコア40をバイパスする空気)の量との割合を調整する。そして、空気ユニットは、加熱流路14aとバイパス流路14bとが合流する領域(図3の領域B参照)において、ヒータコア40を流通した空気(加熱された空気)と、ヒータコア40をバイパスした空気(加熱されていない空気)とを混合し、空気を所定温度に調整する。そして、空調ユニット2は、温度を調整した空気を、下流側に設けられているデフ吹出口18、フェイス吹出口17及びフット吹出口19等から選択的に車室内へと吹出すことによって、車室内を設定温度に温調する。各吹出口から空気を吹出すか否か、又、各吹出口から吹き出す空気の量は、デフ/フェイスダンパ42及びフットダンパ43の回動位置によって調整される。
【0025】
具体的には、車両用空調装置1は、冷房運転モードにおいて、例えば、図3に示すように、エアミックスダンパ30が加熱流路14aの入口を閉鎖するように、エアミックスダンパ30の回動位置を調整する。このようにすることで、矢印A1で示すように、蒸発器20を通過した空気は、加熱流路14aには流入せずに、バイパス流路14bを流通する。したがって、デフ吹出口18、フェイス吹出口17及びフット吹出口19から吹き出す空気を、主にヒータコア40をバイパスした空気(加熱されていない空気)とすることができる。これにより、車室に冷却された空気が供給される。なお、矢印A2で示すように、バイパス流路14bを流通する空気の一部は、後述する取入口53dからアスピレータ50に導入される。
【0026】
一方、車両用空調装置1は、暖房運転モードにおいて、例えば、図4に示すように、エアミックスダンパ30がバイパス流路14bを閉鎖するように、エアミックスダンパ30の回動位置を調整する。このようにすることで、矢印A3で示すように、蒸発器20を通過した空気は、バイパス流路14bには流入せずに、加熱流路14aを流通する。加熱流路14aを流通する空気は、ヒータコア40を通過した後に、矢印A4で示すように、第1流路部16aに沿って上昇する。その後に、矢印A5で示すように、第2流路部16bに沿って流通方向をY軸方向に変更する。その後に、矢印A6に示すように、Y軸方向に沿って流通する。そして、矢印A7に示すように、再度上昇し、デフ吹出口18、フェイス吹出口17及びフット吹出口19へ導かれる。これにより、デフ吹出口18、フェイス吹出口17及びフット吹出口19から吹き出す空気を、主にヒータコア40を通過した空気(加熱された空気)とすることができる。これにより、車室に加熱された空気が供給される。なお、矢印A8で示すように、加熱流路14aを流通する空気の一部(特に、ヒータコア40を通過した後に、Y軸方向に流通する空気の一部)は、後述する取入口53dからアスピレータ50に導入される。
【0027】
次に、ケース本体10に取り付けられているアスピレータ50について詳細に説明する。
車両用空調装置1において、車室内を設定温度に温調するには、車室内の温度を精度よく検出する必要がある。車室内の温度を検出する室温センサは、車室内のインスツルメントパネル(図示省略)に設けられている。このため、車両用空調装置1は、室温センサに車室内の空気を流通させることによって、車室内の温度を検出する。車室内の空気を室温センサに導くために、アスピレータ50が用いられる。
【0028】
アスピレータ50は、図3に示すように、ノズル51と、ノズル51の外周を取り囲むように一次空気流路を形成する本体部52と、該本体部52の一次空気流路に空調ユニット2の内部を流通する空気流の一部を一次空気として導入する一次空気導入部(導入部)53と、本体部52の端部に接続されるディフューザ54(図1及び図2参照)と、を備えている。
【0029】
ノズル51は、筒状の部材であって、左右方向に延在している。ノズル51の先端は、上述のようにディフューザ54の内部に開口している。ノズル51の基端には、空気配管(図示省略)が接続されている。空気配管の上流端は、室温センサが配置されるセンサ設置部(図示省略)に接続している。センサ設置部は、車室内と連通している。ノズル51は、センサ設置部及び空気配管を介して、車室内の空気を二次空気として吸引する。
【0030】
本体部52は、筒状の部材であって、左右方向に延在している。本体部52の内部には、同心状にノズル51が配置されている。本外部の内周面と、ノズル51の外周面との間には、一次空気流路が形成されている。本体部52の外周面には、一次空気導入部53が接続されている。
【0031】
一次空気導入部53は、本体部52と接続する水平部53aと、水平部53aの上流端から略直角に下方に湾曲する湾曲部53bと、湾曲部53bの上流端から下方に延びる鉛直部53cと、を一体的に有している。
水平部53aは、水平方向に延在する管状の部材である。水平部53aは、下流端が本体部52の外周面に接続している。湾曲部53bは、管状の部材である。湾曲部53bは、水平部53aの上流端と鉛直部53cの下流端とを接続している。鉛直部53cは、鉛直方向に延在する管状の部材である。鉛直部53cは、上流端(下端)に取入口53dが形成されている。鉛直部53cは、上方に向かうに従って流路面積が減少するように縮径している。鉛直部53cは、上流端が上方から第2流路部16bに接続されている。詳細には、鉛直部53cは、第2流路部16bのうち、切欠き34に対応する位置に設けられている。
また、取入口53dは、加熱流路14aの出口近傍に配置されている。また、取入口53dは、第2流路部16bに沿って流通する空気の主流(図4の矢印A6参照)の外側(上方)に設けられている。すなわち、一次空気導入部53は、第2流路部16bの内周面よりも突出しないように、第2流路部16bに接続されている。また、取入口53dは、加熱流路14aとバイパス流路14bとが合流する領域(図3の領域B参照)よりも上流側の領域(以下、「上流側領域」と称する。)に開口している。
【0032】
次に、アスピレータ50における空気の流れについて説明する。
アスピレータ50は、空気流路14内を流通する空気の一部を一次空気導入部53から導入する。詳細には、図3の矢印A2に示すように、バイパス流路14bを流通する空気の一部や、図4の矢印A8で示すように、ヒータコア40を通過した後にY軸方向に流通する空気の一部を一次空気導入部53から導入する。
【0033】
一次空気導入部53に導入された空気は、鉛直部53c及び接続部内を流通し、本体部52の内部に排出される。本体部52に排出された空気は、本体部52の内部に形成された一次空気流路内を流通する。すなわち、本体部52の内周面とノズル51の外周面との間を流通する。一次空気流路内を流通した空気は、ノズル51の先端側からディフューザ54内に流入する。ディフューザ54内を流通した空気は、ディフューザ54の開放端から車室内へ排出される。
【0034】
一次空気流路からディフューザ54内に空気が流入する際に、ノズル51の先端の近傍が減圧される。これによって、ノズル51内において、基端から先端に向かって流通する空気の流れが発生する。したがって、ノズル51は、基端(先端とは逆側の端部)から空気を吸引する。ノズル51の基端には、空気配管(図示省略)が接続されている。空気配管の上流端は、室温センサが配置されるセンサ設置部(図示省略)に接続している。また、センサ設置部は、車室内と連通している。したがって、ノズル51は、センサ設置部及び空気配管を介して、車室内の空気(二次空気)を吸引する。このため、ノズル51が空気を吸い込むことで、センサ設置部内に車室内の空気が好適に流入する。これによって、室温センサが車室内の空気の温度を検出する。ノズル51の基端からノズル51内に導入された空気(二次空気)は、ノズル51の先端からディフューザ54内に吐出され、ディフューザ54の開放端から車両用空調装置1の外部へ排出される。具体的には、インスツルメントパネルで規定された空間内へ排出される。
【0035】
本実施形態よれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、一次空気導入部53の上流端が、第2流路部16bにZ軸方向から接続している。第2流路部16bは、Y軸方向に空気が流通している。このため、第2流路部16bを流通する空気の一部が、静圧によって取入口53dから一次空気導入部53内に導入される。これにより、アスピレータ50に空気を導入することができる。また、静圧によって空気を導入しているので、動圧によって空気を導入する場合と比較して、圧力損失を低減することができる。したがって、動圧によって空気を導入する場合と比較して、アスピレータ50内を流通する空気の速度を速くすることができるので、アスピレータ50の性能を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、蒸発器20及びヒータコア40が収容されるケース上流部12の第2流路に取入口53dが開口している。ケース上流部12内を流通する空気の圧力は、ケース下流部13を流通する空気の圧力よりも高い。これにより、ケース下流部13に取入口53dが開口している場合(例えば、エアミックス流路14cに取入口53dが開口している場合)と比較して、取入口53dが開口する空間の圧力とアスピレータ50の内部の圧力との差が大きくなるので、取入口53dから一次空気導入部53に空気を取り入れ易くすることができる。したがって、アスピレータ50に好適に空気を導入することができるので、アスピレータ50の性能を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、アスピレータ50がケース本体10のX軸方向の中央部に設けられている。すなわち、アスピレータ50がケース本体10のX軸方向の端部に設けられていない。これにより、ケース本体10のX軸方向の端部にアスピレータ50以外の装置(例えば、車両用空調装置1を制御する制御装置等)を設けることができる。したがって、車両用空調装置1のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、取入口53dは、第2流路部16bに沿って流通する空気の主流の外側に設けられている。これにより、一次空気導入部53が第2流路部16bを流通する空気を阻害しない構造とすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、第2流路部16bは、ヒータコア40よりも下流側に設けられている。これにより、ヒータコア40によって加熱された空気をアスピレータ50に導入することができる。したがって、アスピレータ50から排出される空気も加熱された空気とすることができる。よって、例えば、アスピレータ50から排出された空気が、車室内や車室と隣接する空間等に排出される場合であっても、車室内の空気の温度の低減を抑制することができる。よって、車室内の快適性の低減を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、メインダンパ32が閉鎖位置に位置している状態において蒸発器20と取入口53dとの間に配置されるサブダンパ33に切欠き34が形成されている。これにより、メインダンパ32が閉鎖している状態において、サブダンパ33に形成された切欠き34を通過して、蒸発器20を通過した空気が取入口53dへ導かれる。すなわち、サブダンパ33に切欠き34が形成されていない場合と比較して、メインダンパ32が閉鎖している状態において、サブダンパ33が、蒸発器20から取入口53dへ向かう空気を阻害し難くすることができる。したがって、好適に取入口53dから空気を導入することができるので、アスピレータ50の性能を向上させることができる。
【0041】
なお、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0042】
以上説明した実施形態に記載の車両用空調装置は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係る車両用空調装置は、導入された空気の温度を調整して、車室内へ供給する車両用空調装置(1)であって、外殻を為し、内部を空気が流通する筐体(10)と、前記筐体の内部に収容され、前記筐体内を流通する空気を冷却する冷却部(20)と、前記筐体の内部に収容され、前記筐体内を流通する空気を加熱する加熱部(40)と、前記筐体の内部の空気を導入することで、前記車室内の空気を温度検出部へ導くアスピレータ(50)と、を備え、前記筐体は、前記冷却部及び前記加熱部が収容される筐体上流部(12)と、前記筐体上流部を流通した空気が流通する筐体下流部(13)と、を一体的に有し、前記筐体上流部は、空気を第1方向(Z軸方向)に流通させる第1流路部(16a)と、前記第1流路部の下流側に接続し、空気を前記第1方向と交差する方向である第2方向(Y軸方向)に流通させる第2流路部(16b)と、を有し、前記アスピレータは、上流端に取入口(53d)が形成され該取入口から前記筐体内の空気を導入する導入部(53)を有し、前記筐体の前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向である第3方向(X軸方向)の中央部に設けられていて、前記導入部は、前記上流端が前記第2流路部に前記第1方向から接続されている。
【0043】
上記構成では、導入部の上流端が、第2流路部に第1方向から接続している。第2流路部は、第2方向に空気が流通している。このため、第2流路部を流通する空気の一部が、静圧によって取入口から導入部内に導入される。これにより、アスピレータに空気を導入することができる。また、静圧によって空気を導入しているので、動圧によって空気を導入する場合と比較して、圧力損失を低減することができる。したがって、動圧によって空気を導入する場合と比較して、アスピレータ内を流通する空気の速度を速くすることができるので、アスピレータの性能を向上させることができる。
また、上記構成では、冷却部及び加熱部が収容される筐体上流部の第2流路に取入口が開口している。筐体上流部内を流通する空気の圧力は、筐体下流部を流通する空気の圧力よりも高い。これにより、筐体下流部に取入口が開口している場合と比較して、取入口が開口する空間の圧力とアスピレータの内部の圧力との差が大きくなるので、取入口から導入部に空気を取り入れ易くすることができる。したがって、アスピレータに好適に空気を導入することができるので、アスピレータの性能を向上させることができる。
また、上記構成では、アスピレータが筐体の第3方向の中央部に設けられている。すなわち、アスピレータが筐体の第3方向の端部に設けられていない。これにより、筐体の第3方向の端部にアスピレータ以外の装置を設けることができる。したがって、車両用空調装置のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0044】
また、本開示の一態様に係る車両用空調装置は、前記取入口は、前記第2流路部を流通する空気の主流の外側に設けられている。
【0045】
上記構成では、取入口は、第2流路部に沿って流通する空気の主流の外側に設けられている。これにより、導入部が第2流路部を流通する空気を阻害しない構造とすることができる。
【0046】
また、本開示の一態様に係る車両用空調装置は、前記第2流路部は、前記加熱部よりも下流側に設けられている。
【0047】
上記構成では、第2流路部は、加熱部よりも下流側に設けられている。これにより、加熱部によって加熱された空気をアスピレータに導入することができる。したがって、アスピレータから排出される空気も加熱された空気とすることができる。よって、例えば、アスピレータから排出された空気が、車室内や車室と隣接する空間等に排出される場合であっても、車室内の空気の温度の低減を抑制することができる。よって、車室内の快適性の低減を抑制することができる。
【0048】
また、本開示の一態様に係る車両用空調装置は、前記加熱部へ空気を導く加熱流路(14a)を閉鎖する閉鎖位置と前記加熱流路を閉鎖しない開放位置とを移動可能な第1ダンパ部(32)と、前記第1ダンパ部が前記閉鎖位置に位置している状態において前記冷却部と前記取入口との間に配置される第2ダンパ部(33)と、を有するエアミックスダンパ(30)を備え、前記第2ダンパ部には、切欠き(34)が形成されている。
【0049】
上記構成では、第1ダンパ部が閉鎖位置に位置している状態において冷却部と取入口との間に配置される第2ダンパ部に切欠きが形成されている。これにより、第1ダンパ部が閉鎖している状態において、第2ダンパ部に形成された切欠きを通過して、冷却部を通過した空気が取入口へ導かれる。すなわち、第2ダンパ部に切欠きが形成されていない場合と比較して、第1ダンパ部が閉鎖している状態において、第2ダンパ部が、冷却部から取入口へ向かう空気を阻害し難くすることができる。したがって、好適に取入口から空気を導入することができるので、アスピレータの性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :車両用空調装置
2 :空調ユニット
3 :ブロアユニット
10 :ケース本体(筐体)
10A :第1ケース
10B :第2ケース
12 :ケース上流部(筐体上流部)
13 :ケース下流部(筐体下流部)
14 :空気流路
14a :加熱流路
14b :バイパス流路
14c :エアミックス流路
16 :加熱流路規定部
16a :第1流路部
16b :第2流路部
17 :フェイス吹出口
18 :デフ吹出口
19 :フット吹出口
20 :蒸発器(冷却部)
30 :エアミックスダンパ
31 :回転軸
32 :メインダンパ(第1ダンパ部)
33 :サブダンパ(第2ダンパ部)
34 :切欠き
40 :ヒータコア(加熱部)
42 :フェイスダンパ
43 :フットダンパ
50 :アスピレータ
51 :ノズル
52 :本体部
53 :一次空気導入部(導入部)
53a :水平部
53b :湾曲部
53c :鉛直部
53d :取入口
54 :ディフューザ
図1
図2
図3
図4
図5