(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182106
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/209 20210101AFI20221201BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20221201BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221201BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20221201BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20221201BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/204 101
H01M50/249
H01M50/271 S
H01G11/78
H01G11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089443
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 伸介
(72)【発明者】
【氏名】塚田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】林田 雅広
【テーマコード(参考)】
5E078
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB01
5E078HA05
5E078HA13
5E078HA24
5H040AA03
5H040AA07
5H040AS07
5H040AT02
5H040AY05
5H040CC05
5H040CC06
5H040CC13
5H040CC36
5H040CC38
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】樹脂製の2つの部材が溶着された部分である溶着部であって、信頼性が向上された溶着部を有する蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電装置1は、それぞれが樹脂で形成された外装体本体110と蓋体120とを備える。外装体本体110及び蓋体120は、所定の方向に延在する溶着部140において互いに接合されている。溶着部140は、接合された状態の外装体本体110及び蓋体120の外面に露出しない位置に形成されている。外装体本体110及び蓋体120の少なくとも一方は、他方から離れる向きに窪んだ形状のガス収容部118であって、溶着部140に沿って当該所定の方向に延在するガス収容部118を有する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置であって、
それぞれが樹脂で形成された第一部材と第二部材とを備え、
前記第一部材及び前記第二部材は、所定の方向に延在する溶着部において互いに接合されており、
前記溶着部は、接合された状態の前記第一部材及び前記第二部材の外面に露出しない位置に形成されており、
前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、他方から離れる向きに窪んだ形状のガス収容部であって、前記溶着部に沿って前記所定の方向に延在するガス収容部を有する、
蓄電装置。
【請求項2】
前記第一部材及び前記第二部材の一方は、前記所定の方向に延在する凸部を有し、
前記第一部材及び前記第二部材の他方は、前記所定の方向に延在する凹部を有し、
前記溶着部では、前記凸部が前記凹部に係合または嵌合された状態で、前記凸部の少なくとも一部と前記凹部の少なくとも一部とが溶着によって接合されている、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記ガス収容部は、前記凸部と前記凹部との間の隙間によって形成されている、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記ガス収容部は、前記凸部の一部に設けられた窪みによって形成されている、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項5】
さらに、前記第一部材及び前記第二部材の一方には、前記ガス収容部から、当該一方の表面に至る通気孔が形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第一部材及び前記第二部材のそれぞれは、前記蓄電装置の外装体の一部を形成する部材である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂で形成された2つの部材を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池収納ケースを備える電池パックが開示されている。この電池収納ケースは、第1ケース及び第2ケースを有する。第1ケースは溶着用突起を有し、第2ケースは溶着溝を有する。溶着用突起が溶着溝に挿入された状態で、溶着用突起と溶着溝とが超音波溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池パックのように、樹脂製の電池収納ケース(外装体)を備える蓄電装置では、外装体を構成する本体部及び蓋体等の2つの部材の接合に、超音波溶着、熱溶着、または接着剤を用いた接着などの各種の手法が用いられる。樹脂同士を溶着する手法としては、超音波溶着及び熱溶着以外に、レーザ光を用いたレーザ溶着(レーザ樹脂溶着ともいう)が存在する。レーザ溶着は、レーザ光を吸収した樹脂が発する熱によって樹脂を溶融させ、これにより、2つの樹脂製の部材を接合(溶着)する手法である。レーザ溶着は、熱影響の広がりを抑制しつつ、効率よく高精度の接合が可能である等の利点を有している。また、レーザ溶着は、接合対象の物体に機械的な振動を与えないため、例えば外装体及びこれに収容された電池(蓄電素子)及び回路基板等に、接合作業時の振動に起因する不具合が生じないという利点もある。
【0005】
しかしながら、レーザ光による熱で樹脂が溶融する際に、樹脂に含まれる難燃剤等が気化することでガスが発生し、溶着部(溶融した樹脂が固化することで形成された部分)にガスが閉じ込められ、これにより溶着部に気泡(ボイド)が生じる場合がある。溶着部にボイドが生じた場合、接合強度の低下等の不具合が発生する。そのため、溶着部におけるボイドの発生の抑制は、溶着部の信頼性の向上の観点から重要な課題である。
【0006】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、樹脂製の2つの部材が溶着された部分である溶着部であって、信頼性が向上された溶着部を有する蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、それぞれが樹脂で形成された第一部材と第二部材とを備え、前記第一部材及び前記第二部材は、所定の方向に延在する溶着部において互いに接合されており、前記溶着部は、接合された状態の前記第一部材及び前記第二部材の外面に露出しない位置に形成されており、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、他方から離れる向きに窪んだ形状のガス収容部であって、前記溶着部に沿って前記所定の方向に延在するガス収容部を有する。
【0008】
この構成によれば、第一部材及び第二部材が、例えばレーザ溶着によって接合される場合に、この溶着で発生するガスが、ガス収容部に収容される。これにより、溶着部におけるボイドの発生が抑制される。このガス収容部は、所定の方向に延在する溶着部に沿って延在するため、広い範囲で溶着部におけるボイドの発生が抑制される。このように、本態様に係る蓄電装置は、樹脂製の2つの部材が溶着された部分である溶着部であって、信頼性が向上された溶着部を有する蓄電装置である。
【0009】
前記第一部材及び前記第二部材の一方は、前記所定の方向に延在する凸部を有し、前記第一部材及び前記第二部材の他方は、前記所定の方向に延在する凹部を有し、前記溶着部では、前記凸部が前記凹部に係合または嵌合された状態で、前記凸部の少なくとも一部と前記凹部の少なくとも一部とが溶着によって接合されている、としてもよい。
【0010】
この構成によれば、ともに樹脂製である第一部材及び第二部材が、凹部と凸部とが係合または嵌合した状態で接合される。従って、例えば第一部材及び第二部材の接合部分(溶着部を含む)の機械的な強度が向上する。
【0011】
前記ガス収容部は、前記凸部と前記凹部との間の隙間によって形成されている、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、例えば、凹部と、当該凹部の内部空間よりも小さいサイズの凸部との組み合わせによって、溶着部に沿って延在するガス収容部を設けることができる。つまり、第一部材または第二部材に、ガス収容部のみのため(専用)の窪み形状を設けることなく、比較的に簡易な構成によって、溶着部に沿う(連続する)位置にガス収容部を設けることができる。
【0013】
前記ガス収容部は、前記凸部の一部に設けられた窪みによって形成されている、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、例えば、凹部と凸部とを比較的に大きな面積同士で密着させた状態で、溶着部に沿って延在するガス収容部を設けることができる。従って、例えば、溶着部におけるボイドの発生を抑制しながら、溶着部の容積を比較的に大きくすることができ、かつ、凸部と凹部とを機械的により強固に結合させることができる。
【0015】
さらに、前記第一部材及び前記第二部材の一方には、前記ガス収容部から、当該一方の外面に至る通気孔が形成されているとしてもよい。
【0016】
この構成によれば、溶着時に発生し、一旦、ガス収容部に収容されたガスを、通気孔を介して第一部材及び第二部材の外部に逃がすことができる。従って、発生するガスの量に対してガス収容部の容積が小さい場合であっても、ガス収容部の内圧が過度に上昇する可能性が低減される。このことは、溶着部の信頼性の向上に寄与する。
【0017】
前記第一部材及び前記第二部材のそれぞれは、前記蓄電装置の外装体の一部を形成する部材である、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、例えば、外装体本体と本体の開口部を塞ぐ蓋体とである第一部材及び第二部材の接合部分において、信頼性が向上された溶着部が形成される。従って、蓄電素子の開弁時における当該溶着部からのガスの漏れ出し、及び、当該溶着部から外装体の内部への水の浸入等が抑制される。これにより、例えば蓄電装置の安全性の向上、または、製品寿命の長期化等が図られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂製の2つの部材が溶着された部分である溶着部であって、信頼性が向上された溶着部を有する蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る外装体本体と蓋体との構造上の関係を示す斜視断面図である。
【
図4A】実施の形態に係る外装体本体と蓋体とが組み合わされた状態を示す断面図である。
【
図4B】実施の形態に係る外装体本体と蓋体とが溶着された状態を示す断面図である。
【
図5A】実施の形態の変形例1に係る外装体本体と蓋体とが組み合わされた状態を示す断面図である。
【
図5B】実施の形態の変形例1に係る外装体本体と蓋体とが溶着された状態を示す断面図である。
【
図6A】実施の形態の変形例2に係る外装体本体と蓋体とが組み合わされた状態を示す断面図である。
【
図6B】実施の形態の変形例2に係る外装体本体と蓋体とが溶着された状態を示す断面図である。
【
図7A】実施の形態の変形例3に係る外装体本体と蓋体とが組み合わされた状態を示す断面図である。
【
図7B】実施の形態の変形例3に係る外装体本体と蓋体とが溶着された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0022】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の外装体の長手方向、または、蓄電素子の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の短手方向、または、複数の蓄電素子の並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の本体と蓋体との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0023】
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。また、単に、「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0024】
さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0025】
(実施の形態)
[1-1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、実施の形態に係る蓄電装置1の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。
図2では、外装体10の蓋体120を、外装体本体110から分離して、複数の蓄電素子20(蓄電素子ユニット24)を露出させた状態が図示されている。
【0026】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。蓄電装置1は、例えば、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)ガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置1は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0027】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置1は、蓄電素子20と、蓄電素子20を収容する外装体10とを備える。本実施の形態では、外装体10には4個の蓄電素子20が収容されている。なお、蓄電装置1が備える蓄電素子20の数は4には限定されない。蓄電装置1は、1以上の蓄電素子20を備えればよい。本実施の形態では、Y軸方向に並べられた4個の蓄電素子20により1つの蓄電素子ユニット24が構成されている。蓄電素子ユニット24は、図示しないスペーサ及び絶縁フィルム等を有してもよい。
【0028】
外装体10は、蓄電素子ユニット24を収容する外装体本体110と、外装体本体110の開口部(本体開口部111)を塞ぐ蓋体120とを有する。本実施の形態において、外装体本体110は第一部材の一例であり、蓋体120は第二部材の一例である。外装体10の内部において、蓄電素子ユニット24の上方には、複数の蓄電素子20に電気的に接続されるバスバー、バスバーを保持するバスバープレート、及び、制御回路等が配置されるが、これらの部材の図示及びその説明は省略する。
【0029】
外装体10は、蓄電装置1の外殻を構成する略直方体状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子ユニット24等を所定の位置に固定し、これらを衝撃などから保護する部材である。外装体10が有する外装体本体110は、蓄電素子ユニット24を収容するための本体開口部111が形成された有底矩形筒状のハウジングである。蓋体120は、外装体本体110の本体開口部111を閉塞する矩形状の部材である。外装体本体110は第一部材の一例であり、蓋体120は第二部材の一例である。本実施の形態では、外装体本体110及び蓋体120のそれぞれは、熱可塑性樹脂で形成されており、外装体本体110と蓋体120とはレーザ溶着により接合されている。外装体本体110と蓋体120との接合部分の詳細については、
図3~
図4Bを用いて後述する。
【0030】
蓋体120は、正極側の外部端子91及び負極側の外部端子92を有している。外部端子91及び92は、複数の蓄電素子20と電気的に接続されており、蓄電装置1は、この外部端子91及び92を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子91及び92は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0031】
蓄電素子20は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子20は、扁平な直方体形状(角形)の形状を有しており、本実施の形態では、上述のように、4個の蓄電素子20がY軸方向に配列されている。
【0032】
なお、蓄電素子20は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子20は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子20は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子20は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。また、蓄電素子20の形状は、上記角形には限定されず、それ以外の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、長円柱形状等であってもよい。
【0033】
本実施の形態では、蓄電素子20は、金属製の容器21を備える。容器21は、互いに対向する一対の長側面21aと、互いに対向する一対の短側面21bとを有する角形のケースである。容器21の内部には、電極体、集電体、及び電解液等が収容されている。本実施の形態では、複数の蓄電素子20のそれぞれは長側面21aがY軸方向に向く姿勢(短側面21bがY軸方向に平行な姿勢)で、Y軸方向に一列に並べられている。
【0034】
容器21の蓋板21cには、容器21の内部の電極体と電気的に接続された金属製の電極端子22(正極端子及び負極端子)が設けられている。電極端子22は、容器21の蓋板21cから、上方(Z軸プラス方向)に向けて突出して配置されている。容器21の蓋板21cにはさらにガス排出弁23が設けられている。ガス排出弁23は、容器21の内圧が過度に上昇した場合に開放(開弁)することで、容器21の内部のガスを外部に排出することができる。本実施の形態では、
図2に示すように、複数の蓄電素子20のそれぞれは、ガス排出弁23がZ軸プラス方向に向く姿勢で配置されている。
【0035】
このような基本構成を有する蓄電装置1において、外装体本体110の本体開口部111は、蓋体120によって密閉されている。具体的には、蓄電素子20が開弁してガスが噴出した場合、例えば、蓄電素子20の使用者の安全確保のために、外装体10に設けられた排気口(図示せず)から所定の場所までガスを導く必要がある。しかし、仮に、外装体本体110と、蓋体120との接合部分に隙間がある場合、または、ガスの圧力で隙間ができた場合、予期せぬ位置からガスが漏れ出すことになり、このことは不安全事象の発生の要因となる。さらに、蓄電装置1は、例えば、風雨にさらされる状況で使用される場合、及び、自然災害などにより水没する場合等もある。そのため、外装体本体110と蓋体120との接合部分には高い気密性または水密性が求められる場合もある。
【0036】
従って、外装体本体110と蓋体120との接合部分は、蓄電装置1の信頼性の観点から重要な部分である。そこで、本実施の形態では、外装体本体110と蓋体120とを溶着によって接合する。より具体的には、レーザ光を用いたレーザ溶着によって外装体本体110と蓋体120とが溶着される。これにより、効率よくかつ高精度で外装体本体110と蓋体120との接合部分を形成することができる。以下、
図3~
図4Bを参照しながら、本実施の形態に係る外装体本体110と蓋体120との接合部分の詳細について説明する。
【0037】
[1-2.外装体本体と蓋体との接合部分について]
図3は、実施の形態に係る外装体本体110と蓋体120との構造上の関係を示す斜視断面図である。
図3では、
図2のIII-III線を通るYZ平面における外装体本体110及び蓋体120の断面が図示されており、かつ、これら断面を含む外装体本体110及び蓋体120の一部が互いに分離した状態で表されている。
図4Aは、実施の形態に係る外装体本体110と蓋体120とが組み合わされた状態を示す断面図であり、
図4Bは、実施の形態に係る外装体本体110と蓋体120とが溶着された状態を示す断面図である。
図4A及び
図4Bにおける断面の位置は、
図3における断面の位置に準じている。
【0038】
上述の
図2、及び、
図3~
図4Bに示されるように、蓋体120は、外装体本体110の本体開口部111の開口方向(Z軸プラス方向)から外装体本体110に向けて取り付けられる部材である。外装体本体110は、本体開口部111の周縁に設けられた第一壁部115を有している。蓋体120は、
図3~
図4Bに示すように、第一壁部115に接合される第二壁部125を有している。蓋体120の第二壁部125は、
図4A及び
図4Bに示すように、外装体本体110の第一壁部115の外側(外装体10の外部側)において、第一壁部115に対向する位置に配置される。その状態で、レーザ光Lが第二壁部125に向けて照射され、これにより、第一壁部115と第二壁部125とが溶着した部分である溶着部140が形成される。
【0039】
具体的には、蓋体120の少なくともレーザ光Lが照射される部分は、レーザ光Lの透過が可能な樹脂で形成されており、外装体本体110の、蓋体120を透過したレーザ光Lが照射される部分は、レーザ光Lを吸収する樹脂で形成されている。レーザ光Lの透過が可能でかつ溶着が可能な樹脂(透過側樹脂)としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、及びABS等の熱可塑性樹脂であって、かつ、透明または色材の含有量が少ない樹脂が例示される。レーザ光Lを吸収する樹脂(吸収側樹脂)としては、上記のPE及びPP等の熱可塑性樹脂であって、かつ、レーザ光Lの波長を吸収して効率よく熱に変換する色材を含有する樹脂が例示される。
【0040】
例えば、蓋体120の全体が、透過側樹脂であるレーザ透過率が高い未着色(透明、半透明、または白色等)の熱可塑性樹脂で形成される。また、外装体本体110の全体が、吸収側樹脂であるレーザ吸収率が高い黒色またはグレーの熱可塑性樹脂で形成される。なお、これら透過側樹脂及び吸収側樹脂の種類及び色は例示であり、例えば、吸収側樹脂としてレーザ光を透過する色材を含有することで黒色またはグレーの外観を有する樹脂が採用されてもよい。また、蓋体120の全体が透過側樹脂で形成される必要はなく、レーザ光Lが照射される部分のみ(例えば第二壁部125のみ)が、透過側樹脂で形成されていればよい。外装体本体110の全体が吸収側樹脂で形成されている必要はなく、第二壁部125を透過したレーザ光Lが照射される部分のみ(例えば第一壁部115のみ)が、吸収側樹脂で形成されていればよい。また、例えば、蓋体120をレーザ光Lが透過する、という場合、レーザ光Lの全てが透過する必要はなく、入射するレーザ光の内の所定の割合(例えば3割)以上が透過すればよい。外装体本体110がレーザ光Lを吸収する、という場合も同様であり、外装体本体110は、入射するレーザ光Lの全てを吸収する必要はない。この場合、外装体本体110は、外装体本体110を形成する樹脂が溶融する程度の割合のレーザ光(エネルギー)を吸収できればよい。
【0041】
このように構成された第一壁部115及び第二壁部125に対し、
図4Aに示すように、レーザ光Lの透過側、つまり、第二壁部125の側(Y軸マイナス方向側)からレーザ光Lを照射した場合、第二壁部125を透過したレーザ光Lは、第一壁部115で吸収される。これにより、第一壁部115のレーザ光Lが照射された(レーザ光Lを吸収した)部分が熱せられる。その結果、第一壁部115と第二壁部125との界面で熱が発生し、
図4Bに示すように、第一壁部115の一部と第二壁部125の一部とが溶融して冷え固まった部分、つまり、第一壁部115と第二壁部125とが溶着された部分である溶着部140が形成される。また、第二壁部125の、レーザ光Lが通過した部分については、エネルギーの吸収がないため発熱せず、従って樹脂の溶融は生じない。また、第一壁部115におけるレーザ光Lによって溶融する部分は、第一壁部115を貫通しないようにレーザ光Lの出力等が調整されている。従って、溶着部140は、第一壁部115及び第二壁部125の内部に位置し、第一壁部115及び第二壁部125の外部に露出しない。
【0042】
このように形成される溶着部140は、第一壁部115及び第二壁部125の延在方向(
図3~
図4BではX軸方向)に延在する。つまり、外装体本体110と蓋体120とがX軸方向またはY軸方向に重ね合わされた部分に沿って、外装体10を一周するように溶着部140が形成される。これにより、外装体本体110の本体開口部111は蓋体120によって封止された状態となる。
【0043】
このように、溶着部140の形成には、2つの部材(外装体本体110及び蓋体120)の樹脂が熱で溶融して冷え固まる過程が含まれる。この溶着部140の形成の過程において、樹脂が溶融した際に、樹脂に含まれる難燃剤、樹脂に付着した異物、及び、樹脂そのもの等が気化することでガスが発生し、溶着部140に気泡(ボイド)が生じる可能性がある。溶着部140にボイドが生じた場合、接合強度の低下等の不具合が発生する可能性がある。
【0044】
そこで、本実施の形態では、溶着部140が形成される部分に沿う位置に、樹脂が溶融する際に発生するガスを収容可能なガス収容部118が設けられている。つまり、溶着部140に連続する位置に、ガス収容部118に形成された、ガスを収容可能な空間が設けられている。これにより、溶着部140が形成される過程で生じるガスをガス収容部118に逃がすことができる。その結果、溶着部140内に残存するガスの量を低減することができ、溶着部140に発生するボイドの数(量)を抑制することができる。
【0045】
このように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、それぞれが樹脂で形成された第一部材(本実施の形態では外装体本体110)と第二部材(本実施の形態では蓋体120)とを備える。外装体本体110及び蓋体120は、所定の方向(
図3~
図4BではX軸方向)に延在する溶着部140において互いに接合されている。溶着部140は、接合された状態の外装体本体110及び蓋体120の外面に露出しない位置に形成されている。外装体本体110及び蓋体120の少なくとも一方は、他方から離れる向きに窪んだ形状のガス収容部118であって、溶着部140に沿って所定の方向に延在するガス収容部118を有する。本実施の形態では、
図4A及び
図4Bに示されるように、蓋体120にガス収容部118が設けられている。一方(蓋体120)に設けられたガス収容部118は、外装体本体110及び蓋体120それぞれの接合部分(第一壁部115及び第二壁部125)の厚み方向、または、レーザ光Lの照射方向(Y軸方向)において、他方(外装体本体110)から離れる向きに窪んでいる。
【0046】
このように、本実施の形態に係る蓄電装置1では、外装体本体110と蓋体120との接合部分が、樹脂の溶融及び固化により形成される溶着部140によって形成されるため、当該接合部分において、高い気密性を得ることができる。さらに、溶着部140の形成が、レーザ光Lの透過及び吸収によって行われるため、例えば、溶融痕が外観上の問題となり難い。このような利点または優位性を有する溶着部140を、レーザ溶着によって形成する際に、この溶着で発生するガスの少なくとも一部はガス収容部118に収容される。これにより、溶着部140におけるボイドの発生が抑制される。従って、溶着部140で発生するボイドに起因する、接合強度不足または接合強度の低下の問題が生じ難い。さらに、このガス収容部118は、所定の方向に延在する溶着部140に沿って延在するため、広い範囲で溶着部140におけるボイドの発生が抑制される。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、樹脂製の2つの部材が溶着された部分である溶着部140であって、信頼性が向上された溶着部140を有する蓄電装置である。
【0047】
また、上述のように、溶着部140において溶着された第一部材及び第二部材のそれぞれは、蓄電装置1の外装体10の一部を形成する部材(本実施の形態では外装体本体110及び蓋体120)である。そのため、外装体本体110の本体開口部111を閉塞する(封止する)接合部分において、信頼性が向上された溶着部140が形成される。従って、蓄電素子20の開弁時における溶着部140からのガスの漏れ出し、及び、溶着部140から外装体10の内部への水の浸入等が抑制される。これにより、例えば蓄電装置1の安全性の向上、または、製品寿命の長期化等が図られる。
【0048】
また、外装体本体110及び蓋体120の一方は、所定の方向に延在する凸部126を有し、外装体本体110及び蓋体120の他方は、当該所定の方向に延在する凹部116を有する。溶着部140では、凸部126が凹部116に係合または嵌合された状態で、凸部126の少なくとも一部と凹部116の少なくとも一部とが溶着によって接合されている。本実施の形態では、所定の方向(
図3~
図4BではX軸方向)に延在する凸部126が蓋体120に設けられており、同じくX軸方向に延在する凹部116が外装体本体110に設けられている。
【0049】
つまり、ともに樹脂製である外装体本体110及び蓋体120が、凹部116と凸部126とが係合または嵌合した状態で接合される。従って、外装体本体110及び蓋体120の接合部分(溶着部140を含む)の機械的な強度が向上する。また、レーザ溶着の際の外装体本体110及び蓋体120の一方に対する他方の位置決め及び位置規制がより確実に行える。そのため、外装体本体110と蓋体120とを精度よく、かつ、効率よく溶着することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、
図4A及び
図4Bに示すように、ガス収容部118は、凸部126と凹部116との間の隙間によって形成されている。
【0051】
より具体的には、本実施の形態では、凹部116と、凹部116の内部空間よりも小さいサイズの凸部126との組み合わせによって、溶着部140に沿って延在するガス収容部118が設けられている。つまり、外装体本体110または蓋体120に、ガス収容部118のみのため(専用)の窪み形状を設けることなく、比較的に簡易な構成によって、溶着部140に沿う(連続する)位置にガス収容部118を設けることができる。
【0052】
また、蓄電装置1ではさらに、外装体本体110及び蓋体120の一方には、ガス収容部118から、当該一方の表面に至る通気孔119が形成されている。本実施の形態では、
図4A及び
図4Bに示すように、外装体本体110に、ガス収容部118から外装体本体110の内部側の表面に至る通気孔119が形成されている。
【0053】
この構成によれば、溶着時に発生し、一旦、ガス収容部118に収容されたガスを、通気孔119を介して外装体本体110及び蓋体120の外部に逃がすことができる。従って、溶着時に発生するガスの量に対してガス収容部118の容積が小さい場合であっても、ガス収容部118の内圧が過度に上昇する可能性が低減される。このことは、溶着部140の信頼性の向上に寄与する。なお、通気孔119は、本実施の形態では、例えば
図3に示すように、ガス収容部118の延在方向に沿って間隔をあけて複数配置されており、これにより、ガス収容部118に収容されたガスを効率よく外部に排出することができる。しかし、1つの空間を形成する1つのガス収容部118に対して配置される通気孔119の数は1であってもよい。また、ガス収容部118と外装体本体110の表面とを連通する通気孔119に換えて、ガス収容部118と蓋体120の表面とを連通する通気孔が設けられてもよい。
【0054】
以上、実施の形態に係る蓄電装置1について、外装体本体110と蓋体120との接合部分を中心に説明した。しかし、当該接合部分の構造は、
図3~
図4Bとは異なる構造であってもよい。そこで、以下に、外装体本体110と蓋体120との接合部分についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0055】
[2-1.変形例1]
図5Aは、実施の形態の変形例1に係る外装体本体110と蓋体120とが組み合わされた状態を示す断面図である。
図5Bは、実施の形態の変形例1に係る外装体本体110と蓋体120とが溶着された状態を示す断面図である。
図5A及び
図5Bにおける断面の位置は、
図3における断面の位置に準じている。このことは、後述する
図6A~
図7Bのそれぞれについても適用される。
【0056】
図5A及び
図5Bに示すように、本変形例に係る外装体10aが備える外装体本体110及び蓋体120は、所定の方向(
図5A、
図5BではX軸方向)に延在する溶着部140aにおいて互いに接合されている。溶着部140aは、外装体本体110及び蓋体120の外面に露出しない位置に形成されている。これらの構成は、上記実施の形態と共通する。本変形例では、蓋体120が、外装体本体110から離れる向きに窪んだ形状のガス収容部118aであって、溶着部140aに沿って所定の方向に延在するガス収容部118aを有している点で上記実施の形態と異なる。具体的には、ガス収容部118aは、凸部126aの一部に設けられた窪みによって形成されている。
【0057】
つまり、外装体本体110と蓋体120との接合部分において、蓋体120が有する凸部126aが、外装体本体110が有する凹部116に嵌合または係合した状態であり、かつ、凸部126aが窪みを有している。その窪みによってガス収容部118aが形成されている。
【0058】
この構成によれば、例えば、凹部116と凸部126aとを比較的に大きな面積同士で密着させた状態で、溶着部140aに沿って延在するガス収容部118aを設けることができる。従って、例えば、溶着部140aにおけるボイドの発生を抑制しながら、溶着部140aの容積を比較的に大きくすることができ、かつ、凸部126aと凹部116とを機械的により強固に結合させることができる。
【0059】
なお、
図5A及び
図5Bでは、凸部126aにおける、凸部126aの延在方向(X軸方向)に直交する断面において、2つのガス収容部118aが設けられているが、当該断面におけるガス収容部118aの数は1でもよい。また、外装体本体110及び蓋体120の一方に、ガス収容部118aと、当該一方の表面とを連通する通気孔が設けられてもよい。このような構成を有する、外装体本体110と蓋体120との接合部分について変形例2として以下に説明する。
【0060】
[2-2.変形例2]
図6Aは、実施の形態の変形例2に係る外装体本体110と蓋体120とが組み合わされた状態を示す断面図である。
図6Bは、実施の形態の変形例2に係る外装体本体110と蓋体120とが溶着された状態を示す断面図である。
【0061】
図6A及び
図6Bに示すように、本変形例に係る外装体10bが備える外装体本体110及び蓋体120は、所定の方向(
図6A、
図6BではX軸方向)に延在する溶着部140bにおいて互いに接合されている。また、ガス収容部118bは、凸部126bの一部に設けられた窪みによって形成されている。この構成は、上記変形例1と共通する。しかし、本変形例では、凸部126bの頂部に1つの窪みが設けられており、この窪みによってガス収容部118bが形成されている。さらに、ガス収容部118bと、蓋体120における外装体10の外部側の表面とを連通する通気孔129が蓋体120に設けられている。
【0062】
この構成によれば、上記変形例1と同じく、例えば、溶着部140bにおけるボイドの発生を抑制しながら、溶着部140bの容積を比較的に大きくすることができ、かつ、凸部126bと凹部116とを機械的により強固に結合させることができる。さらに、通気孔129が設けられていることで、溶着時に発生するガスの量に対してガス収容部118bの容積が小さい場合であっても、ガス収容部118bの内圧が過度に上昇することがない。このことは溶着部140bの信頼性の向上に寄与する。
【0063】
[2-3.変形例3]
図7Aは、実施の形態の変形例3に係る外装体本体110cと蓋体120cとが組み合わされた状態を示す断面図である。
図7Bは、実施の形態の変形例3に係る外装体本体110cと蓋体120cとが溶着された状態を示す断面図である。
【0064】
図7A及び
図7Bに示すように、本変形例に係る外装体10cが備える外装体本体110c及び蓋体120cは、所定の方向(
図7A、
図7BではX軸方向)に延在する溶着部140cにおいて互いに接合されている。溶着部140cは、外装体本体110c及び蓋体120cの外面に露出しない位置に形成されている。また、溶着部140cに沿ってガス収容部118cが延在している。これらの構成は、上記実施の形態と共通する。本変形例では、外装体本体110cが、所定の方向に延在する凸部116cを有し、かつ、蓋体120cが当該所定の方向に延在する凹部126cを有しており、この点で上記実施の形態と異なる。つまり、
図4Bと
図7Bとを比較して分かるように、本変形例では、溶着される凹部と凸部の位置が、実施の形態とは逆である。
【0065】
この場合であっても、本変形例に係る蓄電装置1では、溶着部140cをレーザ溶着によって形成する際に、この溶着で発生するガスの少なくとも一部はガス収容部118cに収容される。これにより、溶着部140cにおけるボイドの発生が抑制される。従って、溶着部140cで発生するボイドに起因する、接合強度不足または接合強度の低下の問題が生じ難い。さらに、このガス収容部118cは、所定の方向に延在する溶着部140cに沿って延在するため、広い範囲で溶着部140cにおけるボイドの発生が抑制される。
【0066】
また、本変形例では、さらに、蓋体120cには、ガス収容部118cから、蓋体120cの表面(外装体10の外部側の表面)に至る通気孔129が形成されている。従って、溶着時に発生するガスの量に対してガス収容部118cの容積が小さい場合であっても、ガス収容部118cの内圧が過度に上昇することがない。このことは、溶着部140cの信頼性の向上に寄与する。
【0067】
[2-4.他の変形例]
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電装置1について説明したが、本発明は、この実施の形態及び変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0068】
例えば、外装体本体110と蓋体120との接合部分において、外装体本体110及び蓋体120の一方に凹部を設け他方に凸部を設けることは必須ではない。例えば、外装体本体110の平板状の部分と、蓋体120の平板状の部分とが重ねられて、これら平板状の部分がレーザ溶着によって溶着されてもよい。この場合であっても外装体本体110及び蓋体120の少なくとも一方における溶着される部分に沿って、他方から離れる向きに窪んだ形状のガス収容部が設けられていればよい。これにより、レーザ溶着によって形成される溶着部に沿ってガス収容部が設けられることになり、その結果、ボイドの発生が抑制された溶着部が形成される。
【0069】
また、外装体本体110と蓋体120との接合部分に設けられる凹部116及び凸部126の形状は、
図4A等に示される形状には限定されない。例えば、断面形状がV字状または矩形状の凹部が、外装体本体110及び蓋体120の一方に設けられてもよい。この場合であっても、外装体本体110及び蓋体120の他方が、例えば、凹部の内面に一部が当接し、かつ、当接する部分に隣接して隙間が形成される断面形状の凸部を備えればよい。これにより、凹部の内面と凸部の外面との当接部分に溶着部を形成することができる。また、この溶着部の形成の過程において発生するガスを、その溶着部に沿う位置に存在する凹部と凸部との間の隙間(つまり、ガス収容部)に逃がすことができる。
【0070】
また、蓄電装置1が備える、溶着によって接合される第一部材及び第二部材は、外装体本体110及び蓋体120の組み合わせには限定されない。例えば、第一部材が、透過側樹脂で形成された蓋体120であり、第二部材が、吸収側樹脂で形成された中間部材であって、蓋体120と外装体本体110との接合部分において蓋体120と外装体本体110との間に介在する中間部材であってもよい。この場合、レーザ光で溶融する中間部材を介して蓋体120と外装体本体110とを接合することができる。また、例えば蓋体120が上面に開口部を有し、当該開口部がカバー部材で閉じられる場合、第一部材である蓋体120に、第二部材であるカバー部材がレーザ溶着によって溶着されてもよい。また、例えば、外装体本体110が第一部材であり、蓄電素子ユニット24(
図2参照)の上方に配置される、バスバープレート、電装品が載置される電装品トレー、または、蓋体120の内方において本体開口部111を塞ぐ中蓋等が第二部材であってもよい。つまり、蓄電装置1が備える2つの樹脂製の部材が溶着される部分に、
図4A等で示した構造が採用されることで、ボイドの数(量)が抑制された溶着部が形成される。つまり、信頼性の高い溶着部を得ることができる。
【0071】
また、蓋体120と外装体本体110との接合部分における重なり順は逆であってもよい。例えば、蓋体120の第二壁部125(
図3参照)が、外装体本体110の第一壁部115(
図3参照)の内側(
図3におけるY軸プラス方向側)に配置されてもよい。この場合、外装体本体110の、少なくとも、レーザ光Lを透過させるべき部分(例えば第一壁部115の全体)が透過側樹脂で形成され、かつ、蓋体120の、少なくとも、レーザ光を吸収させるべき部分(例えば第二壁部125の全体)が吸収側樹脂で形成されればよい。これにより、第一壁部115を透過したレーザ光Lが第二壁部125で吸収され、その結果、第一壁部115と第二壁部125とが溶着される。なお、この場合、凹部116と凸部126とは配置されていなくてもよく、また、これらが互いに対向する(凹部116に凸部126が挿入される)位置に配置されていてもよい。
【0072】
また、外装体10の形状は略直方体状(箱状)である必要はない。例えば、一端が閉じられた円筒状の外装体本体と、円形の開口部を塞ぐ、平面視で円形状の蓋体で構成された外装体との接合に、例えば
図4A及び
図4B等に示される接合構造が採用されてもよい。
【0073】
また、上記説明された複数の構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 蓄電装置
10、10a、10b、10c 外装体
20 蓄電素子
21 容器
21a 長側面
21b 短側面
21c 蓋板
22 電極端子
23 ガス排出弁
24 蓄電素子ユニット
91、92 外部端子
110、110c 外装体本体
111 本体開口部
115 第一壁部
116、126c 凹部
116c、126、126a、126b 凸部
118、118a、118b、118c ガス収容部
119 通気孔
120、120c 蓋体
125 第二壁部
129 通気孔
140、140a、140b、140c 溶着部