(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182108
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】解析方法及び解析システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20221201BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20221201BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20221201BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10 100
G06F30/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089449
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】平戸 達朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】森井 雄史
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146EA08
(57)【要約】
【課題】実条件に沿った的確な検証が可能となる有限要素法に基づく解析方法を提供する。
【解決手段】本発明は、有限要素による建築物のモデルを用いて、コンピューターが建築物の解析を行なう有限要素法に基づく解析方法であって、建築物のモデルを複数の要素に分割し、要素の頂点である節点を設定する節点設定工程と、模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成する加振データ生成工程と、前記加振データ生成工程で生成された加振データにおいて模擬される踏み込み位置と、建築物の床をモデル化した要素における節点との位置関係に応じて、加振データを印加する節点を選択する節点選択工程(ステップS604-S608)と、前記節点選択工程で選択された節点に加振データを印加する加振データ印加工程(ステップS609)と、前記加振データ印加工程で印加された加振データに対する各節点における応答を算出する応答算出工程(ステップS610)と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限要素による建築物のモデルを用いて、コンピューターが建築物の解析を行なう有限要素法に基づく解析方法であって、
建築物のモデルを複数の要素に分割し、要素の頂点である節点を設定する節点設定工程と、
模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成する加振データ生成工程と、
前記加振データ生成工程で生成された加振データにおいて模擬される踏み込み位置と、建築物の床をモデル化した要素における節点との位置関係に応じて、加振データを印加する節点を選択する節点選択工程と、
前記節点選択工程で選択された節点に加振データを印加する加振データ印加工程と、
前記加振データ印加工程で印加された加振データに対する各節点における応答を算出する応答算出工程と、を有することを特徴とする解析方法。
【請求項2】
前記加振データ生成工程で模擬される踏み込み位置の決定は、
乱数を生成する乱数生成工程と、
前記乱数生成工程で生成された乱数と、歩幅の標準偏差とから、歩幅のばらつき幅を算出する歩幅ばらつき幅算出工程と、
前記歩幅ばらつき幅算出工程で算出された歩幅のばらつき幅と、歩幅の平均値とから、踏み込み位置を決定する踏み込み位置決定工程と、に基づくことを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記加振データ生成工程で模擬される加振開始タイミングの決定は、
乱数を生成する乱数生成工程と、
前記乱数生成工程で生成された乱数と、加振開始タイミングの標準偏差とから、加振開始タイミングのばらつき幅を算出する加振開始タイミングばらつき幅算出工程と、
前記加振開始タイミングばらつき幅算出工程で算出された加振開始タイミングのばらつき幅と、加振開始タイミングの平均値とから、加振開始タイミングを決定する加振開始タイミング決定工程と、に基づくことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の解析方法。
【請求項4】
前記加振データ生成工程で模擬される加振力の時間特性の決定は、
乱数を生成する乱数生成工程と、
前記乱数生成工程で生成された乱数と、加振力の時間特性の標準偏差とから、加振力の時間特性のばらつき幅を算出する加振力の時間特性ばらつき幅算出工程と、
前記加振力の時間特性ばらつき幅算出工程で算出された加振力の時間特性のばらつき幅と、加振力の時間特性の平均値とから、加振力の時間特性を決定する加振力の時間特性決定工程と、
に基づくことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の解析方法。
【請求項5】
有限要素による建築物のモデルを用いて、コンピューターが建築物の解析を行なう有限要素法に基づく解析システムであって、
建築物のモデルを複数の要素に分割し、要素の頂点である節点を設定する節点設定部と、
模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成する加振データ生成部と、
前記加振データ生成部で生成された加振データにおいて模擬される踏み込み位置と、建築物の床をモデル化した要素における節点との位置関係に応じて、加振データを印加する節点を選択する節点選択部と、
前記節点選択部で選択された節点に加振データを印加する加振データ印加部と、
前記加振データ印加部で印加された加振データに対する各節点における応答を算出する応答算出部と、を有することを特徴とする解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューターによるシミュレーション上の建築物を有限要素法に基づいて解析する方法及びその方法を用いた解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディングなどの建築物において、人の移動に伴う歩行或いは小走りなどによって発生する振動が、どのように他の箇所(例えば、移動する人と同フロアにおける他の居室など)に影響を与えるかを設計時に把握することで、竣工後における振動対策などの労を避けることができる。
【0003】
そのために、人が歩行する際に床に加わる外力に基づいた振動解析が試みられている。例えば、特許文献1(特開2020-123385号公報)には、建物の床の振動を、コンピューターを用いて解析する方法において、前記床の振動解析に必要な物理的データと、振動外力の確率変数を用いて作成された外力モデルと、が入力される入力ステップと、前記物理データおよび前記外力モデルを用いて、2次モーメント法により前記床の信頼性評価を示すパラメータ算出する解析ステップと、 前記解析ステップで算出された前記パラメータを出力する出力ステップと、を含み、前記出力ステップでは、前記床上の各点における前記パラメータの値を識別可能に表示する、ことを特徴とする床振動解析方法が開示されている。
【特許文献1】特開2020-123385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、建築物の解析モデルとして、有限要素法を用いた有限要素解析モデルにおける振動評価を行っている。従来、人の歩行などの加振力が建築物に作用した時の有限要素法を用いた解析では、歩行移動による床への加振作用位置が時間と共に移動するような評価はデータ作成・処理が煩雑であったためこれを行わず、便宜的に歩行移動相当と考えられる見做し荷重を限られた節点(例えば、一番脆弱と考えられる1点のみ)に加振する方法を採用していた。
【0005】
しかしながら、このような従来の方法では、建築物の内部空間の大規模化で、スパン長が長大化するのに伴い、見做し荷重を印加する適切な節点が選択できなかったり、或いは、歩行移動相当と考えられる見做し荷重は、実際の人の移動スピードや歩行ピッチなどと合致しないため、実条件に沿った的確な解析・検証ができかなったり、という問題があった。
【0006】
そのため、ロングスパンの梁で構成される大スパン床での歩行による振動の予測が設計段階で適切に行われず、想定外の振動が生じる可能性があることを考慮して、安全側の対応をとると、構造部材が過大ととなり建設コストがかさむ、という課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記のような問題や課題を解決するものであり、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法は、有限要素による建築物のモデルを用いて、コンピューターが建築物の解析を行なう有限要素法に基づく解析方法であって、建築物のモデルを複数の要素に分割し、要素の頂点である節点を設定する節点設定工程と、模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成する加振データ生成工程と、前記加振データ生成工程で生成された加振データにおいて模擬される踏み込み位置と、建築物の床をモデル化した要素における節点との位置関係に応じて、加振データを印加する節点を選択する節点選択工程と、前記節点選択工程で選択された節点に加振データを印加する加振データ印加工程と、前記加振データ印加工程で印加された加振データに対する各節点における応答を算出する応答算出工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法は、前記加振データ生成工程で模擬される踏み込み位置の決定は、乱数を生成する乱数生成工程と、前記乱数生成工程で生成された乱数と、歩幅の標準偏差とから、歩幅のばらつき幅を算出する歩幅ばらつき幅算出工程と、前記歩幅ばらつき幅算出工程で算出された歩幅のばらつき幅と、歩幅の平均値とから、踏み込み位置を決定する踏み込み位置決定工程と、に基づくことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法は、前記加振データ生成工程で模擬される加振開始タイミングの決定は、乱数を生成する乱数生成工程と、前記乱数生成工程で生成された乱数と、加振開始タイミングの標準偏差とから、加振開始タイミングのばらつき幅を算出する加振開始タイミングばらつき幅算出工程と、前記加振開始タイミングばらつき幅算出工程で算出された加振開始タイミングのばらつき幅と、加振開始タイミングの平均値とから、加振開始タイミングを決定する加振開始タイミング決定工程と、に基づくことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法は、前記加振データ生成工程で模擬される加振力の時間特性の決定は、乱数を生成する乱数生成工程と、前記乱数生成工程で生成された乱数と、加振力の時間特性の標準偏差とから、加振力の時間特性のばらつき幅を算出する加振力の時間特性ばらつき幅算出工程と、前記加振力の時間特性ばらつき幅算出工程で算出された加振力の時間特性のばらつき幅と、加振力の時間特性の平均値とから、加振力の時間特性を決定する加振力の時間特性決定工程と、に基づくことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る有限要素法に基づく解析システムは、有限要素による建築物のモデルを用いて、コンピューターが建築物の解析を行なう有限要素法に基づく解析システムであって、建築物のモデルを複数の要素に分割し、要素の頂点である節点を設定する節点設定部と、模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成する加振データ生成部と、前記加振データ生成部で生成された加振データにおいて模擬される踏み込み位置と、建築物の床をモデル化した要素における節点との位置関係に応じて、加振データを印加する節点を選択する節点選択部と、前記節点選択部で選択された節点に加振データを印加する加振データ印加部と、前記加振データ印加部で印加された加振データに対する各節点における応答を算出する応答算出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システムは、模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成し、この加振データを、床をモデル化した要素のうちの選択された節点に印加し、加振データに対する各節点における応答を算出する。このような本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システムによれば、実際の人の移動スピードや歩行ピッチと合致した加振(荷重)を適切な節点に印加することとなるので、実条件に沿った的確な検証が可能となり、振動の予測が設計段階で行えるので、過大な構造部材で施工する必要がなく、建設コストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】建築物の構造データ設定・節点設定処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図2】部材データが保持する属性データを説明する図である。
【
図3】部材データから六面体要素(六面体メッシュ)モデルへの分割を示す図である。
【
図4】設定された建築物の構造データを表示するユーザーインターフェイス画面の一例を示す図である。
【
図5】シミュレーション上の移動者の軌跡の設定例を示す図である。
【
図6】実際の人の歩行動作の分析結果を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る解析方法及び解析システムにおける加振データ生成処理のフローチャートを示す図である。
【
図8】踏み込み位置(座標)算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図9】歩行動作における踏み込み位置のばらつきを説明する図である。
【
図10】加振開始タイミング算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図11】歩行動作における加振開始タイミングのばらつきを説明する図である。
【
図12】加振力の時間特性算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図13】歩行動作における加振力の時間特性のばらつきを説明する図である。
【
図14】加振データのデータ構成のイメージ図である。
【
図15】建築物の床をモデル化した要素における節点を示す図である。
【
図17】加振データを印加する節点として1点の節点が選択される領域(I)のパターンを説明する図である。
【
図18】加振データを印加する節点として2点の節点が選択される領域(II)のパターンを説明する図である。
【
図19】加振データを印加する節点として2点の節点が選択される領域(III)のパターンを説明する図である。
【
図20】加振データを印加する節点として4点の節点が選択される領域(IV)のパターンを説明する図である。
【
図21】本発明の実施形態に係る解析方法及び解析システムにおける応答算出処理のフローチャートを示す図である。
【
図22】本発明の実施形態に係る解析システム1を実行するコンピューターのシステム構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。有限要素法は、解析的に解くことが難しい偏微分方程式の近似解を数値的に求めるものである。有限要素法に基づく解析方法・解析システムにおいては、ビルディングなどの建築物のコンピューターシミュレーション上のモデルを複数の要素(「メッシュ」とも称する)に分割し、要素の境界上に位置してそれらを結合する点である「節点」を設定する。有限要素法では、分割された要素毎に偏微分方程式の解となる関数を「補間関数」を用いて離散化して近似することで、元の方程式の近似解を求める。コンピューターによる演算結果としての数値は、通常、「要素」または要素の頂点である「節点」に対応付けられる。要素に対する演算結果としては、要素の変形などを得ることができ、節点に対する演算結果としては、節点の変位などを得ることができる。本明細書においては、節点の変位のことを、節点における応答と称することもある。
【0015】
本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システムにおいては、コンピューター上で、有限要素法に基づいて設定された建築物のモデルを設定し、このモデルに対して、人の移動に伴う歩行或いは小走りなどによる加振に関するデータを、上記のような節点に与えて、これに対する各節点の応答をシミュレーションするものである。このためには、まず、解析対象となる建築物のモデルを設定し、さらにこれを要素に分割し、節点の設定を行うようにする。次に、コンピューターシミュレーション上で建築物の構造データの設定を行ったり、節点を設定したりする工程について説明する。以下、このような工程の一例について説明する。なお、
図1では、六面体要素によって建築物の構造データを設定する例について説明するが、建築物の構造データを要素にメッシュ分割する際の形状が六面体に限定されるものではなく、その他の形状のものでも本発明を適用することができる。例えば、それぞれの部材データを平面体要素や、或いは、線要素によって設定する場合でも、本発明を適用し得る。
【0016】
図1は建築物の構造データ設定・節点設定処理のフローチャートの一例を示す図である。このようなフローチャートに基づく処理は後述するコンピューターによって実行され得る。本処理では、有限要素法の解析対象となる建築物の構造データを、ユーザーが複数の部材データから選択していき、構築・設定する方法が想定されているが、このように建築物の構造データを構築・設定する方法は、本方法に限定される必要はなく、建築物の構造データの設定や節点の設定はその他の方法を用いるようにしてもよい。
【0017】
以下の説明において、建築物の構造データを構成する「部材」は実際のものではなく、あくまでコンピューターシミュレーション上のものである。特に「部材」がコンピューターシミュレーション上のものであることを強調したい場合には、「部材」を「部材データ」と言い換えることがある。なお、本明細書では、実在の構成のそのままの名称(例えば「柱部材」など)を、実在の構成をシミュレーションするためのデータにも用いることもある。
【0018】
図1において、ステップS100で、建築物の構造データ設定・節点設定処理が開始されると、続いて、ステップS101に進み、本発明に係る解析システムの初期画面(不図示)を表示する。ステップS01において、ユーザーは「新規プロジェクト」の作成を行うようにシステムに対して要求する。
【0019】
ステップS102では、ユーザーが構築しようとしている建築物のフロア数の設定・通り芯・スパン等の建築物の基本的な骨組み構造の設定をユーザーに要求に対して要求する。
【0020】
ステップS02においては、キーボードやポインティングデバイス(入力部18)によって、ユーザーが入力を行うことが想定されている。ユーザーは、キーボードやポインティングデバイス(入力部18)によって、建築物の階数、階高を入力したり、X方向、Y方向の通り芯の数や、それらの番号、スパン幅などを入力したりすることが求められる。
【0021】
ステップS103では、フロアの設定・通り芯の設定に沿って、部材(データ)の配置・設定をユーザーに要求する。ここで、部材データの種別として、「接合部部材」、「柱部材」、「梁部材」、「床スラブ部材」、「壁部材」などを有することが好ましい。このような部材データは、外部記憶装置(18)などにライブラリーとして登録されたものを用い得るように構成される。また、このようなライブラリーにおいては、前記の各部材データが、どのような材料で構成されているかについてのデータも記憶され、適宜ユーザーが選択できるようにすることが好ましい。これに対応して、ユーザーはステップS03で、部材データの選択・配置・設定をキーボードやポインティングデバイス(入力部18)によって行う。
【0022】
続く、ステップS104では、各部材に関する情報(寸法、材料、分割数)の入力をユーザーに要求する。これに対応して、ユーザーはステップS04で、部材の寸法や材料、分割数を、キーボードやポインティングデバイス(入力部18)によって入力していく。ここで、
図2及び
図3を参照して、部材に関する情報の具体例について説明する。
【0023】
図2は部材データが保持する属性データを説明する図である。このような属性データとしては種々のものを挙げることができるが、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システムを実現するために、部材データは属性として、少なくともその部材(データ)の頂点に係るデータと、その部材(データ)の寸法に係るデータと、その部材(データ)の材料に係るデータとを、保持している。
【0024】
例えば、「接合部部材」、「柱部材」、「梁部材」、「床スラブ部材」、「壁部材」の各部材は六面体領域で構成される形状をなしている。そして、
図2に示すように各部材データは六面体の直方体形状の角部である頂点に係るデータを保持している。さらに、各部材データは寸法に係るデータであるW(幅)、H(高さ)、D(奥行き)の値を有するものとなっている。ユーザーはステップS04で、このような寸法データの入力を行う。
【0025】
建築物を規定する構造データは、上記のような複数の部材データが、所定の座標中に配置されたものの集合である、ということができる。
【0026】
なお、本例では、説明を簡単とするために、各部材データが六面体の直方体形状をなす例にて説明を行うが、これは必須の要件ではなく、デッキスラブ部材などの異方性を有する部材などを取り扱い得るようにすることもできる。
【0027】
また、部材データのライブラリーにおいては、例えば、「柱部材」の下には、「鉄骨柱」、「RC柱」、・・・など柱部材の材料別のデータに分類されていることが好ましい。ユーザーはステップS04で、このような材料データの入力を行う。
【0028】
図3は部材データから六面体要素(六面体メッシュ)モデルへの分割を示す図である。六面体要素(六面体メッシュ)モデルは、有限要素法による解析に用いられる最小の単位である。この六面体要素(六面体メッシュ)モデルの角部については、特に「節点」と称称する。ユーザーはステップS04で、このような部材データの分割(数)に係る入力を行う。
【0029】
以上のような各ステップを経て、ステップS105では、建築物の構造データにおけるそれぞれの部材データを、
図3に示すように、それぞれの部材データを要素に分割し、ステップS106で、各要素の頂点を「節点」として設定し、ステップS108にて処理を終了する。
【0030】
以上のような処理によって、設定された建築物の構造データ・節点の例を示す。
図4は設定された建築物の構造データを表示するユーザーインターフェイス画面の一例を示す図であり、建築物のあるフロアの床部分の構造データを示している。
図4において、X
1、X
2、X
3、・・・、Y
1、X
2、X
3、・・・は通り芯を示している。また、短い斜めの線は「柱部材」を示している。各種線同士の交点の位置が「節点」となる。
【0031】
本発明に係る解析方法及び解析システムは、これまで説明したようにコンピューター上で設定された建築物の構造データにおいて、人の移動に伴う歩行或いは小走りなどによる加振に関するデータを、設定された節点に与えて、これに対する各節点の応答をシミュレーションするものである。
【0032】
図4に示すユーザーインターフェイス画面には、このための「移動軌跡設定」ボタン、「移動者条件設定」ボタン、「実行」ボタンなどを配しておくことができる。これらのボタンは、ポインティングデバイス(入力部18)などで押下することによって、ユーザーが実行命令を入力することが可能となる。
【0033】
「移動軌跡設定」では、ユーザーがシミュレーションを行いたい、移動者の軌跡を設定するボタンである。
図5はシミュレーション上の移動者の軌跡の設定例を示す図である。図において、白丸は、床をモデル化した要素における節点を示している。また、足形は移動者の移動動作に伴う踏み込みの位置を示している。このような踏み込みによる荷重は本来2次元的に広がっているが、本実施形態では、踏み込みによる加振(荷重)が加わる点は1点に集約することを仮定しており、当該点は図において足形の中の黒丸によって示されている。
【0034】
ユーザーは、「移動軌跡設定」ボタンによって、例えば、
図5中に(A)に示すような移動軌跡や、(B)に示すような移動軌跡を設定することができる。また、「移動者条件設定」ボタンによって、シミュレーション上の移動者の速さ、歩幅、体格・体重(加振力の大小)などの設定を行う。これらの設定を行った上で、「実行」ボタンを押下することで、本発明に係る解析システムに基づく算出が実行される。(A)や(B)に示す軌跡において、踏み込み動作による加振(荷重)がかかる点は直線上にあるものと仮定しているが、加振(荷重)がかかる点は必ずしもこのような仮定を前提とする必要はない。
【0035】
さて、 本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、まず、移動者による建築物床上への加振に係るデータを生成する。このとき、本発明においては、実際の人の歩行動作による加振力の時間特性を用いるようにしている。
図6は実際の人の歩行動作の分析結果を示す図である。
図6において、(A)で示される人の歩行動作における1歩分の踏み込みの様子は(B)のように分解することができる。このような1歩分の踏み込み動作による加振(荷重)が、図中の黒丸の1点にかかるものとすると、(C)に示すような時間-加振力のプロフィール(加振力の時間特性)となる。この加振力の時間特性で特徴的であるのは、踏み込み時における鋭いピークの後に、なだらかな2つのピークが続くことである。
【0036】
本発明に係る解析方法及び解析システムでは、基本的に、このような踏み込み動作による加振力の時間特性に基づいて、加振力データを生成していくが、実際の歩行における踏み込み動作はばらつきがあるため、ばらつきも考慮しつつ加振力データを生成する。
図7は本発明の実施形態に係る解析方法及び解析システムにおける加振データ生成処理のフローチャートを示す図である。
【0037】
図7において、ステップS200で、加振データ生成処理が開始されると、続いてステップS201においては、先の「移動軌跡設定」や「移動者条件設定」で設定された情報が取得される。 続いて、ステップS202では、変数Nに1がセットされる。ここで、変数Nは、模擬的な歩行におけるN歩目を表している。
【0038】
次に、ステップS203では、踏み込み位置(座標)算出処理のサブルーチンが実行される。
図8は踏み込み位置(座標)算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。また、
図9は歩行動作における踏み込み位置のばらつきを説明する図である。
【0039】
本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、歩幅にばらつきがあることを考慮して、加振データにおけるシミュレーション上の踏み込み位置(座標)が決定される。具体的には、(踏み込みの歩幅)は、(歩幅のばらつき幅)+(歩幅の平均値)によって計算され、これにより求められた(踏み込みの歩幅)に基づいて、踏み込み位置の座標が求められる。
【0040】
本実施形態のアルゴリズムでは、
図9に示すように歩幅の標準偏差をσ
1とすると、2σ
1の範囲内のいずれかの値を乱数に基づいて決定して、(歩幅のばらつき幅)を算出するようにしている。詳細については、
図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
図8において、ステップS300で、踏み込み位置(座標)算出処理のサブルーチンが開始されると、ステップS301では 整数の乱数Rを生成する。ここで、乱数Rは、-M
1≦R
1≦+M
1を満たすものとする。また、M
1は正の整数である。例えば、M
1を3とすると、乱数R
1としては、-3、-2、-1、0、1、2、3のいずれかの値が生成される。
【0042】
ステップS302においては、生成された乱数R1と標準偏差σ1とから、(歩幅のばらつき幅)=(R1/2M1)×σ1によって、(歩幅のばらつき幅)を算出する。
【0043】
続いてステップS303においては、(踏み込みの歩幅)=(歩幅のばらつき幅)+(歩幅の平均値)によって、(踏み込みの歩幅)を算出する。
【0044】
次のステップS304においては、設定されている軌跡の延長線上において、求められた(踏み込みの歩幅)に基づいて、踏み込み位置の座標を決定し、ステップS305で、元のルーチンにリターンする。
【0045】
以上のように、本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、実際の人の歩行においては、歩幅にばらつきがあることを考慮して、歩幅のばらつきを含めた加振データによるシミュレーションを行うので、より的確な予測を行うことが可能となる。
【0046】
さて、
図7のフローチャートに戻り、ステップS204では加振開始タイミング算出処理のサブルーチンが実行される。
図10は加振開始タイミング算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。また、
図11は歩行動作における加振開始タイミングのばらつきを説明する図である。
【0047】
本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、歩行時の踏み込みタイミング(加振の開始のタイミング)にばらつきがあることを考慮して、加振データにおけるシミュレーション上の加振開始タイミングが決定される。具体的には、(加振開始タイミング)は、(加振開始タイミングのばらつき幅)+(加振開始タイミングの平均値)によって計算される。
【0048】
本実施形態のアルゴリズムでは、
図11に示すように歩幅の標準偏差をσ
2とすると、2σ
2の範囲内のいずれかの値を乱数に基づいて決定して、(加振開始タイミングのばらつき幅)を算出するようにしている。詳細については、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0049】
図10において、ステップS400で、加振開始タイミング算出処理のサブルーチンが開始されると、ステップS401では 整数の乱数Rを生成する。ここで、乱数Rは、-M
2≦R
2≦+M
2を満たすものとする。また、M
2は正の整数である。このM
2はM
1と同値としてもよい。
【0050】
ステップS402においては、生成された乱数Rと標準偏差σ2とから、(加振開始タイミングのばらつき幅)=(R2/2M2)×σ2によって、(加振開始タイミングのばらつき幅)を算出する。
【0051】
続いてステップS403においては、(加振開始タイミング)=(加振開始タイミングのばらつき幅)+(加振開始タイミングの平均値)によって、(加振開始タイミング)を算出し、ステップS404で、元のルーチンにリターンする。
【0052】
以上のように、本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、実際の人の歩行においては、歩行時の踏み込みタイミング(加振開始タイミング)にばらつきがあることを考慮して、加振開始タイミングのばらつきを含めた加振データによるシミュレーションを行うので、より的確な予測を行うことが可能となる。
【0053】
さて、
図7のフローチャートに戻り、ステップS205では加振力の時間特性算出処理のサブルーチンが実行される。
図12は加振力の時間特性算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。また、
図13は歩行動作における加振力の時間特性のばらつきを説明する図である。
【0054】
本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、加振力の時間特性にばらつきがあることを考慮して、加振データにおけるシミュレーション上の加振力の時間特性が決定される。具体的には、(加振力の時間特性)は、(加振力の時間特性のばらつき幅)+(加振力の時間特性の平均値)によって計算される。
【0055】
本実施形態のアルゴリズムでは、
図13に示すように歩幅の標準偏差をσ
3とすると、2σ
3の範囲内のいずれかの値を乱数に基づいて決定して、(加振力の時間特性のばらつき幅)を算出するようにしている。詳細については、
図12のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
図10において、ステップS500で、加振力の時間特性算出処理のサブルーチンが開始されると、ステップS501では 整数の乱数R
3を生成する。ここで、乱数R
3は、-M
3≦R
3≦+M
3を満たすものとする。また、M
3は正の整数である。このM
3はM
2とM
1と同値としてもよい。
【0057】
ステップS502においては、生成された乱数Rと標準偏差σ3とから、(加振力の時間特性のばらつき幅)=(R3/2M3)×σ3によって、(加振力の時間特性のばらつき幅)を算出する。
【0058】
続いてステップS503においては、(加振力の時間特性)=(加振力の時間特性のばらつき幅)+(加振力の時間特性の平均値)によって、(加振力の時間特性)を算出し、ステップS504で、元のルーチンにリターンする。
【0059】
以上のように、本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、実際の人の歩行においては、加振力の時間特性にばらつきがあることを考慮して、加振力の時間特性のばらつきを含めた加振データによるシミュレーションを行うので、より的確な予測を行うことが可能となる。
【0060】
さて、
図7のフローチャートに戻り、ステップS206においては、ステップS203乃至ステップS205によって算出された、N歩目における、踏み込み位置(座標)、加振開始タイミング、加振力の時間特性を加振データとして記憶する。
【0061】
ステップS207では、設定されていた移動者の全移動軌跡について、加振データの生成が終了したか否かが判定される。ステップS207における判定がNOであれば、ステップS208に進み、Nを1インクリメントして、再びステップS203に戻る。一方、ステップS207における判定がYESであれば、ステップS209に進み、加振データ生成処理を終了する。
【0062】
以上のような加振データ生成処理で生成される加振データは、模擬的な移動者が踏み込んだ1歩毎に、踏み込み位置(座標)、加振開始タイミング、加振力の時間特性の3つのデータを有するものである。
図14は加振データのデータ構成のイメージ図である。
【0063】
例えば、1歩目の加振データは、踏み込み位置座標として(x1,y1)を有しており、加振開始タイミングの時刻としてT1を有しており、そして加振力の時間特性として、図示するような時間-加振力のプロフィールを有している。
【0064】
なお、加振データを節点に印加する際には、踏み込み位置(座標)、加振開始タイミング、加振力の時間特性の3つのデータのうち、加振開始タイミング、加振力の時間特性の2つのデータが用いられる。本明細書では、加振データを節点に印加する、とは、「加振開始タイミング」の時刻から「加振力の時間特性」のデータを着目する節点に印加すること、を意味するものとする。
【0065】
本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、以上のようにして生成された加振データを、建築物の有限要素解析モデルにおける節点に対して印加し、これに対する各節点に対する応答を算出する工程が実施される。ここで、本発明においては、加振データを印加する節点は、加振データにおける踏み込み位置座標に応じて、適切なものが選択されるようになっている。以下、踏み込み位置座標に応じて、加振データを印加する節点を選択する具体的な方法について説明する。
【0066】
図15は建築物の床をモデル化した要素における節点を示す図であり、
図16は
図15に示す床上の領域分けの一例を示す図である。図に示すように、それぞれの節点のx方向について、±δ以内の領域と、それから外れる領域とで領域分けを行う。同様に、それぞれの節点のy方向についても、±δ以内の領域と、それから外れる領域とで領域分けを行う。なお、このような領域分けを行うことはあくまで一例であり、他の任意の領域分けを行い得る。
【0067】
本発明に係る本発明に係る解析方法及び解析システムにおいては、加振データにおける踏み込み位置座標と、節点との位置関係に応じて、加振データを印加する節点を選択するが、上記のようにして分けられた領域のうちどの領域に、加振データの踏み込み位置座標が存在するかに応じて、加振データを印加する節点が選択されると共に、複数の節点が選択された場合には、加振データにおける加振力を適切に按分して
以下、節点に基づいて定義される領域について説明する。
図17は、加振データを印加する節点として1点の節点が選択される領域(I)のパターンを説明する図である。領域(I)のパターンは、着目する節点のx方向について±δ以内の領域であり、かつ、y方向について±δ以内の領域であるものであり、図中の斜線で示される領域がこれに相当する。
【0068】
加振データにおける踏み込み位置座標が領域(I)の中にある場合は、その領域に属する節点にのみ、加振データにおける加振力を印加する。図では、右上の斜線の領域内に、足形の黒丸(踏み込み位置座標)が存在するので、加振データにおける加振力F(以下、加振力をFとする。このFは
図6(C)に示すような時間の関数である。)は全て節点(n+1,m+1)に対して印加する。
【0069】
すなわち、
Fn+1,m+1=F
である。以下、節点(n,m)に対して印加される加振力をFn,mと表現する。
【0070】
図18は加振データを印加する節点として2点の節点が選択される領域(II)のパターンを説明する図である。領域(II)のパターンは、x方向に隣り合う2つの節点に着目すると、y方向については±δ以内の領域であり、左側の節点に対しては+δからxの正方向に外れる領域であり、右側の節点に対しては-δからxの負方向に外れる領域であり、図中の斜線で示される領域がこれに相当する。
【0071】
加振データにおける踏み込み位置座標が領域(II)の中にある場合は、その領域の左右に存在する節点に対して、節点からの距離の逆比で按分して、加振データにおける加振力を印加する。図では、下の斜線の領域内に、足形の黒丸(踏み込み位置座標)が存在するので、加振データにおける加振力Fは、距離の逆比で按分され、2つの節点(n,m)、節点(n+1,m)に対して印加される。
【0072】
すなわち、節点(n,m)に対しては、
Fn,m={(1/a)/(1/a+1/b)}×F
が印加され、
節点(n+1,m)に対しては、
Fn+1,m={(1/b)/(1/a+1/b)}×F
が印加される。
【0073】
図19は加振データを印加する節点として2点の節点が選択される領域(III)のパターンを説明する図である。領域(III)のパターンは、y方向に隣り合う2つの節点に着目すると、x方向については±δ以内の領域であり、下側の節点に対しては+δからyの正方向に外れる領域であり、上側の節点に対しては-δからyの負方向に外れる領域であり、図中の斜線で示される領域がこれに相当する。
【0074】
加振データにおける踏み込み位置座標が領域(III)の中にある場合は、その領域の左右に存在する節点に対して、節点からの距離の逆比で按分して、加振データにおける加振力を印加する。図では、左の斜線の領域内に、足形の黒丸(踏み込み位置座標)が存在するので、加振データにおける加振力Fは、距離の逆比で按分され、2つの節点(n,m)、節点(n,m+1)に対して印加される。
【0075】
すなわち、節点(n,m)に対しては、
Fn,m={(1/c)/(1/c+1/d)}×F
が印加され、
節点(n,m+1)に対しては、
Fn,m+1={(1/d)/(1/c+1/d)}×F
が印加される。
【0076】
図20は加振データを印加する節点として4点の節点が選択される領域(IV)のパターンを説明する図である。領域(IV)のパターンは、矩形をなす4つの節点に着目すると、左側の節点に対しては+δからxの正方向に外れる領域であり、右側の節点に対しては-δからxの負方向に外れる領域であり、下側の節点に対しては+δからyの正方向に外れる領域であり、上側の節点に対しては-δからyの負方向に外れる領域であり、図中の斜線で示される領域がこれに相当する。
【0077】
加振データにおける踏み込み位置座標が領域(IV)の中にある場合は、その領域の左右に存在する節点に対して、節点からの距離の逆比で按分して、加振データにおける加振力を印加する。図では、左の斜線の領域内に、足形の黒丸(踏み込み位置座標)が存在するので、加振データにおける加振力Fは、距離の逆比で按分され、4つの節点(n,m)、節点(n+1,m)、節点(n,m+1)、節点(n+1,m+1)に対して印加される。
【0078】
すなわち、節点(n,m)に対しては、
Fn,m={(1/a)/(1/a+1/b)}×{(1/c)/(1/c+1/d)}×F
が印加され、
節点(n+1,m)に対しては、
Fn+1,m={(1/b)/(1/a+1/b}×{(1/c)/(1/c+1/d)}×F
が印加され、
節点(n,m+1)に対しては、
Fn,m+1={(1/a)/(1/a+1/b)}×{(1/d)/(1/c+1/d)}×F
が印加され、
節点(n+1,m+1)に対しては、
Fn+1,m+1={(1/b)/(1/a+1/b)}×{(1/d)/(1/c+1/d)}×F
が印加される。
【0079】
次に、生成された加振データに基づいて、各節点における応答を算出する際の処理について説明する。
図21は本発明の実施形態に係る解析方法及び解析システムにおける応答算出処理のフローチャートを示す図である。
【0080】
図21において、ステップS600で、応答算出処理が開始されると、続いてステップS601において、シミュレーション上の歩数を表す変数NがN=1とされる。
【0081】
ステップS602では、N歩目の加振データの読み込みが行われる。次のステップS603においては、当該加振データにおける踏み込み位置座標と、設定されている節点・領域とが比較される。
【0082】
ステップS604では、加振データにおける踏み込み位置座標が、先に説明した領域(I)に存在するか否かが判定される。ステップS604における判定結果がYESであれば、ステップS605に進み、踏み込み位置座標が存在する領域(I)に属する1つの節点を選択する。加振データ(加振力の時間特性)は、全て当該1つの節点に印加される。一方、ステップS604における判定結果がNOであれば、ステップS606に進む。
【0083】
ステップS606では、加振データにおける踏み込み位置座標が、先に説明した領域(II)又は(III)のいずれかに存在するか否かが判定される。ステップS606における判定結果がYESであれば、ステップS607に進み、踏み込み位置座標が存在する領域(II)又は(III)を形成する2つの節点を選択する。加振データ(加振力の時間特性)は、距離の逆比で按分されて当該2つの節点に印加される。一方、ステップS606における判定結果がNOであれば、ステップS608に進む。
【0084】
ステップS608においては、加振データにおける踏み込み位置座標は、残る領域(IV)に存在することとなるので、踏み込み位置座標が存在する領域(IV)を形成する4つの節点を選択する。加振データ(加振力の時間特性)は、距離の逆比で按分されて当該4つの節点に印加される。
【0085】
ステップS609においては、加振開始タイミングの時刻から、選択された節点に対して加振データ(加振力の時間特性)が印加される。ステップS610では、有限要素法のアルゴリズムに基づいて、各節点における応答(変位)を算出する。なお、各節点における応答(変位)を算出するためのアルゴリズムについては、従来周知のものを適宜利用する。
【0086】
ステップS611では、ステップS609で算出された結果を外部記憶装置20などに記憶する。ステップS612では、加振データに記録されている全歩数について応答の算出処理が終了したか否かが判定される。ステップS612の判定結果がNOであれば、ステップS613に進み、変数Nを1加算してステップS602に戻る。一方、ステップS612の判定結果がYESであれば、ステップS614に進み、応答算出処理を終了する。
【0087】
以上のように、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システムは、模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成し、この加振データを、床をモデル化した要素のうちの選択された節点に印加し、加振データに対する各節点における応答を算出する。このような本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システムによれば、実際の人の移動スピードや歩行ピッチと合致した加振(荷重)を適切な節点に印加することとなるので、実条件に沿った的確な検証が可能となり、振動の予測が設計段階で行えるので、過大な構造部材で施工する必要がなく、建設コストを抑制することが可能となる。
【0088】
以下、これまで説明した有限要素法に基づく解析方法を実行し得るコンピューターのシステムについて説明する。
図22は本発明の実施形態に係る解析システムを実行するコンピューターのシステム構成例を示す図である。
【0089】
図22において、10はシステムバス、11はCPU(Central Processing Unit)、12はRAM(Random Access Memory)、13はROM(Read Only Memory)、14は外部情報機器との通信を司る通信制御部、15はキーボードコントローラなどの入力制御部、16は出力制御部、17は外部記憶装置制御部、18はキーボード、ポインティングデバイス、マウスなどの入力機器からなる入力部、19は印刷装置などの出力部、20はHDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置、21はグラフィック制御部、22はディスプレイ装置をそれぞれ示している。
【0090】
図22において、CPU11は、ROM13内のプログラム用ROM、或いは、大容量の外部記憶装置20に記憶されたプログラム等に応じて、外部機器と通信することでデータを検索・取得したり、また、図形、イメージ、文字、表等が混在した出力データの処理を実行したり、更に、外部記憶装置20に格納されているデータベースの管理を実行したり、などといった演算処理を行うものである。
【0091】
また、CPU11は、システムバス10に接続される各デバイスを統括的に制御する。ROM13内のプログラム用ROMあるいは外部記憶装置20には、CPU11の制御用の基本プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)等が記憶されている。また、ROM13あるいは外部記憶装置20には出力データ処理等を行う際に使用される各種データが記憶されている。メインメモリーであるRAM12は、CPU11の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0092】
入力制御部15は、キーボードや不図示のポインティングデバイスなどの入力部18を制御する。また、出力制御部16は、プリンタなどの出力部19の出力制御を行う。
【0093】
外部記憶装置制御部17は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザーファイル、編集ファイル、プリンタドライバ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)や、或いはソリッドステートドライブ(SSD)等の外部記憶装置20へのアクセスを制御する。本発明の有限要素法に基づく解析システムを実現するシステムプログラムは、上記のような外部記憶装置20に記憶されている。また、グラフィック制御部21は、ディスプレイ装置22に表示する情報を描画処理するための構成である。
【0094】
また、通信制御部14は、ネットワークを介して、外部機器と通信を制御するものであり、これによりシステムが必要とするデータを、インターネットやイントラネット上の外部機器が保有するデータベースから取得したり、外部機器に情報を送信したりすることができるように構成される。
【0095】
また、外部記憶装置20には、CPU11の制御プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)以外に、本発明の解析システムをCPU11上で動作させるシステムプログラム、及びこのシステムプログラムで用いるデータなどがインストールされ保存・記憶されている。
【0096】
本発明の有限要素法に基づく解析システムを実現するシステムプログラムで利用されるデータとしては、基本的には外部記憶装置20に保存されていることが想定されているが、場合によっては、これらのデータを、通信制御部14を介してインターネットやイントラネット上の外部機器から取得するように構成することも可能である。また、本発明の有限要素法に基づく解析システムを実現するシステムプログラムで利用されるデータを、USBメモリやCD、DVDなどの各種メディアから取得するように構成することもできる。本発明に係る有限要素法に基づく解析システムは、以上のように構成されるコンピューターでプログラムが実行されることで実現され得る。
【0097】
以上、本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システム1は、模擬的な人の移動動作に伴う踏み込みによる加振データを生成し、この加振データを、床をモデル化した要素のうちの選択された節点に印加し、加振データに対する各節点における応答を算出する。このような本発明に係る有限要素法に基づく解析方法及び有限要素法に基づく解析システム1によれば、実際の人の移動スピードや歩行ピッチと合致した加振(荷重)を適切な節点に印加することとなるので、実条件に沿った的確な検証が可能となり、振動の予測が設計段階で行えるので、過大な構造部材で施工する必要がなく、建設コストを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0098】
1・・・有限要素法に基づく解析システム
10・・・システムバス
11・・・CPU(Central Processing Unit)
12・・・RAM(Random Access Memory)
13・・・ROM(Read Only Memory)
14・・・通信制御部
15・・・入力制御部
16・・・出力制御部
17・・・外部記憶装置制御部
18・・・入力部
19・・・出力部
20・・・外部記憶装置
21・・・グラフィック制御部
22・・・ディスプレイ装置