(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182114
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 21/06 20060101AFI20221201BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F25D21/06 Z
F25D23/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089458
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井下 美桃子
【テーマコード(参考)】
3L046
3L102
【Fターム(参考)】
3L046AA04
3L046BA03
3L046CA06
3L046DA05
3L046MA04
3L102JA01
(57)【要約】
【課題】本開示は、除霜効率を高めて消費電力量を低減できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】本開示における冷蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室の背面に設置した貯蔵室背面部材と、前記貯蔵室背面部材の背部に設置した冷却器と、前記冷却器の下方に配置され左右方向に延在する除霜手段と、前記除霜手段の上方に配置され前記冷却器から落下する除霜水が前記除霜手段に直接滴下するのを防止する遮蔽部材と、を備えた冷蔵庫において、前記貯蔵室背面部材が、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、前記貯蔵室の背面に設置した貯蔵室背面部材と、前記貯蔵室背面部材の背部に設置した冷却器と、前記冷却器の下方に配置され左右方向に延在する除霜手段と、前記除霜手段の上方に配置され前記冷却器から落下する除霜水が前記除霜手段に直接滴下するのを防止する遮蔽部材と、を備えた冷蔵庫において、
前記貯蔵室背面部材が、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で形成されている、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵室背面部材に混合されたフィラーは、前記貯蔵室背面部材に沿う方向である水平方向に配向されている、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵室背面部材の主材料がナイロンである、
請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室背面部材に混合されたフィラーは、カーボンである、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
貯蔵室と、前記貯蔵室の背面に設置した貯蔵室背面部材と、前記貯蔵室背面部材の背部に設置した冷却器と、前記冷却器の下方に配置され左右方向に延在する除霜手段と、前記除霜手段の上方に配置され前記冷却器から落下する除霜水が前記除霜手段に直接滴下するのを防止する遮蔽部材と、を備え、前記貯蔵室背面部材は、前記貯蔵室側に配置された冷気吐出部材と、前記冷気吐出部材よりも冷却器側に配置された冷却器カバーと、、を有する冷蔵庫において、
前記冷却器カバーが、前記冷気吐出部材に対し熱伝導率が高い、
冷蔵庫。
【請求項6】
前記冷却器カバーは、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で形成されている、
請求項5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記冷却器カバーに混合されたフィラーは、前記冷却器カバーに沿う方向である水平方向に配向されている、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記冷却器カバーの主材料がナイロンである、
請求項6または7に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記冷却器カバーに混合されたフィラーは、カーボンである、
請求項6ないし8のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却器を除霜する除霜手段を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、除霜手段を備えた冷蔵庫を開示する。この冷蔵庫は、冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、該貯蔵室の後方に設けられた冷却器室と、該冷却器室と前記貯蔵室とを区画する貯蔵室背面部材と、該貯蔵室背面部材の後方に設けられた冷却器カバーと、前記冷却器室内に設けられた冷却器と、該冷却器の下方に設けられた除霜ヒータとを有する。特許文献1に記載の冷蔵庫は、除霜ヒータの上方であって、かつ前記貯蔵室背面部材と前記冷却器カバーとの間に下方が開口して除霜ヒータで暖められた空気が流入する空間を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、除霜効率を高めて消費電力量を低減できる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における冷蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室の背面に設置した貯蔵室背面部材と、前記貯蔵室背面部材の背部に設置した冷却器と、前記冷却器の下方に配置され左右方向に延在する除霜手段と、前記除霜手段の上方に配置され前記冷却器から落下する除霜水が前記除霜手段に直接滴下するのを防止する遮蔽部材と、を備えた冷蔵庫において、前記貯蔵室背面部材が、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で形成されている。
また、本開示における冷蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室の背面に設置した貯蔵室背面部材と、前記貯蔵室背面部材の背部に設置した冷却器と、前記冷却器の下方に配置され左右方向に延在する除霜手段と、前記除霜手段の上方に配置され前記冷却器から落下する除霜水が前記除霜手段に直接滴下するのを防止する遮蔽部材と、を備え、前記貯蔵室背面部材は、前記貯蔵室側に配置された冷気吐出部材と、前記冷気吐出部材よりも冷却器側に配置された冷却器カバーと、を有する冷蔵庫において、前記冷却器カバーが、前記冷気吐出部材に対し熱伝導率が高い。
【発明の効果】
【0006】
本開示における冷蔵庫は、貯蔵室背面部材の熱伝導率の高さを利用して、冷却器の下方から上部に除霜手段の熱を輸送し易くできる。このため、冷却器の上下を均等に加熱し易くなり冷却器の下方を無駄に加熱することが抑制され、除霜効率を高めることができる。よって、除霜手段からの熱入力を低減でき、消費電力量を低減した省エネ性の高い冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1における冷蔵庫の左右方向の中央断面図
【
図3】実施の形態2における冷蔵庫の左右方向の中央断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者が本開示に想到するに至った当時、この種の冷蔵庫では、冷却器の下方に設けられガラス管ヒータ等で構成した除霜手段と、冷却器と除霜手段の間に遮蔽部材とが配置されおり、この除霜手段をあらかじめ設定した時間毎に通電して、その熱により、冷却運転中に冷却器に付着した霜を融解させ除霜するのが一般的であった。しかしながら、前記従来の冷蔵庫では、冷却器の下方が上方よりも先に温まり易い。よって、冷却器の下方の霜を融解した後も、冷却器の上方の霜を融解するために除霜手段を運転し続けなければならず、冷却器の下方を無駄に加熱し易いという課題を発明者は発見した。また、前記従来の冷蔵庫は、除霜手段の運転時に、貯蔵室内へ除霜手段の熱が吸熱され易いという課題も発明者は発見した。発明者は、それらの課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで本開示は、除霜効率を高めて消費電力量を低減できる冷蔵庫を提供する。
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図2を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1.冷蔵庫の構成]
図1は、実施の形態1における冷蔵庫5の左右方向の中央断面図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。
図1では、左側が冷蔵庫5の正面であり、右側が冷蔵庫5の背面となる。
【0011】
図1において、実施の形態1の冷蔵庫5は、金属製の外箱5Aと、樹脂製の内箱5Bと、外箱5Aと内箱5Bとの間の空間に充填された断熱材5Cとにより形成された断熱箱体で構成されている。
【0012】
本実施の形態の冷蔵庫5は、上方に、第一の貯蔵室としての冷蔵室103を備え、冷蔵室103の下方に、第二の貯蔵室としての冷凍室104を備える。冷蔵室103と冷凍室104との間には仕切部102が設けられており、庫内が仕切部102で上下に区画されて冷蔵室103と冷凍室104が形成される。冷蔵室103の正面開口には、開閉可能な冷蔵室扉122が配設されている。また、冷凍室104の正面開口には、開閉可能な冷凍室扉123が配設されている。なお、実施の形態1の冷蔵庫5は、貯蔵室を二つ有する構成であるが、この構成は一例である。冷蔵庫5の貯蔵室の配置や構成は仕様などに応じて適宜変更可能である。
【0013】
冷凍室104の背面側には、板状の貯蔵室背面部材120が設置されている。貯蔵室背面部材120は、冷凍室104側の庫内を正面側と背面側とに区画して、冷凍室104と背面室109(
図2参照)とに区画する。
図2に示すように、背面室109には、仕切部102から下方に延びる仕切壁106が進入している。仕切壁106により、背面室109は、冷却器室107と、戻り風路108とに区画される。冷却器室107と戻り風路108とは、仕切壁106の下方で連通する。
【0014】
冷却器室107の上方の仕切部102には、仕切部102を上下方向に貫通する孔状の吐出口112が形成されている。吐出口112は、上部で、冷蔵室103のダクト105に接続されている。ダクト105には、冷蔵室103に開口する複数の供給口105Aが形成されている。吐出口112に流入した冷気は、ダクト105に流れると、供給口105Aを介して冷蔵室103に供給される。
【0015】
戻り風路108の上方の仕切部102には、仕切部102を上下方向に貫通する孔状の吸込口113が形成されている。吸込口113は、上部で冷蔵室103に繋がっている。冷蔵室103の冷気が吸込口113に吸い込まれると、戻り風路108に流入して冷却器室107に戻る。
【0016】
冷却器室107には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器110が設置されている。冷却器110は、チューブ118と放熱フィン119とを有し、冷却器室107の空気を冷却して冷気を生成する。
【0017】
冷却器110の上方には、冷気を送風する冷却ファン121が設けられている。本実施の形態では、冷却ファン121は貯蔵室背面部材120の上部に設けられた開口部120A(
図1参照)に配置されており、冷却ファン121は、冷却器室107から冷凍室104側に冷気を送風する。
冷凍室104からは、貯蔵室背面部材120下部に設けたスリット120B(
図2参照)を通じて冷却器室107に冷気が戻る。
【0018】
冷却器室107の下部には、冷却器110やその周辺を除霜するガラス管ヒータ(除霜手段)111が設けられている。
冷却器110とガラス管ヒータ111の間には、ヒータカバー(遮蔽部材)1を設けている。本実施の形態のヒータカバー1は、ヒータカバー前部2と、ヒータカバー後部3と、ヒータカバー上部4と、から構成されている。詳細には、ガラス管ヒータ111の前上方に、後方(背面側)に進むに連れて上方に傾斜する平板状のヒータカバー前部2が配置される。また、ガラス管ヒータ111の後上方(背面側上方)に、後方に進むに連れて下方に傾斜する平板状のヒータカバー後部3が配置される。ヒータカバー前部2と、ヒータカバー後部3との上方には、平板状のヒータカバー上部4が配置される。ヒータカバー上部4は、ヒータカバー前部2の上端と、ヒータカバー後部3の上端との間の開口状の空間を覆う。
【0019】
ここで、本実施の形態では、貯蔵室背面部材120を熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で構成する。詳細には、貯蔵室背面部材120のベース材料をナイロンとし、ナイロンに配合する高熱伝導フィラーをカーボンとする。カーボンは異方性を有し配向特性がある。本実施の形態では、このカーボンを、貯蔵室背面部材120に沿う方向である水平方向に配向する。ここで、水平方向に配向とは、貯蔵室背面部材120の厚み方向に直交する方向に配向することを意味する。これにより、貯蔵室背面部材120の熱伝導率は、垂直方向(厚み方向に対応)は向上し難い状態のまま、水平方向を向上させることができる。換言すれば、貯蔵室背面部材120の熱伝導率は、貯蔵室背面部材120の面に沿った方向、つまりは、面の広がる方向にのみ大きくなり易くでき、上下方向に熱が伝わり易くできる。
【0020】
[1-2.動作]
以上のように構成された冷蔵庫5について、その動作、作用を以下説明する。
冷蔵庫5が冷却中の場合、圧縮機(不図示)と、凝縮器(不図示)と、減圧手段(不図示)と、冷却器110とを冷媒管により環状に接続して構成した冷凍サイクルの運転により、冷却器110は低温とされる。この際に、冷却器室107では、空気が、低温となった冷却器110と熱交換して低温となり、いわゆる冷気となる。この冷気は、冷却ファン121により冷蔵室103と冷凍室104へと供給される。
【0021】
この際に、冷気は、冷蔵室103へは吐出口112からダクト105を流れて供給され、冷蔵室103を冷却した後、吸込口113から戻り風路108を流れて冷却器室107の側面下側から吸い込まれる。
また、冷気は、冷凍室104へは貯蔵室背面部材120の上部を流れて冷凍室104に供給され、冷凍室104を冷却した後、貯蔵室背面部材120の下部に設けたスリット120B(
図2参照)を通過して冷却器室107へ吸い込まれる。
冷却器室107に吸い込まれた冷気、すなわち、空気は再度、冷却器110と熱交換して冷却され、冷蔵室103および冷凍室104へと供給される。
【0022】
ここで、冷蔵室103および冷凍室104の空気は、冷蔵室扉122や冷凍室扉123の開閉時や、それぞれの冷蔵室103、冷凍室104と、冷蔵室扉122、冷凍室扉123との隙間をシールするガスケット(図示せず)の隙間から外気の湿度が侵入するため、比較的高湿となる。
【0023】
この高湿な空気を戻り風路108およびスリット120Bから吸い込むため、高湿な空気が、低温である冷却器110と熱交換することで冷却器110に霜が付着する。冷却開始後は冷却器110の下部を中心に着霜していくが、時間の経過と共に冷却器110の上部へも着霜していく。冷却器110に霜が付着すると冷却器110と空気との熱交換面積が減少して冷却能力が低下するため、冷却器110の下方に設けたガラス管ヒータ111をあらかじめ設定した時間毎に通電することにより、冷却器110に付着した霜を融解する。
【0024】
ガラス管ヒータ111の熱により、ガラス管ヒータ111の近傍に発生した暖気は、冷却器室107内の空気と比べて高温であるため、冷却器室107内で自然対流が発生する。ガラス管ヒータ111の近傍から発生した上昇気流は、ガラス管ヒータ111の直上にあるヒータカバー1と衝突し、滞留する。このため、従来は、ガラス管ヒータ111の近傍の樹脂部品、例えば、貯蔵室背面部材120を無駄に加熱することになり、冷凍室104内へ吸熱され易かった。
【0025】
これに対して、本実施の形態では、貯蔵室背面部材120を、カーボンを混合させた樹脂で構成し、このカーボンを、貯蔵室背面部材120と水平方向に配向する。カーボンは、熱伝導率の高くなるフィラーの一例である。これにより、貯蔵室背面部材120の熱伝導率は、貯蔵室背面部材120の水平方向には大きいが垂直方向には小さい。このため、貯蔵室背面部材120は、冷却器110の下部から上部へ向かって熱輸送し易くなる一方で、冷凍室104側には熱輸送し難いため、冷凍室104への吸熱を抑制しながら、冷却器110の上下を均等に加熱し易くできる。
【0026】
また、本実施の形態では、貯蔵室背面部材120のベース材料がナイロンである。ナイロンは一般的樹脂材料の中で流動性が良いため、熱伝導率の高いフィラーを配合しても充填性の低下が少ない。このため、多量の熱伝導率の高いフィラーを配合することが可能となり、貯蔵室背面部材120について、更に高熱伝導化を図ることが可能となる。また、配合する高熱伝導フィラーをカーボンとすることで、貯蔵室背面部材120の色が黒色となり、ガラス管ヒータ111の輻射熱の輻射効率をあげることが可能となる。
【0027】
よって、本実施の形態では、貯蔵室背面部材120の高熱伝導化により、ガラス管ヒータ111の近傍に発生した暖気は、ヒータカバー前部2とヒータカバー後部3の間を上昇し、ヒータカバー上部4と衝突する。ヒータカバー上部4と衝突した暖気は、ヒータカバー上部4の前後と比べて高温であるため、
図1の点線L1で示すように、ヒータカバー上部4と、ヒータカバー前部2およびヒータカバー後部3とで形成されたヒータカバー開口部を通過し、冷却器110の下方へと流入する。冷却器110の下方へと流入した暖気は、冷却器110の近傍の空気と比べて高温であるため、冷却器室107内を上昇して行く。暖気が上昇して行く際、貯蔵室背面部材120が熱伝導率の高いフィラーを混合したことにより、上部へ暖気が効率よく上昇し、冷却器110に付着した霜を融解する。よって、冷却器110の霜を上下バランス良く融解することが可能となるため、除霜効率を高めることができる。
【0028】
貯蔵室背面部材120の熱伝導率は、貯蔵室背面部材が一般樹脂、すなわち、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させていない樹脂で構成された場合には、0.2[W/mK]である。これに対し、貯蔵室背面部材120を熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で構成する場合には、1[W/mK]~50[W/mK]である。この熱伝導率の数値からも本実施の形態の熱輸送効果が確認できる。
【0029】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫5は、冷凍室104と、冷凍室104の背面に設置した貯蔵室背面部材120と、貯蔵室背面部材120の背部に設置した冷却器110と、冷却器110の下方に配置され左右方向に延在するガラス管ヒータ111と、ガラス管ヒータ111の上方に配置され冷却器110から落下する除霜水がガラス管ヒータ111に直接滴下するのを防止するヒータカバー1と、を備える。この冷蔵庫5において、貯蔵室背面部材120が、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で形成されている。
【0030】
これにより、貯蔵室背面部材120の熱伝導率の高さを利用して、冷却器110の下方から、放熱フィン119の上部にガラス管ヒータ111の熱を輸送し易くできる。このため、冷却器110の上下を均等に加熱し易く冷却器110の下方を無駄に加熱することが抑制され、除霜効率を高めることができる。よって、ガラス管ヒータ111からの熱入力を低減でき、消費電力量を低減した省エネ性の高い冷蔵庫5を提供できる。
【0031】
本実施形態のように、貯蔵室背面部材120に混合されたフィラーは、貯蔵室背面部材120に沿う方向である水平方向に配向されていてもよい。これにより、貯蔵室背面部材120では、貯蔵室背面部材120の面に沿って熱が伝導され易くなる一方で、貯蔵室背面部材120の厚み方向には熱が伝導され難くなる。このため、貯蔵室背面部材120により、ガラス管ヒータ111の熱を冷凍室104内へは吸熱し難くしながら、冷却器110の放熱フィン119の上部へ熱輸送し易くなり、霜取り時間の短縮が可能となる。よって、除霜効率を高めて消費電力量を低減で省エネ性の高い冷蔵庫5を提供できる。
【0032】
また、本実施形態のように、貯蔵室背面部材120の主材料がナイロンであってもよい。これにより、貯蔵室背面部材120に混合されたフィラーの方向性を統一化し易くなり、熱輸送効率を向上することができる。このため、ガラス管ヒータ111からの熱の入力を低減することができる。
【0033】
また、本実施形態のように、貯蔵室背面部材120に混合されたフィラーは、カーボンであってもよい。これにより、貯蔵室背面部材120において熱伝導性の向上と、輻射効率の向上を両立することが可能となる。このため、ガラス管ヒータ111からの熱の入力を低減できることから、省エネ性の高い冷蔵庫5を提供できる。
【0034】
(実施の形態2)
以下、
図3を用いて、実施の形態2を説明する。
【0035】
[2-1.構成]
[2-1-1.冷蔵庫の構成]
図3は、実施の形態2における冷蔵庫205の左右方向の中央断面図である。
図3は、実施の形態1の
図1に対応する。
実施の形態2にかかる冷蔵庫205は、実施の形態1の貯蔵室背面部材120に代えて、貯蔵室背面部材220を有する。実施の形態2の貯蔵室背面部材220は、冷凍室104側に設けられた板状の冷気吐出部材124と、冷気吐出部材124よりも冷却器110側に設けられた板状の冷却器カバー125とから構成される。
【0036】
冷気吐出部材124は、仕切部102から下方に向かって延びている。冷気吐出部材124は、吐出口112よりも前方から下方に延びている。冷気吐出部材124の上部には、冷却ファン121の高さに対応して、冷却器室107側から冷凍室104に冷気を吐出する冷気吐出口124Aが形成されている。
【0037】
冷却器カバー125は、冷却器110を冷却器110の正面および上方から覆う。冷却器カバー125は、背面の内箱5Bと共に、冷却器室107を形成する。冷却器カバー125は、冷気吐出部材124に対して少なくとも下端以外は離間している。
冷却器カバー125は、冷気吐出部材124より熱伝導率が高い材料で構成される。
【0038】
ここで、本実施の形態では、貯蔵室背面部材220の冷却器カバー125を熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で構成する。詳細には、冷却器カバー125のベース材料をナイロンとし、ナイロンに配合する高熱伝導フィラーをカーボンとする。本実施の形態では、このカーボンを、冷却器カバー125に沿う方向である水平方向に配向する。これにより、冷却器カバー125の熱伝導率は、垂直方向は向上し難い状態のまま、水平方向を向上させることができる。換言すれば、冷却器カバー125の熱伝導率は、冷却器カバー125の面に沿った方向、つまりは、面の広がる方向にのみ大きくなり易くでき、上下方向に熱が伝わり易くできる。
【0039】
[2-2.動作]
以上のように構成されたガラス管ヒータ111およびこれを備えた冷蔵庫205について、以下その動作、作用を説明する。
【0040】
[2-2-1.冷蔵庫の動作]
実施の形態2の冷蔵庫205では、貯蔵室背面部材220において、冷却器カバー125が冷気吐出部材124より高熱伝導である。このため、冷却器室107側の冷却器カバー125で熱が輸送され易くなっており、冷凍室104へ熱を輸送させずに冷却器110下部から上部に向かって熱を輸送し易くなっている。特に、実施の形態2では、冷却器カバー125に高熱伝導のフィラーを配合することにより、熱輸送に方向性を持たせることが可能であると共に、熱伝導率をさらに高くすることが可能となる。
【0041】
配合するフィラーは冷却器カバー125に対して水平方向に配向されるため、冷却器110の下部から上部へ熱が伝わる際に、冷凍室104側に吸熱され難くしながら、上方へ熱輸送することが可能となる。また、冷却器カバー125のベース材料をナイロンとしたため、冷却器カバー125に対して、多量の高熱伝導フィラーを配合することが可能となり、冷却器カバー125を更に高熱伝導化を図ることが可能となる。さらに、配合する高熱伝導フィラーをカーボンとすることで、冷却器カバー125の色が黒色となり、ガラス管ヒータの輻射熱の輻射効率をあげることが可能となる。
【0042】
冷却器カバー125の高熱伝導化により、実施の形態2の冷却器カバー125でも、実施の形態1の貯蔵室背面部材120と同様の作用、効果を奏する。すなわち、冷却器カバー125が熱伝導率の高いフィラーを混合したことにより、ガラス管ヒータ111の近傍に発生した暖気は、冷却器110の下方へと流入して冷却器室107内を上昇して行く際に、上部へ暖気が効率よく上昇し、冷却器110に付着した霜を融解する。よって、冷却器110の霜を上下バランス良く融解することが可能となるため、実施の形態2でも、除霜効率を高めることができる。
【0043】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫205は、冷凍室104と、冷凍室104の背面に設置した貯蔵室背面部材120と、貯蔵室背面部材120の背部に設置した冷却器110と、冷却器110の下方に配置され左右方向に延在するガラス管ヒータ111と、ガラス管ヒータ111の上方に配置され冷却器110から落下する除霜水がガラス管ヒータ111に直接滴下するのを防止するヒータカバー1と、を備える。貯蔵室背面部材120は、冷凍室104側に配置された冷気吐出部材124と、冷気吐出部材124よりも冷却器110側に配置された冷却器カバー125と、を有する。この冷蔵庫205において、冷却器カバー125が、冷気吐出部材124に対し熱伝導率が高い。
【0044】
これにより、貯蔵室背面部材120の冷却器カバー125の熱伝導率の高さを利用して、冷却器110の下方から、放熱フィン119の上部にガラス管ヒータ111の熱を輸送し易くできる。このため、冷却器110の上下を均等に加熱し易く冷却器110の下方を無駄に加熱することが抑制され、除霜効率を高めることができる。よって、ガラス管ヒータ111からの熱入力を低減でき、消費電力量を低減した省エネ性の高い冷蔵庫205を提供できる。
【0045】
本実施の形態のように、冷却器カバー125は、熱伝導率の高くなるフィラーを混合させた樹脂で形成されていてもよい。これにより、冷却器カバー125をフィラーにより熱伝導率を高くすることができる。このため、冷却器110の下方から、放熱フィン119の上部にガラス管ヒータ111の熱を輸送し易くでき、消費電力量を削減した省エネ性の高い冷蔵庫205を提供できる。
【0046】
また、本実施の形態のように、冷却器カバー125に混合されたフィラーは、冷却器カバー125に沿う方向である水平方向に配向されていてもよい。これにより、貯蔵室背面部材120の冷却器カバー125では、冷却器カバー125の面に沿って熱が伝導され易くなる一方で、冷却器カバー125の厚み方向には熱が伝導され難くて、冷気吐出部材124には熱が伝導され難くなる。このため、冷却器カバー125により、ガラス管ヒータ111の熱を冷凍室104内へは吸熱し難くしながら、冷却器110の放熱フィン119の上部へ熱輸送し易くなり、霜取り時間の短縮が可能となる。よって、除霜効率を高めて消費電力量を低減で省エネ性の高い冷蔵庫205を提供できる。
【0047】
また、本実施の形態のように、冷却器カバー125の主材料がナイロンであってもよい。これにより、冷却器カバー125に混合されたフィラーの方向性を統一化し易くなり、熱輸送効率を向上することができる。このため、ガラス管ヒータ111からの熱の入力を低減することができる。
【0048】
また、本実施の形態のように、冷却器カバー125に混合されたフィラーは、カーボンであってもよい。これにより、冷却器カバー125において熱伝導性の向上と、輻射効率の向上を両立することが可能となる。このため、ガラス管ヒータ111からの熱の入力を低減できることから、省エネ性の高い冷蔵庫205を提供できる。
【0049】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0050】
実施の形態1、2では、ヒータカバー1は、ヒータカバー前部2、ヒータカバー後部3、ヒータカバー上部4と別部品として構成したが、ヒータカバー1の構成は、この限りではない。例えば、ヒータカバー前部2、ヒータカバー後部3、ヒータカバー上部4とが開口が形成された一体品でもよい。
【0051】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、家庭用および業務用など様々な種類および大きさの間冷式の冷蔵庫に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ヒータカバー(遮蔽部材)
2 ヒータカバー前部
3 ヒータカバー後部
4 ヒータカバー上部
5 冷蔵庫
104 冷凍室(貯蔵室)
110 冷却器
111 ガラス管ヒータ(除霜手段)
120 貯蔵室背面部材
124 冷気吐出部材
125 冷却器カバー
205 冷蔵庫
220 貯蔵室背面部材