IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 極東開発工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コンクリートポンプ 図1
  • 特開-コンクリートポンプ 図2
  • 特開-コンクリートポンプ 図3
  • 特開-コンクリートポンプ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182126
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】コンクリートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 5/00 20060101AFI20221201BHJP
   F04C 13/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F04C5/00 341D
F04C13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089472
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角南 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 晃一
(57)【要約】
【課題】
チューブの中間部を押圧しつつ転動してポンプ作用を発揮させる一対のローラと、ポンプケース外周壁の内周面に沿設されてチューブをローラとの間で挟圧可能な弾性パッドとを備え、一対のローラの公転に伴い、一方のローラが押圧を解除するのと略同時に、他方のローラが押圧を開始するコンクリートポンプにおいて、弾性パッドを高硬度の弾性材で構成した場合の第1の課題と、低硬度の弾性材で構成した場合の第2の課題とを簡単な構造で一挙に解決可能とする。
【解決手段】ポンプケース外周壁Caの内周面に沿設されてチューブTをローラRとの間で挟圧可能な弾性パッドPは、ポンプケースCの吐出口Coに最も近い上部パッドPtと、ポンプケースの吸入口Ciに最も近い下部パッドPbとを含む少なくとも2個の部分パッドPb,Pt,Pf1,Pf2より分割構成され、上部パッドPtは、下部パッドPbよりも低硬度の弾性材で構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁(Ca)後半部の下部に吸入口(Ci)を、また上部に吐出口(Co)をそれぞれ有して概略円筒状に形成されるポンプケース(C)と、そのポンプケース(C)の外周壁(Ca)前半部の内周面に沿うよう中間部が円弧状に延びると共に一端部が前記吸入口(Ci)を通して前記外周壁(Ca)の略接線方向に延出し且つ他端部が前記吐出口(Co)を通して前記外周壁(Ca)の略接線方向に延出するチューブ(T)と、前記チューブ(T)の前記中間部を押圧しつつ転動して該チューブ(T)にポンプ作用を発揮させる一対のローラ(R)と、前記外周壁(Ca)の少なくとも前半部内周面に沿設されて前記チューブ(T)を前記ローラ(R)との間で挟圧可能な弾性パッド(P)とを備え、前記一対のローラ(R)は、前記ポンプケース(C)にこれの中心軸線回りに180度の位相差を以て自転しつつ公転可能に構成され、その公転に伴い、一方のローラ(R)が前記押圧を解除するのと略同時に、他方のローラ(R)が前記押圧を開始するようにしたコンクリートポンプにおいて、
前記弾性パッド(P)は、前記吸入口(Ci)に最も近い下部パッド(Pb)と、前記吐出口(Co)に最も近い上部パッド(Pt)とを含む少なくとも2個の部分パッド(Pb,Pt,Pf1,Pf2)より分割構成され、
前記下部パッド(Pb)は、前記上部パッド(Pt)よりも低硬度の弾性材で構成されることを特徴とするコンクリートポンプ。
【請求項2】
前記弾性パッド(P)は、前記部分パッドとして、前記上部パッド(Pt)及び前記下部パッド(Pb)の他、それら上部パッド(Pt)及び下部パッド(Pb)間を接続する少なくとも1個の中間パッド(Pf1,Pf2)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートポンプ。
【請求項3】
前記中間パッド(Pf1,Pf2)及び前記下部パッド(Pb)は、同一硬度の弾性材で構成されることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリートポンプ。
【請求項4】
前記下部パッド(Pb)は、前記中間パッド(Pf1,Pf2)よりも高硬度の弾性材で構成されることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリートポンプ。
【請求項5】
前記中間パッド(Pf1,Pf2)は、前記下部パッド(Pb)よりも高硬度であるが前記上部パッド(Pt)の硬度は上回らない硬度の弾性材で構成されることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートポンプ、特に外周壁後半部の下部に吸入口を、また上部に吐出口をそれぞれ有して概略円筒状に形成されるポンプケースと、そのポンプケースの外周壁前半部の内周面に沿うよう中間部が円弧状に延びると共に一端部が吸入口を通して外周壁の略接線方向に延出し且つ他端部が吐出口を通して外周壁の略接線方向に延出するチューブと、チューブの中間部を押圧しつつ転動して該チューブにポンプ作用を発揮させる一対のローラと、前記外周壁の内周面に沿設されてチューブをローラとの間で挟圧可能な弾性パッドとを備え、一対のローラは、ポンプケースにこれの中心軸線回りに180度の位相差を以て自転しつつ公転可能に構成され、その公転に伴い、一方のローラが前記押圧を解除するのと略同時に、他方のローラが前記押圧を開始するようにしたコンクリートポンプに関する。
【0002】
本発明および本明細書において、前方側・後方側とは、ポンプケースの中心部から見て吸入口及び吐出口が配置される側が後方側に相当し、その反対側が前方側に相当する。またコンクリートポンプは、これの車両搭載状態で言えば、車両の前後方向と前後方向が一致し、また車両の上下方向と上下方向が一致している。
【背景技術】
【0003】
上記したコンクリートポンプは、例えば特許文献1に開示されるように従来公知であって、生コンを例えば高所の建設現場等に圧送するのに使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-41179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1のコンクリートポンプにおいて、ポンプケースの外周壁前半部の内周面に沿設される弾性パッドは、ケース下部の吸入口からケース上部の吐出口に至るパッド全体が連続した一体物(従って同一硬度)の弾性材で構成されているため、次のような不都合がある。
【0006】
即ち、吐出過程にあるローラ(以下、本明細書では吐出側ローラという)は、これが押圧するチューブを弾性パッドとの間で強く挟圧しつつ転動することで、生コンを、逆流を抑えつつチューブの下流側に圧送可能である。そのため、弾性パッドの上部パッド部分が低硬度である場合には、吐出側ローラがチューブへの押圧を解除する直前(即ち高所等に圧送される生コンからの圧送負荷が増大する吐出後半過程)で生コンの逆流を有効に抑止できなくなってポンプ効率が低下するといった第1の課題がある。
【0007】
これに対し、次にチューブへの押圧を開始しようとするローラ(以下、本明細書では吸入側ローラという)がチューブを、弾性パッドの下部パッド部分との間で挟み始める際に、特に下部パッド部分が高硬度である場合には生コン中の大きな砂利や小石を吸入側ローラがスムーズに乗り越えることが難しくなり、チューブを早期に摩耗、損傷させる虞れがあるといった第2の課題がある。
【0008】
そして、一体物の弾性パッドを高硬度の弾性材で構成した場合は、第1の課題を解決できる反面、第2の課題が解決できなくなる。一方、一体物の弾性パッドを低硬度の弾性材で構成した場合は、第2の課題を解決できる反面、第1の課題を解決できなくなる。
【0009】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来構造の上記した相反する課題を簡単な構造で一挙に解決可能としたコンクリートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、外周壁後半部の下部に吸入口を、また上部に吐出口をそれぞれ有して概略円筒状に形成されるポンプケースと、そのポンプケースの外周壁前半部の内周面に沿うよう中間部が円弧状に延びると共に一端部が前記吸入口を通して前記外周壁の略接線方向に延出し且つ他端部が前記吐出口を通して前記外周壁の略接線方向に延出するチューブと、前記チューブの前記中間部を押圧しつつ転動して該チューブにポンプ作用を発揮させる一対のローラと、前記外周壁の内周面に沿設されて前記チューブを前記ローラとの間で挟圧可能な弾性パッドとを備え、前記一対のローラは、前記ポンプケースにこれの中心軸線回りに180度の位相差を以て自転しつつ公転可能に構成され、その公転に伴い、一方のローラが前記押圧を解除するのと略同時に、他方のローラが前記押圧を開始するようにしたコンクリートポンプにおいて、前記弾性パッドは、前記吸入口に最も近い下部パッドと、前記吐出口に最も近い上部パッドと、前記上部パッド及び前記下部パッド間を接続する中間パッドとを含む少なくとも2個の部分パッドより分割構成され、前記下部パッドは、前記上部パッドよりも低硬度の弾性材で構成されることを第1の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記弾性パッドは、前記部分パッドとして、前記上部パッド及び前記下部パッドの他、それら上部パッド及び下部パッド間を接続する少なくとも1個の中間パッドを含むことを第2の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記中間パッド及び前記下部パッドは、同一硬度の弾性材で構成されることを第3の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記下部パッドは、前記中間パッドよりも高硬度の弾性材で構成されることを第4の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記中間パッドは、前記下部パッドよりも高硬度であるが前記上部パッドの硬度は上回らない硬度の弾性材で構成されることを第5の特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弾性パッドは、吸入口に最も近い下部パッドと、吐出口に最も近い上部パッドとを含む少なくとも2個の部分パッドより分割構成され、下部パッドは、上部パッドよりも低硬度の弾性材で構成される。これにより、吐出側ローラは、チューブへの押圧を解除する直前(即ち生コンの圧送負荷が増大する吐出過程後半)でも、高硬度の上部パッドとの間でチューブを強く挟圧できるため、生コンを、その逆流を防止しつつチューブ下流側に効率よく押し出すことができて、ポンプ効率を高めることができ、前記した第1の課題が解決可能となる。一方、チューブへの押圧を開始しようとする吸入側ローラは、チューブを下部パッドとの間で挟み始める際に、下部パッドを比較的低硬度としたことで生コン中の大きな砂利や小石をスムーズに乗り越え易くなるため、チューブの早期摩耗や損傷を効果的に抑制でき、前記した第2の課題が解決可能となる。以上の結果、弾性パッドを分割構成し且つ上部パッドを下部パッドより高硬度とするだけの簡単な構造で、従来装置の相反する課題を一挙に解決可能となる。
【0016】
また第2の特徴によれば、弾性パッドは、前記部分パッドとして、上部パッド及び下部パッドの他、それら上部パッド及び下部パッド間を接続する少なくとも1個の中間パッドを含むので、弾性パッドをより細かく分割でき、従って、その分割した部分パッドの硬度や設置部位等により摩耗の進行程度が異なっても、その進行程度に応じて部分パッドの交換をこまめに適切に行うことができる。また弾性パッドをより細かく分割できることで、個々の部分パッドのサイズをより小型化できて、交換時の作業性が良好となる。
【0017】
また第3の特徴によれば、中間パッド及び下部パッドは、同一硬度の弾性材で構成されるので、中間パッドよりも下部パッドを低硬度とした場合と比べ、下部パッドを比較的硬めに設定可能となる。これにより、吐出側ローラの押圧解除に伴い吸入側ローラの手前まで生コンが逆流した場合に、それが吸入側ローラ下を通過するのを、硬めの下部パッドにより効果的に抑制可能となる。
【0018】
また第4の特徴によれば、下部パッドは、中間パッドよりも高硬度の弾性材で構成されるので、下部パッドを比較的硬めに設定可能となる。これにより、第2の特徴による前記効果と同等の効果を達成可能となる。
【0019】
また第5の特徴によれば、中間パッドは、下部パッドよりも高硬度であるが上部パッドの硬度は上回らない硬度の弾性材で構成されるので、中間パッドの硬度が比較的高めとなり、これにより、生コンの圧送負荷が増大する吐出過程後半より以前の吐出過程中盤でも、チューブを吐出側ローラと、比較的高硬度の中間パッドとの間で強めに挟圧して生コンを押し出し得るから、生コンの逆流防止効果を更に高めることができ、ポンプ効率が一層高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリートポンプ車の全体左側面図
図2】コンクリートポンプ車の全体右側面図
図3】コンクリートポンプ車の要部、特にコンクリートポンプ及びホッパを示す、一部破断拡大左側面図
図4】コンクリートポンプ及びホッパとその周辺機器を示す後面図(図1の4矢視図)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、添付図面により以下に具体的に説明する。先ず、図1,2において、コンクリートポンプ車Vは、車体F上に搭載されるコンクリートポンプCPと、このコンクリートポンプCPに供給すべき生コンを一時的に貯溜可能なホッパHと、このホッパHを前後位置調節可能に固定、支持すべく車体Fの後端部に固定されて後方に延びるホッパフレーム50と、コンクリートポンプCPから吐出される生コンを打設場所まで移送するための移送管20と、生コンを高所の打設場所でも届けるべく移送管20の下流側配管部分20Dを昇降駆動できるよう連結、支持するブーム組立体Bとを備える。
【0022】
ブーム組立体Bは、互いに屈折可能に枢支連結されて一連に配列される複数のブーム部と、その枢支連結部回りに各ブーム部を起伏回動させる複数の油圧シリンダとを主要部としている。そのブーム組立体Bの基端ブーム部Bbは車載の旋回台11に支持され、この旋回台11を介して車体Fに起伏可能且つ及び鉛直軸線回りに旋回可能に支持される。一方、先端ブーム部Baには、移送管20の下流端部20eが支持されており、この下流端部20eの先端部には、生コンを先端より吹出可能な生コン吹出管(図示せず)の基端が着脱可能に取付けられる。
【0023】
移送管20の下流側配管部分20Dは、ブーム組立体Bの複数のブーム部に沿うように配置されていて、その途中には、相隣なるブーム部の屈折動作に追従して屈折可能な複数の関節部を有している。またブーム組立体Bが伸長動作した際にコンクリートポンプ車Vの安定確保のための上下伸縮可能な複数のジャッキJが、車体Fの少なくとも前後左右の四隅に配設されている。
【0024】
一方、移送管20の上流側配管部分20Uは、これの上流端が次に説明するコンクリートポンプCPのチューブTの吐出側に接続される。その上流側配管部分20Uは、平面視でU字状に形成されてコンクリートポンプCPの後方側に配設される第1管部21と、第1管部21の下流端に連なり且つコンクリートポンプCPのポンプケースC側面に沿うようにして車体Fの前方側に延びる第2管部22とを備える。
【0025】
第1管部21は、ポンプケースCの後部に後向きに突設した配管支持体30に固定、支持され、また第2管部22は、車体Fに間隔をおいて固定した複数の支持枠12に固定、支持される。そして、第2管部22の下流端は、前記旋回台11の内部を経由して、移送管20の前記した下流側配管部分20Dに接続される。
【0026】
コンクリートポンプCPは、中心軸線が左右方向に延びる円筒状に形成されて車体Fに固定されるポンプケースCと、そのポンプケースCの外周壁Caのうち少なくとも前半側外周壁Caの内周面に沿設された側面視U字状のチューブTと、そのチューブTをしごくことでチューブTにポンプ作用を発揮させる一対のローラRと、それらローラRを自転可能に且つポンプケースCの中心軸線回りに公転可能に支持するローラ支持体RSとを有している。一対のローラRは、ローラ支持体RSの回転方向に180度の位相差で配置される。
【0027】
ポンプケースCは、円筒状の外周壁Caと、その外周壁Caの左右両端部に外周部がそれぞれ着脱可能に結合(例えばボルト結合)されて外周壁Caの左右開放端を気密に塞ぐ左右一対の円板状外側板Csとより分割構成される。
【0028】
チューブTは、可撓性及び弾性を有しており、しかもローラRによりしごかれてポンピング機能を長期間発揮しても破断しないような丈夫な弾性材で構成される。またポンプケースCの外周壁Caの少なくとも前半部内周面には、自転しつつ公転するローラRとの間でチューブTを挟圧すべく周方向に延びる弾性パッドPが被着される。この弾性パッドPは、外周壁Caの周方向で相互に隣接し且つ上から下に順次並ぶ上部パッドPt、第1,第2中間パッドPf1,Pf2及び下部パッドPbにより分割構成され、その個々のパッドPt,Pf1,Pf2,Pbは、何れも弾性材(例えばゴム材等)で所定形状に成形される。
【0029】
上部パッドPtは、ポンプケースCの後述する吐出口Coに最も近い位置に在って、吐出側ローラRがチューブTへの押圧を解除する直前ないし直後にかけてチューブT上を転動する領域に対応して配置される。また下部パッドPbは、ポンプケースCの後述する吸込口Ciに最も近い位置に在って、吸入側ローラRがチューブTへの押圧を開始する直前ないし直後にかけてチューブT上を転動する領域に対応して配置される。
【0030】
そして、上部パッドPtは、弾性パッドP中、最も高硬度の弾性材で構成され、また下部パッドPbは、上部パッドPtよりも低硬度の弾性材で構成される。しかも下部パッドPbは、上部パッドPt及び第1,第2中間パッドPf1,Pf2よりも厚肉に形成されており、これにより、吸入側ローラRがチューブTを下部パッドPbとの間で挟み始める際に、下部パッドPbを比較的低硬度とした効果とも相俟って、生コン中の大きな砂利や小石をより乗り越え易くすることができる。
【0031】
また実施形態では、上部パッドPtの後半部(即ち吐出側ローラRがチューブTへの押圧を解除直後の領域)が後端に近づくにつれて肉厚を漸次薄肉にされる。尚、上部パッドPtの後半部を前半部と同様の肉厚に形成してもよい。
【0032】
また第1,第2中間パッドPf1,Pf2を構成する弾性材の硬度は、次の表1で示すように、上部パッドPt及び下部パッドPbの各硬度との関係で幾つかの組み合わせパターンを選定可能である。尚、その何れの組み合わせパターンにおいても、上部パッドPtは、弾性材の硬度KTが同一硬度(即ち吐出過程後半で上部パッドPtと吐出側ローラRとの間に挟圧されるチューブTからの生コン逆流を防止し得る効果を達成可能な硬度)に設定してある。
【0033】
【表1】
【0034】
而して、第1のパターンに対応する実施例1は、第1,第2中間パッドPf1,Pf2の弾性材の硬度KF1を下部パッドPbの弾性材の硬度KB1と同一に設定したものであって、本発明の第2,第3の特徴に相当する。
【0035】
また第2のパターンに対応する実施例2は、第1,第2中間パッドPf1,Pf2の弾性材の硬度KF2を下部パッドPbの弾性材の硬度KB2よりも低く設定したものであって、本発明の第2,第4の特徴に相当する。
【0036】
さらに第3のパターンに対応する実施例3は、第1,第2中間パッドPf1,Pf2の弾性材の硬度KF3を、下部パッドPbの弾性材の硬度KB3よりも高硬度ではあるが上部パッドPtの弾性材の硬度KTは上回らない硬度(即ち上部パッドPtの硬度KTと同一であるか、或いはそれよりは低い硬度)に設定したものであって、本発明の第2,第5の特徴に相当する。
【0037】
尚、中間パッドは、第1,第2中間パッドPf1,Pf2により上下二分割構造としたものを例示したが、この分割構造に代えて、一体物(従って単一の)の中間パッドとしてもよい。
【0038】
尚また、実施例2及び実施例3では、第1,第2中間パッドPf1,Pf2の弾性材の硬度を同一にしてもよいし、或いは異ならせてもよい。後者のように硬度を異ならせる場合は、上側の第1中間パッドPf1の弾性材を下側の第2中間パッドPf2の弾性材よりも高硬度とすることが、吐出過程での生コンの逆流防止の観点から望ましい。
【0039】
また実施形態の弾性パッドPは、図3で明らかなように、ポンプケースCの外周壁Caの内周面に、その内周面に沿って彎曲した帯板状の内装板37を介して接合される。この場合、例えば、内装板37に弾性パッドP(即ち上部パッドPt,第1,第2中間パッドPf1,Pf2,下部パッドPb)を接合(例えば接着、焼付等)して成るパッド組立体を予め組立てるようにすれば、これを纏めてポンプケースC内に装入、結合(例えばボルト結合)可能となる。
【0040】
尚、弾性パッドPの各パッドPt,Pf1,Pf2,Pbは、ポンプケースCの外周壁Caの内周面に直接(即ち内装板37を介さずに)接合してもよい。
【0041】
チューブTの吐出端部Toは、ポンプケースCの上部に後向きに設けた吐出口Coを通して外周壁Caの略接線方向(後方)に延出していて、移送管20の上流側配管部分20Uに従来周知の結合手段JTを以て着脱可能に接続される。結合手段JTは、例えば、チューブTの吐出端部Toを外周に嵌合させる円筒状ソケット23と、そのソケット23外端のフランジ部23fと上流側配管部分20Uの上流端のフランジ部24との間を着脱可能に結合する結合具(図示例はボルト・ナット25)と、チューブTの吐出端部Toの外周を縮径方向に緊締する緊締具とを有する。その緊締具は、例えば吐出端部Toの外周を相互間に挟む一対のクランプ部材26と、両クランプ部材26を互いに引き付け合うよう緊締するボルト・ナット27とを有する。
【0042】
一方、チューブTの吸込端部Tiは、ポンプケースCの下部に後向きに設けた吸入口Ciを通して外周壁Caの略接線方向(後方)に延出していて、後述するホッパHの出口管Hoの下流端に接続されている。
【0043】
ローラ支持体RSは、ポンプケースCの左右外側板Csに回転自在に軸支され且つポンプケースCとローラ支持体RS間に設けた不図示の回転駆動装置により回転駆動される。またローラ支持体RSには、これの正転方向(図3で時計方向)で各ローラRよりも前方側に配置されてチューブTを左右より挟む一対のガイドローラ35が回転自在に支持され、その両ガイドローラ35によりチューブTの蛇行や横ずれが抑制される。
【0044】
ところで実施形態のポンプケースCは、これの外周壁Ca前半部の内周面が、図3で明らかなように、中心角を180度よりも所定角度αだけ大きい角度の円弧面に形成されている。これにより、ローラRのチューブTへの押圧解除時期(吐出終了時期)を遅らせることができて、その押圧解除時の生コン逆流を効果的に防止できる。また、このように外周壁Caの内周面の中心角を多少大きくしたことで、ポンプケースCの吐出口Coの開口方向が後方下向きとなり、これに伴い、チューブTの吐出端部Toも後下がりに傾斜して後方に延びる。
【0045】
ホッパHは、上面を開放され且つ左右方向に延びる槽状に形成されており、ホッパHの下面には、ホッパH内の生コンを排出可能な出口管Hoが接続、固定される。またホッパH内には、そこに投入された生コンを攪拌して固まりにくくするために攪拌装置28が配設され、攪拌装置28は、図4で明らかなように、ホッパH内で回転可能な複数の攪拌羽根28bと、これを回転駆動する回転駆動装置28aとを備える。
【0046】
ホッパHの下部には、前後方向に延びる左右一対の支持脚部Haが下向きに突設されており、その両支持脚部Haは、矩形枠状のホッパフレーム50の上面の左右両側部に前後方向のみ摺動可能に載置、支持される。また少なくとも一方の支持脚部Haとホッパフレーム50との間には、支持脚部Ha(従ってホッパH)を前後駆動可能な油圧シリンダ53と、ホッパHが図3に示す前進位置(即ち正規使用位置)にあるときに支持脚部Haをホッパフレーム50に係脱可能に係止させるロック機構LAとが介装される。
【0047】
ホッパHの前記出口管Hoは、ホッパHの下面から下方に延出した後、前方側に湾曲して延出しており、その延出端すなわち下流端と、チューブTの吸込端部Tiとの間が、従来周知の結合手段JT′を以て着脱可能に接続される。尚、この結合手段JT′は、前記したチューブTの吐出端部Toと移送管20間の結合手段JTと同様の構造であるので、詳細な説明は省略し、結合手段JTと同様の参照符号を付すにとどめる。
【0048】
ポンプケースCは、これの内部空間を負圧状態とするための真空引き装置(図示せず)を具備しており、この負圧は、吐出側ローラRの公転方向後方側に存するチューブTが自己の弾性復元力で自動復元(従ってホッパH内の生コンをチューブT内に吸入)するのを助勢する働きをする。そして、ポンプケースCの、吸込口Ci・吐出口Coとの各隣接部位には、吸込口Ci・吐出口Coから前記負圧が漏れるのを阻止するための従来周知のブーツ状シール筒29の基端がそれぞれ気密に固定され、各シール筒29は、これの内周面がチューブTの吸込端部Ti・吐出端部To外周にそれぞれ気密に嵌合、圧接できるように構成される。
【0049】
ポンプケースCの左右一側には、コンクリートポンプ車Vに搭載したコンクリートポンプCPやブーム組立体B、その他の作動機器への操作指令を車外の作業員が行うための操作盤55が配設される。尚、同様の操作盤は運転席にも配備される。
【0050】
またホッパHの前壁上部には、ホッパHの開放上面を覆う閉じ位置と、閉じ位置より起立する開き位置との間を回動可能なスクリーンSの基部が軸支される。このスクリーンSは、格子枠状に構成されてホッパH内への人及び大きな異物の落下を防止するスクリーン本体Smと、スクリーン本体Smの基部に固定された回動支軸Sjとを有している。その回動支軸Sjの両端部は、ホッパHの左右側壁上部に設けたクランプ支持機構51に着脱可能且つ回動可能に嵌合、支持される。
【0051】
またホッパHの前部一側には、スクリーンSの開閉状態を検出可能な検出部42と、移送管20の下方でホッパHに固定されて検出部42を被覆するセンサカバー41とを有する開閉センサ40が配設される。センサカバー41は、ホッパHの一側壁上部に固着した支持台43上に固定、支持され、ホッパH内から飛散した生コンが検出部42に掛からないようにしている。また検出部42は、スクリーンSの回動支軸Sjの一端部に固設されて回動支軸Sjと一体に回動するドグ42dと、そのドグ42d(従ってスクリーンS)の回動変位角を非接触で検出可能な検出素子42sとを備える。
【0052】
またホッパHの前壁上部には、ホッパH内からポンプケースC側への生コンの飛散抑制用のスプラッシュガードGが、前記飛散を抑制可能な起立位置とホッパHの開放上面側に伏倒した伏倒位置との間を起伏回動できるように軸支される。またホッパHの前壁には、スプラッシュガードGを起立位置に固定すべくスプラッシュガードGの基部を係脱可能に係止させるロック機構54が設けられる。スプラッシュガードGは、これが起立位置にあるときに後方延出管部21a及び配管支持体30を前後方向に通すべく上方を開放した切欠き部Gcを有している。
【0053】
またスプラッシュガードGは、チューブTの交換等のためにホッパHをホッパフレーム50上で後方移動させる際に、予めスプラッシュガードGを閉じ位置に伏倒、保持しておくことで、移送管20の上流側配管部分20Uとの干渉を防止可能である。尚、スプラッシュガードGを閉じ位置に伏倒回動させる際には、予めスクリーンSをホッパHから取り外してスプラッシュガードGと干渉しないようにする。
【0054】
次に実施形態の作用を説明する。
【0055】
ホッパH内には、ミキサー車等により生コンが投入され、そこで攪拌装置28で攪拌されつつ一時的に貯溜される。この状態で、ローラ支持体RSを正転(図3で時計方向に回転)させると、これに連動して一対のローラRが自転しつつポンプケースCの中心軸線回りに公転する。これにより、各ローラRは、ポンプケースCの外周壁Caの前半側内周面(より具体的には弾性パッドP)との間でチューブTをしごきつつ周方向に転動するが、その際に一方のローラRがチューブTへの押圧を解除するのと略同時に、他方のローラRがチューブTへの押圧を開始するような押圧タイミングでポンプ作用(即ちチューブTからの生コン押出し作用)が連続的に繰り返される。
【0056】
そして、チューブTから吐出された生コンは移送管20内を圧送され、その下流端部20eに取付けた生コン吹出管(図示せず)より吹き出し可能である。従って、ブーム組立体Bの各ブーム部を適宜、屈折、伸長動作させて、移送管20の下流側配管部分20Dと共に生コン吹出管をビル等の建設現場の生コン打設箇所まで移動させるようにすれば、コンクリートポンプCPは、その打設箇所が高所である場合でも生コンを圧送、供給することができる。
【0057】
ところで実施形態(即ち実施例1~3)の弾性パッドPは、吸入口Ciに最も近い下部パッドPbと、吐出口Coに最も近い上部パッドPtと、上部パッドPt及び下部パッドPb間を接続する第1,第2中間パッドPf1,Pf2とに分割構成され、下部パッドPbは、上部パッドPtよりも低硬度の弾性材で構成される。これにより、吐出側ローラRは、チューブTへの押圧を解除する直前(即ち生コンの圧送負荷が増大する吐出過程後半)でも、高硬度の上部パッドPtとの間でチューブTを強く挟圧できるため、生コンを、その逆流を防止しつつチューブTの下流側に効率よく押し出すことができて、ポンプ効率を高めることができ、従って、前記した第1の課題が解決可能となる。
【0058】
一方、チューブTへの押圧を開始しようとする吸入側ローラRは、チューブTを下部パッドPbとの間で挟み始める際に、下部パッドPbが比較的低硬度であることで生コン中の大きな砂利や小石をスムーズに乗り越え易くなるため、チューブTの早期摩耗や損傷を効果的に抑制でき、従って、前記した第2の課題が解決可能となる。
【0059】
以上の結果、実施例1~3によれば、弾性パッドPを分割構成し且つ上部パッドPtを下部パッドPbより高硬度とするだけの簡単な構造で、従来装置の相反する第1,第2の課題を一挙に解決可能となる。
【0060】
また実施例1~3の弾性パッドPは、これを分割構成する複数の部分パッドとして、上部パッドPt及び下部パッドPbの他、それら上部パッドPt及び下部パッドPb間を接続する少なくとも1個の中間パッドPf1,Pf2を含むため、弾性パッドPをより細かく分割でき、従って、その分割した部分パッドPt,Pb,Pf1,Pf2の硬度や設置部位等により摩耗の進行程度が異なっても、その進行程度に応じて部分パッドの交換をこまめに適切に行うことができる。しかも、このように弾性パッドPをより細かく分割できることで、個々の部分パッドPt,Pb,Pf1,Pf2のサイズをより小型化できて、交換時の取り扱いが簡便となり、作業性が良好となる。
【0061】
また特に実施例1では、中間パッドPf1,Pf2及び下部パッドPbは、同一硬度の弾性材で構成されるので、中間パッドPf1,Pf2よりも下部パッドPbを低硬度とした場合と比べ、下部パッドPbを比較的硬めに設定可能となる。これにより、吐出側ローラRの押圧解除に伴い吸入側ローラRまで生コンが逆流した場合に、それが吸入側ローラR下を通過するのを、硬めの下部パッドPbで効果的に抑制可能となる。
【0062】
また特に実施例2では、下部パッドPbは、中間パッドPf1,Pf2よりも高硬度の弾性材で構成されるので、これまた下部パッドPbを比較的硬めに設定可能となる。従って、実施例2による上記効果と同等の効果を達成可能となる。
【0063】
また特に実施例3では、中間パッドPf1,Pf2は、下部パッドPbよりも高硬度であるが上部パッドPtの硬度は上回らない硬度の弾性材で構成されるので、中間パッドPf1,Pf2の硬度が比較的高めとなる。これにより、生コンの圧送負荷が増大する吐出過程後半より以前の吐出過程中盤でも、チューブTを、吐出側ローラRと比較的高硬度の中間パッドPf1,Pf2との間で強めに挟圧して生コンを押し出し得るから、生コンの逆流防止効果を更に高めることができる。
【0064】
ところで実施例1~3の弾性パッドPは、これを分割構成する複数の部分パッドとして、上部パッドPt及び下部パッドPbの他、それら上部パッドPt及び下部パッドPb間の少なくとも1個の中間パッドPf1,Pf2を含む分割構造であるが、本発明の第1の特徴によれば、図示はしないが、弾性パッドPが上部パッドPt及び下部パッドPbのみを部分パッドとした(即ち、中間パッドPf1,Pf2を省略して弾性パッドPを上下二分割構造とした)別の実施例も実施可能である。
【0065】
この別の実施例では、上部パッドPtと、これに周方向に隣接する下部パッドPbとの切目(分割位置)をポンプケースCの上下二等分位置に設定してもよいし、或いはまた、その上下二等分位置から上方寄り、または下方寄りにオフセットした位置に設定してもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施形態を実施可能である。
【0067】
例えば、実施形態では、下部パッドPbが、上部パッドPt及び第1,第2中間パッドPf1,Pf2よりも厚肉に形成されるものを示したが、各パッドの肉厚は適宜、選定可能であり、例えば、下部パッドPbを他のパッドPt,Pf1,Pf2と同等の肉厚に形成してもよい。或いは、中間パッドPf1,Pf2を上部パッドPtよりも多少厚肉に形成してもよい。
【0068】
また前記実施形態では、ローラRによる吐出行程終了時の生コンの逆流を抑制してチューブTの耐久性を高めるべくポンプケースCの内周面の、チューブTを沿わせる円弧状範囲を中心角180度以上に延長したものを例示したが、その円弧状範囲を中心角180度に設定してもよい。
【符号の説明】
【0069】
CP・・・・・コンクリートポンプ
C・・・・・・ポンプケース
Ca・・・・・ポンプケースの外周壁
Ci・・・・・吸入口
Co・・・・・吐出口
P・・・・・・弾性パッド
Pb・・・・・部分パッドとしての下部パッド
Pt・・・・・部分パッドとしての上部パッド
Pf1,Pf2・・部分パッドとしての中間パッドを構成する第1,第2中間パッド
R・・・・・・ローラ
T・・・・・・チューブ
図1
図2
図3
図4