(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182127
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】位置補正システム、位置補正方法、プログラム、及び、加工システム
(51)【国際特許分類】
C03B 11/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
C03B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089475
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 有斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正行
(72)【発明者】
【氏名】和田 紀彦
(57)【要約】
【課題】被加工物が露出していない場合でも被加工物の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる位置補正システム、位置補正方法、プログラム、及び、加工システムを提供する。
【解決手段】位置補正システム10は、被加工物5が置かれる載置面1aを有する保持部1の荷重を検出する荷重検出装置30と、保持部1に打撃を与える打撃装置7と、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置を算出する重心位置算出処理と、重心位置算出処理で算出された重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与えて被加工物5の位置を補正する補正処理とを実行する演算装置50とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が置かれる載置面を有する保持部の荷重を検出する荷重検出装置と、
前記保持部に打撃を与える打撃装置と、
前記荷重検出装置の検出結果に基づいて前記載置面上での前記被加工物の重心位置を算出する重心位置算出処理と、前記重心位置算出処理で算出された前記重心位置と前記載置面上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで前記打撃装置により前記保持部に打撃を与えて前記被加工物の位置を補正する補正処理とを実行する演算装置と、
を備える、
位置補正システム。
【請求項2】
前記打撃装置に対して前記保持部を相対的に移動させて前記保持部に対する前記打撃装置の打撃位置を補正する打撃位置補正装置を備え、
前記補正処理は、前記打撃装置が前記重心位置から前記基準位置に向かう方向に沿った打撃を与えるように前記打撃位置補正装置により前記打撃位置を補正する、
請求項1に記載の位置補正システム。
【請求項3】
前記打撃位置補正装置は、前記載置面における前記基準位置での法線方向の周りに前記保持部を回転させる、
請求項2に記載の位置補正システム。
【請求項4】
前記基準位置は、前記載置面の中心位置である、
請求項1~3のいずれか一つに記載の位置補正システム。
【請求項5】
被加工物が置かれる載置面を有する保持部の荷重を検出する荷重検出装置及び前記保持部に打撃を与える打撃装置に接続される演算装置により実行される位置補正方法であって、
前記荷重検出装置の検出結果に基づいて前記載置面上での前記被加工物の重心位置を算出する重心位置算出処理と、
前記重心位置算出処理で算出された前記重心位置と前記載置面上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで前記打撃装置により前記保持部に打撃を与えて前記被加工物の位置を補正する補正処理と、
を含む、
位置補正方法。
【請求項6】
請求項5に記載の位置補正方法を、前記演算装置に実行させるための、
プログラム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一つに記載の位置補正システムと、
前記載置面に置かれた前記被加工物の加工を行う加工装置と、
を備える、
加工システム。
【請求項8】
前記被加工物は、ガラス素材であり、
前記保持部は、前記載置面を有する下型と、前記載置面に置かれた前記被加工物を前記下型とで挟み込む上型とを備え、
前記加工装置は、前記保持部を用いて前記被加工物の成形加工を行う、
請求項7に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置補正システム、位置補正方法、プログラム(コンピュータプログラム)、及び、加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形加工、打ち抜き加工、板金加工、レーザ加工等の種々の加工を行う加工システムが提案されている。例えば、特許文献1は、所定の形状のガラス成形品を得るために、ガラス素材の成形加工を行うガラス成形装置を開示する。特許文献1に開示されたガラス成形装置は、撮像用カメラによる溶融ガラス塊を収容したボトム金型の撮像を画像処理して2値化する2値化手段と、金型壁面から収容されている溶融ガラ塊までの距離および溶融ガラス塊の面積重心位置を画像・数値で出力表示するCRTと、溶融ガラス塊までの距離/溶融ガラス塊の面積重心位置の基準値に対してx,y方向別に偏差量として出力する位置ズレ偏差量出力手段と、偏差量に応じて位置を補正するファンネルを駆動制御するファンネル駆動制御手段と、溶融ガラス塊を押圧成形する押圧成形手段とを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス成形装置では、ボトム金型内のガラス素材の位置によっては溶融したガラス素材の流出等の原因により、ガラス成形品に肉厚不足やクラック等の不良が発生する。このような問題に対して作業者の人手による位置の補正が行われていたが、作業者間の経験差や目視管理能力の限界により安定した歩留まりを得られないという問題がある。これに対して、特許文献1に開示されたガラス成形装置によれば、ボトム金型内のガラス素材の位置を補正できるため、歩留まりの改善が可能となる。しかしながら、特許文献1に開示されたガラス成形装置では、撮像用カメラによってガラス素材を撮影できることが前提となっており、ガラス素材が金型から露出している必要がある。例えば、ガラスレンズのプレス成形用の金型の構成においては、ボトム金型上にガラス素材を収納した後、上型によって蓋をするような構造となり被加工物であるガラス素材が金型から露出していないため、撮像用カメラによるガラス素材の撮影自体が不可能という問題点がある。
【0005】
本開示は、被加工物が露出していない場合でも被加工物の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる位置補正システム、位置補正方法、プログラム、及び、加工システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の位置補正システムは、被加工物が置かれる載置面を有する保持部の荷重を検出する荷重検出装置と、保持部に打撃を与える打撃装置と、荷重検出装置の検出結果に基づいて載置面上での被加工物の重心位置を算出する重心位置算出処理と、重心位置算出処理で算出された重心位置と載置面上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで打撃装置により保持部に打撃を与えて前記被加工物の位置を補正する補正処理とを実行する演算装置とを備える。
【0007】
本開示の一態様の位置補正方法は、被加工物が置かれる載置面を有する保持部の荷重を検出する荷重検出装置及び保持部に打撃を与える打撃装置に接続される演算装置により実行される位置補正方法であって、荷重検出装置の検出結果に基づいて載置面上での被加工物の重心位置を算出する重心位置算出処理と、重心位置算出処理で算出された重心位置と載置面上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで打撃装置により保持部に打撃を与えて前記被加工物の位置を補正する補正処理とを含む。
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、上記の位置補正方法を、演算装置に実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様の加工システムは、上記の位置補正システムと、載置面に置かれた被加工物の加工を行う加工装置とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様によれば、被加工物が露出していない場合でも被加工物の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態の加工システムの構成例のブロック図
【
図2】
図1の加工システムの加工装置の構成例のブロック図
【
図3】被加工物が正しい位置にある場合の被加工物の加工の様子を説明する断面図
【
図4】被加工物が誤った位置にある場合の被加工物の加工の様子を説明する断面図
【
図5】被加工物が正しい位置にある場合の被加工物の加工の結果を説明する説明図
【
図6】被加工物が誤った位置にある場合の被加工物の加工の結果を説明する説明図
【
図7】
図1の加工システムの荷重検出装置の構成例の説明図
【
図8】被加工物の重心位置と載置面の基準位置との関係の一例の説明図
【
図9】被加工物の重心位置と載置面の基準位置との関係の他例の説明図
【
図10】
図1の加工システムの補正処理の打撃処理の一例を説明する断面図
【
図11】
図1の加工システムの補正処理の打撃処理の一例を説明する平面図
【
図12】
図1の加工システムでの打撃力の設定値と被加工物の移動量の関係を示すグラフ
【
図13】
図1の加工システムでの打撃回数と被加工物の移動量の関係を示すグラフ
【
図14】
図1の加工システムの補正処理の打撃位置補正の一例を示す平面図
【
図15】
図1の加工システムの動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.実施の形態]
[1.1 概要]
図1は一実施の形態の加工システム100の構成例のブロック図である。
図1の加工システム100は、被加工物5の加工を行うことによって、被加工物5の加工品を製造する。被加工物5は、例えば、ガラス素材である。加工は、例えば、成形加工である。加工品は、例えば、ガラス成形品である。ガラス成形品は、例えば、ガラスレンズである。ガラス素材は、ガラスレンズの所望の形状を得るために予め所定形状に加工される。所定形状は、例えば、楕円体状又は球体状である。本実施の形態において、被加工物5は、球体状のガラス素材である。本実施の形態において、加工システム100は、ガラス成形システム、特に、金型を用いた成形技術により光学素子を代表するレンズ等のガラス製品を量産するガラスレンズ成形システムである。
【0013】
図1の加工システム100は、位置補正システム10と、加工装置20とを備える。位置補正システム10は、保持部1の載置面1a上での被加工物5の位置の補正を行う。荷重検出装置30と、打撃装置7と、演算装置50とを備える。荷重検出装置30は、被加工物5が置かれる載置面1aを有する保持部1の荷重を検出する。打撃装置7は、保持部1に打撃を与える。演算装置50は、重心位置算出処理と、補正処理とを実行する。重心位置算出処理は、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置を算出する。補正処理は、重心位置算出処理で算出された重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与えて被加工物5の位置を補正する。
【0014】
このように、位置補正システム10は、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置を算出し、被加工物5の重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与える。これによって、被加工物5を、載置面1a上の適正な位置に配置することができる。そのため、被加工物5が載置面1a上の適正な位置にないことに起因する問題の発生を回避できる。例えば、被加工物5がガラス素材であり、ガラス素材の成形加工によりガラス成形品を製造する場合を例に挙げると、被加工物5が載置面1a上の適正な位置にないと、溶融したガラス素材の流出等の原因により、ガラス成形品に肉厚不足やクラック等の不良が発生して歩留まりが低下したり、十分な光学特性が得られなかったりする。位置補正システム10によれば、このような被加工物5が載置面1a上の適正な位置にないことに起因する問題の発生を防止できる。そして、位置補正システム10は、カメラ等で撮像した被加工物5の画像ではなく、荷重検出装置30で検出した保持部1の荷重に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置を算出し、この被加工物5の重心位置を用いて、被加工物5の位置の補正を行う。そのため、位置補正システム10によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0015】
[1.2 詳細]
以下、本実施の形態の加工システム100について詳細に説明する。加工システム100は、ガラス素材の成形加工によりガラスレンズを製造するために用いられる。
図1に示すように、加工システム100は、位置補正システム10と、加工装置20とを備える。加工システム100は、位置補正システム10によって、被加工物5の重心位置を判定し、被加工物5の位置を補正する。加工システム100は、位置補正システム10による被加工物5の位置の補正の後、加工装置20によって、ガラスレンズの成形を行う。
【0016】
上述したように、本実施の形態において、被加工物5は、ガラス素材である。保持部1は、ガラス素材の成形加工のための金型である。
図1に示すように、保持部1は、上型2と、下型3と、スリーブ4とを備える。下型3は、被加工物5が置かれる載置面1aを有する。載置面1a上の基準位置は、例えば、載置面1aの中心位置である。上型2は、載置面1aに置かれた被加工物5を下型3とで挟み込む。被加工物5は、上型2と下型3との間に挟持される。上型2と下型3とは対向するように配置される。スリーブ4は、対向する上型2と下型3を保持する。例えば、上型2及び下型3は円柱状であり、スリーブ4は、上型2と下型3を内側に収容可能な円筒状である。上型2は、スリーブ4内で、下型3に対して保持部1の中心軸11に沿って移動可能である。保持部1の中心軸11は、上型2、下型3、及びスリーブ4の中心軸に一致する。下型3の載置面1aと、上型2において載置面1aと対向する面(下面)の形状は、ガラスレンズの所望の形状に応じて設定される。なお、保持部1を組み立てる作業、つまり、上型2と下型3との間に被加工物5を配置して、これらをスリーブ4内に収容する作業は、人手により実行されてもよいし、機械により自動化されてもよい。機会により自動化することによって、生産性を高めることができる。
【0017】
加工装置20は、金型である保持部1を用いて被加工物5の成形加工を行う。成形加工は、プレス成形である。
図2は、加工装置20の構成例のブロック図である。
図2の加工装置20は、架台27上に配置された筐体25を備える。筐体25の内部は、加工室25aを構成する。加工室25aは、金型の酸化防止を目的として、真空又は窒素雰囲気で制御されている。筐体25は、保持部1を加工室25aに投入する入口に投入部シャッタ26aを備え、保持部1を加工室25aから取り出す出口に取出部シャッタ26bを備える。加工装置20は、筐体25の加工室25a内で被加工物5の加工を行うための複数の加工ブロック28-1~28-4(以下、総称して符号28を付す)を備える。加工ブロック28は、下側ヒータブロック22a及び上側ヒータブロック22bを備える。下側ヒータブロック22a及び上側ヒータブロック22bの各々は、複数の棒状のヒータ21を有する。下側ヒータブロック22aは、筐体25の底面に配置された断熱板23上に載置される。上側ヒータブロック22bは、下側ヒータブロック22aと上下方向で対向するように配置され、プレス軸(駆動軸)24により上下方向に移動可能である。
図2の加工装置20は、ガラスレンズのプレス成形の工程を分割してガラスレンズの生産が可能なガラスレンズ成形装置の一例である。プレス成形の工程は、投入工程、加熱工程、成形工程、第1冷却工程、第2冷却工程、及び取出工程を含む。加工装置20の複数の加工ブロック28-1~28-4は、加熱工程、成形工程、第1冷却工程、及び第2冷却工程をそれぞれ担当する。加熱工程、成形工程、第1冷却工程、及び第2冷却工程にそれぞれ対応する加工ブロック28-1~28-4の各々では、下側ヒータブロック22a及び上側ヒータブロック22bの温度が対応する工程の所定温度になるように制御される。加工装置20では、保持部1が、一定の時間間隔で工程に対応する場所に順次移載・搬送されることによって、複数のガラスレンズの成形加工が同時に行われる。
図2では、加工装置20において、投入工程、加熱工程、成形工程、第1冷却工程、第2冷却工程、及び、取出工程にそれぞれ対応する場所を分かりやすく示すために、「投入」、「加熱」、「成形」、「冷却1」、「冷却2」、及び「取出」のラベルを付している。
【0018】
以下、プレス成形の各工程について説明する。以下の説明において、加工装置20による形状変化前後で被加工物5を容易に区別するために、加工装置20による形状変化前の被加工物5には符号5aを付し、加工装置20による形状変化後の被加工物5には符号5bを付す。
【0019】
投入工程では、保持部1が、例えば、移載・搬送機構により位置補正システム10から加工装置20の筐体25の加工室25a内に搬送され、加熱工程に対応する加工ブロック28-1の下側ヒータブロック22aの中央部に置かれる。投入工程は、位置補正システム10により被加工物5の重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下と判定されたか、位置補正システム10により被加工物5の重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下となるように補正された後に、実行される。投入部シャッタ26aは、保持部1の移載・搬送の直前に開き、保持部1が加工ブロック28-1の下側ヒータブロック22aの中央に置かれた直後に閉まることで、加工室25aの雰囲気温度の低下を防止している。
【0020】
加熱工程では、加工ブロック28-1のヒータ21によって、ガラス素材である被加工物5が軟化し成形が可能な温度まで被加工物5の温度を上昇させる。加熱工程では、被加工物5の加熱を目的とするため、プレス軸24を下降させて上側ヒータブロック22bによって被加工物5に荷重をかけることはほとんどなく、保持部1の上型2の温度を上昇させるために上側ヒータブロック22bが上型2に接近又は接している。理由としては、ガラス素材である被加工物5aの温度が低い状態で大きい荷重をかけると、被加工物5aが割れたり、上型2と下型3の表面にキズや凹みが生じたりする可能性があるためである。保持部1は、加熱工程で一定時間加熱された後、成形工程に対応する加工ブロック28-2へと移載・搬送され、加熱工程に対応する加工ブロック28-1には投入工程により次の保持部1が投入される。
【0021】
成形工程では、プレス軸24が下降することにより、上側ヒータブロック22bによって被加工物5aに荷重がかかり、被加工物5aが熱変形するため金型形状が被加工物5aに転写され、これによって形状が変化した被加工物5bが得られる。再び一定時間経過すると、保持部1は、第1冷却工程に対応する加工ブロック28-3へと送られ、成形工程に対応する加工ブロック28-2には加熱工程に対応する加工ブロック28-1からの次の保持部1が置かれる。
【0022】
第1冷却工程では、成形工程と同様にして上型2に荷重がかけられる。第1冷却工程でかけられる荷重は、転写のために保持部1を保持することを目的としているから、成形工程でかけられる荷重よりも小さい。また、第1冷却工程でのヒータ21の温度は、成形工程でのヒータ21の温度よりも低く制御される。第1冷却工程では、被加工物5bの温度が下がることで被加工物5bが収縮し、上型2及び下型3の金型形状の被加工物5bへの転写が完了する。一定時間経過後、保持部1は、第2冷却工程に対応する加工ブロック28-4へと送られ、第1冷却工程に対応する加工ブロック28-3には成形工程に対応する加工ブロック28-2からの次の保持部1が置かれる。
【0023】
第2冷却工程では、プレス軸24により上側ヒータブロック22bが下降し、上型2に接近又は接することで、保持部1及び被加工物5bの冷却が行われる。第2冷却工程は、被加工物5bを冷却し、次の取出工程で加工室25aから取り出せるようにすることを目的とする。そのため、第2冷却工程でのヒータ21の温度は、第1冷却工程でのヒータ21の温度よりも非常に低く制御される。一定時間経過後、保持部1は、加工室25aから外部に取り出され、第2冷却工程に対応する加工ブロック28-4には第1冷却工程に対応する加工ブロック28-3からの次の保持部1が置かれる。取出部シャッタ26bは、保持部1の移載・搬送の直前に開き、保持部1が加工室25aから取り出された直後に閉まることで、加工室25aの雰囲気温度の低下を防止している。
【0024】
取出工程では、加工室25aから取り出された保持部1が分解され、被加工物5bが保持部1から取り出される。なお、保持部1を分解して被加工物5bを取り出す工程は、生産性を高めるために機械により自動化されてもよい。
【0025】
この後、保持部1は、新たな被加工物5aを収納するように組み立てられた後、位置補正システム10に提供される。位置補正システム10により被加工物5の重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下と判定されたか、位置補正システム10により被加工物5の重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下となるように補正された後、保持部1は、投入工程によって、加工装置20の加工室25a内に投入される。
【0026】
以上述べたような加工装置20によるガラスレンズのプレス成形の工程については、ガラス素材の種類や成形タクト時間に合わせて加熱工程や冷却工程をさら多段階に分けてもよい。また、下側ヒータブロック22a及び上側ヒータブロック22bの温度は各工程によって異なることが多く、概ね加熱工程と成形工程とで温度が高く、第1冷却工程及び第2冷却工程等の冷却工程では温度が低くなっている。
【0027】
次に、加工装置20によるカラスレンズのプレス成形による被加工物5aの形状変化について、
図3を参照して説明する。
図3は、加工システム100の加工装置20による被加工物5aのプレス成形の様子を示す断面図である。特に、
図3は、被加工物5aが正しい位置にある場合の加工の様子を説明する断面図である。
【0028】
図3において、(a)は、加工装置20によるプレス成形前の保持部1及び被加工物5aの状態を示す。保持部1は、人手もしくは機械などにより下型3の中心にガラス素材5aを設置し、スリーブ4と上型2を上から被せることで組み立てられる。保持部1の組立後の状態において、被加工物5aは上型2と下型3によって挟持され、上型2と下型3はスリーブ4によって保持されている。保持部1の組立後は、
図2に示すように、成形工程に対応する加工ブロック28-1によって上型2に荷重P1がかけられて、保持部1の中心軸11の方向に被加工物5aがプレス成形される。
【0029】
図3において、(b)は、加工装置20によるプレス成形後の保持部1及び被加工物5bの状態を示す。被加工物5aが加熱工程で昇温されることにより溶融軟化した状態でプレスされることによって成形され、レンズ面形状を有する被加工物5bが得られる。
図2に示す成形工程においては被加工物55bにはレンズ面形状のみが形成され、ガラスレンズの外周面に対応する部分は同時に成形されない。加工装置20によるプレス成形が完了した後にヒータ21の温度が低下すると、レンズ面形状を有する被加工物5bが冷却され、これによって、被加工物5bが固化する。
【0030】
その後、被加工物5bが保持部1より取り出された後、被加工物5には、所定の直径を有するガラスレンズが得られるように芯取り加工がされ、これによって、ガラスレンズの外周面に対応する部分が成形される。これによって、ガラスレンズが完成する。
図3では、(a)に示すように、被加工物5aの中心が保持部1の中心軸11上にあるから、プレス成形後の被加工物5bの中心軸(つまりガラスレンズの光軸)と保持部1の中心軸11は一致する。このように、被加工物5を保持部1の中心軸11に対称に変形させることによって、十分な光学特性を有するガラスレンズを得ることが可能となる。
【0031】
しかしながら、プレス成形の過程において、被加工物5に保持部1の中心軸11に対して非対称な変形が発生する場合がある。被加工物5の非対称な変形が発生する場合について、
図4を用いて説明する。
図4はプレス成形における非対称な変形の発生過程を示す断面図である。換言すれば、
図4は、被加工物5aが誤った位置にある場合の加工の様子を説明する断面図である。
【0032】
図4において、(a)は、加工装置20によるプレス成形前の保持部1及び被加工物5aの状態を示し、(b)は、加工装置20によるプレス成形後の保持部1及び被加工物5aの状態を示す。本来は被加工物5の中心は保持部1の中心軸11上にある状態が好ましい(
図3の(a)参照)。しかし、
図4において(b)に示すように、被加工物5aは、保持部1の下型3の中心から偏った位置に設置される場合がある。被加工物5aが下型3の中心から偏った位置に設置される要因としては、保持部1の組立時の人為的ミス又は自動機械の駆動誤差の発生等による設置場所のズレ及び加工装置20への保持部1の投入前の移載・搬送工程の振動等が挙げられる。被加工物5aが下型3の中心から偏った位置に設置された状態で、加工装置20にてプレス成形が実行されると、
図4において(b)に示すように、成形後の被加工物5bは保持部1の中心軸11に対して非対称に変形した形状を有することになる。非対称な形状の被加工物5bは、光軸のズレにより十分な光学特性を得られない場合があり、また、被加工物5bには偏肉や形状不良等が発生する場合もある。
【0033】
非対称な形状の被加工物5bの問題点について、
図5及び
図6を参照してより詳細に説明する。
図5及び
図6はプレス成形後の被加工物5bの外周面の様態を示す図である。
【0034】
図5は、被加工物5aが正しい位置にある場合の加工の結果(プレス成形後の被加工物5b1)を説明する説明図である。つまり、
図5は、正常時の被加工物5b1の外周面の様態を示す。
図5において、プレス成形後の芯取り加工によって芯取り予定線5c1に沿ってガラスレンズの外周面が成形される。完成したガラスレンズが十分に光学性能を発揮するためには、プレス成形後の被加工物5b1の形状のように保持部1の載置面の中心位置Oに対して対称な変形をさせ、芯取り加工後のガラスレンズの中心と光軸が一致していることが望まれる。保持部1の載置面の中心位置Oに対して対称な変形は、厳密な意味ではなく、保持部1の載置面の中心位置Oから被加工物5aの外周上の任意の点までの距離が規定範囲内にあればよい。被加工物5aの重心位置が保持部1の載置面の中心位置からある程度の範囲内にあれば、被加工物5aに、保持部1の載置面の中心位置Oに対して対称な変形を生じさせることができる。
【0035】
図6は、被加工物5aが誤った位置にある場合の加工の結果(プレス成形後の被加工物5b2)を説明する説明図である。つまり、
図6は、異常時の被加工物5b2の外周面の様態を示す。
図6において、プレス成形後の芯取り加工によって芯取り予定線5c2に沿ってガラスレンズの外周面が成形される。
図6における被加工物5b2の形状のように保持部1の載置面1aの中心位置Oに対して非対称な変形が発生した場合、芯取り加工後のガラスレンズの中心と光軸が一致しなくなり、十分な光学特性が得られない場合がある。保持部1の載置面1aの中心位置Oから被加工物5aの外周上の任意の点までの距離が規定範囲外であれば、保持部1の載置面1aの中心位置Oに対して非対称な変形といえる。また、
図6に示すように、場合によっては芯取り予定線5c2が被加工物5b2の外側にあることにより、そもそも芯取り加工が不可能となるといった不良が発生する場合もある。
【0036】
このように、被加工物5aが保持部1の載置面1a上の適正な位置にないと、ガラス成形品に肉厚不足やクラック等の不良が発生して歩留まりが低下したり、十分な光学特性が得られなかったりする場合がある。そこで、加工システム100では、位置補正システム10が、被加工物5の重心位置を判定して保持部1の載置面1a上での被加工物5の位置の補正を行う。より詳細には、位置補正システム10は、被加工物5の重心位置と載置面1a上の基準位置との距離が所定の距離閾値以下になるようにする。位置補正システム10は、重心位置判定・補正装置であるといえる。
【0037】
図1の位置補正システム10は、プレート6と、打撃装置7と、打撃位置補正装置8と、荷重検出装置30と、制御部40と、演算装置50とを備える。
【0038】
プレート6は、保持部1が置かれる台である。プレート6上では、ノックピン又は治具等による位置決め、又はプレート6に保持部1を設置する機構の制御によって、プレート6に対して保持部1が常に定位置に位置する。これによって、保持部1はプレート6と一体となって移動するようにしてあり、後述する打撃位置補正装置8によるプレート6の回転とともに保持部1も回転する。プレート6に置かれた保持部1は、必要に応じて位置補正システム10によって補正処理がされてから、加工装置20に投入される。なお、保持部1をプレート6に置く作業は、人手により実行されてもよいし、機械により自動化されてもよい。また、保持部1を加工装置20に投入する作業、つまり、プレート6上の保持部1を加工装置20に移載又は搬送する作業は、人手により実行されてもよいし、機械により自動化されてもよい。
【0039】
打撃装置7は、保持部1に打撃を与える。より詳細には、
図1に示すように、打撃装置7は、保持部1のスリーブ4の外面に微小な打撃力を与え、この打撃力によって保持部1に生じる振動によって、保持部1の上型2と下型3との間に挟まれる被加工物5を載置面1a上で移動させる。打撃装置7は、移動対象である被加工物5に直接打撃力を作用させるのではなく、保持部1(スリーブ4)を通して衝撃を伝搬させることで、被加工物5を移動させる。打撃装置7は、圧電アクチュエータを利用して対象物に打撃力を与えて移動させるように構成される。打撃装置7は、与えられた設定値に対応する打撃力を発生するように構成されている。つまり、打撃装置7の打撃力は変更可能である。このような打撃装置7には、THKプレシジョン株式会社製のインパクトアクチュエータ(型番PP104)を用いることができる。本実施の形態において、打撃装置7は、スリーブ4の外側の円筒面から保持部1の中心に向けた方向に固定されている。打撃装置7は、位置補正システム10に設けた梁等の構造部やアームの先端等に直接又は治具を介して間接的に保持されてよい。打撃装置7の保持方法としては、例えばネジの締結によるクランプ機構やチャッキング機構を用いてもよい。打撃装置7の位置は、保持部1が位置補正システム10のプレート6から加工装置20まで移載又は搬送されるまでの被加工物5の軌跡に干渉しないように設定される。さらに、打撃装置7の高さ位置は、保持部1の中心軸11の方向での被加工物5の位置(被加工物5の高さ位置)に合わせて調整可能である。例えば、打撃装置7の高さ位置は、10~20mm程度の範囲の微調整が可能である。打撃装置7の高さ位置の調整方法としては、例えばアーム角度の微調整、クランプ・チャッキング位置の微調整、治具と構造物の締結位置(長孔を用いる等)の微調整が挙げられる。
【0040】
打撃位置補正装置8は、保持部1に対する打撃装置7の打撃位置を補正する。より詳細には、打撃位置補正装置8は、打撃装置7に対して保持部1を相対的に移動させて保持部1に対する打撃装置7の打撃位置を補正する。打撃位置補正装置8は、載置面1aにおける基準位置での法線方向の周りに保持部1を回転させる回転装置を含む。回転装置は、例えば、回転対象物が置かれる回転テーブルと、回転テーブルを回転させる台部とを備える回転テーブルである。本実施の形態において、基準位置は、載置面1aの中心位置であるから、載置面1aにおける基準位置での法線方向は、保持部1の中心軸11の方向である。本実施の形態において、プレート6は、打撃位置補正装置8上に配置されて、打撃位置補正装置8により回転させられる。打撃位置補正装置8がプレート6を回転させることで、打撃装置7に対して保持部1が移動し、これによって、保持部1に対する打撃装置7の打撃位置が補正可能となる。
【0041】
荷重検出装置30は、保持部1の荷重を検出する。本実施の形態において、荷重検出装置30は、複数の荷重センサ31と、複数の荷重センサ31からの検出信号を増幅して演算装置50に出力する増幅器32とを備える。荷重検出装置30において、複数の荷重センサ31は、打撃位置補正装置8の下方に設置される。荷重検出装置30では、複数の荷重センサ31がそれぞれに対応する位置での保持部1の荷重を検出して保持部1の荷重を示す検出信号を出力し、複数の荷重センサ31からの検出信号は増幅器32により増幅され、演算装置50に出力される。
【0042】
図7は、の荷重検出装置30の構成例の説明図である。特に、
図7は、荷重検出装置30の複数の荷重センサ31(31-1~31-4)の配置(平面配置)の一例の説明図である。
図7において、X軸及びY軸は、水平方向の軸であり、Z軸は、鉛直方向の軸である。加工装置20によるプレス方向は、Z軸の方向である。X軸及びY軸で規定されるXY平面は、加工装置20による駆動軸24と直交する作用面Fであり、作用面Fは、荷重中心Gの位置を導出する仮想面として用いられる。
図7では、X-Y座標の原点は、載置面1aの中心位置Oに一致するように設定される。載置面1aの中心位置Oは保持部1の重心位置に一致する。そのため、保持部1の載置面1aに被加工物5が置かれた状態では、荷重中心Gは、被加工物5の重心位置に対応する。
【0043】
図7において、4つの荷重センサ31-1,31-2,31-3,31-4の各々は、加工装置20によるプレス方向(Z軸の方向)の荷重を検出可能な1軸荷重センサである。4つの荷重センサ31-1,31-2,31-3,31-4は、X-Y座標の原点、つまり載置面1aの中心位置Oに対して対称的に(点対称で)配置されている。荷重センサ31-1,31-2,31-3,31-4は、駆動軸24と直交する平面(作用面F)内におけるX軸に対して±m、Y軸に対して±n離れた位置に配置している。より詳細には、X-Y座標において、荷重センサ31-1の座標は(+n,-m)、荷重センサ31-2の座標は(-n,-m)、荷重センサ31-3の座標は(-n,+m)、荷重センサ31-4の座標は(+n,+m)である。このように、X-Y座標の原点に対して、荷重センサ31を対称的に配置するのは、荷重中心Gの座標(a
x,a
y)を導出する計算を容易にするためである。
【0044】
被加工物5が載置面1aに置かれた保持部1がプレート6に置かれた場合、荷重検出装置30の荷重センサ31-1~31-4がそれぞれZ軸の荷重z1,z2,z3,z4を検出する。作用面F1におけるZ軸の荷重、つまり、保持部1によりかかる荷重は、z1~z4の合算値となる。この場合、X-Y座標の原点を中心とするX軸まわりのモーメントMxは次式(1)により算出され、X-Y座標の原点を中心とするY軸まわりのモーメントMyは次式(2)により算出される。
【0045】
【0046】
荷重中心Gの座標(ax,ay)は、以下の式(3),(4)によって求めることができる。
【0047】
【0048】
なお、
図7に示す荷重検出装置30の構成例において1軸荷重センサである荷重センサ31を4つ配置したが、少なくとも3つ以上の荷重センサ31があれば重心位置の算出が可能なため、一直線上にない3か所(例えば、X-Y平面における第1象限から第4象限までの4つの領域のうち3つの領域)に配置してもよい。
【0049】
制御部40は、打撃装置7を制御する打撃制御装置41と、打撃位置補正装置8を制御する打撃位置制御装置42とを含む。打撃制御装置41は、演算装置50から与えられる打撃制御信号に基づいて、打撃装置7を制御する。打撃装置7がTHKプレシジョン株式会社製のインパクトアクチュエータ(型番PP104)である場合には、打撃制御装置41には、THKプレシジョン株式会社製のコントローラドライバ(型番SD301)を用いることができる。打撃位置制御装置42は、演算装置50から与えられる打撃位置制御信号に基づいて、打撃位置補正装置8を制御する。
【0050】
演算装置50は、処理装置51と、記憶装置52とを備える。
【0051】
記憶装置52は、処理装置51が利用する情報及び処理装置51で生成される情報を記憶するために用いられる。記憶装置52は、1以上のストレージ(非一時的な記憶媒体)を含む。ストレージは、例えば、ROM、EEPROM、RAM、USBメモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ハードディスクドライブ、及びソリッドステートドライブ(SSD)のいずれであってもよい。また、ストレージは、内蔵型、外付け型、及びNAS(network-attached storage)型のいずれであってもよい。記憶装置52に記憶される情報は、例えば、処理装置51で実行されるプログラム53を含む。プログラム53は、算出部53a及び判定部53bを含む。算出部53a及び判定部53bについては後述する。
【0052】
処理装置51は、位置補正システム10の動作を制御する回路である。特に、処理装置51は、荷重検出装置30及び制御部40に接続され、記憶装置52にアクセス可能である。処理装置51は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ又は記憶装置52に記憶された)プログラム53を実行することで、処理装置51としての機能を実現する。プログラム53は、ここでは記憶装置52に予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0053】
処理装置51は、重心位置算出処理と、判定処理とを実行する。重心位置算出処理は、処理装置51が算出部53aを実行することによって実現される。判定処理は、処理装置51が判定部53bを実行することによって実現される。
【0054】
重心位置算出処理は、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置G1を算出する。被加工物5の重心位置G1は、
図7に示す作用面Fの荷重中心Gの座標(a
x,a
y)で与えられる。a
xは、上記の式(3)によって求めることができ、a
yは上記の式(4)で求めることができる。
【0055】
判定処理は、重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下かどうかを判定する処理を含む。本実施の形態において、載置面1a上の基準位置は、載置面1aの中心位置Oである。判定処理について更に
図8及び
図9を参照して説明する。
【0056】
図8及び
図9は、被加工物5の重心位置G1と載置面1aの基準位置(中心位置O)との関係の例の説明図である。
図8及び
図9において、R1は、載置面1aの中心位置Oを中心とする円の領域であり、領域R1の半径は距離閾値rに等しい。つまり、被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下かどうかは、被加工物5の重心位置G1が領域R1内にあるかどうかと等価である。距離閾値rは、加工装置20の加工により被加工物5に非対称な変形が発生した場合であっても、ガラスレンズの光学特性上許容されるように設定される。つまり、領域R1は、重心位置許容領域を規定する。
図8では、被加工物5の重心位置G1が領域R1内に存在している。そのため、加工装置20により加工を行っても良品のガラスレンズを製造できる。重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下である場合には、保持部1が加工装置20に送られて、被加工物5の加工が実行される。なお、距離閾値rは、被加工物5として用いるガラス素材の硝種や形状、被加工物5を挟持する上型2及び下型3の材質や形状によって変動する。
【0057】
一方で、
図9では、被加工物5の重心位置G1が領域R1内に存在していない。そのため、加工装置20により加工を行うと不良品のガラスレンズが製造されてしまう。そこで、判定処理は、重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値rを超える場合に、補正処理を実行する。
【0058】
補正処理は、打撃装置7及び打撃位置補正装置8を利用して、被加工物5の重心位置G1の補正をする。
【0059】
補正処理は、重心位置算出処理で算出された重心位置G1と載置面1a上の基準位置(中心位置O)との距離dが所定の距離閾値r以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与えて被加工物5の位置を補正する打撃処理を含む。打撃処理について更に
図10及び
図11を参照して説明する。
【0060】
図10は、打撃処理の一例を説明する断面図である。
図10において、(a)は打撃処理の実行前の保持部1に対する被加工物5の位置を示し、(b)は打撃処理の実行後の保持部1に対する被加工物5の位置を示す。
図10に示すように、打撃処理では、打撃装置7が保持部1のスリーブ4に微小な打撃力を与え、打撃力により保持部1に生じる振動によって被加工物5を載置面1aに向かって移動させる。打撃装置7は、移動対象である被加工物5に直接打撃力を作用させるのではなく、保持部1(スリーブ4)を通して衝撃を伝搬させることで、被加工物5を移動させる。
【0061】
図11は、補正処理の打撃処理の一例を説明する平面図である。
図11において、(a)は打撃処理の実行前の保持部1に対する被加工物5の位置を示し、(b)は打撃処理の実行後の保持部1に対する被加工物5の位置を示す。
図11において(a)に示すように、被加工物5の重心位置G1が領域R1の外にある。打撃装置7により、打撃力P2をスリーブ4の外面から作用させたとき、被加工物5の移動方向は打撃力P2の方向と一致する。
図11の(a)では、重心位置G1が、打撃装置7の打撃位置S1と載置面1aの中心位置Oとを結ぶ直線上に位置している。そのため、
図11の(b)に示すように、打撃装置7による打撃力P2によって、被加工物5の重心位置G1は、保持部1の載置面1aの基準位置(
図11では中心位置O)に向かって移動する。
【0062】
打撃処理は、打撃装置7により打撃力P2を保持部1に与えるために、前述の打撃制御信号を打撃制御装置41に出力する。打撃制御信号は、打撃指示を示す。打撃指示は、被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置(中心位置O)との距離dに基づいて決定される。載置面1a上の基準位置は重心位置G1の座標の原点に設定されているから、距離dは、重心位置G1の座標(ax,ay)を用いた次式(5)で求めることができる。
【0063】
【0064】
打撃指示は、例えば、打撃装置7による打撃力の大きさ及び打撃回数の少なくとも一方を含む。打撃装置7による被加工物5の移動量は、打撃装置7の打撃力の大きさ(設定値)と打撃回数に依存する。
【0065】
図12は、打撃装置7の打撃力の設定値と被加工物5の移動量の関係を示すグラフである。
図12のグラフから明らかなように、打撃力が大きくなるほど、被加工物5の移動量が増える。つまり、打撃力の大きさと被加工物5(の重心位置)の移動量とは比例する。打撃装置7の打撃力の設定値と被加工物5の移動量の関係については、演算装置50の記憶装置52に記憶されてよい。なお、
図12に示すグラフの傾きは、被加工物5と保持部1の材質及び形状によって変化する。したがって、記憶装置52には、被加工物5と保持部1の材質及び形状の組み合わせ毎に、打撃装置7の打撃力の設定値と被加工物5の移動量の関係が記憶されてよい。
【0066】
図13は、打撃装置7の打撃力の設定値が所定値である場合の打撃装置7の打撃回数と被加工物5の移動量の関係を示すグラフである。被加工物5の移動量と打撃回数との関係は、
図12に示す打撃装置7の打撃力の設定値と被加工物5の移動量との関係から算出できる。
図13のグラフから明らかなように、打撃回数が増えるほど、被加工物5の移動量が増える。つまり、打撃回数と被加工物5(の重心位置)の移動量とは比例する。打撃装置7の打撃回数と被加工物5の移動量の関係については、演算装置50の記憶装置52に記憶されてよい。打撃装置7の打撃力の設定値が可変である場合には、設定値毎に打撃回数と移動量の関係が記憶されてよい。なお、
図13に示すグラフの傾きは、被加工物5と保持部1の材質及び形状によって変化する。したがって、記憶装置52には、被加工物5と保持部1の材質及び形状の組み合わせ毎に、打撃装置7の打撃回数と被加工物5の移動量の関係が記憶されてよい。
【0067】
このように、打撃装置7の打撃力の大きさと打撃回数とによって、被加工物5の移動量の制御が可能である。そのため、補正処理は、重心位置算出処理で算出された重心位置G1と載置面1a上の基準位置(中心位置O)との距離dが所定の距離閾値r以下になるように、打撃装置7の打撃力の大きさと打撃回数を決定する。重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下になるのに必要な距離に対して、打撃装置7の打撃回数を、被加工物5の移動量と打撃回数との関係から求める。
図10に示すように、打撃力の設定値によって被加工物5の移動量が異なるため、打撃装置7の打撃回数は、打撃装置7の打撃力の設定値によって異なる。
【0068】
補正処理は、打撃装置7が重心位置G1から基準位置(中心位置O)に向かう方向に沿った打撃を与えるように打撃位置補正装置8により打撃位置を補正する打撃位置補正指示を出力する打撃位置補正処理を含む。打撃位置補正処理は、打撃処理の前に実行される。本実施の形態において、打撃位置補正処理は、前述の打撃位置制御信号を打撃位置制御装置42に出力する。打撃位置制御信号は、打撃位置補正指示を示す。打撃位置補正指示は、打撃位置補正装置8による保持部1の相対的な移動量を示す。打撃位置補正処理について更に
図14を参照して説明する。
【0069】
図14は、補正処理の打撃位置補正処理の一例を説明する平面図である。
図14において(a)に示すように、被加工物5の重心位置G1が領域R1の外にある。打撃装置7により、打撃力P2をスリーブ4の外面から作用させたとき、被加工物5の移動方向は打撃力P2の方向と一致する。したがって、被加工物5の重心位置G1を保持部1の載置面1aの基準位置(
図14では中心位置O)に向けて移動させたい場合、打撃力P2を保持部1の載置面1aの中心位置Oに向けて作用させ、かつ、打撃装置7の打撃位置S1と載置面1aの中心位置Oとを結ぶ直線上に被加工物5の重心位置G1を位置させるとよい。しかしながら、保持部1の形状又は保持部1のプレート6への置き方等により、被加工物5の重心位置G1は必ずしも打撃装置7の打撃位置S1と載置面1aの中心位置Oとを結ぶ直線上に位置するわけではない。そこで、位置補正システム10は、打撃位置補正処理を実行することによって、打撃装置7が重心位置G1から基準位置(中心位置O)に向かう方向に沿った打撃を与えるように打撃位置補正装置8により打撃位置を補正する。
【0070】
打撃位置補正処理は、重心位置算出処理で算出された重心位置G1に基づいて、打撃位置補正装置8による保持部1の相対的な移動量を決定する。本実施の形態において、打撃位置補正装置8は、保持部1をその中心軸11の周りに回転させる。そのため、打撃位置補正装置8による保持部1の相対的な移動量は、保持部1の回転角度である。ここで、
図14の(a)に示すように、重心位置G1と中心位置Oとの距離をdとする。中心位置Oと打撃位置S1とを結ぶ直線に対する中心位置Oと重心位置G1とを結ぶ直線の角度をθとする。θが0°のとき、重心位置G1が中心位置Oと打撃位置S1とを結ぶ直線上に位置するから、打撃装置7は、重心位置G1から基準位置(中心位置O)に向かう方向に沿った打撃を与えることができる。
図14の(b)に示すように、打撃位置補正処理は、θが0°になるように、打撃位置補正装置8による保持部1の回転角度を決定すればよい。この場合、回転角度は-θである。θは、重心位置G1の座標(a
x,a
y)を用いて下記の式(6)で求めることができる。
【0071】
【0072】
本実施の形態では、打撃位置補正装置8は、保持部1が載せられたプレート6を回転させるが、荷重センサ31は打撃位置補正装置8の下方にある。そのため、荷重センサ31の位置関係は変わらない。打撃位置補正処理を行った後に再度重心位置G1の検出を行う際、座標系は変わらない。保持部1を回転させて打撃位置S1を補正するにあたっては、打撃位置補正装置8の回転テーブルの回転軸と保持部1の中心軸11を一致させる。打撃位置補正装置8は、回転テーブルの回転軸が保持部1の中心軸11に一致するように保持部1を回転テーブル上に位置決めする位置決め構造を有してよい。位置決め構造は、回転テーブル上に配置されて、保持部1の外周に接触することで保持部1を保持部1の中心軸11が回転テーブルの回転軸に一致する位置に位置決めする複数の位置決めピンを備えてよい。これによって、保持部1の回転テーブルへの設置位置が毎回同じとなる。異なる大きさのガラスレンズを製造するために、大きさ(例えば、外径)が異なる保持部1を用いた場合でも、回転テーブル上での複数の位置決めピンの位置を変更することで、保持部1の中心軸11を回転テーブルの回転軸に一致させることができる。
【0073】
[1.3 動作]
次に、位置補正システム10の動作の一例について
図15のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
まず、位置補正システム10のプレート6に被加工物5が載置面1aに置かれた保持部1が置かれる。荷重検出装置30は荷重センサ31により保持部1の荷重を検出する。位置補正システム10の演算装置50は、重心位置算出処理を実行し、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置G1を算出する(S10)演算装置50は、判定処理において、重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下かどうかを判定する(S20)。
【0075】
重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下である場合(S20:YES)、被加工物5が保持部1の載置面1a上の適正な位置にあるから、保持部1が加工装置20に送られ、加工装置20による加工が開始され、所望の加工品(本実施の形態では、ガラスレンズ)が製造される(S30)。
【0076】
重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下でない場合(S20:NO)、演算装置は、補正処理を実行して、重心位置G1の補正をする(S40)。補正処理では、打撃位置補正処理によって、打撃装置7が重心位置G1から基準位置(中心位置O)に向かう方向に沿った打撃を与えるように打撃位置補正装置8により打撃位置を補正する打撃位置補正指示が、打撃位置制御装置42に出力される。これによって、
図14に(a)で示すように重心位置G1が中心位置Oと打撃位置S1とを結ぶ直線上にない状態から、
図14に(b)で示すように重心位置G1が中心位置Oと打撃位置S1とを結ぶ直線上に位置する状態となる。この後に、補正処理では、打撃処理によって、重心位置算出処理で算出された重心位置G1と載置面1a上の基準位置(中心位置O)との距離dが所定の距離閾値r以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与える打撃指示が、打撃制御装置41に出力される。打撃指示は、距離dによって決定される、打撃装置7による打撃力の大きさ及び打撃回数の少なくとも一方を含む。打撃装置7の打撃力の設定値と被加工物5の移動量の関係及び打撃装置7の打撃回数と被加工物5の移動量の関係は記憶装置52に記憶されている。したがって、打撃処理により、
図11に(a)で示すように重心位置G1が領域R1内にない状態から、
図11に(b)で示すように重心位置G1が領域R1内にある状態となることが想定される。ただし、実際のプロセスにおいては保持部1と被加工物5それぞれの形状や表面粗さの誤差などから、被加工物5の移動量にバラつきが生じる。したがって打撃処理後に、被加工物5の重心位置G1が領域R1内に位置していない場合がある。そこで、演算装置50は、打撃処理の後、再度、重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下かどうかを判定する(S20)。
【0077】
このように、重心位置算出処理で算出された被加工物5の重心位置G1と載置面1a上の基準位置との距離dが所定の距離閾値r以下となるまで、重心位置G1の補正を行う。そのため、被加工物5が保持部1の載置面1a上の適正な位置にある保持部1だけが加工装置20に送られることになる。そのため、不良の発生率が低減し、歩留まりが向上する。
【0078】
[1.4 効果等]
以上述べた位置補正システム10は、被加工物5が置かれる載置面1aを有する保持部1の荷重を検出する荷重検出装置30と、保持部1に打撃を与える打撃装置7と、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置G1を算出する重心位置算出処理と、重心位置算出処理で算出された重心位置G1と載置面1a上の基準位置Oとの距離dが所定の距離閾値r以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与える補正処理とを実行する演算装置50とを備える。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0079】
また、位置補正システム10は、打撃装置7に対して保持部1を相対的に移動させて保持部1に対する打撃装置7の打撃位置S1を補正する打撃位置補正装置8を備える。補正処理は、打撃装置7が重心位置G1から基準位置Oに向かう方向に沿った打撃を与えるように打撃位置補正装置8により打撃位置S1を補正する。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0080】
また、位置補正システム10において、打撃位置補正装置8は、載置面1aにおける基準位置Oでの法線方向の周りに保持部1を回転させる。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0081】
また、位置補正システム10において、基準位置Oは、載置面1aの中心位置Oである。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0082】
換言すれば、位置補正システム10は、以下の方法(位置補正方法)を実行しているといえる。位置補正方法は、被加工物5が置かれる載置面1aを有する保持部1の荷重を検出する荷重検出装置30及び保持部1に打撃を与える打撃装置7に接続される演算装置50により実行される。位置補正方法は、荷重検出装置30の検出結果に基づいて載置面1a上での被加工物5の重心位置G1を算出する重心位置算出処理と、重心位置算出処理で算出された重心位置G1と載置面1a上の基準位置Oとの距離dが所定の距離閾値r以下になるまで打撃装置7により保持部1に打撃を与えて被加工物5の位置を補正する補正処理とを含む。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0083】
上記の位置補正方法は、演算装置50がプログラム53を実行することにより実現され得る。このプログラム53は、演算装置50に、上記の位置補正方法を実行させるためのコンピュータプログラムである。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0084】
以上述べた加工システム100は、位置補正システム10と、載置面1aに置かれた被加工物5の加工を行う加工装置20とを備える。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0085】
また、加工システム100において、被加工物5は、ガラス素材である。保持部1は、載置面1aを有する下型3と、載置面1aに置かれた被加工物5を下型3とで挟み込む上型2とを備える。加工装置20は、保持部1を用いて被加工物5の成形加工を行う。この構成によれば、被加工物5が露出していない場合でも被加工物5の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0086】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0087】
一変形例において、打撃位置補正装置8は、打撃装置7を保持部1に対して移動させることで、打撃装置7に対して保持部1を相対的に移動させてもよい。打撃位置補正装置8は、例えば、保持部1を回転させず、打撃装置7の打撃力を作用させる方向を保持部1の中心位置Оに向けたまま、保持部1の中心軸11の周りに回転させる機構を備えてよい。打撃位置補正装置8は、打撃装置7及び保持部1を移動させることで、打撃装置7に対して保持部1を相対的に移動させてもよい。
【0088】
上記実施の形態では、被加工物5はガラス素材であり、保持部1は金型である。加工装置20は、金型である保持部1を用いてガラス素材である被加工物5の成形加工(プレス成形)を行う。加工装置20は、プレス成形を行う装置に限定されない。加工装置20は、目的の製品に応じて適宜選択され、被加工物5及び保持部1は加工装置20によって適宜変更される。加工装置20での加工は、成形加工に限定されず、打ち抜き加工、板金加工、レーザ加工等であってもよい。本開示にかかる位置補正システムは、被加工物5の重心位置を載置面1aの基準位置に近付けることが可能であるから、被加工物5の重心位置が完成品の精度に影響を与える加工に特に有益である。
【0089】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0090】
第1の態様は、位置補正システム(10)であって、被加工物(5)が置かれる載置面(1a)を有する保持部(1)の荷重を検出する荷重検出装置(30)と、前記保持部(1)に打撃を与える打撃装置(7)と、前記荷重検出装置(30)の検出結果に基づいて前記載置面(1a)上での前記被加工物(5)の重心位置(G1)を算出する重心位置算出処理と、前記重心位置算出処理で算出された前記重心位置(G1)と前記載置面(1a)上の基準位置(O)との距離(d)が所定の距離閾値(r)以下になるまで前記打撃装置(7)により前記保持部(1)に打撃を与える補正処理とを実行する演算装置(50)とを備える。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0091】
第2の態様は、第1の態様に基づく位置補正システム(10)である。第2の態様において、前記位置補正システム(10)は、前記打撃装置(7)に対して前記保持部(1)を相対的に移動させて前記保持部(1)に対する前記打撃装置(7)の打撃位置(S1)を補正する打撃位置補正装置(8)を備える。前記補正処理は、前記打撃装置(7)が前記重心位置(G1)から前記基準位置(O)に向かう方向に沿った打撃を与えるように前記打撃位置補正装置(8)により前記打撃位置(S1)を補正する。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0092】
第3の態様は、第2の態様に基づく位置補正システム(10)である。第3の態様において、前記打撃位置補正装置(8)は、前記載置面(1a)における前記基準位置(O)での法線方向の周りに前記保持部(1)を回転させる。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0093】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに基づく位置補正システム(10)である。第4の態様において、前記基準位置(O)は、前記載置面(1a)の中心位置(O)である。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0094】
第5の態様は、位置補正方法であって、被加工物(5)が置かれる載置面(1a)を有する保持部(1)の荷重を検出する荷重検出装置(30)及び前記保持部(1)に打撃を与える打撃装置(7)に接続される演算装置(50)により実行される。前記位置補正方法は、前記荷重検出装置(30)の検出結果に基づいて前記載置面(1a)上での前記被加工物(5)の重心位置(G1)を算出する重心位置算出処理と、前記重心位置算出処理で算出された前記重心位置(G1)と前記載置面(1a)上の基準位置(O)との距離(d)が所定の距離閾値(r)以下になるまで前記打撃装置(7)により前記保持部(1)に打撃を与えて被加工物(5)の位置を補正する補正処理とを含む。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0095】
第6の態様は、第5の態様の位置補正方法を、前記演算装置(50)に実行させるための、プログラムである。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0096】
第7の態様は、加工システム(100)であって、第1~第4の態様のいずれか一つの位置補正システム(10)と、前記載置面(1a)に置かれた前記被加工物(5)の加工を行う加工装置(20)とを備える。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0097】
第8の態様は、第7の態様に基づく加工システム(100)である。第8の態様において、前記被加工物(5)は、ガラス素材である。前記保持部(1)は、前記載置面(1a)を有する下型(3)と、前記載置面(1a)に置かれた前記被加工物(5)を前記下型(3)とで挟み込む上型(2)とを備える。前記加工装置(20)は、前記保持部(1)を用いて前記被加工物(5)の成形加工を行う。この態様によれば、被加工物(5)が露出していない場合でも被加工物(5)の位置を補正できて歩留まりの改善が図れる。
【0098】
なお、第2~第4の態様は、第5の態様にも適宜変更して適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示は、位置補正システム、位置補正方法、プログラム(コンピュータプログラム)、及び、加工システムに適用可能である。具体的には、載置面に置かれる被加工物の位置を補正するための位置補正システム、位置補正方法、及びプログラム(コンピュータプログラム)、並びに、位置補正システムを備える加工システムに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 保持部
1a 載置面
2 上型
3 下型
5 被加工物
7 打撃装置
8 打撃位置補正装置
10 位置補正システム
20 加工装置
30 荷重検出装置
50 演算装置
100 加工システム
G1 重心位置
O 基準位置
r 距離閾値