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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182133
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電源回路および電源回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G05F1/56 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089494
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐尾 宣哉
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE06
5H430EE12
5H430FF04
5H430FF13
5H430GG01
5H430HH03
5H430JJ04
(57)【要約】
【課題】負荷に流れる電源電流の変動に応じて第1電源線から電流を引き抜く電流補償回路の応答性を向上することで、第1電源電圧の変動を抑制する。
【解決手段】電源回路は、第1電源線に供給される第1電源電圧に基づいて負荷で使用する第2電源電圧を生成するレギュレータ回路と、負荷に流れる電源電流をモニタしてモニタ電流を生成するモニタ回路と、モニタ電流の変動に応じて第1電源線から引き抜く電流量を調整する電流補償回路と、を有し、電流補償回路は、ソースが第1電源線に接続され、ゲートがモニタ電流の出力ノードに接続され、一対のトランジスタの一方のドレインが低電圧線に接続され、一対のトランジスタの他方のドレインが出力ノードに接続されたカレントミラー回路と、出力ノードと低電圧線との間に接続された電流源と、ゲートと低電圧線との間に接続された第1抵抗素子と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源線に供給される第1電源電圧に基づいて負荷で使用する第2電源電圧を生成するレギュレータ回路と、
前記負荷に流れる電源電流をモニタしてモニタ電流を生成するモニタ回路と、
前記モニタ電流の変動に応じて前記第1電源線から引き抜く電流量を調整することで、前記電源電流の変動による前記第1電源電圧の変動を補償する電流補償回路と、を有し、
前記電流補償回路は、
ソースが前記第1電源線に接続され、ゲートが前記モニタ電流の出力ノードに接続され、一対のトランジスタの一方のドレインが低電圧線に接続され、前記一対のトランジスタの他方のドレインが前記モニタ電流の出力ノードに接続されたカレントミラー回路と、
前記モニタ電流の出力ノードと前記低電圧線との間に接続された電流源と、
前記ゲートと前記低電圧線との間に接続され、前記第1電源電圧の変動の補償中に前記ゲートから電荷を引き抜く第1抵抗素子と、を有する
電源回路。
【請求項2】
前記電流補償回路は、前記一対のトランジスタのゲートおよび前記トランジスタの他方のドレインと、前記モニタ電流の出力ノードとの間に接続される第2抵抗素子を有する
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記負荷の動作モードに応じて前記電流源に流す電流量を切り替える電流制御回路を有する
請求項1または請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記電流源は、第2電源電圧受けて動作する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項5】
第1電源線に供給される第1電源電圧に基づいて負荷で使用する第2電源電圧を生成するレギュレータ回路と、前記負荷に流れる電源電流をモニタしてモニタ電流を生成するモニタ回路と、電流補償回路と、を有し、前記電流補償回路が、ソースが前記第1電源線に接続され、ゲートが前記モニタ電流の出力ノードに接続され、一対のトランジスタの一方のドレインが低電圧線に接続され、前記一対のトランジスタの他方のドレインが前記モニタ電流の出力ノードに接続されたカレントミラー回路と、前記モニタ電流の出力ノードと前記低電圧線との間に接続された電流源と、前記ゲートと前記低電圧線との間に接続された第1抵抗素子と、を含む電源回路の制御方法であって、
電流補償回路が、
前記モニタ電流の変動に応じて前記第1電源線から引き抜く電流量を調整することで、前記電源電流の変動による前記第1電源電圧の変動を補償し、
前記第1電源電圧の変動の補償中に前記第1抵抗素子を介して前記ゲートから電荷を引き抜く
電源回路の制御方法。
【請求項6】
前記負荷の動作モードに応じて前記電流源に流す電流量を切り替える
請求項5に記載の電源回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路および電源回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器に接続されたメモリカードの電源電流の変動が機器の動作に影響することを抑止するため、メモリカードの電流消費量と動作モードとに応じてメモリカードの可変電流負荷回路に流す電流を調整する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。定電圧回路を安定して動作させるために、誤差増幅回路の入出力間の位相差を補正する位相補償回路に設けられる可変抵抗の抵抗値を出力電流の検出結果に応じて調整する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-191740号公報
【特許文献2】特開2011-13726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、負荷の動作による電源電流の変動をキャンセルするために、電源電流の変動に応じてカレントミラー回路を動作させ、電源線から補償電流を引き抜くことが考えられる。電源電流が増加する場合、補償電流を減少させる電圧が、カレントミラー回路のトランジスタのゲートに供給される。電源電流が減少する場合、補償電流を増加させる電圧が、カレントミラー回路のトランジスタのゲートに供給される。
【0005】
例えば、電源電流の増加量が所定量より大きくなると、ゲート電圧は上昇し、トランジスタはオフする。これにより、カレントミラー回路に補償電流が流れなくなる。その後、電源電流が減少し、ゲート電圧が下降すると、カレントミラー回路に補償電流が流れ始める。しかしながら、トランジスタがオフしている状態では、ゲート電圧の下降から補償電流が流れ始めるまでに応答時間が掛かるため、電源電流の変動が大きくなってしまう。
【0006】
1つの側面では、本発明は、負荷に流れる電源電流の変動に応じて第1電源線から電流を引き抜く電流補償回路の応答性を向上することで、第1電源電圧の変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの観点によれば、電源回路は、第1電源線に供給される第1電源電圧に基づいて負荷で使用する第2電源電圧を生成するレギュレータ回路と、前記負荷に流れる電源電流をモニタしてモニタ電流を生成するモニタ回路と、前記モニタ電流の変動に応じて前記第1電源線から引き抜く電流量を調整することで、前記電源電流の変動による前記第1電源電圧の変動を補償する電流補償回路と、を有し、前記電流補償回路は、ソースが前記第1電源線に接続され、ゲートが前記モニタ電流の出力ノードに接続され、一対のトランジスタの一方のドレインが低電圧線に接続され、前記一対のトランジスタの他方のドレインが前記モニタ電流の出力ノードに接続されたカレントミラー回路と、前記モニタ電流の出力ノードと前記低電圧線との間に接続された電流源と、前記ゲートと前記低電圧線との間に接続され、前記第1電源電圧の変動の補償中に前記ゲートから電荷を引き抜く第1抵抗素子と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
負荷に流れる電源電流の変動に応じて第1電源線から電流を引き抜く電流補償回路の応答性を向上することで、第1電源電圧の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態における電源回路の一例を示すブロック図である。
図2図1の電源回路の動作の一例を示す説明図である。
図3】別の実施形態における電源回路の一例を示すブロック図である。
図4】別の実施形態における電源回路の一例を示すブロック図である。
図5】別の実施形態における電源回路の一例を示すブロック図である。
図6図5の電流制御回路の動作の一例を示す説明図である。
図7図5の電源回路および図1の電源回路の動作の一例を示す説明図である。
図8】他の電源回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態が説明される。以下では、信号等の情報が伝達される信号線には、信号名と同じ符号が使用される。電圧が供給される電圧線には電圧名と同じ符号が使用される。また、電圧名は、電流名としても使用される。
【0011】
図1は、一実施形態における電源回路の一例を示す。図1に示す電源回路100は、レギュレータ回路2、モニタ回路4および電流補償回路6を有する。レギュレータ回路2は、電源線VDDAに供給される電源電圧VDDAに基づいて負荷200で使用する電源電圧VDDLを生成する。例えば、負荷200は、電源回路100とともにシステムに搭載される内部回路であり、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等を含む。
【0012】
モニタ回路4は、負荷200に流れる電源電流Iregをモニタし、モニタ電流IMONを生成する。例えば、モニタ回路4は、電源電流IregのN分の1(Nは、1より大きい実数)のモニタ電流IMONを生成する。以下では、モニタ電流IMONは、電流Ibとも称される。
【0013】
電流補償回路6は、電流Ibの変動に応じて電源線VDDAから引き抜く電流量を調整する。電流補償回路6は、一対のpチャネルMOSトランジスタP1、P2を含むカレントミラー回路と電流源CSと抵抗素子Rとを有する。以下では、pチャネルMOSトランジスタは、単にトランジスタとも称される。
【0014】
トランジスタP1は、ソースが電源線VDDAに接続され、ゲートがモニタ回路4の出力ノードIMONに接続され、ドレインが接地線VSSに接続される。接地線VSSは、低電圧線の一例である。トランジスタP2は、ソースが電源線VDDAに接続され、ゲートおよびドレインが出力ノードIMONに接続される。例えば、トランジスタP1のゲート幅は、トランジスタP2のゲート幅のN倍に設定される。なお、トランジスタP1は、トランジスタP2と同じサイズのN個のトランジスタを並列に接続することで構成されてもよい。
【0015】
電流源CSは、出力ノードIMONと接地線VSSとの間に接続され、定電流Iaを出力ノードIMONから接地線VSSに流す。抵抗素子Rは、トランジスタP1、P2のゲートと接地線VSSとの間に接続される。なお、抵抗素子Rの代わりに、ゲートで定電圧を受けるnチャネルMOSトランジスタが配置されてもよい。この場合、ゲートで定電圧を受けるnチャネルMOSトランジスタのオン抵抗により、nチャネルMOSトランジスタは、抵抗素子Rとして機能する。
【0016】
図1に示す電源回路100では、負荷200の消費電力が増加し、電源電流Iregが増加した場合、モニタ回路4は、電源電流Iregに比例して増加する電流Ibを出力する。負荷200の消費電力が減少し、電源電流Iregが減少した場合、モニタ回路4は、電源電流Iregに比例して減少する電流Ibを出力する。トランジスタP2のソースドレイン間には、定電流Iaから電流Ibを引いた電流Ia-Ibが流れる。トランジスタP1のソースドレイン間には、電流Ia-IbのN倍の補償電流が流れる。
【0017】
電源電流Iregが増加し、電流Ibが増加した場合、電流Ia-Ibが減少するため、補償電流も減少する。これにより、電源電流Iregが増加した場合にも電源線VDDAに流れる電流を一定にすることができ、電源電圧VDDAの変動が抑制される。一方、電源電流Iregが減少し、電流Ibが減少した場合、電流Ia-Ibが増加するため、補償電流も増加する。これにより、電源電流Iregが減少した場合にも電源線VDDAに流れる電流を一定にすることができ、電源電圧VDDAの変動が抑制される。
【0018】
電源線VDDAから電源回路100および負荷200に流れる合計電流Isumは、式(1)、(2)により示される。
Isum=(Ia-Ib)×N+Ireg=Ia×N-Ib×N+Ireg ‥(1)
式(1)の(Ia-Ib)×Nは、補償電流と称され、電源電流Iregの増減による合計電流Isumへの影響をキャンセルするキャンセル電流である。ここで、Ireg=Ib×Nであるため、式(1)を変形すると式(2)になる。
Isum=Ia×N ‥(2)
したがって、図1に示す電源回路100は、電源電流Iregの変動によらず、合計電流Isumを一定にすることができる。以下では、合計電流Isumは、設定電流とも称される。設定電流は、負荷200による通常の動作範囲において、電流Iaが電流Ib以上になるように設定される。
【0019】
しかしながら、電源電流Iregが増加し、電流Ibが電流Iaより増加した場合、トランジスタP1、P2がオフするおそれがある。トランジスタP1、P2がオフした場合、その後、電源電流Iregが低下し、電流Ibが低下しても、トランジスタP1、P2がオンするまでに所定の応答時間が掛かる。このため、電源電流Iregの低下分に対応する補償電流を流すことができず、電源線VDDAを流れる電源電流VDDAの変動が大きくなってしまう。そこで、この実施形態では、電流補償回路6に抵抗素子Rを配置することで、電源電流Iregが増加して電流Ibが電流Iaより大きくなった場合にも、トランジスタP1、P2がオフすることを抑止する。
【0020】
例えば、抵抗素子Rの抵抗値は、電流Ibの値にかかわらず、各トランジスタP1、P2のソースドレイン間に所定量以上の電流(例えば、数μA程度)が流れる程度になるように設定される。換言すれば、抵抗素子Rの抵抗値は、電流Ibの値にかかわらず、トランジスタP1、P2を常時オンさせるゲート電圧が印加されるように設定される。トランジスタP1、P2を常時オンさせるゲート電圧は、各トランジスタP1、P2のゲートソース間電圧(絶対値)のそれぞれを、各トランジスタP1、P2の閾値電圧(絶対値)より大きくする電圧である。これにより、電流Ibが電流Iaより大きくなった場合にも、トランジスタP1、P2がオフすることを抑止することができ、トランジスタP1、P2のソースドレイン間の電流が遮断されることを抑止することができる。これにより、例えば、電源電流Iregが急激に増加した場合にも電源電流VDDAの変動を抑止することができる。
【0021】
図2は、図1の電源回路100の動作の一例を示す。すなわち、図2は、電源回路100の制御方法の一例を示す。図2の上側は、図1の電源回路100の動作時の電流波形を示し、図2の下側は、抵抗素子Rを持たない他の電源回路の動作時の電流波形を示す。他の電源回路の回路構成は、抵抗素子Rを持たないことを除き、図1の電源回路100の回路構成と同様である。
【0022】
図2では、負荷200は、動作モードとして、受信モード、処理モードおよび送信モードを有する。負荷200の平均消費電流は、送信モード、受信モード、処理モードの順に大きくなる。この実施形態では、動作モードにかかわりなく、電源電流Iregと補償電流と和である設定電流は、一定に設定される。
【0023】
負荷200は、受信モードにおいて、電源回路100および負荷200を含むシステムの外部から無線信号を受信する。負荷200は、処理モードにおいて、負荷200に搭載されるCPUを動作させ、受信した無線信号に含まれるデータのデータ処理等を実行する。CPUは、データ処理により得たデータをメモリに格納する。負荷200は、送信モードにおいて、処理モード中のデータ処理により得たデータ等をシステムの外部に無線信号として送信する。
【0024】
例えば、消費電流が他の動作モードより大きい処理モード中に処理負荷が増加し、電源電流Iregが設定電流を超えた場合、電流Ibは電流Iaより大きくなる。しかしながら、抵抗素子RによりトランジスタP1、P2のゲートから所定量の電荷が引き抜かれる。このため、トランジスタP1、P2はオフせず、トランジスタP1、P2の各々のソースドレイン間には、最小限の電流が流れる。トランジスタP1、P2がオフしていないため、電源電流Iregが再び減少し、電流Ibが減少した場合、トランジスタP2に流れる電流Ia-Ibを電源電流Iregの減少に追従して増加させることができる。これにより、電源電流Iregの減少に応答してトランジスタP1に流れる補償電流を迅速に増加させることができる。この結果、電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑制することができ、電源ノイズの発生を抑制することができる。
【0025】
これに対して、抵抗素子Rを持たない他の電源回路では、処理モード中に処理負荷が増加し、電源電流Iregが設定電流を超え、電流Ibが電流Iaより大きくなった場合、トランジスタP1、P2がオフし、補償電流が流れなくなる。トランジスタP1、P2がオフしている場合、電源電流Iregが再び減少したときに、電流Ibの減少に応答して電流Ia-Ibが直ちに増加せず、補償電流が増加するまでに時間が掛かる。この結果、電源電流Iregの変動により、電源電圧VDDAが変動し、電源ノイズが発生するおそれがある。
【0026】
以上、この実施形態では、カレントミラー回路のトランジスタP1、P2のゲートを、抵抗素子Rを介して接地線VSSに接続することで、トランジスタP1、P2の各々のソースドレイン間に最小限の電流が流すことができる。このため、電源電流Iregが設定電流を超え、電流Ibが電流Iaより大きくなった場合にも、トランジスタP1、P2のソースドレイン間の電流が遮断されることを抑止することができる。
【0027】
したがって、その後、電源電流Iregが減少し、電流Ibが減少した場合、トランジスタP2に流れる電流Ia-Ibを電源電流Iregの減少に追従して増加させることができ、補償電流を迅速に増加させることができる。この結果、電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑制することができ、電源ノイズの発生を抑制することができる。すなわち、負荷200に流れる電源電流Iregの変動に応じて電源線VDDAから電流を引き抜く電流補償回路6の応答性を向上することができ、電源電圧VDDAの変動を抑制することができる。
【0028】
図3は、別の実施形態における電源回路の一例を示す。図1と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。例えば、図3に示す回路要素は、非接触ICカードまたはRFID(Radio Frequency IDentification)タグに搭載される。図3に示す電源回路102は、整流回路10、シャント回路20、電流補償回路30、レギュレータ回路40および基準電圧生成回路50を有する。
【0029】
整流回路10は、電源線VDDAと接地線VSSとの間に端子PWRPを介して接続されたダイオードD1、D2と、電源線VDDAと接地線VSSとの間に端子PWRMを介して接続されたダイオードD3、D4とを有する。例えば、端子PWRP、PWRMは、図示しないアンテナコイルの両端に接続される。整流回路10は、端子PWRP、PWRMにそれぞれ供給される逆位相の電流信号を整流し、電源電圧VDDAを生成する。
【0030】
シャント回路20は、電源線VDDAと接地線VSSとの間に接続された抵抗素子R1、R2と、アンプAMP1と、nチャネルMOSトランジスタN6とを有する。アンプAMP1は、抵抗素子R1、R2が相互に接続される分圧ノードに生成される分圧電圧を正側入力で受け、基準電圧VREFを負側入力で受ける。
【0031】
アンプAMP1は、分圧電圧が基準電圧VREFより高いほど出力電圧を高くし、分圧電圧が基準電圧VREFより低いほど出力電圧を低くする。トランジスタN6は、ゲートがアンプAMP1の出力に接続され、ドレインが電源電圧VDDAに接続され、ソースが接地線VSSに接続される。トランジスタN6は、分圧電圧が基準電圧VREFより高いほどオン抵抗を下げ、分圧電圧が基準電圧VREFより低いほどオン抵抗を上げる。これにより、アンテナコイルからの電力に応じて整流回路10により生成される電源電圧VDDAが徐々に上昇する場合にも、電源電圧VDDAを基準電圧VREFに対応する電圧値に維持することができる。
【0032】
電流補償回路30は、図1の抵抗素子Rの代わりにnチャネルMOSトランジスタN3を有し、図1の電流源CSの代わりにnチャネルMOSトランジスタN1、N2および抵抗素子R3を有することを除き、図1の電流補償回路6と同様である。電流源として動作するトランジスタN1、N2のゲートとトランジスタN2のドレインは、抵抗素子R3を介して電源線VDDLに接続され、カレントミラー回路として機能する。
【0033】
そして、トランジスタN1は、トランジスタN2に流れる電流I0のミラー電流である一定の電流Iaをモニタ線IMONから接地線VSSに引き抜く。カレントミラー回路の動作電源に内部回路202の電源電圧VDDLを使用することで、抵抗素子R3およびトランジスタN2に流れる電流I0を電源電流Iregに含ませることができる。これにより、電流I0を考慮せずに、電流補償回路32を設計することができる。
【0034】
トランジスタN3のゲートは、トランジスタN1、N2のゲートに接続され、定電圧を受ける。そして、トランジスタN3は、所定の抵抗値を有する抵抗素子として機能する。トランジスタN3のオン抵抗値は、図1の抵抗素子Rの抵抗値と同様に、電流Ibの値にかかわらず、各トランジスタP1、P2のソースドレイン間に所定量以上の電流(例えば、数μA程度)が流れる程度になるように設定される。例えば、トランジスタN3のオン抵抗値は、トランジスタN3のゲート幅により調整可能である。
【0035】
レギュレータ回路40は、電源線VDDAと接地線VSSとの間に直列に接続されたpチャネルMOSトランジスタP4および抵抗素子R4、R5と、pチャネルMOSトランジスタP3と、アンプAMP2とを有する。トランジスタP4と抵抗素子R4との接続ノードは、内部回路202の電源線VDDLに接続される。
【0036】
アンプAMP2は、抵抗素子R4、R5の接続ノードである分圧ノードに生成される分圧電圧を正側入力で受け、基準電圧VREFを負側入力で受ける。アンプAMP2は、分圧電圧が基準電圧VREFより高いほど出力電圧を高くし、分圧電圧が基準電圧VREFより低いほど出力電圧を低くする。
【0037】
トランジスタP4は、ゲートがアンプAMP2の出力に接続され、ソースが電源電圧VDDAに接続され、ドレインが電源線VDDLに接続される。トランジスタP4は、分圧電圧が基準電圧VREFより高いほどオン抵抗を上げ、分圧電圧が基準電圧VREFより低いほどオン抵抗を下げる。これにより、トランジスタP4は、電源線VDDAから電源線VDDLに電源電流Iregを流し、所定の値の電源電圧VDDLを生成するレギュレータとして動作する。
【0038】
例えば、トランジスタP3のゲート幅は、トランジスタP4のゲート幅の1/N倍に設定される。このため、トランジスタP3は、トランジスタP4が流す電源電流Iregの1/Nの電流Ib(モニタ電流IMON)を流す。特に限定されないが、例えば、Nは80である。これにより、トランジスタP3は、図1に示したモニタ回路4と同様に、電源電流Iregをモニタするモニタ回路して機能する。なお、モニタ回路として機能するトランジスタP3は、レギュレータ回路40の外部に配置されてもよい。
【0039】
基準電圧生成回路50は、電源電圧VDDAに基づいて基準電圧VREFを生成する。例えば、基準電圧生成回路50は、バンドギャップリファレンスであり、1.25Vの基準電圧VREFを生成する。内部回路202は、CPU等のロジックとメモリとを含み、電源電圧VDDLを受けて動作する。内部回路202は、電源電圧VDDLに基づいて動作する負荷の一例である。なお、電源電圧VDDAと接地線との間には、バイパスコンデンサC1が接続され、電源電圧VDDLと接地線VSSとの間には、バイパスコンデンサC2が接続される。この実施形態の電源回路102の動作は、図2と同様である。
【0040】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、トランジスタP1、P2のゲートを、抵抗素子として機能するトランジスタN3を介して接地線VSSに接続することで、トランジスタP1、P2がオフすることを抑止することができる。これにより、電源電流Iregが設定電流を超え、電流Ibが電流Iaより大きくなった場合にも、トランジスタP1、P2のソースドレイン間の電流が遮断されることを抑止することができる。この結果、電源電流Iregが減少した場合に、補償電流を迅速に増加させることができ、電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑制することができ、電源ノイズの発生を抑制することができる。
【0041】
カレントミラー回路の動作電源に内部回路202の電源電圧VDDLを使用することで、抵抗素子R3およびトランジスタN2に流れる電流I0を電源電流Iregに含ませることができる。これにより、電流I0を考慮せずに、電流補償回路32を設計することができる。
【0042】
図4は、別の実施形態における電源回路の一例を示す。図1および図3と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図4に示す電源回路104は、図3の電流補償回路30の代わりに電流補償回路32が配置されることを除き、図3の電源回路102と同様である。
【0043】
電流補償回路32は、図3の電流補償回路30にnチャネルMOSトランジスタN4を追加している。トランジスタN4は、ドレインがトランジスタP2のドレインに接続され、ゲートが電源線VDDLに接続され、ソースがモニタ線IMONに接続され、抵抗素子として機能する。
【0044】
トランジスタN4をモニタ線IMONとトランジスタP1、P2との間に配置することで、電流Ibが急激に増加または減少する場合にも、トランジスタP1、P2のゲート電圧を、電流Ibの変化に対して遅れて変化させることができる。これにより、例えば、電源電流Iregが急激に増加し、電流Ibが急激に増加する場合にも、電流Ia-Ibの急激な減少を抑制することができる。この結果、電流Ibが急激に増加する場合にも、トランジスタN3によりトランジスタP1、P2のゲート電極から引き抜く電荷により、トランジスタP1、P2のオン状態を維持することができる。換言すれば、トランジスタN4を設けることにより、トランジスタN3のオン抵抗を低く設定することが可能になり、小さいサイズのトランジスタN3を使用することが可能になる。
【0045】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、トランジスタN4をモニタ線IMONとトランジスタP1、P2との間に配置することで、電流Ibが急激に増加する場合にも、電流Ia-Ibの急激な減少を抑制することができる。したがって、電流Ibが急激に増加する場合にも、トランジスタN3によりトランジスタP1、P2のオン状態を維持することができる。この結果、電源電流Iregが減少した場合に、補償電流を迅速に増加させることができ、電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑制することができ、電源ノイズの発生を抑制することができる。
【0046】
図5は、別の実施形態における電源回路の一例を示す。図1図3図4と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図5に示す電源回路106は、図4の電流補償回路32の代わりに電流補償回路34が配置されることを除き、図4の電源回路104と同様である。
【0047】
電流補償回路34は、図4の電流補償回路32のnチャネルMOSトランジスタN1の代わりにnチャネルMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N15、N16を有する。また、電流補償回路34は、図4の電流補償回路32にnチャネルMOSトランジスタN5および電流制御回路35を追加している。電流制御回路35は、内部回路202の動作モードに応じて、選択信号SEL(SEL1、SEL2、SEL3)および制御信号NCONを生成する。なお、電流制御回路35は、電流補償回路34の外部に配置されてもよい。
【0048】
トランジスタN11、N12は、モニタ線IMONと接地線VSSとの間に直列に接続される。トランジスタN13、N14は、モニタ線IMONと接地線VSSとの間に直列に接続される。トランジスタN15、N16は、モニタ線IMONと接地線VSSとの間に直列に接続される。
【0049】
トランジスタN11、N13、N15は、電流制御回路35から出力される選択信号SEL1、SEL2、SEL3をゲートでそれぞれ受け、オンまたはオフされる。トランジスタN12、N14、N16のゲートは、トランジスタN2、N3のゲートに接続される。例えば、トランジスタN11、N13、N15は、互いに同じ構造であり、トランジスタN12、N14、N16は、ゲート幅が互いに相違する。このため、選択信号SEL1-SEL3によりオンするN12、N14、N16を、動作モードに応じて変更することで、電流Iaを最大で8通りに切り替えることができる。
【0050】
トランジスタN5は、ドレインがトランジスタP1のドレインに接続され、ソースが接地線VSSに接続され、ゲートで電流制御回路35が生成する制御信号NCONを受け、スイッチとして機能する。
【0051】
図6は、図5の電流制御回路35の動作の一例を示す。図6に示す例では、設定電流(Ireg+補償電流)は、3ビットの選択信号SEL[3:1]の論理値に応じて、8通りに設定可能である。選択信号SEL[3:1]=000、制御信号NCON=0は、電流補償回路34の動作を停止する場合に設定される。なお、図6に示す設定電流の値は、一例であり、他の値に設定されてもよい。
【0052】
図7は、図5の電源回路106および図1の電源回路100の動作の一例を示す。すなわち、図7は、電源回路106の制御方法の一例を示す。図2と同様の動作については、詳細な説明は省略する。図7の上側は、図5の電源回路106の動作時の電流波形を示し、図7の下側は、図1の電源回路100の動作時の電流波形を示す。
【0053】
電源回路106は、図5の電流制御回路35によりオンするトランジスタN12、N14、N16を動作モードに応じて変更することができる。これにより、動作モード毎に適切な電流Iaに設定することができ、設定電流(Ireg+補償電流)を、動作モード毎の電源電流Iregの最大値に合わせて適切に設定することができる。この結果、トランジスタN3、N4により電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑えつつ、動作モードに応じて消費電流の増加を最小限に抑えることができる。なお、電流補償回路34は、トランジスタN4を持たなくてもよい。この場合にも、電流補償回路34を図6および図7と同様に動作させることができる。
【0054】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、電源電流Iregが設定電流を超え、電流Ibが電流Iaより大きくなった場合にも、トランジスタP1、P2のソースドレイン間の電流が遮断されることを抑止することができる。この結果、電源電流Iregが減少した場合に、補償電流を迅速に増加させることができ、電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑制することができ、電源ノイズの発生を抑制することができる。
【0055】
さらに、この実施形態では、動作モード毎に適切な電流Iaに設定することができ、設定電流(Ireg+補償電流)を、動作モード毎の電源電流Iregの最大値に合わせて適切に設定することができる。この結果、トランジスタN3、N4により電源電流Iregの変動による電源電圧VDDAの変動を抑えつつ、動作モードに応じて消費電流の増加を最小限に抑えることができる。
【0056】
図8は、他の電源回路の一例を示す。図3と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図8に示す電源回路110は、図3の電流補償回路30の代わりに電流補償回路36が配置されることを除き、図3の電源回路102と同様である。
【0057】
電流補償回路36は、図3の電流補償回路30からトランジスタN3を削除している。このため、電源回路110は、図2で説明した抵抗素子Rを持たない他の電源回路と同様に動作する。例えば、電源回路110は、電源電流Iregが設定電流を超え、電流Ibが電流Iaより大きくなった場合、トランジスタP1、P2がオフし、補償電流が流れなくなる。この後、電源電流Iregが減少した場合、電流Ibの減少に応答して電流Ia-Ibが直ちに増加せず、補償電流が増加するまでに時間が掛かる。この結果、電源電流Iregの変動により、電源電圧VDDAが変動し、電源ノイズが発生するおそれがある。
【0058】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
2 レギュレータ回路
4 モニタ回路
6 電流補償回路
10 整流回路
20 シャント回路
30、32、34、36 電流補償回路
40 レギュレータ回路
50 基準電圧生成回路
100、102、104、106、110 電源回路
200 負荷
202 内部回路
AMP1、AMP2 アンプ
C1、C2 バイパスコンデンサ
CS 電流源
D1、D2、D3、D4 ダイオード
IMON 出力ノード
Ireg 電源電流
Isum 合計電流
N1、N2、N3、N4、N5、N6 nチャネルMOSトランジスタ
N11、N12、N13、N14、N15、N16 nチャネルMOSトランジスタ
NCON 制御信号
P1、P2、P3、P4 pチャネルMOSトランジスタ
PWRM、PWRP 端子
R、R1、R2、R3、R4、R5 抵抗素子
SEL1、SEL2、SEL3、SEL4 選択信号
VDDA、VDDL 電源線
VREF 基準電圧
VSS 接地線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8