(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182135
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/43 20060101AFI20221201BHJP
C07C 65/05 20060101ALI20221201BHJP
C07C 51/47 20060101ALI20221201BHJP
C07C 51/15 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C65/05
C07C51/47
C07C51/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089497
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼口 正基
(72)【発明者】
【氏名】芝 一休
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD17
4H006BB11
4H006BB17
4H006BB31
4H006BE03
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】本発明は、高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸が高収率で得られる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、以下の工程:
(A)2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に吸着体を添加し、該吸着体を該水溶液と接触させ、その後に吸着体を除去する工程、および
(B)工程(A)で得られた水溶液を酸析し、析出した2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の結晶を分離および回収する工程、
を含む、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(A)2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に吸着体を添加し、該吸着体を該水溶液と接触させ、その後に吸着体を除去する工程、および
(B)工程(A)で得られた水溶液を酸析し、析出した2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の結晶を分離および回収する工程、
を含む、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法。
【請求項2】
前記2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応によって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸着体は、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、グラファイトカーボンおよびモレキュラーシーブからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
吸着体は活性炭である、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸は、2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量が0.30質量%未満である、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量が0.30質量%未満である、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(以下、DHTAと称する場合もある)は、ヒドロキシ基を2個有する芳香族ジカルボン酸であり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アラミド等の合成樹脂のモノマー、蛍光剤や医薬品中間体などの原料として使用され、その需要は年々高まっている。
【0003】
従来、フェノール性水酸基を有する化合物にカルボキシル基を導入する方法としては、コルベシュミット反応が知られている。コルベシュミット反応としては、例えば、アルカリ金属のフェノキシド(フェノールのアルカリ金属塩)に高温・高圧で二酸化炭素を接触させてオルト位をカルボキシル化させ、酸による中和後にサリチル酸を得る化学反応が挙げられる。
【0004】
DHTAの製造に関しても、コルベシュミット反応によって製造する方法が提案されており、例えば、アルカリ金属炭酸塩の存在下で二価フェノールを二酸化炭素と接触させ、アルカリ金属ギ酸塩の存在下でギ酸塩の融点より高い温度で反応させる方法(特許文献1)や、ハイドロキノンジアルカリ金属塩と二酸化炭素とを、フェノールまたはナフトールのアルカリ金属塩の存在下で反応させる方法(特許文献2)等、主に有機金属塩触媒を添加することによって、生成率が向上することが知られている。
【0005】
しかしながら、コルベシュミット反応によって製造された粗DHTAには、中間体である2,5-ジヒドロキシ安息香酸(以下、DHBAと称する場合もある)等の不純物が残留するため、より高純度なものが求められる用途においては、これらの不純物を除去する精製操作が必要であった。
【0006】
DHTAの精製方法としては、コルベシュミット反応によって製造された粗DHTAをアセチル化した後、再結晶し、加水分解することで再びDHTAを得る方法(特許文献3)が提案されている。しかし、回収率が半分以下であるなど、工業的に有利な方法とは言えないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11-515031号公報
【特許文献2】特開2013-245214号公報
【特許文献3】特開昭49-11841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸が高収率で得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に含まれる2,5-ジヒドロキシ安息香酸等の不純物を吸着体に吸着させて除去した後、酸析することによって、高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を高収率で調製し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕(A)2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に吸着体を添加し、該吸着体を該水溶液と接触させ、その後に吸着体を除去する工程、および
(B)工程(A)で得られた水溶液を酸析し、析出した2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の結晶を分離回収する工程、
を含む、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法。
〔2〕前記2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応によって得られたものである、〔1〕に記載の方法。
〔3〕吸着体は、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、グラファイトカーボンおよびモレキュラーシーブからなる群から選択される1種以上である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕吸着体は活性炭である、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の方法。
〔5〕高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸は、2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量が0.30質量%未満である、請求項1~4の何れかに記載の方法。
〔6〕2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量が0.30質量%未満である、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、単に「アルカリ金属塩」という場合は、モノアルカリ金属塩および/またはジアルカリ金属塩を意味する。
【0013】
本発明の工程(A)において使用されるDHTAのアルカリ金属塩としては、DHTAのリチウム塩、DHTAのナトリウム塩、DHTAのカリウム塩、DHTAのルビジウム塩、DHTAのセシウム塩などが挙げられるが、入手容易性の点から、DHTAのナトリウム塩およびDHTAのカリウム塩が好ましい。
【0014】
本発明において使用されるDHTAのアルカリ金属塩は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応、すなわちコルベシュミット反応によって得られたものであってよい。また、本発明において使用されるDHTAのアルカリ金属塩は、粗DHTAに、アルカリ金属水酸化物や、アルカリ金属t-ブトキシド、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属i-プロポキシドなどのアルカリ金属アルコキシドを用いて、アルカリ金属塩とすることにより得たものであってもよい。
【0015】
本発明において、粗DHTAとは、2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量が0.30質量%以上のDHTAを意味し、高純度DHTAとは、2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量が0.30質量%未満のDHTAを意味する。粗DHTAは、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応によって得られたDHTAのアルカリ金属塩をそのまま酸析することにより得ることができる。
【0016】
コルベシュミット反応において使用される反応装置としては、通常のコルベシュミット反応において使用される反応装置であればよく、例えば、撹拌機を備え、高圧反応に対応可能なオートクレーブが好適に使用できる。さらに、温度制御機能を有し、炭酸ガスや不活性ガスの導入管、温度計支持管、圧力計および排気管などを有するものがより好ましい。
【0017】
コルベシュミット反応において使用されるハイドロキノンのアルカリ金属塩としては、ハイドロキノンのリチウム塩、ハイドロキノンのナトリウム塩、ハイドロキノンのカリウム塩、ハイドロキノンのルビジウム塩、ハイドロキノンのセシウム塩などが挙げられるが、入手可能性、コストおよび反応性の点から、ハイドロキノンのナトリウム塩およびハイドロキノンのカリウム塩が好ましく、さらに反応性により優れる点から、ハイドロキノンのカリウム塩がより好ましい。
【0018】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩は、ハイドロキノンを、アルカリ金属水酸化物や、アルカリ金属t-ブトキシド、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属i-プロポキシドなどのアルカリ金属アルコキシドを用いて、アルカリ金属塩とすることにより得ることができる。特に、経済性を考慮するとハイドロキノンをアルカリ金属水酸化物を用いてアルカリ金属塩とするのが好ましい。
【0019】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応は、有機アルカリ金属塩の存在下で実施してもよい。
【0020】
有機アルカリ金属塩としては、フェノール、ナフトール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群から選択される1種以上の有機化合物のアルカリ金属塩が好適に使用でき、特に、収率に優れることから、酢酸カリウムがより好適に使用できる。
【0021】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応に用いる反応媒体は、反応温度および反応圧力において液体であり、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応に対して不活性なものである。好ましくは、反応媒体は大気圧での沸点が220℃以上のものである。
【0022】
反応媒体としては、脂肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化水素またはこれらの残基を有するエーテル化合物が好適に使用され、例えば、軽油、灯油、ガソリン、潤滑油、白油、アルキルベンゼン、アルキルナフタリン、水素化トリフェニル、ジフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、iso-オクチルアルコールなどの高沸点高級アルコールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
反応媒体の使用量は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩に対して通常0.5倍質量以上、好ましくは1.0~15.0倍質量、より好ましくは6.0~12.0倍質量であるのがよい。
【0024】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応温度は、通常150~320℃、好ましくは200~300℃、より好ましくは230~290℃である。150℃より低温では、反応が進行しない傾向があり、320℃より高温では、反応が頭打ちとなりエネルギーが損失するとともに、副反応が生じるおそれがある。
【0025】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応時の圧力は、通常0~10MPa、好ましくは0~5MPa、より好ましくは0~1MPaの二酸化炭素圧力下で行うのがよい。反応時の圧力が10MPaを超えると高圧に耐える装置が必要となるなど、工業的に有利ではない。
【0026】
反応時間は数分ないし15時間、好ましくは10分~10時間、より好ましくは20分~10時間、特に好ましくは1~5時間の間で適宜選択することができる。
【0027】
かかる反応により得られたDHTAのアルカリ金属塩、並びに粗DHTAにアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属t-ブトキシド、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシドおよびアルカリ金属i-プロポキシドなどのアルカリ金属アルコキシドを用いて得られたDHTAのアルカリ金属塩は、本発明の方法に供される。
【0028】
本発明の方法では、まず工程(A)において、DHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液に吸着体を添加し、該吸着体を該水溶液と接触させ、その後に吸着体を除去する。
【0029】
吸着体は、DHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液中に存在し得るDHTAのアルカリ金属塩以外の物質、特に2,5-ジヒドロキシ安息香酸を除去するために用いられる。
【0030】
吸着体としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、グラファイトカーボンおよびモレキュラーシーブからなる群から選択される1種以上が挙げられるが、不純物除去効果に優れる点で活性炭が好ましい。
【0031】
活性炭としては、例えば、おがくず、木質チップ、竹、ヤシ殻、石炭、もみ殻等を原料に、ガス賦活処理あるいは薬品賦活処理された、多孔質の物質が例示される。
【0032】
活性炭の形状としては、粉末状または粒状のいずれも用いることができ、細孔直径のピーク位置が1~5nmの範囲内に存在するものが好ましく用いられる。
【0033】
活性炭などの吸着体は、いずれも市販品を好適に用いることができる。ガス賦活処理炭としては、例えば、白鷺A、白鷺C、白鷺M、白鷺P(大阪ガスケミカル製)、太閤Kタイプ、太閤Pタイプ(二村化学製)、大平梅峰印、大平MA印(太平化学産業製)などが挙げられる。また、薬品賦活処理炭としては、例えば、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、特製白鷺(大阪ガスケミカル製)などが挙げられる。
【0034】
吸着体の使用量は、DHTAに対して0.1~50.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0~25.0質量%、さらに好ましくは3.0~20.0質量%である。
【0035】
DHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液と吸着体との接触時間(吸着時間)は5~150分が好ましく、10~120分がより好ましく、15~90分がさらに好ましい。
【0036】
DHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液と吸着体との接触温度(吸着温度)は50~110℃が好ましく、60~105℃がより好ましく、70~100℃がさらに好ましい。
【0037】
DHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液と吸着体とを接触させた後、濾過等の常套手段により吸着体が除去される。
【0038】
本発明の方法では、次いで工程(B)において、工程(A)で得られた水溶液を酸析し、析出した2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の結晶を分離および回収する。
【0039】
酸析に使用される酸は特に限定されないが、鉱酸が好適に用いられる。鉱酸としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸のような二元酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸のようなオキソ酸が挙げられる。また、酢酸、プロピオン酸などの有機酸などを用いることもできる。これらの中でも硫酸が特に好ましい。
【0040】
酸析に使用されるこれらの酸は、反応温度等を制御し易い点から水溶液であるものが好ましく、例えば70質量%硫酸水溶液が好適に使用される。
【0041】
これらの酸は、工程(A)で得られた水溶液のpHが好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.2~2.5、さらに好ましくは1.5~2.1になるまで滴下される。
【0042】
酸析時間は、反応装置のスケールなどにより異なるが、好ましくは10~150分、より好ましくは30~120分であるのがよい。
【0043】
酸析は、窒素やヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下に行うのが好ましい。
【0044】
酸析によって析出した結晶は、濾過等の常套手段により固液分離することにより、目的物であるDHTAの結晶として回収する。固液分離に際し、適宜溶媒を注いで結晶を洗浄するのが好ましい。固液分離の際に用いる溶媒としては、水が好ましい。
【0045】
このようにして回収されたDHTAの結晶は、再度これをDHTAのアルカリ金属塩とし、工程(A)および工程(B)を繰り返すことで、更なる高純度化を行うことができる。
【0046】
本発明によれば、不純物である2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)の含有量が0.30質量%未満である高純度のDHTAを得ることができる。2,5-ジヒドロキシ安息香酸の含有量は0.25質量%未満であることが好ましく、0.20質量%未満であることがより好ましい。
【0047】
このように、本発明は、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)の含有量が0.30質量%未満、好ましくは0.25質量%未満、より好ましくは0.20質量%未満である高純度、すなわち低2,5-ジヒドロキシ安息香酸のDHTAを提供する。
【実施例0048】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。目的物である2,5-ジヒドロキシテレフタル酸および不純物である2,5-ジヒドロキシ安息香酸は、以下の方法によって分析した。
【0049】
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)]
装置: Waters アライアンス 2690/2996
カラム型番: L-Column
液量: 1.0mL/分
溶媒比: H2O(pH2.3)/CH3CN=95/5(10分)→80/20(3.5分)→5/95(23.5分)、グラジエント分析
波長: 229nm
カラム温度: 40℃
【0050】
参考例1[2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(DHTA)のアルカリ金属塩を含む水溶液の調製]
撹拌機および温度センサーを備えた1Lの四ツ口フラスコに、ハイドロキノン99.1g(0.9モル)および酢酸117.0g(1.8モル)を仕込み、攪拌した。窒素気流下の混合液を水浴で冷却および攪拌しながら48質量%水酸化カリウム水溶液636.7g(3.6モル)を2時間かけて滴下した後、50℃で1時間保持してハイドロキノンジカリウム塩/酢酸カリウム塩水溶液を調製した。
【0051】
調製した水溶液および軽油661.6gを、窒素で置換した2Lオートクレーブに移して攪拌した。次いで混合液を窒素気流下にて攪拌しながら160℃まで昇温、軽油を294.6g追加して160℃で2時間保持した後、密閉して230℃まで昇温した。窒素を炭酸ガスに置き換えて攪拌しながら0.3MPa、230~250℃で3時間反応した。
【0052】
反応終了後100℃まで冷却し、水685.1gおよび70質量%硫酸29.6gを追加し、内容物を撹拌機および温度センサーのついた5L底抜きフラスコに移し、水2259.4gを追加して窒素気流下、90℃にて攪拌しながら30分保持し、DHTAのアルカリ金属塩を含む水層を取り出した(DHTA生成率82.5%)。
【0053】
実施例1
撹拌機および温度センサーを備えた5Lの底抜きフラスコに、参考例1の工程で得られたDHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液3442.9g(DTHAとして147.1g、0.74モル)と活性炭としてカルボラフィン(大阪ガスケミカル製粉状活性炭、細孔直径のピーク位置3nm)7.4g(DTHAに対して5.0質量%)を加え、窒素気流下にて90℃まで昇温し、同温度で攪拌しながら30分保持した。90℃でフィルターろ過することにより、不純物を除去し、ろ過液を撹拌機および温度センサーを備えた5L四ツ口フラスコへ移した。
【0054】
ろ過液を窒素気流下で90℃まで昇温し、同温度で攪拌しながら70質量%硫酸をpHが2.0になるまで90分かけて滴下し、DHTAを析出させた。得られた懸濁液を70℃まで冷却した後、固液分離し、次いで水729.7gで洗浄した。得られた結晶を100℃で12時間乾燥することにより、DHTA127.4gを得た(回収率86.4%)。
【0055】
得られたDHTAについて、HPLCにて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0056】
実施例2
吸着体を白鷺A(大阪ガスケミカル製粉状活性炭、細孔直径のピーク位置2nm)に変更した以外は実施例1と同様にしてDHTAを得た(回収率87.2%)。得られたDHTAについて、HPLCにて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
吸着体を加えないこと以外は実施例1と同様にしてDHTAを得た。得られたDHTAについて、HPLCにて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0058】
実施例3[再吸着処理]
撹拌機および温度センサーを備えた3Lの底抜きフラスコに、実施例1の工程で得られたDHTA97.5gおよび水1966.3gを仕込み、攪拌した。窒素気流下で懸濁液を90℃まで昇温し、同温度で攪拌しながら48質量%水酸化カリウム水溶液をpH6.0になるまで滴下した後、カルボラフィン(大阪ガスケミカル製粉状活性炭、細孔直径のピーク位置3nm)9.8g(DTHAに対して10.0質量%)を加え、更に同温度で30分攪拌した。90℃でフィルターろ過することにより、不純物を除去し、ろ過液を撹拌機および温度センサーを備えた3L四ツ口フラスコへ移した。
【0059】
ろ過液を窒素気流下で90℃まで昇温し、同温度で攪拌しながら70質量%硫酸をpHが2.0になるまで90分かけて滴下し、DHTAを析出させた。得られた懸濁液を70℃まで冷却した後、固液分離し、次いで水330.5gで洗浄した。得られた結晶を100℃で12時間乾燥することにより、DHTA96.5g(回収率99.0%)を得た。
【0060】
得られたDHTAについて、HPLCにて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1に示す通り、DHTAのアルカリ金属塩を含む水溶液を吸着体で処理工程を含む本発明の実施例1~2では、吸着体を使用しない比較例1と比較して高純度のDHTAが得られることが分かる。また、吸着体による処理工程を繰り返すことでさらなる高純度のDHTAが得られることが分かる(実施例3)。