IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上野製薬株式会社の特許一覧

特開2022-1821382,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182138
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/47 20060101AFI20221201BHJP
   C07C 65/05 20060101ALI20221201BHJP
   C07C 51/43 20060101ALI20221201BHJP
   C07C 51/15 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C07C51/47
C07C65/05
C07C51/43
C07C51/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089501
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼口 正基
(72)【発明者】
【氏名】芝 一休
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC47
4H006AD15
4H006AD17
4H006BB11
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC33
4H006BC35
4H006BE03
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】本発明は、アルカリ金属の含有量の少ない高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸が得られる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、水性媒体の存在下、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を90~200℃の温度下で、懸濁状態で洗浄する工程を含む、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法であって、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm以上であり、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm未満である方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体の存在下、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を90~200℃の温度下で、懸濁状態で洗浄する工程を含む、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法であって、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm以上であり、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm未満である、方法。
【請求項2】
粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素を反応させ、得られた2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を酸析することによって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性媒体は、濃度90質量%までの水溶性有機溶媒の水溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水溶性有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される1種以上である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
洗浄は、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸100質量部に対して200~2000質量部の水性媒体の存在下で行う、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
アルカリ金属はナトリウムおよび/またはカリウムである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アルカリ金属の含有量が15ppm未満である、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸。
【請求項8】
アルカリ金属はナトリウムおよび/またはカリウムである、請求項7記載の高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(以下、DHTAと称する場合もある)は、ヒドロキシ基を2個有する芳香族ジカルボン酸であり、例えばポリエステル、ポリアミド、アラミド等の合成樹脂のモノマー、蛍光剤や医薬品中間体などの原料として使用され、その需要は年々高まっている。
【0003】
従来、フェノール性水酸基を有する化合物にカルボキシル基を導入する方法としては、コルベシュミット反応が知られている。コルベシュミット反応としては、例えば、アルカリ金属のフェノキシド(フェノールのアルカリ金属塩)に高温・高圧で二酸化炭素を接触させてオルト位をカルボキシル化させ、酸による中和後にサリチル酸を得る化学反応が挙げられる。
【0004】
DHTAの製造に関しても、このコルベシュミット反応によって製造する方法が提案されており、例えば、アルカリ金属炭酸塩の存在下で二価フェノールを二酸化炭素と接触させ、アルカリ金属ギ酸塩の存在下でギ酸塩の融点より高い温度で反応させる方法(特許文献1)や、ハイドロキノンジアルカリ金属塩と二酸化炭素とを、フェノールまたはナフトールのアルカリ金属塩の存在下で反応させる方法(特許文献2)等、主に有機金属塩触媒を添加することによって、生成率が向上することが知られている。
【0005】
しかしながら、コルベシュミット反応によって製造された粗DHTAには、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属が残留するため、より高純度なものが求められる用途においては、これらを除去する精製操作が必要であった。
【0006】
DHTAの精製方法としては、コルベシュミット反応によって製造された粗DHTAをアセチル化した後、再結晶し、加水分解することで再びDHTAを得る方法(特許文献3)が提案されている。しかし、回収率が半分以下であるなど、工業的に有利な方法とは言えないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11-515031号公報
【特許文献2】特開2013-245214号公報
【特許文献3】特開昭49-11841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アルカリ金属の含有量の少ない高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸が得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の結晶を水性媒体の存在下、高温条件下で、懸濁状態で洗浄することによって、アルカリ金属の少ない高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を調製し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕水性媒体の存在下、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を90~200℃の温度下で、懸濁状態で洗浄する工程を含む、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法であって、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm以上であり、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm未満である、方法。
〔2〕粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素を反応させ、得られた2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を酸析することによって得られたものである、〔1〕に記載の方法。
〔3〕水性媒体は、濃度90質量%までの水溶性有機溶媒の水溶液である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕水溶性有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される1種以上である、〔3〕に記載の方法。
〔5〕洗浄は、粗2,5-ジヒドロキシテレフタル酸100質量部に対して200~2000質量部の水性媒体の存在下で行う、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕アルカリ金属はナトリウムおよび/またはカリウムである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕アルカリ金属の含有量が15ppm未満である、高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸。
〔8〕アルカリ金属がナトリウムおよび/またはカリウムである、〔7〕記載の高純度2,5-ジヒドロキシテレフタル酸。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルカリ金属の含有量の少ない高純度の2,5-ジヒドロキシテレフタル酸を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、単に「アルカリ金属塩」という場合は、モノアルカリ金属塩および/またはジアルカリ金属塩を意味する。
【0013】
本発明において使用される、粗DHTAを得る方法は特に限定されないが、例えば、反応媒体中で、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素とを反応させる、いわゆるコルベシュミット反応の後、得られた2,5-ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ金属塩を酸析することによって得ることができる。
【0014】
本発明において、粗DHTAとは、アルカリ金属の含有量が15ppm以上のDHTAを意味し、高純度DHTAとは、アルカリ金属の含有量が15ppm未満のDHTAを意味する。
【0015】
コルベシュミット反応において使用される反応装置としては、通常のコルベシュミット反応において使用される反応装置であればよく、例えば、撹拌機を備え、高圧反応に対応可能なオートクレーブが好適に使用できる。さらに、温度制御機能を有し、炭酸ガスや不活性ガスの導入管、温度計支持管、圧力計および排気管などを有するものがより好ましい。
【0016】
コルベシュミット反応において使用されるハイドロキノンのアルカリ金属塩としては、ハイドロキノンのリチウム塩、ハイドロキノンのナトリウム塩、ハイドロキノンのカリウム塩、ハイドロキノンのルビジウム塩、ハイドロキノンのセシウム塩が挙げられるが、入手可能性、コストおよび反応性の点から、ハイドロキノンのナトリウム塩およびハイドロキノンのカリウム塩が好ましく、さらに反応性により優れる点から、ハイドロキノンのカリウム塩がより好ましい。
【0017】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩は、ハイドロキノンを、アルカリ金属水酸化物や、アルカリ金属t-ブトキシド、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属i-プロポキシドなどのアルカリ金属アルコキシドを用いて、アルカリ金属塩とすることにより得ることができる。特に、経済性を考慮するとハイドロキノンをアルカリ金属水酸化物を用いてアルカリ金属塩とするのが好ましい。
【0018】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応に際し、有機アルカリ金属塩の存在下で反応を実施してもよい。
【0019】
有機アルカリ金属塩としては、フェノール、ナフトール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群から選択される1種以上の有機化合物のアルカリ金属塩が好適に使用でき、特に、収率に優れることから、酢酸カリウムがより好適に使用できる。
【0020】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応に用いる反応媒体は、反応温度および反応圧力において液体であり、ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応に対して不活性なものである。好ましくは、反応媒体は大気圧での沸点が220℃以上のものである。
【0021】
反応媒体としては、脂肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化水素またはこれらの残基を有するエーテル化合物が好適に使用され、例えば、軽油、灯油、ガソリン、潤滑油、白油、アルキルベンゼン、アルキルナフタリン、水素化トリフェニル、ジフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、iso-オクチルアルコールなどの高沸点高級アルコールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
反応媒体の使用量は、ハイドロキノンのアルカリ金属塩に対して0.5倍質量以上、好ましくは1~15倍質量、より好ましくは3~12倍質量であるのがよい。
【0023】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応温度は、150~320℃、好ましくは200~300℃、より好ましくは230~290℃である。150℃より低温では、反応が進行せず、320℃より高温では、反応が頭打ちとなりエネルギーが損失するとともに、副反応が生じるおそれがある。
【0024】
ハイドロキノンのアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応時の圧力は、通常0~10MPaであり、好ましくは0~5MPa、より好ましくは0~1MPaの二酸化炭素圧力下で行う。反応時の圧力が10MPaを超えると高圧に耐える装置が必要となるなど、工業的に有利ではない。
【0025】
反応時間は数分ないし15時間、好ましくは10分~10時間、より好ましくは20分~10時間、特に好ましくは1~5時間の間で適宜選択することができる。
【0026】
かかる反応により得られたDHTAのアルカリ金属塩を酸析などの常套の酸への変換手段に供することにより、本発明で使用する粗DHTAを得ることができる。
【0027】
酸析に使用される酸は特に限定されないが、鉱酸が好適に用いられる。鉱酸としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸のような二元酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸のようなオキソ酸が挙げられる。また、酢酸、プロピオン酸などの有機酸などを用いることもできる。これらの中でも硫酸が特に好ましい。
【0028】
これらの酸析に使用される酸は、反応温度等を制御し易い点から水溶液であるものが好ましく、例えば70質量%硫酸水溶液が好適に使用される。
【0029】
これらの酸は、水性媒体溶液のpHが好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.2~2.5、さらに好ましくは1.5~2.1になるまで滴下される。
【0030】
酸析時間は、反応装置のスケールなどにより異なるが、好ましくは10~150分、より好ましくは30~120分であるのがよい。
【0031】
酸析は、窒素やヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下に行うのが好ましい。
【0032】
酸析によって析出した結晶は濾過等の常套手段により固液分離し、目的物である粗DHTAを回収する。固液分離に際し、適宜溶媒を注いで結晶を洗浄するのが好ましい。固液分離の際に用いる溶媒としては、水が好ましい。
【0033】
このようにして得られた粗DHTAは精製工程に供される。
【0034】
本発明の製造方法において、精製工程は、水性媒体の存在下、粗DHTAを90~200℃の温度条件下で、懸濁状態で洗浄することによって行われる。
【0035】
精製工程における温度が90℃未満である場合、アルカリ金属の除去効果が低下する。精製工程における温度が200℃超である場合、装置内の圧力が非常に高くなり、装置の破損や破裂などを引き起こすおそれがある。
【0036】
精製工程は、密閉系で実施することが好ましい。精製工程に用いられる密閉系の装置としては、オートクレーブ等の耐熱耐圧の精製装置であることが好適であり、内部に攪拌装置を有しているものが好ましい。
【0037】
精製工程における精製装置内の圧力は、好ましくは1.5MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下である。精製装置内の圧力が1.5MPaを超えると、装置の破損や破裂などを引き起こすおそれがある。
【0038】
精製工程において、洗浄に用いる水性溶媒は、濃度90質量%までの水溶性有機溶媒の水溶液であることが好ましい。
【0039】
本発明で用いる水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。不純物除去効果に優れる点から、メタノール、イソプロパノール、アセトンおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される1種以上が好ましい。これらの水溶性有機溶媒は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
水性媒体の使用量は、粗DHTA100質量部に対して200~2000質量部であることが好ましい。水性媒体の使用量がDHTA100質量部に対して200質量部未満である場合、アルカリ金属の除去効果が低下することがある。また、水性媒体の使用量がDHTA100質量部に対して2000質量部を超える場合、過剰な水性媒体が無駄となる等、生産効率の低下を引き起こすことがある。
【0041】
精製工程における洗浄時間は、10~500分が好ましく、30~360分がより好ましい。洗浄時間が10分未満である場合、DHTAの結晶中からのアルカリ金属の除去効果が低下することがある。また、洗浄時間が500分超である場合、精製効率が頭打ちとなり、エネルギーの損失となるとともに、副生成物が生じるおそれがある。
【0042】
精製工程で得られたDHTAのスラリー(懸濁液)は、遠心分離、フィルタープレスによるろ過などの常套手段により、スラリーからDHTAが分離され回収される。回収されたDHTAの結晶は、必要により、冷水、温水などにより洗浄した後に乾燥させる。
【0043】
このようにして得られた高純度DHTAは、種々の化成品を調製するための原料として好適に用いられる。
【0044】
本発明の方法により得られた高純度DHTAに含まれるアルカリ金属の含有量は15ppm未満である。このようなアルカリ金属は、DHTAの塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などとして存在し得る。
【0045】
このように、本発明は、アルカリ金属の含有量が15ppm未満であるDHTAを提供する。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。目的物である2,5-ジヒドロキシテレフタル酸は、以下の方法によって分析した。
【0047】
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)]
装置: Waters アライアンス 2690/2996
カラム型番: L-Column
液量: 1.0mL/分
溶媒比: HO(pH2.3)/CHCN=95/5(10分)→80/20(3.5分)→5/95(23.5分)、グラジエント分析
波長: 229nm
カラム温度: 40℃
【0048】
参考例1(粗DHTAの調製)
撹拌機および温度センサーを備えた1Lの四ツ口フラスコにハイドロキノン78.2g(0.7モル)および酢酸92.4g(1.4モル)を仕込み、攪拌した。窒素気流下の混合液を水浴で冷却および攪拌しながら48質量%水酸化カリウム水溶液332.2g(2.8モル)を2時間かけて滴下した後、50℃で1時間保持してハイドロキノンジカリウム塩/酢酸カリウム塩水溶液を調製した。
【0049】
調製した水溶液および軽油529.3gを窒素で置換した2Lオートクレーブに移して攪拌した。次いで混合液を窒素気流下にて攪拌しながら160℃まで昇温した。軽油を218.9g追加して160℃で2時間保持した後、密閉して230℃まで昇温した。窒素を炭酸ガスに置き換えて攪拌しながら0.3MPa、230~250℃で3時間反応した。
【0050】
反応終了後100℃まで冷却し、水532.9gおよび70%硫酸23.2gを追加し、内容物を撹拌機および温度センサーのついた5L底抜きフラスコに移し、水1896.4gを追加して窒素気流下、90℃にて攪拌しながら30分保持し、水層を取り出した。水層を撹拌機および温度センサーのついた5L底抜きフラスコに移し、活性炭5.5gを追加し、窒素気流下、90℃で30分攪拌した後、フィルターろ過にて不溶分を除去した。ろ過液を窒素気流下で90℃まで加熱昇温し、同温度で攪拌しながら70質量%硫酸をpHが2.0になるまで90分かけて滴下し、粗DHTAを析出させた。得られた懸濁液を70℃まで冷却した後、固液分離し、次いで水493.2gで洗浄した。得られた粗結晶を100℃で12時間乾燥することにより、粗DHTA108.5gを得た。
【0051】
得られた粗DHTAについて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および結晶誘導結合プラズマ(ICP)発光光分析にて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例1
1Lオートクレーブに参考例1で得られた粗DHTA100.0gと50質量%メタノール水500.9gを加えた後、窒素置換を行い、懸濁状態で攪拌しながら100℃まで加熱し、同温度で1時間保持した。懸濁液を30℃まで冷却した後、固液分離し、次いで水301.2gで洗浄した。得られたDHTAを100℃で12時間乾燥し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および結晶誘導結合プラズマ(ICP)発光光分析にて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例2~5、比較例1~3
表1に記す精製条件に変更した以外は実施例1と同様にしてDHTAを得た。得られたDHTAを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および結晶誘導結合プラズマ(ICP)発光光分析にて定量分析を行った。結果を表1に示す。
【0054】
表1に示す通り、水性媒体で粗DHTAを懸濁洗浄する際、90~200℃の温度下で実施する本発明の実施例1~5は、比較例1~3と比較してアルカリ金属の含有量を有意に低下させることができる。
【表1】