(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182148
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】引出箱および引出箱展開体セット
(51)【国際特許分類】
B65D 5/38 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B65D5/38 C
B65D5/38 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089521
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106715
【氏名又は名称】ザ・パック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真菜
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB02
3E060BA23
3E060BB01
3E060BB02
3E060BC04
3E060DA17
3E060DA30
3E060EA06
(57)【要約】
【課題】身箱を引き出したり、押し込んだりする動きに連動して蓋が開閉する、意匠性および意外性に優れた引出箱を提供する。
【解決手段】外箱120の蓋125は、前壁部125aおよび一対の耳部125ba,125bbを備え、前壁部125aと天壁123との共有辺123Eにおいて、前壁部125aと天壁123とのなす角度は可変であり、身箱130の身箱側壁132a,132bは、身箱側壁132a,132bの立ち上がり方向の端部において、当該立ち上がり方向に向けた開口を有するスリット132Sa,132Sbを備え、身箱130の少なくとも一部は、一対の耳部125ba,125bbがスリット132Sa,132Sbに挿し込まれた状態で、筒体120t内をスライドすることで、外箱120への出し入れが可能となっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と、該外箱に少なくとも一部が出し入れ可能な身箱と、を備え、
前記外箱は、前記身箱が出し入れされる筒体と、蓋と、を備え、
前記筒体は、外箱底壁と、該外箱底壁の対向する2辺のそれぞれから立ち上がる第1および第2の外箱側壁と、前記外箱底壁に対向する天壁と、を備える四角筒状であり、
前記蓋は、前記筒体の一方の端部において前記天壁に連なる前壁部と、該前壁部に連なる一対の耳部と、を備え、前記前壁部は、前記天壁と共有する共有辺、ならびに、前記共有辺と直交し互いに対向する一対の側辺を有し、前記共有辺において、前記前壁部と前記天壁とのなす角度は可変となっており、前記一対の耳部は、前記一対の側辺からそれぞれ連なり、前記前壁部における前記天壁の内周面に連なる面の側に近づく方向に向きを変えつつ互いに対向しており、
前記身箱は、矩形状の身箱底壁と、第1および第2の身箱側壁と、を備え、
前記第1および第2の身箱側壁のそれぞれは、前記身箱底壁の対向する一対の辺から立ち上がり互いに対向しており、
前記第1および第2の身箱側壁には、それぞれの立ち上がり方向の端部において、当該立ち上がり方向に向けた開口を有するスリットを備え、
前記身箱の少なくとも一部は、前記一対の耳部が前記スリットに挿し込まれた状態で、前記筒体内をスライドすることで、前記外箱への出し入れが可能となっている、引出箱。
【請求項2】
前記一対の耳部は、前記共有辺と共有する共有点を中心とし、前記身箱底壁と前記天壁との間の距離に等しい半径を有する扇形であるか、当該扇形からその一部を切り取った形状である、請求項1に記載の引出箱。
【請求項3】
前記身箱は、前記身箱底壁の、引出方向における端部の辺から立ち上がる前壁を備え、前記前壁の立ち上がり方向における高さは、前記第1および第2の外箱側壁の立ち上がり方向における高さよりも低い、請求項1または2に記載の引出箱。
【請求項4】
請求項3に記載の引出箱を作製するための展開体セットであって、
前記外箱を作製するための外箱展開体と、前記身箱を作製するための身箱展開体と、を有し、
前記外箱展開体は、一枚のシートが折りたたまれて平らに形成されており、前記天壁、前記第2の外箱側壁、前記前壁部、および前記一対の耳部が同一平面をなし、前記筒体は、前記第1の外箱側壁と前記天壁とが共有する辺および前記外箱底壁と前記第2の外箱側壁とが共有する辺を折り目として折りたたまれることで、前記第1の外箱側壁が前記天壁と面接触し、かつ、前記外箱底壁が前記第2の外箱側壁と面接触しており、
前記身箱展開体は、一枚のシートが折りたたまれて平らに形成されており、前記第1の身箱側壁を形成するための第1の板部と、前記第2の身箱側壁を形成するための第2の板部と、を備え、前記第1の板部および前記前壁が同一平面をなし、前記第2の板部と前記前壁とが共有する辺を折り目として折りたたまれることで、前記第2の板部が前記前壁と面接触しており、前記第1の板部、前記第2の板部、および前記前壁から選択される少なくとも1つは、前記身箱底壁の少なくとも一部を形成するための板部と接続されており、
前記第1および第2の板部には、孔部または切込みが形成されており、前記引出箱を作製する際、前記孔部または切込みを通過する直線を折り目として折りたたまれることで、前記スリットが形成される、展開体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出箱および引出箱展開体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
箱は、物の収納または包装等に用いるための容器であり、用途に応じて様々な形態のものがある。スリーブ箱等の引出箱は、筒体を有する外箱と、外箱に対して摺動可能に挿入され、上部が開放された身箱とを有する箱であり、身箱をスライド式に引き出すことで内容物を出し入れすることができる。引出箱には、外箱と身箱との間の相互作用により、身箱の引き出す動きに連動して付加機能を発揮するものが知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-151153号公報
【特許文献2】特開2016-188110号公報
【特許文献3】特開2020-50440号公報
【特許文献4】実公昭49-17064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、身箱を引き出す動きに連動して箱としての外観が変化する引出箱はほとんど知られていない。特許文献4に開示された電動鉛筆削り機の収納ケースは、外箱の後方開口から内箱(身箱)を押すことによって蓋が上方に回動するものであるが、蓋の動作のために収納ケースの上方に十分な空間を必要とするため、引出箱としての応用可能性は限定的である。
本発明は、身箱を引き出したり、押し込んだりする動きに連動して蓋が開閉する、意匠性および意外性に優れた引出箱、および前記引出箱を作製するための展開体セットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の引出箱は、外箱と、該外箱に少なくとも一部が出し入れ可能な身箱と、を備え、前記外箱は、前記身箱が出し入れされる筒体と、蓋と、を備え、前記筒体は、外箱底壁と、該外箱底壁の対向する2辺のそれぞれから立ち上がる第1および第2の外箱側壁と、前記外箱底壁に対向する天壁と、を備える四角筒状であり、前記蓋は、前記筒体の一方の端部において前記天壁に連なる前壁部と、該前壁部に連なる一対の耳部と、を備え、前記前壁部は、前記天壁と共有する共有辺、ならびに、前記共有辺と直交し互いに対向する一対の側辺を有し、前記共有辺において、前記前壁部と前記天壁とのなす角度は可変となっており、前記一対の耳部は、前記一対の側辺からそれぞれ連なり、前記前壁部における前記天壁の内周面に連なる面の側に近づく方向に向きを変えつつ互いに対向しており、前記身箱は、矩形状の身箱底壁と、第1および第2の身箱側壁と、を備え、前記第1および第2の身箱側壁のそれぞれは、前記身箱底壁の対向する一対の辺から立ち上がり互いに対向しており、前記第1および第2の身箱側壁には、それぞれの立ち上がり方向の端部において、当該立ち上がり方向に向けた開口を有するスリットを備え、前記身箱の少なくとも一部は、前記一対の耳部が前記スリットに挿し込まれた状態で、前記筒体内をスライドすることで、前記外箱への出し入れが可能となっている。
【0006】
前記引出箱において、前記一対の耳部は、前記共有辺と共有する共有点を中心とし、前記身箱底壁と前記天壁との間の距離に等しい半径を有する扇形であるか、当該扇形からその一部を切り取った形状であってもよい。
【0007】
前記引出箱において、前記身箱は、前記身箱底壁の、引出方向における端部の辺から立ち上がる前壁を備えていてもよく、前記前壁の立ち上がり方向における高さは、前記第1および第2の外箱側壁の立ち上がり方向における高さよりも低くてもよい。
【0008】
本発明の引出箱の展開体セットは、前記外箱を作製するための外箱展開体と、前記身箱を作製するための身箱展開体と、を有し、前記外箱展開体は、一枚のシートが折りたたまれて平らに形成されており、前記天壁、前記第2の外箱側壁、前記前壁部、および前記一対の耳部が同一平面をなし、前記筒体は、前記第1の外箱側壁と前記天壁とが共有する辺および前記外箱底壁と前記第2の外箱側壁とが共有する辺を折り目として折りたたまれることで、前記第1の外箱側壁が前記天壁と面接触し、かつ、前記外箱底壁が前記第2の外箱側壁と面接触しており、前記身箱展開体は、一枚のシートが折りたたまれて平らに形成されており、前記第1の身箱側壁を形成するための第1の板部と、前記第2の身箱側壁を形成するための第2の板部と、を備え、前記第1の板部および前記前壁が同一平面をなし、前記第2の板部と前記前壁とが共有する辺を折り目として折りたたまれることで、前記第2の板部が前記前壁と面接触しており、前記第1の板部、前記第2の板部、および前記前壁から選択される少なくとも1つは、前記身箱底壁の少なくとも一部を形成するための板部と接続されており、前記第1および第2の板部には、孔部または切込みが形成されており、前記引出箱を作製する際、前記孔部または切込みを通過する直線を折り目として折りたたまれることで、前記スリットが形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、身箱を引き出したり、押し込んだりする動きに連動して蓋が開閉する、意匠性および意外性に優れた引出箱、および前記引出箱を作製するための展開体セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる引出箱の、(A)身箱を引き出す前の状態および(B)身箱を引き出した状態における斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態にかかる引出箱の、蓋の開閉機構を示す拡大斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態にかかる引出箱の、(A)外箱および(B)身箱の斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態にかかる引出箱の、(A)外箱展開体および(B)身箱展開体の平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態にかかる引出箱の、(A)外箱展開体を作製するためのシートおよび(B)身箱展開体を作製するためのシートを示す平面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態にかかる引出箱の、(A)身箱を引き出す前の状態および(B)身箱を引き出した状態における斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態にかかる引出箱の、(A)外箱および(B)身箱の斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態にかかる引出箱の、(A)外箱を作製するためのシートおよび(B)身箱を作製するためのシートを示す平面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態にかかる引出箱の、身箱展開体を作製するためのシートの2つの変形例((A)および(B))を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、便宜上、外箱の底壁から天壁へ向かう方向を上方とし、その逆方向を下方とする。また、身箱を引き出す際の身箱の移動方向(引出方向)を前方Xとし、その逆方向(収納方向)を後方Yとする。この引出方向と収納方向を合わせて、「スライド方向XY」とも称する。典型的な使用方法において、上方および下方は、それぞれ鉛直方向上方および鉛直方向下方に対応する。
【0012】
[第1実施形態]
(引出箱)
以下、本発明の第1実施形態にかかる引出箱100について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、引出箱100の、(A)身箱130を引き出す前の状態および(B)身箱130を引き出した状態における斜視図である。
図2は、引出箱100の、蓋125の開閉機構を示す拡大斜視図である。
図3は、引出箱100の、(A)外箱120および(B)身箱130の斜視図である。
【0013】
引出箱100は、外箱120および身箱130を有する。身箱130は、外箱120にそのほとんどが出し入れ可能となっている。外箱120および身箱130は、それぞれ、一枚の紙を折り曲げ、一部を糊等で貼り合わせることにより組み立てられている。
図1に示すように、組み立てられた状態において、身箱130のほとんどが、外箱120の後述する筒体120tに挿入されて、外箱120に収容されている。典型的な使用方法において、引出箱100は、身箱130において内容物(図示せず)を収容する。身箱130を外箱120からスライド式に前方X側へ引き出すことで、内容物が露出して取り出し可能となる。
【0014】
外箱120は、筒体120tおよび蓋125を有する。筒体120tは、身箱130が出し入れされるものである。
図3に示すように、筒体120tは、矩形状の底壁121(以下、「外箱底壁121」と称する)、矩形状の第1の側壁122a(以下、「外箱側壁122a」と称する)、矩形状の第2の側壁122b(以下、「外箱側壁122b」と称する)および矩形状の天壁123を有する。筒体120tは、全体として四角筒状となっている。
【0015】
図1~
図3には図示されていないが、外箱120は、筒体120tの後方Y側の開口部全体を閉塞する後壁124(以下、「外箱後壁124」と称する)を有する。なお、外箱後壁124は筒体120tの後方Y側の開口部の一部を閉塞するのみでもよく、外箱120は、外箱後壁124を有しなくてもよい。
【0016】
外箱側壁122a,122bは、外箱底壁121における、スライド方向XYに延在する、対向する2辺のそれぞれから立ち上がっている。天壁123は、外箱側壁122a,122bにおける、外箱底壁121と共有する辺に対向する辺に接続されている。外箱側壁122a,122bは、その輪郭が同一形状および同一寸法であり、かつ互いに対向している。また、外箱底壁121と天壁123はその輪郭が同一形状および同一寸法であり、かつ互いに対向している。外箱後壁124は矩形状であり、外箱底壁121、外箱側壁122a,122bおよび天壁123のそれぞれの後方Y側の一辺と辺を共有している。
【0017】
蓋125は、前壁部125aおよび一対の耳部(耳部125ba,125bb)を有する。前壁部125aは略矩形状であり、筒体120tの一方の端部(前方X側の端部)において天壁123に連なっている。前壁部125aは、天壁123が外箱側壁122a,122bと共有するそれぞれの辺と直交する辺であって前方X側の辺(以下、「共有辺123E」と称する)において天壁123に接続されている。すなわち、天壁123および前壁部125aは、共有辺123Eを共有する。筒体120tを固定した状態において、蓋125は共有辺123E周りに旋回可能となっている。したがって、共有辺123Eにおいて、前壁部125aと天壁123とのなす角度は可変となっている。
【0018】
前壁部125aは、共有辺123Eと直交(または略直交)し、互いに対向する一対の側辺125Ea,125Ebを有する。耳部125ba,125bbは、前壁部125aに連なっている。耳部125ba,125bbは、側辺125Ea,125Ebからそれぞれ連なり、前壁部125aにおける天壁123の内周面123’に連なる面125a’の側に近づく方向に折り曲げられて(向きを変えつつ)互いに対向している。
【0019】
耳部125ba,125bbは、それぞれ共有辺123Eと共有する点(それぞれ「共有点125Pa」「共有点125Pb」と称する)を有する。共有点125Paまたは共有点125Pbを中心とし、天壁123と後述する身箱底壁131との間の距離に等しい半径を有する、中心角90°の扇形を想定すると、耳部125ba,125bbの形状は、当該扇形の円弧の一部を残しつつ、当該扇形から一部を切り取った形状となっている。具体的には、耳部125ba,125bbは、前壁部125aの近傍において共有点125Pa,125Pbに向けて切り欠かれた凹部を有するよう、当該扇形の一部を切り取った形状となっている。
【0020】
なお、耳部125ba,125bbの形状は、当該扇形の円弧の一部を残さずに、当該扇形から一部を切り取った形状(すなわち、例えば、端部が直線または曲線であるものや、端部が直線および/または曲線が連なったものである形状など、端部が元の扇形の円弧を有しない形状)であってもよい。また、耳部125ba,125bbの形状は、当該扇形と等しい形状であってもよい。すなわち、耳部125ba,125bbの形状は、本発明の効果を奏する範囲において、当該扇形の範囲に含まれ、当該扇形と等しいかそれよりも小さい形状(耳部125ba,125bbを、後述するスリット132Sa,132Sbにそれぞれ挿し込むことが可能な形状)であればよい。
【0021】
身箱130は、底壁131(以下、「身箱底壁131」と称する)、第1の側壁132a(以下、「身箱側壁132a」と称する)、第2の側壁132b(以下、「身箱側壁132b」と称する)、後壁134(以下、「身箱後壁134」と称する)および前壁135を有する。
【0022】
身箱側壁132a,132bは、前方X側および後方Y側の辺が平行で、かつそれぞれが下方の辺と直交している直角台形状であり、矩形状の身箱底壁131における、スライド方向XYに延在する、対向する一対の辺からそれぞれ立ち上がっている。身箱側壁132a,132bはその輪郭が同一形状および同一寸法であり、かつ互いに対向している。
【0023】
前壁135は矩形状であり、身箱底壁131の前方X側の端部の辺から立ち上がっている。前壁135の三辺は、身箱底壁131および身箱側壁132a,132bのそれぞれの前方X側の一辺と辺を共有している。前壁135の立ち上がり方向(上下方向)における高さは、外箱120の外箱側壁122a,122bの立ち上がり方向(上下方向)における高さよりも低くなっている。
【0024】
身箱後壁134は矩形状であり、身箱底壁131の後方Y側の端部の辺から立ち上がっている。身箱後壁134の三辺は、身箱底壁131および身箱側壁132a,132bのそれぞれの後方Y側の一辺と辺を共有している。身箱後壁134は、前壁135と対向している。
【0025】
身箱側壁132a,132bは、上方の端部、すなわち、立ち上がり方向の端部の少なくとも一部において二重壁構造となっており、それぞれ当該立ち上がり方向(上方)に向けた開口を有するスリット132Sa,132Sbを備える。本実施形態においては、台形状である身箱側壁132a,132bの、前方X側および後方Y側の辺のそれぞれの上方の端部の点同士を結ぶ斜辺において、両端付近を除く部分に、上方に向けた開口を有するスリット132Sa,132Sbがそれぞれ設けられている。
【0026】
上述した通り、組み立てられた状態において、身箱130のほとんどが、外箱120の筒体120tに挿入されることにより、外箱120に対しスライド方向XYに摺動可能に収容されている。この際、身箱底壁131の下方の面(外周面)は、外箱底壁121の上方の面(内周面)と対向している。また、身箱側壁132a,132bの外周面は、それぞれ外箱側壁122a,122bの内周面と対向している。
【0027】
図1および
図2に示すように、身箱130のほとんどが、耳部125ba,125bbがスリット132Sa,132Sbにそれぞれ挿し込まれた状態で、筒体120t内をスライドすることで、外箱120への出し入れが可能となっている。
図1(A)に示すように、身箱130を引き出す前の状態においては、外箱120の蓋125と、身箱130の前壁135により、引出箱100の前方X側の開口部は閉塞されている。
【0028】
身箱130を外箱120から前方X側に引き出すと、(1)耳部125ba,125bbがスリット132Sa,132Sbのそれぞれの後方Yの端部により前方X側へ押される作用、(2)耳部125ba,125bbと、スリット132Sa,132Sbを構成するそれぞれの二重壁構造との間の摩擦力による作用、および(3)耳部125ba,125bbの下方の端部(身箱底壁131と接触する端部)と、身箱底壁131との間の摩擦力による作用、のうち少なくとも1つの作用により、外箱120の蓋125が共有辺123E周りに上方かつ前方X側に旋回し、引出箱100は前方X側が開口する。
【0029】
反対に、身箱130を外箱120から引き出した状態から、身箱130を外箱120に後方Y側に押し込むと、外箱120の蓋125が共有辺123E周りに下方かつ後方Y側に旋回し、引出箱100の前方X側の開口部は閉塞される。すなわち、引出箱100は、身箱130を引き出す動き、および押し込む動きに連動して蓋125が開閉する。当該開閉動作は意匠性および意外性に優れるものであり、例えば引出箱100に動物やキャラクターを模した装飾を施した場合、その口の動きに見立てることができる。また、身箱130が外箱120から引き出されるにつれて、内容物が徐々に視認可能となることから、演出効果も付与することができる。
【0030】
また、引出箱100は、蓋125により前方X側の開口部の上部を閉塞する構造であるため、上述した通り、前壁135の立ち上がり方向(上下方向)における高さを、外箱120の外箱側壁122a,122bの立ち上がり方向(上下方向)における高さよりも低くすることができる。また、身箱側壁132a,132bの前方X側における立ち上がり方向(上下方向)の高さも、前壁135に合わせて低くすることができる。これにより、身箱130を引き出した状態において、前壁135および身箱側壁132a,132bが邪魔にならず、従来の引出箱よりも、前方Xおよび側方からの内容物の取り出しが容易となる。これは、引出箱100が高い位置に設置されている場合や、引出箱100の開口部の上方に障害物が存在する場合などにおいて特に有利である。
【0031】
さらに、引出箱100は、身箱130を外箱120から引き出した状態においても、蓋125が身箱130の上方をカバーするため、身箱130の内部への塵埃の侵入を抑制することができる。
【0032】
加えて、引出箱100が菓子や玩具等の商品の包装容器として商品と一体に販売された場合、消費者は、内容物である商品を全て引出箱100から取り出した後においても、引出箱100そのものを玩具として遊ぶことができる。また、意匠性および意外性に優れた小物入れや靴箱等として再利用することも可能である。
【0033】
(展開体セット)
次に、本発明の第1実施形態にかかる引出箱100を作製するための展開体セット(外箱120を作製するための外箱展開体120’および身箱130を作製するための身箱展開体130’)について、
図4および
図5を参照して説明する。
【0034】
図4は、引出箱100の、(A)外箱展開体120’および(B)身箱展開体130’の平面図である。
図5は、引出箱100の、(A)外箱展開体120’を作製するためのシート120”(以下、単に「外箱シート120”」と称する)および(B)身箱展開体130’を作製するためのシート130”(以下、単に「身箱シート130”」と称する)を示す平面図である。
【0035】
なお、外箱展開体120’、身箱展開体130’、外箱シート120”および身箱シート130”の説明において、便宜上、作製後の引出箱100の対応する各部分の名称および符号をそのまま用いることがある。例えば、作製後の引出箱100において外箱側壁122aを構成する、外箱展開体120’および外箱シート120”における対応部分は、そのまま「外箱側壁122a」と称する。
【0036】
外箱展開体120’は、一枚の紙からなるシート(外箱シート120”)が折りたたまれて平らに形成されており、天壁123、外箱側壁122b、外箱後壁124、前壁部125a、および耳部125ba,125bbが同一平面をなしている。筒体120tは、外箱側壁122aと天壁123とが共有する辺(以下、「共有辺122a-123」とも称する)および外箱底壁121と外箱側壁122bとが共有する辺(以下、「共有辺121-122b」とも称する)を折り目として折りたたまれることで、外箱側壁122aが天壁123と面接触し、かつ、外箱底壁121が外箱側壁122bと面接触している。
【0037】
外箱側壁122aには、引出箱100の状態で後方Y側となる端部において、外箱側壁122aと辺を共有する略矩形状の板片122saが接続されている。同様に、外箱側壁122bには、引出箱100の状態で後方Y側となる端部において、外箱側壁122bと辺を共有する略矩形状の板片122sbが接続されている。
【0038】
板片122saおよび板片122sbは同一形状および同一寸法である。板片122sa,122sbの、それぞれ外箱側壁122a,122bから離れる方向の長さは、外箱底壁121の幅(外箱側壁122a,122bと共有しない辺の長さ)よりも短い。
【0039】
外箱展開体120’および外箱シート120”の状態においては、外箱側壁122aと板片122saは同一平面をなし、かつ、外箱側壁122bと板片122sbは同一平面をなしている。なお、外箱120が外箱後壁124を有しない場合、板片122saおよび板片122sbは存在しなくてよい。
【0040】
外箱展開体120’および外箱シート120”の状態において、外箱後壁124は、天壁123と辺を共有している。外箱後壁124には、天壁123との共有辺と対向する辺において、外箱後壁124と辺を共有する板片124sが接続されている。なお、外箱展開体120’および外箱シート120”の状態において、外箱後壁124は、天壁123の代わりに外箱底壁121と辺を共有していてもよく、その場合、外箱後壁124には、外箱底壁121との共有辺と対向する辺において、外箱後壁124と辺を共有する板片124sが接続されている。
【0041】
外箱底壁121には、外箱側壁122aと共有する辺に対向する辺において、外箱底壁121と辺を共有する板片121sが接続されている。外箱シート120”において、
(1)共有辺122a-123を折り目として紙面上面から見て谷折りに折りたたみ、
(2)外箱底壁121の左側の辺(共有辺121-121s)と外箱側壁122bの右側の辺とが重なるように重ね合わせ、
(3)共有辺121-121sを折り目として紙面上面から見て谷折りに折り込んで、板片121sを外箱側壁122bに糊等により貼り合わせる、
ことにより、外箱展開体120’を作製することができる。
【0042】
外箱展開体120’は、
(1)外箱底壁121、外箱側壁122a,122bおよび天壁123が、四角筒状の筒体120tを形成するように引き起こされ、
(2)板片122sa,122sbが、筒体120tの内側方向に立ち上がるように、それぞれ外箱側壁122a,122bとの共有辺を折り目として筒体120tの外側から見て山折りに折り曲げられ、
(3)外箱後壁124が、筒体120tの内側方向に立ち上がるように、天壁123との共有辺を折り目として紙面上面から見て谷折りに折り曲げられ、
(4)板片124sが、外箱後壁124との共有辺を折り目として紙面上面から見て谷折りに折り曲げられた後、筒体120tの内側(外箱底壁121および板片122sa,122sbから形成されるスリット)に差し込んで固定され、
(5)耳部125ba,125bbが、引出箱100の状態で下方となる方向に立ち上がるように、前壁部125aとの共有辺を折り目として紙面上面から見て谷折りに折り曲げられる、
ことにより、外箱120となる。
【0043】
身箱展開体130’は、一枚の紙からなるシート(身箱シート130”)が折りたたまれて平らに形成されており、身箱側壁132aを形成するための第1の板部132A、および身箱側壁132bを形成するための第2の板部132Bを有する。第1の板部132Aおよび前壁135は同一平面をなしている。第2の板部132Bと前壁135とが共有する辺(以下、「共有辺132B-135」とも称する)および第1の板部132Aと身箱後壁134とが共有する辺(以下、「共有辺132A-134」とも称する)を折り目として折りたたまれることで、第2の板部132Bが前壁135と面接触し、かつ、身箱後壁134が第1の板部132Aと面接触している。
【0044】
第1の板部132Aは矩形状であり、引出箱100の状態における後方Y側かつ上方の頂点と、前壁135と第1の板部132Aとの共有辺の、引出箱100の状態における上方の頂点とを結ぶ直線上において、両端付近を除く部分に、直線状の切込み132SAが形成されている。第1の板部132Aは、前記直線を境界として、下方に存在する第1の外側形成部132A1と、上方に存在する第1の内側形成部132A2とに分けられる。
【0045】
同様に、第2の板部132Bは矩形状であり、引出箱100の状態における後方Y側かつ上方の頂点と、共有辺132B-135の、引出箱100の状態における上方の頂点とを結ぶ直線上において、両端付近を除く部分に、直線状の切込み132SBが形成されている。第2の板部132Bは、前記直線を境界として、下方に存在する第2の外側形成部132B1と、上方に存在する第2の内側形成部132B2とに分けられる。
【0046】
第1の内側形成部132A2および第2の内側形成部132B2の、前方X側かつ上方の頂点付近にはそれぞれ折り目が設けられており、折り目によって分けられた三角形状の領域である、領域132A3および領域132B3をそれぞれ有する。
【0047】
前壁135は、引出箱100の状態で上方となる端部において、前壁135と辺を共有する矩形状の板片135s1が接続されている。さらに、板片135s1は、前壁135との共有辺に対向する辺において、板片135s1と辺を共有する矩形状の板片135s2が接続されている。前壁135と板片135s1は同一形状および同一寸法である。また、前壁135、板片135s1および板片135s2を合わせると、身箱後壁134と同一形状および同一寸法となる。板片135s1および板片135s2と、第1の板部132Aおよび第2の板部132Bとの間の境界線は切り離されている。
【0048】
身箱シート130”の状態において、身箱後壁134は、第1の板部132Aと辺(共有辺132A-134)を共有している。第2の板部132Bは、共有辺132B-135と対向する辺において、第2の板部132Bと辺を共有する略矩形状の板片132Bsが接続されている。
【0049】
身箱後壁134、前壁135、第1の板部132Aおよび第2の板部132Bは、引出箱100の状態における下方の端部の辺に、それぞれと辺を共有する板部134s、板部135s、板部131aおよび板部131bが接続されている。板部134sおよび板部135sは同一形状および同一寸法であり、それぞれ身箱後壁134および前壁135との共有辺を底辺(長辺)とする略台形状となっている。
【0050】
板部131aおよび板部131bは同一形状および同一寸法の略矩形状であり、それぞれ第1の板部132Aおよび第2の板部132Bとの共有辺と対向する端部において、それぞれ切欠き131ak,131bkが形成されている。板部131aの板部134s付近、および板部131bの板部135s付近には斜めに折り目が設けられており、折り目によって分けられた略三角形状の領域である、領域131as,131bsをそれぞれ有する。
【0051】
身箱シート130”において、
(1)身箱後壁134と板部134sとが共有する辺、前壁135と板部135sとが共有する辺、第1の板部132Aと板部131aとが共有する辺、および、第2の板部132Bと板部131bとが共有する辺を折り目として、板部134s、板部135s、板部131aおよび板部131bを紙面上面から見て山折りに折りたたみ、
(2)共有辺132A-134、および、共有辺132B-135を折り目として紙面上面から見て山折りに折りたたみ、
(3)板片132Bsと身箱後壁134との重なり部分を糊等により貼り合わせ、
(4)いわゆるワンタッチ底となるよう、領域131asと板部134s、および、領域131bsと板部135sとをそれぞれ糊等により貼り合わせる、
ことにより、身箱展開体130’を作製することができる。
【0052】
身箱展開体130’は、
(1)第1の板部132A、第2の板部132B、身箱後壁134および前壁135が四角筒状をなすように引き起こされ、
(2)板部134s、板部135sおよび板部131a,131bが自動的に引き起こされ、切欠き131akおよび切欠き131bkが係合することにより一体化することで身箱底壁131が形成され、
(3)第1の板部132Aおよび第2の板部132Bが、それぞれ直線状の切込み132SA,132SBの延長線を折り目として四角筒の内側に折りたたまれるとともに、身箱底壁131と干渉する部分である領域132A3,132B3が身箱底壁131に沿って(引出箱100における上方から見て谷折りに)折り曲げられ、
(4)前壁135と板片135s1との共有辺において、板片135s1が四角筒の内側に折りたたまれるとともに、身箱底壁131と干渉する部分である板片135s2が身箱底壁131に沿って(引出箱100における上方から見て谷折りに)折り曲げられる、
ことにより、身箱130となる。
【0053】
なお、第1の板部132Aおよび第2の板部132Bが、それぞれ直線状の切込み132SA,132SBの延長線(直線状の切込み132SA,132SBを通過する直線)を折り目として四角筒の内側に折りたたまれることにより、スリット132Sa,132Sbが形成される。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態にかかる引出箱200について、
図6~
図8を参照して説明する。
図6は、引出箱200の、(A)身箱230を引き出す前の状態および(B)身箱230を引き出した状態における斜視図である。
図7は、引出箱200の、(A)外箱220および(B)身箱230の斜視図である。
図8は、引出箱200の、(A)外箱220を作製するためのシート220”(以下、単に「外箱シート220”」と称する)および(B)身箱230を作製するためのシート230”(以下、単に「身箱シート230”」と称する)を示す平面図である。
【0055】
引出箱200は、外箱220および身箱230を有する。身箱230は、外箱220にそのほぼ全体が出し入れ可能となっている。外箱220および身箱230は、それぞれ、一枚の段ボールからなる外箱シート220”および一枚の段ボールからなる身箱シート230”を折り曲げることにより組み立てられている。
図6に示すように、組み立てられた状態において、身箱230のほぼ全体が、外箱220の後述する筒体220tに挿入されて、外箱220に収容されている。典型的な使用方法において、引出箱200は、身箱230において内容物(図示せず)を収容する。身箱230を外箱220からスライド式に前方X側へ引き出すことで、内容物が露出して取り出し可能となる。
【0056】
外箱220は、筒体220tおよび蓋225を有する。筒体220tは、身箱230が出し入れされるものである。
図7に示すように、筒体220tは、矩形状の底壁221(以下、「外箱底壁221」と称する)、矩形状の第1の側壁222a(以下、「外箱側壁222a」と称する)、矩形状の第2の側壁222b(以下、「外箱側壁222b」と称する)および矩形状の天壁223を有する。筒体220tの構成は、第1実施形態における筒体120tの構成と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0057】
蓋225は、前壁部225aおよび一対の耳部(耳部225ba,225bb)を有する。蓋225の構成は、第1実施形態における蓋125の構成と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0058】
身箱230は、底壁231(以下、「身箱底壁231」と称する)、第1の側壁232a(以下、「身箱側壁232a」と称する)、第2の側壁232b(以下、「身箱側壁232b」と称する)、後壁234(以下、「身箱後壁234」と称する)および前壁235を有する。
【0059】
身箱側壁232a,232bは、前方X側および後方Y側の辺が平行で、かつそれぞれが下方の辺と直交している直角台形において、前方X側および後方Y側の辺のそれぞれの上方の端部の点同士を結ぶ斜辺の、両端付近を除く部分が円弧状に切り取られた形状であり、矩形状の身箱底壁231の対向する一対の辺からそれぞれ立ち上がっている。身箱側壁232aと身箱側壁232bはその輪郭が同一形状および同一寸法であり、かつ互いに対向している。
【0060】
前壁235は矩形状であり、身箱底壁231の前方X側の端部の辺から立ち上がっている。前壁235の三辺は、身箱底壁231および身箱側壁232a,232bのそれぞれの前方X側の一辺と辺を共有している。前壁235の立ち上がり方向(上下方向)における高さは、外箱220の外箱側壁222a,222bの立ち上がり方向(上下方向)における高さよりも低くなっている。前壁235の中心には、円形の孔部235hが設けられている。なお、孔部235hは円形に限らず、例えば楕円形、方形等の他の形状であってもよい。また、孔部235hは存在しなくてもよい。
【0061】
身箱後壁234は矩形状であり、身箱底壁231の後方Y側の端部の辺から立ち上がっている。身箱後壁234の三辺は、身箱底壁231および身箱側壁232a,232bのそれぞれの後方Y側の一辺と辺を共有している。身箱後壁234は、前壁235と対向している。
【0062】
身箱側壁232a,232bは、折り重ねられた段ボールが重なった二重壁構造となっており、それぞれ立ち上がり方向(上方)に向けた開口を有するスリット232Sa,232Sbを備える。本実施形態においては、略直角台形状である身箱側壁232a、232bの、前方X側および後方Y側の辺のそれぞれの上方の端部の点同士を結ぶ斜辺において、円弧状に切り取られた部分に、上方に向けた開口を有するスリット232Sa,232Sbがそれぞれ設けられている。
【0063】
上述した通り、組み立てられた状態において、身箱230のほぼ全体が、外箱220の筒体220tに挿入されることにより、外箱220に対しスライド方向XYに摺動可能に収容されている。この際、身箱底壁231の下方の面(外周面)は、外箱底壁221の上方の面(内周面)と対向している。また、身箱側壁232a,232bの外周面は、外箱側壁222a,222bの内周面とそれぞれ対向している。
【0064】
図6に示すように、身箱230のほぼ全体が、耳部225ba,225bbがスリット232Sa,232Sbにそれぞれ挿し込まれた状態で、筒体220t内をスライドすることで、外箱220への出し入れが可能となっている。身箱230を引き出す前の状態においては、外箱220の蓋225と、身箱230の前壁235により、引出箱200の前方X側の開口部は、孔部235hを除いて閉塞されている。本実施形態においては、身箱230を引き出す前の状態において、蓋225の前壁部225aの下方の端部は、身箱230の前壁235の内側に重ね合わせられるように収納される。なお、蓋225の前壁部225aの下方の端部は、身箱230の前壁235の外側に重ね合わせられるように収納されてもよい。
【0065】
身箱230を外箱220から前方X側に引き出すと、第1実施形態と同様の機構により、外箱220の蓋225が共有辺223E周りに上方かつ前方X側に旋回し、引出箱200は前方X側が開口する。なお、本実施形態においては、前壁235に孔部235hが設けられているため、孔部235hに指を掛けることにより、身箱230を容易に引き出すことができる。また、本実施形態にかかる引出箱200は段ボール製であるため、より強度に優れたものとなる。その他、本実施形態の引出箱200は、第1実施形態の引出箱100が備える作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
本実施形態にかかる引出箱200の外箱220および身箱230は、展開体の状態を経由せず、外箱シート220”および身箱シート230”からそれぞれ直接作製することができる。なお、外箱シート220”および身箱シート230”の説明において、便宜上、作製後の引出箱200の対応する各部分の名称および符号をそのまま用いることがある。例えば、作製後の引出箱200において外箱側壁222aを構成する、外箱シート220”における対応部分は、そのまま「外箱側壁222a」と称する。
【0067】
図8(A)に示すように、外箱シート220”は、一枚の段ボールからなるシートであり、天壁223の対向する一対の辺にそれぞれ外箱側壁222a,222bが接続されている。外箱側壁222aの、天壁223との共有辺に対向する辺には、外箱側壁222aと辺を共有し、天壁223と同一形状および同一寸法の矩形状の板部221aが接続されている。外箱側壁222bの、天壁223との共有辺に対向する辺には、外箱側壁222bと辺を共有し、天壁223と同一形状および同一寸法の矩形状の板部221bが接続されている。天壁223の、外箱側壁222a,222bと共有しない辺のうちの一辺には、蓋225の前壁部225aが接続され、前壁部225aには、耳部225ba,225bbが接続されている。耳部225baと外箱側壁222aとの間、および、耳部225bbと外箱側壁222bとの間の境界線は、それぞれ切り離されている。
【0068】
外箱側壁222aは、板部221aとの共有辺の中心付近に、短い方の底辺が当該共有辺に重なる台形状の孔部222ahを有する。板部221bは、外箱側壁222bとの共有辺と対向する辺の中心付近に、台形状の板片221bsが接続されている。孔部222ahと板片221bsは略同一形状および略同一寸法であり、台形状の板片221bsの短い方の底辺が、板部221bに接続されている。
【0069】
外箱シート220”において、
(1)板部221b、外箱側壁222b、天壁223、外箱側壁222aおよび板部221aのそれぞれの境界線を折り目として紙面上面から見て山折りに折り曲げ、
(2)板部221aおよび板部221bを、板部221bが外側となるように重ね合わせて外箱底壁221とし、
(3)孔部222ahに板片221bsを差し込んで固定し、
(4)耳部225ba,225bbを前壁部225aとのそれぞれの共有辺において紙面上面から見て山折りに折り曲げて立設させる、
ことにより、外箱220を作製することができる。
【0070】
図8(B)に示すように、身箱シート230”は、一枚の段ボールからなるシートであり、身箱底壁231の対向する一対の辺には、略直角台形状の第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1がそれぞれ接続されている。第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1は、両底辺と直角に交わる辺を、それぞれ身箱底壁231と共有している。
【0071】
略直角台形状の第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1の斜辺は、両端付近を除く部分が円弧状に切り取られた形状となっている。第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1のそれぞれの斜辺には、略同一形状および略同一寸法である第1の内側形成部232A2および第2の内側形成部232B2のそれぞれの斜辺が接続され、第1の外側形成部232A1と第1の内側形成部232A2、および第2の外側形成部232B1と第2の内側形成部232B2は、それぞれの斜辺の周りに略線対称となっている。
【0072】
第1の外側形成部232A1と第1の内側形成部232A2のそれぞれの斜辺の、円弧状に切り取られた部分が合わさって、孔部232haを形成している。同様に、第2の外側形成部232B1と第2の内側形成部232B2のそれぞれの斜辺の、円弧状に切り取られた部分が合わさって、孔部232hbを形成している。
【0073】
第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1のそれぞれの長い方の底辺には、それぞれ矩形状かつ同一形状および同一寸法の板部234c,234dが接続されている。また、第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1のそれぞれの短い方の底辺には、それぞれ矩形状かつ同一形状および同一寸法の板部235c,235dが接続されている。
【0074】
板部234c,234dの、それぞれ第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1から離れる方向の長さは、身箱底壁231の幅(第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1と共有しない辺の長さ)よりも短い。また、板部235c,235dの、それぞれ第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1から離れる方向の長さは、身箱底壁231の前記幅よりも短い。
【0075】
身箱底壁231の、第1の外側形成部232A1および第2の外側形成部232B1と共有しない2つの辺には、身箱底壁231とそれぞれの辺を共有する、矩形状の板部234aおよび矩形状の板部235aが接続されている。なお、板部234aは板部234cや板部234dに近い方の辺に接続されており、板部235aは板部235cや板部235dに近い方の辺に接続されている。
【0076】
板部234aには、身箱底壁231との共有辺に対向する辺において、板部234aと辺を共有する板部234bが接続されている。板部234aと板部234bは、身箱後壁234と略同一形状および略同一寸法である。板部235aには、身箱底壁231との共有辺に対向する辺において、板部235aと辺を共有する板部235bが接続されている。板部235aと板部235bは、前壁235と略同一形状および略同一寸法であり、板部235aおよび板部235bのそれぞれの中心付近には、孔部235hに対応する形状の孔部235ahおよび235bhがそれぞれ設けられている。
【0077】
身箱底壁231は、板部234aとの共有辺の中心付近に、長方形状の孔部231h1を有し、板部235aとの共有辺の中心付近に、長方形状の孔部231h2を有する。板部234bには、板部234aとの共有辺と対向する辺の中心付近に、長方形状の板片234bsが接続されている。板部235bには、板部235aとの共有辺と対向する辺の中心付近に、長方形状の板片235bsが接続されている。
【0078】
身箱シート230”において、
(1)第2の内側形成部232B2、第2の外側形成部232B1、身箱底壁231、第1の外側形成部232A1および第1の内側形成部232A2のそれぞれの境界線を折り目として紙面上面から見て谷折りに折り曲げ、
(2)第1の外側形成部232A1および第1の内側形成部232A2を重ね合わせて身箱側壁232aとし、
(3)第2の外側形成部232B1および第2の内側形成部232B2を重ね合わせて身箱側壁232bとし、
(4)板部234aおよび板部234bが、板部234c,234dを挟む状態になるように、各境界線を折り目として紙面上面から見て谷折りに折り曲げた上で、板片234bsを孔部231h1に差し込んで固定することで身箱後壁234を形成し、
(5)板部235aおよび板部235bが、板部235c,235dを挟む状態になるように、各境界線を折り目として紙面上面から見て谷折りに折り曲げた上で、板片235bsを孔部231h2に差し込んで固定することで前壁235を形成する、
ことにより、身箱230を作製することができる。
【0079】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0080】
本発明の第1実施形態においては、引出箱100を構成する外箱120および身箱130が、それぞれ一枚の紙からなるシート(外箱シート120”および身箱シート130”)から作製されており、また、本発明の第2実施形態においては、引出箱200を構成する外箱220および身箱230が、それぞれ一枚の段ボールからなるシート(外箱シート220”および身箱シート230”)から作製されているが、本発明の引出箱はこれらに限らず、外箱および/または身箱がそれぞれ複数枚のシートから作製されたものであってもよい。
【0081】
また、シートの素材は紙や段ボールに限られず、樹脂、金属、その他の素材またはこれらを組み合わせたものであってもよい。さらに、本発明の引出箱を構成する外箱および/または身箱は、シートから作製されたものに限らず、例えば、樹脂等により一体成形されたもの、樹脂等により一体成形された複数の部材を組み合わせたもの、または木材により組み立てられたものであってもよい。
【0082】
本発明の第1実施形態においては、身箱130が、外箱120にそのほとんどが出し入れ可能となっており、本発明の第2実施形態においては、身箱230が、外箱220にそのほぼ全体が出し入れ可能となっているが、本発明の引出箱はこれに限らず、外箱に身箱の少なくとも一部が出し入れ可能となっていればよい。
【0083】
本発明の第1実施形態および第2実施形態においては、天壁123,223および前壁部125a,225aが共有する共有辺123E,223Eが折り目となっていることにより、前壁部125a,225aと天壁123,223とのなす角度が可変となっているが、本発明の引出箱はこれに限らず、別部材として作製された天壁と蓋とが、天壁と前壁部の共有辺において、可撓性を有するテープや蝶番等の部材により接続されていてもよい。また、その他の機構にて前壁部と天壁とのなす角度が可変となっていてもよい。
【0084】
本発明の第1実施形態および第2実施形態においては、身箱130,230が外箱120,220に対しスライド方向XYに摺動可能に収容されているが、本発明の引出箱は、これらのように身箱が外箱に対し摺動するものに限らず、例えば身箱または外箱に車輪が設けられ、身箱と外箱は該車輪を介して接触しており、該車輪が回転することにより、身箱のスムーズな引き出しが可能となる構成を有していてもよい。
【0085】
本発明の第1実施形態および第2実施形態においては、引出箱100,200に対して特段の装飾が施されていないが、本発明の引出箱はこれに限らず、身箱を引き出したり、押し込んだりする動きに連動して蓋が開閉する動作を妨げない限り、塗装、切り抜き、部材の付加および形状の変更等により装飾を施されていてもよい。装飾としては、例えば、動物、キャラクター、建築物または車両を模した装飾が挙げられる。
【0086】
本発明の第1実施形態および第2実施形態においては、各身箱側壁の一部または全部が二重壁構造となっていることにより各スリットが形成されているが、本発明の引出箱はこれに限らず、例えば二重壁構造となっていない身箱側壁の上方の端部において、案内板やガイド部材等を別途設けることによりスリットを形成してもよい。
【0087】
本発明の第1実施形態においては、身箱側壁132a,132bの斜辺が直線状であるが、第2実施形態と同様、当該斜辺は両端付近を除く部分が円弧状に切り取られた形状であってもよい。反対に、本発明の第2実施形態においては、身箱側壁232a,232bの斜辺は両端付近を除く部分が円弧状に切り取られた形状となっているが、第1実施形態と同様、当該斜辺は直線状であってもよい。さらに、本発明の引出箱の身箱の身箱側壁は、身箱を引き出したり、押し込んだりする動きに連動して蓋が開閉する動作を妨げない限り、いかなる形状であってもよい。
【0088】
本発明の第1実施形態においては、引出箱100の身箱130を作製するための身箱シート130”の第1の板部132Aおよび第2の板部132Bに、それぞれ直線状の切込み132SA,132SBが形成されているが、本発明の引出箱はこれに限られない。例えば、直線状の切込み132SA,132SBの代わりに、
図9(A)に示すような任意の形状の孔部132ha,132hbを形成し、これらの孔部を通過する各直線を折り目として折りたたむことにより、身箱側壁のスリットを形成させてもよい。同様に、本発明の第2実施形態の引出箱200の身箱230を作製するための身箱シート230”の孔部232ha,孔部232hbの形状も、身箱を引き出したり、押し込んだりする動きに連動して蓋が開閉する動作を妨げない限り、いかなる形状であってもよい。
【0089】
本発明の第1実施形態においては、引出箱100の身箱130を作製するための身箱シート130”の第1の板部132Aの、引出箱100の状態における後方Y側かつ上方の頂点と、前壁135と第1の板部132Aとの共有辺の、引出箱100の状態における上方の頂点と、を結ぶ直線上において、両端付近を除く部分に、直線状の切込み132SAが形成されている。また、第1の板部132Aは、前記直線を境界として、下方に存在する第1の外側形成部132A1と、同上方に存在する第1の内側形成部132A2と、に分けられている。さらに、第1の内側形成部132A2の、前方X側かつ上方の頂点付近には、折り目が設けられており、折り目によって分けられた三角形状の領域である、領域132A3を有している。以上の構成は、第2の板部132Bにおいても同様である。
【0090】
しかしながら、本発明の引出箱はこれに限らず、
図9(B)に示す身箱シートから作製されたものであってもよい。当該身箱シートは、第1および第2の板部において、引出箱の状態における後方Y側の辺付近に、引出箱の状態における上方から、当該辺に平行に、身箱側壁の高さよりも短い切込みを有する。また、当該切込みの終端部から、引出箱の状態における下方の辺と平行に折り目が形成され、さらにその上方に、平行な折り目がもう1つ形成されている。これらの切込みおよび折り目によって区分けされた領域を、下方から順に第1の外側形成部132A1’(または第2の外側形成部132B1’)、第1の内側形成部132A2’(または第2の外側形成部132B2’)および領域132A3’(または領域132B3’)とする。
【0091】
この場合、第1の外側形成部132A1’と第1の内側形成部132A2’との境界、および第2の外側形成部132B1’と第2の内側形成部132B2’との境界の折り目に孔部または切込みを形成することになる。例えば、
図9(B)に示すように、波状の切込みと横長の長孔を組み合わせた形状の孔部132ha’,132hb’を形成してもよい。
図9(B)に示す身箱シートを用いて身箱を作製した場合、身箱側壁は直角台形状ではなく、スリット付近の端部が波型となっている、全体としてL字の形状となる。例えば、ワニ等の動物を模して引出箱を装飾する場合、当該波型部分を歯に見立てることができる。
【0092】
当該変形例においても、第1の外側形成部132A1’と第1の内側形成部132A2’との境界、および第2の外側形成部132B1’と第2の内側形成部132B2’との境界の折り目には、孔部132ha’,132hb’ではなく、任意の形状の孔部または単に直線状の切込みを形成してもよい。
【0093】
本発明の第1実施形態においては、引出箱100の身箱130を作製するための身箱シート130”の前壁135と板片135s1との共有辺には特段の孔部は設けられていない。しかしながら、本発明の引出箱はこれに限らず、
図9(B)に示すように、前壁135および板片135s1との共有辺の中心付近に、例えば楕円形の孔部135hを設けた身箱シートから作製されたものであってもよい。このようにして作製された引出箱は、身箱前壁の上方の端部において、指を掛けるための切欠きが形成されているため、身箱を容易に引き出すことができる。
【0094】
本発明の第1実施形態においては、身箱展開体130’において、身箱後壁134、前壁135、第1の板部132Aおよび第2の板部132Bは、引出箱100の状態における下方の端部の辺に、それぞれと辺を共有する板部134s、板部135s、板部131aおよび板部131bが接続されており、引出箱100の作成時にこれら板部が組み合わさることで、いわゆるワンタッチ底として身箱底壁131が形成される。しかしながら、本発明の身箱展開体はこれに限らず、第1の板部、第2の板部、身箱後壁および前壁から選択される少なくとも1つが、身箱底壁の少なくとも一部を形成するための板部と接続されていればよい。この場合、身箱底壁は1つの板部から形成されていてもよく、複数の板部が組み合わさって形成されていてもよい。
【0095】
本発明の第1実施形態および第2実施形態においては、身箱130,230が前壁135,235と身箱後壁134,234を有するが、本発明の引出箱はこれに限らず、身箱が前壁および身箱後壁のいずれか1つ、またはその両方を有していなくてもよい。
【0096】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の引出箱および引出箱展開体セットを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
100……引出箱、120……外箱、120’……外箱展開体、120”……外箱シート、120t……筒体、121……外箱底壁、121s……板片、122a,122b……外箱側壁、122sa,122sb……板片、123……天壁、123E……共有辺、124……外箱後壁、124s……板片、125……蓋、125a……前壁部、125ba,125bb……耳部、125Ea,125Eb……側辺、125Pa,125Pb……共有点、130……身箱、130’……身箱展開体、130”……身箱シート、131……身箱底壁、131a,131b……板部、131as,131bs……領域、132a……身箱側壁、132A,132A’……第1の板部、132A1,132A1’……第1の外側形成部、132A2,132A2’……第1の内側形成部、132A3,132A3’……領域、132b……身箱側壁、132B,132B’……第2の板部、132B1,132B1’……第2の外側形成部、132B2,132B2’……第2の内側形成部、132B3,132B3’……領域、132Bs……板片、132ha,132ha’,132hb,132hb’……孔部、132Sa,132Sb……スリット、134……身箱後壁、134s……板部、135……前壁、135h……孔部、135s……板部、135s1,135s2……板片、200……引出箱、220……外箱、220”……外箱シート、220t……筒体、221……外箱底壁、221a,221b……板部、221bs……板片、222a……外箱側壁、222ah……孔部、222b……外箱側壁、223……天壁、223E……共有辺、225……蓋、225a……前壁部、225ba,225bb……耳部、230……身箱、230”……身箱シート、231……身箱底壁、231h1,231h2……孔部、232a……身箱側壁、232A1……第1の外側形成部、232A2……第1の内側形成部、232b……身箱側壁、232B1……第2の外側形成部、232B2……第2の内側形成部、232ha,232hb……孔部、232Sa,232Sb……スリット、234……身箱後壁、234a,234b……板部、234bs……板片、234c,234d……板部、235……前壁、235a,235b……板部、235ah,235bh……孔部、235bs……板片、235c,235d……板部、235h……孔部。