(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182153
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法及び電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20221201BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20221201BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20221201BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L7/14
B60W30/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089533
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 崇
(72)【発明者】
【氏名】東岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮入 武
【テーマコード(参考)】
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BC01
3D241CA06
3D241CA08
3D241CC03
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC51Z
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA14
5H125CB02
5H125DD11
5H125EE42
5H125EE49
5H125EE55
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】運転者による運転モードの選択を容易に行うことができる。
【解決手段】アクセル開度に応じて駆動源であるモータを制御する電動車両の制御方法において、アクセル開度の大きさに応じた領域として、第1操作領域、第1操作領域よりもアクセル開度が小さな第2操作領域、及び、第2操作領域よりもアクセル開度が小さな第3操作領域が設けられる。電動車両の制御方法によれば、アクセル開度が第2操作領域に含まれる場合には、電動車両の周囲状況に応じた走行パターンに沿ってモータを駆動させ、アクセル開度が第1操作領域及び第3操作領域に含まれる場合には、アクセル開度に応じた駆動力が発生するようにモータを駆動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル開度に応じて駆動源であるモータを制御する電動車両の制御方法であって、
前記アクセル開度の大きさに応じた領域として、第1操作領域、前記第1操作領域よりも前記アクセル開度が小さな第2操作領域、及び、前記第2操作領域よりも前記アクセル開度が小さな第3操作領域が設けられ、
前記アクセル開度が前記第2操作領域に含まれる場合には、前記電動車両の周囲状況に応じた走行パターンに沿って前記モータを駆動させ、
前記アクセル開度が前記第1操作領域及び前記第3操作領域に含まれる場合には、前記アクセル開度に応じた駆動力が発生するように前記モータを駆動させる、電動車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の制御方法であって、
前記走行パターンは、前記電動車両の位置情報、及び、周辺状態情報に応じて定められる、
電動車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動車両の制御方法であって、
前記アクセル開度が前記第2操作領域から前記第3操作領域まで低下した場合には、前記電動車両の速度が大きいほど大きな制動力を発生させるように前記モータを制御する、電動車両の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両の制御方法であって、
前記電動車両が前方の他の車両を追従する前車追従運転支援機能を選択的に実行可能に構成され、
前記アクセル開度が前記第2操作領域から前記第1操作領域に変化する場合であって、前記前車追従運転支援機能が選択されている場合には、前記前車追従運転支援機能を実行する、電動車両の制御方法。
【請求項5】
アクセル開度に応じて駆動源であるモータを制御するコントローラを備える電動車両の制御装置であって、
前記アクセル開度の大きさに応じた領域として、第1操作領域、前記第1操作領域よりも前記アクセル開度が小さな第2操作領域、及び、前記第2操作領域よりも前記アクセル開度が小さな第3操作領域が設けられ、
前記コントローラは、
前記アクセル開度が前記第2操作領域に含まれる場合には、前記電動車両の周囲状況に応じた走行パターンに沿って前記モータを駆動させ、
前記アクセル開度が前記第1操作領域及び前記第3操作領域に含まれる場合には、前記アクセル開度に応じた駆動力が発生するように前記モータを駆動させる、電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御方法及び電動車両の制御装置の提供を目的とする。
【背景技術】
【0002】
運転者が車両を運転する場合に複数の運転モードの中から所定の運転モードを選択することによって、選択された運転モードに応じて車両を走行させることができる。例えば、特許文献1には、運転者が3つの運転モードのうちの1つのモードを選択し、選択したモードに沿った運転を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、運転モードの選択手段としてダイヤル式等のスイッチが用いられている。しかしながら、運転モードを選択するためには手動のスイッチ操作が必要であるため、運転者がハンドルやペダルの従来の運転操作以外の操作をする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、アクセル開度に応じて駆動源であるモータを制御する電動車両の制御方法において、アクセル開度の大きさに応じた領域として、第1操作領域、第1操作領域よりもアクセル開度が小さな第2操作領域、及び、第2操作領域よりもアクセル開度が小さな第3操作領域が設けられる。電動車両の制御方法によれば、アクセル開度が第2操作領域に含まれる場合には、電動車両の周囲状況に応じた走行パターンに沿ってモータを駆動させ、アクセル開度が第1操作領域及び第3操作領域に含まれる場合には、アクセル開度に応じた駆動力が発生するようにモータを駆動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の運転支援装置の一態様によれば、運転者による運転モードの選択を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、駆動力制御を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、前方の信号機が発進可に変化した場合に車両が発進する場合のタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、コインパーキングにおいて段差を乗り上げて発進する場合のタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、変形例に係る駆動力制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。なお、各実施形態においては、モータが駆動源であるとともに、モータへ供給される電源を発電可能なエンジンを備えるハイブリッド型の車両である例を用いて説明するが、これに限らない。エンジンを搭載しない電動車両や、燃料電池を発電源として備える電動車両等において本発明が実施されてもよい。
【0009】
図1は、本実施形態に係わる車両100の概略構成図である。車両100は、エンジン1(内燃機関)と、発電機2(電動機)と、モータ3(駆動源)と、バッテリ4と、車輪7(駆動輪)とを備えるハイブリッド型の車両である。車両100においては、車両100の駆動力は、エンジン1からではなく、バッテリ4の電力供給を受けて回転駆動するモータ3から得られる。このような車両100は、エンジン1、バッテリ4、モータ3、車輪7が直列接続(シリーズ接続)されることから、シリーズハイブリッド型の車両と称される。また、モータ3は、車両の駆動源となるため駆動モータと称されることもある。
【0010】
エンジン1は、発電機2に機械的に連結されている。発電機2は、バッテリ4に対して送受電可能に電気的に接続されている。発電機2とモータ3との間、及び、モータ3とバッテリ4との間は送受電可能に電気的に接続されている。モータ3はギア5を介して車軸6に機械的に連結され、車軸6は車輪7と接続されている。
【0011】
エンジン1において発生する駆動トルクは発電機2に伝達され、発電機2はエンジン1を駆動源として回転して発電を行う。発電機2の発電電力がバッテリ4に流れる場合には、当該電力はバッテリ4に充電される。発電機2の発電電力がモータ3に流れる場合には、当該電力はモータ3の駆動に用いられる。
【0012】
モータ3は、発電機2及びバッテリ4のいずれか一方、もしくは両方から電力の供給を受け、供給された電力を用いて回転駆動して駆動トルクを発生させる。モータ3の駆動トルクは、ギア5及び車軸6を介して車輪7に伝達される。車輪7がモータ3の駆動トルクにより回転することで、車両100は走行する。
【0013】
車両100の減速時や、車両100が坂道を下る場合などにおいて、モータ3は発電機として動作して回生電力を発生させる。モータ3において回生電力が発生する場合には、ギア5及び車軸6を介して車輪7に回生制動力が発生する。また、モータ3で発生した回生電力がバッテリ4に流れることにより、回生電力がバッテリ4に充電される。
【0014】
バッテリ4は、充放電可能な二次電池である。バッテリ4は、発電機2において発電された電力、及び、回生制動を行うモータ3において発電される電力を充電できる。一方、バッテリ4は、モータ3に対して電力供給をする場合には放電する。
【0015】
発電機2、モータ3、及び、バッテリ4の間の電力授受の方向は、車両の走行シーン、その他、車両に搭載された補機(エアコン、カーステレオ、ナビシステムなど)を含む車両全体の電力の需給状況に応じて、バッテリ4の充電状態、モータ3の駆動状態などに基づいて変化しうる。発電機2、モータ3、及び、バッテリ4の間の電力授受の方向は、後述するコントローラ10の制御によって定められる。
【0016】
例えば、モータ3が駆動力を発生させる必要がある場合には、バッテリ4からモータ3に電力が供給される。バッテリ4から十分な電力をモータ3に供給できない場合には、エンジン1を駆動させて発電機2において電力を生成させ、バッテリ4に貯蔵された電力に加えて発電機2で発電された電力がモータ3に供給される。
【0017】
バッテリ4の充電が完了していない場合には、車両の減速時や車両が坂道を下る際にモータ3によって発生した回生電力が、モータ3からバッテリ4に供給される。さらに、バッテリ4の充電が完了していない状態では、エンジン1を駆動させて発電機2で電力を生成し、発電機2において発電された電力がバッテリ4に供給されてもよい。
【0018】
バッテリ4の充電状態(SOC)について、充電量が多い(SOCが高い)場合などには、車両の減速時や車両が坂道を下る際にモータ3によって発生した回生電力が発電機2に供給される。この場合、モータ3から発電機2に供給された回生電力は強制的に放電される。
【0019】
車両100は、全体を制御するコントローラ10と、機能スイッチ11と、セレクトレバー12と、ブレーキセンサ13と、アクセルポジションセンサ14(APS)と、カメラ15と、GPS16と、通信部17と、ジャイロセンサ18とを備える。コントローラ10は、機能スイッチ11、セレクトレバー12、ブレーキセンサ13、アクセルポジションセンサ14、カメラ15、GPS16、通信部17、及び、ジャイロセンサ18の各々に電気的に接続されている。
【0020】
機能スイッチ11は、運転者によって操作可能に構成されたスイッチである。機能スイッチ11の操作によって複数の運転支援機能のうちのいずれが選択されると、選択された運転支援機能を示す信号がコントローラ10に出力される。機能スイッチ11により選択可能な運転支援機能には、前方車両を自動的に追従する前車追従運転支援機能が含まれる。前車追従運転支援機能が実行される場合には、車両100の速度や前方の車両までの距離等が自動的に調整され、車両100は前方の車両に追従する。なお、前車追従運転支援機能においては、アクセル、ブレーキ、ステアリングの全てが自動で制御されてもよく、このような機能により運転者の負担を軽減できる。前車追従運転支援機能においては、例えば、運転者が設定した車速(30~100km/h)で先行車両との車間距離を一定に保つように制御することに加えて、車線の中央を走行するようにステアリング制御がなされてもよい。また、前車追従運転支援機能の実行中においてはディスプレイにその旨が表示される。
【0021】
セレクトレバー12は、運転者の操作による運転レンジの選択に用いられるレバーである。セレクトレバー12により選択可能なレンジには、例えば、ドライブレンジ(D)、ブレーキレンジ(B)、リバースレンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、パーキングレンジ(P)などが含まれる。コントローラ10は、セレクトレバー12により選択された運転レンジを示す信号を受け付ける。
【0022】
ブレーキセンサ13は、ブレーキペダルの近傍に設けられており、運転者のブレーキペダルの操作量を検出する。ブレーキセンサ13は、運転者のブレーキペダルの操作量を検出すると、検出した操作量に応じた制動力を発生させるために、当該操作量を示す信号をコントローラ10へと出力する。
【0023】
アクセルポジションセンサ14は、アクセルペダルの近傍に設けられており、運転者のアクセルペダルの操作量を検知する。アクセルポジションセンサ14は、運転者のアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Acを検出すると、検出したアクセル開度Acを示す信号をコントローラ10へと出力する。
【0024】
カメラ15は、車両100の周辺を撮影すると、撮影した画像または動画データをコントローラ10へ出力する。GPS(Global Positioning System)16は、車両100の位置情報を取得すると、取得した位置情報をコントローラ10へ出力する。通信部17は、ネットワークを介してサーバを含む種々の機器と通信可能に構成されており、交通状況や気象情報等の車両100の周辺状態を取得する。ジャイロセンサ18は、車両100の傾き及び加速度を検出すると、検出した角度及び加速度をコントローラ10へと出力する。
【0025】
コントローラ10は、エンジン1、発電機2及びモータ3と、信号線を介して電気的に接続されている。コントローラ10は、アクセル開度Acに応じた駆動トルクをモータ3で生じさせるために、トルク指令値Tcを算出してモータ3へ送信する。なお、モータ3はトルクに替えて回転数により制御されてもよい。回転数と車速とは相関はギア5の構成比により定まるため、回転数が制御される場合には車速を直接的に制御することができる。
【0026】
同時に、コントローラ10は、バッテリ4の充電状態(SOC)に応じて、エンジン1、発電機2及びモータ3を制御する。コントローラ10によって、エンジン1、発電機2及びモータ3の駆動状態が制御され、その他、図示しない補機の状態が定まることにより、発電機2、モータ3及びバッテリ4の間の電力の流れが定まる。
【0027】
コントローラ10は、例えば、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータにより実現可能である。マイクロコンピュータをコントローラ10として機能させるためのコンピュータプログラム(制御プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、汎用のマイクロコンピュータは、コントローラ10として機能する。
【0028】
なお、本実施形態では、ソフトウェアによってコントローラ10を実現する例を示すが、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、コントローラ10を構成することも可能である。また、コントローラ10に含まれる複数のユニットを個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、コントローラ10は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0029】
次に、
図2、3を用いて前車追従運転支援機能が実行されていない通常運転時におけるモータ3の制御方法について説明する。ここで、
図2は、アクセル開度Acのレベルの説明図である。
図3は、アクセル開度Acに応じたモータ3の制御を示すフローチャートである。
【0030】
図2は、アクセルペダルの踏込量の説明図である。この図に示されるように、アクセルペダルの踏込量に応じて定まるアクセル開度Acは、アクセルポジションセンサ14により取得され、3段階のレベルで示される操作領域21~23のいずれかに含まれる。そして、コントローラ10は、アクセル開度Acが含まれる操作領域21~23に応じて、トルク指令値Tcの算出方法を切り替える。
【0031】
なお、アクセルペダルが踏み込まれていない場合には、アクセル開度Acは0であり、アクセルペダルの踏込量が大きくなるほど、アクセル開度Acは大きくなるものとする。また、アクセル開度Acが大きい(踏み込まれている)方から順に、第1操作領域21、第2操作領域22、及び、第3操作領域23が設けられ、各操作領域は相互に隣接している。なお、第3操作領域23には、アクセル開度Acが0である場合が含まれる。
【0032】
例えば、運転者が車両100を発進させる場合にアクセルペダルを踏みこむと、アクセル開度Acが含まれる操作領域は、第3操作領域23、第2操作領域22、及び、第1操作領域21の順に遷移する。このように遷移する場合においては、アクセル開度Acが第3操作領域23である間は、コントローラ10はアクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcを生成する。そして、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれると、コントローラ10は、アクセル開度Acによらず後述の最適駆動力制御を行うようにトルク指令値Tcを設定する。そして、アクセル開度Acが第1操作領域21に含まれると、コントローラ10は、再び、アクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcを設定する。
【0033】
最適駆動力制御は、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合に実行され(オンとなり)、第1操作領域21及び第3操作領域23に含まれる場合には実行されない(オフとなる)。すなわち、アクセル開度Acに応じて最適駆動力制御が選択的にオン/オフされることになる。そのため、第2操作領域22は、最適駆動力制御のスイッチオン領域であり、第1操作領域21及び第3操作領域23は、最適駆動力制御のスイッチオフ領域と理解されうる。
【0034】
アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には、コントローラ10は、道路や交通状況等の車両100の周辺状態情報に応じた最適な車速変化を実現するように、モータ3に対するトルク指令値Tcを算出する。
【0035】
最適駆動力制御の例としては、車両100が交差点において前方の信号機が進行可(青)の表示に変更した後に左折する場合に、左折中は所定の速度で進行するような車速変化を実現するようにトルク指令値Tcを変化させる。例えば、GPS16により取得した位置情報に基づいて、汎用的なナビゲーションを用いて走行シーンが判断される。なお、走行シーンの判断においては、補助的に、セレクトレバー12に加えて、車載カメラ及びレーダー等を使用してもよい。そして、走行シーンに応じて車速が設定され、設定された車速となるようにモータ3に対するトルク指令値が設定される。具体的に、交差点において発車する場合には、車速が20km/h程度となるようにトルク指令値Tcが設定される。これにより、運転者は、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれるようにアクセルペダルを操作するだけでよくなるため、ハンドル操作に集中することができる。最適駆動力制御の他の例としては、ロック板のあるコインパーキングにおいて駐車後に精算して車両100を発進させる場合に、収納されたロック板による段差を乗り越えて車両100を前進又は後退させる必要がある。このような場合に、コントローラ10は、車両100内の揺れを発生させないようなトルク指令値Tcを生成する。具体的に、コインパーキング等において折り畳まれたロック板を乗り越える場合には、車速が5~7km/h程度となるようにトルク指令値Tcが設定される。その結果、車両100の上下加速度に起因する不快感を抑制することができる。
【0036】
一方、第1操作領域21及び第3操作領域23においては、最適駆動力制御は実行されない。第1操作領域21においては、運転者により操作されたアクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcが設定される。アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる場合であって、アクセル開度Acがゼロから第3操作領域23へと遷移した場合は、車両100が発進する場合であるため、運転者により操作されたアクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcが設定される。一方、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる場合であって、アクセル開度Acが第2操作領域22から第3操作領域23へと遷移した場合には、車両100が停車されるように負のトルク指令値Tcが生成される。なお、この場合に、負のトルク指令値Tcは車速が大きいほど絶対値が大きくなるように設定され、車速が小さいほど絶対値が小さくなるように設定される。
【0037】
このように、運転者はアクセル開度Acが第2操作領域22の範囲に含まれるようにアクセルペダルを制御することにより、最適駆動力制御を実行(オン)できる。その結果、運転者による細かいアクセル操作が不要となり疲労を抑制できるとともに、運転者の技量によらずに車両100の周囲状況に応じた最適な走行が可能となる。
【0038】
また、最適駆動力制御は、手動のスイッチ操作等ではなくアクセルペダルのような運転者にとって操作が容易な方法で切り替えることができるため、手動スイッチ操作のわずらわしさがない。さらに、最適駆動力制御を行う第2操作領域22と、アクセル開度Acに応じた駆動力制御を行う第1操作領域21とが連続しているため、運転者は自らの意思で運転していると感じられることが可能となる。このように、比較的簡易な方法かつ運転者の意図に沿って最適駆動力制御のオン/オフの切替を実現することができる。
【0039】
図3は、本実施形態の駆動力制御を示すフローチャートである。なお、フローチャートに示された制御は、車両100が発進を行う場合に行われるものであって、初期状態においては車速がゼロ、かつ、アクセル開度Acがゼロであるものとする。
【0040】
ステップS1において、コントローラ10は、機能スイッチ11、セレクトレバー12、ブレーキセンサ13、及び、アクセルポジションセンサ14の検出信号を取得する。さらに、コントローラ10は、ジャイロセンサ18により取得されるセンサ値、及び、カメラ15により撮影される画像、GPS16により検出される位置情報、及び、通信部17を介して取得される交通状況や気象情報等を取得する。なお、センサ検出値等の取得は、ステップS1に限られず任意のタイミングで実行されてもよい。
【0041】
ステップS2において、コントローラ10は、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれているか否かを判定する。コントローラ10は、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれない場合には(S2:No)、次に、ステップS4の処理を行う。アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる場合には(S2:Yes)、コントローラ10は、次に、ステップS3の処理を行う。
【0042】
ステップS3において、コントローラ10は、アクセル開度Acに応じた駆動力制御を行う。アクセル開度Acがゼロから第3操作領域23へと変化した状態は、車両100を発進させようとする状態であり、運転者はより大きな駆動力を得ようとしていると判断される。そこで、コントローラ10は、アクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcを算出する。コントローラ10は、ステップS3の処理を終えると、次にステップS1の処理に戻り、再度センサ検出値を取得する。
【0043】
ステップS4において、コントローラ10は、ステップS1において取得された車速、現在位置、周辺状態情報(信号機・天候状況を含む)、及び、車両100の傾き等(これらは、車両100の周囲状況と総称されうる)に基づいて、車両100の走行シーンを判断する。例えば、走行シーンとしては、信号機の手前において前方の信号機の表示が停止(赤)から進行可(青)に変化した場合や、コインパーキングにおいて停車中の状態から折り畳まれたロック板を乗り上げて発進をする場合等が含まれる。
【0044】
ステップS5において、コントローラ10には、走行シーンに応じて記憶している車速マップの中から、ステップS4において判断された走行シーンに応じた車速マップを読み出す。なお、車速マップにおいては、発進開始後の経過時間と車速との関係が示されている。車速マップに応じて経時的に車速が変化するようにコントローラ10がモータ3のトルク指令値Tcを変化させることにより、走行シーンに応じた最適な駆動力制御を行うことができる。
【0045】
ステップS6において、コントローラ10は、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれているか否かを判定する。アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれない場合には(S6:No)、発車過程において再びアクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる状態となった、あるいは、第1操作領域21に含まれる状態にまでなったと判断され、次に、ステップS3に戻って処理を行う。アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には(S6:Yes)、コントローラ10は、最適駆動力制御を実行する必要があると判断し、次に、ステップS7の処理を行う。
【0046】
ステップS7において、コントローラ10は、モータ3から入力される回転数に基づいて、ステップS5において選択された車速マップに示される車速となるように、モータ3に対するトルク指令値Tcを算出する。車速マップには経時的に変化する車速が示されているため、走行状況に応じた最適な駆動力を得ることができる。
【0047】
ステップS8において、コントローラ10は、再度、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれているか否かを判定する。アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には(S8:Yes)、コントローラ10は、最適駆動力制御を継続する必要があると判断し、次に、ステップS1に戻ってセンサ値の取得処理を行う。一方、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれない、すなわち、第1操作領域21又は第3操作領域23に含まれる状態となったと判断できる場合には(S8:No)、次に、ステップS9の処理を行う。
【0048】
ステップS9において、コントローラ10は、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれるか否かを判定する。アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれない場合には(S9:No)、コントローラ10は、アクセル開度Acが第1操作領域21に含まれると判断し、次に、ステップS12の処理を行う。一方、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる場合には(S9:Yes)、コントローラ10は、次に、ステップS10の処理を行う。
【0049】
ステップS10において、コントローラ10は、アクセル開度Acに応じた最適減速制御を行う。アクセル開度Acが第2操作領域22から第3操作領域23へと変化した状態では、運転者は駆動力を小さくしていると判断される。そこで、コントローラ10は、車両100が減速するよう、より小さなトルク指令値Tcを算出する。最適減速制御においては、コントローラ10は、車速が大きいほど絶対値が大きな負のトルクを発生させることで車両100を減速させる。これにより、車両100について、最適車速マップに従った駆動力を得ている状態から停車状態に向かって減速させることができる。このような最適減速制御が行われることにより、ブレーキペダルを踏むことなく減速を行うことができるため、ブレーキペダルの踏みかえ頻度が減り運転者の操作負担を軽減することができる。
【0050】
ステップS11において、コントローラ10は、アクセル開度Acが増加して第2操作領域22に含まれているか否かを判定する。コントローラ10は、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれない場合には(S11:No)、アクセル開度Acは第3操作領域23に含まれている状態が継続されていると判断して、次に、ステップS10に戻って処理を行う。一方、コントローラ10は、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合(S11:Yes)には、再度走行シーンに応じた最適駆動力制御を行うために、ステップS1に戻って処理を行う。
【0051】
一方、ステップS12において、アクセル開度Acは第1操作領域21に含まれるため、コントローラ10は、アクセル開度Acに応じた駆動力制御を行う。アクセル開度Acが第2操作領域22から第1操作領域21へと変化した状態では、運転者はより大きな駆動力を得ようとしていると判断される。そこで、コントローラ10は、最適駆動力制御を上回る駆動力を得られるように、アクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcを算出する。
【0052】
ステップS13において、コントローラ10は、アクセル開度Acが減少して第2操作領域22に含まれた状態となったか否かを判定する。コントローラ10は、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には(S13:Yes)、最適駆動力制御を行うために、次に、ステップS1の処理に戻ってセンサ値の取得処理を行う。アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれない場合には(S13:No)、コントローラ10は、さらにアクセル開度Acが第1操作領域21又は第3操作領域23にあるか否かを判定するために、次に、ステップS14の処理を行う。
【0053】
ステップS14において、コントローラ10は、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれているか否かを判定する。コントローラ10は、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる場合には(S14:Yes)、最適減速制御を行うために、次に、ステップS10の処理を行う。一方、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれない場合には(S14:No)、アクセル開度Acは第1操作領域21に含まれると判断できるため、次に、ステップS12の処理を行う。
【0054】
このように、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には、最適駆動力制御が行われ(S7)、アクセル開度Acが第2操作領域22より大きな第1操作領域21に含まれる場合には、アクセル開度Acに応じた駆動力制御が行われる(S12)。アクセル開度Acが第2操作領域22より小さな第3操作領域23に含まれる場合であって、アクセル開度Acがゼロから大きくなる場合には(S2:Yes)、アクセル開度Acに応じた駆動力が発生される(S3)ことで車両100は発進を行う。一方、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれる場合であって、アクセル開度Acが第2操作領域22から小さくなる場合には(S2:Yes)、最適減速制御が行われる(S10)。
【0055】
このようにすることで、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には、最適駆動力制御が行われるため、周囲状況に応じた最適な駆動力を発生させることができる。一方、最適駆動力制御が行われない領域(スイッチオフ領域)のうちアクセル開度Acが第2操作領域22よりも大きな第3操作領域23に含まれる場合には、アクセル開度Acに応じた駆動力が発生するため、運転者は自身の操作に応じた駆動力を得ることができるため違和感を抑制できる。一方、アクセル開度Acが減少して第2操作領域22から第1操作領域21に変化する場合には、車速に応じた負のトルクが発生するような最適減速制御が行われるため、適切に減速することができる。
【0056】
次に、
図4、
図5を用いて走行状態に応じた最適駆動力制御について説明する。
いる。
【0057】
図4は、前方の信号機が青になり発進する場合におけるタイミングチャートである。この図においては、横軸には時刻が示され、縦方向に車両100の状態が示されている。縦方向に示される車両の状態には、運転者により操作されるアクセルペダルの状態、アクセル開度Ac、最適駆動力制御のスイッチ状態、実際の車両速度及び車両加速度が示されている。
【0058】
時刻t0~t1において車両100は停車しており、車両速度及び車両加速度はともにゼロである。その後、時刻t1において車両100の前方の信号機が停止(赤)から進行可(青)の表示に変化すると、時刻t1~t2において車両100は加速する。これにより、車両速度はゼロから所定の大きさまで増加する。
【0059】
時刻t2において車両速度が一定の大きさとなると、時刻t2~t3において車両100は一定の車両速度を維持して巡航する。その後、時刻t3において、運転者がアクセルペダルを踏みこむと、時刻t3~t4に車両100は再加速されて車両速度が増加する。
【0060】
時刻t4において車両速度が所定の大きさまで増加し、運転者がアクセル開度Acを操作すると、時刻t4~t5において車両100は一定の車両速度を維持したまま巡航する。その後、時刻t5に運転者がアクセルペダルから足を離す等してアクセル開度Acを小さくすると、時刻t5~t6に車両100は減速して最終的に停車する。
【0061】
以下では、このような走行状態におけるコントローラ10における走行制御について説明する。
【0062】
まず、時刻t0~t1においては、アクセル状態に示されるようにアクセルペダルは操作されておらず、車両速度及び車両加速度はゼロである。アクセル開度Acはゼロであるため、最適駆動力制御はスイッチオフ状態となっている。なお、図中の最適駆動力制御のスイッチ状態には、最適駆動力制御のスイッチオン領域にハッチングが付されている。
【0063】
時刻t1~t2においては、アクセル状態に示されるようにアクセルペダルが第3操作領域23を経て第2操作領域22まで踏み込まれる。この場合には、アクセル開度Acは時刻t1~t1aにおいて第3操作領域23に含まれ、時刻t1a~t2において第2操作領域22に含まれる。そのため、時刻t1~t1aにおいては車両速度が増加して車両加速度は正となる。そして、時刻t1a~t2において最適駆動力制御により車両速度の増加が継続される。なお、時刻t2の直前において車両速度が所定の速度に到達すると、車両加速度はゼロとなり加速が終了する。
【0064】
時刻t2~t3においては、アクセル開度Acは変化するが第2操作領域22に含まれたままである。そのため、最適駆動力制御が行われ、アクセル開度Acに応じて車両速度及び車両加速度が変化せずに、所定の巡航速度での走行が継続される。
【0065】
時刻t3~t4においては、アクセルペダルが第2操作領域22から第1操作領域21まで踏み込まれると、アクセル開度Acは第1操作領域21に含まれる。このような場合には、アクセル開度Acに応じた制御に切り替わり、車両加速度は正の値となり車両速度が所定の速度まで大きくなる。
【0066】
時刻t4~t5においては、アクセル開度Acは変化するが第2操作領域22に含まれたままである。そのため、アクセル開度Acに応じて車両速度及び車両加速度が変化することはなく、最適駆動力制御によって所定の巡航速度が維持される。
【0067】
時刻t5~t6においては、アクセル状態に示されるようにアクセルペダルの操作を終えると、アクセル開度Acは第3操作領域23に含まれる。このような場合には、最適減速制御が行われ、車両加速度は負の値となり車両速度が小さくなる。そして、車両100は減速して最終的に停車する。
【0068】
このように、時刻t1a~t3、及び、時刻t4~t5においては、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれるため最適駆動力制御が行われる。その結果、アクセル開度Acの変化に応じて車両加速度が変化することなく、走行シーンに応じた最適な車速が実現されるため、運転者のアクセルペダルの微妙な操作が不要となり操作負担を軽減することができる。
【0069】
時刻t1~t1aにおいては、アクセル開度Acがゼロから大きくなり第3操作領域23に含まれるため、アクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcが設定されるドライバ制御が行われて発車制御が行われる。時刻t3~t4においては、アクセル開度Acが大きくなり第3操作領域23に含まれたため、アクセル開度Acに応じたトルク指令値Tcが設定されるドライバ制御が行われて、車両100が走行を開始する。このように、最適駆動力制御を行う第2操作領域22と、アクセル開度Acに応じた駆動力制御を行う第1操作領域21及び第3操作領域23とが連続しているため、運転者は運転操作における違和感を感じにくくなる。
【0070】
また、時刻t5~t6においては、アクセル開度Acが小さくなり第3操作領域23に含まれるようになるため、最適減速制御が行われる。このようにアクセル開度Acが小さく変化している場合には、車速が大きくなるほど絶対値が大きな負のトルクを発生させることにより、運転者に不快を与えることなく減速制御を行うことができる。
【0071】
なお、
図4に示されたタイムチャートにおいては、モータ3において発生させる駆動力により定まる車両速度や車両加速度についての説明し、ハンドル操作について説明をしなかったが、例えば、交差点を右左折する場合等においてはハンドル操作が行われてもよい。上述のように、車速に関して運転者はクセル開度Acが第2操作領域22に含まれるようにアクセルペダルを操作するだけでよいため、ハンドル操作に集中することができる。
【0072】
図5は、コインパーキングにおいて駐車料金を精算した後に、折り畳まれたロック板により形成される段差を乗り越えて発進する場合におけるタイミングチャートである。
【0073】
時刻t0~t1において車両100は停車しており、車両速度及び車両加速度はともにゼロである。その後、時刻t1においてモータ3はトルクを発生させると、車両100は前進又は後退を開始して、折り畳まれたロック板により形成された段差に乗り上げようとする。その後、時刻t2において車両100が段差を乗り上げの完了が近づくと車両加速度が小さくなるように制御する。
【0074】
その後、時刻t2~t3においては所定の速度での慣性走行によって段差上を車両が進行する。時刻t3において段差からの降りる動作を開始するタイミングで、運転者はアクセルペダルから足を外すと最適減速制御が行われて負のトルクが発生するため、車両100が段差から降りるタイミングにおける加速が抑制される。このようにすることで、段差から降りる時の車両100の前後加速度の発生を抑制することができる。
【0075】
以下では、このような走行状態におけるコントローラ10における走行制御について説明する。
【0076】
まず、時刻t0~t1においては、アクセル状態に示されるようにアクセルペダルは操作されていない。そのため、アクセル開度Acはゼロであり、最適駆動力制御はスイッチオフ状態となっている。
【0077】
次に、時刻t1~t2においては、アクセル状態に示されるようにアクセルペダルが第3操作領域23を経て第2操作領域22まで踏み込まれる。この場合には、アクセル開度Acは時刻t1~t1aにおいて第3操作領域23に含まれ、時刻t1a~t2において第2操作領域22に含まれる。そのため、時刻t1aまではアクセル開度Acに応じたトルクが発生され、時刻t1a以降においては最適駆動力制御によりトルクが増加する。これにより、段差を乗り上げるように車両加速度が大きくなり車両速度が増加する。そして、段差の乗り上げが完了する時刻t2の直前において所定の車速に到達すると、トルクの発生を終えて車両加速度が小さくなる。
【0078】
時刻t2においては、アクセル開度Acは第2操作領域22に含まれる。この場合においては、コントローラ10は最適駆動力制御によりトルクを発生させないため、車両加速度はゼロとなる。しかしながら、時刻t1~t2においては、モータ3においてトルクが発生していなくても、慣性によって車両100は走行を継続できる。これにより、段差の乗り上げが完了する。
【0079】
時刻t3においては、運転者はアクセルペダルの操作を終える。アクセル開度Acは減少して第3操作領域23に含まれるため、最適減速制御が行われる。その結果、負のトルクが発生し、車両100が段差から降りるタイミングにおける負の車両加速度が生じる。その結果、段差から降りる際の加速が抑制され、最終的に時刻t4において停車する。
【0080】
このように、時刻t1a~t3においては、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれるため最適駆動力制御が行われる。その結果、アクセル開度Acの変化に応じず段差乗り上げの走行パターンに応じて車両加速度(トルク)が変化する。さらに、時刻t3~t4においては、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれるため、運転者の操作によらずに最適減速制御により停車させることができる。このように、段差を乗り越えるような走行シーンであっても、加減速の双方において運転者のアクセルペダルの微妙な操作が不要となり操作負担を軽減することができる。
【0081】
本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0082】
本実施形態の車両100の制御方法によれば、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合には、アクセル開度Acによらず、車両100の周囲状況に応じた走行パターンを用いてモータ3が駆動される(S7)。一方、アクセル開度Acが第1操作領域21及び第3操作領域23に含まれる場合には、アクセル開度Acに応じた駆動力が発生するようにモータ3が駆動される(S3、S12)。
【0083】
このようにすることで、運転者はアクセルペダルの細かい操作をすることなく、走行パターンに応じた最適駆動力制御を行うことができるので、運転者に対する操作負担を軽減できる。また、運転者は、運転技術によらずアクセル開度Acを第2操作領域22に含まれるようにアクセルペダルを操作するだけで、最適駆動力制御のモード選択をできるため、運転者による運転モードの選択を容易にすることができる。
【0084】
また、第1操作領域21~第3操作領域23を連続的に設けることで、運転者の運転意図に沿った加速をシームレスに実現することができる。さらに、アクセルペダルにより最適駆動力制御を行うことができるので、手動スイッチ操作のわずらわしさを低減できる。また、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれた状態から第1操作領域21に含まれた状態に遷移する場合には、ドライバの意思で最適駆動力制御を上回る加速タイミングが定まることにより、高度な運転アシスト機能がなくても運転者の運転意図に沿ったアシスト機能を実現することができる。
【0085】
本実施形態の電動車両の制御方法によれば、アクセル開度Acが第2操作領域22に含まれる場合にモータ3の駆動に用いられる走行パターンは、車両100の位置情報、及び、信号機や路面等の周辺状態情報に応じて定められる。このように、位置情報を用いて交差点や駐車場を判断するとともに、交通状況や信号機等の周辺状態情報を用いて最適な走行パターンを決定することで、車両の周囲状況に応じた最適な駆動力制御を行うことができる。
【0086】
本実施形態の電動車両の制御方法によれば、アクセル開度Acが小さくなり、第2操作領域22から第3操作領域23に変化する場合には、車両100の速度が大きいほど大きな制動力を発生させることで減速制御を行うため、よりスムーズな停車を行うことができる。このようにすることで、車両100を減速させる場合においても、アクセルペダルの操作だけで適切に停車させることができる。
【0087】
(変形例)
本変形例においては、機能スイッチ11により前方車両を自動的に追従する前車追従運転機能が実行選択されている場合について説明する。
【0088】
図6は、本変形例における駆動力制御を示すフローチャートの一部である。この図においては、
図3に示されたフローチャートとの差異がある箇所を中心に示されている。詳細には、本変形例においては、ステップS9とS10との間にステップS21の判定処理が設けられるとともに、ステップS21の判定結果に応じてステップS10に加えて、ステップS22の処理が行われる。
【0089】
アクセル開度Acが減少して、第2操作領域22から第1操作領域21へと変化した場合には(S9:Yes)、ステップS21において、コントローラ10は、前車追従運転機能がオンであるか否かを判定する。前車追従運転機能がオンではない場合には(S21:No)、次に、コントローラ10は、上記実施形態と同様にステップS10の最適減速制御を行う。これに対して、前車追従運転機能がオンである場合には(S22:Yes)、コントローラ10は、次に、ステップS22の処理を行う。ステップS22においては、コントローラ10は、前車追従運転を実行する。
【0090】
このような変形例に示される制御が行われることによって、アクセル開度Acが減少して第2操作領域22から第1操作領域21に含まれるように操作領域が遷移した場合には、減速制御に替えて前車追従運転を行うことができる。前車追従運転機能がオンである場合には、最適減速制御を行うよりは、設定された機能に従って先方の車両を追従するのが好ましい。そこで、アクセル開度Acが第3操作領域23に含まれるようになった場合に、前車追従運転機能に切り替わることで運転者の負担を軽減することができる。
【0091】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0092】
上述の各実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理装置は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【符号の説明】
【0093】
1 エンジン、2 発電機、3 モータ、4 バッテリ、5 ギア、6 車軸、7 車輪、10 コントローラ、11 モードスイッチ、14 アクセルポジションセンサ、21 第1操作領域、22 第2操作領域、23 第3操作領域、100 車両