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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182156
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車高調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20221201BHJP
   B60G 17/052 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60G17/015 C
B60G17/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089540
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】河合 敏晃
(72)【発明者】
【氏名】南方 伸之
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA06
3D301AA07
3D301AA48
3D301CA01
3D301DA08
3D301DA14
3D301DA33
3D301DA64
(57)【要約】
【課題】流体ばねを伸縮させる際の負荷力を小さくする。
【解決手段】実施形態に係る車高調整装置は、車輪10と車体12との間に設置された流体ばね14と、流体ばね14に接続された流体シリンダ22と、流体シリンダ22のピストン24を作動させるための作動装置26と、ピストン24を作動させて流体シリンダ22から流体ばね14への流体の給排を制御するための制御装置30と、流体ばね14に並列に設置されて車体重量を分担する補助ばね32と、を備える。1G状態において当該車高調整装置が受け持つ車体重量に対する補助ばね32の補助力の比率Aは25%以上100%未満である。流体ばね14の動作範囲における補助ばね32のばね剛性Raは0.1N/mm≦Ra≦(A/5)N/mmを満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と車体との間に設置された流体ばねと、
前記流体ばねへの流体の給排のために前記流体ばねに接続された流体シリンダと、
前記流体シリンダのピストンを作動させるための作動装置と、
前記作動装置により前記ピストンを作動させて前記流体シリンダから前記流体ばねへの流体の給排を制御するための制御装置と、
前記流体ばねに並列に設置されて車体重量を分担する補助ばねと、
を備える車高調整装置であって、
前記補助ばねは、1G状態において当該車高調整装置が受け持つ車体重量に対する補助力の比率Aが25%以上100%未満であり、前記流体ばねの動作範囲における前記補助ばねのばね剛性Raが0.1N/mm≦Ra≦(A/5)N/mmを満たす、
車高調整装置。
【請求項2】
前記車体の傾斜を検出する検出装置をさらに備え、前記制御装置は、前記検出装置により検出した前記車体の傾斜に基づいて、前記作動装置により前記ピストンを作動させて前記流体ばねに流体を流入または流出させて前記流体ばねを伸長または収縮させる、請求項1に記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記流体ばねが縮む振動が入ったときに、前記ピストンを作動させて前記流体シリンダから前記流体ばねに流体を流入させることで前記流体ばねを伸長させる、請求項1または2に記載の車高調整装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記流体ばねが伸びる振動が入ったときに、前記ピストンを作動させて前記流体ばねから前記流体シリンダに流体を流出させることで前記流体ばねを収縮させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の車高調整装置。
【請求項5】
前記流体ばねがエアサスペンションであり、前記流体が気体である請求項1~4のいずれか1項に記載の車高調整装置。
【請求項6】
前記補助ばねがコイルばねである、請求項1~5のいずれか1項に記載の車高調整装置。
【請求項7】
前記コイルばねが前記流体ばねと同軸状に設けられた、請求項6に記載の車高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車高調整装置に関し、より詳細には、自動車等の車両において車高を調整するために設置される車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、エアサスペンションなどの流体ばねの伸縮を利用して車高を調整することが知られている。例えば、特許文献1には、車輪毎に車高調整機構としてエアサスペンションを設置し、コンプレッサからエアサスペンションに対して高圧流体を流入または流出させることにより、車高を上昇または下降させることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、自動車の車軸と上部構造体との間に配置される空気ばね装置としてばねベローを設け、該ばねベローに導管を介して付加的なばね容積を設け、付加的なばね容積を調節ピストンによって可変とすることにより、ばね定数を可変にしたものが開示されている。
【0004】
特許文献3には、エアサスペンション機構において、制御弁の開閉操作により空気ばね室への空気を給排して、車高センサにより検出した車高位置を目標値に制御すること、およびエアサスペンション機構に補助ばねを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-324130号公報
【特許文献2】特開昭64-70212号公報
【特許文献3】特開昭63-269711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サスペンションを能動的に制御し、走行中の路面凹凸からの振動や姿勢変化を抑制する技術が求められており、そのための手段として、エアサスペンションなどの流体ばねの伸縮を利用することが考えられる。
【0007】
特許文献1のように、エアサスペンションへの流体の給排をコンプレッサにより行う場合、所望の圧力に達するまでに時間が必要であり、応答性が悪くタイムリーな制御には向かない。これに対し、エアサスペンションにエアシリンダを取り付けて空気の給排を行うようにすると、応答性を向上することができる。しかしながら、その場合、エアシリンダのピストンを作動させるモータに負荷がかかるため、省エネルギーの観点からモータなどの作動装置の負荷力を小さくすることが望ましい。
【0008】
一方、特許文献3には、上記のようにエアサスペンション機構に補助ばねを設け、補助ばねに対するエアサスペンションの分担分を適度に設定することが開示されている。しかしながら、特許文献3は、エアサスペンションへの空気の給排をエアシリンダにより行うものではなく、また補助ばねのばね剛性についても記載されておらず、そのため流体ばねを伸縮させる際の作動装置の負荷力を小さくすることができない。
【0009】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、流体ばねを伸縮させる際の作動装置の負荷力を小さくすることができる車高調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る車高調整装置は、車輪と車体との間に設置された流体ばねと、前記流体ばねへの流体の給排のために前記流体ばねに接続された流体シリンダと、前記流体シリンダのピストンを作動させるための作動装置と、前記作動装置により前記ピストンを作動させて前記流体シリンダから前記流体ばねへの流体の給排を制御するための制御装置と、前記流体ばねに並列に設置されて車体重量を分担する補助ばねと、を備える。前記補助ばねは、1G状態において当該車高調整装置が受け持つ車体重量に対する補助力の比率Aが25%以上100%未満であり、前記流体ばねの動作範囲における前記補助ばねのばね剛性Raが0.1N/mm≦Ra≦(A/5)N/mmを満たす。
【0011】
一実施形態において、車高調整装置は、前記車体の傾斜を検出する検出装置をさらに備え、前記制御装置は、前記検出装置により検出した前記車体の傾斜に基づいて、前記作動装置により前記ピストンを作動させて前記流体ばねに流体を流入または流出させて前記流体ばねを伸長または収縮させてもよい。
【0012】
一実施形態において、前記制御装置は、前記流体ばねが縮む振動が入ったときに、前記ピストンを作動させて前記流体シリンダから前記流体ばねに流体を流入させることで前記流体ばねを伸長させてもよい。
【0013】
一実施形態において、前記制御装置は、前記流体ばねが伸びる振動が入ったときに、前記ピストンを作動させて前記流体ばねから前記流体シリンダに流体を流出させることで前記流体ばねを収縮させてもよい。
【0014】
一実施形態において、前記流体ばねがエアサスペンションであり、前記流体が気体でもよい。
【0015】
一実施形態において、前記補助ばねがコイルばねでもよい。その場合、一例として、前記コイルばねが前記流体ばねと同軸状に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態によれば、流体ばねへの流体の給排を流体シリンダにより行うので、コンプレッサを用いる場合に比べて応答性を向上することができる。また、上記のようにばね剛性が小さい補助ばねを流体ばねに並列に設置して車体重量を一部負担させたことにより、流体ばねを伸縮させる際の作動装置の負荷力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る車高調整装置のシステム構成図
図2】同実施形態に係る車高調整装置の側面図
図3】他の実施形態に係る車高調整装置の側面図
図4】さらに他の実施形態に係る車高調整装置の側面図
図5】実施例1,4,6についてのエアサスペンションの伸縮量と、補助ばねの補助力、モータ負荷力およびエアサスペンション内力との関係を概念的に示すグラフ。
図6】実施例2,3,5,7についてのエアサスペンションの伸縮量と、補助ばねの補助力、モータ負荷力およびエアサスペンション内力との関係を概念的に示すグラフ。
図7】比較例1についてのエアサスペンションの伸縮量と、モータ負荷力およびエアサスペンション内力との関係を概念的に示すグラフ。
図8】比較例2~7についてのエアサスペンションの伸縮量と、補助ばねの補助力、モータ負荷力およびエアサスペンション内力との関係を概念的に示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、一実施形態に係る車高調整装置のシステム構成図であり、ばね下部材である車輪10とばね上部材である車体12との間に、流体ばねであるエアサスペンション14が設けられている。車高調整装置は、エアサスペンション14への空気の給排によってエアサスペンション14を伸縮させ、これにより、地面からの車体12の高さである車高を調整できるように構成されている。そのため、エアサスペンション14は、流体である空気の給排によって強制的に伸縮可能な車高調整機能を持つばねである。
【0019】
この例では、車両は乗用車などの4輪自動車であり、各車輪10と車体12との間にそれぞれエアサスペンション14が設置されている。以下、1つの車輪10の車高調整装置について説明するが、他の車輪の車高調整装置についても同様の構成を採用することができる。
【0020】
車輪10は、外周にタイヤ16を備える。
【0021】
エアサスペンション14は、空気ばね室18を備える。図1および図2に示すように、エアサスペンション14には、ショックアブソーバなどの減衰器20が設けられている。この例では、減衰器20はシリンダダンパーからなり、空気ばね室18内に同軸状に配されている。
【0022】
車高調整装置は、エアサスペンション14とともに、流体シリンダであるエアシリンダ22と、エアシリンダ22のピストン24を作動させるための作動装置26と、車体12の傾斜を検出する検出装置28と、作動装置26を制御する制御装置30と、車体重量をエアサスペンション14と分担する補助ばね32と、を備える。
【0023】
エアシリンダ22は、エアサスペンション14に対して流体である空気を給排するための部品であり、導管34を介してエアサスペンション14に接続されている。エアシリンダ22の内部には、ピストン24によって仕切られた2つの作業空間36,38がある。一方の作業空間36はポート36Aを介して導管34に接続され、エアサスペンション14の空気ばね室18に接続されている。他方の作業空間38はポート38Aを介して大気に開放されている。
【0024】
作動装置26は、ピストン24を動作させるアクチュエータであり、上記他方の作業空間38を貫通するピストン24のロッド24Aを軸方向に進退駆動する。作動装置26によってピストン24を押し出すことにより、作業空間36内の空気がエアサスペンション14の空気ばね室18に送り込まれ、それによりエアサスペンション14は伸長する。また、ピストン24を引き込むことにより、エアサスペンション14から作業空間36に空気が吸い出され、それによりエアサスペンション14は収縮する。
【0025】
作動装置26としては、ピストン24を作動させることができれば、特に限定されず、電磁アクチュエータ、リニアモータ、油圧アクチュエータ、ボールねじなどの各種アクチュエータを用いることができる。
【0026】
検出装置28は、車両の状態として水平に対する車体12の傾斜角度を検出するものであり、例えばジャイロセンサ、加速度センサ、ストロークセンサなどにより構成されて、路面状態や加減速、旋回による車体の傾斜を検出する。検出装置28は、各車輪10に対応させて設けてもよいが、1つの検出装置28を例えば車体12の重心位置に設けることにより、4つの車輪10の車高調整装置において1つの検出装置28を共用してもよい。
【0027】
制御装置30は、車高調整装置を制御する部品であり、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インターフェース、各種ドライバ等から構成されたECU(Electronic Control Unit)を用いることができる。制御装置30は、作動装置26および検出装置28等に電気的に接続されて、これらの動作を制御する。制御装置30は、各車輪10に対応させて設けてもよいが、通常は4つの車輪10の車高調整装置において1つの制御装置30を共用させる。
【0028】
制御装置30は、作動装置26を制御してピストン24を作動させ、これによりエアシリンダ22からエアサスペンション14への空気の給排を制御する。より詳細には、制御装置30は、検出装置28により検出した車体の傾斜に基づいて、作動装置26によりピストン24を動作させる。その際、ピストン24を押し出すことにより、エアサスペンション14に空気を流入させることができ、それによりエアサスペンション14を伸長させて車高が高くなるように制御する。また、ピストン24を引き込むことにより、エアサスペンション14から空気を流出させることができ、それによりエアサスペンション14を収縮させて車高が低くなるように制御する。
【0029】
補助ばね32は、エアサスペンション14に並列に設置されて車体12の重量を分担することによりエアサスペンション14の力を補助するばねである。このように、車体重量の一部を負担する補助ばね32を設けることにより、エアサスペンション14を伸縮させるために必要な空気圧を小さくすることができ、空気圧の制御エネルギーを小さくして省エネルギー化を図ることができる。
【0030】
補助ばね32としては、コイルばね、流体ばね(例えば、エアサスペンションやオイルサスペンション)などが挙げられる。エアサスペンション14が流体の給排によって強制的に伸縮可能な車高調整機能を持つのに対し、補助ばね32はそのような車高調整機能を持たないばねである。
【0031】
図2に示す例では、補助ばね32はコイルばねからなり、エアサスペンション14に平行に並べて設けられている。補助ばね32の設置構成としては、これに限定されるものではなく、例えば図3および図4に示すようにエアサスペンション14と同軸状に設けてもよい。
【0032】
図3に示す例では、空気ばね室18内に減衰器20を備えるエアサスペンション14の外周を同軸状に取り囲むようにコイルばねからなる補助ばね32が設けられている。図4に示す例では、コイルばねからなる補助ばね32は、エアサスペンション14の空気ばね室18内に設けられ、空気ばね室18内に配置された減衰器20を同軸状に取り囲むように設置されている。補助ばね32をエアサスペンション14と並列に設置する構成としては、このように補助ばね32(コイルばね)を流体ばねと同軸状に設けてもよく、これにより省スペース化を図ることができる。
【0033】
本実施形態において、補助ばね32は、1G状態において当該車高調整装置が受け持つ車体重量に対する補助力(1G補助力)の比率A(%)が、25%以上100%未満である。また、エアサスペンション14の動作範囲における補助ばね32のばね剛性Raが、0.1N/mm≦Ra≦(A/5)N/mmを満たす。このような補助力特性を持たせることにより、特にエアサスペンション14が伸長したときに、エアサスペンション14が受け持つ分担力が大きくなるのを抑えて、エアシリンダ22を作動させる際の作動装置26の負荷力が小さくなり、高効率化を図ることができる。
【0034】
ここで、1G状態とは、車両が空車状態(人や荷物が乗っていない状態)で水平な地面に停車しているときの車体12の質量がかかった状態である。1G状態において車高調整装置か受け持つ車体重量とは、かかる1G状態において、該当する車輪10にかかる車体12の重量(ばね上荷重)であり、車体12の全重量のうちその車輪10に設けた車高調整装置が受け持つ重量である。一般に、乗用車の車体重量は約8000~20000Nであるため、各車輪10の車高調整装置が受け持つ1G状態での車体重量は約2000~5000Nである。補助ばね32は、1G状態において、各車輪10の車高調整装置が受け持つ車体重量(例えば2000~5000N)の25%以上100%未満の力(1G補助力)を発揮する。より好ましくは、補助ばね32は、1G状態において各車輪10の車高調整装置が受け持つ車体重量の50%以上75%以下の力を発揮することである。
【0035】
補助ばね32のばね剛性(ばね定数)Raは、できるだけ一定の補助力を発揮するために、低剛性、すなわち伸縮による力の変化が小さいことが好ましく、本実施形態ではRaが0.1N/mm以上かつ(A/5)N/mm以下を満足するように設定する。上記のようにA(%)が25%以上100%未満(好ましくは50~75%)であるため、例えばA(%)=25の場合、Raは0.1~5N/mmであり、A(%)=50の場合、Raは0.1~10N/mmであり、A(%)=75の場合、Raは0.1~15N/mmである。
【0036】
補助ばね32の上記ばね剛性Raは、エアサスペンション14の動作範囲において満足すればよく、動作範囲外では0.1N/mm≦Ra≦(A/5)N/mmを満足してもよく、満足しなくてもよい。
【0037】
一実施形態において、エアサスペンション14の動作範囲外では、ばね剛性Raが高剛性、すなわちRa>(A/5)N/mmであることが好ましい。例えば未荷重状態からエアサスペンション14の動作範囲に入るまでの段階では高剛性となるような多段階特性を有することが好ましい。これにより、車両への組み込み時に、小量の収縮で高い補助力を発揮することができる。ここで、エアサスペンション14(流体ばね)の動作範囲とは、車両搭載状態でのエアサスペンション14の可動域であり、伸縮するエアサスペンション14の最大伸び位置から最大縮み位置までの範囲である。
【0038】
なお、補助ばね32に上記のような多段階特性を持たせるための構成については特に限定されない。例えば、コイルばねの場合、2つのコイルばねを直列につなぎ、一方のコイルばねを予め圧縮保持させる構成が挙げられる。この場合、圧縮初期では他方のコイルばねのみによる圧縮変形により剛性が高く、ある程度圧縮変位が進んで上記一方のコイルばねも圧縮変形するようになると、直列ばねによるばね剛性となり、剛性が小さくなる。
【0039】
本実施形態に係る車高調整装置において、車高を調整するための制御方法は特に限定されない。例えば、路面凹凸や加減速による車体12の傾斜を検出装置28が検出したとき、制御装置30は、車体12の傾斜がゼロ(重力に対して車体12が垂直)になるようにエアサスペンション14を伸長または収縮させるように制御する。その際、1つの車輪10に対する車高調整装置を伸長または収縮させて、車体12の傾斜がゼロになるように制御してもよく、複数の車輪10に対する車高調整装置で伸長および/または収縮を組み合わせて、車体12の傾斜がゼロになるように制御してもよい。
【0040】
一実施形態において、制御装置30は、エアサスペンション14が縮む振動が入ったときに、作動装置26によりピストン24を作動させてエアシリンダ22からエアサスペンション14に空気を送り込むことで、エアサスペンション14を伸長させることができる。また、制御装置30は、エアサスペンション14が伸びる振動が入ったときに、作動装置26によりピストン24を作動させてエアサスペンション14からエアシリンダ22に空気を吸い出すことで、エアサスペンション14を収縮させることができる。車両の左右一対、前後一対、または4つの車高調整装置について、これらの制御を適宜に組み合わせることにより、走行中の路面凹凸からの振動や姿勢変化を抑制することができる。
【0041】
本実施形態によれば、エアサスペンション14への空気の給排をエアシリンダ22により行うので、コンプレッサを用いる場合に比べて応答性を向上することができる。そのため、例えばアクティブサスペンションに好適に用いることができる。
【0042】
本実施形態によれば、また、補助ばね32をエアサスペンション14に並列に設置して車体重量を一部負担させたことにより、エアサスペンション14の伸縮に必要な空気圧を小さくすることができ、空気圧の制御エネルギーを小さくすることができる。また、該補助ばね32として上記のようにばね剛性Raが小さいものを用いたので、補助力の変化を小さくすることができる。そのため、エアサスペンション14が伸長したときに、エアサスペンション14が受け持つ分担力の上昇を抑えることができ、エアサスペンション14を動作させるための作動装置26の負荷力を小さくすることができる。
【0043】
上記実施形態では、車高調整機構を持つ流体ばねとしてエアサスペンション14を用いた場合について説明したが、流体ばねとしては、各種気体を流体とする気体ばねを用いてもよく、またオイルサスペンションのように液体を流体とする液体ばねを用いてもよい。そのため、上記空気ばね室18は流体ばね室とも称される。また、流体ばねとして気体ばねを用いる場合、流体シリンダとしては気体シリンダが用いられ、作動装置26によるピストン24の作動により、気体シリンダから気体ばねに気体を給排してもよい。流体ばねとして液体ばねを用いる場合、流体シリンダとしては液体シリンダが用いられ、作動装置26によるピストン24の作動により、液体シリンダから液体ばねに液体を給排してもよい。
【実施例0044】
図1に示す実施形態に係る車高調整装置において、1G状態での当該車高調整装置が受け持つ車体重量に対する補助ばね32の補助力の比率Aと、補助ばね32のばね剛性Raを、下記表1に示すように設定し、その他は同一条件として、実施例1~7および比較例2~7の車高調整装置について、コンピュータシミュレーションによりピストン24を動作させるための作動装置26のモータ負荷力を評価した。
【0045】
比較のため、補助ばね32を有さず、その他は実施例1~7と同一条件とした、比較例1の車高調整装置についても評価を行った。
【0046】
1G状態での各車輪での車体重量は3,777N(385kg)とし、エアシリンダのシリンダサイズは100mmφ(径)、200mm(長)、ピストン変位速度は200mm/sとした。
【0047】
評価は、比較例1におけるエアサスペンションの空気圧およびモータ負荷力をそれぞれ100%として、実施例1~7および比較例2~7のエアサスペンション14における空気圧およびモータ負荷力を求めた。エアサスペンション14の可動域を±25mmとし、-25mmの収縮させた状態から空気を送り込むことによりエアサスペンション14を+25mmまで伸長させる際のモータ負荷力を求めた。
【0048】
モータ負荷力を算出するにあたっては、以下のようにして実質負荷力を算出した。本実施形態では、補助ばねを設置することにより、設置していない場合に比べて空気圧が小さくなっている。したがって、エアサスペンションを同じだけ動かすのに必要な空気量が異なる(即ち、制御に必要な空気量が増大する)。実施例/比較例ではピストン変位速度は同じであるため、空気量が異なると、エアサスペンションを変位させるために必要なピストン変位量も異なる。エアサスペンションを同じ速度で同じ変位量動作させるのに必要なモータ負荷力を比較するため、以下のような換算を行う。すなわち、エアシリンダにおけるピストンの位置からシリンダ稼働量(mm)を求め、比較例1のシリンダ稼働量(mm)との比率を求めた。この比率をピストン負荷量に乗算し、シリンダの増加体積分をシリンダの断面積増加に置き換えてモータの負荷とした。これにより、空気圧が低下して必要な空気量が増大しても、その分だけシリンダの断面積が大きくなり、当該断面積の増加を考慮したモータ負荷力の比較が可能になる。
【0049】
【表1】
【0050】
結果を表1に示す。実施例1~3は、1G時の補助力が車体重量の75%(A=75)である例であり、補助ばねのばね剛性Raが0.1~15N/mmである(A/Ra=750~5)。この場合、1G補助力が車体重量の大部分を受け持つため、エアサスペンションの空気圧が小さかった。また、補助ばねのばね剛性Raが小さいほど、エアサスペンションの伸縮に必要なモータ負荷力が小さかった。
【0051】
実施例4~7は、1G時の補助力が車体重量の50%、25%(A=50、25)である例であり、補助ばねのばね剛性Raが0.1~10N/mm、0.1~5N/mmである(A/Ra=500~5、250~5)。この場合、実施例1~3と同様の効果が見られた。但し、実施例1~3よりも1G時にエアサスペンションが受け持つ重量が大きいため、エアサスペンションの空気圧が大きく、モータ負荷力が大きかった。また、1G補助力が小さいほど、補助ばねを設けたことによる効果が小さくなった。
【0052】
比較例2~7は、1Gの補助力が車体重量の25~75%とした例であるが、補助ばねのばね剛性Raが高い例である。この場合、補助力はあっても、モータ負荷力の低減効果は小さく、比較例1よりも悪化しているものもあった。
【0053】
図5~7は、これら実施例、比較例についてのエアサスペンションの伸縮量と、補助力、モータ負荷力およびエアサスペンション内力(図中「エアサス内力」と表示する。)との関係を示した概念図である。補助ばね無しの比較例1では、図7に示すように、エアサスペンション内力およびモータ負荷力は高い値で略一定である。
【0054】
これに対し、実施例1,4,6では、補助ばねを設けたことにより、図5に示すように、ばね上荷重をエアサスペンション内力と補助力とで分担することができるので、エアサスペンション内力が小さい。また、補助ばねのばね剛性が低いので、補助力が略一定であり、車体重量の一部を伸縮量によらず略一定の力で支えることができる。そのため、エアサスペンションが伸長した状態であっても、エアサスペンションを動作させる力(モータ負荷力)が小さいことがわかる。
【0055】
実施例2,3,5,7では、実施例1,4,6よりも補助ばねのばね剛性Raが大きいので、図6に示すように、エアサスペンションが伸長したときに補助力がやや低くなり、その分、エアサスペンション内力が高くなるので、モータ負荷力の低減効果が実施例1,4,6よりも小さくなることが分かる。
【0056】
比較例2~7では、補助ばねのばね剛性Raがさらに大きいので、図8に示すように、エアサスペンションが伸長したときに補助力が小さくなり、その分、エアサスペンション内力が高くなるので、エアサスペンションの伸縮量に対するモータ負荷力の傾きが大きくなり、モータ負荷力の低減効果が得られないことが分かる。
【0057】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10…車輪、12…車体、14…エアサスペンション(流体ばね)、22…エアシリンダ(流体シリンダ)、24…ピストン、26…作動装置、28…検出装置、30…制御装置、32…補助ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8