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特開2022-182159内燃機関用のカバー部材及びカバー部材を使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182159
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】内燃機関用のカバー部材及びカバー部材を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20221201BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20221201BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20221201BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20221201BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F02F7/00 K
F02F11/00 Z
F01M11/00 T
F16J15/14 D
F16J15/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089543
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野中 敦
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
3J040
【Fターム(参考)】
3G015CA13
3G015DA07
3G015EA11
3G024AA73
3G024BA20
3G024FA08
3G024GA26
3J040BA03
3J040EA03
3J040EA16
3J040EA22
3J040EA50
3J040FA05
3J040FA20
3J040HA05
3J040HA11
3J040HA16
(57)【要約】
【課題】エンジン内部への液体ガスケットの液垂れを抑制する。
【解決手段】互いに締結されて内燃機関を構成する複数の構成部品により画成されて一方に開口するスペースを覆うカバー部10と、カバー部10の外周縁に沿って設けられた周壁部30と、を備え、周壁部30は、外周に沿って構成部品それぞれに接触する環状のガスケット50と、ガスケット50に対して内側で少なくとも1つの構成部品同士が接続する継ぎ目部に対応する位置においてカバー部10とは反対の側に延出して、組付方向において継ぎ目部と少なくとも部分的に対向する延出部34と、を有することを特徴とする。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに締結されて内燃機関を構成する複数の構成部品により環状に画成されて一方に開口するスペースを覆うカバー部と、
前記カバー部の外周縁に沿って設けられた周壁部と、
を備え、
前記周壁部は、
外周に沿って前記構成部品それぞれに接触する環状のガスケットと、
前記ガスケットに対して内側で少なくとも1つの前記構成部品同士が接続する継ぎ目部に対応する位置において前記カバー部とは反対の側に延出して、組付方向において前記継ぎ目部と少なくとも部分的に対向する延出部と、
を有する
ことを特徴とする内燃機関を構成する複数の部品に組み付けられる内燃機関用のカバー部材。
【請求項2】
前記延出部は、前記ガスケットに面する側に該ガスケットに向かって突出した凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項3】
前記延出部は、前記ガスケットに面する側に該ガスケットから離れるように凹んだ凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項4】
前記延出部は、前記周壁部の全周にわたって延在していることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項5】
前記周壁部は、前記ガスケットに対して外側で前記継ぎ目部に対応する位置において前記カバー部とは反対の側に延出する外側延出部を有し、
前記外側延出部は、前記組付方向に沿って前記継ぎ目部と少なくとも部分的に対向する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項6】
前記外側延出部は、前記周壁部の全周にわたって延在していることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項7】
樹脂製であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項8】
前記ガスケットは、弾性部材により形成されており、
前記周壁部には、全周にわたって前記ガスケットを収容する凹の溝が形成されている
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載の内燃機関用のカバー部材。
【請求項9】
互いに締結されて内燃機関を構成する複数の構成部品に液体ガスケットを介して請求項1から8までのいずれか一項に記載の内燃機関用のカバー部材を組み付けて使用する方法であって、
前記カバー部材を、前記複数の構成部品により環状に画成されて一方に開口するスペースを覆うように前記複数の構成部品にわたって組み付けて、前記構成部品同士が接続する少なくとも1つの継ぎ目部に対応する位置において、前記延出部が組付方向において前記継ぎ目部と少なくとも部分的に対向する
ことを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載の内燃機関用のカバー部材を使用する方法。
【請求項10】
前記継ぎ目部の側でありかつ前記スペースの側で、前記スペースを画成する部分のうち前記カバー部材が組み付けられる前記構成部品それぞれの部分に形成された切欠き部を、前記延出部によって前記スペースの側から覆い、前記液体ガスケットを溜めるスペースを画成する
ことを特徴とする請求項9に記載の内燃機関用のカバー部材を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を構成する複数の構成部品にわたって組み付けられる内燃機関用のカバー部材及び複数の構成部品において内燃機関用のカバー部材を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な動力機械用のパワーユニットであるエンジン(内燃機関)は、吸気・排気カムシャフトを回転可能に支持するシリンダヘッド、シリンダヘッドの下部に取り付けられたエンジンブロック、エンジンブロックの下部に取り付けられたオイルパンといった複数の構成部品を備える。また、エンジンブロックに回転可能に支持されたクランクシャフト及び吸気・排気カムシャフトに巻き掛けられたチェーンを収容する収容室を覆うように、シリンダヘッド、エンジンブロック及びオイルパンにフロントカバー(カバー部材)が組み付けられる。
【0003】
このような複数の構成部品により構成されるエンジンにおいては、各構成部品の生産時における寸法のばらつきに起因して、構成部品同士を接合した場合に互いがずれた状態となり、各構成部品の間に段差が生じることがある。このような段差によるずれが吸収されるように、構成部品同士は、液体ガスケットを介して接合されることが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-119966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたエンジンを構成する構成部品同士が互いに接する部分には、凹の切欠き部が形成されている。この切欠き部には液体ガスケットが充填される。つまり、この切欠き部は、液体ガスケットを溜める機能を有する。
【0006】
エンジン組立て時にエンジンを構成する複数の構成部品に液体ガスケットFGが塗布される。図12は、従来のカバー部材500がエンジンに組み付けられた状態を示す概略図である。従来、カバー部材500及びエンジンの構成部品600のそれぞれに凹の切欠き部510,610が形成されている。切欠き部510,610には、硬化前の液体ガスケットFGが溜まるようになっているが、エンジンへのカバー部材500の組立て時に圧縮された硬化前の液体ガスケットFGは、漏れ出てチェーンを収容する収容室620内部へと液垂れすることがある。収容室620内部へ浸入した液体ガスケットFGが収容室620内でチェーンや他の部品に付着することは好ましくない。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エンジン内部への液体ガスケットの液垂れを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るカバー部材は、互いに締結されて内燃機関を構成する複数の構成部品により環状に画成されて一方に開口するスペースを覆うカバー部と、前記カバー部の外周縁に沿って設けられた周壁部と、を備え、前記周壁部は、外周に沿って前記構成部品それぞれに接触する環状のガスケットと、前記ガスケットに対して内側で少なくとも1つの前記構成部品同士が接続する継ぎ目部に対応する位置において前記カバー部とは反対の側に延出して、組付方向において前記継ぎ目部と少なくとも部分的に対向する延出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
この態様によれば、エンジンを構成する構成部品とカバー部材との間において、収容室の側から延出部により構成部品との間から収容室内へ液体ガスケットが液垂れすることを抑制することができる。これにより、カバー部材と構成部品との間で液体ガスケットの充填効率が高まる。
【0010】
また、本発明の一態様に係るカバー部材において、前記延出部は、前記ガスケットに面する側に該ガスケットに向かって突出した凸部を有しているとよい。この態様によれば、溜めスペースの側に浸入してきた液体ガスケットが硬化の再に凸部と係合するので、液体ガスケットを溜めスペース内に留めることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るカバー部材において、前記延出部は、前記ガスケットに面する側に該ガスケットから離れるように凹んだ凹部を有しているとよい。この態様によれば、溜めスペースの断面容積を大きく確保することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るカバー部材において、前記延出部は、前記周壁部の全周にわたって延在しているとよい。この態様によれば、収容室内への液体ガスケットの浸入をカバー部材の全周にわたって抑制することができるとともに、構成部品に対するカバー部材部材の位置決めが容易になる。
【0013】
また、本発明の一態様に係るカバー部材において、前記周壁部は、前記ガスケットに対して外側で前記継ぎ目部に対応する位置において前記カバー部とは反対の側に延出する外側延出部を有し、前記外側延出部は、前記組付方向に沿って前記継ぎ目部と少なくとも部分的に対向するとよい。この態様によれば、カバー部材は、内側及び外側への液体ガスケットの漏れ出しを抑制することができるとともに、構成部品に対するカバー部材部材の位置決めが容易になる。
【0014】
また、本発明の一態様に係るカバー部材において、前記外側延出部は、前記周壁部の全周にわたって延在しているとよい。この態様によれば、内側及び外側への液体ガスケットの漏れ出しをカバー部材の全周にわたって抑制することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るカバー部材は、樹脂製であるとよい。この態様によれば、カバー部材及びエンジンの軽量化を達成することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係るカバー部材において、前記ガスケットは、弾性部材により形成されており、前記周壁部には、全周にわたって前記ガスケットを収容する凹の溝が形成されているとよい。この態様によれば、シール性が向上するとともに、カバー部材の溝に対してガスケットを簡単に装着及び脱着することができる。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る使用方法は、互いに締結されて内燃機関を構成する複数の構成部品に液体ガスケットを介して内燃機関用のカバー部材を組み付けて使用する方法であって、前記カバー部材を、前記複数の構成部品により環状に画成されて一方に開口するスペースを覆うように前記複数の構成部品にわたって組み付けて、前記構成部品同士が接続する少なくとも1つの継ぎ目部に対応する位置において、前記延出部が組付方向において前記継ぎ目部と少なくとも部分的に対向することを特徴とする。
【0018】
この態様によれば、エンジンを構成する構成部品とカバー部材との間において、収容室の側から延出部により構成部品との間から収容室内へ液体ガスケットが液垂れすることを抑制することができる。これにより、カバー部材と構成部品との間で液体ガスケットの充填効率が高まる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る方法によれば、前記継ぎ目部の側でありかつ前記スペースの側で、前記スペースを画成する部分のうち前記カバー部材が組み付けられる前記構成部品それぞれの部分に形成された切欠き部を、前記延出部によって前記スペースの側から覆い、前記液体ガスケットを溜めるスペースを画成してもよい。この態様によれば、エンジンを構成する構成部品とカバー部材との間において、収容室の側から延出部により構成部品との間に液体ガスケットを溜める溜めスペースが画成されるので、収容室内への液体ガスケットの液垂れを抑制することができる。つまり、カバー部材の延出部により、カバー部材と構成部品との間において圧縮されて広がる液体ガスケットを溜めスペースに効率的に閉じ込めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンジン内部への液体ガスケットの液垂れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るフロントカバーを備えるエンジンを概念的に示す図である。
図2】本発明に係るフロントカバーを取り外した状態におけるエンジンを前側から見た概略図である。
図3A】シリンダヘッドとエンジンブロックとの前側の継ぎ目部を拡大して概念的に示す縦断面図である。
図3B】エンジンブロックとオイルパンとの前側の継ぎ目部を拡大して概念的に示す縦断面図である。
図4図1に示すIV部を拡大して示す図である。
図5A】本実施の形態に係るフロントカバーを内側から見た斜視図であり、ガスケットは除かれている。
図5B図5AにおけるB-B線に沿った断面図である。
図6図5BにおけるVI部の拡大図である。
図7A】フロントカバーを取り付ける工程を説明するための図である。
図7B】フロントカバーが取り付けられた状態を示す断面図である。
図8A】第2の実施の形態に係るフロントカバーを外側から見た斜視図である。
図8B】第2の実施の形態に係るフロントカバーを一部断面にして示す斜視図である。
図9】第3の実施の形態に係るフロントカバーが取り付けられた状態を示す断面図である。
図10】フロントカバーの変形例1に係る延出部を示す図である。
図11A】変形例2に係る延出部を有するフロントカバーを部分的に示す断面図である。
図11B】変形例3に係る延出部を有するフロントカバーを部分的に示す断面図である。
図11C】変形例4に係る延出部を有するフロントカバーを部分的に示す断面図である。
図12】従来のカバー部材がエンジンに組み付けられた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
本発明に係るカバー部材は、例えば、エンジン(内燃機関)を構成する複数の構成部品に取り付けられるフロントカバーである。本発明に係るカバー部材が適用されるエンジンは、特定のエンジンに限定されない。例えば、本発明の一実施の形態に係るフロントカバー1は、図1に示すエンジン100に適用される。
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明に係るフロントカバー1を備えるエンジン100を概念的に示す図である。エンジン100は、例えば、吸気および排気カムシャフト(図示せず)と、シリンダヘッド110と、シリンダヘッドカバー120と、エンジンブロック130と、オイルパン140と、クランクシャフト(図示せず)と、チェーン(図示せず)と、フロントカバー1と、を備える。
【0025】
なお、本実施の形態では、説明の便宜上、図1においてシリンダヘッドカバー120の側を「上側U」とし、オイルパン140の側を「下側D」とする。エンジン100においてシリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140は、例えば、上下方向UDに重ねられて互いに取り付けられている。また、本実施の形態において、フロントカバー1が取り付けられる側を「前側(フロント)F」とし、フロントカバー1と対向する側を「後側(リア)R」とする。前側Fとは、エンジン100の設置状態において、例えば、車両の走行方向における前方である。チェーンを収容する収容室160は、本実施の形態においては、前側Fに形成されている。また、エンジン100に対するフロントカバー1を組み付ける方向を「組付方向FR」とする。
【0026】
シリンダヘッド110は、吸気・排気カムシャフトを回転可能に支持する。シリンダヘッドカバー120は、シリンダヘッド110の上部に取り付けられている。エンジンブロック130は、シリンダヘッド110の下部に取り付けられている。オイルパン140は、エンジンブロック130の下部に取り付けられている。クランクシャフトは、エンジンブロック130に回転可能に支持されている。フロントカバー1は、クランクシャフトと吸気・排気カムシャフトとに巻き掛けられたチェーンを覆うようにシリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140に取り付けられている。
【0027】
図2は、本発明に係るカバー部材1を取り外した状態におけるエンジン100を前側Fから見た概略図である。シリンダヘッド110は、前側Fに突出した壁部111を有する。壁部111は、シリンダヘッドカバー120及びエンジンブロック130と接続する部分を除いた周縁部に設けられている。シリンダヘッドカバー120は、前側Fに突出した壁部121を有する。壁部121は、シリンダヘッド110と接続する部分を除いた周縁部に設けられている。エンジンブロック130は、前側Fに突出した壁部131を有する。壁部131は、シリンダヘッド110及びオイルパン140と接続する部分を除いた周縁部に設けられている。オイルパン140は、前側Fに突出した壁部141を有する。壁部141は、エンジンブロック130と接続する部分を除いた周縁部に設けられている。
【0028】
シリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140が互いに上下方向UDに締結された状態において、各構成部品110,120,130,140における壁部111,121,131,141は、互いに環状に連続する環状壁150を形成する。環状壁150の前側Fに面する端面151は、後述するフロントカバー1と接触する面である。
【0029】
シリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140が互いに上下方向UDに締結された状態において、前側Fにはチェーンが収容される収容室160が形成されている。収容室160は、環状壁150によって周方向に画成されていて、前側Fに開口するスペースである。
【0030】
シリンダヘッド110とシリンダヘッドカバー120とは、液体ガスケットFGを介して互いに連結されている。シリンダヘッド110とエンジンブロック130とは、金属製のメタルガスケットMGを介して互いに連結されている。エンジンブロック130とオイルパン140とは、液体ガスケットFGを介して互いに連結されている。なお、本実施の形態において、各構成部品110,120,130,140が、メタルガスケットMG及び液体ガスケットFGを介して互いに締結された状態を含めて互いに接する状態という。
【0031】
フロントカバー1は、シリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140の前側Fの周縁に液体ガスケットFGを介して互いに締結されている。
【0032】
図3Aは、シリンダヘッド110とエンジンブロック130との前側Fの継ぎ目部Fuを拡大して概念的に示す縦断面図である。図3Bは、エンジンブロック130とオイルパン140との前側Fの継ぎ目部を拡大して概念的に示す縦断面図である。エンジン100において互いに積み重なったシリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140は、各構成部品の生産時の寸法ばらつきにより、各構成部品110,120,130,140同士が接続する継ぎ目部Fuに段差が発生することがある。
【0033】
段差が発生した状態において、フロントカバー1は、エンジン100に前側Fから組み付けられる。これにより、例えば、フロントカバー1とシリンダヘッド110とエンジンブロック130との間、及び、フロントカバー1とエンジンブロック130とオイルパン140との間に、いわゆる三差路構造の隙間Sが形成される。この隙間Sをシールするためにフロントカバー1と、シリンダヘッド110、シリンダヘッドカバー120、エンジンブロック130及びオイルパン140との間に、上述のように液体ガスケットFGが使用される。
【0034】
図4は、図2に示すIV部を拡大して示す図である。シリンダヘッド110は、壁部111に切欠き部112を有する。切欠き部112は、エンジンブロック130との継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で前側Fに面する環状壁150の端面151から、後側Rに向かって凹に窪んだ部分である。
【0035】
さらに、シリンダヘッド110は、壁部121に別の切欠き部(図示せず)を有する。この切欠き部は、シリンダヘッドカバー120との継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で前側Fに面する環状壁150の端面151から、後側Rに向かって凹に窪んだ部分である。
【0036】
エンジンブロック130は、壁部131に切欠き部132を有する。切欠き部132は、シリンダヘッド110との継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で前側Fに面する環状壁150の端面151から、後側Rに向かって凹に窪んだ部分である。切欠き部132は、切欠き部112と上下方向UDにおいて連続している。
【0037】
さらに、エンジンブロック130は、壁部131に別の切欠き部(図示せず)を有する。この切欠き部は、オイルパン140との継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で前側Fに面する環状壁150の端面151から、後側Rに向かって凹に窪んだ部分である。
【0038】
また、シリンダヘッドカバー120は、壁部121に切欠き部(図示せず)を有する。この切欠き部は、シリンダヘッド110との継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で前側Fに面する環状壁150の端面151から、後側Rに向かって凹に窪んだ部分である。この切欠き部は、シリンダヘッド110の別の切欠き部と上下方向UDにおいて連続している。
【0039】
オイルパン140は、壁部141に切欠き部(図示せず)を有する。この切欠き部は、エンジンブロック130との継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で前側Fに面する環状壁150の端面151から、後側Rに向かって凹に窪んだ部分である。この切欠き部は、エンジンブロック130の別の切欠き部と上下方向UDにおいて連続している。
【0040】
例えば、シリンダヘッド110及びエンジンブロック130が互いに接合された状態において、上下方向UDにおいて互いに連続した切欠き部112,132には液体ガスケットFGが溜まる。しかしながら、連続する切欠き部112,132から収容室160の側に液体ガスケットFGが流出することがある。
【0041】
本実施の形態に係るフロントカバー1によれば、収容室160の側に液体ガスケットFGが流れることを抑制することができる。図5Aは、本実施の形態に係るフロントカバー1を内側から見た斜視図である。図5Bは、図5AにおけるVB-VB線に沿った断面図である。本実施の形態に係るフロントカバー1は、エンジン100を構成する複数の構成部品110,120,130,140に組み付けられるエンジン用のカバー部材であって、互いに締結されてエンジン100を構成する複数の構成部品110,120,130,140により環状に画成されて前側Fに開口する収容室160を覆うカバー部10と、カバー部10の外周縁に沿って設けられた周壁部30と、を備え、周壁部30は、外周に沿って構成部品110,120,130,140それぞれに接触する環状のガスケット50と、ガスケット50に対して内側で少なくとも1つの構成部品110,130;130,140同士が接続する継ぎ目部に対応する位置においてカバー部10とは反対の側に直線状に延出して、組付方向において継ぎ目部と少なくとも部分的に対向する延出部34と、を有することを特徴とする。以下、フロントカバー1の構成について具体的に説明する。
【0042】
フロントカバー1は、例えば、耐熱性に優れた耐熱強化プラスチックといった樹脂により成形された部材であり、カバー部10と、周壁部30と、ガスケット50と、を有する。カバー部10は、フロントカバー1がエンジン100の各構成部品110,120,130,140に前側Fから組み付けられた状態において、収容室160を前側Fから覆う部分である。
【0043】
周壁部30は、カバー部10の外周縁の全周にわたって延びており、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、カバー部10から収容室160に向かって突出するように形成されている。周壁部30は、カバー部10とは反対の端部の側において、エンジン100の各構成部品110,120,130,140の前側Fに面する環状壁150の端面151と対向又は当接するようになっている。
【0044】
図6は、図5BにおけるVI部を拡大して示す断面図である。周壁部30は、張出部32と延出部34とを有する。張出部32は、周壁部30の外周面31の側から外側に張り出した部分である。張出部32は、周壁部30の全周にわたって環状に延在している。張出部32は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、各構成部品110,120,130,140の前側Fに面する環状壁150の端面151と対向する。なお、図5Aにおいては、例えば、シリンダヘッド110とエンジンブロック130との継ぎ目部Fuに相当する位置に2つの延出部34が設けられているが、シリンダヘッド110とシリンダヘッドカバー120との継ぎ目部Fu、及びエンジンブロック130とオイルパン140との継ぎ目部Fuに相当する位置にそれぞれ2つの延出部34が設けられていてもよい。
【0045】
張出部32は、溝321を有する。溝321は、張出部32の全周にわたって延びる。溝321は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、環状壁150の端面151に対向する張出部32の対向面33からカバー部10の側に向かって凹に形成された溝である。溝321にガスケット50が収容されている。
【0046】
ガスケット50は、弾性材料に形成されており、例えば、ゴムにより形成されている。ガスケット50は、環状であり、溝321内に収容された状態において溝321から部分的にカバー部10とは反対の側に突出している。フロントカバー1は、エンジン100に組み付けられた状態において、溝321から部分的に突出したガスケット50の部分がエンジン100の環状壁150の端面151に接触しており、いわゆるセミフロート型のカバー部材である。
【0047】
延出部34は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、周壁部30においてガスケット50に対し内側(収容室160の側)に設けられている。延出部34は、張出部32又は張出部32の対向面33及びガスケット50に対してカバー部10とは反対の側に延出する部分である。
【0048】
延出部34は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、前後方向FRに先端部34tがシリンダヘッド110の切欠き部112及びエンジンブロック130の切欠き部132を越えるように形成されており、周方向にシリンダヘッド110の切欠き部112及びエンジンブロック130の切欠き部132と少なくとも部分的に対向していればよい。なお、周壁部30の周方向にける延出部34の幅は、シリンダヘッド110及びエンジン100が互いに接した状態において上下方向UDに連続する切欠き部112,132の全長より僅かに小さくても、全長以上であってもよく、適宜、設定されている。
【0049】
次に、エンジン100におけるフロントカバー1の使用について説明する。図7Aは、フロントカバー1を取り付ける工程を説明するための図である。図7Bは、フロントカバー1が取り付けられた状態を示す断面図である。互いに締結されてエンジン100を構成する複数の構成部品110,120,130,140に液体ガスケットFGを介して本実施の形態に係るフロントカバー1を、複数の構成部品110,120,130,140により画成されて前側Fに開口する収容室160を覆うように、複数の構成部品110,120,130,140にわたって組み付けて、継ぎ目部Fuの側でありかつ収容室160の側で、収容室160を画成する環状壁150のうちフロントカバー1が組み付けられるシリンダヘッド110及びエンジンブロック130それぞれの壁部111,131に形成された切欠き部112,132を、延出部34によって収容室160の側から覆い、液体ガスケットFSを溜めるスペースCSを画成する。
【0050】
フロントカバー1をエンジン100に組み付ける前に、全周にわたって環状壁150の端面151に液体ガスケットFGを塗布する。次いで、フロントカバー1を、張出部32の対向面33が環状壁150の端面151に対向するように前側Fから後側Rに向かって接近させ、ガスケット50を端面151に接触させる。この状態において、フロントカバー1の周壁部30の外周面に沿って設けられた複数の取付け部と、エンジン100側の取付け部とが整合し、ネジ等の締結具によりフロントカバー1は、エンジン100に組付けられる。ガスケット50は、前後方向FRに圧縮される。
【0051】
本実施の形態において、フロントカバー1の組付方向は前後方向FRに相当する。延出部34は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、収容室160の側で、例えば、シリンダヘッド110とエンジンブロック130との前後方向FRに延びる継ぎ目部Fuに対向して位置する。
【0052】
延出部34は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、各構成部品110,120,130,140の環状壁150の端面151とは対向しない位置にあり、ガスケット50に対して収容室160の側(内側)に位置する。延出部34と環状壁150とは互いに接触しないようになっており、互いの間隔が可能な限り小さいことが好ましい。
【0053】
延出部34は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、前後方向FRに沿って延びており、その先端部34tは、前側Fから後側Rに向かってシリンダヘッド110の切欠き部112及びエンジンブロック130の切欠き部132を越えて延びている。また、延出部34は、フロントカバー1の周方向において、連続するシリンダヘッド110の切欠き部112及びエンジンブロック130の切欠き部132に対して少なくとも部分的に対向している、つまりオーバーラップしている。これにより、延出部34は、収容室160の内側から外側に向かって液体ガスケットFGを溜める溜めスペースCSを画成し、フロントカバー1とエンジン100との間に液体ガスケットFGの保持構造が形成される。
【0054】
硬化前にガスケット50によって押し潰された液体ガスケットFGは、環状壁150の端面151において拡がり、一部が溜めスペースCS内に流入する。ここで、溜めスペースCSの断面積又は空間容積は、押し潰された液体ガスケットFGが収容室160内へ漏れ出すことを抑制するという観点から、塗布した液体ガスケットFGの断面積又は体積よりも大きいことが好ましい。
【0055】
以上のようなフロントカバー1によれば、例えば、シリンダヘッド110と、エンジンブロック130と、フロントカバー1との間に生じる三差路構造において、収容室160の側から延出部34によりシリンダヘッド110及びエンジンブロック130との間に溜めスペースCSが画成されるので、収容室160内への液体ガスケットFGの液垂れを抑制することができる。つまり、フロントカバー1の延出部34により、フロントカバー1と環状壁150の端面151との間において圧縮されて広がる液体ガスケットFGを溜めスペースCSに閉じ込めることができる。これにより、フロントカバー1と環状壁150の端面151との間で液体ガスケットFGの充填効率が高まる。
【0056】
さらに、成形時及び温度変化により寸法が変形することがある樹脂によりフロントカバー1を製造することができる。樹脂によりフロントカバー1を製造した場合であっても、延出部34により収容室160内への液体ガスケットFGの浸入を効果的に抑制することができる。さらに、フロントカバー1を樹脂製にすることにより、エンジン100の軽量化を達成することができる。
【0057】
さらに、フロントカバー1は、張出部32に形成された溝321に、フロントカバー1と環状壁150の端面151との間におけるシールの用に供される固体のゴム製のガスケットを有している。これにより、フロントカバー1をエンジン100に組み付けた状態において、ガスケット50は、液体ガスケットFGと相俟って、張出部32と環状壁150の端面151との間におけるシール性の向上に寄与する。また、張出部32の溝321に対するガスケット50の挿着及び脱着は容易になり、メインテナンス製に優れている。
【0058】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記の第1の実施の形態において、延出部34は、シリンダヘッド110とエンジンブロック130との継ぎ目部Fuに対応して設けられていたがこれに限定されない。
【0059】
<第2の実施の形態>
図8Aは、第2の実施の形態に係るフロントカバー2を外側から見た斜視図である。図8Bは、第2の実施の形態に係るフロントカバー2を一部断面にして示す斜視図である。なお、以下においては、第1の実施の形態に係るフロントカバー1と異なる部分について特に説明し、フロントカバー1と同じ構成を有する部分については詳細な説明を省く。フロントカバー2は、樹脂により成形された部材であり、カバー部10と、周壁部40と、ガスケット50と、を有する。
【0060】
周壁部40は、カバー部10の外周縁の全周にわたって延びており、フロントカバー2がエンジン100に組み付けられた状態において、カバー部10から収容室160に向かって突出するように形成されている。周壁部40は、張出部42と延出部44を有する。張出部42は、周壁部40の外周から外側に張り出した部分である。
【0061】
張出部42は、溝421を有する。溝421は、張出部42の全周にわたって延びる。溝421に環状のガスケット50が収容されている。ガスケット50は、弾性材料に形成されており、例えば、ゴムにより形成されている。
【0062】
延出部44は、周壁部40のガスケット50に対して内側に設けられている。延出部44は、周壁部40の全周にわたって延在している。延出部44は、フロントカバー2がエンジン100に組み付けられた状態において、各構成部品110,120,130,140の環状壁150の端面151とは対向しない位置にあり、ガスケット50に対して収容室160の側(内側)に位置する。
【0063】
延出部44は、フロントカバー1がエンジン100に組み付けられた状態において、前後方向FRに沿って延びており、その先端部44tは、前側Fから後側Rに向かってシリンダヘッド110の切欠き部112及びエンジンブロック130の切欠き部132を越えて延びている。延出部44は、収容室160の内側から外側に向かって液体ガスケットFGを溜める溜めスペースCSを画成するように構成されている。
【0064】
延出部44は、フロントカバー2がエンジン100に組み付けられた状態において、シリンダヘッド110とエンジンブロック130との前側Fの継ぎ目部Fuに位置し、前後方向FRに沿って延在する継ぎ目部Fuに部分的に対向するようになっている。延出部44と環状壁150とは互いに接触しないようになっており、互いの間隔が可能な限り小さいことが好ましい。
【0065】
以上のようなフロントカバー2によれば、第1の実施の形態に係るフロントカバー1が奏する効果と同様の効果を奏することができる。さらに、フロントカバー2における延出部44は、周壁部40の全周にわたって延びているので、収容室160内への液体ガスケットFGの浸入をフロントカバー2の全周にわたって抑制することができる。
【0066】
さらに、延出部44により、フロントカバー2をエンジン100に組み付ける際、延出部44を環状壁150に沿って収容室160内に挿入させることができ、位置決めが容易になるとともに組付け作業が容易になる。また、延出部44により、組付け時の位置決めのために必要となるダウエルピン構造を削減することができる。
【0067】
<第3の実施の形態>
第2の実施の形態に係るフロントカバー2において延出部44は、ガスケット50に対して内側にのみ設けられていたが、ガスケット50に対して外側に設けられていてもよい。図9は、第3の実施の形態に係るフロントカバー3が取り付けられた状態を示す断面図である。なお、以下においては、第1の実施の形態に係るフロントカバー1と異なる部分について特に説明し、フロントカバー1と同じ構成を有する部分については詳細な説明を省く。フロントカバー3は、樹脂により成形された部材であり、カバー部(図示せず)と、周壁部30と、ガスケット50と、を有する。
【0068】
周壁部30は、張出部32と、2つの延出部34,36とを有する。張出部32は、周壁部30の外周から外側に張り出した部分である。張出部32は、溝321を有する。溝321は、張出部32の全周にわたって延びる。溝321に環状のガスケット50が収容されている。ガスケット50は、弾性材料に形成されており、例えば、ゴムにより形成されている。
【0069】
延出部34は、周壁部30においてガスケット50に対して内側に設けられている。延出部(外側延出部)36は、周壁部30の張出部32においてガスケット50に対して外側に設けられている。つまり、延出部36は、延出部34とは反対の側の張出部32の先端部に設けられている。延出部36は、前後方向FRにおいて環状壁150の外周面に部分的に対向する。延出部34の内面と延出部36の内面との間隔は、環状壁150の間隔よりも僅かに大きい。つまり、延出部34,36と環状壁150との間の間隔は、液体ガスケットFGの漏れ出しを抑制するという点において可能な限り小さいことが好ましい。
【0070】
以上のようなフロントカバー3によれば、第1の実施の形態に係るフロントカバー1が奏する効果と同様の効果を奏することができる。さらに、フロントカバー3は、フロントカバー3の外側でも延出部36を有しているので、環状壁150の外側への液体ガスケットFGの漏れ出しを抑制することができる。
【0071】
さらに、2つの延出部34,36により、フロントカバー3をエンジン100に組み付ける際、延出部34,36の間に環状壁150を挟むようにするので、位置決めが容易になるとともに組付け作業が容易になる。また、一対の延出部34,36により、組付け時の位置決めのために必要となるダウエルピン構造を削減することができる。
【0072】
なお、延出部34,36は、第2の実施の形態に係る延出部44のように、周壁部30の全周にわたって延在していてもよい。この場合、フロントカバー3は、第1の実施の形態に係るフロントカバー1が奏する効果と同様の効果を奏するとともに、フロントカバー3の外側でも周壁部30の全周にわたって延びる延出部36を有しているので、環状壁150の外側への液体ガスケットFGの漏れ出しをフロントカバー3の全周にわたって抑制することができる。
【0073】
<変形例>
上記実施の形態において、延出部34,44は、直線状に延出していたが、これに限定されてない。以下に、変形例に係る延出部について、上記実施の形態と異なる点についてのみ説明する。
【0074】
図10は、フロントカバー1の変形例1に係る延出部34Aを示す図である。変形例1に係る延出部34Aは、ガスケット50に面する側にガスケット50に向かって突出した凸部341Aを有する。凸部341Aの断面形状は、三角形状又は略三角形状である。凸部341Aは、フロントカバー1がエンジン100に取り付けられた状態において、切欠き部112,132の側に少し入り込んでいる。凸部341Aは、延出部34Aの幅方向(上下方向UD)にわたって延びている。前後方向FRにおいて延出部34Aにおいて凸部341Aが設けられる位置は、切欠き部112,132と対向しても、対向しなくてもよい。
【0075】
変形例1によれば、凸部341Aにより、溜めスペースCSの側に浸入してきた液体ガスケットFGが硬化の再に凸部341Aと係合して、溜めスペースCS内に留められるようになる。
【0076】
図11Aは、変形例2に係る延出部34Bを示す図である。変形例2に係る延出部34Bは、ガスケット50に面する側にガスケット50から離れるように凹んだ凹部341Bを有する。変形例2における凹部341Bの断面形状は、三角形状である。凹部341Bは、フロントカバー1がエンジン100に取り付けられた状態において、切欠き部112,132に対向する位置にある。凹部341Bは、延出部34Bの幅方向にわたって延びている。延出部34Bは、凹部341Bが設けられている反対側の延出部34Bの側において突出している。なお、凹部341Bは、切欠き部112,132とは対向しなくてもよい。
【0077】
図11Bは、変形例3に係る延出部34Cを示す図である。変形例3に係る延出部34Cは、ガスケット50に面する側にガスケット50から離れて凹部341Cを形成するように湾曲している。変形例3における延出部34Cの断面形状は、円弧形である。延出部34Cの凹部341Cは、フロントカバー1がエンジン100に取り付けられた状態において、切欠き部112,132に対向する位置にある。凹部341Cは、延出部34Cの幅方向(上下方向UD)にわたって延びている。延出部34Cは、その延び方向(前後方向FR)における中央部において切欠き部112,132から離れるように形成されており、先端部においてエンジン100に接近するように形成されている。なお、凹部341Cは、切欠き部112,132とは対向しなくてもよい。
【0078】
図11Cは、変形例4に係る延出部34Dを示す図である。変形例4に係る延出部34Dは、ガスケット50に面する側にガスケット50から離れて凹んだ凹部341Dを有する。変形例4に係る延出部34Dの凹部341Dの断面形状は、矩形又は略矩形である。延出部34Dの凹部341Dは、その延び方向(前後方向FR)における中央部において切欠き部112,132と対向するようになっている。なお、凹部341Dは、切欠き部112,132とは対向しなくてもよい。
【0079】
変形例1~4のいずれの場合であっても、溜めスペースCSの断面容積が液体ガスケットFGの断面体積よりも大きいことが好ましく、延出部34A,34B,34C,34Dの先端部34At,34Bt,34Ct,34Dtが、切欠き部112,132を前後方向FRにおいて越えているようになっている。
【0080】
なお、変形例1~4に係る延出部34A~34Dは、周壁部30の全周にわたって設けられていてもよい。
【0081】
また、上記の実施の形態及び変形例において、エンジン100を構成する各構成部品には、切欠き部112,132が設けられていたが、各フロントカバー1,2,3は、切欠き部112,132を有していないエンジン100において使用することもできる。この場合、フロントカバー1を、複数の構成部品110,120,130,140により画成されて前側Fに開口する収容室160を覆うように複数の構成部品110,120,130,140にわたって組み付けて、構成部品110,120,130,140同士が接続する少なくとも1つの継ぎ目部Fuに対応する位置において、延出部34,34A,34B,34C,34D,44が組付方向FRにおいて継ぎ目部Fuと少なくとも部分的に対向する。延出部34,34A,34B,34C,34D,44は、先端部が前後方向FRにおいて環状壁150の端面151を越えているとともに、環状壁150の内面との間隔が極めて小さくなっているので、収容室160内への液体ガスケットFGの浸入を抑制することができる。
【0082】
上記の本実施の形態及び変形例において、カバー部材は、フロントカバー1,2,3として説明したが、エンジン100の後側Rに取り付けられるリアカバーであってもよい。
【0083】
上記の実施の形態及び変形例においては、フロントカバー1,2,3の組付方向は、エンジン100の設置状態において前後方向FRであったが、エンジン100の設置状態に応じて、組付方向は、上下方向UDに沿った方向になることがある。
【符号の説明】
【0084】
1,2,3・・・フロントカバー(カバー部材)、10・・・カバー部、30,40・・・周壁部、31・・・外周面、32,42・・・張出部、33・・・対向面、34,34A,34B,34C,34D,44・・・延出部、36・・・延出部(外側延出部)、50・・・ガスケット、100・・・エンジン、110・・・シリンダヘッド(構成部品)、111・・・壁部、112・・・切欠き部、120・・・シリンダヘッドカバー(構成部品)、121・・・壁部、130・・・エンジンブロック(構成部品)、131・・・壁部(構成部品)、132・・・切欠き部、140・・・オイルパン(構成部品)、141・・・壁部、150・・・環状壁、151・・・端面、160・・・収容室(スペース)、321・・・溝、341A・・・凸部、341B,341C,341D・・・凹部、421・・・溝、CS・・・溜めスペース(CS)、FG・・・液体ガスケット、FR・・・組付方向、Fu・・・継ぎ目部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12