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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182167
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】走行車線推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20221201BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089553
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】式町 健
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB33
2F129BB49
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF05
5H181FF22
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
(57)【要約】
【課題】適切に走行車線を推定可能な走行車線推定装置を提供する。
【解決手段】走行車線推定装置は、車両が走行している位置を検知する検知装置の検知結果を取得する検知結果取得部と、車両が走行している道路の車線情報を含む地図情報を記憶する地図記憶部とを備えている。走行車線推定装置は、検知装置が検知した検知結果と地図記憶部が記憶している地図情報とを用いて走行車線である確率が最も高い車線である最高確率車線を算出する確率算出部を備えている。走行車線推定装置は、確率算出部が算出した最高確率車線が所定の更新時間にわたって継続して同じ車線である場合に、最高確率車線を最新記憶車線として記憶する車線記憶部と、更新時間を設定する更新時間設定部とを備えている。更新時間設定部は、確率算出部が算出した最高確率が高いほど更新時間を短い時間に設定する走行車線推定装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(5)が走行している位置を検知する検知装置(10)の検知結果を取得する検知結果取得部(71)と、
前記車両が走行している道路の車線情報を含む地図情報を記憶する地図記憶部(72)と、
前記検知装置が検知した前記検知結果と前記地図記憶部が記憶している前記地図情報とを用いて走行車線である確率が最も高い車線である最高確率車線を算出する確率算出部(73)と、
前記確率算出部が算出した前記最高確率車線が所定の更新時間にわたって継続して同じ前記車線である場合に、前記最高確率車線を最新記憶車線として記憶する車線記憶部(75)と、
前記更新時間を設定する更新時間設定部(77)とを備え、
前記更新時間設定部は、前記確率算出部が算出した最高確率が高いほど前記更新時間を短い時間に設定する走行車線推定装置。
【請求項2】
前記更新時間設定部は、前記最高確率が早期更新確率未満である場合には、猶予更新時間を前記更新時間として設定し、前記最高確率が前記早期更新確率以上である場合には、前記猶予更新時間よりも短い時間である早期更新時間を前記更新時間として設定する請求項1に記載の走行車線推定装置。
【請求項3】
前記更新時間設定部は、前記確率算出部が算出した前記最高確率が、前記早期更新確率よりも高い確率に設定されている即時更新確率以上である場合には、前記早期更新時間よりも短い時間である即時更新時間を前記更新時間として設定する請求項2に記載の走行車線推定装置。
【請求項4】
前記更新時間設定部は、前記車両が車線境界線(53)のない無車線区間(55)を走行中であって、前記無車線区間の距離が切り替え距離未満である場合には、前記最高確率が前記早期更新確率未満であっても前記猶予更新時間よりも短い時間を前記更新時間として設定する請求項2または請求項3のいずれかに記載の走行車線推定装置。
【請求項5】
前記地図記憶部は、前記地図情報として前記無車線区間の距離を示す情報を記憶しており、
前記更新時間設定部は、前記地図記憶部に記憶されている前記無車線区間の距離を示す情報に基づいて、前記車両が走行中の前記無車線区間の距離が前記切り替え距離未満であるか否かを判断する請求項4に記載の走行車線推定装置。
【請求項6】
前記検知結果取得部は、
前記道路の区画線を検知して前記車両が走行している位置を検知する第1検知装置(10a)の前記検知結果である第1検知結果と、
前記区画線を検知することなく前記車両が走行している位置を検知する第2検知装置(10b)の前記検知結果である第2検知結果とを取得し、
前記確率算出部は、前記第1検知結果と前記第2検知結果との両方の前記検知結果を用いて走行車線確率を算出可能な請求項1から請求項5のいずれかに記載の走行車線推定装置。
【請求項7】
前記確率算出部は、前記区画線を検知できる場合には、少なくとも前記第1検知結果を用いて前記走行車線確率を算出し、前記区画線を検知できない場合には、前記第1検知結果を用いることなく前記走行車線確率を算出する請求項6に記載の走行車線推定装置。
【請求項8】
前記確率算出部は、前記第1検知結果を用いることなく算出した前記最高確率の上限値を、前記第1検知結果を用いて算出した前記最高確率の前記上限値に比べて低くする請求項6または請求項7に記載の走行車線推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、走行車線推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車線数の増減区間が認識されると、位置推定部の地図データによる推定位置の重みづけを、車線数の増減区間が認識されないときよりも小さく設定して、地図データによる推定位置を補正する自己位置推定装置を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-207190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献の構成では、車線数の増減区間が認識されるか否かで推定位置の重みづけを変え、自己位置推定精度の安定化を図っている。しかしながら、自己位置の推定精度を高める方法には、様々な方法が想定される。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、走行車線推定装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される1つの目的は、適切に走行車線を推定可能な走行車線推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された走行車線推定装置は、車両(5)が走行している位置を検知する検知装置(10)の検知結果を取得する検知結果取得部(71)と、
車両が走行している道路の車線情報を含む地図情報を記憶する地図記憶部(72)と、
検知装置が検知した検知結果と地図記憶部が記憶している地図情報とを用いて走行車線である確率が最も高い車線である最高確率車線を算出する確率算出部(73)と、
確率算出部が算出した最高確率車線が所定の更新時間にわたって継続して同じ車線である場合に、最高確率車線を最新記憶車線として記憶する車線記憶部(75)と、
更新時間を設定する更新時間設定部(77)とを備え、
更新時間設定部は、確率算出部が算出した最高確率が高いほど更新時間を短い時間に設定する。
【0007】
開示された走行車線推定装置によると、更新時間設定部は、確率算出部が算出した最高確率が高いほど更新時間を短い時間に設定する。このため、確率算出部が算出した最高確率が高いほど素早く最新記憶車線を最高確率車線で更新できる。したがって、最新記憶車線と実際の走行車線とが互いに異なる車線となる時間を短くしやすい。よって、適切に走行車線を推定可能な走行車線推定装置を提供できる。
【0008】
例えば、無車線区間などの車線を適切に検知できない道路では、最高確率が低く算出されやすく、更新時間が長く設定されることになる。一方、車線が明瞭に検知できる道路では、最高確率が高く算出されやすく、更新時間が短く設定されることとなる。このため、車線推定が困難な区間から車線推定の容易な区間に車両が移動する際に、速やかに最新記憶車線を更新して、最新記憶車線と実際の走行車線とを一致させやすい。特に、料金所を通過した後や車線数が増減した直後などにおいて、最新記憶車線と実際の走行車線とが一致する状態を速やかに実現しやすい。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】走行車線推定装置が搭載されている車両を示す構成図である。
図2】車載カメラの撮像範囲を説明するための説明図である。
図3】走行車線推定制御に関するブロック図である。
図4】地図情報を説明するための説明図である。
図5】走行車線推定制御に関するフローチャートである。
図6図5のステップS110の処理に関するフローチャートである。
図7図5のステップS140の処理に関するフローチャートである。
図8】第2実施形態における走行車線推定制御に関するフローチャートである。
図9図8のステップS210の処理に関するフローチャートである。
図10図8のステップS240の処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
第1実施形態
図1において、走行車線推定装置1は、車両5に搭載されている。走行車線推定装置1は、車両5がどの車線54を走行しているかを推定するための装置である。走行車線推定装置1が推定した走行車線の情報は、車両5の自動運転における走行制御等に利用可能である。走行車線推定装置1は、走行車線推定システムを提供する装置とも言える。
【0013】
走行車線推定装置1は、車載カメラ11と、LiDAR装置12と、ミリ波レーダ13と、衛星測位装置16とを備えている。LiDARは、Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Rangingの略である。
【0014】
車載カメラ11は、車両5の周囲を撮像する装置である。車載カメラ11は、例えば車両5のルーフ部の前方に設けられている。この場合、車載カメラ11は、車両5の前方を撮像することとなる。
【0015】
撮像データには、例えば、道路に設けられた区画線51が含まれ得る。区画線51には、車線幅や車線数等の情報が含まれており、この情報から道路幅や道路形状等の特徴、すなわち道路の特徴を推定可能である。
【0016】
撮像データには、区画線51以外にも看板、交通信号機、道路標識、ガードレール、路側帯、街路樹、壁等の自力では移動することのできない物体である静止物体が含まれ得る。区画線51は、静止物体の一例を提供する。撮像データには、歩行者、人間以外の動物、自転車、オートバイ、他車両等の自力で移動することのできる物体である移動物体が含まれ得る。
【0017】
図2に示すように、車載カメラ11の撮像範囲は、車両5の左右方向の長さである車幅よりも広い範囲である。このため、撮像データには、車両5の走行車線に隣接する車線54等を含む複数の車線54が含まれ得る。また、撮像データには、車両5の走行車線に隣接する車線54を走行する他車両が含まれ得る。
【0018】
図1において、LiDAR装置12は、光の照射に対する反射点からの反射光を検出することで、反射点までの距離を計測する計測装置である。LiDAR装置12から反射点までの距離を複数の点について計測することで、LiDAR装置12の周囲を三次元の点群データとして取得することができる。LiDAR装置12は、測距装置とも言える。
【0019】
ミリ波レーダ13は、所定方向に向けてミリ波または準ミリ波を送信するとともに、この送信波が物体で反射されて返ってきた反射波を受信する。ミリ波レーダ13は、反射波の受信データを解析することにより、車両5に対する物体の相対位置や相対速度を計測する計測装置である。ミリ波レーダ13は、車両5の前方において中央、右方、左方のそれぞれに設けられている。ミリ波レーダ13は、ミリ波または準ミリ波を、車両5の前方範囲、前側方範囲等へ向けて照射する。ミリ波レーダ13は、測距装置とも言える。
【0020】
衛星測位装置16は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えている。GNSS受信機は、人工衛星から送信される測位信号を受信する装置である。衛星測位装置16は、受信した測位信号に基づいて車両5の絶対位置を測位可能である。ただし、衛星測位装置16で測位した絶対位置には、誤差が含まれている。衛星測位装置16が受信した測位信号と後述する車両状態センサ15の検知結果等を組み合わせることにより、車両5の測位精度を高めることができる。
【0021】
図3において、走行車線推定装置1は、検知装置10と通信装置17とタイマ18と制御部70とを備えている。検知装置10は、車両5の走行している車線54である走行車線の推定に必要な情報を検知するための装置である。検知装置10の検知結果を用いた走行車線の推定方法については、後に説明する。検知装置10は、第1検知装置10aと第2検知装置10bとを備えている。制御部70は、検知装置10の検知結果を取得する。
【0022】
第1検知装置10aは、道路に設けられている区画線51を直接的、あるいは間接的に検知して車両5の位置を検知可能な検知装置10である。第1検知装置10aには、車載カメラ11、LiDAR装置12、ミリ波レーダ13が含まれる。車載カメラ11は、区画線51を撮像することで区画線51を直接検知可能な検知装置10である。LiDAR装置12は、路面と区画線51との反射率の違いを検知することで区画線51を直接検知可能な検知装置10である。ミリ波レーダ13は、区画線51に沿って設けられているガードレールや路側帯等を検知することで間接的に区画線51の位置を検知可能な検知装置10である。
【0023】
車載カメラ11は、大雪や豪雨等の悪天候時や周囲の暗い夜間には、撮像データに区画線51等の道路の特徴を示す情報が明瞭に含まれにくい。このため、走行車線の推定精度が低下しやすい。また、区画線51がかすれている場合や雑草等によって区画線51の一部が隠れている場合には、走行車線の推定精度が低下しやすい。LiDAR装置12は、車載カメラ11と同様に、天候や区画線51の状況により、走行車線の推定精度が低下し得る。ミリ波レーダ13は、車載カメラ11やLiDAR装置12に比べて天候の影響を受けにくい。しかしながら、ガードレール等の区画線51に沿って設けられている物が存在しない場合には、区画線51を間接的に検知することが困難である。
【0024】
このように、第1検知装置10aは、区画線51を明瞭に検知可能な状況下では、走行車線の推定精度を高く保つことができる。一方、区画線51を検知しにくい状況下では、走行車線の推定精度が大きく低下することとなる。第1検知装置10aは、車両5の周辺環境や走行環境を認識する環境認識センサとも言える。
【0025】
第1検知装置10aは、車載カメラ11とLiDAR装置12とミリ波レーダ13との3つの装置によって構成される場合に限られない。例えば、車載カメラ11とLiDAR装置12とミリ波レーダ13とのうち、いずれか1つの装置のみで構成されていてもよい。あるいは、第1検知装置10aの検知精度を高める他の装置と組み合わせて構成されていてもよい。
【0026】
第2検知装置10bは、区画線51を検知することなく車両5の位置を検知する検知装置10である。第2検知装置10bには、車両状態センサ15と衛星測位装置16とが含まれる。車両状態センサ15とは、車両5の状態を検知するためのセンサである。車両状態センサ15には、例えば車両5の速度を検知する車速センサが含まれる。車両状態センサ15には、例えば車両5の角速度を検知するジャイロセンサが含まれる。車両状態センサ15には、例えば車両5のヨーレートを検知するヨーレートセンサが含まれる。
【0027】
車両状態センサ15が検知した各状態に基づいて、車両5の位置が時間経過とともにどのように変化したかを推定することができる。しかしながら、車両状態センサ15が検知する車両5の状態には誤差が含まれる。このため、車両状態センサ15で検知した車両5の状態のみから車両5の位置を推定する場合には、推定結果と実際の位置との間に誤差が生じる場合がある。推定結果と実際の位置との誤差は、車両5が走行する度に累積されるため、車両5が走行する距離が長いほど大きくなりやすい。
【0028】
衛星測位装置16が受信した測位信号と車両状態センサ15が検知した車両5の状態との両方の情報に基づいて車両5の位置を推定可能である。この場合には、測位信号の受信によって絶対位置が更新される。このため、車両状態センサ15による誤差が累積されにくくなる。したがって、車両状態センサ15のみを用いた場合に比べて、推定結果と実際の位置との誤差を小さくしやすい。ただし、衛星測位装置16を用いた絶対位置の推定精度によって、走行車線の推定精度が大きく異なることとなる。
【0029】
このように、第2検知装置10bは、天候や区画線51の状況によらず走行車線の推定精度を一定に保ちやすい。一方、衛星測位装置16の精度が低い場合には、第2検知装置10bの検知結果を用いた走行車線の推定精度が低くなりやすい。
【0030】
制御部70は、検知装置10に接続している。制御部70は、検知装置10の各検知結果を取得する。以下では、第1検知装置10aの検知結果を第1検知結果、第2検知装置10bの検知結果を第2検知結果とそれぞれ呼ぶことがある。
【0031】
通信装置17は、車両5の外部と通信を行うための装置である。通信装置17は、例えばクラウドサーバに設けられている地図情報データベースから所望の地図情報を受信可能に構成されている。ここで、地図情報とは、車両5の自動運転に利用可能な情報であって、道路に関する情報や道路に関連する建物の情報を含んでいる。
【0032】
図4に示すように、地図情報には、走行可能な道路における車線数、車線位置、車線形状等の車線情報が含まれている。例えば車両5の走行可能な車線54が片側三車線で存在する場合を想定する。この場合には、第1車線54a、第2車線54b、第3車線54cのように車線54を構成する複数の車線54ごとの情報が地図情報に含まれることとなる。
【0033】
地図情報には、車道外側線52と車線境界線53とを備えている区画線51が含まれている。車道外側線52は、車道と路肩との境界を示す区画線51であり、実線で示されている。車線境界線53は、車線54同士の境界を示す区画線51であり、破線で示されている。車線境界線53のうち1本は、第1車線54aと第2車線54bとの境界を示し、残りの1本は、第2車線54bと第3車線54cとの境界を示している。
【0034】
地図情報には、車線54が区切られていない区間である無車線区間55の情報が含まれている。無車線区間55においては、車線境界線53が示されておらず、車道外側線52のみが示されている。無車線区間55の情報には、無車線区間55の距離を示す情報や、位置を示す情報が含まれる。地図情報に含まれ得る特別な区間の情報は、無車線区間55に限られない。例えば、車線数が増減する増減区間や、車両5をスムーズに誘導するための導流帯が示されている導流帯区間等の区間が含まれていてもよい。
【0035】
地図情報には、高速道路の料金所59が含まれている。料金所59の前後では、車線数が変化している。より詳細には、料金所59では、4つのレーンが存在し、料金所59を通過した後では車線54が片側三車線となっている。料金所59を通過した後の道路では、一時的に車線54の車線数が変化するため、無車線区間55が形成されている。
【0036】
無車線区間55においては、第1検知装置10aが車両5の現在地よりも先に存在する車線境界線53を検知する必要がある。無車線区間55の開始位置から終了位置に近づくほど、区画線51を近い位置で検知できるようになる。このため、無車線区間55の開始位置から終了位置に近づくほど、第1検知装置10aの検知精度は高くなりやすい。無車線区間55は、走行車線を推定しにくい区間であると言える。同様に、車線数の増減する増減区間についても、走行車線が推定しにくい区間であると言える。まとめると、無車線区間55と増減区間とは、走行車線の推定が困難な車線推定困難区間である。
【0037】
図3において、制御部70は、通信装置17に接続している。制御部70は、通信装置17を用いて必要な情報を外部に送信する。制御部70は、通信装置17を用いて必要な情報を外部から受信する。
【0038】
制御部70は、タイマ18に接続している。タイマ18は、時間を計測する装置である。タイマ18は、例えば特定のタイミングからの経過時間を計測する。制御部70は、タイマ18が計測した経過時間を取得する。
【0039】
制御部70は、検知結果取得部71と地図記憶部72と確率算出部73と車線判断部74と車線記憶部75と更新時間設定部77とを備えている。制御部70は、走行車線推定装置1における制御を担う走行車線推定制御装置とも言える。
【0040】
検知結果取得部71は、検知装置10を用いた検知結果を取得する。また、検知結果取得部71は、通信装置17を用いて受信した地図情報や、タイマ18を用いて計測した経過時間等の情報についても取得する。地図情報の取得は、通信装置17を用いて受信する方法に限られない。例えば、車両5に搭載されている記憶装置に記憶されている地図情報データベースから必要な地図情報を取得してもよい。
【0041】
地図記憶部72は、検知結果取得部71が取得した地図情報を記憶する。地図記憶部72には、車両5の現在地を含む道路区域である現在区域の地図情報が記憶されている。また、地図記憶部72には、車両5がこれから走行する予定の道路区域である予定区域の地図情報が記憶されている。また、地図記憶部72には、車両5が走行した後の道路区域である過去区域の地図情報が記憶されている。ただし、過去区域の地図情報については、自動運転で利用済みの地図情報であるため、順次削除する構成としてもよい。まとめると、地図記憶部72には、現在の自動運転に使用している地図情報と、これから自動運転に使用予定の地図情報とが記憶されている。
【0042】
確率算出部73は、車両5の走行車線である確率、すなわち走行車線確率を車線54ごとに算出する。確率算出部73は、検知結果取得部71が取得した検知結果と、地図記憶部72に記憶されている地図情報とに基づいて、走行車線確率を算出する。以下では、走行車線確率が最も高い車線54を最高確率車線と呼ぶことがある。また、最も高い走行車線確率を最高確率と呼ぶことがある。
【0043】
車線判断部74は、後述する最新記憶車線と確率算出部73が算出した最高確率車線とが一致しているか否かを判断する。言い換えると、車線判断部74は、最新記憶車線が実際の走行車線と一致しているか否かを判断する機能を担っているとも言える。
【0044】
車線記憶部75は、走行車線であると推定された車線54を最新記憶車線として記憶する。最新記憶車線とは、車両5の走行車線として記憶した最新の走行車線であり、車両5が走行することで変化し得る情報である。例えば、車両5が車線変更を行った場合には、最新記憶車線と実際の走行車線とが一時的に異なる車線54となる場合がある。この場合には、車線変更後の検知結果を取得して走行車線を推定し直すことにより、最新記憶車線が更新され、最新記憶車線と実際の走行車線とが一致することとなる。
【0045】
更新時間設定部77は、更新時間を設定する。更新時間とは、車線記憶部75に記憶されている最新記憶車線を更新するか否かを判断するための時間である。例えば、特定の車線54が最高確率車線である状態が更新時間にわたって維持されている場合に、最高確率車線を最新記憶車線として更新して記憶することとなる。
【0046】
更新時間が長いほど最新記憶車線が更新されにくい。このため、検知装置10の誤差等によって最高確率車線が頻繁に変化する場合であっても、最新記憶車線が頻繁に変化することを抑制しやすい。一方、更新時間が短いほど最新記憶車線が更新されやすい。このため、車線変更等によって実際の走行車線が変化した場合に、最新記憶車線を素早く更新して最新記憶車線と実際の走行車線が異なる状態となる時間を短くできる。
【0047】
走行車線推定装置1を用いた走行車線推定制御の詳細について、以下に説明する。車両5の自動運転を実現するためには、車両5の走行車線を特定する必要がある。このため、走行車線推定制御によって車両5の走行車線を適切に推定することは、車両5の自動運転を実現するための1つの工程を担っていると言える。以下では、車両5が料金所59を通過して車線54を走行するまでの間における走行車線推定制御を例に説明を行う。また、車線54としては、第1車線54aと第2車線54bと第3車線54cとの片側三車線で構成されている場合を想定する。
【0048】
図5において、車両5のパワースイッチがオンされるなどして走行車線推定制御を開始するとステップS101で、車両5の現在地を検知結果取得部71が取得する。車両5の現在地は、衛星測位装置16を用いて取得可能である。
【0049】
走行車線推定制御を開始する条件は、上述の例に限られない。例えば、走行可能な車線54が片側二車線以上あることを検知した場合に、走行車線推定制御を開始してもよい。この場合、走行可能な車線54が片側一車線である場合には、走行車線推定制御を開始しない構成となる。車両5の現在地を取得した後、ステップS102に進む。
【0050】
ステップS102では、車両5の現在地における道路区域である現在区域の地図情報を検知結果取得部71が取得する。また、ナビゲーション装置等に車両5の目的地が入力されている場合には、走行予定経路の道路区域である予定区域の地図情報を検知結果取得部71が取得する。取得した地図情報は、地図記憶部72が記憶することとなる。必要な地図情報を取得した後、ステップS110に進む。
【0051】
ステップS110では、確率算出部73が車線54ごとの走行車線確率を算出する。走行車線確率の算出に当たっては、取得した地図情報から車線54の車線数を取得し、車線54ごとの走行車線確率を算出する。ただし、片側六車線など車線数が非常に多い場合には、全ての車線54について走行車線確率を算出する必要はない。例えば、車両5の現在地から最も近い位置の車線54とそれに隣接する車線54についてのみ走行車線確率を算出するなどしてもよい。走行車線確率の詳細な算出方法について、図6を用いて以下に説明する。
【0052】
図において、ステップS111では、第1検知装置10aを用いた検知結果である第1検知結果を検知結果取得部71が取得する。より詳細には、検知結果取得部71は、車載カメラ11で撮像した撮像データと、LiDAR装置12で計測した三次元点群と、ミリ波レーダ13で計測した距離データとを第1検知結果として取得する。第1検知結果を取得した後、ステップS113に進む。
【0053】
ステップS113では、確率算出部73が個別確率を算出する。個別確率とは、検知装置10ごとに個別に算出する走行車線確率のことである。個別確率には、車載カメラ11で撮像した撮像データに基づいて算出した走行車線確率が含まれる。個別確率には、LiDAR装置12で計測した三次元点群に基づいて算出した走行車線確率が含まれる。個別確率には、ミリ波レーダ13で計測した距離データに基づいて算出した走行車線確率が含まれる。
【0054】
個別確率は、互いに異なる情報に基づいて算出されるため、何の情報に基づいて走行車線確率を算出するかによって算出される確率が異なり得る。また、天候や区画線51の擦れ具合等によって第1検知装置10aの検出精度が異なる。このため、算出される確率が天候や区画線51の状態によって変化し得る。
【0055】
車載カメラ11を用いた個別確率の算出方法の具体例を以下に説明する。無車線区間55を抜ける手前であって、車線境界線53が車両5の左前方と右前方とのそれぞれに確認できる場合を第1の事例として想定する。車両5が第1車線54aを走行中であれば、車両5の左前方には、車線境界線53が存在しない。また、車両5が第3車線54cを走行中であれば、車両5の右前方には、車線境界線53が存在しない。このため、第1の事例では、例えば第1車線54aと第3車線54cの走行車線確率をそれぞれゼロ、第2車線54bの走行車線確率を100%と算出できる。
【0056】
車両5の左方に車道外側線52が確認でき、車両5の右方に車線境界線53が確認できる場合を第2の事例として想定する。第2の事例では、車両5の右方に車線境界線53が確認できているため、少なくとも第3車線54cの走行車線確率はゼロであると算出できる。
【0057】
さらに、車両5から車道外側線52までの距離が端車線距離未満であれば、第1車線54aの走行車線確率を第2車線54bの走行車線確率よりも高い値で算出できる。ここで、端車線距離とは、端の車線54を走行している場合に車両5と車道外側線52との間の距離として想定される距離である。端車線距離は、少なくとも車線幅よりも短い距離に設定されている。端車線距離は、例えば2mである。まとめると、第2の事例では、例えば第1車線54aの走行車線確率を95%、第2車線54bの走行車線確率を5%、第3車線54cの走行車線確率をゼロと算出できる。
【0058】
車道外側線52と車線境界線53とのいずれも確認できない場合を第3の事例として想定する。第3の事例では、無車線区間55において、車両5の周囲が他車両で囲まれてしまっている状況であることが想定できる。仮に、第1車線54aや第3車線54cのような端の車線54であれば、周囲を他車両に囲まれた場合であっても、車道外側線52は確認できる可能性が高い。したがって、車道外側線52と車線境界線53とのいずれも確認できないことから、第1車線54aや第3車線54cの走行車線確率は、第2車線54bの走行車線確率よりも低いと判断できる。まとめると、第3の事例では、例えば第1車線54aと第3車線54cの走行車線確率をそれぞれ20%、第2車線54bの走行車線確率を60%と算出できる。
【0059】
LiDAR装置12を用いた個別確率の算出についても、車載カメラ11を用いた個別確率の算出と同様の算出方法を採用可能である。ただし、車載カメラ11とLiDAR装置12とでは、区画線51の検出精度が異なるため、算出される個別確率も異なる確率となり得る。車載カメラ11とLiDAR装置12とを用いた走行車線確率の算出方法は、上述の例に限られない。
【0060】
ミリ波レーダ13を用いた個別確率の算出方法を以下に説明する。道路幅が11mであって、車道外側線52に沿って設けられているガードレールを車両5の左方に1m、車両5の右方に9mの位置にそれぞれ確認できる場合を第4の事例として想定する。車両5の左方におけるガードレールまでの距離が近く、右方におけるガードレールまでの距離が遠いため、道路全体の中央よりも左方に位置していると判断できる。まとめると、第4の事例では、例えば第1車線54aの走行車線確率を90%、第2車線54bの走行車線確率を10%、第3車線54cの走行車線確率をゼロと算出できる。
【0061】
他車両の走行軌跡により車両5の左前方と右前方のそれぞれに他車両が走行していることが確認できる場合を第5の事例として想定する。車両5の左前方に他車両が存在することから、第1車線54aが走行車線である確率は低いと判断できる。同様に、車両5の右前方に他車両が存在することから、第3車線54cが走行車線である確率は低いと判断できる。まとめると、第5の事例では、例えば第1車線54aと第3車線54cの走行車線確率をそれぞれ5%、第2車線54bの走行車線確率を90%と算出できる。
【0062】
車載カメラ11やLiDAR装置12でもガードレールまでの距離や他車両の走行軌跡が検知できる場合には、第4の事例や第5の事例と同様の方法で車載カメラ11やLiDAR装置12を用いて個別確率を算出可能である。ただし、装置よって距離の推定精度が互いに異なるため、算出される個別確率も異なる確率となり得る。ミリ波レーダ13を用いた走行車線確率の算出方法は、上述の例に限られない。個別確率を算出した後、ステップS115に進む。
【0063】
ステップS115では、第2検知装置10bを用いた検知結果である第2検知結果を検知結果取得部71が取得する。より詳細には、検知結果取得部71は、車両状態センサ15で検知した車速と角速度とヨーレートとを第2検知結果として取得する。第2検知結果を取得した後、ステップS116に進む。
【0064】
ステップS116では、確率算出部73が統合確率を算出する。統合確率とは、個別確率を統合して算出する走行車線確率のことである。統合確率は、車載カメラ11が撮像した撮像データに基づいて算出した個別確率と、LiDAR装置12で計測した三次元点群に基づいて算出した個別確率と、ミリ波レーダ13で計測した距離データに基づいて算出した個別確率とに基づいて算出される。
【0065】
統合確率の算出に当たっては、個別確率ごとに重みづけを行った上で、個別確率を足し合わせて合計確率を算出する。例えば、区画線51を直接検知可能な車載カメラ11とLiDAR装置12の個別確率をミリ波レーダ13の個別確率よりも重視するように重みづけを行う。ただし、算出された3つの個別確率に均等な重みづけを行ってもよい。また、第1検知装置10aの一部が故障している場合には、故障している第1検知装置10aを用いた個別確率の重みをゼロにしてもよい。これによると、実質的に故障していない第1検知装置10aの第1検知結果のみを用いて統合確率を算出することができる。
【0066】
合計確率を算出した後、第2検知結果を用いて合計確率に補正を加えることで統合確率を算出する。以下に、合計確率に加える補正の内容を例示する。例えば、衛星測位装置16の測位結果に基づき、道路全体の中央よりも左側に位置していると測位した場合を想定する。この場合には、道路の左側に位置している第1車線54aの走行車線確率を高くし、道路の右側に位置している第3車線54cの走行車線確率を低くする補正を加える。
【0067】
例えば、車速と角速度とヨーレートから算出した車両5の走行軌跡に基づき、直前で左に車線変更したことが推定される場合を想定する。この場合には、左に車線変更後に右端の車線54を走行している可能性が低いと判断できる。このため、右端に位置している第3車線54cの走行車線確率を低くし、第1車線54aおよび第2車線54bの走行車線確率を高くする補正を加える。
【0068】
算出した合計確率に対して第2検知結果を用いた補正を加えることが、第1検知結果と第2検知結果とを統合して走行車線確率を算出することを意味する。以下では、算出した統合確率のことを走行車線確率と呼ぶ。すなわち、統合確率における最も走行車線である確率が高い車線54が最高確率車線であり、統合確率における最も高い確率が最高確率である。走行車線確率である統合確率を算出した後、ステップS121に進む。
【0069】
ステップS121では、車線記憶部75に記憶されている最新記憶車線を制御部70が読み出す。仮に、最新記憶車線として記憶されている車線54の情報がない場合には、現在の最高確率車線を最新記憶車線とみなして読み出す。最新記憶車線を読み出した後、ステップS131に進む。
【0070】
ステップS131では、最高確率車線と最新記憶車線とが一致しているか否かを車線判断部74が判断する。最高確率車線と最新記憶車線とが一致している場合(S131:YES)には、最新記憶車線が実際の走行車線であると判断して、ステップS161に進む。一方、最高確率車線と最新記憶車線とが一致していない場合(S131:NO)には、最新記憶車線が実際の走行車線とは異なる場合があると判断して、ステップS132に進む。
【0071】
ステップS132では、制御部70がタイマ18を用いて経過時間を計測する。ここで、経過時間は、最高確率車線と最新記憶車線とが一致していないと判断してから現在までに経過した時間のことである。経過時間の計測を開始した後、ステップS140に進む。
【0072】
ステップS140では、更新時間設定部77が更新時間を設定する。更新時間の設定方法について、図7を用いて説明する。
【0073】
図において、ステップS141では、最高確率が早期更新確率未満か否かを更新時間設定部77が判断する。早期更新確率とは、更新時間を短く設定するか長く設定するかを判断する基準となる確率のことである。早期更新確率は、例えば90%である。最高確率が早期更新確率未満である場合(S141:YES)には、ステップS145に進む。一方、最高確率が早期更新確率以上である場合(S141:NO)には、ステップS146に進む。
【0074】
ステップS145では、更新時間設定部77が更新時間に猶予更新時間を採用する。猶予更新時間は、更新時間として設定可能な時間の中で最も長い時間に設定可能である。猶予更新時間は、例えば5秒である。更新時間に猶予更新時間を採用した後、ステップS151に進む。
【0075】
ステップS146では、更新時間設定部77が更新時間に早期更新時間を採用する。早期更新時間は、猶予更新時間よりも短い時間に設定されている。早期更新時間は、例えば2秒である。更新時間に早期更新時間を採用した後、ステップS151に進む。
【0076】
ステップS151では、経過時間が更新時間を越えているか否かを制御部70が判断する。経過時間が更新時間を越えている場合(S151:YES)には、ステップS161に進む。一方、経過時間が更新時間を越えていない場合(S151:NO)には、ステップS110に戻る。これにより、経過時間が更新時間を越えるまで走行車線確率を新しく算出し直すこととなる。言い換えると、経過時間が更新時間を越えるまで走行車線確率を遂次算出し、続けることとなる。また、走行車線確率が新しく算出される度に更新時間が逐次設定されることとなる。新しく算出した最高確率車線が直前に算出した最高確率車線と同じ車線54であれば、経過時間が延長される。一方、新しく算出した最高確率車線が直前に算出した最高確率車線と異なる車線54であれば、経過時間がリセットされる。
【0077】
経過時間と更新時間とを直接比較せずに更新時間を経過したか否かを判断してもよい。例えば、車載カメラ11等の第1検知装置10aが100ミリ秒ごとに検知を行う場合を想定する。この場合、第1検知装置10aの検知回数が50回で約5秒が経過することとなる。これによると、最高確率車線と最新記憶車線とが一致していないと判断してから現在までに、第1検知装置10aが検知した回数が50回を超えたか否かを判断することで、間接的に経過時間が5秒を越えたか否かを判断できる。この場合、タイマ18を用いることなく実質的に経過時間を計測することができる。
【0078】
ステップS161では、車線記憶部75が最新記憶車線に最高確率車線を採用して記憶する。最新記憶車線と最高確率車線とが同じ車線54である場合には、実質的に最新記憶車線が維持されることとなる。一方、最新記憶車線と最高確率車線とが異なる車線54である場合には、最新記憶車線に最高確率車線が採用され、最新記憶車線と最高確率車線とが同じ車線54となる。言い換えると、最新記憶車線が実際の走行車線と異なることが強く疑われる状態から、最新記憶車線が実際の走行車線と一致していると推定できる状態に復帰する。
【0079】
最新記憶車線に最高確率車線を採用して記憶した状態を維持して、走行車線推定制御を終了する。ただし、検知装置10の検知結果等は、車両5の走行や時間経過によって変化する。このため、走行車線推定制御の終了後、即座に走行車線推定制御を再び開始することが好ましい。これによると、車両5の最新の状態に応じた走行車線確率を算出して走行車線を推定することができる。
【0080】
以下、上述した実施形態による効果を説明する。上述した実施形態によると、更新時間設定部77は、確率算出部73が算出した最高確率が高いほど更新時間を短い時間に設定する。このため、最高確率が高いほど最新記憶車線を素早く更新することができる。したがって、最新記憶車線と実際の走行車線とが異なる車線54となる時間を短くしやすい。よって、適切に走行車線を推定可能な走行車線推定装置1を提供できる。
【0081】
更新時間設定部77は、確率算出部73が算出した最高確率が早期更新確率未満である場合には、猶予更新時間を更新時間として設定する。一方、最高確率が早期更新確率以上である場合には、猶予更新時間よりも短い時間である早期更新時間を更新時間として設定する。このため、最高確率が早期更新確率以上である場合に、最高確率が早期更新確率未満である場合に比べて最新記憶車線を素早く更新することができる。
【0082】
確率算出部73は、第1検知結果と第2検知結果との両方の検知結果を用いて走行車線確率を算出可能である。このため、常に第1検知結果と第2検知結果とのどちらか一方の検知結果のみを用いて走行車線確率を算出する場合に比べて、精度よく走行車線確率を算出しやすい。
【0083】
車両5が走行している区間によらず最高確率に応じて更新時間を設定する場合を例に説明を行ったが、更新時間の設定方法は上述の例に限られない。例えば、車両5が無車線区間55等の車線推定困難区間を走行している場合にのみ、最高確率に応じて更新時間を設定する構成としてもよい。この場合、車線推定困難区間以外の区間を走行している場合には、最高確率によらず更新時間に標準更新時間を採用可能である。標準更新時間は、少なくとも猶予更新時間よりも短い時間に設定されている。標準更新時間は、例えば3秒である。これによると、車線推定困難区間以外の区間において更新時間として固定値である標準更新時間を採用できる。このため、更新時間を最高確率に応じて変更する場合に比べて、走行車線推定制御における処理をシンプルにして、処理負荷を軽減できる。
【0084】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、最高確率が即時更新確率以上である場合に、更新時間として即時更新時間を採用する。また、無車線区間55の距離が切り替え距離未満である場合には、最高確率が早期更新確率未満であっても、更新時間として早期更新時間を採用する。
【0085】
走行車線推定装置1を用いた走行車線推定制御の詳細について、以下に説明する。以下では、図4に示すように、車両5が料金所59を通過して車線54を走行するまでの間における走行車線推定制御を例に説明を行う。
【0086】
図8において、車両5のパワースイッチがオンされるなどして走行車線推定制御を開始するとステップS101で、車両5の現在地を検知結果取得部71が取得する。その後、ステップS102に進み、車両5の現在地における道路区域である現在区域の地図情報を検知結果取得部71が取得する。その後、ステップS210に進む。
【0087】
ステップS210では、確率算出部73が車線54ごとの走行車線確率を算出する。走行車線確率の算出方法について、図9を用いて説明する。
【0088】
図において、ステップS211では、第1検知装置10aを用いた検知結果である第1検知結果を検知結果取得部71が取得する。第1検知結果を取得した後、ステップS212に進む。
【0089】
ステップS212では、第1検知結果から区画線51を検知可能であるか否かを制御部70が判断する。例えば、撮像データや三次元点群に区画線51が全く含まれていない場合には、区画線51を検知不可能であると判断する。また、撮像データや三次元点群に区画線51が明瞭に含まれている場合には、区画線51を検知可能であると判断する。また、撮像データや三次元点群に区画線51がわずかにしか含まれていない場合や区画線51が不明瞭な場合には、区画線51を検知できないと判断する場合がある。
【0090】
区画線51が検知可能である場合(S212:YES)には、第1検知結果を用いて走行車線確率を適切に算出できると判断して、ステップS213に進む。一方、区画線51が検知不可能である場合(S212:NO)には、第1検知結果を用いて走行車線確率を適切に算出できないと判断して、ステップS215に進む。
【0091】
ステップS213では、第1検知結果を用いて確率算出部73が個別確率を算出する。その後、ステップS215に進み、第2検知装置10bを用いた検知結果である第2検知結果を検知結果取得部71が取得する。第2検知結果を取得した後、ステップS216に進む。
【0092】
ステップS216では、確率算出部73が統合確率を算出する。統合確率の算出に当たって、第1検知結果を用いた個別確率が算出されている場合には、個別確率を足し合わせて合計確率を算出する。一方、第1検知結果を用いた個別確率が算出されていない場合には、合計確率を暫定的に各車線54の走行車線確率を等しい確率とみなす。例えば、第1車線54aと第2車線54bと第3車線54cとのそれぞれの合計確率を33%とする。個別確率の算出に第1検知結果を用いていない場合の合計確率の上限値は、個別確率の算出に第1検知結果を用いた場合の合計確率の上限値よりも低い値である。例えば、第1検知結果を用いない場合の合計確率の上限値は50%であり、第1検知結果を用いた場合の合計確率の上限値は100%である。合計確率は、合計確率の上限値以下の値で算出されることとなる。
【0093】
合計確率を算出した後、第2検知結果を用いて合計確率に補正を加えることで統合確率を算出する。第1検知結果を用いることなく算出した統合確率の上限値は、第1検知結果を用いて算出した統合確率の上限値よりも低い値である。ただし、第1検知結果を用いることなく算出した統合確率の上限値は、早期更新確率以上の値である。例えば、第1検知結果を用いることなく算出した統合確率の上限値は90%であり、第1検知結果を用いて算出した統合確率の上限値は100%である。統合確率は、統合確率の上限値以下の値で算出されることとなる。走行車線確率である統合確率を算出した後、ステップS121に進む。
【0094】
ステップS121では、車線記憶部75に記憶されている最新記憶車線を制御部70が読み出す。その後、ステップS131に進み、最高確率車線と最新記憶車線とが一致しているか否かを車線判断部74が判断する。最高確率車線と最新記憶車線とが一致している場合には、最新記憶車線が実際の走行車線であると判断して、ステップS161に進む。一方、最高確率車線と最新記憶車線とが一致していない場合には、最新記憶車線が実際の走行車線とは異なる場合があると判断して、ステップS132に進む。ステップS132では、制御部70がタイマ18を用いて経過時間を計測する。その後、ステップS240に進む。
【0095】
ステップS240では、更新時間設定部77が更新時間を設定する。更新時間の設定方法について、図10を用いて説明する。
【0096】
図において、ステップS241では、最高確率が早期更新確率未満か否かを更新時間設定部77が判断する。最高確率が早期更新確率未満である場合(S241:YES)には、ステップS242に進む。一方、最高確率が早期更新確率以上である場合(S241:NO)には、ステップS243に進む。
【0097】
ステップS242では、無車線区間55の距離が切り替え距離以上であるか否かを更新時間設定部77が判断する。切り替え距離とは、更新時間を早期更新時間に切り替えるか否かを判断するための距離である。切り替え距離は、例えば20mである。
【0098】
無車線区間55の距離の情報は、地図情報から取得可能である。ただし、無車線区間55の距離を車載カメラ11やLiDAR装置12を用いた検知結果から算出してもよい。仮に、無車線区間55の距離が取得も算出もできない場合には、暫定的に無車線区間55の距離として少なくとも切り替え距離よりも長い距離を採用する。
【0099】
料金所59に関連する情報から料金所59を通過した直後における無車線区間55の距離を推定してもよい。例えば、料金所59のレーン数が多いほど、料金所59を通過した直後における無車線区間55の距離が長いと推定できる。例えば、料金所59の手前における車線数が多いほど、料金所59を通過した直後における無車線区間55の距離が長いと推定できる。
【0100】
車線54が区切られていない無車線区間55では、車線54が区切られている区間に比べて第1検知装置10aが区画線51を検知しにくい。このため、車線推定困難区間である無車線区間55の距離が短いほど、区画線51を適切に検知できない時間が短くなると言える。したがって、無車線区間55の距離が切り替え距離。未満の短い距離である場合には、すぐに無車線区間55を通過し、区画線51を適切に検知可能になることが想定できる。
【0101】
無車線区間55が切り替え距離以上である場合(S242:YES)には、しばらく無車線区間55が続くと判断し、ステップS245に進む。一方、無車線区間55が切り替え距離未満である場合(S242:NO)には、ステップS246に進む。
【0102】
ステップS243では、最高確率が即時更新確率未満であるか否かを更新時間設定部77が判断する。即時更新確率とは、更新時間を後述する即時更新時間に切り替えるか否かを判断するための確率である。即時更新確率は、第1検知結果を用いることなく算出した走行車線確率の上限値よりも高い確率に設定されている。即時更新確率は、例えば100%である。最高確率が即時更新確率以上である状態は、最高確率車線が実際の走行車線であることに疑いがない状態であると言える。
【0103】
最高確率が即時更新確率未満である場合(S243:YES)には、ステップS246に進む。一方、最高確率が即時更新確率以上である場合(S243:NO)には、即座に最新記憶車線に最高確率車線を採用してもよいと判断してステップS247に進む。
【0104】
ステップS245では、更新時間設定部77が更新時間に猶予更新時間を採用し、ステップS151に進む。
【0105】
ステップS246では、更新時間設定部77が更新時間に猶予更新時間よりも短い時間に設定されている早期更新時間を採用し、ステップS151に進む。
【0106】
ステップS247では、更新時間設定部77が更新時間に即時更新時間を採用する。即時更新時間は、早期更新時間よりも短い時間に設定されている。即時更新時間は、更新時間として設定可能な時間の中で最も短い時間に設定可能である。即時更新時間は、例えばゼロ秒である。更新時間に即時更新時間を採用した後、ステップS151に進む。
【0107】
ステップS151では、経過時間が更新時間を越えているか否かを制御部70が判断する。経過時間が更新時間を越えている場合(S151:YES)には、ステップS161に進み、経過時間が更新時間を越えていない場合(S151:NO)には、ステップS210に戻る。仮に更新時間がゼロ秒である場合には、常に経過時間が更新時間を越えていると判断されることとなる。
【0108】
ステップS161では、車線記憶部75が最新記憶車線に最高確率車線を採用して記憶し、最新記憶車線を記憶した状態を維持して、走行車線推定制御を終了する。ただし、車両5が走行している間、一連の走行車線推定制御を繰り返すことが好ましい。
【0109】
以下、上述した実施形態による効果を説明する。上述した実施形態によると、更新時間設定部77は、最高確率が即時更新確率以上である場合には、即時更新時間を更新時間として設定する。このため、最高確率が即時更新確率以上である場合に、最高確率が即時更新確率未満である場合に比べて最新記憶車線を素早く更新することができる。
【0110】
更新時間設定部77は、車両5が車線境界線53のない無車線区間55を走行中であって、無車線区間55の距離が切り替え距離未満である場合には、最高確率が早期更新確率未満であっても猶予更新時間よりも短い時間を更新時間として設定する。言い換えると、無車線区間55の距離が短いほど、更新時間を短く設定する。このため、無車線区間55を通過して車線境界線53を検知可能になると推定できる状況で、更新時間を短く設定できる。
【0111】
更新時間設定部77は、地図記憶部72に記憶されている無車線区間55の距離を示す情報に基づいて、無車線区間55の距離が切り替え距離未満であるか否かを判断する。このため、車載カメラ11等を用いて無車線区間55の距離を推定する場合に比べて、正確かつ素早く無車線区間55の距離を取得しやすい。
【0112】
確率算出部73は、区画線51を検知できる場合には、少なくとも第1検知結果を用いて走行車線確率を算出し、区画線51を検知できない場合には、第1検知結果を用いることなく走行車線確率を算出する。ここで、区画線51を検知できない場合には、区画線51を検知できる場合に比べて、第1検知結果を用いて算出される走行車線確率の精度が低くなりやすい。このため、第1検知結果を用いて算出した走行車線確率を安定して高い精度とすることができる。走行車線確率の算出に第1検知結果を用いる場合と用いない場合とを適切に使い分けることは、走行車線確率の精度を安定して高めるために重要である。
【0113】
確率算出部73は、第1検知結果を用いることなく算出した最高確率の上限値を、第1検知結果を用いて算出した最高確率の上限値に比べて低くする。ここで、走行車線確率の算出に当たっては、第1検知結果の一部である区画線51を正確に検知して走行車線確率を算出する方法が最も精度の高い方法であると想定される。言い換えると、区画線51を検知せずに走行車線確率を算出する方法では、誤差が大きく高精度な走行車線の推定が困難であると想定される。このため、区画線51を用いることなく算出した最高確率の上限値を低く設定することで、最高確率が即時更新確率や早期更新確率よりも低い確率に算出されやすくなる。したがって、第1検知結果を用いない場合に、更新時間として即時更新時間や早期更新時間が採用されることを抑制して、最新記憶車線の更新を慎重に行うことができる。
【0114】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0115】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0116】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置およびその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 走行車線推定装置、 5 車両、 10 検知装置、 10a 第1検知装置、 10b 第2検知装置、 11 車載カメラ、 12 LiDAR装置、 13 ミリ波レーダ、 15 車両状態センサ、 16 衛星測位装置、 17 通信装置、 18 タイマ、 51 区画線、 52 車道外側線、 53 車線境界線、 54 車線、 54a 第1車線、 54b 第2車線、 54c 第3車線、 55 無車線区間、 59 料金所、 70 制御部、 71 検知結果取得部、 72 地図記憶部、 73 確率算出部、 74 車線判断部、 75 車線記憶部、 77 更新時間設定部
図1
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図10