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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182168
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20221201BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089556
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真悟
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021HA05
5J021HA06
5J046AA02
5J046AA12
5J046UA02
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、グランド板を共有しない複数のアンテナで構成されたアンテナ装置において、アンテナ間の相互干渉を抑制できるとともに、小型化も考慮したアンテナ装置を提供することにある。
【解決手段】
アンテナ装置を構成し、共通の周波数帯域に対応する第1アンテナ、第2アンテナがそれぞれ有する第1グランド板、第2グランド板との間に両端が開放されたスリットが形成されるよう、第1、第2アンテナを配置する。スリットは第1アンテナ、第2アンテナが対応する周波数帯域で共振するように形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナと、第2アンテナとを有するアンテナ装置であって、
該第1アンテナは第1グランド板と、第1グランド板の輪郭辺から延出する第1放射素子部と、該第1放射素子部に設けられた第1給電点に接続される第1給電線路とで構成されており、
該第2アンテナは、第2グランド板と、第2グランド板の輪郭辺から延出する第2放射素子部と、該第2放射素子部に設けられた第2給電点に接続される第2給電線路とで構成されており、
該第1アンテナと該第2アンテナは共通の周波数帯域の電波を送信または受信するとともに、
該第1グランド板と該第2グランド板との間に両端が開放されたスリットが形成されるよう対向配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
該スリットは、該周波数帯域で共振するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
該スリットの長さは、該周波数帯域の電波の波長の略2分の1であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
該スリットに、屈曲部が存在することを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
該スリットは、略L字状に屈曲していることを特徴とする、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
略L字状スリットの水平部の長さをL1、垂直部の長さをL2とした時、
L1:L2が2:1~1:2の範囲内であることを特徴とする、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
該第1放射素子部を延出させる該第1グランド板の輪郭辺と、該第2放射素子部を延出させる該第2グランド板の輪郭辺の位置関係が、略直角であることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する機器に使用される、複数のアンテナで構成されたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報端末機器に代表される多種多様な機器に無線LAN、WiMAX(登録商標)、WiFi(登録商標)、BlueTooth(登録商標)をはじめとする無線データ通信システムが採用されており、これらの通信に使用されるアンテナの需要が高まっている。
【0003】
また、通信速度を向上させるために、一つの通信装置に多数のアンテナを搭載する場面も存在する。
【0004】
一つの通信装置に多数のアンテナを搭載する際に課題となるのが、アンテナ間の相互干渉による通信特性の低下であり、アンテナ間の相互干渉を抑制するために種々の手法が提案されている。
【0005】
アンテナ間の相互干渉を低減する方法として、アンテナ間のグランドにスリットを設ける方法(特許文献1)や、アンテナ間のグランド板に突出部を設ける方法(特許文献2)などが提案されている。しかしながら、これらの手法は複数のアンテナでグランド板を共有しているため、一方のアンテナに給電された高周波電流がグランド板を介して他方のアンテナに流れ込む現象が完全に抑制できず、相互干渉の低減効果が不十分な場合もある。
【0006】
複数のアンテナによるグランド板の共有を解消することで相互干渉を低減させることができるが、電波の空間伝搬に起因する相互干渉が依然として残る。複数のアンテナがグランド板を共有していない際に相互干渉を低減させる手法としては、アンテナ間に遮蔽板を設ける方法(特許文献3)が提案されている。
【0007】
しかしながら、アンテナ間に遮蔽板を設ける方法は、遮蔽板を設ける場所をアンテナ間に確保する必要があるとともに、遮蔽板自体も一定の面積・体積を有するため、アンテナの小型化の面で難があり、通信機器においてアンテナを搭載する空間に限りがある場合は、採用が難しい方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-13643号公報
【特許文献2】特開2013-51644号公報
【特許文献3】特開2015-70408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、グランド板を共有しない複数のアンテナで構成されたアンテナ装置において、アンテナ間の相互干渉を抑制できるとともに、小型化も考慮したアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はアンテナの構造と装置内における配置方法を鋭意検討した結果、それぞれのアンテナが有するグランド板を、所定の長さ、距離で近接させることにより、遮蔽板が無くとも電波の空間伝搬に起因する相互干渉を抑制でき、その結果小型化が達成されたアンテナ装置を実現した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンテナ装置では、以下の効果が期待できる。

(1)各アンテナがグランド板を共有していないため、グランド板を介したアンテナ間の相互干渉が原則として発生しない。

(2)遮蔽板などの追加部材が無くても電波の空間伝搬に起因する相互干渉が抑制できるため、アンテナ装置の小型化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のアンテナ装置の基本的構成である。
図2】本発明のアンテナ装置による干渉抑制効果の概念図である。
図3】本発明のアンテナ装置の変形例である。
図4】本発明のアンテナ装置の特に好ましい変形例である。
図5】比較例のアンテナ装置である。
図6】実施例1に使用したアンテナのV.S.W.Rである。
図7】実施例1のアンテナ間のアイソレーションである。
図8】実施例2に使用したアンテナのV.S.W.Rである。
図9】実施例2のアンテナ間のアイソレーションである。
図10】実施例3に使用したアンテナのV.S.W.Rである。
図11】実施例3のアンテナ間のアイソレーションである。
図12】比較例に使用したアンテナのV.S.W.Rである。
図13】比較例のアンテナ間のアイソレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1を参照しながら、本発明について説明する。
【0014】
本発明のアンテナ装置1は、図1に示すように、第1アンテナA1と第2アンテナA2とを有する。
【0015】
第1アンテナA1は、第1グランド板11、第1グランド板11の輪郭辺から延出する第1放射素子部21、第1放射素子部21に設けられた第1給電点P1に接続される第1給電線路31とで構成され、任意の周波数帯域fの信号を送信または受信できるように構成される。図1において、第1放射素子部21は第1グランド板11の輪郭辺から垂直に延出した態様となっているが、第1放射素子部21が延出する方向はこれに限定されない。
【0016】
第2アンテナA2は、第2グランド板12、第2グランド板12の輪郭辺から延出する第2放射素子部22、第2放射素子部22に設けられた第2給電点P2に接続される第2給電線路32とで構成される。また、第2アンテナA2は原則として、第1アンテナA1と同様、周波数帯域fの信号を送信または受信できるように構成される。図1において、第2放射素子部22は第2グランド板12の輪郭辺から垂直に延出した態様となっているが、第2放射素子部22が延出する方向はこれに限定されない。
【0017】
本発明で特徴的なことは、第1グランド板11と第2グランド板12の間に両端が開放されたスリットSが形成されるよう、第1グランド板11と第2グランド板12とを対向させて配置することである。
【0018】
この時、スリットSは、第1アンテナA1、及び第2アンテナA2が対応する周波数帯域fで共振するように形成する。
【0019】
周波数帯域fで共振するようにスリットSを形成するためには、スリットSの長さを原則として、第1アンテナA1、及び第2アンテナA2が送受信する周波数帯域fの電波が有する波長λの略2分の1に設定する。
【0020】
波長λの略2分の1の長さは、厳密にλの2分の1である必要はなく、λの2分の1を基準としていれば、アンテナ装置1の実使用状況に応じた変動が許容される。
【0021】
なお、スリットSの長さは必ずしも波長λの略2分の1の長さに設定する必要はなく、スリットSが周波数帯域fで共振することを優先して長さが決定される。例えば、本発明のアンテナ装置1を通信装置の筐体等に収容した際に、アンテナ装置1の周囲に誘電体で形成された材料が存在し、誘電体による波長短縮効果の影響を受ける場合などは、スリットSの長さを波長短縮効果を考慮した値に設定しても良い。
【0022】
本発明では、第1アンテナA1と第2アンテナA2は電気的に独立しているため、
第1アンテナA1に供給された高周波電流が第2アンテナA2に流れ込むことは原則として発生せず、その逆も発生しないため、グランド板10を介したアンテナA間の相互干渉は抑制される。
【0023】
さらに本発明では、第1グランド板11と第2グランド板12の間に両端が開放されたスリットSが存在することで、空間伝搬による相互干渉も抑制される。
【0024】
アンテナ装置1で通信を行う際、第1グランド板11、第2グランド板12にも周波数帯域fに相当する高周波電流が流れるが、第1グランド板11、第2グランド板12の間に周波数帯域fで共振するスリットSが存在することで、この高周波電流に起因するスリット共振がスリットSに発生する。
【0025】
スリットSに共振が発生することで、図2に示すように、スリットSは周波数帯域fに相当する電波を放射するスリットアンテナとして機能することになる。すなわち、スリットSは周波数帯域fの信号を放射できるスリットアンテナを模して形成されたものであると言うこともできる。
【0026】
第1アンテナA1と第2アンテナA2の間に、両アンテナAが対応する周波数帯域fに相当する電波を放射するスリットSが存在することで、第1アンテナA1から第2アンテナA2へと向かう電波は図2に示したように、スリットSの共振によって発生する電波が干渉することによって弱められ、空間伝搬に起因する第1アンテナA1による第2アンテナA2への干渉は抑制される。
【0027】
同様に、第2アンテナA2から第1アンテナA1へと向かう電波も、スリットSの共振によって発生する電波が干渉することによって弱められ、空間伝搬に起因する第2アンテナA2による第1アンテナA1への干渉も抑制される。
【0028】
このように、第1アンテナA1から第2アンテナA2へと向かう空間伝搬、及び第2アンテナA2から第1アンテナA1へと向かう空間伝搬のそれぞれが低減することで、空間伝搬に起因して第1アンテナA1と第2アンテナA2との間で発生する相互干渉が抑制される。
【0029】
以上より、本発明では遮蔽板のような追加部材を必要とせずに相互干渉の抑制ができるとともに、スリットSを形成するために、第1アンテナA1、第2アンテナA2を近接して配置することになるため、アンテナ装置1の小型化に寄与する。
【0030】
本発明においては、第1アンテナA1と第2アンテナA2を近接して配置することになるが、スリットSを形成する関係で第1放射素子部21と第2放射素子部22との間に一定の距離が確保され、この点も第1アンテナA1と第2アンテナA2との間で発生する相互干渉の抑制に寄与する。
【0031】
スリットSの幅は、スリットSがスリットアンテナとして機能ように設定され、通常は1~5mm程度に設定される。
【0032】
また、本発明におけるスリットSは、図3、4に示すように屈曲部を有した形状とするのが好ましい。
【0033】
スリットSを屈曲部を有した形状とした場合、スリットSの共振による放射が複数方向に発生するため、直線状のスリットSで十分に低減できなかった空間伝搬も低減できるようになるため、相互干渉抑制効果の安定化に寄与する。
【0034】
また、図4に示したように屈曲部を有したスリットSを形成した場合は、直線状のスリットSと比較して少ないスペースで同等の長さを有するスリットSを形成することができるため、アンテナ装置1の小型化に寄与する。
【0035】
スリットSの形状は本発明の技術的思想の範囲内で任意の形状に設定することができるが、アンテナ装置1の製造を容易にする観点では、図3、4に示したように略L字状に屈曲した形状とするのが好ましい。略L字状のスリットSを形成する際、図4に示したように、第1アンテナA1の第1グランド板11aに延出部11bを設けるなど、一方のアンテナAのグランド板10の形状を変更することで形成できるため、少ない手間で屈曲部を有したスリットSを形成することができる。
【0036】
なお、略L字状のスリットSは、屈曲部の屈曲角度が90°となっているスリットSを指すが、厳密に90°である必要はなく、多少の変動が許容される。
【0037】
スリットSを略L字状に形成する際は、水平部の長さをL1、垂直部の長さをL2とした際に、L1:L2を2:1~1:2の範囲内に設定するのが好ましい。
【0038】
この設定は、L1:L2は1:1を基準とし、基準から大きく変更しないことを意図する。
【0039】
L1:L2を上記の範囲内に設定することで、スリットSに発生する共振が安定し、安定した相互干渉抑制効果を得ることができる。
【0040】
加えて、本発明においては、各アンテナAが有する放射素子部20の位置関係も考慮することで、より良好なアンテナA間での相互干渉の抑制効果を得ることができる。
【0041】
具体的には、図3、4に示したように、第1放射素子部21を延出させる第1グランド板11の輪郭辺と、第2放射素子部22を延出させる第2グランド板12の輪郭辺の位置関係を、略直角とするのが好ましい。
【0042】
このような位置関係で放射素子部20を設けることで、第1アンテナA1の指向性の主軸と第2アンテナA2の指向性の主軸の向きが異なることになり、各アンテナAが送受信する電波間での干渉が低減し、アンテナA間での相互干渉の抑制効果が安定する。
【0043】
本発明に使用するアンテナAが有する放射素子部20の形状は特定のものに限定されず、所望する通信特性に応じて種々の形状のものを使用することができる。逆F形アンテナとして機能する直線状の素子の他、コの字状やメアンダ状といった折り返し構造を有するもの、複数の周波数に対応する分岐状のものなどが使用でき、アンテナA内に放射素子部20と容量結合してアンテナ特性を発現させるための無給電素子を設けても良い。図1、2では、一例として折り返し構造を有する放射素子部20が記載されている。
【0044】
本発明に使用するアンテナAは、洋白(白銅)、銅、鉄、黄銅、鋼等で作られた、厚さ0.1~1mm程度の金属一枚板を打ち抜いて一体成型したアンテナエレメントや、誘電体基板上に導電パターンを設けたアンテナエレメント、あるいは両者を組み合わせて構成されたアンテナエレメントなど使用して構成される。
【0045】
本発明に使用する給電線路30としては、周知のフッ素樹脂被覆等の高周波同軸ケーブルを使用すればよい。この高周波同軸ケーブルの内部導体、あるいは外部導体をアンテナAの所定の場所に接続するには、ハンダ付による固定、あるいはカシメによる固定などを利用すれば良い。
【0046】
本発明のアンテナ装置1は、通信装置に組み込まれる形で使用される。
【実施例0047】
本発明の実施例として、図1~3に示したアンテナ装置1を作成・評価した。以下、各実施例に共通する、アンテナ装置の作成・評価方法について述べる。
【0048】
1.アンテナの作成
厚さが0.4mmの亜鉛めっき鋼板を打ち抜いて、所定の形状のグランド板10と放射素子部20を有するアンテナエレメントを作成する。
各実施例とも、放射素子部20の基本形状は折り返し構造を有した同じものを使用し、細部寸法は、無線LAN帯域(2.45GHz帯域、波長λ≒122mm)の電波を送信または受信できるアンテナとして機能するように設定した。
【0049】
給電線路30として、内部導体、フッ素樹脂(PFA)製絶縁体、外部導体、PFA製外被で構成された同軸ケーブルを準備した。
同軸ケーブルの先端を段剥ぎし、放射素子部20の所定の場所に内部導体をはんだ付けして給電点Pとした。
グランド板10の所定の場所に外部導体をはんだ付けしてアースポイントGとし、アンテナAが完成した。
また、同軸ケーブルの反対側には高周波回路に接続できるよう、周知の同軸ケーブル用コネクタが設けられている。
【0050】
2.アンテナ装置の作成
以上述べたアンテナAの作成方法に従って作成した第1アンテナA1と第2アンテナA2とを、第1グランド板11と第2グランド板12とが対向してスリットSを形成するように樹脂基材上に固定し、アンテナ装置1を完成させた。スリットSの長さは樹脂基材の存在による波長短縮効果等を考慮し、スリットSに共振が発生する寸法に設定した。
【0051】
3.アンテナ装置の評価
第1アンテナA1、第2アンテナA2のそれぞれに2.45GHz帯の高周波信号を給電し、各アンテナAのV.S.W.Rと、第1アンテナA1と第2アンテナA2との間に発生する相互干渉(アイソレーション)を測定した。
【0052】
[実施例1]
実施例1として、図1に示した態様のアンテナ装置1-1を作成した。実施例1において、第1アンテナA1-1、第2アンテナA2-1は同じものを使用した。各アンテナAのグランド板10の大きさは27mm×24.5mmとし、長さ27mmの輪郭辺を対向配置させ、長さ27mm、幅3mmのスリットSを形成した。アンテナ装置1の外寸法は27mm×52mmである。放射素子部20は、スリットSを構成するグランド板10の輪郭辺の反対側の輪郭辺から、グランド板10に対して垂直に延出させた。
【0053】
実施例1のアンテナ装置1-1のV.S.W.Rを図6、アイソレーションを図7に示す。図6において実線が第1アンテナA1-1の、破線が第2アンテナA2-1のV.S.W.Rである。
【0054】
[実施例2]
実施例2として、図3に示した態様のアンテナ装置1-2を作成した。実施例2において、第1アンテナA1-2は、実施例1で使用した第1アンテナA1-1と同じものを使用した。第2アンテナA2-2は、実施例1で使用した第2アンテナA2-1を基に、大きさ27mm×24.5mmの第2グランド板12aから、長さ27mm×幅5mmのL字状の延出部12bを延出させた構造とした。なお、延出部12bの長さは、延出部12bの幅方向中心における寸法である。
【0055】
実施例2では第1放射素子部21が延出する第1グランド板11の輪郭辺と、第2放射素子部22が延出する第2グランド板12の輪郭辺の位置関係が略直角になるよう、第1アンテナA1、第2アンテナA2を配置し、グランド板の間には幅3mmのL字状スリットSを形成した。スリットSの長さは、スリットSの幅方向中心における寸法で、水平部の長さL1が9.5mm、垂直部の長さL2が28.5mm、全長38mmとした。アンテナ装置1の外寸法は40mm×54mmである。
【0056】
実施例2のアンテナ装置1-2のV.S.W.Rを図8、アイソレーションを図9に示す。図8において実線が第1アンテナA1-2の、破線が第2アンテナA2-2のV.S.W.Rである。
【0057】
[実施例3]
実施例3として、図4に示した態様のアンテナ装置1-3を作成した。実施例3において、第1アンテナA1-3は、実施例1で使用した第1アンテナA1-1を基に、大きさ27mm×24.5mmの第1グランド板11aから、長さ32mm×幅5mmの直線状の延出部11bを延出させた構造とした。第2アンテナA2-3は、実施例1で使用した第2アンテナA2-1と同じものを使用した。
【0058】
実施例3では第1放射素子部21が延出する第1グランド板11の輪郭辺と、第2放射素子部22が延出する第2グランド板12の輪郭辺の位置関係が略直角になるよう、第1アンテナA1、第2アンテナA2を配置し、グランド板の間には幅3mmのL字状スリットSを形成した。スリットSの長さは、スリットSの幅方向中心における寸法で、水平部の長さL1が28.5mm、垂直部の長さL2が20.5mm、全長49mmとした。アンテナ装置1の外寸法は32mm×56mmである。
【0059】
実施例3のアンテナ装置1-3のV.S.W.Rを図10、アイソレーションを図11に示す。図10において実線が第1アンテナA1-2の、破線が第2アンテナA2-2のV.S.W.Rである。
【0060】
[比較例]
比較例として、図5に示した態様のアンテナ装置1’を作成した。比較例のアンテナ装置1’は、実施例2のアンテナ装置1-2から延出部11bを割愛した態様であり、グランド板10’の間のスリットS’には十分な共振が発生しない状態となっている。
【0061】
比較例のアンテナ装置1’のV.S.W.Rを図12、アイソレーションを図13に示す。図12において実線が第1アンテナA1’の、破線が第2アンテナA2’のV.S.W.Rである。
【0062】
実施例1~3、及び比較例のアンテナ装置を構成する各アンテナのV.S.W.Rは2450MHz(2.45GHz)近傍で低下しており、V.S.W.R上では2.45GHz帯域で使用されるアンテナ装置として必要十分な性能を持っている。
【0063】
一方、各アンテナ装置のアイソレーションを確認すると、比較例のアンテナ装置1’におけるアンテナA’間のアイソレーションは、2.45GHz近傍において約-12dBであった。
【0064】
比較例のアンテナ装置1’に対し、アンテナA間に直線状のスリットSを設けた実施例1のアンテナ装置1-1におけるアンテナA間のアイソレーションは、2.45GHz近傍において約-17dBであり、比較例よりも改善された値となった。
【0065】
以上より、アンテナA間に共振が発生するように長さが設定されたスリットSを設けることで、アンテナA間の相互干渉を抑制できることが確認できた。
【0066】
また、アンテナA間にL字状のスリットSを設けた実施例2のアンテナ装置1-2では、アンテナA間のアイソレーションが約-19dBまで減少し、実施例1よりも僅かに改善された。この結果より、屈曲部を有したスリットSをアンテナA間に設けることで、アンテナA間の相互干渉の抑制効果が向上することが確認できた。
【0067】
さらに、アンテナA間にL字状のスリットSを設けるともに、スリットSの水平部の長さL1と垂直部の長さL2の比L1:L2を、1:1に近い1.39:1に設定した実施例3のアンテナ装置1-3では、アンテナA間のアイソレーションが約-23dBまで減少した。屈曲部を有したスリットSをアンテナA間に設けるとともに、その水平部と垂直部の寸法比を考慮することで、アンテナA間の干渉をより効果的に抑制できることが確認できた。
【0068】
以上、無線LAN帯域(2.45GHz帯域)に対応するアンテナ装置について説明したが、これは本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、他の帯域に対応するアンテナ装置にも適用できることは言うまでもない。特に、アンテナ装置に使用されるアンテナの具体的構成は以上述べた例に制限されず、本発明の思想の範囲内で従来提案されている種々のアンテナ構成を適宜選択して利用することができる。
【0069】
また、本発明のアンテナ装置を構成するアンテナの数は2つだけに限られず、3つ以上のアンテナを使用してアンテナ装置を構成しても良い。3つ以上のアンテナを使用する場合は、全てのアンテナのグランド板間でスリットを形成する必要は必ずしもなく、所望するアンテナ装置の性能に応じ、選択された2つのアンテナのグランド板間のみにスリットを形成した態様としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のアンテナ装置は、通信機能を有した種々の機器に適用でき、IoTに使用される産業装置、通信機能を有した情報家電、自動車関連機器、アクセスポイントなどに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 アンテナ装置
A アンテナ
A1 第1アンテナ
A2 第2アンテナ
10 グランド板
11、11a 第1グランド板
11b 第1グランド板の延出部
12、12a 第2グランド板
12b 第2グランド板の延出部
20 放射素子部
21 第1放射素子部
22 第2放射素子部
30 給電線路
31 第1給電線路
32 第2給電線路
S スリット
P 給電点
P1 第1給電点
P2 第2給電点
G アースポイント
G1 第1アースポイント
G2 第2アースポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13