(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182169
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】生体情報取得システム、生体情報取得方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20221201BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61B5/0245 C
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089557
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 由佳
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA20
4C017AB04
4C017BC11
4C017BC21
4C017CC08
4C017DD14
4C017FF05
4C038VA04
4C038VA20
4C038VB02
4C038VB31
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】車両の乗員の生体情報を高精度で取得する。
【解決手段】生体情報取得システムは、車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する心拍センサと、乗員の体動に対応する体動信号を取得する体動センサと、車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、体動信号に基づいて乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する第1特定部と、車両情報に基づいて車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する第2特定部と、体動時間帯及び加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて乗員の心拍間隔を演算する演算部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する心拍センサと、
前記乗員の体動に対応する体動信号を取得する体動センサと、
前記車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記体動信号に基づいて前記乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する第1特定部と、
前記車両情報に基づいて前記車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は前記車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する第2特定部と、
前記体動時間帯及び前記加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された前記心拍信号に基づいて前記乗員の心拍間隔を演算する演算部と、
を備える生体情報取得システム。
【請求項2】
前記乗員が着座するシートのバックレストに複数の前記心拍センサが配置され、
前記演算部は、複数の前記心拍センサにより取得される複数の心拍信号のうち所定の基準心拍信号との差が最も小さい心拍信号に基づいて前記心拍間隔を演算する、
請求項1に記載の生体情報取得システム。
【請求項3】
前記基準心拍信号は、前記乗員の体動が前記基準移動量以下であり且つ前記車両が停車しているときに取得された前記心拍信号である、
請求項2に記載の生体情報取得システム。
【請求項4】
前記体動センサは、前記シートのヘッドレストに配置され、前記乗員の頭部の動きを検出する、
請求項2又は3に記載の生体情報取得システム。
【請求項5】
前記定常時間帯に取得された前記心拍信号に基づいて演算された前記心拍間隔と、所定の基準心拍間隔との差に基づいて、前記車両の振動に関する振動情報を生成する振動情報生成部、
を更に備える請求項1~4のいずれか1項に記載の生体情報取得システム。
【請求項6】
前記基準心拍間隔は、前記乗員の体動が前記基準移動量以下であり且つ前記車両が停車しているときに取得された前記心拍信号に基づいて演算された前記心拍間隔である、
請求項5に記載の生体情報取得システム。
【請求項7】
通信網を介して前記車両と通信可能なサーバを備え、
前記サーバは、前記演算部と、前記演算部により演算された前記心拍間隔に関する情報を前記車両に送信する送信部とを備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の生体情報取得システム。
【請求項8】
車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する工程と、
前記乗員の体動に対応する体動信号を取得する工程と、
前記車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する工程と、
前記体動信号に基づいて前記乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する工程と、
前記車両情報に基づいて前記車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は前記車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する工程と、
前記体動時間帯及び前記加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された前記心拍信号に基づいて前記乗員の心拍間隔を演算する工程と、
を含む生体情報取得方法。
【請求項9】
コンピュータに、
車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する処理と、
前記乗員の体動に対応する体動信号を取得する処理と、
前記車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する処理と、
前記体動信号に基づいて前記乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する処理と、
前記車両情報に基づいて前記車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は前記車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する処理と、
前記体動時間帯及び前記加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された前記心拍信号に基づいて前記乗員の心拍間隔を演算する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報取得システム、生体情報取得方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行支援システム等において、乗員の心拍数等に関する生体情報を取得する技術が利用されている。例えば、車両停止時に検出された心拍数に基づいて走行時に発生するノイズを除去した心拍数を算出する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の乗員の生体情報を高精度で取得するためには、乗員の拍動(心臓の動き)以外の動きである体動(例えば、車両の振動に基づく動き、乗員の意思に基づく動き等)による影響を抑制する必要がある。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、車両の乗員の生体情報を高精度で取得可能な生体情報取得システム、生体情報取得方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態としての生体情報取得システムは、車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する心拍センサと、乗員の体動に対応する体動信号を取得する体動センサと、車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、体動信号に基づいて乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する第1特定部と、車両情報に基づいて車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する第2特定部と、体動時間帯及び加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて乗員の心拍間隔を演算する演算部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、乗員の意識的な体動や車両の加減速による体動の影響を抑制し、乗員の心拍間隔を高精度で演算できる。
【0008】
また、乗員が着座するシートのバックレストに複数の心拍センサが配置され、演算部は、複数の心拍センサにより取得される複数の心拍信号のうち所定の基準心拍信号との差が最も小さい心拍信号に基づいて心拍間隔を演算してもよい。
【0009】
これにより、複数の心拍センサのうち乗員の体格等に最も適合した位置に配置された心拍センサの心拍信号を用いて心拍間隔を演算できる。
【0010】
また、基準心拍信号は、乗員の体動が基準移動量以下であり且つ車両が停車しているときに取得された心拍信号であってもよい。
【0011】
これにより、安定した状態で取得された信頼性の高い心拍信号を基準心拍信号として設定できる。
【0012】
また、体動センサは、シートのヘッドレストに配置され、乗員の頭部の動きを検出するものであってもよい。
【0013】
これにより、乗員の能動的な体動を効率よく検出できる。
【0014】
また、生体情報取得システムは、定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて演算された心拍間隔と、所定の基準心拍間隔との差に基づいて、車両の振動に関する振動情報を生成する振動情報生成部を更に備えてもよい。
【0015】
これにより、乗員の心拍間隔に基づく生体情報に加え、車両の振動に関する振動情報も取得できる。
【0016】
また、基準心拍間隔は、乗員の体動が基準移動量以下であり且つ車両が停車しているときに取得された心拍信号に基づいて演算された心拍間隔であってもよい。
【0017】
これにより、安定した状態で演算された信頼性の高い心拍間隔を基準心拍間隔として設定できる。
【0018】
また、生体情報取得システムは、通信網を介して車両と通信可能なサーバを備え、サーバは、演算部と、演算部により演算された心拍間隔に関する情報を車両に送信する送信部とを備えてもよい。
【0019】
これにより、比較的処理負荷が高い心拍間隔の演算をサーバに実行させ、車両側の演算負荷を軽減させることができる。
【0020】
また、本発明の他の実施形態として生体情報取得方法は、車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する工程と、乗員の体動に対応する体動信号を取得する工程と、車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する工程と、体動信号に基づいて乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する工程と、車両情報に基づいて車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する工程と、体動時間帯及び加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて乗員の心拍間隔を演算する工程と、を含む。
【0021】
また、本発明の他の実施形態としてのプログラムは、コンピュータに、車両の乗員の心拍に対応する心拍信号を取得する処理と、乗員の体動に対応する体動信号を取得する処理と、車両の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する処理と、体動信号に基づいて乗員の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する処理と、車両情報に基づいて車両が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は車両が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する処理と、体動時間帯及び加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて乗員の心拍間隔を演算する処理と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る生体情報取得システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る生体情報取得システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る生体情報取得システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1変形例に係る各心拍センサの心拍信号と基準心拍信号との一致度の経時的変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係る生体情報取得システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0024】
図1は、実施形態に係る車両1の構成の一例を示す図である。車両1は、生体情報取得システムが搭載される移動体の一例である。本実施形態に係る生体情報取得システムは、シート11に着座している乗員2の生体情報を取得する。なお、
図1では運転席が一例として記載されているが、生体情報取得システムの対象となるシートは運転席に限られるものではなく、助手席、後部座席、その他のシートであってもよい。
【0025】
本実施形態に係る車両1は、心拍センサ21及び体動センサ22を備える。
【0026】
心拍センサ21は、シート11のバックレスト12の内部に配置され、乗員2の心拍に対応する心拍信号を取得する。心拍センサ21は、例えば、ドップラーセンサ等であり得る。本実施形態に係る心拍センサ21は、バックレスト12内から乗員2の背部(心臓付近)に向けて電波(送信波)を送信し、送信波が乗員2に反射された反射波を受信する。心拍センサ21は、例えば、送信波と受信波との間の周波数差に基づいて乗員2の心拍(脈動)に対応する心拍信号を取得する。本実施形態においては、3つの心拍センサ21が備えられ、各心拍センサ21がそれぞれ心拍信号を取得可能となっている。なお、心拍センサ21の構成は上記に限定されるものではなく、乗員2の安全性を確保しつつ心拍信号を取得可能なものであればどのような構成であってもよく、センサの個数、方式、配置等の制限はない。
【0027】
体動センサ22は、シート11のヘッドレスト13の内部に配置され、乗員2の体動に対応する体動信号を取得する。体動センサ22は、例えば、ドップラーセンサ、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)センサ等であり得る。ここでいう体動とは、乗員2の拍動以外の動きであり、例えば、車両1の振動に基づく動き、乗員2の意思に基づく動き等であり得る。本実施形態に係る体動センサ22は、ヘッドレスト13内から乗員2の後頭部に向けて電波(送信波)を送信し、送信波が乗員2に反射された反射波を受信する。体動センサ22は、例えば、送信波が送信されてから受信波が受信されるまでの時間(TOF:Time Of Flight)等に基づいて乗員2の頭部の動きに対応する体動信号を取得する。なお、体動センサ22の構成は上記に限定されるものではなく、乗員2の安全性を確保しつつ体動信号を取得可能なものであればどのような構成であってもよい。
【0028】
図2は、実施形態に係る生体情報取得システム101のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る生体情報取得システム101は、車両1の乗員2の心拍に関する生体情報を取得するシステムであり、心拍センサ21、体動センサ22、及びプロセッサ23を備える。
【0029】
プロセッサ23は、プログラムに従って各種演算処理を行う情報処理装置(コンピュータ)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、I/F(Interface)等を備える。プロセッサ23は、ROMやSSDに記憶されたプログラムをRAMに展開し、生体情報を取得するための処理を実行する。プロセッサ23は、I/Fを介して他のデバイスと各種情報の送受信を行う。本実施形態に係るプロセッサ23は、心拍センサ21からの心拍信号、体動センサ22からの体動信号、車両制御システム102からの車両情報等に基づいて、乗員2の生体情報を取得(生成)するための各種処理を実行する。プロセッサ23により取得された生体情報は、車両制御システム102に出力される。
【0030】
車両制御システム102は、車両1を制御するための各種処理を行うシステムである。車両制御システム102は、例えば、駆動機構(エンジン、モータ、変速機等)、制動機構、操舵機構、ユーザI/F、ECU(Electronic Control Unit)等がCAN(Controller Area Network)を利用して接続されて構成される。車両制御システム102のECUは、駆動機構、制動機構、操舵機構等の作動状態に基づいて車両情報を生成し、車両情報を生体情報取得システム101に出力する。車両情報には、車両1の加減速に関する情報等が含まれる。また、車両制御システム102のECUは、生体情報取得システム101から取得した生体情報、走行支援情報等に基づいて所定の制御を実行する。ECUは、例えば、生体情報、走行支援情報等に基づいて危険回避行動が実現されるように駆動機構、制動機構、操舵機構、ユーザI/F等を制御する。危険回避行動は、例えば、車両1の安全な停止、乗員2への警告、医療機関へのナビゲーション等であり得る。
【0031】
図3は、実施形態に係る生体情報取得システム101の機能構成の一例を示すブロック図である。生体情報取得システム101は、体動時間帯特定部111(第1特定部)、車両情報取得部112、加減速時間帯特定部113(第2特定部)、演算部114、振動情報生成部115、及び出力部116を備える。これらの機能的構成要素111~116は、例えば
図2に示すようなハードウェアとソフトウェア(CPUを制御するプログラム)との協働により構成される。また、機能的構成要素111~116は、特定の機能を有するASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路を利用して構成されてもよい。
【0032】
体動時間帯特定部111は、体動センサ22により取得された体動信号に基づいて乗員2の体動が所定の基準移動量より大きい体動時間帯を特定する。基準移動量とは、例えば、乗員2の頭部の移動量等であり得る。
【0033】
車両情報取得部112は、車両1の加減速に関する情報を含む車両情報を取得する。
【0034】
加減速時間帯特定部113は、車両情報に基づいて車両1が所定の基準加速度より大きい加速度で加速しているか又は車両1が所定の基準減速度より大きい減速度で減速している加減速時間帯を特定する。また、加減速時間帯特定部113は、車両情報に基づいて車両1が停車している停車時間帯を特定してもよい。
【0035】
演算部114は、心拍センサ21により取得された心拍信号に基づいて乗員2の心拍間隔(所定時間当たりの心拍数)を演算し、心拍間隔を含む心拍情報(生体情報の一例)を生成する。本実施形態に係る演算部114は、体動時間帯及び加減速時間帯を含まない定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて心拍間隔を演算する。また、演算部114は、複数(本実施形態では3つ)の心拍センサ21のうち所定の基準心拍信号との差が最も小さい心拍信号に基づいて心拍間隔を演算してもよい。基準心拍信号とは、適切な心拍信号として予め設定されるものであり、例えば、乗員2の体動が基準移動量以下であり且つ車両1が停車しているとき(停車時間帯)に取得される心拍信号であり得る。これにより、乗員2の体格等に適合した位置に配置された心拍センサ21の心拍信号を用いて心拍間隔を演算することが可能となる。
【0036】
振動情報生成部115は、演算部114により演算された心拍間隔(定常時間帯に取得された心拍信号に基づいて演算された心拍間隔)と、所定の基準心拍間隔との差に基づいて、車両1の振動に関する振動情報を生成する。基準心拍間隔とは、適切な心拍間隔として予め設定されるものであり、例えば、乗員2の体動が基準移動量以下であり且つ車両1が停車しているとき(停車時間帯)に取得された心拍信号に基づいて演算された心拍間隔であり得る。上述したように、演算部114により演算された心拍間隔は、定常時間帯に取得された心拍信号に基づくものであるから、乗員2の意思や車両1の加減速に基づく体動の影響が十分抑制されたものであるが、車両1の振動が大きい場合には、当該心拍間隔の精度が低下する可能性がある。演算部114により演算された心拍間隔が基準心拍間隔から大きく乖離している場合、車両1に大きな振動が発生していると推測できる。すなわち、演算部114により演算された心拍間隔と基準心拍間隔との差が大きいほど、車両1の振動が大きいと推定できる。振動情報は、このように推定された車両1の振動の大きさ等を示す情報であり、例えば走行支援情報の一部として利用され得る。
【0037】
出力部116は、演算部114により生成された心拍情報及び振動情報生成部115により生成された振動情報を車両制御システム102等に出力する。
【0038】
図4は、実施形態に係る生体情報取得システム101における処理の一例を示すフローチャートである。乗員2の生体情報の取得が開始されると、体動時間帯特定部111は、体動センサ22により取得された体動信号に基づいて体動時間帯を特定し(S101)、加減速時間帯特定部113は、車両情報取得部112により取得された車両情報に基づいて加減速時間帯を特定する(S102)。
【0039】
演算部114は、体動時間帯及び加減速時間帯を含まない定常時間帯を特定し(S103)、定常時間帯に心拍センサ21により取得された心拍信号に基づいて心拍間隔を演算する(S104)。このとき、演算部114は、定常時間帯に複数の心拍センサ21により取得された複数の心拍信号から基準心拍信号に最も近い心拍信号を選択し、選択された心拍信号に基づいて心拍間隔を演算してもよい。
【0040】
その後、演算部114は、演算した心拍間隔と基準心拍間隔との差が閾値以下であるか否かを判定する(S105)。当該心拍間隔と基準心拍間隔との差が閾値以下である場合(S105:Yes)、当該心拍間隔は適正な値であると判断できるため、演算部114は当該心拍間隔を含む心拍情報を生成し、出力部116は当該心拍情報を車両制御システム102等に出力する(S106)。一方、当該心拍間隔と基準心拍間隔との差が閾値以下でない場合(S105:No)、振動情報生成部115は当該心拍間隔と基準心拍間隔との差に基づいて車両1の振動に関する振動情報を生成し、出力部116は当該振動情報を車両制御システム102等に出力する(S107)。
【0041】
上記実施形態によれば、乗員2の意識的な体動や車両1の加減速による体動の影響を抑制し、乗員2の心拍間隔を高精度で演算することが可能となる。また、車両1の振動に関する振動情報を生成し、車両1の制御等に役立てることが可能となる。
【0042】
上記のような機能を実現するためのプログラムは、プロセッサ23にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0043】
また、上記実施形態においては、車両1の加減速の有無を考慮して定常時間帯を特定する構成を例示したが、加減速に加え、操舵の有無を考慮して定常時間帯を特定してもよい。
【0044】
以下に、実施形態の変形例について説明する。
【0045】
図5は、第1変形例に係る各心拍センサ21の心拍信号と基準心拍信号との一致度の経時的変化の一例を示す図である。本例においては、18個の心拍センサ21が配置され、乗員2の背面を広範囲にカバーできるように構成されている。
【0046】
図5において、各心拍センサ21で検出された心拍信号と基準心拍信号との一致度がドットの密度(濃淡)で示されており、ドットの密度が高いほど一致度が高い(差が小さい)ことを示している。このような一致度の分布の経時的変化に基づいて、車両1の振動の特徴(例えば横揺れ、縦揺れ、揺れの大きさ等)を推定することが可能となり、そのような特徴を含む振動情報を生成することが可能となる。
【0047】
図6は、第2変形例に係る生体情報取得システム101の構成の一例を示す図である。本例においては、心拍情報を生成するための処理の一部が車両1の外部に存在するサーバ201により実行される。
【0048】
サーバ201は、車両1と通信網を介して通信可能な情報処理装置であり、例えばクラウドコンピューティング等の技術を利用して構成されるものである。サーバ201は、少なくとも上記演算部114と、演算部114により演算された心拍間隔に関する情報(心拍情報、走行支援情報等)を車両1に送信する送信部とを備えることが好ましい。このような構成により、比較的処理負荷が高い心拍間隔の演算をサーバ201に実行させ、車両1側の演算負荷を軽減させることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…車両、2…乗員、11…シート、12…バックレスト、13…ヘッドレスト、21…心拍センサ、22…体動センサ、23…プロセッサ、101…生体情報取得システム、102…車両制御システム、111…体動時間帯特定部(第1特定部)、112…車両情報取得部、113…加減速時間帯特定部(第2特定部)、114…演算部、115…振動情報生成部、116…出力部、201…サーバ