IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 共栄化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182173
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20221201BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221201BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20221201BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20221201BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20221201BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20221201BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20221201BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K36/258
A61K36/899
A61K8/9794
A61K36/185
A61K36/736
A61K36/07
A61K36/062
A61K8/99
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q1/14
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089563
(22)【出願日】2021-05-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000162021
【氏名又は名称】共栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩野 英生
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB112
4C083AB212
4C083AB352
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC512
4C083AC622
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC682
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC812
4C083AC852
4C083AC862
4C083AC932
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD272
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD432
4C083AD532
4C083AD552
4C083AD572
4C083AD592
4C083AD632
4C083AD642
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC23
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC06
4C087BC11
4C087BC56
4C087CA11
4C087MA63
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AB18
4C088AB52
4C088AB74
4C088AC03
4C088AC05
4C088AC13
4C088AC14
4C088AD16
4C088CA22
4C088CA25
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞膜保護効果、細胞活性化効果、細胞維持効果及び細胞増殖効果を発揮して、皮膚を若々しく健全な状態に保持し、又は改善するとともに、皮膚に対する刺激が少なく使用感にもすぐれた新規な有用成分を配合した有用な皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】オタネニンジン抽出物、イネ葉加水分解物、ハス花抽出物、サクラ花抽出物及び酒粕抽出物を含有する皮膚外用剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オタネニンジン抽出物、イネ葉加水分解物、ハス花抽出物、サクラ花抽出物及び酒粕抽出物を含有する皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の植物由来成分を含有する皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚外用剤の有効成分として、安全性を考慮して、様々な天然物由来成分が提案され、それら天然物由来成分を配合した皮膚外用剤が提案されている。しかし、天然物由来成分は有効性の点で皮膚外用剤の有効成分として不十分なものが多かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑みて、皮膚外用剤の有効成分として有効性の高い植物由来成分の組み合わせについて鋭意研究を行った。その結果、オタネニンジン抽出物、イネ葉加水分解物、ハス花抽出物、サクラの花抽出物及び酒粕抽出物の組み合わせが、皮膚外用剤の有効成分として有効性の高い成分であることを見出した。従来、各植物由来成分を皮膚外用剤の成分として使用することは、特許文献1~6により公知であるものの、これらの組み合わせが皮膚外用剤の含有成分として有用であることについては、知られていなかった。
【特許文献1】特開平10-273416号
【特許文献2】特開2000-169359号
【特許文献3】特開2013-103906号
【特許文献4】特開2017-039680号
【特許文献5】特開2017-178920号
【特許文献6】特開2017-165727号
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、オタネニンジン抽出物、イネ葉加水分解物、ハス花抽出物、サクラ花抽出物及び酒粕抽出物を含有する皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、オタネニンジン抽出物、イネ葉加水分解物、ハス花抽出物、サクラ花抽出物及び酒粕抽出物を含有する皮膚外用剤であって、これら植物由来成分の組み合わせが発揮する効果により、有効性の高い皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明に使用する「オタネニンジン」について以下に説明する。ウコギ科トチバニンジン属のオタネニンジンである。抽出物部位には特に限定はなく、全草、葉、花、雄しべ、雌しべ、茎、根、種子(子実)、果実など適宜の部位を用いることができるが、サポニンの含有量から、根、果実の使用が好ましい。また、オタネニンジンの根を加工して得られる紅参や白参も使用可能である。
【0007】
次に、本発明に使用する「イネ葉」について以下に説明する。「イネ」とは、イネ科(Poaceae)イネ属(Oryza)のイネであって、分類学上Oryza sativaに属するものであればそのいずれもが使用でき、品種は特に限定されるわけではない。本発明では、イネの使用部位としては、葉又は葉を含む全草が好ましい。また、「葉」は、出穂前の葉を用いることが好ましく、抽出処理する前に葉に加熱処理を施しても良い。これにより、イネの葉に含まれる活性成分(酵素等)による変性、変質を抑制することができ、採取したイネの葉の保管中の活性低下を防止することができる。
【0008】
次に、本発明に使用する「ハス」について以下に説明する。まず、「ハス」は、スイレン科ハス属に属する植物でいずれの種のものでも使用可能である。例えばハス(Nelumbo nucifera Gaertner)、アメリカキバス(Nelumbo Lutea Pers.)などが挙げられる。本発明においては、ハスの「花」を単独で使用することが好ましいが、花に加えて、葉、種子、雄しべ、雌しべ、茎、根茎、胚芽等の使用部位を含むことでも良い。
【0009】
次に、本発明に使用する「サクラ」について以下に説明する。「サクラ」とは、バラ科サクラ属に属する植物であって、例えば、オオシマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、ヤマザクラ(山桜)等のヤマザクラ(Prunus jamasakura)、ヤエザクラ、カンザン、フゲンゾウ、ヨウキヒ、イチヨウ等のサトザクラ(Prunus lannesiana)、ソメイヨシノ(Prunus×yedoensis)、カンヒザクラ、エドヒガン、マメザクラ、チョウジザクラ等が挙げられるが、本発明のサクラはそれらに限定されるものではない。また、使用部位としては、樹皮、花、種子、実、葉、根等のいずれを用いても良いが、花の使用が好ましい。
【0010】
次に、本発明に使用する「酒粕」について以下に説明する。酒粕とは、微生物由来発酵代謝物として、酵母、麹菌及び/又は乳酸菌に用いて製造される醸造酒又は蒸留酒、或いは醸造酒又は蒸留酒の製造過程で生じる残渣(日本酒粕、焼酎粕、ワイン粕、ビール粕)及びそれら残渣から抽出処理により得られる抽出物を用いることもできる。
【0011】
以上の植物から抽出物を調製する場合は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、各植物の抽出部位を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、そのまま又は乾燥した上、必要に応じて細切又は粉砕し、抽出溶媒と接触させて抽出を行う。抽出は、浸漬法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることで行うことが可能であるが、超臨界抽出法や水蒸気蒸留法を用いることも可能である。
【0012】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、トリオクタン酸グリセリル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、イソプロピル、エーテル等のエーテル類;n-ヘキサン、トルエン、クロロホルム等の炭化水素系溶媒等が挙げられ、それらは単独で若しくは二種以上混合して用いることができる。
【0013】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水とエチルアルコールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:1~25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:1~15:1、又水と1,3-プロパンジオール若しくは1,3-ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、1:1~15:1の範囲とすることが好ましい。
【0014】
抽出物の調製に際して、そのpHに特に限定はないが、一般には3~9の範囲とすることが好ましい。かかる意味で、必要であれば、前記抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性調整剤、又はクエン酸、塩酸、リン酸、硫酸等の酸性調整剤を配合し、所望のpHとなるように調整してもよい。
【0015】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば、水、エタノール、1,3-プロパンジオール若しくは1,3-ブチレングリコール、又は水とエタノール、1,3-プロパンジオール若しくは1,3-ブチレングリコールとの混液を溶媒とする場合であれば、抽出温度は好ましくは0℃~90℃の範囲であり、又抽出時間は好ましくは0.5時間~7日間である。
【0016】
各抽出物には、安定性を向上する目的や、皮膚外用剤の含有成分として好ましくない不純物を除去する目的で、活性炭処理や、非イオン交換樹脂等の合成吸着剤による吸着処理を行っても良い。さらに、抽出物に含まれる成分を濃縮する目的で、イオン交換樹脂等の合成吸着剤による濃縮処理を行っても良い。
【0017】
活性炭としては、松等の木、竹、椰子殻、胡桃殻等の植物質のほか、石炭質、石油質等を原材料として、それらの原材料に水蒸気や二酸化炭素、空気等のガスを使う高温炭化法等の物理的な方法や塩化亜鉛等の化学薬品を使って処理した上で加熱し、多孔質にする化学的な方法による活性化処理を施して得られる活性炭等何れを用いても良い。
【0018】
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂が挙げられ、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂等が、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂等が挙げられる。処理方法としては、イオン交換樹脂に抽出物溶液が接液すれば良く、例えば、抽出物溶液にイオン交換樹脂を投入して撹拌し、得られた非吸着画分を使用する方法や、イオン交換樹脂を充填したカラムに抽出液又は抽出物の水溶液を通液し、得られた非吸着画分を使用する方法が挙げられる。
【0019】
ここで、本発明の抽出処理に先立って、又は抽出処理と並行して、必要に応じて抽出部位に加水分解処理を施してもよい。これによって、当該抽出物の皮膚刺激性、有効性又は保存安定性等を改善して抽出物をより有効に利用できる可能性がある。
【0020】
特に、本発明においては、イネ葉抽出物については、加水分解処理を行うのが好ましい。加水分解処理方法としては、酸、アルカリ又は酵素による分解処理法が挙げられる。
【0021】
酵素としては、蛋白分解酵素、澱粉分解酵素、ペクチン質分解酵素、繊維素分解酵素及び脂肪分解酵素から選ばれた少なくとも1種の酵素を用いることができる。
【0022】
蛋白分解酵素としては、例えば、アクチナーゼなどのアクチナーゼ類、ペプシンなどのペプシン類、トリプシン、キモトリプシンなどのトリプシン類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類、グリシルグリシンペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼなどのペプチダーゼ類、ブロメラインなどを用いることができる。それら酵素のうちでも、アクチナーゼなどのアクチナーゼ類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類或いはブロメラインが特に好ましい。
【0023】
澱粉分解酵素としては、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、β-ガラクトシダーゼなどを用いることができる。それらの酵素のうちでも、グルコアミラーゼが特に好ましい。
【0024】
ペクチン質分解酵素としては、例えば、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンデメトキシラーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ポリガラクチュロナーゼなどを用いることができる。それらの酵素のうちでも、ペクチンエステラーゼとポリガラクチュロナーゼが特に好ましい。
【0025】
繊維素分解酵素としては、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アガラーゼ、マンナーゼ、キチナーゼ、キトサナーゼ、カラゲナーゼ、アルギナーゼ、フコイダナーゼ、イヌラーゼ、キシラナーゼ、リグニナーゼなどを用いることができる。それらの酵素のうちでも、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びリグニナーゼが特に好ましい。
【0026】
脂質分解酵素としては、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ等を用いることができる。
【0027】
酵素の使用量は、懸濁液中の植物(イネ葉)の固形分に対して、合計で0.001~10重量%が好ましい。pH、温度、時間などの処理条件としては、酵素処理を発酵の前に行うのであれば、使用する酵素の至適pH及び至適温度付近で1~24時間の処理を行うのが好ましい。
【0028】
本発明に係る抽出物及び加水分解物を皮膚外用剤に配合する場合、必須成分の上記組成物のほかに、通常化粧料に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、消炎剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、抗アクネ剤、細胞賦活剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、美白剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0029】
ここで、油性成分としては、例えば、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、ベルガモット油、ラベンダー油、バラ油、ベルガモット油、カミツレ油等の植物由来スクワラン等の植物由来の油脂類;ビタミンA油;ミンク油、タートル油等の動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン等の炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis-11-エイコセン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、パントテニルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2-エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)等の合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N、N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等のカチオン界面活性剤;N、N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N、N、N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′、N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等の両性界面活性剤等を使用することができる。
【0031】
乳化剤及び/又は乳化助剤としては、酵素処理ステビア等のステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素処理物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン等)、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀等)等を配合することもできる。
【0032】
保湿剤としては、保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース、ラフィノース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヒアルロン酸発酵液、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体等)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、コラーゲンペプチド、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、エストラジオール、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0033】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;ペクチン、アロエ多糖体等の多糖類;トラガントガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;カルボシキビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0034】
消炎剤としては、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ε-アミノカプロン酸、d-カンフル、dl-カンフル、酸化亜鉛、パンテノール、ピリドキシン塩酸塩、及びリボフラビン又はその誘導体等がある。
【0035】
防腐・殺菌剤としては、例えば、尿素;安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ピリチオン亜鉛、塩化ベンザルコニウム、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、臭化アルキルイソキノリニウム、レゾルシン、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、トリクロロカルバニド、トリクロロヒドロキシジフェノールエーテル、ヒノキチオール、1、2-ペンタンジオール、プロパンジオール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、ハッカ油、ユーカリ油等の精油類、樹皮乾留物、大根発酵液、サトウキビ、トウモロコシ等の植物由来のエタノール又は1、3-ブチレングリコール等がある。
【0036】
細胞賦活剤としては、パントテニルアルコール、メントール、dl-メントール、及びγ-オリザノール等がある。
【0037】
抗アクネ剤としては、イオウ、サリチル酸又はその塩、感光素201号、ジカプリル酸ピリドキシン等がある。
【0038】
粉体成分しては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビ等)のパウダー、豆類(大豆、アズキ等)のパウダー等がある。
【0039】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0040】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスタキサンチン等のカロテノイド、ビタミンE及びその誘導体(例えば、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル)、ビタミンA又はその誘導体(パルミチン酸レチノール等)等がある。
【0041】
また、美白剤として、コウジ酸又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、ビタミンE又はその誘導体、ニコチン酸又はその誘導体、マグノリグナン(5、5'-ジプロピル-ビフェニル-2、2’-ジオール)、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)から選択される1以上のものが挙げられる。
【0042】
上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレートなどのコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシドなどのコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルマグネシウムなどのアスコルビン酸エステル塩類、L-アスコルビン酸-2-グルコシド(2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸)、L-アスコルビン酸-5-グルコシド(5-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸)などのアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基など)、L-アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸テトララウリン酸エステルなどのL-アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3-O-エチルアスコルビン酸、L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-O-パルミテートナトリウム等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン-β-D-グルコピラノシド)、α-アルブチン(ハイドロキノン-α-D-グルコピラノシド)等が、レゾルシノール誘導体としては、例えば4-n-ブチルレゾルシノール、4-イソアミルレゾルシノール等が、2,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5-ジアセトキシ安息香酸、2-アセトキシ-5-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えば、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、ビタミンE誘導体としては、例えばビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等が、α-ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α-ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0043】
本発明においては、本発明に係る抽出物及び加水分解物の組み合わせと皮膚外用剤の有効成分であるナイアシンアミド、グリチルリチン酸ジカリウム、アスコルビン酸又はその誘導体、トラネキサム酸、ビタミンE又はその誘導体又はD-パントテニルアルコールを組み合わせることで、さらに、シワ改善や美白効果等の相乗効果を発揮することも示唆される。
【0044】
本発明に係る発酵物の組み合わせを含む皮膚外用剤(化粧品、医薬部外品、外用医薬品を含む)適用部位としては、頭皮を含む皮膚全般が挙げられ、特に制限はない。従って、剤形としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉、洗顔料、ボディシャンプー、石けん、マスク用製剤、及び浴剤等が挙げられるが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0045】
次に、製造例、試験例及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0046】
製造例1.ニンジン抽出物の調製
オタネニンジン乾燥物100gに精製水を500gとエタノール500gとを添加し、4℃で12時間浸漬した。これをろ過し、さらに、室温で1週間静置した。静置後の抽出物溶液を濾過して、褐色透明のニンジン抽出物溶液685g得た(固形分濃度2.80%)。
【0047】
製造例2.イネ葉加水分解物の調製
出穂直前(穂ばらみ期)のイネの葉の乾燥粉砕物200gに精製水1000gを加え、80℃で1時間抽出を行った後ろ過し、淡黄色透明のイネの葉抽出物溶液550g(固形分濃度2.5%)を得た。得られた抽出物溶液500gに、ペクチナーゼを0.025g添加し、40℃で4時間加水分解した。その後、90℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、淡黄色透明のイネの葉抽出物の酵素加水分解物溶液455g(固形分濃度2.81%)を得た。
【0048】
製造例3.ハス花抽出物の調製
ハスの花部(花弁、雄しべ等を含む)を乾燥して得られた乾燥物を粉末25gに乾燥物粉末5gに精製水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒(精製水と1,3-ブチレングリコールの混合比が1:1)を500g添加し、40℃で2時間抽出を行った。抽出後、濾過して暗褐色透明のハス花抽出物溶液399gを得た(固形分濃度1.47%)。次にこの抽出物溶液に水酸化カリウム水溶液を添加し、pHを8.0に調整した。その後、陽イオン交換樹脂(抽出物溶液中の固形分質量の約10倍質量)を添加し、室温で18時間撹拌して濾過し、暗褐色透明のハス花抽出物溶液を得た(固形分濃度1.34%)。
【0049】
製造例4.サクラ抽出物の調製
サトザクラ(Prunus lannesiana)の花を乾燥、粉砕し、粉砕物18gに精製水900gを加え、80℃にて、2時間抽出後、濾過し、褐色透明のサクラ抽出物溶液1360gを得た(固形分濃度0.50%)。
【0050】
製造例5.酒粕抽出物の調製
精製水800gに、清酒の製造過程で生じる酒粕160gを加え、80℃にて1時間抽出後、濾過し、淡黄色透明の酒粕抽出物溶液2495gを得た(固形濃度0.47%)。
【0051】
上述のように調製した抽出物及び加水分解物は、例えば、溶液として等量比(1:1:1:1:1)に混合することで、皮膚外用剤に配合する混合抽出物溶液を調製することができる。
【0052】
試験例1.細胞膜損傷修復効果の評価試験
ヒト真皮由来線維芽細胞NB1RGBを、0.5%NCS含有イーグル最少必須培地を入れた96穴マイクロプレートに1×104個/穴播種し、37℃,5.0%CO2の条件下でほぼコンフルエントになるまで培養した。試料溶液として製造例1の抽出物を溶液としての終濃度が2.5%、5.0%となるように培地に添加した後、培養器底面からUV-Bランプ(Philips社製TL20W/12RS)を用いて約672mJ/cm2の紫外線照射を行った。その後0.0052%ニュートラルレッド(NR)を含有する同培地に交換し、3時間培養した。その後、PBS(-)を用いて洗浄し、1%酢酸含有50%エタノール溶液を200μL加え、室温で20分間抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社製)を用いて波長540nmでNR値を測定した。試料溶液に代えてPBS(-)を添加した試料無添加の場合(対照)についても上記と同様に紫外線を照射した場合のコントロール(Control)と、紫外線未照射のコントロール(Control)を設定し、紫外線未照射のコントロールのNR値を100として、紫外線を照射した場合に得られたコントロールと試料添加時のNR値の相対値を求め、線維芽細胞NR取り込み率(%)とした。また、抗酸化効果を示す比較物質として、試料溶液の代わりに0.5mMのアスコルビン酸を添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0053】
試験例1の結果を表1に示す。
[表1]
【0054】
表1に示す通り、製造例1の抽出物は、紫外線照射により低下した細胞によるNRの取り込みを濃度依存的に回復させる効果を有することが確認された。これにより、細胞膜における物質交換などの機能を正常に維持できることで、細胞機能を健全に保ち、皮膚状態を健全に保つことができる。
【0055】
試験例2.線維芽細胞賦活効果
ヒト真皮由来線維芽細胞NB1RGBを、0.5%NCS含有イーグル最少必須培地を入れた96穴マイクロプレートに1×104個/穴播種し、37℃,5.0%CO2の条件下に1日間プレ培養した後、試料溶液として製造例2の加水分解物を添加した。試料溶液を添加後、プレ培養と同条件でさらに3日間培養した。ここで、試料溶液の濃度は、培地に対して製造例2の加水分解物を溶液の終濃度が2.5%,5.0%,10.0%となるように添加して、調製した。次に、培地を除去し、0.03%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンをイソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社製)を用いて波長570-630nmでMTT値を測定した。試料溶液に代えて培地を添加した対照(Control)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたMTT値に対する各試料添加時のMTT値の相対値を求め、線維芽細胞MTT活性率(%)とした。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として100mMのグルコースを添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0056】
試験例2の結果を表2に示す。
[表2]
【0057】
表2に示す通り、製造例2の加水分解物溶液は、濃度依存的に、すぐれた線維芽細胞賦活効果を有することを確認した。
【0058】
試験例3.マイトファジー活性評価試験(1)
試験例3においては、細胞内の分解・再生機構(オートファジー)の中でも、異常ミトコンドリアの分解機能(マイトファジー)に着目し、新生児由来真皮線維芽細胞と高齢者由来真皮線維芽細胞を用いて、加齢によるマイトファジー機能の変化を評価した。試験例3では、新生児由来真皮線維芽細胞内と高齢者由来真皮線維芽細胞内に存在するミトコンドリアの膜電位をカルボニルシアニド-m-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)低下させて、異常ミトコンドリアを増加させた後、各細胞内でのマイトファジーの活性能を評価した。
[試験方法]
新生児由来真皮線維芽細胞(NB1RGB)及び高齢者由来真皮線維芽細胞(NHDF-c adult)を、0.5%NCS含有イーグル最少必須培地を入れた96穴マイクロプレートに1×104個/穴播種し、37℃で、5.0%CO2の条件下に24時間プレ培養した。次に、プレ培養した培地に、50%1,3-ブチレングリコールを含む培養液を追添加し、プレ培養と同一条件で72時間培養した。ここで、プレ培養後に追添加する培養液中の50%1,3-ブチレングリコールの濃度は、その培養液全量に対して溶液として1.0%の終濃度となるように調製した。培養後、コントロール区を2つの区に分けて、一方のコントロール区(A)においては、培養培地を20μMのCCCP含有培地に交換し、更に3時間、37℃,5.0%CO2の条件下にてインキュベートし、もう一方のコントロール区(B)においては、培養培地を、CCCPを含まない培地に交換し、同条件でインキュベートした。インキュベート後、各区の培地を取り除き、Cyto-ID Autophagy Detection Kit (Enzo Life Sciences社) を使用してマイトファジー活性を測定した。その後、PBS(-)にて1000倍希釈したHoechst 33342(同人化学製品)を100μL添加して蛍光強度(励起波長355nm、吸光波長460nm)を測定してDNA量とし、DNA量当たりのマイトファジー活性を算出した。なお、マイトファジー活性率(%)は、コントロール区(B)のマイトファジー活性値を100としたときの相対値で表した。
また、高齢者由来真皮線維芽細胞を用いて、製造例3の抽出物によるマイトファジー活性亢進作用を評価した。まず、上記操作により高齢者由来真皮線維芽細胞(NHDF-c adult)プレ培養した。次に、プレ培養後に、製造例3の抽出物を試料溶液として含む培養液を追添加し、さらに72時間培養した。ここで、プレ培養後に追添加する培養液中の試料溶液の各濃度は、その培養液全量に対して溶液として1.0%の終濃度となるように調製した。72時間培養後、培養培地を20μMのCCCP含有培地に交換し、さらに3時間、37℃,5.0%CO2の条件下にてインキュベートした。インキュベート後、培地を取り除き、Cyto-ID Autophagy Detection Kit (Enzo Life Sciences社) を使用してマイトファジー活性を測定した。その後、PBS(-)にて1000倍希釈したHoechst 33342(同人化学製品)を100μL添加して蛍光強度(励起波長355nm、吸光波長460nm)を測定してDNA量とし、DNA量当たりのマイトファジー活性を算出した。なお、上記方法にてコントロール区を設定し、各試料溶液のマイトファジー活性率(%)を、コントロール区(B)のマイトファジー活性値を100としたときの相対値で表した。
【0059】
試験例3の結果を表3に示す。
[表3]
【0060】
試験例3の結果を表3に示す。表3に示すように、新生児由来真皮線維芽細胞及び高齢者由来真皮線維芽細胞において、異常ミトコンドリアの分解機構(マイトファジー)の活性が確認されたが、高齢者由来真皮線維芽細胞では新生児由来真皮線維芽細胞と比較して、マイトファジー活性が顕著に低下していることが確認された。その上で、製造例3の抽出物はマイトファジー活性が低下する高齢者由来真皮線維芽細胞において、格段にすぐれたマイトファジー活性亢進作用を有することが認められた。これにより、製造例3の抽出物は、細胞内に蓄積した異常ミトコンドリアの増加を抑制し、細胞の機能を改善し、又細胞を活性化する作用を有することが示された。
【0061】
試験例4.マイトファジー活性評価試験(2)
試験例3の評価試験において、新生児由来真皮線維芽細胞(NB1RGB)及び高齢者由来真皮線維芽細胞(NHDF-c adult)に代えて、新生児由来表皮細胞[NHEK(NB)]及び高齢者由来表皮細胞[NHEK(AD)を使用する他は同様に操作し、製造例3の抽出物(0.5%、1.0%)の表皮細胞でのマイトファジー活性の評価を行った。
【0062】
試験例4の結果を表4に示す。
[表4]
【0063】
表4に示す通り、新生児由来表皮細胞において、異常ミトコンドリアの分解機構(マイトファジー)の活性が確認されたが、高齢者由来表皮細胞では新生児由来表皮細胞と比較して、マイトファジー活性が認められなかった。その上で、製造例3の抽出物はマイトファジー活性が低下する高齢者由来表皮細胞においても、格段にすぐれたマイトファジー活性亢進作用を有することが認められた。これにより、製造例3の抽出物は、細胞内に蓄積した異常ミトコンドリアの増加を抑制し、表皮細胞の機能を改善し、又細胞を活性化する作用を有することが示された。
【0064】
試験例5.表皮幹細胞増加効果の評価試験
次に、表皮幹細胞のマーカータンパク質の一つであるMCSP(Melanoma-associated chondroitin sulfate proteoglycan)を使用して、本発明に係る有効成分のMCSP発現促進効果を評価した。
[試験方法]
正常表皮角化細胞(NHEK(F))を8×10cell/wellで96ウェルプレートに播種後、HuMedia-KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、37℃で24時間培養した。培養後、当該培地に製造例4の抽出物と製造例5の抽出物の混合物溶液を試料溶液として添加し、さらに、48時間培養した。ここで、試料溶液は、試験培地中の溶液としての最終濃度がそれぞれ0.5%,1.0%となるように添加した。培養終了後、MCSP抗体を用いた免疫的検出を行った。すなわち、PBS(-)洗浄後、細胞を15%中性緩衝ホルマリン液にて30分処理して固定、0.5%Triton X-100溶液で1時間浸透処理、5倍希釈ブロッキングワンP(ナカライテスク社)溶液で2時間処理によるブロッキングを行った後、MCSP抗体を添加し、室温で1時間静置した。次に、PBS(-)洗浄し、蛍光ラベルした二次抗体を添加してさらに暗所で一定時間静置した。その後PBS(-)洗浄し、蛍光強度の測定を行った。まず、蛍光マイクロプレートリーダー(フルオロスキャンアセント、Thermo Fisher Scientific社製)を使用し、二次抗体の蛍光ラベル(Alexa Fluor488)をEx=485nm、Em=520nmで測定し、その後、Hoechst33342によるDNA染色を行い、Ex=355nm、Em=460nmの測定を行った。それぞれの試験区のAlexa Fluor488の蛍光強度をHoechst33342の蛍光強度で割ることで、MCSP発現量を求めた。試料溶液に代えて50%1,3-ブチレングリコール(1.0%)を添加した試料無添加の場合(コントロール)についても上記と同様の操作を行った。ここに得られたMCSP発現量に対する各試料添加時のMCSP発現量の相対値を求め、MCSP発現促進量(%)とした。
【0065】
試験例5の結果を表5に示す。
[表5]
【0066】
表5に示すと通り、製造例4の抽出物と製造例5の抽出物の混合物溶液は、濃度依存的に表皮幹細胞を増殖させる効果が確認された。この効果により表皮に細胞を供給し続けることが可能となり、表皮のターンオーバーを正常化させ、皮膚を健全に保つことができる。
【0067】
以上のことから、製造例1の抽出物、製造例2の加水分解物及び製造例3~5の抽出物を組み合わせることで、細胞膜修復効果、細胞賦活効果、細胞の機能改善及び活性化並びに細胞増殖効果を発揮し、これにより、肌細胞の老化を総合的に防ぐことができるという相乗効果が期待できる。
【0068】
試験例6.モニター試験(使用感)
[試料調製]
まず、製造例1~5の抽出物及び加水分解物の混合物溶液を含む本発明試料1と、各製造例1~5の抽出物又は加水分解物を含む比較試料1~5を調製した。
[表6]

[試験方法]
無作為に抽出した年齢25~60歳の男女5名を被験者として、各被験者の上前腕部に本発明試料1を塗布する試験区と、比較試料1~5を塗布する比較区を設定し、それぞれ1日2回(朝、晩)1週間塗布してもらった時の使用感を評価した。使用感は、手に取った感触(イ)、塗布時の伸び(ロ)、うるおい感(ハ)、ハリ感(ニ)について、A:非常に良い、B:良い、C:普通、D:やや悪い、E:悪い、という5段階で評価した。
【0069】
試験例6の結果を表7に示す。なお、表7中の数字は、回答した人数を示す。
[表7]
【0070】
表7に示す通り、本発明試料1は、比較試料1~5と比較して、よりすぐれた使用感を有することが確認された。
【0071】
処方例1.化粧水
[成分] 部
ユーカリ油 0.2
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
トコフェロール酢酸エステル 0.02
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
グリチルリチン酸モノアンモニウム 0.5
グリチルリチン酸ステアリル 0.05
イソプロピルメチルフェノール 0.1
アライントイン 0.1
D-パントテニルアルコール 0.1
サリチル酸 0.5
尿素 5.0
l-メントール 0.9
dl-メントール 0.2
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸ナトリウム 0.2
メチルパラベン 0.1
ヒノキチオール 0.003
感光素201号 0.002
精製水 全量が100部となる量
【0072】
処方例2.化粧水
[成分] 部
カプリル酸グリセリル 3.0
ラウリン酸ポリグリセリル-10 3.0
セタノール 2.0
ベヘニルアルコール 2.0
メチルパラベン 0.1
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
アスコルビン酸 3.0
グリチルリチン酸 0.5
β-グリチルレチン酸 0.05
トコフェロールニコチン酸エステル 0.1
レゾルシン 0.1
酸化亜鉛 2.0
dl-カンフル 0.5
グリセリン 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
水酸化カリウム 0.5
精製水 全量が100部となる量
【0073】
処方例3.化粧水
[成分] 部
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
メチルパラベン 0.1
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
アスコルビン酸グルコシド 2.0
トラネキサム酸 2.0
ε-アミノカプロン酸 0.1
イオウ 0.2
エストラジオール 0.1
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸ナトリウム 0.2
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.2
d-カンフル 0.1
精製水 全量が100部となる量
【0074】
処方例4.乳液
[成分] 部
スクワラン 5.0
シクロペンタンシロキサン 1.0
ヘキサラン 3.0
イソステアリン酸ヘキシルデシル 1.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 1.0
ラウリン酸ポリグリセリル-10 5.0
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 5.0
ジパルミチン酸アスコルビル 15.0
水添大豆レシチン 1.5
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩 3.0
アルブチン 3.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
キサンタンガム 0.2
シロキクラゲ多糖体 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
トコフェロール酢酸エステル 0.3
トコフェロールニコチン酸エステル 0.1
グリチルリチン酸 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
水溶性コラーゲン 1.0
加水分解コラーゲン 1.0
ヒアルロン酸ナトリウム 1.0
精製水 全量が100部となる量
【0075】
処方例5.乳液
処方例4の成分中、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩2.0部に代えてL-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部を用いるほかは処方例4を同様にして乳液を得た。
【0076】
処方例6.乳液
処方例4の成分中、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩2.0部に代えて及び水酸化カリウム0.5部に代えてトラネキサム酸2.0部を用いるほかは処方例4と同様にして乳液を得た。
【0077】
処方例7.乳液
処方例4の成分中、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩2.0部に代えてニコチン酸アミド5.0部を用いるほかは処方例4と同様にして乳液を得た。
【0078】
処方例8.クリーム
[成分] 部
オリーブ油 5.0
ホホバ油 5.0
スクワラン 5.0
イソステアリン酸ヘキシルデシル 5.0
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル) 5.0
カプリル酸グリセリル 1.0
ステアリン酸グリセリル 1.0
イソステアリルグリセリル 3.0
γ-オリザノール 0.1
ベヘニルアルコール 2.0
パルミチン酸 2.5
D-パントテニルアルコール 3.0
アラントイン 0.1
リボフラビン 0.01
レゾルシン 0.1
塩化ベンザルコニウム 0.05
尿素 3.0
β-グリチルレチン酸 0.1
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
グリチルリチン酸アンモニウム 0.1
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
乳酸菌発酵米 2.0
水添レシチン 0.5
水添リゾレシチン 0.5
油溶性オタネニンジンエキス 2.0
キサンタンガム 1.0
酸化亜鉛 0.5
dl-カンフル 0.3
l-メントール 0.5
精製水 全量が100部となる量
【0079】
実施例9.パック
[成分] 部
ジプロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 5.0
セタノール 3.0
ベヘニルアルコール 3.0
アラントイン 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
グリチルリチン酸アンモニウム 0.1
β-グリチルレチン酸 0.1
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
サリチル酸 0.1
トコフェロール酢酸エステル 0.5
トコフェロールニコチン酸エステル 0.1
D-パントテニルアルコール 0.3
レゾルシン 0.1
イオウ 2.0
エストラジオール 0.002
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
キサンタンガム 2.0
ミリスチン酸ポリグリセリル-6 1.0
ココイルグルタミン酸カリウム 1.0
水添レシチン 3.0
水酸化レシチン 3.0
精製水 全量が100部となる量
【0080】
処方例10.ヘアシャンプー
[成分] 部
ラウレス硫酸ナトリウム 10.0
モノステアリン酸グリセリル 1.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 2.0
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
塩化ベンザルコニウム 1.0
ステアリルアルコール 2.0
ベヘニルアルコール 2.0
ジメチコン 3.0
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
アラントイン 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
サリチル酸 0.1
サリチル酸ナトリウム 0.1
トコフェロール酢酸エステル 0.1
ピリチオン亜鉛 0.3
安息香酸 0.2
トリクロサン 0.2
クエン酸 0.1
プロピレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
【0081】
実施例11.ヘアコンディショナー
[成分] 部
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油 1.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 1.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
塩化ベンザルコニウム 1.0
セタノール 3.0
ステアリルアルコール 1.0
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
アラントイン 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
サリチル酸 0.1
イオウ 0.5
臭化アルキルイソキノリニウム液(75%) 0.06
ピリチオン亜鉛 0.3
メチルパラベン 0.1
トリクロサン 0.2
レゾルシン 0.1
精製水 全量が100部となる量
【0082】
処方例12.洗浄用化粧料
[成分] 部
ココイルグリシンカリウム 5.0
グリセリン 10.0
カプリル酸グリセリル 1.0
ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム 10.0
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
セタノール 3.0
ミリスチルアルコール 3.0
イソプロピルメチルアルコール 0.1
アラントイン 0.1
イオウ 0.5
グリチルリチン酸 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
グリチルリチン酸モノアンモニウム 0.1
β-グリチルレチン酸 0.05
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
サリチル酸 0.2
トコフェロール酢酸エステル 0.2
トリクロサン 0.1
トリクロロカルバニド 0.5
トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル 0.2
濃ベンザルコニウム塩化物液50 0.2
ベンザルコニウム塩化物 0.1
精製水 全量が100部となる量
【0083】
処方例13.シートマスク
不織布に下記の成分を含浸させてシートマスクを得る。
[成分] 部
グリセリン 3.0
1、3-ブチレングリコール 2.0
L-アスコルビン酸 2-グルコシド 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
キサンタンガム 1.0
水溶性コラーゲン 1.0
ヒアルロン酸ナトリウム 1.0
製造物1の抽出物 2.5
製造物2の加水分解物 2.5
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
【0084】
処方例14.美容液
[成分] 部
エタノール 2.0
グリセリン 5.0
1、3-ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
ヒアルロン酸加水分解物 1.0
乳酸菌培養物 1.0
製造物1の抽出物 5.0
製造物2の加水分解物 5.0
製造物3の抽出物 1.0
製造物4の抽出物 1.0
製造物5の抽出物 1.0
クエン酸 0.3
クエン酸ナトリウム 0.6
精製水 全量が100部となる量